JP6084773B2 - 消音換気装置 - Google Patents
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Description
そのような問題を改善するために従来次のような構造が開発されていた。
<1> 24時間換気給気口の外部ガラリに迷路状の吸音材を設置して消音する、後付型防音ガラリ構造。
<2> 全熱交換型の吸気ダクト内に吸音材を巻いて消音する、グラスダクトフレキシブル消音構造。
<3> 24時間換気給気口のスリーブ内に吸音材付きの装置をはめ込んで消音する、スリーブ内蔵型サイレンサー構造。
<4> 特許文献1に示すように、壁内に吸音材付きの換気装置を埋め込む構造。
<1> 図17に示すように、換気口の経路管内で生じる400〜700Hz帯域音の共鳴現象とそれに伴う大幅な遮音欠損を防止する有効な手段がなくT−4等級を確保することが困難であった。
<2> 経路内部を一様に吸音処理したとしても、換気経路内で生じる音の共鳴現象の問題を解決することはできず、特定周波数の遮音性能の低下を回避することが難しい。
<3> 内径が150Φの給気口に付属するものではT−4等級を確保するものが存在しない。
<4> 遮音性能の確保と、省スペース化を意図することによって、製品自体の寸法を小さくした製品が多い。そのために、吸音材を迷路状に貼り付けて距離減衰や吸音面積を確保し、あるいは空気流入経路の気積を縮小すること、などの処置がとられている。その結果、居室内と外気との差圧が大きくなって、玄関ドアやサッシの開閉を重くしてしまうという問題がある。
<5> 以上のように従来技術では、圧力差の解消と遮音性能の確保、という矛盾する2つの課題を解決するものが存在しない。
<6> フレキブルダクトを設置する構造では、ダクトの伸縮調整や吊り込み金具での支持、スリーブの接続など取り付けには専門の設備工事が必要となる。
<1> 換気口からの管内で生じる400〜700Hz帯域音の共鳴現象を減音装置の共鳴音吸音材で吸収するので、T−4等級の消音性能を確保でき、圧力損失や空気流量の減少などの相反する性能を大きく低下させることなく設置可能である。
<2> この消音換気装置により、これまでの技術では実現できなかった直径150mmの自然給気口においても、T−4等級の遮音性能の確保が可能となった。
<3> 高低差を設けて設置した外壁側換気口、屋内側換気口、および、両者間に設けられた消音容器によって、全周波数帯域に渡り高い遮音性能を有する。
<4> 具体的には100φ、150φ換気口について、空気の流動抵抗を高めることなく遮音性能のT−4等級を実現することができた。特に150φについてはT−4性能を有する市販品がみられないため、市場優位性がある。
本発明の消音換気装置は、吸音材を内貼りした消音容器1と、消音容器1の屋外側の開口に取り付けた減音装置2とによって構成する。
消音容器1は縦長の中空容器であり、内面には吸音材を内貼りして消音室11を形成する。
吸音材としては公知のグラスウール等の繊維吸音材、ポリエステル樹脂性のPET素材吸音材等を利用できる。
繊維吸音材の場合、高風速の通気の場合は、吸音材繊維の飛散可能性があり、生活環境を損なう場合があるが、その表面をガラスクロスやポリエチレンフィルム等の被覆材で被覆する構成を採用すれば繊維の飛散を防ぐことができる。
消音容器1はこのように内部に内張りした吸音材により、消音効果を図る装置である
消音容器1の下方には、屋外側の面に屋外側換気口12を開口する。
消音容器1の上方には、屋内側の面に、屋内側換気口13を開口する。
すなわち屋外側の騒音の入りやすい屋外側換気口12と、屋内側換気口13とは同一軸線上にはなく、上下にその位置をずらして配置してある。
その間隔が大きいと、開口部の位置の差によって音の距離減衰をより図ることができる。
