JP6084942B2 - 水性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする、局所投与用、特に眼科用として有用な水性組成物に関する。
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
Figure 0006084942
一方天然PG類の幾つかの合成類似体は修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和結合の数と位置によって、以下の3つのタイプに分類される。
下付1:13,14−不飽和−15−OH
下付2:5,6−および13,14−ジ不飽和−15−OH
下付3:5,6−、13,14−および17,18−トリ不飽和−15−OH。
さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。
幾つかの15−ケト(すなわち、水酸基の代わりに15位にオキソ基を持つ)−PG類および13,14−ジヒドロ(すなわち、13位と14位の間が単結合である)−15−ケト−PG類は、天然PG類の代謝中に酵素の作用によって自然に産生する物質として知られている。また、15−ケト−PG化合物が医薬品として有効であることも知られている(米国特許第5073569号、米国特許5534547号、米国特許第5225439号、米国特許第5166174号、米国特許第5428062号、米国特許5380709号、米国特許第5886034号、米国特許第6265440号、米国特許第5106869号、米国特許第5221763号、米国特許5591887号、米国特許第5770759号、米国特許第5739161号、これらの文献はいずれも引用により本明細書に含まれる)。
例えば、15−ケト−PG化合物が緑内障治療薬として有用であることが知られている(米国特許第5001153号、米国特許第5151444号、これらの文献はいずれも引用により本明細書に含まれる)。緑内障治療薬などの眼科用治療薬は、その利便性を考慮して水性製剤(例えば、点眼液)として局所投与用の剤型化が望ましいが、一般にPG類は水に対する溶解性が低いため、製剤化には界面活性剤などの可溶化剤が必要となる。
非イオン性界面活性剤の1種であるポリオキシエチレンヒマシ油誘導体が可溶化剤として広く使用し得ることは知られている。また、15位に水酸基を有するPG類とポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む眼科用水性組成物は公知であり、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体の使用によって15位に水酸基を有するPG類の貯蔵安定性が改善されることも知られている(米国特許第5849792号、米国特許第6011062号)。
さらに15位の水酸基の代わりに2個のフッ素原子を有するジフルオロPGF2α誘導体とポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む眼科用水性組成物は公知であり、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体の使用によってジフルオロPGF2α誘導体の樹脂製容器への吸着を抑制することも知られている(国際公開公報WO02/22131)。
しかしながら、15位の水酸基の代わりにオキソ基を有する15−ケト−PG化合物とポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む水性組成物は知られておらず、特に可溶化剤としてポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を用いた場合の影響は全く知られていない。
一方、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤は製剤の防腐剤として汎用されている。点眼液などの水性製剤としての薬効成分が水に難溶な場合、一般的に可溶化剤が必要となるが、用いる可溶化剤が防腐剤の効力に対してどのような影響を及ぼすかを確認することは、製剤設計においても重要である。
製剤の保存効力を微生物学的に評価する試験方法として「保存効力試験」がある。これは、製剤中に、試験の対象となる菌種を強制的に接種、混合し、経時的に試験菌の消長を追跡することにより保存効果を評価するものである。
保存効力試験で使用することが指定されている微生物菌種の一つに、眼(結膜、眼瞼縁)に存在する常在菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)がある。点眼液の微生物汚染経路としては、点眼時に点眼ボトルのノズルが眼(結膜、眼瞼縁)に付着するなど、結膜嚢経由で汚染する可能性が高い。従って、保存効力試験で使用することが指定されている微生物菌種のうち、点眼液を汚染する可能性の最も高い菌種は黄色ブドウ球菌であり、点眼液における保存効力の評価する上で黄色ブドウ球菌が最も重要な菌種であるといえる。
15−ケト−PG化合物を有効成分とする水性組成物において、用いる可溶化剤が塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤の有する抗菌力、特に黄色ブドウ球菌に対する保存効力へどのような影響があるかは未だ充分検討されているとは言えず、特に可溶化剤としてポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を用いた場合の影響は全く知られていない。
本発明は、15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする局所投与用、特に眼科用に有用な水性組成物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする水性組成物において、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を配合することを特徴とする水性組成物を提供する。本発明の組成物は好適にはさらに第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤が配合されている。
