JP6081152B2 - テトラフェニルエテン誘導体から成る発蛍光性化合物 - Google Patents
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Description
Int. Ed., 40, 486 (2001):非特許文献1)、亜鉛−ジピコリルアミン二核錯体(特許第4138331号公報:特許文献1)などが提案されている。しかし、リン酸(リン酸イオン)を選択的に認識する発蛍光性化合物は少なく、特に、特定のリン酸構造、例えば、重要な生体物質でATPに見られる三リン酸構造を認識して蛍光を発し得るような発蛍光性化合物の例は見られない。
Hong. J. W. Y. Lam およびB.Z. Tang,
Chem. Soc. Rev., 2011, 40, 5361-5388:非特許文献2)(J. Wu, W. Liu, J. Ge, H. ZhangおよびP. Wang,
Chem. Soc. Rev., 2011, 40, 3483-3495:非特許文献3)。このAIE利用すれば、これまでにない新しい方式の蛍光分析ができるものと期待されているが、AIEを示す発蛍光性化合物の例はきわめて少ない。
かくして、本発明は、下記の一般式(I)で表されることを特徴とする発蛍光性化合物を提供するものである。
例えば、図1には、上記の式(II)に属する本発明の化合物の例として、テトラフェニルエテン構造の末端(X)にスペーサー部位を介して、前記(A)で表されるグアニジウム基が結合した発蛍光性化合物(TPE−G)の合成スキームが示されている。
以下、本発明をさらに具体的に説明するために実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
図1に示す合成スキームに従って、本発明の発蛍光性化合物TPE−Gを合成した。
<化合物2)の合成>
4,4’−dimethoxybenzophenone1(5.00g,20.6mmol)とそれに亜鉛粉末(6.66g,10.7mmol)を100mlのTHFに加え、TiCl4(7.50mL,68.4mmol)をゆっくりと滴下した。その後、15時間加熱還流した。反応溶液が室温まで冷却した後、100mlの水を加えた。溶液をクロロホルム100mlで三回抽出し、それぞれの抽出液を纏めて無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ液を減圧濃縮した。粗製物はシリカゲルカラムクロマトグラフで分離精製し、分離物をクロロホルム:ヘキサン=2:1の溶媒から再結晶した。白色結晶として化合物2を3.43グラム得た。収率74%。
1H NMR(300MHz, DMSO-d6)δ6.85(d, J=8.7Hz, 8H),6.69(d, J=8.7Hz, 8H),3.68(s, 12H)
MS(ESI)m/z 452.2(M+).
化合物2(6.01g,13.3mmol)を100mlのクロロホルムに溶解し、寒剤を入れた氷浴で冷却しながら、2MBBr3の塩化メチレン溶液(37.2mL,74.4mmol)をゆっくりと滴下した。氷浴を外し、室温で12時間撹拌した後、水50mlを加えた。生じた沈殿物をろ取し、アセトン:水=1:1で再結晶した。白色結晶として化合物3を5.26グラム得た。収率92%。
1H NMR(300MHz, DMSO-d6)δ9.24(s, 4H),6.70(d, J=8.6Hz, 8H),6.48(d, J=8.6Hz, 8H)
3−bromopropylamine hydrobromide4(5.00g,22.8mmol)を乾燥した100mlのジクロロメタンに溶解し、それにBoc2O(5.48g,25.1mmol)とtriethylamine(3.5mL,25.1mmol)を加えた。反応混合物は室温で14時間撹拌した。その後、100mlのジクロロメタンを加え、1M塩酸水溶液、水、食塩水の順に洗浄した。有機相は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮した。粗製物はシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、無色オイル状物として化合物5を5.17グラム得た。収率95%。
1H NMR(CDCl3, 300MHz)δ4.65(br s, 1H),3.45(t, J=6.5Hz, 2H),3.28(q, J=6.5Hz, 2H),2.05(quint, J=6.5Hz, 2H),1.45(s, 9H).
