従来から、寝たきりの高齢者や身体不自由者などの被介助者を載せた担架をストレッチャーに載せて搬送し、浴槽に横付けした後、担架のみを浴槽内の支持台の上方に移動させて、浴槽を昇機機構により上昇させて被介助者を浴湯に浸漬し入浴させる介護用の入浴システムが知られている。(例えば、特許文献1〜2参照)。
特許文献1の入浴システムには、湯温設定器の設定範囲の値から温度センサの値が外れていると、禁止機能が作動し、浴槽の昇降機構は作動が禁止された状態となり、上昇スイッチを押しても浴槽を上昇させない入浴安全機構が備えられている。
しかしながら、温度センサが浴槽側壁の上下中間位置よりやや下方位置に設けられているため、比較的下層の浴湯の温度しか検知できず、例えば、給湯(増し湯)時に温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合、給湯(増し湯)直後や攪拌が不十分な場合に、この湯温を正確に検出して上記の安全機構を機能させることができないといった安全上の問題点を有していた。
一方、特許文献2の入浴システムでは、浴槽への初期給湯及び増し湯の給湯動作を給湯源と配管接続された給湯口を介して直接行う構成になっており、給湯配管内の湯水の温度を配管内温度センサで検知し、浴槽内の湯(浴湯)の温度は浴槽側壁の上下中間位置よりやや下方位置に設けられた浴槽内温度センサにより検知している。
また、この入浴システムには、噴流発生装置が設けられ、下位水位センサより低位置の側壁に形成される湯吸込口に接続され浴湯を吸い込む循環配管と、この循環配管から四本管に分岐し、各分岐管と側壁とにわたって配設される噴流ノズルと、各噴流ノズルに対し空気を送り込む空気送込口と、循環配管の中途位置に介装され吸い込んだ浴湯を4基の各噴流ノズルより浴槽内に向かって噴出させる噴流ポンプと、から構成される。
従来の入浴システムにおいて、噴流発生装置は、入浴中の被介助者に対し噴流を吐出する場合だけではなく、浴湯を攪拌する場合にも動作させていた。
しかしながら、従来は、配管内温度センサからの温度情報と浴槽内温度センサからの温度情報に基づいて噴流発生装置の動作を制御する構成にはなっていなかったため、給湯(増し湯)する湯水の温度と浴湯温度の差が大きい状態で給湯をすれば、浴槽内の浴湯に温度分布が生じる可能性が高くなっていた。
一方、浴湯に対して高温の湯を浴槽に加える給湯(増し湯)動作をする際は、この開始動作に連動して噴流発生装置が作動する仕組みとされていたが、この給湯動作を停止すると噴流発生装置も同時に停止してしまい、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留してしまい、浴湯の温度分布が発生していた。この結果、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性が指摘され安全上の問題点を有していた。
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであって、浴湯に発生する温度分布を給湯時に推定検知して浴湯を撹拌制御することで被介助者に不快感を与えたり、高温浴湯による火傷を負わせたりする危険性を軽減して、安全性を向上させることのできる入浴システムを提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、身体不自由者などの被介助者を載置する載置手段を用いて被介助者を浴槽内外に入退浴させる入浴システムであって、前記浴槽に給湯される湯水の温度を検出する給湯温度検出手段と、前記浴槽内の浴湯の温度を検出する浴湯温度検出手段と、前記浴湯を攪拌する浴湯攪拌手段と、前記各手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記給湯温度検出手段が検出する温度情報と前記浴湯温度検出手段が検出する温度情報とに基づいて前記浴湯の攪拌要否を決定すると共に、前記決定に基づいて前記浴湯攪拌手段の動作を制御する、ことを特徴とする入浴システムである。