15−ケト−プロスタグランジン化合物を有効成分とする水性組成物において、可溶化剤として従来から用いられている非イオン性界面活性剤であるポリソルベートに代えて同じく非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を用いることによって、15−ケト−プロスタグランジン化合物の水に対する溶解性が向上する。本発明の水性組成物へさらに防腐剤である第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤を配合した水性組成物は、点眼液等の保存効力を微生物学的に評価する上で最も重要な菌種である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して高い抗菌効力を示し、特に眼科用水性組成物として有用である。
本発明の15−ケト−PG化合物の命名に際しては前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。
前記式(A)はC−20の基本骨格のものであるが、本発明では炭素数がこれによって限定されるものではない。即ち、基本骨格を構成する炭素の番号はカルボン酸を1とし5員環に向って順に2〜7までをα鎖上の炭素に、8〜12までを5員環の炭素に、13〜20までをω鎖上に付しているが、炭素数がα鎖上で減少する場合、2位から順次番号を抹消し、α鎖上で増加する場合2位にカルボキシル基(1位)に代わる置換基がついたものとして命名する。同様に、炭素数がω鎖上で減少する場合、20位から炭素の番号を順次減じ、ω鎖上で増加する場合、21番目以後の炭素原子は置換基として命名する。また、立体配置に関しては、特にことわりのないかぎり、上記基本骨格の有する立体配置に従うものとする。
また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位に水酸基を有する化合物をいうが、本発明では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものも包含する。これらの化合物を命名する場合、9−デヒドロキシ−9−置換体あるいは11−デヒドロキシ−11−置換体の形で命名する。なお、水酸基の代わりに水素を有する場合は、単に9あるいは11−デヒドロキシ化合物と称する。
前述のように、本発明では15−ケト−PG化合物の命名はプロスタン酸骨格に基づいて行うが、化合物がプロスタグランジンと類似の部分構造を有する場合には、簡略化のため「PG」の略名を利用することがある。この場合、α鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、即ち、α鎖の骨格炭素数が9であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(2−カルボキシエチル)−15−ケト−PG化合物と命名する。同様にα鎖の骨格炭素数が11であるPG化合物は、2−デカルボキシ−2−(4−カルボキシブチル)−15−ケト−PG化合物と命名する。また、ω鎖の骨格炭素数が2個延長されたPG化合物、すなわちω鎖の骨格炭素数が10であるPG化合物は、20−エチル−15−ケト−PG化合物と命名する。なお、命名はこれをIUPAC命名法に基づいて行うことも可能である。
本発明において用いられる15−ケトPG類は15位に水酸基の代わりにオキソ基を有するあらゆるPG誘導体類であり得、13−14位に1つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ1化合物類、13−14位と5−6位に2つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ2化合物類、5−6位、13−14位、および17−18位に3つの2重結合を有する15−ケト−PGタイプ3化合物類、あるいはこれら化合物の13−14位の2重結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−15−ケト−PG化合物類などが例示される。
アナログ(置換体を含む)または誘導体の例は、上記PG化合物のα鎖末端のカルボキシル基がエステル化された化合物、生理学的に許容し得る塩、2−3位の炭素結合が2重結合あるいは5−6位の炭素結合が3重結合を有する化合物、3位、5位、6位、16位、17位、18位、19位および/または20位の炭素に置換基を有する化合物、9/11位の水酸基の代りに低級アルキル基またはヒドロキシ(低級)アルキル基を有する化合物等である。
この発明において3位、17位、18位および/または19位の炭素原子に結合する置換基としては、例えば炭素数1〜6のアルキル基があげられ、特にメチル基、エチル基があげられる。16位の炭素原子に結合する置換基としては、例えばメチル基、エチル基などの低級アルキル基、水酸基あるいは塩素、フッ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルフェノキシ等のアリールオキシ基があげられる。17位の炭素原子の置換基としては、塩素、フッ素等のハロゲン原子が挙げられる。20位の炭素原子に結合する置換基としては、C1−4アルキルのような飽和または不飽和の低級アルキル基、C1−4アルコキシのような低級アルコキシ基、C1−4アルコキシ−C1−4アルキルのような低級アルコキシアルキルを含む。5位の炭素原子の置換基としては、塩素、フッ素などのハロゲン原子を含む。6位の炭素原子の置換基としては、カルボニル基を形成するオキソ基を含む。9位および11位の炭素原子にヒドロキシ基、低級アルキルまたは低級(ヒドロキシ)アルキル置換基を有する場合、これらの基の立体配置はα,βまたはそれらの混合物であってもかまわない。
さらに、上記誘導体は、ω鎖が天然のPG類より短い化合物のω鎖末端にアルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、フェノキシ基、フェニル基等の置換基を有するものであってもよい。
