以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る加振器の取付構造が適用されるピアノの外観を示す斜視図である。
本実施の形態では、オーディオ信号によって動作して被加振体を加振することで発音させる加振器の取付構造が適用される装置や楽器として、鍵盤楽器であるグランドピアノ1を例示する。被加振体として響板7を例示する。ただし、これらの例示に限定されるものではなく、オーディオ信号に基づく駆動信号で加振器が駆動され、それによって被加振体が振動して音響が発生する構成であればよい。
グランドピアノ1は、その前面に演奏者によって演奏操作がなされる鍵2が複数配列された鍵盤、およびペダル3を有する。また、グランドピアノ1は、前面部分に操作パネル13を有する制御装置10、および譜面台部分に設けられたタッチパネル60を有する。ユーザの指示は、操作パネル13およびタッチパネル60が操作されることにより、制御装置10に対して入力可能になっている。
図2は、グランドピアノ1の内部構造を示す断面図である。
この図においては、各鍵2に対応して設けられている構成については1つの鍵2に着目して示し、他の鍵2に対応して設けられている部分については記載を省略している。各鍵2の後端側(演奏するユーザから見て鍵2の奥側)の下部には、ソレノイドを用いて鍵2を駆動する鍵駆動部30が設けられている。
鍵駆動部30は、制御装置10からの制御信号に応じて、対応するソレノイドを駆動してプランジャを上昇させることにより、ユーザが押鍵したときと同様な状態を再現する一方、プランジャを下降させることにより、ユーザが離鍵したときと同様な状態を再現する。
弦5及びハンマ4は、各鍵2に対応して設けられる。鍵2が押下されるとアクション機構(図示略)を介してハンマ4が回動し、各鍵2に対応する弦5を打撃する。ダンパ8は、鍵2の押下量、およびペダル3のうちダンパペダルの踏込量に応じて変位し、弦5と非接触状態または接触状態となる。ストッパ40は、制御装置10において打弦阻止モードが設定されているときに動作し、各ハンマ4の下からの打撃を受け止めてハンマ4による弦5への打撃を阻止する部材である。
鍵センサ22は、各鍵2に対応して各鍵2の下部に設けられ、対応する鍵2の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。ハンマセンサ24は、ハンマ4に対応して設けられ、対応するハンマ4の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。ペダルセンサ23は、各ペダル3に対応して設けられ、対応するペダル3の挙動に応じた検出信号を制御装置10に出力する。
図示はしないが、制御装置10は、CPU、ROM、RAM、通信インターフェイス等を備える。ROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、制御装置10による各種の制御が実現される。
響板7は、木材で形成された板状の部材である。響板7には、響棒75および駒6が配設される。駒6には、張架される弦5の一部が係止される。従って、駒6を介して響板7の振動が各弦5に伝達されるとともに、各弦5の振動が駒6を介して響板7に伝達される。
また、加振器50が、直支柱9に接続された支持部55によって支持されて、響板7に接続されている。支持部55はアルミ素材等の金属で形成される。直支柱9はフレームとともに弦5の張力を支える部材であり、グランドピアノ1の一部である。
図3は、加振器50の取り付け位置を説明するための響板7の裏面図である。
加振器50は、響板7に接続され、響板7に配設された複数の響棒75の間に配置されている。図3においては同じ構成の加振器50が複数(例えば2つ)、響板7に接続されているが、1つであってもよい。加振器50は、駒6に極力近い位置に配置され、本実施の形態では響板7を挟んで駒6の反対側に配置される。以下、グランドピアノ1の演奏者側から見て左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向(所定方向)とする。X−Y方向が水平方向である。