給湯温度検出手段からの温度情報(給湯温度)と浴湯温度検出手段からの温度情報(浴湯温度)との間の差が大きい状態で給湯を行えば、浴槽内の浴湯に温度分布が生じる可能性が高い。そこで、請求項1に記載する本発明では、浴槽への給湯を開始した時点で、給湯する湯水の温度と浴槽内の浴湯の温度とを給湯温度検出手段と浴湯温度検出手段とで検出してそれら温度情報の差を検討することで、浴槽内の浴湯に生じる温度分布(温度むら)を、温度分布が発生する直前に検知することができる。そのため、例えば、給湯(増し湯)直後や攪拌が不十分な場合や、給湯(増し湯)時に温度設計の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合に、入浴安全機構を迅速に作動させることができ、安全機構の精度が上がり、安全性が向上する。
なお、浴槽の上層側と下層側とにそれぞれ温度検出手段を設け、それらの温度検出手段の検出結果を検討すれば、浴湯に生じる温度分布そのものを直接検知することもできるが、その構成では、給湯を開始してから浴槽上層側の浴湯の温度が上昇するまでには、ある程度の時間がかかってしまう。そのため、この温度上昇に要する時間分だけ温度分布を検知するのに要する時間が長くなって、入浴安全機構を作動させるタイミングが遅れる可能性がある。これに対して、本発明では、給湯する湯水の温度を直接検出して給湯温度と浴湯温度との差を見ている。このような測定を実施するのは、次のような理由によっている。すなわち、給湯温度に基づけば、浴槽上層側の浴湯温度の温度変化をその温度変化が生じるタイミングの直前において精度高く検知(推定)することができる。本発明では、そのことに着目して、給湯する湯水の温度を直接検出している。これにより、給湯開始時点において、今後生じる可能性の高い浴湯温度分布を、温度分布発生より先だって精度高く推定検知することができ、その結果として、入浴安全機構を迅速に作動させることができる。
さらには、一般に入浴システムでは、入浴者が入浴している状態と入浴していない状態では、浴槽の水位が大きく相違するのは避けられない。これに対して、浴槽の上層側と下層側とにそれぞれ浴湯温度検出手段を設ける場合、上層側の浴湯温度検出手段は、入浴者が入浴していない状態で上層側となる位置に配置される。そのため、入浴者の入浴によって水位が変動すると、上層側の浴湯温度検出手段の位置は浴槽の上層から中層へと相対変位する。
しかしながら、これでは、正確に上層側の浴湯温度を検出することができなくなって、その分、さらに前述した浴湯の温度分布の検出に要する時間が長くなるうえに、精度高く温度分布を検出することもできなくなる。これに対して、本発明では、給湯する湯水の温度を直接検出して、浴湯温度との差を見ているので、上述したような温度検出位置の変動が生じず、浴湯に生じる温度分布を、浴湯において温度分布が発生する直前において前もって精度高く推定検知することができる。
また、浴湯に生じる温度分布を、浴湯において温度分布が発生する直前において前もって精度高く推定検知し、即座に浴湯撹拌手段の動作を制御することができるので、長時間温度分布が発生している浴湯に被介助者を浸漬させ被介助者に不快感を与えてしまう心配もない。
また、給湯(増し湯)動作時に、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留してしまい、浴湯の温度分布が発生する心配はなく、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性を解消でき、安全面で優れたものとなる。
請求項2に記載の発明は、前記給湯温度検出手段を、前記浴槽に供給する湯水の温度を検出する温度センサとし、前記浴湯温度検出手段を、前記浴槽内における浴湯温度を検出する温度センサとし、前記制御部は、前記給湯温度検出手段による検出温度と前記浴湯温度検出手段による検出温度の温度情報に基づいて、自動的に前記浴湯攪拌手段を動作させ、攪拌動作を開始することを特徴とする。
請求項2に記載の発明よれば、介助者が浴湯に手を差し込んで浴湯を攪拌する必要はないので、介助者の入浴介助作業負担を軽減できる。また、温度分布の確認忘れによる火傷を負う危険性も回避できる。
また、給湯(増し湯)時などに温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合であっても、給湯配管内温度センサにより給湯湯水の温度を直ちに検出して安全機構を迅速且つ適切に機能させることが出来る。
請求項3記載の発明は、前記浴湯温度検出手段を前記浴槽内における浴湯温度を検出する温度センサとし
