JP6086241B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非晶質炭素被覆黒鉛を用いる効果が十分に好適に発揮され、優れた入出力特性と高い耐久性とを兼ね備えた非水電解質二次電池を提供することである。
ここに開示される非水電解質二次電池は、正極とセパレータと負極とが積層された電極体と、非水電解質とを備える。上記負極は、非晶質炭素被覆黒鉛とバインダとを含む負極活物質層を備える。また、上記セパレータは、セパレータ基材と、該基材の表面に形成された多孔質耐熱層(HRL;Heat Resistance Layer)とを備える。そして、上記非晶質炭素被覆黒鉛は、以下の条件:(1)フロー式画像解析法に基づく個数基準の粒度分布において、3μm以下の微粒子の累積頻度αが10個数%以上40個数%以下(好ましくは20個数%以上40個数%以下)である;および、(2)レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径D50(メジアン粒径)が5μm以上20μm以下である;をいずれも満たしている。
また、好適な他の一態様では、負極活物質層全体を100質量%としたときに、SBRの割合が0.5質量%以上0.9質量%以下である。SBRの添加量を0.5質量%以上とすることで、機械的強度や耐久性に優れる信頼性の高い負極を実現することができる。さらに、SBRの添加量を0.9質量%以下とすることで、負極の抵抗を一層低く抑えることができる。したがって、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここに開示される非水電解質二次電池は、正極とセパレータと負極とが積層された電極体と、非水電解質とを備えている。以下、各構成要素について順に説明する。
負極は、非晶質炭素被覆黒鉛とバインダとを含む負極活物質層を備えるものであれば特に限定されないが、典型的には、負極集電体上に当該負極活物質層が固着された形態である。このような負極は、例えば、負極活物質とバインダ(結着剤)とを適当な溶媒(例えば、水やN−メチル−2−ピロリドン)に分散させてなる負極ペーストを負極集電体の表面に付与した後、乾燥して溶媒を除去することにより作製することができる。
負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材を好適に使用することができる。
ここに開示される技術では、非晶質炭素被覆黒鉛として、以下の条件:
(1)フロー式画像解析法に基づく個数基準の粒度分布において、3μm以下の微粒子の累積頻度αが10個数%以上40個数%以下である。
(2)レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径D50(メジアン径。以下、単に「平均粒径D50」ということがある。)が5μm以上20μm以下である。
を満たすものを用いることができる。非晶質炭素被覆黒鉛の粒度をかかる範囲とすることで、負極活物質層に含まれる微粒子の割合を制御することができる。
さらに、本発明者らの検討によれば、累積頻度αを20個数%以上とすることで、例えば上述の手法で負極活物質層を形成する場合に、混練時のロバスト性を向上することができる。このため、例えば負極ペーストにダイラタンシー現象等の不具合が生じ難く、例えば集電体との密着性(接着強度)や厚み方向の均質性が良好な負極活物質層を安定して形成することができる。したがって、信頼性の高い負極を安定的に作製することができる。
なお、本明細書において「BET比表面積」とは、吸着質として窒素(N2)ガスを用いたガス吸着法(定容量式吸着法)によって測定されたガス吸着量を、BET法(例えば、BET多点法)で解析した値をいう。
また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記材料に加えて各種添加剤(例えば、増粘剤、分散剤、導電材等)を使用することもできる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)やメチルセルロース(MC)等を用いることができる。
正極は、典型的には、正極集電体上に正極活物質を含む正極活物質層が固着された形態である。このような正極は、例えば、正極活物質と導電材とバインダ(結着剤)とを適当な溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドン)に分散させてなる正極ペーストを正極集電体の表面に付与した後、乾燥して溶媒を除去することにより作製することができる。
正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材を好適に使用することができる。
