JP6079651B2 - 非水電解質二次電池用負極材の製造方法 - Google Patents
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Description
[1].液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された基体上に凝固させる工程を含む、非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
[2].液状オルガノシロキサンが、1分子中の珪素数が2〜6であるオルガノシロキサンである[1]記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
[3].液状オルガノシロキサンが、1分子中の珪素数が4〜6である環状のオルガノシロキサンである[1]又は[2]記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
[4].熱分解の圧力雰囲気が10Pa〜10kPaである、[1]〜[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
[5].非水電解質二次電池用負極材が、珪素含有量が50〜70質量%、結合炭素含有量が1質量%以上、全炭素含有量が1〜20質量%、及び酸素含有量が25〜40質量%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
[6].[1]〜[5]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法の工程を含む、負極材を含む非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[7].液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された金属箔上に凝固させる工程を含む、金属箔上に凝固膜が形成された非水電解質二次電池用負極の製造方法。
[8].[6]又は[7]記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法の工程を含む、負極、正極、及び電解液を有する非水電解質二次電池の製造方法。
[9].負極材を含む負極、正極及び電解液を有する電気化学キャパシタの製造方法であって、上記負極材の製造方法が、液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された基体上に凝固させる工程を含む電気化学キャパシタの製造方法。
〔負極材〕
本発明は、液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された基体上に凝固させて得られる、固体のSiCO系コンポジットであり、負極材(負極活物質)として用いるものである。
本発明の第1の特徴として、液状オルガノシロキサンを気化し、この気化したオルガノシロキサンを、気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解することが不可欠である。従来公知のオルガノシロキサンの固体を固相のまま熱分解する方法では、低温で熱分解すると分解が不十分なため、充放電時に副反応を生じる部分が残存し初回効率が低下する。このため、1,000℃以上の高温で分解する必要があるが、高温で熱分解すると長期サイクル耐久性が低下してしまうという問題が生じる。その主な原因として、高温で熱分解すると結晶化が進むため不完全な格子による膨張収縮の緩和作用が減少し長期サイクル耐久性を低下させることが考えられる。本発明の液状オルガノシロキサンを気化してから、気相中で熱分解する方法では、高温にしても気相では結晶化が起こらないため、十分に分解が進む1,000℃以上の高温で熱分解することができ、高い初回効率を保ちつつ、良好な長期サイクル耐久性を持った非水電解質二次電池用負極材が得られる。
本発明の第2の特徴として、熱分解物を、950℃以下に冷却された基体上に凝固させることが不可欠である。冷却された基体により気体の熱分解物の温度を下げ、過飽和にして基体上の表面に凝固させることで、固体のSiCO系コンポジットとして回収することができる。さらに熱分解物を950℃以下にすることで、凝固後の結晶成長を抑制することがき、長期サイクル耐久性に優れた非水電解質二次電池用負極材を得ることができる。冷却された基体温度の下限は、50サイクルまでの初期サイクル耐久性の点から、100℃以上が好ましく、基体温度は200〜900℃がより好ましい。なお、基体温度は基体に設置された温度計により測定することができる。
得られたSiCO系コンポジットからなる非水電解質二次電池用負極材を含む非水電解質二次電池用負極を得ることができる。例えば、負極(成型体)の製造方法としては、上記粉末状負極材と、ポリイミド樹脂等の結着剤と、必要に応じて導電剤と、その他の添加剤とに、N−メチルピロリドン又は水等の結着剤の溶解・分散に適した溶剤を混練してペースト状の合剤とし、この合剤を金属箔等の集電体に塗布し、乾燥させることにより負極を得ることができる。本発明の負極材の含有量は、負極(成型体(集電体を除く))に対して30〜90質量%が好ましい。
本発明の非水電解質二次電池は、上記負極、正極及び電解液を有するものであり、本発明の負極を用いる点に特徴を有し、その他の正極、電解質、セパレータ等の材料及び電池形状等は公知のものを用いることができ限定されない。例えば、正極活物質としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiFePO4、V2O5、MnO2、TiS2、MoS2等の遷移金属の酸化物、リチウム及びカルコゲン化合物等が用いられる。電解質としては、六フッ化リン酸リチウム、過塩素リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化砒素酸リチウム等のリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の単体又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
