以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の断面図であり、図2は、補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図であり、図3は、図1に示す補強材付き触媒層−電解質膜積層体の要部Xを拡大して示す断面図である。
本実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体1は、図1、図2及び図3に示すように、触媒層‐電解質膜積層体10と、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11を一方面側及び他方面側から覆うように配置された一対のフィルム状の補強材4、4と、を備えている。触媒層‐電解質膜積層体10は、平面視矩形状の電解質膜2と、当該電解質膜2の両面(一方面及び他方面)にそれぞれ配置された触媒層3、3とを備えている。触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11は、電解質膜2の外縁の端面23および外周縁部21、並びに、触媒層3の外縁の端面33および外周縁部31を含む概念であり、本実施形態では、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11のうち電解質膜2の外縁の端面23および外周縁部21に補強材4が貼り合わされている。これにより、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11の一部が補強材4により覆われている。また、電解質膜2の外周縁部21は、電解質膜2の外縁より内側の部分であり、触媒層3の外周縁部31は、触媒層3の外縁より内側の部分である。
電解質膜2の厚さは、通常10μm〜250μm程度、好ましくは10μm〜80μm程度であり、この厚さにより、図3に示すように、電解質膜2の表裏面(一方面及び他方面)と、一対の補強材4、4の接着面40との間に段差20が形成されている。
触媒層3は、電解質膜2よりも一回り小さく形成されており、電解質膜2の外周縁部21が触媒層3から露出するように配置されている。この触媒層3の厚さは、通常1μm〜200μm程度、好ましくは3μm〜100μm程度である。また、一方の触媒層3が電解質膜2の一方面に配置され、他方の触媒層3が電解質膜2の他方面に配置されている。
一対の補強材4、4は、それぞれ電解質膜2よりも一回り大きく形成されており、電解質膜2の外周縁部21に貼り合わされると共に、電解質膜2より外側で電解質膜2からはみ出した部分において互いに貼り合わされている。また、補強材4は枠状(額縁状)に形成され、触媒層3の少なくとも一部が露出するような枠状(額縁状)の開口部5を有している。なお、開口部5と触媒層3との間には隙間があってもよい。また、一対の補強材4、4には、それぞれ、厚み方向に延びる複数の空気排出路6が形成されており、各空気排出路6は少なくとも一方の補強材4を貫通しており、補強材4の表面及び接着面40に開口している。また、各空気排出路6は、電解質膜2の外周縁部21より外側に形成されている。電解質膜2の外周縁部の外側(空気排出路6が形成される位置)は、電解質膜2の外縁の端面23の近傍が好ましく、電解質膜2の厚みにより一対の補強材4,4の間に空気が入り込む部分を含む概念である。電解質膜2の外周縁から空気排出路6までの距離Aは、空気が排出される限り、限定させるものではないが、空気を確実に排出する観点から、10mm以内が好ましく、5mm以内が更に好ましく、2mm以内が更に好ましい。また、図3に示すように、一対の補強材4、4に形成された空気排出路6は、互いに連通しないように横にずれている。また、図2に示すように、複数の空気排出路6は、平面視において、電解質膜2の外周縁部21に沿って電解質膜2の外縁の全周を取り囲むように形成されている。電解質膜2の外周縁部21に沿う方向における各空気排出路6の長さ及び隣接する空気排出路6の間隔(ピッチ)は、空気が流通可能であり、補強材の強度が保たれれば特に限定されないが、長さは0.8mm〜1.2mmが好ましく、隣接する空気排出路6の間隔(ピッチ)は、1.8mm〜2.2mmが好ましい。また、空気排出路6の幅は、空気が流通可能であり、補強材の強度が保たれる幅であれば特に限定されないが、空気を確実に排出する観点から、1mm以下が好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。また、補強材4は、図3に示すように基材層41と、基材層41に積層された接着層42とを備えており、接着層42により互いに接着するとともに触媒層‐電解質膜積層体10に接着している。この基材層41及び接着層42は、それぞれ、単層であっても複層であってもよい。
次に、上述した補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の各構成要素の材質について説明する。
電解質膜2は、例えば、基材上に水素イオン伝導性高分子電解質を含有する溶液を塗工し、乾燥することにより形成される。水素イオン伝導性高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、より具体的には、炭化水素系イオン交換膜のC−H結合をフッ素で置換したパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できる。このような水素イオン伝導性高分子電解質の具体例としては、デュポン社製の「Nafion」(登録商標)、旭硝子(株)製の「Flemion」(登録商標)、旭化成(株)製の「Aciplex」(登録商標)、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」(登録商標)等が挙げられる。水素イオン伝導性高分子電解質含有溶液中に含まれる水素イオン伝導性高分子電解質の濃度は、通常5〜60重量%程度、好ましくは20〜40重量%程度である。なお、上記の水素イオン伝導性高分子電解質膜以外には、アニオン導電性固高分子電解質膜や液状物質含浸膜も挙げられる。アニオン伝導性電解質膜としては炭化水素系樹脂又はフッ素系樹脂等が挙げられ、具体例としては炭化水素系樹脂としては、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)A201,211,221や、トクヤマ(株)製のネオセプタ(登録商標)AM−1,AHA等が挙げられ、フッ素系樹脂としては、東ソー(株)製のトスフレックス(登録商標)IE−SF34等が挙げられる。また液状物質含浸膜としては、例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)が挙げられる。