化合物3(1.00g,2.33mmol)、炭酸カリウム(2.60g,18.8mmol)および化合物5(2.5g,10.5mmol)を20mlの乾燥DMFに加え、70℃で10時間加熱した。室温まで反応液の温度を戻した後、水50mlを加えた。生じた沈殿物をろ取し水で洗浄した。得られた固体を100mlのジクロロメタンに溶解し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ液を減圧濃縮した。粗製物はシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物6を1.34グラム得た。収率56%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ6.91(d, J=8.8Hz, 8H),6.62(d, J=8.8Hz, 8H),4.78(br s, 4H),3.95(t, J=6.1Hz, 8H),3.30(q, J=6.1Hz, 8H),1.94(quint, J=6.1Hz,
8H),1.44(s, 36H);
化合物6(825mg,0.805mmol)を5mlのジクロロメタンに溶解し、TFA(5mL,65.3mmol)を加え、室温で14時間撹拌した。その後、反応液をエーテルに空け、生じた白色沈殿をろ取し、エーテルで洗浄後乾燥した。白色固体として化合物7を660mg得た。収率79%。
1H NMR(300MHz, DMSO-d6)δ7.98(s, 12H),6.85(d, J=8.8 Hz, 8H),6.70(d, J=8.8Hz, 8H),3.97(t, J=5.8Hz, 8H),2.95(t, J=7.4Hz, 8H),1.97(quint, J=6.6Hz,
8H)
化合物7(600mg,0.56mmol)を15mlのジクロロメタンに懸濁し、Et3N(0.6mL,4.33mmol)と1−H−pyrazole−1−(N,N’−bis(tert−butyloxycarbonyl))carboxamidine(1.21g,3.89mmol)を加えた。反応混合溶液を室温で72時間撹拌し、溶媒を減圧溜去した。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物8を523mg得た。収率59%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ11.5(s, 4H),8.66(t, J=4.7Hz, 4H),6.91(d, J=8.6Hz, 8H),6.69(d, J=8.6Hz, 8H),3.98(t, J=5.3Hz, 8H),3.62(q, J=5.8Hz, 8H),2.03(quint, J=5.8Hz, 8H),1.50(s, 36H),1.49(s, 36H);
化合物8(492mg,0.31mmol)を5mlのジクロロメタンに溶解し、TFA(5mL,65.3mmol)を加え、室温で13時間撹拌した。反応混合溶液をエーテルに空け、生じた沈殿物をろ取し、エーテル洗浄した後、乾燥した。粗製物はTFAのジクロロメタン溶液に溶解し、エーテルに空け、生じた沈殿物をろ取し乾燥した。白色固体としてTPEを153mg得た。収率40%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ7.87(t, J=5.4 Hz, 4H),7.29(br-s, 16H),6.85(d, J=8.7Hz, 8H),6.69(d, J=8.7Hz, 8H),3.93(t, J=5.9Hz, 8H),3.24(q, J=6.4Hz, 8H),1.89(quint, J=6.4Hz, 8H);
MS(ESI)m/z 1135.2([M-CF3COO-]+)
Calc. for C50H60F12N12O12(TPE):C, 48.08; H, 4.84; N, 13.46. Found: C, 47.78; H, 4.86; N, 13.22.
図2に示す合成スキームに従って、本発明の発蛍光性化合物TPE−bipyを合成した。
<化合物11)の合成>
2−クロロ−5−メトキシカルボニルピリジン(1.3g、7.6mmol)をm−キシレン20mlに溶解し、PdCl2(PPh3)2(0.27g、0.04mmol)と2−トリメチルスズピリジン(2.1g、8.6mmol)を加え、20時間加熱還流した。放冷後エーテルで希釈し、中性アルミナを通してろ過した。ろ液を数回水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後シリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として1.13gの化合物10を得た。収率70%。
次いで、得られた化合物10(1.13g、5.3mmol)をエタノール/水1:1 20mlに懸濁し、KOH(0.35g、6.3mmol)を水2mlに溶解したものを添加し、室温で3時間撹拌した。その後、濃縮してエタノールを留去し、1mol/L塩酸を中性になるまで添加した。得られた懸濁液をクロロホルムで三回抽出し、抽出液を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を留去した。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、淡黄色固体として化合物11を0.8g得た。収率75%。
化合物7(600mg、0.56mmol)を塩化メチレン(15ml)に懸濁し、化合物11(0.5g、2.5mmol)、トリエチルアミン(0.6ml、4.33mmol)、DMAP(0.1ml)を加えた。溶液を氷冷下、WSC(1.7g、8.9mmol)を加え24時間撹拌した。溶媒を濃縮乾固し、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、TPE−Bipy0.5g(収率36%)を得た。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ9.22(s, 4H),8.54-8.88(m, 8H),8.15-8.40(m, 8H),7.67-7.84(m, 4H),7.15-7.33(m, 4H),6.90(d, J=8.7Hz, 8H),6.72(d, J=8.7Hz, 8H),3.65(t, J=6.4Hz, 8H),3.06(q, J=6.4Hz, 8H),1.77(quint, J=6.4Hz, 8H);
MS(ESI)m/z 1353.4.(M+1)
Calc. for C82H72N12O4(TPE-bipy):C, 72.76; H, 5.36; N, 12.41. Found: C, 72.55; H, 5.48; N, 12.20.
