以下、本発明に係る役物手段および遊技機の一実施の形態であるVアタッカー10およびパチンコ機1について、図面を参照して説明する。まず、Vアタッカー10を備えるパチンコ機1の機械的な構成について、図1を参照して説明する。なお、以下の説明において、パチンコ機1の上下方向、左右方向、および表裏方向については、特に断りがない場合、遊技盤2の盤面の向きを基準とする。すなわち、ホールに設置されたパチンコ機1で遊技を行う遊技者からパチンコ機1を見た向き(すなわち図1に図示されるパチンコ機1の向き)が基準となる。以下では便宜上、表裏方向を前後方向として、説明を行う。また、パチンコ機1に使用される装置や部品についても、パチンコ機1に組み付けられた場合の向きを基準に、上下方向、左右方向、および前後方向を規定するものとする。
図1に示すように、パチンコ機1の上段側には遊技盤2が設けられている。遊技盤2は略正方形であり、透明なガラス板を保持したガラス枠13によって前面を保護されている。遊技盤2の下段側には上皿5および下皿6が設けられている。上皿5は遊技盤2の下部に設けられ、発射機(図示外)に遊技球を供給し、且つ賞品球を受ける。上皿5の上部中央には、遊技者によって操作される操作ボタン9が配設されている。下皿6は上皿5の直下に設けられ、上皿5から溢れたり排出されたりする賞品球を受ける。下皿6の右横には、遊技球の発射を調整する発射ハンドル7が設けられている。また、ガラス枠13の上部の左右の角には、スピーカ48がそれぞれ設けられている。
遊技盤2の前面には、ガイドレール3で囲まれた略円形の遊技領域4が形成されている。遊技領域4の略中央には、LCD(液晶ディスプレイ)等を用いて構成される表示装置28が設けられている。表示装置28の表示画面には、動画、メッセージ等の様々な映像が表示され、特に、大当り判定の結果を報知するためのデモ図柄が表示される。
表示装置28の外縁を取り囲むように、各種演出を行う演出装置30が設けられている。演出装置30は、モータ等の動力を用いて装飾体31を駆動し、さらにLED等の発光体を発光させ、表示装置28およびスピーカ48等と連動しながら様々な演出を行う。また、表示装置28の直下には、期待度表示部11が設けられている。期待度表示部11は、大型の7セグメントを2つ横並びに備えており、2桁の数字、文字、記号等を表示することができる。パチンコ機1は、大当りに対する期待度を期待度表示部11で表示することができる。
期待度表示部11の下方には、第一特別図柄始動入賞口14が設けられている。表示装置28の右方には普通図柄始動ゲート12が設けられており、普通図柄始動ゲート12の下方には第二特別図柄始動電動役物15が配設されている。第二特別図柄始動電動役物15の開閉部材は下端を中心として前後方向に揺動可能であり、開閉部材が表側に揺動した状態(開放状態)でのみ、遊技球が第二特別図柄始動電動役物15に入賞できる。
第二特別図柄始動電動役物15の左斜め下方には、Vアタッカー10が設けられている。なお、Vアタッカー10の詳細な構造については後述するが、Vアタッカー10には、遊技球の通過を契機に特別な遊技状態を生起するため、遊技球が通過可能な特定領域として、特定領域スイッチ121が設けられている。パチンコ機1では、大当り遊技中に遊技球が特定領域スイッチ121の検出口122を通過することが、大当り遊技終了後に確率変動状態を生起する条件となっている。本実施形態では、Vアタッカー10は1回の大当り遊技中に1回開放される。Vアタッカー10の開放パターンには、1回の開放動作で最大13秒開放される長時間開放パターンと、最大0.3秒しか開放されない短時間開放パターンとがある。短時間開放パターンの場合には、Vアタッカー10に遊技球が入賞する確率は低い。そして、大当り遊技の種類には、長時間開放パターンが選択される長時間開放大当りと、短時間開放パターンが選択される短時間開放大当りとが設けられている。よって、長時間開放大当りとなるか否かによって、確率変動状態が生起される割合は変化する。
次に、Vアタッカー10の左斜め下方に通常アタッカー16が設けられている。通常アタッカー16は、前後方向に揺動可能な開閉部材を備える。上記同様、遊技球は、通常アタッカー16の開閉部材が開放した状態でのみ、通常アタッカー16に入賞できる。開閉部材はソレノイドによって電気的に開閉される。