触媒層3は、公知の白金含有の触媒層(カソード触媒及びアノード触媒)とすることができる。具体的には、触媒粒子を担持させた炭素粒子と、水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する。水素イオン伝導性高分子電解質としては、上述した電解質膜2に使用されるものと同じ材料を使用することができる。
触媒粒子としては、例えば、白金や白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、例えば、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金等が挙げられる。なお、通常は、カソード触媒層に含まれる触媒粒子は白金であり、アノード触媒層に含まれる触媒粒子は前記金属と白金との合金である。
炭素粒子は、導電性を有しているものであれば限定的ではなく、公知又は市販のものを広く使用できる。例えば、カーボンブラックや、黒鉛、活性炭等を1種又は2種以上で用いることができる。カーボンブラックの例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等を挙げることができる。炭素粒子の算術平均粒子径は通常5nm〜200nm程度、好ましくは20nm〜80nm程度である。この炭素粒子の平均粒子径は、例えば、粒子径分布測定装置LA−920:(株)堀場製作所製等により測定できる。
補強材4の基材層41の材質は、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルテンペン、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂などのプラスチック、或いは、アルミニウム、銅、亜鉛などの金属を好ましく使用することができる。なお、ポリエステルは、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を挙げることができる。また、上記のプラスチック及び金属を積層した積層体、或いは、上記のプラスチックにアルミナ、シリカ、チタニアなどの酸化物を積層した積層体を基材層41として使用することもできる。これらの中で、ポリエステル、特にポリエチレンナフタレートは、水蒸気、水、燃料ガス及び酸化剤ガスに対するガスバリア性、耐熱性、熱寸法安定性、製造コストの低減の観点から好ましい。
補強材4の接着層42の材質は、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができ、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、あるいはそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができ、その中でも不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレン又は不飽和カルボン酸で変性したポリエチレンを使用することが絶縁性もしくは耐熱性の点で好ましい。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することもできる。また、アクリル系樹脂や、脂肪族ポリアミドなどの粘着剤を使用することもできる。また、必要に応じて適宜、エポキシ系樹脂、ポリチオールなどの硬化剤を使用することもできる。また、上記接着層42に用いる材料は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。組み合わせの例としては、エポキシ樹脂と、脂肪族ポリアミドと、ポリチオールとを組み合わせて用いることもできる。
次に、上述した補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の製造方法を示す説明図である。
補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を製造するときは、図4に示すように、まず、上述した材料からなる電解質膜2を準備し、この電解質膜2の両面に触媒層形成用転写シート8を重ねて配置する(図4(a))。ここで触媒層形成用転写シート8とは、転写される触媒層3が転写用基材81に形成されたものである。この触媒層形成用転写シート8の製造方法について説明すると、まず、上述した触媒粒子を担持させた炭素粒子及び水素イオン伝導性高分子電解質を適当な溶剤に混合、分散して触媒ペーストを作製する。そして、形成される触媒層3が所望の膜厚になるように触媒ペーストを公知の方法に従い、必要に応じて離型層を介して転写用基材81上に塗工する。このとき、触媒層3が、電解質膜2よりも一回り小さい形状となるように、触媒ペーストを転写用基材81に塗工する。触媒ペーストの塗工方法としては、スクリーン印刷や、スプレーコーティング、ダイコーティング、ナイフコーティングなどの公知の塗工方法を挙げることができる。また、上記の溶剤としては、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水またはこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。転写用基材81としては、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを挙げることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。さらに転写用基材81は、高分子フィルム以外にアート紙、コート紙、軽量コート紙等の塗工紙、ノート用紙、コピー用紙などの非塗工紙であっても良い。転写用基材81の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から通常6μm〜100μm程度、好ましくは10μm〜30μm程度とするのがよい。従って、転写用基材81としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。