特に好ましい化合物としては、13−14位の炭素結合が単結合となった13,14−ジヒドロ−15ケト−PG化合物、20位の炭素に低級アルキル基(特にエチル基)を有する化合物(15−ケト−20−エチル−PG化合物)、16位の炭素にハロゲン原子(特にフッ素原子)を有する化合物(15−ケト−16−フルオロ−PG化合物)、5員環の9位の炭素および11位の炭素にともに水酸基を有する化合物(15−ケト−PGF化合物)、5員環の9位の炭素にオキソ基および11位の炭素に水酸基を有する化合物(15−ケト−PGE化合物)、5員環の9位の炭素にオキソ基および11位の炭素に水素原子を有する化合物(11−デヒドロキシ−15−ケト−PGE化合物)、ω鎖の炭素数が天然のPG類より3個短い化合物のω鎖末端にフェニル基を有する化合物(15−ケト−18,19,20−トリノル−17−フェニル−PG化合物)などがあげられる。
本発明で使用される好ましい化合物は、下記式(I)によって示されるものである:
Figure 0006084942
[式中、L、MおよびNは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
は、非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい);そして、
Raは、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基]。
上記化合物のうち、特に好ましい化合物の一群は、式(II)で示される:
Figure 0006084942
[式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキル、低級アルカノイルオキシまたはオキソ(ただし、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい);
Aは、−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
Bは、−CH−CH−、−CH=CH−または−C≡C−;
およびXは、水素、低級アルキルまたはハロゲン;
は、非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基(脂肪族炭化水素の少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄で置換されていてもよい);
は、単結合または低級アルキレン;そして、
は、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。
上記式中、RおよびRaにおける「不飽和」の語は、主鎖および/または側鎖の炭素原子間の結合として、少なくとも1つまたはそれ以上の2重結合および/または3重結合を孤立、分離または連続して含むことを意味する。通常の命名法に従って、連続する2つの位置間の不飽和は若い方の位置番号を表示することにより示し、連続しない2つの位置間の不飽和は両方の位置番号を表示して示す。
「低〜中級脂肪族炭化水素」の語は、炭素数1〜14の直鎖または分枝鎖(ただし、側鎖は炭素数1〜3のものが好ましい)を有する炭化水素を意味し、好ましくはRの場合炭素数1〜10、特に6〜10の炭化水素であり、Raの場合炭素数1〜10、特に1〜8の炭化水素である。
「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
「低級」の語は、特にことわりのない限り炭素原子数1〜6を有する基を包含するものである。
「低級アルキル」の語は、炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
「低級アルキレン」の語は、二価の炭素原子数1〜6の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基残基、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、t−ブチレン、ペンチレンおよびヘキシレンを含む。
「低級アルコキシ」の語は、低級アルキルが上述と同意義である低級アルキル−O−を意味する。
「ヒドロキシ(低級)アルキル」の語は、少なくとも1つのヒドロキシ基で置換された上記のような低級アルキルを意味し、例えばヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチルおよび1−メチル−1−ヒドロキシエチルである。
「低級アルカノイルオキシ」の語は、式RCO−O−(ここで、RCO−は上記のような低級アルキルが酸化されて生じるアシル、例えばアセチル)で示される基を意味する。
「シクロ(低級)アルキル」の語は、炭素原子3個以上を含む上記のような低級アルキル基が閉環して生ずる環状基であり、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを含む。
「シクロ(低級)アルキルオキシ」の語は、シクロ(低級)アルキルが上述と同意義であるシクロ(低級)アルキル−O−を意味する。
「アリール」の語は、非置換でも置換されていてもよい芳香族炭化水素環基を包含し、好ましくは単環性の、例えばフェニル、トリル、キシリルが例示される。置換基としては、ハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が含まれる。
「アリールオキシ」の語は、式ArO−(ここで、Arは上記のようなアリール基)で示される基を意味する。
「複素環」としては、置換されていてもよい炭素原子および炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる1種または2種のヘテロ原子を1乃至4個、好ましくは1乃至3個含む、5乃至14員、好ましくは5乃至10員の、単環式乃至3環式、好ましくは単環式の複素環基が例示される。複素環基としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、2−ピロリニル基、ピロリジニル基、2−イミダゾリニル基、イミダゾリジニル基、2−ピラゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、インドリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、プリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズイミダゾリニル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などが例示される。置換基としてはハロゲン、ハロゲン置換低級アルキル基(ここで、ハロゲンおよび低級アルキル基は前記の意味)が例示される。