遊技領域4の右斜め下方には、複数のLEDを備える図柄表示装置8が設けられている。図柄表示装置8は、図示しない、普通図柄表示部、第一特別図柄表示部、第二特別図柄表示部、普通図柄記憶数表示LED、第一特別図柄記憶数表示LED、第二特別図柄記憶数表示LED等を備える。
普通図柄表示部にはLEDが用いられている。普通図柄始動ゲート12を遊技球が通過すると普通当たり判定が行われて、判定結果が普通図柄表示部に表示される。普通図柄表示部は、点灯することで普通当たりを表示し、消灯することではずれを表示し、点滅することで普通図柄の変動中であることを示す。
第一特別図柄表示部および第二特別図柄表示部には、アルファベット、数字、記号、またはこれらの組合せからなる特別図柄が表示される。第一特別図柄始動入賞口14へ遊技球が入賞すると、第一大当り判定が行われ、その判定の結果に応じて複数の特別図柄のうちの1つが第一特別図柄表示部に表示される。第二特別図柄始動電動役物15へ遊技球が入賞すると、第二大当り判定が行われ、その判定結果は第二特別図柄表示部に表示される。
普通図柄記憶数表示LEDは、普通図柄作動保留球数を4つまで表示する。普通図柄作動保留球数とは、普通図柄始動ゲート12を通過し、且つ普通図柄表示部に普通当たり判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。第一特別図柄記憶数表示LEDは、第一特別図柄作動保留球数を4つまで表示する。第一特別図柄作動保留球数とは、第一特別図柄始動入賞口14に入賞し、且つ第一大当り判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。第二特別図柄記憶数表示LEDは、第二特別図柄作動保留球数を4つまで表示する。第二特別図柄作動保留球数とは、第二特別図柄始動電動役物15に入賞し、且つ第二大当り判定の結果がまだ表示されていない遊技球の個数である。
次に、図2〜図5を参照し、Vアタッカー10の構造の詳細について説明する。前述したように、Vアタッカー10は、ガイドレール3に囲まれる略円形の遊技領域4において、略中央に配置される表示装置28の下側から右斜め下側の位置にかけて配置される。図2,図3に示すように、Vアタッカー10は、正面視(図1参照)、左右方向に細幅に延びる略矩形状を有し、側面から見た場合(図3参照)には、同様に細幅で、前後方向に延びる、箱形状の組み立て体である。なお、図2,図3に示すVアタッカー10は、箱体の上蓋109(図4参照)を取り外した状態のものである。
Vアタッカー10の正面には、遊技球が通過可能な上下幅で、左右方向に延びる略矩形状の入賞口101が開口されている。Vアタッカー10の内部前側には、入賞口101から入賞した遊技球を収容する球収容室102が形成されている。球収容室102は、奥行き(前後方向の長さ)が遊技球の直径よりやや大きい程度の大きさで、入賞口101を開口とする細長い凹部状に形成されている。
入賞口101の前方側には、入賞口101の開口を覆い塞ぐことのできる大きさの細幅の板体で、長手側の辺を左右方向に沿わせて配置した開閉部材103が設けられている。開閉部材103は、自身の上端側を自由端とし、自身の下端側が入賞口101の下端に沿って左右方向に延びる軸104に支持されている。入賞口101は、開閉部材103の上端側を入賞口101の開口の上端に近い位置に配置した状態で閉鎖され、開閉部材103の上端側を上方から前方へ向けて倒した状態で開放される。開閉部材103は、Vアタッカー10の右側後部に設けられるVアタッカー開閉ソレノイド105の駆動によって開閉される。遊技盤2(図1参照)上を流下する遊技球は、開閉部材103の開放時に開閉部材103の背面に載ることができ、開閉部材103に誘導されて入賞口101に入賞し、球収容室102内に収容される。
球収容室102の後方側の壁面には、自身を通過する遊技球を検出するVアタッカースイッチ106が設けられている。Vアタッカースイッチ106は遊技球の通過を検出する検出口107を有し、検出口107は、球収容室102の左側壁寄りの位置に配置されている。球収容室102の底壁は、遊技球が検出口107へ向けて流れるように、傾斜が設けられている。