図4(a)、(b)は、支持部55に固定された加振器50が響板7に接続された状態を示す側面図である。図4(a)は製品の出荷時、図4(b)は、経年変化を経た時点の状態をそれぞれ示している。
加振器50は、ボイスコイル型のアクチュエータであり、大別して磁路形成部52、振動体200及び連結体Rからなる。磁路形成部52は、支持部55を介して直支柱9に固定状態とされている。振動体200は、磁路形成部52に電磁的に係合する電磁係合部EMと電磁係合部EMから上方に突設された棒状部91とを有する。磁路形成部52にオーディオ信号に基づく駆動信号が入力されると、磁路形成部52により電磁係合部EMが励振されてZ軸方向に振動する。
連結体Rは、棒状部101を有する。製品出荷時においては、連結体Rの棒状部101の軸心C2が磁路形成部52の軸心C1と同心となるように、ダンパ53によって電磁係合部EMの水平方向(X−Y方向)の位置決めがされている。軸心C1は、加振方向であるZ軸方向の軸線(Z軸)と平行である。磁路形成部52の詳細は後述する。
連結体Rは、響板7と振動体200との間に介在し、振動体200の振動を響板7に伝達する。響板7にはポインタ部材111及びチャック部材112を有する第2の関節部J2が配設される。振動体200と連結体Rとは第1の関節部J1における屈曲によって相対的に傾斜可能に連結され、連結体Rと響板7とは第2の関節部J2における屈曲によって相対的に傾斜可能に連結されている。
関節部J1、J2の詳細構成は後述するが、いずれもボールジョイント構造となっている。棒状部101の下端部である連結体Rの一端部101aが第1の関節部J1に固定され、棒状部91の上端部である球状部92が第1の関節部J1で回転自在になっている。連結体Rの棒状部101の他端部101bの上端にある球状部102が第2の関節部J2で回転自在になっている。
連結体Rは、第1の関節部J1の第1の支点P1を回転支点として、Z軸に垂直な任意の軸を中心に回転することができる。従って、連結体Rは、第1の関節部J1における屈曲によって、Z軸でもある振動体200の軸心C1に対して傾斜可能である。連結体Rはまた、第2の関節部J2の第2の支点P2を回転支点として、Z軸に垂直な任意の軸を中心に回転することができる。従って、連結体Rは、第2の関節部J2における屈曲によって、Z軸に対して傾斜可能である。第1の関節部J1、第2の関節部J2における屈曲を生じさせる運動は、いずれも、実質的には回動である。
ところで、磁路形成部52と電磁係合部EMとの電磁的な係合が適切であるためには、連結体Rの軸心C2と磁路形成部52の軸心C1とは同心であることが最適である。ところが、響板7に、経年変化等によって寸法変化や変形が生じると、連結体Rが接続された箇所、すなわち、響板7に固定されたポインタ部材111も一緒に水平変位し得ることになる。ダンパ53が電磁係合部EMの水平方向の相対的な位置を規制しきれない程度に仮にポインタ部材111が水平変位すると、電磁係合部EMと磁路形成部52との位置関係が不適切になり得る。すると、振動体200が適切に振動しなくなるおそれがある。
そこで、響板7が水平方向に経年変位を生じても、磁路形成部52に対する電磁係合部EMの水平方向の相対的な位置が変わらないようにするための吸収機構が必要となる。無限の変位に対処するのは無理であるが、経年変化による変位量は想定できるため、その範囲(所定範囲)内での変位を吸収できればよい。
このような課題があることは、製品使用初期段階では認識されにくいものである。しかも、水平方向に関しては寸法変化を吸収しつつ、Z軸方向に関しては振動伝達機能を維持するような機構を考えなくてはならず、それには新規な発想が必要となる。本実施の形態では、少なくとも2つの関節部J1、J2を響板7及び振動体200間に設けた。
すなわち、水平方向において響板7の連結体Rが接続される部分が所定範囲内(例えば、変位量D内)で変位したとき、関節部J1、J2における屈曲によって、直支柱9に対して相対的に第2の関節部J2が水平方向に変位することで連結体Rが傾斜するようにする。その際、振動体200に水平方向の変位や傾斜を生じさせることがない。従って、長期に亘って、振動体200は、水平方向に変位することなく、傾くこともないので、磁路形成部52に対する球状部92の水平方向の相対的な位置も不変となる。それにより、磁路形成部52と電磁係合部EMとの電磁的な係合が適切に維持され且つ振動体200の振動の響板7への良好な伝達機能が維持されるようにした。