「複素環オキシ」の語は、式HcO−(ここでHcは上記のような複素環基)で示される基を意味する。
Aの「官能性誘導体」の語は、塩(好ましくは、医薬上許容し得る塩)、エーテル、エステルおよびアミド類を含む。
適当な「医薬上許容し得る塩」としては、慣用される非毒性塩を含み、無機塩基との塩、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基との塩、例えばアミン塩(例えばメチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)エタン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、プロカイン塩、カフェイン塩等)、塩基性アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、リジン塩等)、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
エーテルの例としてはアルキルエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、イソブチルエーテル、sec−ブチルエーテル、t−ブチルエーテル、ペンチルエーテル、1−シクロプロピルエチルエーテル等の低級アルキルエーテル、オクチルエーテル、ジエチルヘキシルエーテル、ラウリルエーテル、セチルエーテル等の中級または高級アルキルエーテル、オレイルエーテル、リノレニルエーテル等の不飽和エーテル、ビニルエーテル、アリルエーテル等の低級アルケニルエーテル、エチニルエーテル、プロピニルエーテル等の低級アルキニルエーテル、ヒドロキシエチルエーテル、ヒドロキシイソプロピルエーテルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエーテル、メトキシメチルエーテル、1−メトキシエチルエーテル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエーテル、および例えばフェニルエーテル、トシルエーテル、t−ブチルフェニルエーテル、サリチルエーテル、3,4−ジメトキシフェニルエーテル、ベンズアミドフェニルエーテル等の所望により置換されたアリールエーテル、ベンジルエーテル、トリチルエーテル、ベンズヒドリルエーテル等のアリール(低級)アルキルエーテルが挙げられる。
エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、1−シクロプロピルエチルエステル等の低級アルキルエステル、ビニルエステル、アリルエステル等の低級アルケニルエステル、エチニルエステル、プロピニルエステル等の低級アルキニルエステル、ヒドロキシエチルエステルのようなヒドロキシ(低級)アルキルエステル、メトキシメチルエステル、1−メトキシエチルエステル等の低級アルコキシ(低級)アルキルエステルのような脂肪族エステルおよび例えばフェニルエステル、トリルエステル、t−ブチルフェニルエステル、サリチルエステル、3,4−ジメトキシフェニルエステル、ベンズアミドフェニルエステル等の所望により置換されたアリールエステル、ベンジルエステル、トリチルエステル、ベンズヒドリルエステル等のアリール(低級)アルキルエステルが挙げられる。
Aのアミドとしては、式−CONR'R”で表される基を意味する。ここで、R'およびR”はそれぞれ水素原子、低級アルキル、アリール、アルキル−あるいはアリール−スルホニル、低級アルケニルおよび低級アルキニルであり、例えば、メチルアミド、エチルアミド、ジメチルアミド、ジエチルアミド等の低級アルキルアミド、アニリドおよびトルイジドのようなアリールアミド、メチルスルホニルアミド、エチルスルホニルアミドおよびトリルスルホニルアミド等のアルキル−もしくはアリール−スルホニルアミド等が挙げられる。
好ましいLおよびMの例は、LおよびMがともにヒドロキシであり、いわゆるPGFタイプと称される5員環構造を有するもの、LがオキソおよびMがヒドロキシであり、いわゆるPGEタイプと称される5員環構造を有するもの、LがオキソおよびMが水素であり、いわゆる11−デヒドロキシ−PGEタイプと称される5員環構造を有するものである。
好ましいAの例は、−COOH、その医薬上許容し得る塩、エステル、アミドである。
好ましいBの例は、−CH−CH−であり、いわゆる13,14−ジヒドロタイプと称される構造を有するものである。
好ましいXおよびXは、水素またはハロゲンである。XおよびXの両方が、ハロゲン、特にフッ素である化合物は、いわゆる16,16−ジフルオロタイプと称される構造を有するものである。
好ましいRは炭素数1〜10の炭化水素であり、特に好ましくは炭素数6〜10の炭化水素である。また、脂肪族炭化水素における少なくとも1つの炭素原子は任意に酸素、窒素あるいは硫黄で置換されていてもよい。
の具体例としては、例えば、次のものが挙げられる。
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−O−CH−、
−CH−CH=CH−CH−O−CH−、
−CH−C≡C−CH−O−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH=CH−、
−CH−C≡C−CH−CH−CH−CH−CH−、
−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)−CH−、
など。
好ましいRaは炭素数1〜10の炭化水素であり、特に好ましくは炭素数1〜8の炭化水素であり、最も好ましくは炭素数5〜7の炭化水素である。
上記式(I)および(II)中、環、αおよび/またはω鎖の配置は、天然のPG類の配置と同様かまたは異なっていてもよい。しかしながら、本発明は、天然の配置を有する化合物および非天然の配置を有する化合物の混合物も包含する。
本発明の典型的な化合物の例は、13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF化合物、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE化合物、11−デヒドロキシ−13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE化合物、13,14−ジヒドロ−15−ケト−18,19,20−トリノル−17−フェニル−PGF化合物およびそれらの誘導体あるいはアナログである。