球収容室102の後方には、検出口107を通過した遊技球が収容される振分室108が設けられている。振分室108は左右方向に延び、上記の検出口107を遊技球の入口とし、左右の両端を遊技球の出口として構成した小部屋である。遊技球は、検出口107を、遊技盤2の盤面における表裏方向の裏側へ向けて通って、1球ずつ、振分室108内に案内される。振分室108内には、案内された遊技球を左右に振り分け、左右いずれかの出口から排出させる振分部材150が配置されている。
振分部材150は、側面視、L字形状に構成されており、上下方向を厚み方向として左右方向に延びる板状の振分板151と、振分板151の後側の側縁からその上面(板面155)に対して略垂直に立ち上がる壁面を構成する背板156を備える。振分板151の横幅は、遊技球の直径とほぼ同じか若干大きい程度の大きさに構成されている。振分板151は、前後方向に延びる軸152(図4参照)によって支持されており、振分板151の左端153と右端154とが互いに上下方向にシーソー状に揺れ動くことができる。球収容室102から排出される遊技球は、検出口107を通って振分板151の板面155上に案内される。検出口107の底面112は、振分板151の板面155よりも上方に位置しており、段差が形成されている。この段差によって、検出口107を通過した遊技球が板面155上に乗った後で、後述の背板156で跳ね返って検出口107へ戻ってしまうことが阻止される。
振分板151が、左右どちらかを下側へ向けて傾くことによって、遊技球は左端153側または右端154側へ振り分けられる。また、軸152は、右端154よりも左端153寄りの位置(図4参照)で、振分板151を支持している。言い換えると、振分板151は、左右方向において、軸152と左端153との間の長さよりも、軸152と右端154との間の長さの方が長い。
背板156は、振分板151の板面155から突出する高さが、少なくとも遊技球の半径よりは高く形成されており、本実施の形態では、遊技球の直径よりも若干大きく形成されている。背板156は、球収容室102から検出口107を通って排出される遊技球が振分板151に案内される際に、遊技球が衝突することにより、遊技球の後方へ転がる勢いを弱める。背板156の前面には、遊技球が衝突する際の衝撃を軽減する軽減部材157が貼り付けられて設けられている。軽減部材157は、例えばゴムやウレタン等のクッションシートであり、遊技球の衝突時の前方への跳ね返り(すなわち検出口107へ戻る方向へ向けた跳ね返り)を抑制する。なお、背板156の右側の端部は、振分板151の右端154と略同じ位置に延びているが、左側の端部は、振分板151の左端153よりも左側に突出している。
図3,図5に示すように、背板156の背面(後面)には、後述する出退部材170の突片171によって押圧される2つの押圧片158,159が、背板156の背面から後方に突出して設けられている。押圧片158,159は、軸152よりも背板156の上方で且つ左端寄りの位置にて、間に突片171を挿入可能な間隔を開けて左右に並んで配置されている(図7参照)。押圧片159は、押圧片158よりもさらに背板156の左端寄りの位置に配置されている。図3に示すように、押圧片158,159は、背板156の背面で、振分板151の板面155と直交する方向において下端を揃えて略平行に延びており、押圧片158は、押圧片159の略倍の長さを有する。
図2,図5に示すように、Vアタッカー10の左後部で振分部材150の後方には、可動鉄心111が左右に出退する向きに配置された振分ソレノイド110が設けられている。可動鉄心111にはつる巻きばねが取り付けられている。可動鉄心111は、振分ソレノイド110への非通電時にソレノイドから突出した状態に維持され、通電時には、ソレノイド内に後退した状態で保持される。可動鉄心111には振分ソレノイド110の駆動力を振分部材150に伝達する出退部材170が組み付けられている。出退部材170は振分ソレノイド110と、振分部材150の左方に設けられる第一排出口115(後述)との間隙において、左右に延びて配置されている。出退部材170の左側の端部が可動鉄心111に接続されており、振分ソレノイド110の駆動によって、可動鉄心111と一体に左右方向に出退する。出退部材170の右側の端部は振分部材150の背板156の後方に達するように延びている。その端部には、上記の突片171が前向きに突出して設けられており、背板156の背面から後方へ突出する押圧片158,159に係合する。