なお、図の実施例では下方に屋外側換気口12を、上方に屋内側換気口13を設けた場合を説明しているが、反対に上方に屋外側換気口12を、下方に屋内側換気口13を設けることも可能である。
後述する給気筒22の屋内側すなわち消音容器1側の端には、共鳴音吸音材21を位置させる。
共鳴音吸音材21とは例えばグラスウールなど公知の吸音機能を備えた材料であり、多種類のものが開発され市販されている。
ただし給気筒22の先端を共鳴音吸音材21で閉塞するのではなく、その共鳴音吸音材21には給気筒22の内径とほぼ同一内径の筒状空洞部21aを形成する。
そして給気筒22の中心軸と、筒状空洞部21aの中心軸が一致する状態で、共鳴音吸音材21を給気筒22の屋内側、消音容器1側の先端に配置する。(図2)
このような共鳴音吸音材21の配置は後述するように、音波の粒子速度の大きい場所で振動が弱まるよう、給気筒22の屋内側すなわち消音容器1側の先端に共鳴音吸音材21を位置させて、その部分で空気の一部を誘導する構造である。
消音容器1の屋外側換気口には給気筒22を取り付ける。
給気筒22は、両端を開放した中空の鋼製、塩ビ製などの管体である。
実際には建築物の外壁を貫通した外壁貫通孔の内面にスリーブ22aを取り付け、そのスリーブ22a内に給気筒22を挿入して建築物との一体化を図る。
給気筒22はスリーブ22aの全長になくとも、一部に嵌合していればよい。
この給気筒22の屋内側すなわち消音容器1側に、前記した共鳴音吸音材21が位置していることになる。
共鳴音吸音材21の筒状空洞部21aの軸方向の長さは、給気筒22と筒状空洞部21aの合計軸方向長さに対して、18%〜70%の範囲、より好ましくは18%〜34%の範囲に配置する。
その根拠は次の通りである。
すなわち、本装置の消音効果(レベル低減量)を解析によって推定した結果は図8に示すとおりであり、共鳴音吸音材21の全長に占める割合に応じて消音効果が変化することが分かった。
この図8のように、[共鳴音吸音材21]の範囲の、[給気筒22+共鳴音吸音材21]の範囲に対する長さの比とレベルの低減量の関係は一定範囲までは線形回帰式(改善効果予測式)で近似が可能であり、これによれば、T−4〜T−5を実現するには長さ比0.18〜0.34の範囲に共鳴音吸音材21を位置させる必要があることがわかる。
また、このような給気筒22と共鳴音吸音材21による性能改善限界は長さ比約0.7までであると読み取ることができる。
どの位置であろうが共鳴音吸音材21を配置すれば、配置しないよりも吸音効果が向上することは当然といえる。
しかし本発明の構造では特に共鳴音吸音材21を給気筒22の消音容器1側の端に配置する点に特徴がある。
その配置位置を決定した理由は、波動解析に基づくものである。
すなわち、本発明の装置では波動解析(境界要素法解析)により、図16に示すように、単なる筒体である給気筒と消音容器1を組み合わせた場合には、その取り合い周辺の音波の粒子速度が高くなることに着目した結果なされたものである。
この粒子速度が高くなる部分に共鳴音吸音材21を配置することによって高速で振動する音波粒子の吸収効果を高め、初めて音波粒子の振動エネルギーを高い効率で減衰させる効果を実現することができた。
このように本発明の装置の共鳴音吸音材21は、任意の位置に配置すればよいのではなく、特に解析の結果選択した特定の位置に設けた構成を特徴の一つとするものである。
共鳴音吸音材21は柔軟で強度の小さい材料であるから、その材料によっては、筒状空洞部21aの内面の形状を長期間、維持できるか問題がある。
その場合には図3に示すように、給気筒22の屋内側、消音容器1側の先端に給気筒22と同一径の有孔筒23を設置して共鳴音吸音材21を内面から支持する。
この有孔筒23は、中空の筒体であるが、その面には多数の吸音孔23aを開口してある。
この有孔筒23の外周に共鳴音吸音材21を配置すれば、共鳴音吸音材21の内面の形状を長期間維持することができる。