そして、触媒ペーストを塗工した後、所定の温度及び時間で乾燥することにより転写用基材81上に触媒層3が形成される。乾燥温度は、通常40℃〜100℃程度、好ましくは60℃〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは10分〜1時間程度である。
図4に戻って補強材付き触媒層−電解質膜積層体の製造方法について説明を続けると、上述したように作製した触媒層形成用転写シート8を触媒層3が電解質膜2に対面するように配置し(図4(a))、転写シート8の転写用基材81側から加熱プレスを施して触媒層3を電解質膜2に転写させて、転写シート8の転写用基材81を剥離する(図4(b))。作業性を考慮すると、触媒層3を電解質膜2の両面に同時に積層することが好ましいが片面ずつ触媒層3を形成することもできる。加熱プレスの加圧レベルは、転写不良を避けるために、通常0.5MPa〜20MPa程度、好ましくは1MPa〜10MPa程度がよい。また、この加圧操作の際に、転写不良を避けるために加圧面を加熱するのが好ましい。加熱温度は、電解質膜2の破損、変形等を避けるために、通常200℃以下、好ましくは150℃以下がよい。このように電解質膜2の両面に触媒層3を形成することで触媒層‐電解質膜積層体10が形成される。このとき、触媒層3は、電解質膜2よりも一回り小さいため、電解質膜2の外周縁部21は露出された状態となっている。
次に、上記のように形成された触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11に一対の補強材4、4を貼り合わせる貼合工程を行う(図4(c))。より詳細には、一対の補強材4、4の接着層42、42を対向させ、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11を一方面側及び他方面側から覆うように補強材4、4をそれぞれ配置する。そして、補強材4の開口部5から触媒層3が露出するよう、接着層42を電解質膜2の外周縁部21上に接着させると共に、外周縁部21より外側の部分において接着層42同士を接着させる。このように、一対の補強材4、4を同時に触媒層‐電解質膜積層体10に貼り付け、この状態で全体を上下から同時にプレスして密着させる。このとき、一対の補強材4、4の間に入り込んだ空気が補強材4に形成された空気排出路6から外部に排出される。なお、補強材4をプレスするときに加熱をしてもよい。また、一対の補強材4、4を貼り合わせたときに、接着層42により空気排出路6の一部が閉塞することもある。以上の方法により、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1が製造される(図4(d))。
以上のような構成を備える補強材付き触媒層−電解質膜積層体1によれば、一対の補強材4、4を貼り合わせるときに、補強材4、4の間に空気が入り込むことがあるが、この空気を、補強材4に形成された空気排出路6により外部に排出することができる。特に、電解質膜2の厚さによる段差20に起因して、補強材4、4の間に空気が入り込むことがあるが、この空気を空気排出路6により確実に排出することができる。これにより、一対の補強材4、4の間に空気が残ってしまうエア噛みを防ぐことができ、高品質の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を得ることができる。また、空気排出路6を形成しておくだけで空気を確実に排出することができるので、極めて簡易にエア噛みを防ぐことができる。
また、空気排出路6が電解質膜2の外周縁部の外側に形成されていることにより、より高品質の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を得ることができる。すなわち、空気排出路6が電解質膜2に接触する位置に形成されていると、電解質膜2の膨張又は収縮により空気排出路6に電解質膜2の材料が出入りして補強材4が歪むことがあるが、空気排出路6が電解質膜2の外周縁部の外側に形成されている場合は、空気排出路6が電解質膜2に接触していないので補強材4が歪むことがなく、高品質の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1にすることができる。また、一対の補強材4、4に形成された空気排出路6が互いに連通しない構成であると、空気排出路6が重ならないので補強材4を平坦な状態に保つことができ、複数の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を重ねたときに安定させることができる。また、補強材4を平坦な状態に保つことができるため、均一に貼り合わせることができる。
また、各空気排出路6の長さや隣接する空気排出路6の間隔(ピッチ)を適宜調整することにより、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の品質を更に高めることができる。例えば、空気排出路6を長くしたり空気排出路6の間隔(ピッチ)を狭くしたりすることにより、空気排出路6が形成されている部分を大きくして空気排出効果を高めることができる。一方、空気排出路6を短くしたり空気排出路6の間隔(ピッチ)を広くしたりすることにより、空気排出路6が形成されている部分を小さくして補強材4の強度を保つこともできる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、電解質膜2の外周縁部の全周を取り囲むように空気排出路6が形成されていたが、この構成に限定されるものではなく、電解質膜2の外周縁部の外側の一部に空気排出路6を形成してもよい。