本発明で用いる15−ケト−PG化合物において、11位のヒドロキシと15位のオキソ間のへミアセタール形成により、ケト−ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。
例えば、XおよびXの両方がハロゲン、特にフッ素の場合は、互変異性体として、二環式化合物が存在することが確認されている。
このような互変異性体が存在する場合、両異性体の存在比率は他の部分の構造または置換基の種類により変動し、場合によっては一方の異性体が圧倒的に存在することもあるが、本発明で用いる15−ケト−PG化合物はこれら両者を含むものとする。
さらに、本発明に用いられる15−ケト−PG化合物は、二環式化合物およびそのアナログまたは誘導体を含む。二環式化合物は下記式(III)で示される。
Figure 0006084942
[式中、Aは−CH、−CHOH、−COCHOH、−COOHまたはそれらの官能性誘導体;
’およびX’は水素、低級アルキル、またはハロゲン;
Yは
Figure 0006084942
’およびR’は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、R’およびR’は同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない。
は非置換またはハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低〜中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1個の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい;
’は、非置換またはハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシで置換された、飽和または不飽和の低〜中級脂肪族炭化水素残基;低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;シクロ(低級)アルキル基;シクロ(低級)アルキルオキシ基;アリール基;アリールオキシ基;複素環基;複素環オキシ基;
’は水素、低級アルキル、シクロ(低級)アルキル、アリールまたは複素環基]。
さらに本発明に用いられる化合物は、異性体の存在の有無にかかわりなくケト型の構造式または命名法によって表わすことがあるが、これは便宜上のものであってヘミアセタール型の化合物を排除しようとするものではない。
本発明においては、個々の互変異性体、その混合物または光学異性体、その混合物、ラセミ体、その他の立体異性体等の異性体も、同じ目的に使用することが可能である。
本発明に使用する化合物のあるものは、米国特許第5073569号、米国特許第5166174号、米国特許第5221763号、米国特許第5212324号、米国特許第5739161号、米国特許第6242485号(これらの文献はいずれも引用により本願明細書に含まれる)等に記載の方法によって製造し得る。
以下に示す13,14−ジヒドロ−15−ケト−プロスタグランジン化合物(互変異性体I)においては、その互変異性体として式(互変異性体II)で表される二環式化合物と平行状態で存在し得ることが知られている(米国特許第5166174号、米国特許第5225439号、米国特許第5284858号、米国特許第5380709号、米国特許第5428062号および第5886034号(これらの文献はいずれも引用により本願明細書に含まれる)。
Figure 0006084942
本発明の15−ケト−PG化合物は、種々の医薬品として有用であり、特に緑内障および/または高眼圧症などの眼科領域の疾患に対する処置剤として有用である。
本発明にいう「処置」には、予防、治療、症状の軽減、症状の減退、進行停止等、あらゆる管理が含まれる。
この発明の水性組成物において、有効成分となる15−ケト−PG化合物は、前記に詳述した化合物を用いることができる。
本発明において用いられる15−ケト−PG化合物の濃度は、使用する化合物、対象の種類、年齢、体重、処置されるべき症状、所望の治療効果、投与容量、処置期間等により異なり、適宜適切な濃度を選択しうるが、典型的には1日1〜4分割用量または持続形態で全身投与する場合は、1日あたり0.00001〜100mg/kgの投与量で通常十分な効果が得られる。
本発明にいう「水性組成物」の語は、15−ケト−PG化合物が水に溶解した澄明な水溶液の医療用製剤を意味し、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、吸入剤、噴霧剤、内服液剤、注射剤(静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、眼内等)などの形態で使用することができる。組成物に配合される15−ケト−PG化合物の濃度は、通常、0.0001〜10w/v%程度、好ましくは0.0001〜5w/v%程度、より好ましくは0.001〜1w/v%程度である。
本発明において用いられるポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、ヒマシ油あるいはヒマシ油に水素添加して得られる硬化ヒマシ油に、酸化エチレンを付加重合させて得られる一連の化合物を意味し、例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油35(酸化エチレンの平均付加モル数は約35)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(酸化エチレンの平均付加モル数は約40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(酸化エチレンの平均付加モル数は約60)などがあげられる。
本発明においてポリオキシエチレンヒマシ油誘導体の使用量は、0.005〜20w/v%程度、好ましくは0.01〜10w/v%程度である。
本発明において用いられる第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどがあげられ、好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