さらに、図4(a)に示すように、電磁係合部EMの下端位置から第1の関節部J1の位置(支点P1の位置で定義する)までの、Z軸方向における振動体200の長さをL1とする。一方、第1の関節部J1から第2の関節部J2の位置(支点P2の位置で定義する)までの長さをL2とする。長さL1は長さL2より短い。
長さL1が長さL2より短いことで、棒状部91を特別に太くしなくても曲げ剛性が高まり、振動体200がZ軸に対して傾きにくくなるので、振動伝達時における駆動力によって球状部92ないし第1の関節部J1の位置が水平方向に一時的に変位することが回避される。これによっても、磁路形成部52と電磁係合部EMとの適切な電磁係合の維持に寄与する。
以降、個々の関節部J1、J2の例示構成を説明する。
図5(a)は、第2の関節部J2の一例を示す縦断面図である。図5(a)に示すように、第2の関節部J2として、ポインタ部材111及びチャック部材112を有するボールジョイント構造が採用される。ポインタ部材111はネジ103で響板7に固定され、チャック部材112は、そのフランジ部がネジ103でポインタ部材111に固定される。
ポインタ部材111に形成されたテーパ面111aとチャック部材112に形成されたテーパ面112aとの間に連結体Rの球状部102を介装し、ポインタ部材111に対してチャック部材112を締結固定することで、テーパ面111aとテーパ面112aとによって球状部102のZ軸方向の位置が規制される。
響板7の変位に伴ってポインタ部材111が水平方向の成分を含む方向(加振方向とは異なる方向、ないし、加振方向と交わる方向)に変位した場合、それに応じて球状部102がテーパ面111a、112a内でZ軸に垂直な軸(例えば、X軸やY軸)を中心に回転することができる。それにより、第2の支点P2を中心として連結体RがZ軸に対して無理なく傾斜することが許容される。
図5(b)は、第1の関節部J1の一例を示す縦断面図である。第1の関節部J1として、第2の関節部J2と同様に、ポインタ部材141及びチャック部材142を有するボールジョイント構造が採用される。連結体Rの一端部101aにポインタ部材141が固定される。チャック部材142は、そのフランジ部がネジでポインタ部材141に固定される。
ポインタ部材141に形成されたテーパ面141aとチャック部材142に形成されたテーパ面142aとの間に球状部92を介装し、ポインタ部材141に対してチャック部材142を締結固定することで、テーパ面141aとテーパ面142aとによって球状部92のZ軸方向の位置が規制される。
響板7の変位に伴って連結体Rが傾斜した場合、それに応じて、球状部92に対して相対的に、テーパ面141a、142aがZ軸に垂直な軸(例えば、X軸やY軸)を中心に回転することができる。それにより、第1の支点P1を中心として相対的に連結体RがZ軸に対して無理なく傾斜することが許容される。
なお、棒状部101、91は例えば金属で構成される。棒状部101、91には振動伝達性が要求されるため、振動方向において剛性が高く、すなわち伝達特性が優れる点で、材質として金属を採用するのが望ましい。ポインタ部材111、141、チャック部材112、142は、形状精度を良くする点で例えば樹脂で構成される。なお、伝達特性や寸法変化を考慮して金属で構成してもよいし、一部を樹脂、他の一部を金属で構成してもよい。
図5(c)は、磁路形成部52及び電磁係合部EMの構成を示す縦断面図である。振動体200の電磁係合部EMは、キャップ512、ボビン511、ボイスコイル513を有している。棒状部91の下端部にキャップ512が固定され、キャップ512の下半部に、環状のボビン511が嵌合固定されている。ボイスコイル513は、ボビン511に外周面に巻き付けられた導線で構成され、磁路形成部52が形成する磁場内において、流れる電流を振動に変える。