また、上記実施形態では、触媒層‐電解質膜積層体10を形成するときに、電解質膜2に触媒層3を転写する転写法により形成していたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、電解質膜2に触媒層3を直接塗布することにより形成することもできる。
また、上記実施形態では、貼合工程において、一対の補強材4、4を同時に触媒層‐電解質膜積層体10に貼り付ける構成であったが、一対の補強材4、4を互いに貼り合わせることができればその方法は特に限定されるものではなく、例えば、先に一方の補強材4を触媒層‐電解質膜積層体10に貼り付け、その後に他方の補強材4を触媒層‐電解質膜積層体10に貼り付けることにより一対の補強材4、4を貼り合わせてもよい。また、先に貼り付ける補強材4のみに空気排出路6が形成されていてもよく、或いは、後に貼り付ける補強材4のみに空気排出路6が形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、空気排出路6が予め補強材4に形成されていたが、一対の補強材4、4を貼り合わせる貼合工程の前に、補強材4に空気排出路6を形成する排出路形成工程を備える構成であってもよい。また、一対の補強材4、4を貼り合わせた後に補強材4に空気排出路6を形成して、入り込んだ空気を排出してもよい。
また、上記実施形態では、補強材4が基材層41及び接着層42を備える構成であったが、この構成に限定されるものではなく、接着層42を省略することもできる。例えば、基材層41に用いる樹脂の融点や、軟化点が低い場合や、熱接着性樹脂を用いるような場合に、一対の補強材4、4を熱プレスして基材層41を溶融して貼り合わせることができる場合は、接着層42を省略してもよい。この場合、基材層41としては、良好な熱接着性の観点から、例えば、ポリオレフィン系樹脂などの熱接着性樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、上述の例で挙げた材料を用いることができる。
また、図5は、他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図である。図5において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。上記実施形態では、平面視において複数の空気排出路6が電解質膜2の外周縁部21に沿ってその外側に形成されている構成であったが、この構成に限定されるものではなく、本実施形態では、図5に示すように、複数の空気排出路6が電解質膜2の外周縁部21の角部22に隣接して形成されている。また、各空気排出路6は、平面視において円形に形成されている。空気排出路6の直径は、空気が流通可能な直径であれば特に限定されないが、空気を確実に排出する観点から、0.5mm以上が好ましい。このような構成によっても、一対の補強材4、4の間に入り込んだ空気を空気排出路6により外部に排出することができる。
また、空気排出路6の数は少なくとも1つ形成されていれば特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、空気排出路6の形も特に限定されるものではなく、平面視において直線形、丸形、三角形、四角形、×形、カギカッコ形状など、適宜変更可能であり、様々な形の空気排出路6を形成することができる。また、一対の補強材に形成される空気排出路6は両面で形状や大きさが異なっていてもよい。
また、上記実施形態では、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の製造方法において、一対の補強材4、4の全体を同時にプレスする構成であったが(図4(c))、この構成に限定されるものではなく、図6に示すように、ローラー50により、補強材4、4の表面に沿って一方側から他方側(図6の左側から右側)へ順にプレスする構成であってもよい。また、この場合、補強材4は、図7に示すように、一方側(図6の左側)の空気排出路6を省略し、他方側(図6の右側)の外周縁部21に隣接する空気排出路6のみを形成する構成であってもよい。このような構成によれば、ローラー50によって他方側(図6の右側)に押された空気を空気排出路6から外部に排出する貼り合せ方法の場合、空気排出路の数を少なくしても一方側から他方側に押された空気を空気排出路6から外部に排出することができるため、空気排出効果を高めることができ、補強材の強度も保つことができる。また、一対の補強材4、4の全体を同時にプレスする構成であっても、一方側の空気排出路6を省略することができる。なお、図7において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