また、液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、950℃以下に冷却された基体上に凝固させて得る負極材を含む負極、正極及び電解液を有する電気化学キャパシタを製造することもできる。負極材の好適な範囲等は上記と同様である。この場合、製造する電気化学キャパシタは、本発明の負極を用いる点に特徴を有し、その他の正極、電解質、セパレータ等の材料及びキャパシタ形状等は公知のものを用いることができ、限定されない。例えば、正極活物質としては、活性炭、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等が用いられ、電解質としては、六フッ化リン酸リチウム、過塩素リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化砒素酸リチウム等のリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフラン等の単体又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
図1に示す製造装置を用いた。内径120mm、長さ1,800mmのアルミナ製炉芯管6の内部を、油回転真空ポンプ14で10Paに排気しながら、炉芯管6中央部が1,200℃(分解温度)になるように加熱した。液状のオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)を、気化部3内で100Pa減圧下・250℃に加熱し気化させた後、キャリアガスであるアルゴンガス2NL/minに同伴させ、炉口側から炉芯管6内に1g/minの速度で供給した。この時の炉芯管6内の圧力が100Paになるようにバタフライ弁を調整した。オクタメチルシクロテトラシロキサンは炉芯管6中央部で熱分解された後、炉出口側に接続された冷却チャンバー7A内で、900℃(基体温度)に冷却された円柱状基体9上に堆積した。この堆積物を回収し、ボールミルで平均粒径が10μmになるように粉砕した。この粉末を、銅を対陰極としたX線回折(Cu−Kα)したところ、図3に示す回折パターンが得られ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。蛍光X線分析装置(PHILIPS X−ray spectrometer MagiX PRO)で珪素量、炭素分析装置(Horiba carbon analyzer EMIA−110)で結合炭素量と全炭素量、酸素分析装置(Horiba oxygen/nitrogen analyzer EMGA−2800)で酸素量を測定した結果を表1に示す。
分解温度を1,500℃とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ図4に示す回折パターンが得られ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
分解温度を1,000℃とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ図5に示す回折パターンが得られ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
雰囲気圧力を9,000Paとした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ図6に示す回折パターンが得られ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
キャリアガスを水素ガスとした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
液状オルガノシロキサンをデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
液状オルガノシロキサンをドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
液状オルガノシロキサンをテトラメチルシクロテトラシロキサン(H4)とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
液状オルガノシロキサンをオクタメチルトリシロキサン(MDM)とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
液状オルガノシロキサンをヘキサメチルジシロキサン(M2)とした以外は実施例1と同様に負極材粉末を作製した。この粉末をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。実施例1と同様に珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、この粉末から実施例1と同様に負極を作製した。
図1に示す製造装置の冷却チャンバー7Aを図2に示す冷却チャンバー7Bに置き換えた装置を用い、表面を粗面化した厚さ12μmの銅箔を、繰出ロール17から繰出され、冷却ドラム16表面を経由して巻取ロール18で巻取られるように走行させながら、実施例1と同様に1,200℃(分解温度)でオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の熱分解を行い、400℃(基体温度)に冷却された銅箔表面に堆積させた。この堆積物をX線回折装置で分析したところ、SiCO系コンポジットであることを示すピークが確認された。この堆積物を掻き落として回収し、珪素量、結合炭素量、全炭素量、酸素量を測定した結果を表1に示す。次に、堆積物が銅箔に密着した状態(膜厚32μm(銅箔含む))のままで面積2cm2の円形に打ち抜き、負極を作製した。