、前記温度センサを複数設け、前記制御部は、前記複数の温度センサそれぞれによる検出温度の温度情報に基づいて自動的に前記浴湯攪拌手段を動作させ、攪拌動作を開始することを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、浴槽内の浴湯の温度分布の発生を確実に検出することができる。
請求項4記載の発明は、前記浴湯温度検出手段は、少なくとも、前記浴槽内における浴湯の温度が最も高くなる位置またはその近傍位置に設けられる温度センサと、前記浴槽内における浴湯の温度が最も低くなる位置またはその近傍位置に設けられる温度センサと、を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、浴湯の温度分布をより速やかに効率良く検出でき、この検出結果に基づいて撹拌動作を開始したり停止することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、前記制御部が、前記浴湯攪拌手段が動作している間は、前記浴湯攪拌手段の停止の指令を受け付けないように制御することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、介助者の操作ミスなどによって浴湯の攪拌が不十分な状態で浴湯攪拌手段が停止されてしまうことがないので、被介助者を温度分布のある浴湯で入浴させることを防止できる。
請求項6に記載の発明は、前記浴湯攪拌手段による浴湯の攪拌中である状態を報知する報知手段を備えたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、前記報知手段による報知動作により、浴湯に温度分布があって、浴湯の攪拌中の状態であることを介助者が容易に認識することができる。
請求項7に記載の発明は、前記浴湯攪拌手段は前記浴槽に備えられる噴流発生装置および/または気泡発生装置であることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、入浴システムに予め備え付けられている噴流発生装置や気泡発生装置を流用して浴湯の攪拌動作が行えるので、別途新たに浴湯攪拌手段を設ける必要がなく、入浴システムが小型化でき、コストも抑えることができる。
本発明では、給湯配管内と浴槽内にそれぞれ配置した温度検出手段により浴湯に発生する温度分布を給湯時に推定検知し浴湯を撹拌制御することで、浴湯に発生し得る温度分布を速やかに解消することができるので、浴湯の温度分布により被介助者に不快感を与えたり、給湯(増し湯)した高温浴湯が上層に滞留して被介助者に火傷を負わせたりする危険性が軽減され、安全性を向上できる。
以下、図1および図2を参照しつつ本発明の第一の実施形態について説明する。入浴システム1は、被介助者である入浴者が仰臥姿勢で横たわる担架2を載せたストレッチャー3を、浴槽4に横付けして、ストレッチャー3と浴槽4との両者を連結したうえで、担架2を浴槽4の入浴部4d内に設けられる支持台5の方向に案内レール6a,6bを利用してスライド移動させ、この移動の後、入浴部4d内に湯を給湯した浴槽4を昇降機構8により上昇させることにより入浴者を湯に浸漬して入浴を行わせるものである。支柱9は、基台10上に一端部が固定され、浴槽4の底壁4aの略中心部を貫通して鉛直状に延設されている。
11は、噴流発生装置であり、浴槽4の側壁4bの湯吸込口4cに循環配管を介して接続された噴流ポンプ11aと、噴流ポンプ11aに分岐配管を介して接続された複数、実施形態では4個の噴流ノズル11bと、各噴流ノズル11bに空気を送り込む空気送込口11cとを備える。浴槽4は、給湯源12から給湯される湯水を浴槽4内に注ぎ込む給湯口13aを有しており、給湯口13aと給湯源12とは給湯配管13bを介して連結されている。なお、14は、排水栓であり、15a,15bは操作パネルである。なお、図1では、噴流ノズル11bと空気送込口11cとは浴槽4の槽外にあるように図示されているが、この図示は、噴流ノズル11bと空気送込口11cとを明瞭に図示するためになされたものであって、噴流ノズル11bと空気送込口11cとが浴槽4の槽内にあるのはいうまでもない。