図8は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の正面断面図であり、図9は、補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図である。図8及び9において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。図8及び図9に示すように、本実施形態の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1では、一対の補強材4、4が、触媒層3、3の表面に貼り合わされている。より詳細には、一対の補強材4、4が、電解質膜2の外縁の端面23および外周縁部21に貼り合わされるだけでなく、触媒層3の外縁の端面33および外周縁部31にも貼り合わされている。このような構成によっても、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11を一対の補強材4、4により覆うことができる。触媒層3の少なくとも一部は補強材4の開口部5から露出している。また、触媒層3の厚さにより、触媒層3の表面と、電解質膜2の表裏面(一方面及び他方面)との間に段差30が形成されており、この段差30を一対の補強材4、4が覆っている。なお、触媒層3の表面は、該触媒層3が電解質膜2と接している面と反対側の面を指す。また、空気排出路6は、電解質膜2の外周縁部の外側に形成される。さらに、空気排出路6’は、触媒層3の外周縁部31より外側であって、かつ、電解質膜2の外周縁部21に接触する位置に形成されている。また、空気排出路6は、平面視において、電解質膜2の外周縁部に沿って電解質膜2を取り囲むように形成されている。また、空気排出路6’は、平面視において、触媒層3の外周縁部31に沿って、電解質膜2の外周縁部21に接する位置に、触媒層3を取り囲むように形成されている。このような構成によっても、空気排出路6、6’により空気を外部に排出することができる。特に、触媒層3の厚さによる段差30に起因して、補強材4と触媒層‐電解質膜積層体10との間に空気が入り込むことがあるが、この空気を空気排出路6により確実に排出することができる。なお、空気排出路6、6’は、どちらか1つのみ形成されていても空気を排出する効果は得られる。補強材4が触媒層3の外周縁部31を覆う幅が狭いときは、触媒層3の外周縁部より外側の空気排出路6’を省略することもできる。
図10は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図である。図10において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。上記実施形態では、平面視において複数の空気排出路6が電解質膜2及び触媒層3の外周縁部21、31に沿って形成されている構成であったが、この構成に限定されるものではなく、図10(a)、(b)に示すように、空気排出路6、6’が電解質膜2及び触媒層3の外周縁部21、31の角部22、32に隣接して形成されている構成であってもよい。また、図10(b)に示すように、一方側(図10の左側)の空気排出路6、6’を省略し、他方側(図10の右側)の外周縁部21、31に隣接する空気排出路6、6’のみを形成する構成であってもよい。
図11は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の正面断面図であり、図12は、補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図である。図11及び12において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。上記実施形態では、触媒層3が電解質膜2よりも一回り小さく形成され、触媒層3から電解質膜2の外周縁部21が露出する構成であったが、この構成に限定されるものではなく、図11及び図12に示すように、本実施形態の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1では、触媒層3が電解質膜2の表裏面の全体に配置されており、電解質膜2の外周縁部21が触媒層3から露出しておらず、触媒層3の外縁の端面33及び電解質膜2の外縁の端面23の位置が一致している。一対の補強材4、4は、電解質膜2の外縁の端面23並びに触媒層3の外縁の端面33および外周縁部31に貼り合わされており、これにより、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11の一部が一対の補強材4、4により覆われている。また、触媒層3及び電解質膜2の厚さにより、触媒層3の表面と、一対の補強材4、4の接着面40との間に段差30aが形成されており、この段差30aを一対の補強材4、4が覆っている。また、複数の空気排出路6は、平面視において、触媒層3の外周縁部31に沿って触媒層3を取り囲むように形成されている。このような構成によっても、一対の補強材4、4の間に入り込む空気を空気排出路6により外部に排出することができる。特に、触媒層3から露出する電解質膜2の外周縁部21が無いことにより段差30aが高くなり、空気が入り込みやすくなるが、この空気を空気排出路6により確実に排出することができる。
図13は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の平面図である。図13において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。上記実施形態では、平面視において複数の空気排出路6が触媒層3の外周縁部31に沿って形成されている構成であったが、この構成に限定されるものではなく、図13(a)、(b)に示すように、空気排出路6が触媒層3の外周縁部31の角部32に隣接して形成されている構成であってもよい。また、図13(b)に示すように、一方側(図13の左側)の空気排出路6を省略し、他方側(図13の右側)の外周縁部31に隣接する空気排出路6のみを形成する構成であってもよい。