特開2006−62949号公報の実施例1に記載の方法でSiCO系コンポジット粉末を得た。即ち、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン〔信越化学工業(株)製、LS−8670〕120g、メチル水素シロキサン〔信越化学工業(株)製、KF−99〕80gからなる硬化性シロキサン混合物に塩化白金酸触媒〔塩化白金酸1%溶液〕0.1gを添加して、よく混合した。その後、60℃で一昼夜プレキュアした。塊状のまま、ガラス容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、200℃で2時間加熱して、完全に硬化させた。この硬化物をボールミルにより平均粒子径が10μmになるように微粉砕した。その後、蓋付のアルミナ製容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、1,000℃で3時間焼成を行った。冷却後、クリアランスを20μmに設定した粉砕機(マスコロイダー)で粉砕し、平均粒径約10μmのSiCO系コンポジット粉末を得た。次に、この粉末を用いること以外は実施例1と同じ方法で円形(面積2cm2)の負極を作製した。
リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価はすべての実施例、比較例ともに同一で、以下の方法・手順にて行った。
《初期充放電特性評価》
得られた負極の初期充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用ハーフセルを作製した。
作製したハーフセルは、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて、セル電圧が5mVに達するまで1.5mAの定電流で充電を行い、5mVに達した後は、セル電圧を5mVに保つように電流を減少させて充電を行い、電流値が200μAを下回った時点で充電を終了し、充電容量を求めた。放電は0.6mAの定電流で行い、セル電圧が2.0V上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。求めた放電容量を充電容量で割り初回効率とした。これらの結果を表2に示した。なお、表2中の放電容量及び充電容量は、導電性付与のために添加した黒鉛分を除いたSiOC系コンポジット1g当りの容量である。
得られた負極のサイクル耐久性を評価するために、正極材料としてコバルト酸リチウム94質量部に、アセチレンブラック3質量部、ポリフッ化ビニリデン3質量部を加え、更にN−メチル−2−ピロリドンを加え、撹拌してスラリーとした。このスラリーをドクターブレードで厚さ16μmのアルミ箔に塗布し、100℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより加圧成形し、更に120℃で5時間真空乾燥した。これを面積2cm2の円形に打ち抜き、正極を作製した。この正極と上記負極を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用フルセルを作製した。
2 液体マスフローコントローラー
3 気化部
4 気体マスフローコントローラー
5 気化部ヒーター
6 炉芯管
7A,7B 冷却チャンバー
8 炉芯管ヒーター
9 円柱状基体
10 スクレーパー
11 回収容器
12 モーター
13 メカニカルブースターポンプ
14 油回転真空ポンプ
15 バタフライ弁
16 冷却ドラム
17 繰出ロール
18 巻取ロール
19 金属箔
20 モーター
21 ブレーキ
22 クラッチ付モーター
Claims (9)
- 液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された基体上に凝固させる工程を含む、非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 液状オルガノシロキサンが、1分子中の珪素数が2〜6であるオルガノシロキサンである請求項1記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 液状オルガノシロキサンが、1分子中の珪素数が4〜6である環状のオルガノシロキサンである請求項1又は2記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 熱分解の圧力雰囲気が10Pa〜10kPaである、請求項1〜3のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 非水電解質二次電池用負極材が、珪素含有量が50〜70質量%、結合炭素含有量が1質量%以上、全炭素含有量が1〜20質量%、及び酸素含有量が25〜40質量%である、請求項1〜4のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法の工程を含む、負極材を含む非水電解質二次電池用負極の製造方法。
- 液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された金属箔上に凝固させる工程を含む、金属箔上に凝固膜が形成された非水電解質二次電池用負極の製造方法。
- 請求項6又は7記載の非水電解質二次電池用負極の製造方法の工程を含む、負極、正極、及び電解液を有する非水電解質二次電池の製造方法。
- 負極材を含む負極、正極及び電解液を有する電気化学キャパシタの製造方法であって、上記負極材の製造方法が、液状オルガノシロキサンを気化させ、これを気相中で1,000℃以上に加熱し熱分解した後、この熱分解物を950℃以下に冷却された基体上に凝固させる工程を含む電気化学キャパシタの製造方法。
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