図3に示す合成スキームに従って、本発明の発蛍光性化合物TPE−Znを合成した。
<化合物12)の合成>
化合物7(1.05g、1.68mmol)をアセトニトリル(100ml)に懸濁し、2−クロロメチルピリジン塩酸塩(2.21g、13.5mmol)を加えた。炭酸カリウム(4.65g、33.6mmol)とヨウ化カリウム(2.23g、13.4mmol)を加え、22時間加熱還流した。放冷し沈殿物をろ別後、溶液を濃縮乾固し、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、淡黄色固体として化合物12を1.33gを得た。収率58%。
1H NMR
(300 MHz, DMSO-d6) δ8.43(m, 8H), 7.59(m, 8H), 7.43(m, 8H), 7.16(m, 8H), 6.86(d, J=8.8
Hz, 8H), 6.59(d, J=8.8 Hz, 8H), 3.87(t, J=6.2 Hz, 8H), 3.72(s, 16H), 2.55(t,
J=6.2 Hz, 8H), 1.85(quint, J=6.2 Hz, 8H);
13C
NMR(75 MHz, DMSO-d6) δ159.5, 156.9, 148.9, 138.3, 136.6, 136.4, 132.1, 122.7, 122.2,
113.8, 65.1, 59.9, 50.0, 26.7.
化合物12(50mg、0.0370mmol)をメタノール5mlに溶解し、硝酸亜鉛Zn(NO3)2−6H2O(44mg、0.148mmol)を水(1ml)に溶解した溶液を添加した。得られた溶液を室温で30分撹拌後、溶媒を蒸発させて乾燥し、次いで水(3ml)を添加した。得られた水溶液をろ過し、凍結乾燥して、淡黄色固体としてTPE−Znを得た(収率:定量)。
元素分析C86H88N20O28Zn4(TPE-Zn):計算値:C, 48.92; H, 4.20; N, 13.27。実測値:C, 49.03; H, 4.11; N, 13.00。
図4に示す合成スキームに従って、本発明の発蛍光性化合物TPE−Bを合成した。
<化合物13)の合成>
化合物7(600mg、0.56mmol)を塩化メチレン(15ml)に懸濁し、トリエチルアミン(0.6ml、4.33mmol)、DMAP(0.1ml)を加えた。塩化メチレン(3ml)に溶解した3−クロロカルボニルピリジン塩酸塩(0.5g、2.8mmol)を5℃以下で滴下した。その後室温で3時間撹拌した。溶媒を濃縮乾固し、得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色の化合物13を0.37g得た。収率63%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ9.05(s, 4H),8.10-8.85(m, 12H),6.86(d, J=8.7Hz, 8H),6.73(d, J=8.7Hz, 8H),3.70(t, J=5.9Hz, 8H),3.11(q, J=6.4Hz, 8H),1.82(quint, J=6.4Hz, 8H);
MS (ESI) m/z 1045.2(M+1)
Calc. for C82H72N12O4
(13): C, 71.25; H, 5.79; N, 10.72. Found: C, 71.04; H, 5.99; N, 10.54.