図14は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の正面断面図である。図14において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。図14に示す実施形態では、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の触媒層3の表面(電解質膜2と接触する面と反対側の面)に配置されたガス拡散層7を更に備えており、ガス拡散層7の表面に一対の補強材4、4が貼り合わされている。ガス拡散層7は、触媒層3の表面全体に配置されており、ガス拡散層7の外縁の端面73及び触媒層3の外縁の端面33の位置が一致している。一対の補強材4、4は、ガス拡散層7の外縁の端面73及び外周縁部71に貼り合わされている。また、一対の補強材4、4は、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11のうち、電解質膜2の外縁の端面23および外周縁部21、並びに触媒層3の外縁の端面33に貼り合わされており、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11の一部を覆っている。ガス拡散層7の少なくとも一部は補強材4の開口部5から露出している。また、ガス拡散層7の厚さは、通常20μm〜1000μm程度、好ましくは30μm〜400μm程度でありガス拡散層7及び触媒層3の厚さにより、ガス拡散層7の表面と、電解質膜2の表裏面(一方面及び他方面)との間に段差70が形成されており、この段差70を一対の補強材4、4が覆っている。なお、ガス拡散層7の表面は、該ガス拡散層7が触媒層3と接している面と反対側の面を指す。このような構成によっても、一対の補強材4、4の間に入り込む空気を空気排出路6により外部に排出することができる。特に、ガス拡散層7を積層したことにより段差70が高くなり、空気が入り込みやすくなるが、この空気を空気排出路6により確実に排出することができる。また、ガス拡散層7の外周縁から空気排出路6までの距離は、空気を確実に排出する観点から、10mm以内が好ましく、5mm以内が更に好ましい。なお、上記の実施形態では、ガス拡散層7の外縁の端面73および触媒層3の外縁の端面33の位置が一致している構成であったが、この構成に限定されるものではなく、ガス拡散層7の大きさは、触媒層3の大きさより一回り小さく、ガス拡散層7の外縁の端面73は、触媒層3の外縁の端面より内側に存在する構成であってもよい。
図15は、更に他の実施形態に係る補強材付き触媒層−電解質膜積層体の正面断面図である。図15において、上記の構成と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。図15に示す実施形態においても、上記図14に示す実施形態と同様に、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の触媒層3の表面(電解質膜2と接触する面と反対側の面)に配置されたガス拡散層7を更に備えている。また、本実施形態の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1では、触媒層3が電解質膜2の表裏面の全体に配置されており、電解質膜2の外周縁部21が触媒層3から露出しておらず、触媒層3の外縁の端面33及び電解質膜2の外縁の端面23の位置が一致している。一対の補強材4、4は、ガス拡散層7の外周縁部71に貼り合わされている。また、一対の補強材4、4は、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11のうち、電解質膜2の外縁の端面23および触媒層3の外縁の端面33に貼り合わされており、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11の一部を覆っている。また、ガス拡散層7、触媒層3及び電解質膜2の厚さにより、ガス拡散層7の表面と、一対の補強材4、4の接着面40との間に段差70aが形成されており、この段差70aを一対の補強材4、4が覆っている。このような構成によれば、触媒層3から露出する電解質膜2の外周縁部21が無いことにより段差70aが高くなり、一対の補強材4、4の間に空気が入り込みやすくなるが、この空気を空気排出路6により確実に排出することができる。
また、空気排出路6の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、図16(a)〜(d)に示すように、開口部5に向かって延び、開口部5に接続されている構成であってもよい。
また、図17(a)〜(d)に示すように、空気排出路6が電解質膜2の外縁に沿って直線状に延びる構成であってもよい。また、図17(e)に示すように、空気排出路6が破線状に延びる(複数の空気排出路6が互いに間隔をあけて延びる)構成であってもよい。また、直線状に延びる構成や破線状に延びる構成は、図17(a)〜(e)に示すように、電解質膜2の外縁の4辺に沿って任意に形成されていてもよい。また、図17(f)、(g)に示すように、空気排出路6が電解質膜2の各辺に対向するように形成されていてもよい。また、図17(h)に示すように、空気排出路6が電解質膜2の各辺及び各角に対向するように形成されていてもよい。また、空気排出路6の数は特に限定されるものではなく、単数であっても複数であってもよい。また、各形状の空気排出路6の位置は電解質膜2の外縁の4辺に沿って、任意に形成されていてもよい。
また、一方面側の空気排出路6と他方面側の空気排出路6との形成位置が互いにずれている構成は、特に限定されるものではなく、図18(a)、(b)に示すように、断面視において互いに連通しなければ種々の構成を採用することができる。
また、一対の補強材4、4は、触媒層‐電解質膜積層体10の外周縁部11を覆っていればよく、図19に示すように、補強材4と触媒層3との間に隙間が形成されていてもよい。
また、空気排出路6の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、図20(a)に示すように、電解質膜2の1辺に対して複数の空気排出路6が形成されていてもよい。また、図20(b)に示すように、電解質膜2の角部を囲むようにカギカッコ形状の空気排出路6が形成されていてもよい。
また、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を製造するときに、図4に示す実施形態では補強材4を電解質膜2の外周縁部21に貼り合わせていたが、この構成に限定されるものではなく、上記の各実施形態に応じて、補強材4を触媒層3の外周縁部31に貼り合わせることができる。