本発明において第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤の使用量は、0.001〜0.05w/v%程度、好ましくは0.001〜0.02w/v%程度である。
本発明の水性組成物においては、1種類の有効成分を単独で当該組成物に含めることもできるし、また2種類以上の有効成分を併用して含めることもできる。複数の有効成分を併用する場合には、各々の含有量は、それらの治療効果や安全性等を考慮して適宜増減することができる。
さらに、本発明の水性組成物においては、本発明の目的に反しない限り、他の薬理活性成分を適宜含有させることもできる。
さらに、本発明の水性組成物には、有効成分、可溶化剤としてのポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、防腐剤としての第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤の他に、等張化剤としての塩化ナトリウム、ポリオール類(グリセリン、マンニトールなど)、安定化剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、PH緩衝剤(ホウ酸、リン酸、酢酸など、またはそれらの塩)などの従来水性組成物に配合される添加剤が適宜配合されていてもよい。
本発明の水性組成物においては、可溶化剤としてポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を配合することによって、15−ケト−PG化合物の水に対する溶解性が向上され、可溶化剤の使用量を減らすことが可能となった。また15−ケト−PG化合物を有効成分とする水性組成物において、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を塩化べンザルコニウムなどの第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤を組み合わせて配合することにより、第四級アンモニウム型陽イオン界面活性剤の抗菌効果が増強される。本願発明の水性組成物は特に点眼液などの眼科用水性組成物を汚染する可能性の最も高い菌種である黄色ブドウ球菌に対する保存効力に優れている。
以下、本発明を実施例及び比較例により、さらに詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
実施例1
以下に示すw/v%となるように各成分を精製水に溶解し、無菌濾過して、以下の組成からなる被験液1を得た。
イソプロピルウノプロストン(13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−PGF2α
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
0.6% 塩化ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム(BAC)
この液を無菌条件下、滅菌された容器に詰め、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の菌液を無菌的に注入し、均等に混合した。容器を20〜25℃で保存し、6および24時間後に生菌数を測定した。生菌数測定は、カンテン平板混釈法を用いた。最初に混合した菌数からの経時的変化を、対数減少(Log Reduction)で表した。結果を表1に示す。
実施例2
塩化ベンザルコニウム0.015w/v%とする以外は実施例1と同様にして、以下の組成からなる被験液2を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
0.6% 塩化ナトリウム
0.015% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
実施例3
塩化ベンザルコニウム0.02w/v%とする以外は実施例1と同様にして、以下の組成からなる被験液3を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40
0.6% 塩化ナトリウム
0.02% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
実施例4
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.5w/v%とする以外は実施例1と同様にして、以下の組成からなる被験液4を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
0.6% 塩化ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
実施例5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.5w/v%とする以外は実施例2と同様にして、以下の組成からなる被験液5を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
0.6% 塩化ナトリウム
0.015% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
実施例6
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.5w/v%とする以外は実施例3と同様にして、以下の組成からなる被験液6を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
0.6% 塩化ナトリウム
0.02% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
比較例1
ポリソルベート80 1w/v%とする以外は実施例1と同様にして、以下の組成からなる被験液7を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
1% ポリソルベート80
0.6% 塩化ナトリウム
0.01% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
比較例2