1H NMR(300MHz, CD3OD)δ9.44(s, 4H),9.05-9.22(m, 4H),8.35-8.90(m, 8H),7.37-7.86(m, 20H),6.80(d, J=8.7Hz, 8H),6.65(d, J=8.7Hz, 8H),4.65(d, J=6.8Hz, 16H),3.66(t, J=5.9Hz, 8H),3.04(q, J=6.4Hz, 8H),2.35(d, J=6.8Hz, 8H),1.80(quint, J=6.4Hz, 8H);
Calc. for C82H72N12O4
(TPE-B): C, 59.33; H, 10.42; N, 10.72. Found: C, 59.08; H, 10.66; N, 10.36.
図5に示す合成スキームに従って、本発明の発蛍光性化合物hetero−TPEを合成した。
<化合物15)の合成>
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン(5g、23.4mmol)をDMF(100ml)に溶解し、炭酸カリウム(10g、72.5mmol)を加えた。N−(3−ブロモプロピル)−N−ブトキシカルボニルアミド(7.8g、32.8mmol)を添加し、室温で24時間撹拌した。沈殿物をろ別し、濾液を濃縮乾固したのち、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製した。白色固体として化合物15を8.9g得た。収率72%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ8.20(s, 2H),7.13(d, J=8.6Hz, 4H),6.92(d, J=8.6Hz, 4H),4.08(t, J=6.2Hz, 4H),3.44(q, J=6.2Hz, 4H),2.04(quint, J=6.2Hz,
4H),1.42(s, 18H)
化合物15(8.9g、16.9mmol)を塩化メチレン(100ml)に溶解し、氷冷下トリフルオロ酢酸(7.7g、67.5mmol)を滴下した。その後室温で3時間撹拌したのち、溶媒を濃縮乾固した。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物16を7.0g得た。収率74%。
化合物16(7g、12.6mmol)を塩化メチレン(150ml)に懸濁し、トリエチルアミン(4.9g、49mmol)と1−H−ピラゾール−1−(N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル))カルボキサミジン(11.6g、37.5mmol)を加えた。室温で72時間撹拌したのち、溶媒を濃縮乾固した。得られた粗製をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物17を5.3g得た。収率52%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ10.2(s, 2H),9.04(t, J=4.7Hz, 2H),7.22(d, J=8.6Hz, 4H),7.05(d, J=8.6Hz, 4H),4.03(t, J=5.3Hz, 4H),3.89(q, J=5.8Hz, 4H),2.03(quint, J=5.8Hz, 4H),1.49(s, 36H)
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン(5g、23.4mmol)をDMF(100ml)に溶解し、炭酸カリウム(10g、72.5mmol)を加えた。N−(3−ブロモプロピル)フタルイミド(15.0g、56.2mmol)を添加し、70℃で24時間撹拌した。沈殿物をろ別後、ろ液を濃縮乾固した。得られた粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、淡黄色固体として化合物18を7.3g得た。収率53%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ8.13(d, J=7.8, 4H),7.71(d, J=7.7,
4H),7.27(d, J=8.6Hz, 4H),7.06(d, J=8.6Hz, 4H),4.11(t, J=6.2Hz, 4H),3.85(q, J=6.2Hz, 4H),2.13(quint, J=6.2Hz, 4H)