磁路形成部52は、トッププレート521、磁石522及びヨーク523を有し、これらが上側から順に配設されている。電磁係合部EMは、ダンパ53によって、磁路形成部52に対して接触することなくZ軸方向に変位可能に支持される。すなわち、ダンパ53は、繊維等で円盤状に形成され、円盤状の部分が蛇腹状に波立たせた形状をしている。ダンパ53の外周側の端部がトッププレート521の上面に取り付けられ、内周側の端部が電磁係合部EMのボビン511に取り付けられている。
磁路形成部52は、例えば、ヨーク523が支持部55にネジ等で固定されることで、直支柱9に対して固定状態とされている。従って支持部55は、固定部である直支柱9に対して磁路形成部52を取り付ける役割を果たす。
トッププレート521は、例えば、軟鉄等の軟磁性材料でなり、中心に穴のあいた円盤状に形成される。ヨーク523は、例えば、軟鉄等の軟磁性材料でなり、円盤状の円盤部523Eと、円盤部523Eよりも外径が小さい円柱状の円柱部523Fとを、双方の軸心を一致させて一体とした形状に形成される。円柱部523Fの外径は、トッププレート521の内径よりも小さい。磁石522は、ドーナツ型の永久磁石であり、その内径はトッププレート521の内径よりも大きい。ボビン511の内径に円柱部523Fが遊嵌されている。
トッププレート521、磁石522及びヨーク523は、各々の軸心が一致し、それが磁路形成部52の軸心C1となっている。このような配置により、図5(c)に破線の矢印で示した磁路が形成される。トッププレート521と円柱部523Fとに挟まれた空間である磁路空間525内にボイスコイル513が位置するように電磁係合部EMが配置される。その際、上述のように、連結体Rの軸心C2が磁路形成部52の軸心C1と同心となるように、ダンパ53によって電磁係合部EMの水平方向(X−Y方向)の位置決めがされている。従って、棒状部91はZ軸方向に平行に延設される。
加振器50には、制御装置10から、オーディオ信号に基づく駆動信号が入力される。例えば、不図示の記憶部に記憶されたオーディオデータが制御装置10により読み出され、それに基づいて駆動信号が生成される。あるいは、演奏操作に応じて響板7を振動させる場合は、鍵センサ22、ペダルセンサ23、ハンマセンサ24によって鍵2、ペダル3及びハンマ4の挙動をそれぞれ検出することで演奏者の演奏操作を検出し、それらの検出結果に基づいて、制御装置10が演奏情報を生成する。そしてその演奏情報に基づいて制御装置10が音響信号を生成する。この音響信号が加工や増幅の処理をされて、加振器50に駆動信号として出力される。
駆動信号がボイスコイル513に入力されると、ボイスコイル513は、磁路空間525における磁力を受けて、入力される駆動信号が示す波形に応じたZ軸方向の駆動力をボビン511が受ける。従って、磁路形成部52により電磁係合部EMが励振されて、電磁係合部EMを含む振動体200がZ軸方向に振動する。振動体200がZ軸方向に振動すると、その振動は連結体Rによって響板7に伝達され、響板7が加振される。響板7の振動は空気中に放音され、音響となる。
ここで、ダンパ53は、振動体200が軸心C1と同心を維持して加振方向であるZ軸方向に変位自在に磁路形成部52を支持する役割を果たす。関節部J1、J2は、経年変化による比較的ゆっくりとした水平変位に対して追従でき、且つ、加振方向への短い周期の運動に対しては力を伝達できる程度の屈曲の硬さを有している。水平方向に対して、関節部J1、J2が屈曲に抗する力よりも、ダンパ53が振動体200を水平方向において軸心C1と同心に維持する力の方が十分に大きく設定されている。従って、響板7が経年変化により水平方向に変位すると、関節部J1、J2において屈曲が生じて連結体Rが傾斜することになるが、ダンパ53による振動体200の水平方向における保持位置は変わらない。
ダンパ53の構成については、ダンパ53は、円盤状の全方位の蛇腹の例の他、軸やボビンを中央に保持する機能を失わない範囲であれば、弾性のある樹脂で構成してもよく、また、全方位ではなく数カ所で軸やボビンを保持する構成としてもよい。