吸音孔23aの開口率は大きければ大きいほど吸音効果があるが、その筒状空洞部21aの形状の維持のために、共鳴音吸音材21の材質によって開口面積を調整する。
有孔筒23を設けた場合には共鳴音吸音材21に筒状空洞部21aを形成せず、シート状の共鳴音吸音材21を有孔筒23の外周に巻き付けても同様の機能を期待することができる。
また有孔筒23は、給気筒22の一部に開口するなどして、給気筒22と一体に形成することもできる。
給気筒22の先端に、給気筒22の中心軸に平行に複数本の棒を支持材24として突設し、その支持24の周囲に共鳴音吸音材21を配置することもできる。(図4)
あるいは共鳴音吸音材21の形状を維持するために、有孔筒23に代えて、有孔筒23の孔の開口面積を拡大した状態ともいえる金網25、エキスパンドメタル、打ち抜き鋼板などの筒を利用することができる。(図5)
上記で分割して説明した消音容器1と給気筒22、および共鳴音吸音材21を、建築物に設置する場合を説明する。なおこの設置の順序は説明を分かりやすくするためであり、実際の設置順序とは必ずしも一致しない。
事前に外周壁には内外を貫通した貫通孔の内部に、筒体であるスリーブ22aを取り付けてある。
そのスリーブ22a内へ、本発明の給気筒22を挿入する。
給気筒22の屋内側に共鳴音吸音材21を一体で取り付けた場合にはそのまま給気筒22と共鳴音吸音材21を外周壁に取り付けることができる。
あるいは、まず給気筒22をスリーブ22a内に挿入後に、給気筒22の室内側に共鳴音吸音材21を位置させる。
消音容器1は前記したように内部に共鳴音吸音材21を貼り付けた中空の容器である。
その消音容器1を共鳴音吸音材21の屋内側に位置させ、消音容器1に開口した屋外側換気口12の中心と、給気筒22の中心軸、および共鳴音吸音材21の筒状空洞部21aの中心軸を一致させて取り付ける。
共鳴音吸音材21の屋内側に有孔筒23や、支持材24を位置させた構造の場合にはその外周に共鳴音吸音材21を配置する。
消音容器1の重量は、外壁から突設したブラケットを介して負担させることもでき、あるいは有孔筒23や支持材24で負担させることもできる。
消音容器1には、図7に示すように屋外側換気口12とは異なった位置に、屋内側換気口13が開口してある。
両換気口12、13の位置の差が大きければ大きいほど、消音効果は向上するが、換気効果は低下するので、消音容器1の内空容積、換気口の直径などを考慮して両者の位置を決定する。
この屋内側換気口13には通常の換気口と同様に市販の内部レジスタを取り付けることもできる。
図9は、本発明の装置における消音効果の試験例である。
この試験は、消音容器1の屋外側換気口と給気筒22を含む、屋外側から室内側全体の音響透過損失の実測結果であるが、この試験によって共鳴音による音響透過損失が低下することが分かる。
この図で明らかなように本発明の構造によれば、100φ、150φの換気口においても、遮音性能のT−4等級が実現できることが分かった。
特に150φにおいては、T−4性能を有する市販品がみられないため、大きな市場優位性を期待することができる。
従来の装置では一般に遮音のために音波の屈曲現象を起こさせる必要があり、そのために遮音機器内に迷路、凹凸状の機構を備えている。
しかし、これらの複雑な機構は、遮音性能は向上しても、住戸内外差圧を発生させる原因となる。
本発明はこれらの機構を単純化し、屋外側と屋内側の換気口の距離を延長せず、したがって内外差圧を高くすることなく、同等の消音効果を達成することができる。
図10および図11に本発明の装置による圧力損失性能を示す。
上記した本発明の構造による内外差圧を一般の普及品(新日軽(株)製,クレール)と比較する。
すると、実測値の結果、100φでは消音換気装置とT−4性能を有する一般普及品に比べ、40m3/hの場合、約1/8程度の圧力損失の低減効果があることが分かった。