化合物17(5.3g、6.5mmol)と化合物18(3.83g、6.5mmol)をTHF(100ml)に溶解し、亜鉛粉末(0.42g、6.5mmol)を加え、4塩化チタン(4.7ml、42.9mmol)を滴下したのち24時間加熱還流した。放冷後、100mlの水を徐々に加え過剰の4塩化チタンを加水分解し、水層をクロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液を濃縮乾固した。粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物19を1.1g得た。収率12.2%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ9.74(s, 2H),9.09(t, J=4.7Hz, 2H),8.08(d, J=7.8, 4H),7.88(d, J=7.7, 4H),7.28-7.35(m, 4H),7.02-7.10(m, 4H),4.02-4.10(m, 8H),3.63-3.90(m, 8H),2.00-2.13(m, 8H),1.51(s, 36H)
化合物1(2g、1.46mmol)をエタノール(50ml)に溶解し、ヒドラジン1水和物(0.36g、7.2mmol)を入れ、5時間加熱還流した。放冷後、析出したフタルヒドラジドをろ別し、ろ液を濃縮乾固した。得られた粗製をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、白色固体として化合物20を1.0g得た。収率61.7%。
1H NMR(300MHz, CD3OD)δ8.43(s-br, 2H),7.07(d, J=8.6Hz, 4H),6.89(d, J=8.6Hz, 4H),3.87-4.11(m, 8H),3.63-3.90(m, 8H),2.00-2.13(m, 8H),1.49(s, 36H)
化合物20(1g、0.9mmol)をアセトニトリル(20ml)に溶解し、炭酸カリウム(3g、21.8mmol)とヨウ化カリウム(2g、12.0mmol)及び2−クロロメチルピリジン塩酸塩(0.7g、4.2mmol)を加え、24時間加熱還流した。放冷後沈殿物をろ別し、ろ液を濃縮乾固した。得られた粗製をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、淡黄色固体として化合物21を0.85g得た。収率64%。
1H NMR(300MHz, CDCl3)δ11.5(s, 4H),8.50-8.70(m, 8H),7.06-7.88(m, 8H),6.75-6.93(m, 8H),6.56-6.71(m, 8H),3.70-3.99(m, 8H),3.24-3.60(m, 8H),1.88-2.06(m, 8H),1.48(s, 36H)
化合物21(0.85g、0.58mmol)を塩化メチレン(30ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(5ml、65.3mmol)を加え、室温で18時間撹拌した。反応後、エーテルに溶液を添加し、生じた沈殿をろ別したのち少量のエーテルでろ洗後減圧乾燥した。粗製物を少量の塩化メチレンに溶解し、その溶液をエーテルに添加し再沈してろ取、エーテルで洗浄、乾燥し、白色固体として化合物22を249mg得た。収率40%。
1H NMR(300 MHz, CDCl3)δ11.5(s, 4H),8.50-8.70(m, 8H),7.06-7.88(m, 12H),6.75-6.93(m, 8H),6.56-6.71(m, 8H),3.70-3.99(m, 8H),3.24-3.60(m, 8H),1.88-2.06(m, 8H),1.48(s, 36H)
MS (ESI) m/z 1077.8([M-CF3COO-]+)
Calc. for C64H76N12O4
(13): C, 51.32; H, 4.55; N, 10.25. Found: C, 51.15; H, 4.82; N, 10.03.
実施例1で合成した本発明の発蛍光性化合物TPE−Gについて、その特性を調べた。
<ヌクレオチドに対する蛍光特性>
TPE−Gに、ヌクレオチドとしてAMP、ADPまたはATPを加えて蛍光を測定した。測定条件は以下のとおりである。
TPE−Gの濃度:6μM、HEPESバッファー(5mM、pH7.4)中。
ATP,ADTおよびATPの濃度:それぞれ、20μM、12μMおよび8μM。
励起波長λex:335nm
測定装置:Perkin−ElmerLS55
測定温度:25℃
測定セル:1cm石英セル
測定結果を図6に示す。図6(a)に示されるように本発明の発蛍光性化合物TPE−GはATPを選択的に認識して蛍光を発することが理解される。このことは、紫外線照射下(λex:335nm)で肉眼でも観察された(図6(b)参照)
TPE−GにATPを添加して紫外可視スペクトルを観察したところ、吸収最大ピークが拡がり且つ310nmから335nmにシフトした。このことは、凝集体(aggregates)が形成していることを示唆していると考えられたので、DLS(dynamic light scattering:ダイナミック光散乱)測定を行ったところ(測定装置:Malvern Zeta sizer Nano-ZS)、水性分散液中に平均直径677±252nmの凝集体の形成が認められた(図7(a)参照)。また、SEM(走査電子顕微鏡:HitachiS−5000)観察によっても、〜1μm程度の凝集体の形成が認められた(図7(b)参照)。