操作パネル15a,15bは、構成の一例として図3に示している。図3に示す操作パネル15a,15bは、電源を入/切操作するための電源入/切部18、入浴時間を表示する入浴時間表示部19、給湯(増し湯を含む)操作するための操作部20、給湯温度表示部21、浴槽4の昇降機構8を駆動して浴槽4を上昇させたり下降させたり、あるいは停止させたりするときに操作される上昇・下降・停止操作部22、浴槽4の上層やその近傍の湯温を表示する給湯温度表示部23、浴槽4の下層やその近傍の湯温を表示する下層温度表示部24、浴槽4内の噴流を発生させるときに操作される噴流スイッチ部25、および浴槽4内の浴湯が攪拌中であることを音声や表示等により報知する攪拌中報知部26、を備える。これらは、操作パネル15a,15bに内蔵の制御部27により制御される。
この制御部27に、通信機能を設けることで、制御部27と無線通信が可能なリモートコントローラを配備し、リモートコントローラにより以下で説明する制御部27による制御を行わせることができるようにしてもよい。
以上の構成において、入浴システム1においては、給湯配管13b内を流れる湯水の温度を検出する給湯配管内温度センサ16と、浴槽4の側壁4bに設けられて、浴槽4内の浴湯の下層または下層近傍(以下、下層と総称する)の浴湯の温度を検出する浴槽内下方温度センサ17とを具備する。給湯配管内温度センサ16と浴槽内下方温度センサ17とは、例えば、湯水や浴湯の温度を検出すると共に、検出した温度を電気信号に変換するサーミスタで構成することができる。なお、これら給湯配管内温度センサ16,浴槽内下方温度17は、サーミスタに限定されるものではなく、給湯される湯水や浴槽内の浴湯の温度を検出し、検出した温度に対応した電気信号に変換できるセンサであればよい。
そして、本実施形態の入浴システム1は、これら給湯配管内温度センサ16,および浴槽内下方温度センサ17それぞれからの検出出力(給湯/浴湯の温度情報)に基づいて、浴槽4に給湯される湯水と浴槽4内の浴湯との間の温度差が設定閾値以上であれば、噴流発生装置11(浴湯攪拌手段)を自動的に駆動し、噴流ノズル11bから浴槽4内の浴湯に向けて噴流を吐出させて浴湯を攪拌することにより、浴槽4の上層と下層との間で浴湯に温度差が生じることを未然に防止し、さらに、浴槽4に給湯される湯水と浴槽4内の浴湯との間の温度差が設定閾値未満になると、噴流ノズル11bによる浴槽4の浴湯内への噴流の吐出を停止させて、浴湯の攪拌を停止させることができるようにしたことを特徴とする。なお、浴槽4に給湯される湯水と浴槽4内の浴湯との間の温度差が設定閾値以上になった場合や、逆に温度差が設定閾値未満になった場合に、各事象を被介助者に表示や音声報知の手段により被介助者に対して知らせるようにするのが望ましい。
図4に示すように、入浴システム1は、制御部27を備え、この制御部27には、給湯配管内温度センサ16および浴槽内下方温度センサ17と、噴流発生装置11と、攪拌中報知部26と、が接続されている。なお、制御部27には、図示を略するが、操作パネル15a,15bの各部も接続され、制御部27は、操作パネル15a,15bの操作信号の入力処理や操作パネル15a,15bへの表示信号の出力処理を行うことができる。
そして、制御部27は、図5に示すフローチャートを実行するマイクロコンピュータで構成されており、制御部27は、操作パネル15a,15bから入力される操作信号に応答処理したり、操作パネル15a,15bの各表示部に表示信号を出力したりするためのプログラムと共に、ステップn1〜n4を実行できるプログラムを内蔵する。
制御部27の制御動作を図5に示すフローチャートを参照して説明する。以下の説明では、給湯配管内温度センサ16によって検出された給湯配管13b内を流れる湯水の温度を給湯温度と称し、浴槽内下方温度センサ17によって検出される浴槽4の下方における湯水の温度を浴槽内下方温度と称する。
制御部27は、ステップn1で、噴流発生装置11の噴流ポンプ11aを停止させている。制御部27はステップn2で、前記両センサ16,17の検出出力を監視していて、この検出出力が入力されると、この検出出力に基づいて、給湯温度−浴湯内下方温度の値(温度差)が設定閾値以上であれば、YESと判定してステップn4で噴流ポンプ11aを作動させ、噴流ノズル11bから噴流を発生させて浴湯の攪拌を開始する。前記温度差を設定閾値未満に低減させる。
