JP6083919B1 - 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維用サイジング剤の調製方法及び炭素繊維用サイジング剤の水性液 - Google Patents

炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維用サイジング剤の調製方法及び炭素繊維用サイジング剤の水性液 Download PDF

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Abstract

【課題】その水性液を長期間高温で保管しても優れた安定性を持続し、またそれを付着させた炭素繊維束に優れた集束性を付与すると共にそれを付着させた炭素繊維束の経時硬化を抑制し、更にそれを付着させた炭素繊維束が熱硬化性や熱可塑性のマトリックス樹脂に対し優れた接着性を示す炭素繊維用サイジング剤、かかる炭素繊維用サイジング剤の調製方法及びかかる炭素繊維用サイジング剤の水性液を提供する。【解決手段】炭素繊維用サイジング剤として、ビニルエステル樹脂、非イオン界面活性剤及び重合禁止剤を含有しており、該重合禁止剤を100〜3000ppmの割合で含有していて、且つ該ビニルエステル樹脂が酸価10〜30mg/g−KOHのものであるものを用いた。【選択図】なし

Description

本発明は、その水性液を長期間高温で保管しても優れた安定性を持続し、またそれを付着させた炭素繊維に優れた集束性を付与すると共にそれを付着させた炭素繊維束の経時硬化を抑制し、更にそれを付着させた炭素繊維束が熱硬化性や熱可塑性のマトリックス樹脂に対し優れた接着性を示す炭素繊維用サイジング剤、かかる炭素繊維用サイジング剤の調製方法及びかかる炭素繊維用サイジング剤の水性液に関する。
従来、炭素繊維用サイジング剤として、ビニルエステル樹脂及び芳香環を有するウレタン樹脂を含有するもの(例えば、特許文献1参照)、酸変性ポリオレフィン樹脂及びビニルエステル化合物を含有するもの(例えば、特許文献2参照)、発熱性官能基含有化合物及び熱可塑性樹脂を含有するもの(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。しかし、これら従来の炭素繊維用サイジング剤にはいずれも、高温時の安定性が不充分であり、またそれを付着させた炭素繊維束の経時硬化を誘発し、更にそれを付着させた炭素繊維束を複合材料に使用した場合に熱硬化性や熱可塑性のマトリックス樹脂に対して接着性が不充分という問題がある。
特開2015−175065号公報 特開2013−067915号公報 特開2011−021281号公報
本発明が解決しようとする課題は、その水性液を長期間高温で保管しても優れた安定性を持続し、またそれを付着させた炭素繊維束に優れた集束性を付与すると共にそれを付着させた炭素繊維束の経時硬化を抑制し、更にそれを付着させた炭素繊維束が熱硬化性や熱可塑性のマトリックス樹脂に対し優れた接着性を示す炭素繊維用サイジング剤、かかる炭素繊維用サイジング剤の調製方法及びかかる炭素繊維用サイジング剤の水性液を提供する処にある。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の3成分を含有して成る炭素繊維用サイジング剤が正しく好適であることを見出した。
すなわち本発明は、下記のビニルエステル樹脂、下記の非イオン界面活性剤及び重合禁止剤を含有しており、該ビニルエステル樹脂/該非イオン界面活性剤=55/45〜70/30(質量比)の割合で含有し、該重合禁止剤を100〜3000ppmの割合で含有していて、且つ該ビニルエステル樹脂が酸価10〜30mg/g−KOHのものであることを特徴とする炭素繊維用サイジング剤に係る。また本発明は、かかるサイジング剤の調整方法及びかかるサイジング剤の水性液に係る。
ビニルエステル樹脂:ビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのメタクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのメタクリレート、トリメチロールプロパンのアクリレート及びトリメチロールプロパンのメタクリレートから選ばれるもの。
非イオン界面活性剤:スチレン化フェノールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させたもの。
先ず、本発明に係る炭素繊維用サイジング剤(以下、本発明のサイジング剤という)について説明する。本発明のサイジング剤は、特定の3成分を含有し、これらの3成分のうちでビニルエステル樹脂と非イオン界面活性剤を特定の割合で含有していて、また重合禁止剤を特定の割合で含有して成る炭素繊維用サイジング剤である。
本発明のサイジング剤に供するビニルエステル樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのメタクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのメタクリレート、トリメチロールプロパンのアクリレート及びトリメチロールプロパンのメタクリレートから選ばれるものである。
本発明のサイジング剤に供するビニルエステル樹脂は、以上説明したようなビニルエステル樹脂であって、且つ酸価が10〜30mg/g−KOHであるものである。ビニルエステル樹脂の酸価は、精秤したビニルエステル樹脂をアセトン溶媒に溶解後、0.1mol/LのKOHメタノール溶液にて電位差滴定法により測定できる。
本発明のサイジング剤に供する非イオン界面活性剤は、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等のスチレン化フェノールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させたものである。エチレンオキシド/プロピレンオキシドの付加モル数やモル比率は特に制限されない。また付加形態についても特に制限はなく、ブロック付加、ランダム付加のいずれでもよい。更に製造方法にも特に制限はない。これらの非イオン界面活性剤は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。以上説明したビニルエステル樹脂と非イオン界面活性剤は、後述する実施例で挙げるように、ビニルエステル樹脂/非イオン界面活性剤=55/45〜70/30(質量比)となる割合で用いる。