また、上記の各実施形態において、空気排出路6を形成する方法は特に限定されず、例えば、トムソン刃、カッター刃、ピン又はポンチ等を用いて、補強材4に切り込みや孔などをあけるようなスリット加工や穴加工により形成することができる。
また、上記実施形態では、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を製造するときに補強材4を電解質膜2又は触媒層3の表面に貼り合わせていたが、図14及び図15に示すような補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を製造するときは、触媒層3の表面にガス拡散層7を配置した後、このガス拡散層7の表面に一対の補強材4をそれぞれ貼り合わせる。
また、上記の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を用いて固体高分子形燃料電池を製造することもできる。このような固体高分子形燃料電池は、上記の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1に対して、ガス拡散層を積層し、必要に応じてガスケットを介在させてセパレータで狭持することにより製造することができる。あるいは、上記の補強材付き触媒層−電解質膜積層体1に対して、必要に応じてガスケットを介在させてセパレータで狭持することにより製造することができる。なお、上記補強材4において、ガスケットの機能を有する基材を使用している場合であれば、当該補強材4がガスケットとしての役割も果たすので、ガスケットを介在させることなく、上記補強材付き触媒層−電解質膜積層体1をセパレータで狭持することができる。また、上記補強材4において、ガスケットの役割を果たす基材を使用していない場合であれば、上記補強材付き触媒層−電解質膜積層体1の補強材4とセパレータの間にガスケットを介在させた状態で、上記補強材付き触媒層−電解質膜積層体1をセパレータで狭持することが望ましい。
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を製造した後に、補強材4に形成された空気排出路6に封止材60を充填してもよい。封止材60を充填することにより、空気排出路6が形成された補強材4を平坦にすることができ、補強材付き触媒層−電解質膜積層体1を重ねたときやガス拡散層、シール部材、ガスケット部材を積層したときに安定させることができる。また、接着性を有する封止材60を用いることにより、空気排出路6が形成された部分をガス拡散層等に対する接着部として利用することができる。封止材60の材質は、アクリル系、ウレタン系、ポリウレタン系、シリコン系、変性シリコン系、ポリサルファイド系の樹脂を使用することができ、これらも1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。また、その他に封止材60の材質は、ポリオレフィン系樹脂を挙げることができ、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、あるいはそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができ、その中でも不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレン又は不飽和カルボン酸で変性したポリエチレンを使用することが絶縁性もしくは耐熱性の点で好ましい。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することもできる。
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(1)の作製
<補強材の作製>
アクリル系粘着剤(総研化学:SK2094 固形分25%)を、MEKで希釈させ、硬化剤(総研化学:E-5XM固形分5%)を添加して十分に攪拌後、PETフィルム上(厚さ25μm、150mm×150mm)にブレードコート法で塗布、乾燥し、約20μmの接着層を有する補強材を作製した。なお、アクリル共重合体:硬化剤:MEKは質量比で100:0.25:100とした。
<触媒層‐電解質膜積層体の作製>
電解質膜(Nafion(登録商標、デュポン社製)、厚さ25μm、100mm×100mm)の両面に、50mm×50mm、層厚20μmの触媒層3を転写法により形成した。具体的には、白金触媒担持カーボン(白金担持量:45.7wt%、田中貴金属社製、TEC10E50E)2gに、1−ブタノール10g、2−ブタノール10g、フッ素樹脂(5wt%ナフィオンバインダー、デュポン社製)20g及び水6gを加え、これらを分散機にて攪拌混合することにより調製した触媒形成用ペーストを、触媒層乾燥後の白金重量が0.4mg/cm2となるようにポリエステルフィルム(東洋紡製、E5100、25μm)上に塗工して触媒層転写フィルムを作製した。そして、この触媒層転写フィルムを、触媒層が電解質膜側を向くように中心を合わせて電解質膜の両面に配置し、150℃、5.0MPa、5分の条件で熱プレスして電解質膜の両面に触媒層を形成した。
(比較例1)
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(比較例1)の作製>
上記で得られた補強材において、150mm×150mmの正方形中心部に51mm×51mmの開口部をカットして設けた。続いて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を片面ずつ貼り合せた。この方法により電解質膜上に補強材が配置される補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(比較例1)を作製した。比較例1では、空気排出路が形成されておらず、補強材が触媒層の表面に接していない。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(比較例2)の作製>