セパレータは、典型的には、セパレータ基材の表面(例えば片側の表面)に多孔質耐熱層(HRL)が固着された形態である。このようなセパレータは、例えば、無機フィラーと必要に応じて用いられるバインダ等の材料とを適当な溶媒(例えば水)に分散させてなるペースト状またはスラリー状の組成物をセパレータ基材の表面に付与した後、乾燥して溶媒を除去することにより作製することができる。
なお、上記多孔質耐熱層の平均厚みTHは、例えばセパレータの断面構造の電子顕微鏡観察によって求めることができる。
上記正極と負極が、セパレータを介して積層され、電極体が形成される。このとき、正極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該正極活物質の質量(g)との積で算出される正極容量Cc(mAh)と、負極活物質の単位質量当たりの理論容量(mAh/g)と該負極活物質の質量(g)との積で算出される負極容量Ca(mAh)との比(Ca/Cc)を、1.0〜2.0とすることが適当であり、1.5〜1.9(例えば1.7〜1.9)とすることが好ましい。対向する正負極の容量比を上記範囲とすることで、電池容量やエネルギー密度等の電池特性を良好に維持しつつ、負極表面に電荷担体が析出することを好適に抑制することができる。
非水電解質としては、典型的には、非水溶媒中に支持塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等。リチウムイオン二次電池ではリチウム塩。)を溶解または分散させたものを採用し得る。あるいは、液状の非水電解質にポリマーが添加され固体状(典型的には、いわゆるゲル状)となったものでもよい。
支持塩としては、一般的な非水電解質二次電池と同様のものを適宜選択して採用し得、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li(CF3SO2)2N、LiCF3SO3等のリチウム塩を用いることができる。このような支持塩は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい支持塩としてLiPF6が挙げられる。また、非水電解質は上記支持塩の濃度が0.7mol/L〜1.3mol/Lの範囲内となるように調製することが好ましい。
先ず、負極活物質として、粒度分布の異なる5種類の非晶質炭素被覆黒鉛C1〜C7を作製した。具体的には、粒径分布の異なる7種類の球状天然黒鉛と、非晶質炭素としてのピッチを準備し、それぞれ原料の質量比が96:4となるように混合し、液相法によって天然黒鉛の表面にピッチを付着させた。かかる複合体を800℃〜1300℃で10時間焼成し、非晶質炭素被覆黒鉛を作製した。そして、粉砕・篩分けの条件を調整して、性状の異なる7種類の非晶質炭素被覆黒鉛C1〜C7を得た。
得られた非晶質炭素被覆黒鉛C1〜C7について、個数基準の粒度分布と体積基準の粒度分布を測定した。
個数基準の粒度分布については、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製:型式FPIA−3000)を用いて円相当の粒径を測定した。そして、得られた個数基準の粒度分布から、3μm以下の微粒子の累積頻度αを算出した。具体的には、分散媒としてのR.O.水中に、界面活性剤としてのナローアクティー(登録商標)と上記非晶質炭素被覆黒鉛とを添加し、該黒鉛を分散媒中に均質に分散させた。かかる溶液を撹拌速度300rpmで撹拌しながら粒径の測定を行った。代表例として、非晶質炭素被覆黒鉛C6に係る個数基準の粒度分布を図2に示す。また、3μm以下の微粒子の累積頻度αを下表1に示す。
体積基準の粒度分布については、レーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定装置を用いて測定した。そして、得られた体積基準の粒度分布から、平均粒径D50(メジアン径)を算出した。結果を下表1に示す。
また、吸着質として窒素(N2)ガスを用いたガス吸着法(定容量式吸着法)によってガス吸着量を測定し、得られた結果をBET法(例えば、BET多点法)で解析することにより、BET比表面積を算出した。結果を下表1に示す。非晶質炭素被覆黒鉛C1〜C7のBET比表面積は、1.8m2/g〜5.6m2/gだった。
上記得られた負極活物質C1〜C7を用いて、それぞれ負極ペーストC1〜C7を調製した。すなわち、負極活物質C1〜C7と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(BBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比が98.6:0.7:0.7となるようにイオン交換水と混合して、負極ペーストC1〜C7を調製した。