振分部材150が配置される振分室108は、上記したように、球収容室102の後方に設けられている。開閉部材103が開放されるとVアタッカー10の前方側から球収容室102内を覗き見ることができるが、振分室108内は、球収容室102内に設けられたVアタッカースイッチ106の検出口107を介してのみ、覗き見ることができる。したがって、遊技者は、振分部材150の振分板151の傾きを、Vアタッカー10の開閉部材103が開放されたときに、球収容室102内の検出口107を通して振分室108内を覗き込むことによってのみ、確認することができる。
次に、図2〜図4に示すように、振分部材150の左方には、振分室108の左側出口に接続して、遊技球をVアタッカー10の外部へ排出する第一排出口115が設けられている。図4に示すように、第一排出口115はVアタッカー10の底面に開口しており、振分室108の左側出口から放出される遊技球をVアタッカー10の底面側に案内して外部に排出する。振分部材150の振分板151が左端153を下に傾けられた場合(図6参照)、遊技球は板面155を左方に転がり、振分室108の左側出口と第一排出口115との接続部位を通過して、第一排出口115に導かれる。
図4に示すように、振分板151が右端154を下にして傾けられた場合、振分板151の左端153と、第一排出口115の入り口の上壁との間隙G1は、振分板151を傾ける前よりも小さくなる。しかし本実施の形態では、上記したように、振分板151は軸152と左端153との間の長さよりも軸152と右端154との間の長さを短くし、間隙G1が最小になった場合でも、間隙G1が遊技球の直径Dよりも大きくなるように形成されている。これにより、遊技球が板面155を右方に転がりやすくなるように振分板151が傾斜した場合でも、振分室108の左側出口と第一排出口115との接続部位には、遊技球が通過できる大きさの間隙が確保されるように構成されている。
次に、図2〜図4に示すように、振分部材150の右方には、振分室108の右側出口に接続して、遊技球をVアタッカー10の外部へ排出する第二排出口120が設けられている。図4に示すように、第二排出口120も、第一排出口115と同様にVアタッカー10の底面に開口しており、振分室108の右側出口から放出される遊技球をVアタッカー10の底面側に案内して外部に排出する。また、第二排出口120には、振分室108から放出され第二排出口120を通過する遊技球を検出する特定領域スイッチ121が設けられている。特定領域スイッチ121は遊技球の通過を検出する検出口122を有し、検出口122は、振分室108の右側出口に接続する第二排出口120の入り口に配置されている。振分部材150の振分板151が右端154を下に傾けられた場合、遊技球は板面155を右方に転がり、振分室108の右側出口から特定領域スイッチ121の検出口122を通過して、第二排出口120に案内されて、Vアタッカー10の外部に排出される。
図6に示すように、振分板151が左端153を下にして傾けられた場合、振分板151の右端154と、第二排出口120の入り口の上壁との間隙G2は、振分板151を傾ける前よりも小さくなる。本実施の形態では、振分板151が左端153を下方に傾斜することによって間隙G2が小さくなった場合、間隙G2が遊技球の直径Dよりも小さくなるように形成されている。これにより、遊技球が第一排出口115へ向けて板面155を左方に転がりやすくなるように振分板151が傾斜した場合、遊技球が特定領域スイッチ121を通過することができないように構成されている。
このような構造のVアタッカー10は、入賞口101から入賞して検出口107を通過し、振分板151上に到達した遊技球を、パチンコ機1における遊技の状態に応じて振り分けて、第一排出口115または第二排出口120から排出する。以下、振分ソレノイド110の駆動によって振分部材150を揺り動かして振分板151に傾斜を与え、遊技球が第一排出口115または第二排出口120へ向かいやすくなるようにする際の動作について、図4〜図10を参照して説明する。前述したように、振分ソレノイド110の可動鉄心111が出退して左右方向に移動すると、可動鉄心111に組み付けられた出退部材170も一体に出退し、出退部材170の右側の端部に設けられた突片171が、左右方向に移動する。突片171は、振分部材150の背板156の背面に設けられた押圧片158と押圧片159との間に配置され、両者に係合している。