本実施の形態によれば、水平方向において連結体Rが接続される響板7の部分が所定範囲内で変位したとき、関節部J1、J2における屈曲によって、振動体200が水平方向に変位や傾斜を生じることなく第2の関節部J2が水平方向に変位することで連結体Rが傾斜するので、振動体200は水平方向の位置が変わることがない。よって、経年変化等によって響板7が加振方向に垂直な方向に寸法変化を生じたとしても、磁路形成部52と電磁係合部EMとの電磁的な係合を維持し、適切な加振機能を長期に亘って維持することができる。
なお、関節部J1、J2の構成は、例示したものに限定されず、屈曲によって、連結する部材の軸線同士を相対的に傾斜可能にする構成であればよい。以下、図6〜図9で、各種の変形例を説明する。
図6(a)は、第2の関節部J2の変形例を示す縦断面図である。図6(b)、(c)は、第2の関節部J2の他の変形例を示す平面図、縦断面図である。
まず、図6(a)に示す変形例では、第2の関節部J2は、ポインタ部材111が響板7の下面7aに螺着等で固定され、ポインタ部材111に対してチャック部材112がネジ構造で係合するようになっている。ポインタ部材111に形成されたテーパ面111aとチャック部材112に形成されたテーパ面112aとの間に棒状部101の球状部102を介装し、ポインタ部材111に対してチャック部材112を螺合して締め付けることで、テーパ面111aとテーパ面112aとによって球状部102のZ軸方向の位置が規制される。
図6(b)、(c)に示す変形例では、第2の関節部J2は、響板7に固定される受け部材113を有する。受け部材113には、二股状の延設片の間にスリット113bが形成される。受け部材113に形成されたテーパ面113aの上に球状部102を位置させて、二股状の延設片をネジ114で締めることでスリット113bを縮小させる。すると、球状部102は、響板7の下面7aとテーパ面113aとによってZ軸方向の位置が規制される。この構成においては、響板7の下面7aが連結体Rに直接接触する。被加振体の連結体Rと接触する面がZ軸に対して垂直である場合に好適である。
図7(a)は、関節部J1、J2にユニバーサルジョイント構造を使用した変形例を示す加振器の部分側面図である。
ところで、連結体Rは、被加振体である響板7の一部または響板7に対してこの連結体Rが固定されている部分(以下、「被加振側固定部」と呼称する)と振動体200との間に介在すればよいが、図4、図6(a)に示す例では、被加振側固定部にはポインタ部材111が該当した。しかし、図7(a)に例示するように、被加振側固定部は、響板7に垂下固定された響板側棒状部1111のようにある程度の長さを有した部材であってもよい。
また、図7(a)に示す変形例では、振動体200は、棒状部91に対応する振動体側棒状部191を有する。連結体Rに対応する連結体R1は、第2の関節部J2で屈曲可能に響板側棒状部1111に連結されると共に、第1の関節部J1で屈曲可能に振動体側棒状部191に連結される。関節部J1、J2はいずれも、係合部材105、106でなるユニバーサルジョイントとして構成される。係合部材105と係合部材106とが、軸107で軸支されてX軸周りに回動自在で且つ、軸108で軸支されてY軸周りに回動自在とされている。
図7(b)は、第1の関節部J1の変形例を示す縦断面図である。図4に示す例では、振動体200において、電磁係合部EMから棒状部91が突設されるとし、球状部92は棒状部91が備える構成とした。しかし、図7(b)に示すように、連結体Rに対応する連結体R2が球状部を備える構成としてもよい。
図7(b)に示す第1の関節部J1の構成は、図5(a)に示す第2の関節部J2と同様で、第1の関節部J1を一端部101aの側に設けた構成としている。まず、連結体R2の一端部101aには、球状部109が形成されている。下側部材122がキャップ512に接着または不図示のネジ等で固定され、上側部材121が下側部材122にネジ123で螺着固定される。上側部材121のテーパ面121aと下側部材122のテーパ面122aとによって球状部109のZ軸方向の位置が規制される。
図8、図9は、変形例の関節部J1、J2及び連結体を採用した加振器50の斜視図、縦断面図である。
この変形例に係る加振器50は、連結体Rに相当する連結体R3を有する。振動体200、磁路形成部52は、図4等で説明したものと形状は異なるが構成は同様であり、図4等で説明した形状を採用してもよい。