この負極ペーストC1〜C7について、混練時の固練りのNV値とペーストの粘度から、混練安定性を評価した。具体的には、25℃、回転速度1rpmの条件下で、ペースト粘度(mPa・s)と固練り時のNV値(%)との関係を調べ、塗工可能な粘度範囲(ここでは1000mPa・s〜6000mPa・sとした。)の中で最も粘度が低いときの固練りのNV値と、塗工可能粘度上限の6000mPa・sのときの固練りのNV値との差分を、混練安定性という指標で表した。一例を、図3に示す。図3は、非晶質炭素被覆黒鉛の3μm以下の微粒子の累積頻度αが30個数%の時のペースト粘度(mPa・s)と固練り時のNV値(%)との関係を示している。ここに示す例では、塗工可能な粘度範囲の中で最も粘度が低いときの固練りのNV値が64.3%である。また、塗工可能粘度上限の6000mPa・sのときの固練りのNV値が62.8%である。よって、混練安定性は1.5%(=64.3%−62.8%)である。同様にして、負極活物質C1〜C7の混練安定性を評価した。結果を表1および図4に示す。
上記調製した負極ペーストC1〜C7をフィルタに通過させて濾過した後、厚さ10μmの銅箔(負極集電体)に両面を合計した目付量が7.3mg/cm2となるよう塗付して、乾燥後に圧延プレスすることによって、負極集電体上に負極活物質層を有する負極シートC1〜C7(いずれも、負極活物質層の幅:102mm、負極活物質層の長さ:3200mm、電極密度:0.9g/cm3〜1.3g/cm3。)を作製した。このとき、非晶質炭素被覆黒鉛の3μm以下の微粒子の累積頻度αが60個数%の負極ペーストC7では、ダイラタンシー現象が発生し、ペーストがフィルタを通過しなかったため、濾過せずにそのまま負極活物質層の形成に用いた。
正極活物質として、Li1.14Ni0.34Co0.33Mn0.33O4を作製した。具体的には、原料化合物としての硫酸ニッケル(NiSO4)と硫酸コバルト(CoSO4)と硫酸マンガン(MnSO4)とを、Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1となるよう秤量し、水に溶解させた。この混合液を25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和して、Ni0.34Co0.33Mn0.33(OH)2を基本構成とする複合水酸化物(前駆体水酸化物)を得た。この前駆体水酸化物とリチウム源としての炭酸リチウム(Li2CO3)とを、(Ni+Co+Mn):Liのモル比が1.14:1となるように混合し、大気雰囲気中、800℃〜950℃で5時間〜15時間焼成した。その後、かかる焼成物を冷却し、解砕し、篩い分けを行った。これにより、Li1.14Ni0.34Co0.33Mn0.33O2で表される平均組成の正極活物質(LNCM)を得た。得られた正極活物質の性状を上記と同様の手法によって測定したところ、平均粒径D50は3〜8μmであり、BET比表面積は0.5m2/g〜1.9m2/gだった。また、一般的な誘導結合プラズマ質量分析計を用いて構成元素の分析を行ったところ、Li,Ni,Co,Mnに加えて、微量の遷移金属元素、アルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が検出された。
上記作製した正極活物質(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比が90:8:2となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合して、正極ペーストを調製した。このペーストを、厚さ15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)に、両面を合計した目付量が11.2mg/cm2となるよう塗付して、乾燥後に圧延プレスすることにより、正極集電体上に正極活物質層を有する正極シート(正極活物質層の幅:98mm、正極活物質層の長さ:3000mm、電極密度:1.8〜2.4g/cm3)を作製した。
ここでは、負極活物質の粒度分布および/またはセパレータの多孔質耐熱層の平均厚みTHが異なる22種類の捲回電極体を作製した。
まず、セパレータとしてポリエチレン(PE)製の基材(平均厚みTB:20μm)の片側の表面にアルミナを含む多孔質耐熱層を備えたものを準備した。ここでは、多孔質耐熱層の平均厚みTHのみが異なる計4種類のセパレータを用意した。次に、上記作製した負極シートC1〜C7と正極シートとを、表2に示す厚みの多孔質耐熱層(HRL)を備えたセパレータシートを介して対向させ、それぞれ積層した。この際、セパレータはHRLが正極と対向するよう配置した。次に、かかる積層体を長尺方向に捲回した後、扁平形状に成形することで、例1〜例22の捲回電極体(正負極の充電容量比:1.5〜2.0、捲回数:29ターン)を作製した。