本発明のサイジング剤に供する重合禁止剤としては、2,6−ビス(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、p−tert−ブチルカテコール、ニトロベンゼン、ニトロ安息香酸、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロフェノール、トリニトロベンゼン等が挙げられるが、なかでもヒドロキノン、メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(メトキノン)、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が好ましい。これらの重合禁止剤は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
本発明のサイジング剤は、以上説明したような重合禁止剤を100〜3000ppmの割合で含有して成るものであるが、200〜3000ppmの割合で含有して成るものが好ましい。
次に、本発明に係る炭素繊維用サイジング剤の調製方法(以下、本発明の調製方法という)について説明する。本発明の調製方法は、下記の工程1及び工程2を経ることを特徴とする炭素繊維用サイジング剤の調製方法である。
工程1:前記した本発明のサイジング剤におけるビニルエステル樹脂を形成することとなるモノマーを、50〜2500ppmの重合禁止剤の存在下に重合して、本発明のサイジング剤において前記したビニルエステル樹脂を合成する工程。
工程2:工程1で合成したビニルエステル樹脂に、前記した本発明のサイジング剤における非イオン界面活性剤を加え、また合計で100〜3000ppmとなるよう更に重合禁止剤を加えて、炭素繊維用サイジング剤を調製する工程。
本発明の調製方法では、ビニルエステル樹脂を合成する工程1でも重合禁止剤を加えるが、合成したビニルエステル樹脂等を用いて本発明のサイジング剤を調製する工程2でも工程1とは別に重合禁止剤を加えて、100〜3000ppmという比較的高濃度で重合禁止剤を含有する本発明のサイジング剤を調製する。
最後に、本発明に係る炭素繊維用サイジング剤の水性液(以下、本発明の水性液という)について説明する。本発明の水性液は、本発明のサイジング剤を20〜60質量%及び水を40〜80質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る炭素繊維用サイジング剤の水性液である。
本発明の水性液の調製方法は特に制限されない。本発明の水性液に供する水としては、イオン交換水、蒸留水、RO膜交換水、硬水、軟水等が挙げられるが、なかでもイオン交換水、蒸留水、RO膜交換水等が好ましい。
本発明のサイジング剤には、その水性液を長期間高温で保管しても優れた安定性を持続し、またそれを付着させた炭素繊維束に優れた集束性を付与すると共にそれを付着させた炭素繊維束の経時硬化を抑制し、更にそれを付着させた炭素繊維束が熱硬化性や熱可塑性のマトリックス樹脂に対し優れた接着性を示すという効果がある。
マトリックス樹脂との接着性の評価に用いた試験装置をその使用状態も含めて略示する平面図。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。また数平均分子量は、次のゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算で求めた。
機種:HLC−8120GPC(東ソー株式会社製液体クロマトグラフ)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel Super H3000+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準:ポリスチレン(東ソー株式会社製;TSK STANDARD POLYSTYRENE)
試験区分1(ビニルエステル樹脂の合成)
・ビニルエステル樹脂(A−1)の合成
エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名jER828)1900部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)860.6部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)1.7部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.13部及びトリエチルアミン1.2部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら100℃で30時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−1)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−1)の酸価を、0.1mol/LのKOHメタノール溶液にて電位差滴定により測定したところ、28mg/g−KOHであった(以下、酸価の測定方法は同じ)。
・ビニルエステル樹脂(A−2)の合成
エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名jER828)1900部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)860.6部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)1.1部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.13部及びトリエチルアミン1.2部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら100℃で35時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−2)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−2)の酸価は18mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(A−3)の合成
エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名jER834)2000部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)688.5部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)1.4部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.1部及びトリエチルアミン1.2部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら100℃で33時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−3)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−3)の酸価は25mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(A−4)の調整
エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名jER1001)2250部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)430部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)1.2部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.06部及びトリエチルアミン1.2部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら100℃で35時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−4)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−4)の酸価は23mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(A−5)の合成
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(三洋化成工業社製の商品名ニューポールBPE−20)925部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)723部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)0.05部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.13部及びメタンスルホン酸1.5部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら120℃で減圧下3時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−5)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−5)の酸価は23mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(A−6)の合成
トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製の商品名トリメチロールプロパン)1342部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)2410部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)0.15部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.36部、ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業社製の商品名2,6−Di−tert−butyl−p−cresol)3.9部及びメタンスルホン酸1.5部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら120℃で3時間反応させ、ビニルエステル樹脂(A−6)を合成した。このビニルエステル樹脂(A−6)の酸価は13mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(ra−1)の合成
エポキシ樹脂(三菱化学社製の商品名jER828)1900部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)860.6部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)0.06部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)0.15部、ブチルヒドロキシアニソール(東京化成工業社製の商品名2−tert−Butyl−4−methoxyphenol)0.5部及びトリエチルアミン1.2部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら100℃で40時間反応させ、ビニルエステル樹脂(ra−1)を合成した。このビニルエステル樹脂(ra−1)の酸価は2mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(ra−2)の合成
トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製の商品名トリメチロールプロパン)1342部、メタクリル酸(クラレ社製の商品名メタクリル酸)2410部、ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)0.07部、ヒドロキノンモノメチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)1.5部及びメタンスルホン酸1.5部を、5L四つ口フラスコに加えて良く撹拌しながら120℃で1時間反応させ、ビニルエステル樹脂(ra−2)を合成した。このビニルエステル樹脂(ra−2)の酸価は60mg/g−KOHであった。
・ビニルエステル樹脂(ra−3)の合成
三菱化学社製の商品名jER1004をビニルエステル樹脂(ra−3)として使用した。
試験区分2(非イオン界面活性剤の合成)
・非イオン界面活性剤(B−1)の合成
オートクレーブ反応器に窒素ガスを封入し、ここにトリスチレン化フェノール202部及び水酸化カリウム1部を加え、更に135℃でエチレンオキシド681部及びプロピレンオキシド126部を混合したものを徐々に加えてエーテル化反応を行なった後、水酸化カリウムを吸着処理し、濾過して非イオン界面活性剤(B−1)を合成した。非イオン界面活性剤(B−1)のNMR及びGPCによる分析結果は下記の通りであった。
トリスチレン化フェノール1モルに対するエチレンオキシド付加モル数:31モル
トリスチレン化フェノール1モルに対するプロピレンオキシド付加モル数:4モル
GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量:2300
非イオン界面活性剤(B−2)の合成
オートクレーブ反応器に窒素ガスを封入し、ここにトリスチレン化フェノール270部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキシド632部及びプロピレンオキシド101部を混合したものを徐々に加えてエーテル化反応を行なった後、水酸化カリウムを吸着処理し、濾過して非イオン界面活性剤(B−2)を合成した。非イオン界面活性剤(B−2)のNMR及びGPCによる分析結果は下記の通りであった。
トリスチレン化フェノール1モルに対するエチレンオキシド付加モル数:27モル
トリスチレン化フェノール1モルに対するプロピレンオキシド付加モル数:3モル
GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量:1900
非イオン界面活性剤(B−3)の合成
オートクレーブ反応器に窒素ガスを封入し、ここにトリスチレン化フェノール355部及び水酸化カリウム2部を加え、135℃でエチレンオキシド640部を徐々に加えてエーテル化反応を行なった後、水酸化カリウムを吸着処理し、濾過して非イオン界面活性剤(B−3)を合成した。非イオン界面活性剤(C−1)のNMR及びGPCによる分析結果は下記の通りであった。
トリスチレン化フェノール1モルに対するエチレンオキシド付加モル数:17モル
GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量:1000
試験区分3(重合禁止剤の種類)
下記の4種類の重合禁止剤を使用した。
C−1:ヒドロキノン(宇部興産社製の商品名ハイドロキノン)
C−2:ヒドロキノンモノエチルエーテル(昭和化学社製の商品名4−メトキシフェノール)
C−3:ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成工業社製の商品名2,6−Di−tert−butyl−p−cresol)
C−4:ブチルヒドロキシアニソール(東京化成工業社製の商品名2−tert−Butyl−4−methoxyphenol)
試験区分4(炭素繊維用サイジング剤の調製)
・実施例1
前記の試験区分1〜3におけるビニルエステル樹脂(A−1)2763.63部、非イオン界面活性剤(B−1)1840部及び重合禁止剤(C−1)2.02部をビーカーに加えて良く混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を徐々に加えて、実施例1の炭素繊維用サイジング剤の水性液を調製した。
・実施例2〜6及び比較例1〜3
前記の試験区分1〜3におけるビニルエステル樹脂、非イオン界面活性剤及び重合禁止剤を用い、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3の炭素繊維用サイジング剤の水性液を調製した。
・比較例4
前記の試験区分1〜2におけるビニルエステル樹脂及び非イオン界面活性剤を用い、実施例1と同様にして、比較例4の炭素繊維用サイジング剤の水性液を調製した。
・比較例5
前記の試験区分1〜3におけるビニルエステル樹脂(ra−1)2762.5部、非イオン界面活性剤(B−3)1699部、重合禁止剤(C−1)0.1部及び重合禁止剤(C−2)1.82部をビーカーに加えて良く混合し、撹拌を続けながら固形分濃度が40%となるようにイオン交換水を徐々に加えて、比較例5の炭素繊維用サイジング剤の水性液を調製した。以上で調製した各炭素繊維用サイジング剤の水性液の内容を表1にまとめて示した。
Figure 0006083919
表1において、
割合:固形分中の割合
添加タイミング:前はビニルエステル樹脂の合成時、後は合成したビニルエステル樹脂や非イオン界面活性剤との混合時
試験区分5(炭素繊維用サイジング剤の評価)
・安定性の評価
試験区分4で調製した炭素繊維用サイジング剤の水性液を50℃で3か月間静置した場合の外観を観察し、以下の基準で安定性を評価した。
安定性の評価基準
◎:ほとんど分離、沈殿は見られず、良好な乳化性を保っていた。
○:わずかに沈殿が見られるが、乳化性は良好であり、実用上問題ないレベルであった。
×:乳化が壊れて沈殿、分離が発生した。
・炭素繊維のサイジング
試験区分4で調製した炭素繊維用サイジング剤の水性液を各サイジング剤の目標付着量に合わせてそれぞれ更に水希釈し、処理浴に入れた。ポリアクリロニトリル系繊維から得た未サイジングの炭素繊維束(引張強度3500MPa、引張弾性率2.3×10MPa、12000フィラメント)を連続的に上記処理浴に浸漬し、各サイジング剤の付着量が炭素繊維に対して一定の付着量となるようにローラーの絞り条件を調節して、炭素繊維束に目標量のサイジング剤を付着させた。引き続き連続的に120℃のオーブンに5分間通して乾燥してボビンに巻き取り、集束性、経時硬化、接着性の評価試料とした。