以上の解析結果に基づいた装置を製作してその効果を実測した。
製造したのは図13に示すような、給気筒22と有孔筒23を一体化し、有孔筒23の外周に共鳴音吸音材21を配置した構造のものである。
給気筒22と有孔筒23の合計全長226mm、共鳴音吸音材21の長さ50mm(長さ比0.22)の装置を使用した。
この構造の消音効果の解析事例を図13に示す。
この実験はBEM(境界要素法)解析による共鳴音域での減音効果を確認するためのものである。
この図13でわかる通り、580Hz付近において、共鳴音吸音材21のない場合と比較して本発明の装置では音圧レベル相対値dBが大幅に低減しており、本発明の構成がT−4を十分に満足することが実験的に確認された。
共鳴音吸音材21料の吸音率は音波の入射角に依存し、一般に入射角が90°になると吸音率は低くなることが知られている。
ここに入射角とは、材料表面の法線方向と音波入射方向間の角度のことであり、入射角が90°とは音波が共鳴音吸音材21の表面と平行方向から入射する状態である。
解析により、共鳴時における音響粒子の振動方向は、共鳴音減音装置2の吸音面とほぼ平行であることが確認されており、この場合の入射角は90°に近くなる。
その結果、本装置の基本型は吸音効率上不利な条件にあるといえる。
図15は多孔質共鳴音吸音材21料の代表例としてグラスウール(密度32KG./m3、厚さ25mm)の音響インピーダンス値を基に入射角と吸音率との関係を示したものである。
これより、共鳴周波数に相当する400Hzと700Hzの音は、入射角が90°に近づくほど急激に吸音率が低下し、そのピークは45°〜60°近辺に現れる傾向が読み取れる。
よって、本装置についても、この角度付近にまで共鳴音吸音材21の吸音面の角度を設けることにより、減音効果の高めることが可能となる。
具体的には効率を考慮し、入射角45°を限度する。(図14)
その理由は、角度をつけるには物理的に限界があること、その角度付近に吸音率のピークが表れることからである。
この場合の装置の型を「高吸収型」と呼ぶとすると、空気流動経路を狭めないことを考慮した場合の形態は図に示す2パタンが考えられる。
これらは、T−5の性能が要求される場合や十分な吸音部長さをとれない場合より有効である。
2:減音装置
21:共鳴音吸音材
21a:筒状空洞部
22:給気筒
23:有孔筒
Claims (4)
- 消音容器と、減音装置とより構成し、
消音容器は、内面に吸音材を貼り付けた中空の容器であり、
その一面に開口してある屋外側換気口と、
消音容器の他面に開口してある屋内側換気口を備え、
屋外側換気口と、屋内側換気口は、消音容器の対応しない位置に配置してあり、
一方、減音装置は給気筒と共鳴音吸音材とより構成し、
給気筒は両端が貫通した筒体であり、
給気筒の消音容器側の端には共鳴音吸音材が位置し、
その共鳴音吸音材は給気筒の内径とほぼ同一内径の筒状空洞部を備え、
給気筒の中心軸と、筒状空洞部の中心軸が一致する状態で配置してあり、
境界要素法解析により、単なる筒体と消音容器を組み合わせただけでは音波の粒子速度が他の位置よりも高くなる取り合い部分である給気筒の消音容器側の先端に共鳴音吸音材が位置している、
消音換気装置。 - 請求項1記載の消音換気装置において、
給気筒の消音容器側の先端には有孔筒を設置し、
この有孔筒の外周に共鳴音吸音材を配置した、
消音換気装置。 - 請求項1記載の消音換気装置において、
給気筒の消音容器側の先端には棒状、金網状の支持材を設置し、
その支持材の外周に共鳴音吸音材を配置した、
消音換気装置。 - 請求項1記載の消音換気装置において、
給気筒の消音容器側に位置する共鳴音吸音材は、
給気筒と共鳴音吸音材の合計軸方向距離に対して18〜70%の範囲、より好ましくは18〜34%の範囲に配置した、
消音換気装置。
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