この加振器50においては、被固定部310が響板7に固定される。被固定部310には、響板側棒状部311が垂下固定されている。響板側棒状部311の下端部が球状部312となっている。響板側棒状部311は響板7に対して固定的な被加振側固定部である。
連結体R3は、金属製の板状部301、302からなる。板状部301、302は、上部に球状部312、下部に球状部92を挟むようにして平行に組み付けられ、ボルト303で固定される。図9に示すように、球状部92を保持する板状部301の部分には、テーパ面301a、301bが形成され、球状部92を保持する板状部302の部分には、テーパ面302a、302bが形成される。球状部312を保持する板状部301の部分には、テーパ面301c、301dが形成され、球状部312を保持する板状部302の部分には、テーパ面302c、302dが形成される。
第1の関節部J1において、テーパ面301a、301b、テーパ面302a、302bによって球状部92のZ軸方向の位置が規制される。第2の関節部J2において、テーパ面301c、301d、テーパ面302c、302dによって球状部312のZ軸方向の位置が規制される。
響板7の変位に伴って響板側棒状部311が水平方向の成分を含む方向に変位した場合、それに応じて球状部312がテーパ面301c、301d、302c、302d内でZ軸に垂直な任意の軸(例えば、X軸やY軸)を中心に回転することができる。それにより、第2の支点P2を中心として連結体R3がZ軸に対して無理なく傾斜することが許容される。
同様に、響板7の変位に伴って連結体R3が傾斜した場合、それに応じて、球状部92に対して相対的に、テーパ面301a、301b、302a、302bがZ軸に垂直な任意の軸を中心に回転することができる。それにより、第1の支点P1を中心として相対的に連結体R3がZ軸に対して無理なく傾斜することが許容される。
従って、適切な加振機能を長期に亘って維持することができる。また、板状部301、302は金属でなるので、Z軸方向に受ける力をロスなく正確に伝達することができる。さらに球状部312、92も金属で構成すれば、第1の関節部J1、第2の関節部J2の全ての部分を金属で構成することが可能となる。これにより、耐摩耗性が高まる。
なお、本実施の形態及び各変形例で示した各種の構成は、例示以外の組み合わせを適宜採択してもよい。関節部J1、J2を共通の構造とすれば、製造コストの低減に寄与する。
なお、第1の関節部J1は、屈曲によって連結対象を相対的に傾斜可能にできる構成であればよく、屈曲の態様は回動に限定されない。例えばゴムジョイントのように、関節部J1をゴム等の弾性体で構成し、その弾性体が弾性変形して屈曲を生じさせる構成でもよい。あるいは、関節部J1を軟鉄のような軟らかい金属で構成してもよい。あるいは、第1の関節部J1は、近接した回動支点をZ軸方向に複数有する構成とし、これら複数の回動支点での回動により、関節部J1全体として見れば屈曲として把握できるような構成としてもよい。第2の関節部J2についても第1の関節部J1と同様に考えることができる。
なお、本実施の形態及び各変形例において、連結体R、R1、R2、R3は、両端部に関節部J1、J2が設けられる構成としたが、関節部J1、J2とは別に、連結体の途中に関節部J1、J2と同様の関節部を1つ以上設けてもよい。
なお、被加振体として響板7を例示したが、これに限られず、屋根や側板等の、寸法変化を生じる部材を被加振体とする場合にも本発明を適用可能である。被加振体が寸法変化しない部材である場合であっても、加振器を支持する部材が加振方向とは異なる(交わる)方向に寸法変化や変形を生じることで、相対的に被加振体が変位する場合には本発明を適用可能である。
なお、本発明の適用対象としてピアノを示したが、グランドピアノでもアップライトピアノでもよい。また、ピアノに限られず、種々のアコースティック楽器で加振器を有するもの、あるいは電子楽器で加振器を有するもの、あるいはスピーカに適用してもよい。これらの場合、強制的に振動させることが可能な被加振体を有するものであればよい。被加振体における可動体との連結位置と加振器の支持位置が、寸法変化等によって加振方向とは異なる方向にずれを生じるものであれば、本発明の適用対象となる。