上記で得られた補強材において、150mm×150mmの正方形中心部に49mm×49mmの開口部をカットして設けた。続いて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を片面ずつ貼り合せた。この方法により触媒層上に一部補強材が配置される補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(比較例2)を作製した。比較例2では、空気排出路が形成されておらず、補強材が触媒層の表面に貼り合わされている。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例1)の作製>
比較例1と同様に作製した補強材において、さらに、150×150mmの正方形中心から101mm×101mmの部分に、カッター刃により幅0.5mm、長さ1mm、ピッチ2mmのスリット加工を施し空気排出路を設けた。
つづいて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を一方面に貼り合せ、続いてもう一方面に比較例1と同様の開口部付き(空気排出路の無い)補強材を同様の方法で貼り合せた。この方法により、電解質膜の端部から約1mm外側に空気排出路を有する補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例1)を作製した(図2参照)。実施例1では、空気排出路が一方の補強材に形成されており、補強材が触媒層の表面に接していない。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例2)の作製>
比較例2と同様に作製した補強材において、さらに、150mm×150mmの正方形中心から101mm×101mmの部分と51mm×51mmの部分に、カッター刃により幅0.5mm、長さ1mm、ピッチ2mmのスリット加工を施し空気排出路を設けた。
つづいて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を一方面に貼り合せ、続いてもう一方面に比較例1と同様の開口部付き(空気排出路の無い)補強材を同様の方法で貼り合せた。この方法により、触媒層と電解質膜の端部からそれぞれ約1mm外側に空気排出路を有する補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例2)を作製した(図9参照)。実施例2では、空気排出路が一方の補強材に形成されており、補強材が触媒層の表面に貼り合わされている。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例3)の作製>
比較例1と同様に作製した補強材において、さらに、正方形中心から103mm×103mm部の4隅と、穴の中心が合うように、トムソン刃によりΦ5mmの穴加工を施し空気排出路を設けた。
つづいて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を一方面に貼り合せ、続いてもう一方面に比較例1と同様の開口部付き(空気排出路の無い)補強材を同様の方法で貼り合せた。この方法により、電解質膜の端部から約1mm外側に空気排出路を有する補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例3)を作製した(図5参照)。実施例3では、空気排出路が一方の補強材に形成されており、補強材が触媒層の表面に接していない。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例4)の作製>
比較例2と同様に作製した補強材において、さらに、正方形中心から103mm×103mm部の4隅と穴の中心が合うように、また、53mm×53mm部の4隅と穴の中心が合うように、それぞれトムソン刃によりΦ5mmの穴加工を施し空気排出路を設けた。
つづいて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を一方面に貼り合せ、続いてもう一方面に比較例1と同様の開口部付き(空気排出路の無い)補強材を同様の方法で貼り合せた。この方法により、触媒層と電解質膜の端部からそれぞれ約1mm外側に空気排出路を有する補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例4)を作製した(図10(a)参照)。実施例4では、空気排出路が一方の補強材に形成されており、補強材が触媒層の表面に貼り合わされている。
<補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例5)の作製>
比較例1と同様に作製した補強材において、さらに、150mm×150mmの正方形中心から102mm×102mmの部分に、カッター刃により幅0.5mm,長さ1mm,ピッチ2mmのスリット加工を施し空気排出路を設けた。
つづいて、上記で作製した触媒層‐電解質膜積層体に、触媒層と開口部中心を合わせ、熱プレス100℃、0.5MPa、1分の圧力を加え、補強材を一方面に貼り合せ、続いてもう一方面に実施例1と同様の101mm×101mmの空気排出路を有する開口部付き補強材を同様の方法で貼り合せた。この方法により、一方の補強材には電解質膜の端部から約1mm外側、もう一方の補強材には電解質膜の端部から約2mm外側に空気排出路を両面に有する補強材付き触媒層‐電解質膜積層体(実施例5)を作製した(図2参照)。実施例5では、空気排出路が一対(両方)の補強材に形成されており、補強材が触媒層の表面に接していない。
<結果>
上記方法で作製した補強材付き触媒層‐電解質膜積層体に関して、比較例では電解質膜端部の補強材貼り合せ部分にエア噛みの発生がみられたが、空気排出路を設けることによってエア噛みの発生を低減あるいは解消することができた。また電解質膜端部を全体的に覆うスリット加工で空気排出路を形成した実施例1,2,5のほうが、四方のみピン穴で空気排出路を形成した実施例3,4よりもエア噛みの発生を抑えることができた。