TPE−G(濃度:6μM)に、AMP、ADPまたはATPを逐次添加して蛍光滴定試験を行った。バッファー、励起波長、測定装置、測定温度、測定セルなどの測定条件は、前述の「ヌクレオチドに対する蛍光特性」の項で述べたのと同じである。
その結果を図8に示す。図中、F0はヌクレオチドが存在しない場合の蛍光強度を表し、Fはヌクレオチドが存在する場合の蛍光強度を表し、△F=F−F0である。したがって、△F/F0は蛍光強度の変化の度合いを意味することになる。
<補酵素に対する蛍光特性>
実施例1で合成したTPE−Gに補酵素として、NAD+、NADH、NADP+、NADPHを加えて蛍光を測定した。補酵素の濃度:15μM、その他の測定条件は、実施例1の場合と同じである。
測定結果を図9に示す。図9(a)に示されるように本発明の発蛍光化合物TPE−GはNADPHを選択的に認識して蛍光を発することが理解される。このことは、紫外線照射下(λex:335nm)で肉眼でも観察された(図9(b)参照)。
TPE−G(濃度:6μM)に、NAD+、NADH、NADP+、NADPHを逐次添加して蛍光滴定試験を行った。測定条件は、実施例1の場合と同じである。結果を図10に示す。
図10に示されるように、NAD+、NADP+を添加しても実質的な蛍光強度の変化は見られない。これに対して、NADH、NADPHの添加に対しては、蛍光強度の増加が見られた。TPE−Gの蛍光強度は、NADHに対しては漸増するのに対して、NADPHに対しては濃度の増加に伴って急激に蛍光が発生し、シグモイド状の応答曲線を示している。
このように、補酵素に対して本発明の発蛍光性化合物を用いると、一定のNADPH濃度においてターンオンまたはスイッチオン式にNADPHを検出し得ることが理解される。
TPE−G(濃度:6μM)に、NAD+、NADH、NADP+、NADPHを逐次添加し、DLS測定によって凝集体の形成挙動を追跡した。図11に示されるように、NAD+、NADHを添加しても実質的な光散乱強度の変化は見られないことから、TPE−Gと凝集体を形成しないことが分かる。これに対して、NADP+、NADPHの添加に対しては、光散乱強度の増加が見られたことから、TPE−Gとの凝集体形成が認められた。
光散乱強度は、NADP+に対しては40μMから漸増するのに対して、NADPHに対しては発蛍光応答濃度と連動した急激な増加が認められた。このことは、NADPHに対しては、蛍光応答閾値はAIE(凝集誘起発光)に因る臨界会合濃度を反映することを意味している。
上記のように、TPE−G(濃度:6μM)に、NAD+、NADP+を添加しても実質的な蛍光強度の変化は見られない。しかし、亜硫酸ナトリウムを添加(最終濃度:5mM)することで、発蛍光強度の差異が認められた。これは、亜硫酸ナトリウムとの付加反応により得られる、NAD−SO3、NADP−SO3の負電荷数の差異を識別し、結果としてNADP+を認識したものと理解される(図12参照)。このように、本発明の発蛍光性化合物を用いれば、付加化合物(adduct)を発生させることにより、被測定物質に対する特異的反応性を変えることができる。
測定条件:TPE−G濃度:6μM、NAD+、NADP+濃度:80μM、亜硫酸ナトリウム濃度:5mM、HEPESバッファー(5mM,pH7.4)中。
<ヌクレオチドに対する蛍光特性>
実施例3で合成したTPE−Znに、イオン強度100mMの条件下で、ヌクレオチドとして、AMP、ADP、ATPを加えて蛍光を測定した。ヌクレオチドの濃度:15μM、NaCl濃度:100mM、その他の測定条件は、実施例1の場合と同じである。
測定結果を図13に示す。図13(a)に示されるように本発明の発蛍光化合物TPE−Znは、特に高塩濃度条件下で、ADP、ATPを選択的に認識して蛍光を発することが理解される。このことは、紫外線照射下(λex:335nm)で肉眼でも観察された(図13(b)参照)。
Claims (4)
- 下記の一般式(I)で表されることを特徴とする発蛍光性化合物。
- 下記の式(II)で表され、式中、Xが前記の式(A)、(B)または(D)で示される原子団の1つを表すことを特徴とする請求項1に記載の発蛍光性化合物。
- 下記の式(III)で表され、式中、Xが前記の式(A)、(B)または(C)で示される原子団の1つを表し、Yが前記の式(A)、(B)または(C)で示される原子団の1つであって、Xで表される原子団とは異なる原子団を表すことを特徴とする請求項1に記載の発蛍光性化合物。
- XまたはYが、前記の式(C)で示される原子団を表し、該原子団を介してCuまたはZnと錯体を形成していることを特徴とする請求項3に記載の発蛍光性化合物。
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