次に、電池ケースの蓋体に正極端子および負極端子を取り付け、これらの端子を、捲回電極体端部に露出した正極集電体および負極集電体にそれぞれ溶接した。このようにして蓋体と連結された捲回電極体を電池ケースの開口部からその内部に収容し、開口部と蓋体を溶接した。
上記のように作製したリチウムイオン二次電池に対して、25℃の温度条件下において、コンディショニング処理(正負極端子間の電圧が4.1Vとなるまで0.2Cの充電レートで定電流充電する操作と、正負極端子間の電圧が3.0Vとなるまで0.2Cの放電レートで定電流放電させる操作を1サイクルとして、これを3サイクル繰り返す初期充放電処理)を行った後、SOC(State of Charge)60%の充電状態に調整した。
その後、−30℃の温度環境下において、振幅:5mV、測定周波数範囲:10000Hz〜0.1Hzの条件で交流インピーダンスの測定を行い、得られたCole−Coleプロットを等価回路にフィッティングさせ、円弧形状の直径を反応抵抗(mΩ)として算出した。なお、交流インピーダンスの測定および解析には、以下の機器を用いた。
測定装置 :Solartron社製、「1287型ポテンショ/ガルバノスタット」および「1255B型周波数応答アナライザ(FRA)」
解析ソフト :ZPlot/CorrWare
測定条件 :周波数範囲;10000Hz〜0.1Hz、振幅;5mV
測定温度;−30℃、電池のSOC;60%
また、セパレータに着目すると、本実施例においては、HRLの平均厚みTHが15μmを超えると充電抵抗が急激に増加することがわかった。このため、HRLを15μm未満(例えば10μm以下)とすることで、充電抵抗比を小さく抑えることができ、優れた入出力特性を実現し得ることがわかった。
次に、電池が過充電状態となるまで連続して充電を行い、電池を強制的にシャットダウンさせて漏れ電流の大きさを評価した。具体的には、25℃の温度環境下において、低電流放電で電池をSOC30%の状態に調整し、次いで、電池の最高到達電圧が40Vとなるまで40Aの定電流で充電した。そして、電池がシャットダウンした後の10分間の電流値(漏れ電流値)を測定した。当該10分間のうちの最大電流値を「漏れ電流」として表2に示す。また、図6には微粒子の累積頻度αと漏れ電流との関係を示す。
また、セパレータに着目すると、本実施例においては、HRLの平均厚みTHが1.2μmの場合、漏れ電流が増加した。これは、耐熱性が低下して、正極と負極の絶縁性を確保し難かったためと考えられる。このため、HRLを2μm以上とすることで、高い耐久性や信頼性を実現し得ることがわかった。
14 正極活物質層
20 負極シート(負極)
24 負極活物質層
40 セパレータシート(セパレータ)
44 多孔質耐熱層
50 電池ケース
52 電池ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 非水電解質二次電池
Claims (6)
- 正極とセパレータと負極とが積層された電極体と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池であって、
前記負極は、非晶質炭素被覆黒鉛とバインダとを含む負極活物質層を備え、
前記セパレータは、セパレータ基材と、該基材の表面に形成された多孔質耐熱層とを備え、
ここで、前記非晶質炭素被覆黒鉛は、以下の条件:
(1)フロー式画像解析法に基づく個数基準の粒度分布において、3μm以下の微粒子の累積頻度αが10個数%以上40個数%以下である;および、
(2)レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径D50(メジアン径)が5μm以上20μm以下である;
を満たし、
前記負極活物質層全体を100質量%としたときに、前記バインダの割合が0.5質量%以上0.9質量%以下であり、
前記多孔質耐熱層の平均厚みが2μm以上10μm以下である、非水電解質二次電池。 - 前記非晶質炭素被覆黒鉛の前記3μm以下の微粒子の累積頻度αが20個数%以上40個数%以下である、請求項1に記載の電池。
- 前記セパレータ基材の前記負極に対向する側の表面に前記多孔質耐熱層が形成されている、請求項1または2に記載の電池。
- 前記バインダがスチレンブタジエンゴムである、請求項1から3のいずれか1つに記載の電池。
- 前記非晶質炭素被覆黒鉛の窒素吸着法に基づくBET比表面積が1m2/g以上10m2/g以下である、請求項1から4のいずれか1つに記載の電池。
- 前記セパレータ基材がポリエチレン樹脂および/またはポリプロピレン樹脂からなり、
該セパレータ基材の平均厚みが30μm以下である、請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
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