図5,図7に示すように、振分ソレノイド110への通電によって可動鉄心111がソレノイド内に後退(Vアタッカー10内において右方に移動)すると、出退部材170も右方向に移動する。出退部材170に設けられた突片171が右方向に移動し、押圧片159の右側に設けられた押圧片158の側面で押圧片159側を向く内向面160を押圧する。振分部材150は軸152に支えられているので、押圧片159の内向面160が突片171に押圧されることによって、振分板151が、正面視、軸152を中心に時計回りに回転する。振分ソレノイド110への通電中は可動鉄心111がソレノイド内に後退した状態に保持されるため、出退部材170が制止され、突片171が押圧片159の内向面160に突き当たった状態に維持される。これにより、振分板151が、左端153よりも下方に右端154が位置するように傾いた状態に維持される。
パチンコ機1における遊技の状態に応じ、図2に示す開閉部材103が開放され、遊技球が入賞口101に飛び込んで入賞すると、遊技球は球収容室102内を左方へ転がって検出口107を通り、Vアタッカー10の後方へ進んで振分室108に案内される。遊技球は振分室108内で振分部材150の振分板151の板面155上に案内される。遊技球はVアタッカー10の前方から後方へ向けて転がる勢いで背板156に衝突するが、軽減部材157によって跳ね返りの勢いを弱められる。さらに、遊技球は、検出口107の底面112と板面155との間の段差に阻止されて、検出口107へ戻ることがない。
図4に示すように、振分板151が右端154を下方に傾いているため、遊技球は、振分室108内で右方に転がる。遊技球は、振分室108の右側出口から特定領域スイッチ121の検出口122を通過して、第二排出口120から外部に排出される。パチンコ機1では、遊技球の検出口107の通過と検出口122の通過とが検出され、遊技の進行に反映される。
ところで、遊技球が振分板151の板面155上に案内されたときに、検出口107側へ戻ることは阻止されるが、弾みにより、傾斜する振分板151の板面155を登り、振分室108の左側出口に達してしまうことがある。本実施の形態では、前述したように、振分板151の左端153と第一排出口115との間隙G1が最小になった場合でも遊技球の直径Dよりも大きいため、遊技球はそのまま第一排出口115を通過して、第一排出口115から排出される。パチンコ機1では、遊技球の検出口107の通過のみが検出され、遊技の進行に反映される。
次に、パチンコ機1における遊技の状態に応じ、振分部材150の振分板151の左端153を下側に傾けるため、振分ソレノイド110への通電が停止されると、可動鉄心111は、つる巻きばねによってソレノイドから突出する。図8に示すように、可動鉄心111の突出に伴って出退部材170が左方向に移動すると、突片171が、押圧片158の左側に設けられた押圧片159の側面で押圧片158側を向く内向面161を左方向に押圧する。軸152に支えられた振分部材150の振分板151は、正面視、軸152を中心に反時計回りに回転する。
前述したように、押圧片159は押圧片158と下端を揃え、押圧片158の略半分の長さに形成されている。図9に示すように、突片171は押圧片159の内向面161を押圧し、さらに、押圧片159の上側を向く天面162に乗り上げる。図10に示すように、突片171が天面162上に位置した状態で可動鉄心111の突出が停止するように、出退部材170の右方向の移動可動な範囲が設定されている。図9に示すように、押圧片159の天面162が出退部材170の突片171によって押さえられることによって、振分板151は、右端154よりも下方に左端153が位置するように傾いた状態に維持される。言い換えると、振分板151の左端153を下方にして振分板151が傾斜する場合には、突片171が押圧片159の天面162に乗り上げて押圧片159をロックする。振分板151の右端154において遊技球の重さによる下方への押圧力が、つる巻きばねの付勢力を上回り、押圧片159が突片171を押し戻した場合、振分板151の右端154が下方へ下がってしまう虞がある。本実施の形態では、上記のように、天面162に乗り上げた突片171が押圧片159をロックするため、振分板151の傾きが遊技球の挙動によって変更されてしまう虞がない。