・集束性の評価
前記の評価試料を、所定間隔で上下交互に合計5本を配置した直径1cmのクロム梨地ピンにほぼ90度の角度で接触させつつ通し、通す前の炭素繊維束の幅W1と通した後の炭素繊維束の幅W2を測定して、下記の数1により測定値を求め、測定値の評価基準から集束性を評価した。
Figure 0006083919
数1において、
W1:5本のクロム梨地ピンを通す前の炭素繊維束の幅(mm)
W2:5本のクロム梨地ピンを通した後の炭素繊維束の幅(mm)
集束性の評価基準
◎:測定値が4mm未満
○:測定値が4mm以上6mm未満
×:測定値が6mm以上
・経時硬化の評価
前記の評価試料を40℃で3か月間保管後、ボビンから炭素繊維束を30cmサンプリングして、これを1kgの30cm四方の鉄板で上下から鉄板の自重で押さえたときに、炭素繊維束の反りがなくなるまでにかかった秒数を測定し、測定秒数の評価基準から経時硬化を評価した。
経時硬化の評価基準
◎:測定秒数が20秒未満で反りが見られなくなった。
○:測定秒数が20秒以上30秒未満で反りが見られなくなった。
×:測定秒数が30秒以上で反りが見られなくなった。
図1はマトリックス樹脂との接着性の評価に用いた試験装置をその使用状態も含めて略示する平面図である。図1中、1はホルダー、2は炭素繊維、3a,3bは接着剤、4はマトリックス樹脂(ビニルエステル樹脂又はポリアミド樹脂)の樹脂粒、5a,5bはブレード、6はロードセル、7は治具を示している。図1において、ブレード5a,5bはホルダー1に取外し可能に取付けられるようになっており、ブレード4a,4bは治具7に連結されていて、治具7はロードセル6に接続されている。
・ビニルエステル樹脂との接着性の評価
前記の評価試料の炭素繊維から1本の炭素繊維2を用意し、図1の試験装置のホルダー1に接着剤3a,3bで固定した。ビニルエステル樹脂(昭和電工社製の商品名リポキシR804)/硬化剤(日油社製の商品名パークミルD)=100/1.5(質量比)の割合で調合したマトリックス樹脂を直径が約100μmの樹脂滴となるように炭素繊維1に付着させ、150℃の雰囲気温度下で15分間加熱して樹脂粒4とした。この樹脂粒4を炭素繊維2の両側から挟むようにして2枚のブレード5a,5bをホルダー1に取付け、ホルダー1を5mm/分の速度で炭素繊維1の軸方向に移動させたときに、ブレード5a,5bによって樹脂粒4が炭素繊維1から剥離する際に生じる最大応力Fをロードセル7にて計測した。計測した値を用いて、下記の数2により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を下記の基準により評価した。
Figure 0006083919
数2において、
F:炭素繊維から樹脂粒が剥離する際に生じる最大応力(N)
D:炭素繊維の直径(m)
L:樹脂粒の引き抜き方向の直径(m)
接着性の評価基準
◎:界面せん断強度が40以上
×:界面せん断強度が40未満
・ポリアミド樹脂との接着性の評価
ビニルエステル樹脂をポリアミド樹脂(東洋紡社製の商品名T−860)に変えたこと以外は、前記したビニルエステル樹脂との接着性の評価と同様にして、ポリアミド樹脂との接着性を評価した。以上の評価結果を表2にまとめて示した。














Figure 0006083919
表1に対応する表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、その水性液を比較的高温下で長期間保管や輸送に供した後であっても問題無く使用することができ、またそれを付着させた炭素繊維束に優れた集束性を付与し、しかもかかる炭素繊維束が経時硬化しにくく、また熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方に対し優れた接着性を付与することができる。
1 ホルダー
2 炭素繊維
3a,3b 接着剤
4 マトリックス樹脂
5a,5b ブレード
6 ロードセル
7 治具

Claims (3)

  1. 下記のビニルエステル樹脂、下記の非イオン界面活性剤及び重合禁止剤を含有しており、該ビニルエステル樹脂/該非イオン界面活性剤=55/45〜70/30(質量比)の割合で含有し、該重合禁止剤を100〜3000ppmの割合で含有していて、且つ該ビニルエステル樹脂が酸価10〜30mg/g−KOHのものであることを特徴とする炭素繊維用サイジング剤。
    ビニルエステル樹脂:ビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のアクリレート、ビスフェノールF型エポキシ化合物のメタクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドのメタクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのアクリレート、ビスフェノールFのアルキレンオキサイドのメタクリレート、トリメチロールプロパンのアクリレート及びトリメチロールプロパンのメタクリレートから選ばれるもの。
    非イオン界面活性剤:スチレン化フェノールにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを付加させたもの。
  2. 請求項1記載の炭素繊維用サイジング剤の調製方法であって、下記の工程1及び2を経ることを特徴とする炭素繊維用サイジング剤の調製方法。
    工程1:請求項1記載のビニルエステル樹脂を形成することとなるモノマーを、50〜2500ppmの重合禁止剤の存在下に重合して、請求項1記載のビニルエステル樹脂を合成する工程
    工程2:工程1で合成したビニルエステル樹脂に、請求項1記載の非イオン界面活性剤を加え、また合計で100〜3000ppmとなるよう更に重合禁止剤を加えて、炭素繊維用サイジング剤を調製する工程
  3. 請求項1記載の炭素繊維用サイジング剤を20〜60質量%及び水を40〜80質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る炭素繊維用サイジング剤の水性液。
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