ポリソルベート80 1w/v%とする以外は実施例2と同様にして、以下の組成からなる被験液8を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
1% ポリソルベート80
0.6% 塩化ナトリウム
0.015% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
比較例3
ポリソルベート80 1w/v%とする以外は実施例3と同様にして、以下の組成からなる被験液9を得た。
0.12% イソプロピルウノプロストン
1% ポリソルベート80
0.6% 塩化ナトリウム
0.02% 塩化ベンザルコニウム
この液を用いて実施例1の方法に従い、保存効力を確認した。結果を表1に示す。
Figure 0006084942
ND:検出限界以下(< 10 cfu/mL,> 4 log reduction)
以上の結果から、同じ非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80を用いた処方に比較して、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた処方においては、可溶化剤としての使用量の低減を図ることができ、さらに塩化ベンザルコニウムの量に関わらず、6時間で生菌数が検出限界以下となり優れた保存効力を示すことがわかる。
実施例7
以下に示すw/v%となるように各成分を精製水に溶解し被験液10を得た。
化合物A(15−ケト−18,19,20−トリノル−17−フェニル−PGF2α
0.2% 化合物A
0.5% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
4.6% マンニトール
0.1% EDTA
0.12% トロメタミン
0.3% ホウ酸
0.015% 塩化ベンザルコニウム
この液を一晩攪拌し、遠心分離後無色透明な上澄みから、化合物Aの濃度を液体クロマトグラフ法により測定した。
濃度測定方法(HPLC法)は以下の通り行った。
被験液10の上澄みから0.3mLを正確に量り、内標準溶液0.6mLを正確に加え、更に液体クロマトグラフ用アセトニトリルを加えて3mLとし、試料溶液とする。別に化合物Aの標準品約0.01gを精密に量り、液体クロマトグラフ用アセトニトリルを加えて溶かし、正確に50mLとした。この液2.5mLを正確に量り、内標準溶液1mLを正確に加え、液体クロマトグラフ用アセトニトリルを加えて5mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液20μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、内標準法により濃度を測定した。
<HPLC分析条件>
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)
カラム:内径約6mm、長さ約15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度:40℃
移動相:液体クロマトグラフ用アセトニトリル:液体クロマトグラフ用蒸留水混液
実施例8
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1.0w/v%とする以外は実施例7と同様にして以下の組成からなる被験液11を得た。
0.2% 化合物A
1.0% ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
4.6% マンニトール
0.1% EDTA
0.12% トロメタミン
0.3% ホウ酸
0.015% 塩化ベンザルコニウム
この液を実施例7と同様の方法で化合物Aの濃度を測定した。
比較例4
ポリソルベート80 0.5w/v%とする以外は実施例7と同様にして以下の組成からなる被験液12を得た。
0.3% 化合物A
0.5% ポリソルベート80
0.77% 塩化ナトリウム
0.1% EDTA
0.02% 塩化ベンザルコニウム
この液を実施例7と同様の方法で化合物Aの濃度を測定した。
比較例5
ポリソルベート80 1.0w/v%とする以外は実施例7と同様にして以下の組成からなる被験液13を得た。
0.3% 化合物A
1.0% ポリソルベート80
0.77% 塩化ナトリウム
0.1% EDTA
0.02% 塩化ベンザルコニウム
この液を実施例7と同様の方法で化合物Aの濃度を測定した。
結果を以下の表2に示す。
Figure 0006084942
以上の結果から、同じ非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80を用いた処方に比較して、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いた処方においては、15−ケトPG化合物の水への溶解性が向上していることがわかる。

Claims (6)

  1. 13,14−ジヒドロ−15−ケト−20−エチル−プロスタグランジンF2αイソプロピルエステル(イソプロピルウノプロストン)を有効成分とする水性組成物において、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含み、ポリソルベート80を含まないことを特徴とする水性組成物(但し、アンジオテンシンII拮抗剤を含む水性組成物、トロメタモールを含む水性組成物、およびε−アミノカプロン酸を含む水性組成物を除く)。
  2. 可溶性化剤としてポリオキシエチレンヒマシ油誘導体のみを含む請求項1に記載の水性組成物。
  3. ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体がポリオキシエチレンヒマシ油35、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60である請求項1または2に記載の水性組成物。
  4. ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体がポリオキシエチレンヒマシ油35である請求項3に記載の水性組成物。
  5. 局所投与用である請求項1〜4のいずれかに記載の水性組成物。
  6. 局所投与が眼科用である請求項5に記載の水性組成物。
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