図6に示すように、パチンコ機1における遊技の状態に応じて開放された入賞口101(図2参照)に入賞した遊技球が、検出口107を通って振分室108に導かれ、振分板151の板面155上に案内される。上記同様、勢いの弱められた遊技球が、左端153を下方に傾く振分板151上を左方に転がる。遊技球は、振分室108の左側出口から放出され、第一排出口115から外部に排出される。パチンコ機1では、遊技球の検出口107の通過が検出され、遊技の進行に反映される。
ここで、遊技球が振分板151の板面155上に案内されたときに、上記同様、検出口107側へ戻ることは阻止されるが、弾みにより、傾斜する振分板151の板面155を登り、振分室108の右側出口に達してしまうことがある。本実施の形態では、前述したように、振分板151の右端154と第二排出口120との間隙G2が小さくなった場合に遊技球の直径Dよりも小さくなるため、特定領域スイッチ121の検出口122を通過することができない。遊技球は振分板151の傾斜に従って板面155を下り、振分室108の左側出口から放出され、第一排出口115から外部に排出される。この場合もパチンコ機1では、遊技球の検出口107の通過のみが検出され、遊技の進行に反映される。
以上説明したように、本発明に係る役物手段の一例であるVアタッカー10は、遊技球が内部を転がる流路を、振分部材150に到達する直前の部分において、遊技盤2の盤面の表裏方向における裏側に転がらせる流路とし、その上で、遊技球を振分部材150で左右に振り分けて外部に排出する構成である。Vアタッカー10内において遊技球が移動する部分と、遊技球が振り分けられる部分とを表裏方向に並べて配置したことで、Vアタッカー10の上下方向や左右方向にそれらを並べた場合と比べ、Vアタッカー10の大きさを小さくすることができる。また、単にVアタッカー10の小型化を図るだけなら遊技球を球収容室102から直に振分部材150に導いて直前の流路を省くこともできるが、上記のように直前の流路を表裏方向とすることにより、Vアタッカー10を小型化しつつも球収容室102から振分部材150へ向けて遊技球が転がるスペースを確保することで、入賞口101に入賞した遊技球が振分部材150に至るまでの時間を長く確保することができる。これにより、入賞した遊技球が振分部材150に至るまでの間、遊技者が、振分部材150の動きを確認する時間を確保でき、振分部材150の挙動に注目し、遊技球の行方にわくわくすることができる。また、Vアタッカー10の小型化により、Vアタッカー10をパチンコ機1に組み付ける上で他の部材との干渉を容易に避けることができる。
振分部材150が軸152を中心に揺動した場合、軸152に対して右端154側より短い左端153側では、遊技球が振分部材150の動きに挟まれてつまりを生ずることが起きにくく、確実に、遊技球を第一排出口115から排出することができる。一方、右端154側は左端153側よりも軸152から離れているため、遊技球が振り分けられて左端153側へ向かう場合に第二通過領域(検出口122)に達するまで時間がかかる。1発の遊技球が第二通過領域を通過したら直ちに振分部材150を揺動させ、遊技球が第一排出口115側へ向かうように振り分ければ、2発目以降の遊技球が振分部材150の振り分け向きが変わる前に第二通過領域に達し、1発目に続いて第二通過領域を通過してしまうことを防止することができる。さらに、振分部材150の右端154が第二通過領域を閉鎖するので、遊技球が第二通過領域を通過することを確実に防止することができる。
遊技球が振分部材150に振り分けられて第二通過領域(検出口122)へ向かう過程において、後に続く遊技球の転がりが速いと、振分部材150の振り分け向きが変わる前に先の遊技球に追いついて、第二通過領域手前に複数の遊技球が溜まってしまう虞がある。しかし、本実施の形態では、振分部材150が遊技球を第二通過領域側へ振り分ける場合においては遊技球の第一排出口115への通過が許容される。このため、第二通過領域手前に複数の遊技球が溜まっても、さらに続く遊技球は先の遊技球によって第二通過領域側へ転がることが規制され、反対側の第一排出口115へ向かい、排出されるので、Vアタッカー10内で遊技球の大きなつまりを生じない。
また、左右方向に出退する出退部材170に対し、振分部材150の左端153と右端154は上下方向に揺動する。押圧片158,159は、振分部材150の軸152よりも左端153側に設けられており、左端153側は、軸152に対して右端154側よりも短い。ゆえに、振分部材150は、左端153側よりも右端154側を下側にして傾きやすく、その向きに傾いた状態を維持するには、出退部材170が押圧片158の内向面160を押圧した状態を維持すれば足りる。一方、左端153側を下側にして振分部材150が傾いた状態を維持するには、出退部材170は、内向面160を押圧する場合よりも大きな押圧力で、押圧片159の内向面161を押圧した状態を維持する必要がある。本実施形態では、出退部材170が、押圧片159を押圧して振分部材150を傾けた後、押圧片159の天面162と向き合う位置に移動する。振分部材150の傾きが逆側に戻ろうとする場合に押圧片159は上向きに移動しようとするが、左右方向へ出退して上下方向へは移動しない出退部材170が、押圧片159を上側から押さえるので、振分部材150が傾いた状態を確実に維持することができる。
振分部材150の傾斜が、遊技球を第一排出口115側へ案内する向きに傾斜しているか、あるいは第二通過領域(検出口122)側へ案内する向きに傾斜しているかについて、遊技者は、入賞口101を介して第一通過領域(検出口107)の奥を覗き込まないと見ることができない。あえてこのような構造とすることで、遊技者は、隠されたものを覗き込むという行為によって、より期待感を膨らませながら、振分部材150の傾斜を知ることができる。
遊技球が第一通過領域(検出口107)を通過して表裏方向に背板156に衝突した際に、軽減部材157によって衝撃が軽減されるので、遊技球が跳ね返って第一通過領域側へ戻ってしまうことを防止することができる。また、振分部材150の板面155は、第一通過領域(検出口107)の底面112よりも下方に位置するため、段差が生じている。遊技球が第一通過領域を通過して板面155上に乗った場合に、この段差によって、遊技球が第一通過領域側へ戻ってしまうことを防止することができる。
そしてパチンコ機1は、Vアタッカー10を備えることで、取り付け位置の省スペース化を図ることができる。また、Vアタッカー10を小型化できることによって、パチンコ機1内においてその他の装置を取り付けられるスペースが増えるので、パチンコ機1内のレイアウトの自由化を図ることができる。
本発明は、以上詳述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、振分部材150の背板156をなくし、代わりに、振分室108に後方側の壁面を設け、その壁面に、軽減部材157を貼り付けてもよい。この場合、出退部材170は振分室108の後方側の壁面よりも後方側に配置し、突片171の突出長さを長くするとともに、押圧片158,159を振分板151に設けて、本実施の形態と同様に突片171を係合させればよい。
また、振分部材150に対し、第一排出口115と第二排出口120の位置関係が、左右逆であってもよい。また、特定領域スイッチ121が、第一排出口115側に設けられていてもよい。また、Vアタッカースイッチ106を第一排出口115の入り口(振分室108の左側出口)に設け、これを非特定領域とし、特定領域と対に設けてもよい。
軽減部材157の例としてゴムやウレタン等のクッションシートを挙げたが、遊技球衝突時の衝撃を軽減できるものであればよい。例えば、背板156にバネ等の弾性部材を設け、さらに遊技球が衝突する板材を設けて、バネの付勢によって衝撃を軽減してもよい。
なお、本発明においては、パチンコ機1が「遊技機」に相当する。Vアタッカー10が「役物手段」に相当する。球収容室102が「収容室」に相当する。Vアタッカースイッチ106が「第一通過領域」に相当し、特定領域スイッチ121が「第二通過領域」に相当する。振分部材150が「振分手段」に相当する。左端153が「一端」に相当し、右端154が「他端」に相当する。