制御部27は、ステップn2で、給湯温度−浴湯内下方温度の値が設定閾値未満であれば、NOと判定してステップn3に移行する。ステップn2では、給湯温度が浴湯内下方温度より設定閾値を超えて高い場合に、浴湯を攪拌するが、これとは逆に、浴湯内下方温度が給湯温度より設定閾値を超えて高い場合がある。
そこで、ステップn3では、浴湯内下方温度−給湯温度の値が設定閾値以上かどうかを判定する。浴湯内下方温度が給湯温度よりも設定閾値を超えて高い場合は、ステップn3ではYESと判定して、ステップn4で、前述と同様、噴流ポンプ11aを作動させて、前記攪拌動作を開始させて上層と下層との間の浴湯の温度差(温度分布)を低減させる。制御部27は、ステップn3でNOと判定すると、ステップn1に戻って、上記各ステップを繰り返し実行する。
このように制御部27により上記フローチャートに従う制御を行うことにより、例えば、初期給湯時に入浴者が浴湯攪拌のために、一々マニュアル操作で噴流スイッチ25を操作させて攪拌させる指示を行う必要がなくなり、介助者の手数が削減され、入浴介助労力を軽減できる。
なお、ステップn2における設定閾値と、ステップn3における設定閾値とは、同一にしてもよいし、異なる値にしてもよい。この設定閾値は給湯時など浴湯の状況に応じて決めてもよい。
また、上記フローチャートに従う制御が自動的に実行されるので、噴流ノズル11bを作動させないまま、給湯配管内の湯水と浴槽下層の浴湯との間の温度差が設定閾値以上であって、浴槽4内の浴湯に大きな温度分布が発生する可能性の高い浴湯の状況が発生することを、給湯開始時において未然にかつ精度高く推定することができるので、温度分布が生じた浴湯に入浴者を浸漬させて不快感を与えてしまう心配もない。
また、操作パネル15a,15bの給湯操作部20を操作して、給湯(増し湯)する際において、浴槽4内の湯温を一定にするため、制御部27は、噴流発生装置11を自動的に動作させて浴湯を攪拌する。そして、制御部27は、給湯配管内温度センサ16と浴槽内下方温度センサ17とにより浴湯の攪拌状況を判断し、両センサ16,17により検出した給湯温度と浴槽内下方温度との間の温度差が設定閾値例えば1℃以内に収束すれば、噴流発生装置11を自動的に停止させる。一方、制御部27は、給湯(増し湯)によって生じている上記温度差が設定閾値以内に収束しなければ、介助者が噴流スイッチ25をOFFにしても、噴流発生装置11の停止の指示を受付けない。
これにより、給湯(増し湯)時に、浴湯が充分に攪拌されずに上層に高温の浴湯が滞留し、下層に冷えた浴湯が滞留し、浴湯の上層と下層との間に不快な温度差(温度分布)が発生してしまう心配はなく、さらには、上層の高温の浴湯に被介助者が浸漬されたままの状態となり、火傷を負う危険性を解消でき、安全面で優れたものとなる。
また、給湯配管内温度センサ16と、浴槽内下方温度センサ17の2個のセンサで浴湯の温度分布の発生を精度高く推定検知することができる。
また、給湯(増し湯)時などに温度設定の誤操作などにより高温の湯を加えてしまった場合であっても、給湯配管内温度センサ16により上層の浴湯の温度を推定して入浴安全機構、例えば、給湯(増し湯)を停止させたり浴槽4を下降させたりする、を迅速且つ適切に機能させることができる。
また、介助者が浴湯に手を差し込んで浴湯を攪拌する必要はないので、介助者の入浴介助作業負担を軽減できる。また、湯温分布の確認忘れによる火傷を負う危険性も回避できる。
制御部27は、噴流ノズル11bが動作している間は、介助者による噴流スイッチ25を操作して攪拌を停止させようとしても、その停止の指令を受け付けないようにするとよい。こうすることで、介助者の操作ミスなどによって浴湯の攪拌が不十分な状態で噴流ノズル11bの噴流による攪拌が停止されてしまうことがなくなり、被介助者(入浴者)を温度分布のある浴湯で入浴させることを防止できる。
特に、前記したように、給湯(増し湯)時に、給湯温度と浴槽4の下層の浴湯温度との間の温度差が設定閾値以内に収束すれば自動的に噴流ノズル11bの噴流動作を停止させるが、設定閾値が例えば第1の設定閾値として1℃以内に収束しない限り、介助者が噴流スイッチ25をOFFにしても噴流発生装置11の停止の操作を受付けないが、給湯(増し湯)時に限らず、給湯配管内温度センサ16と浴槽内下方温度センサ17とにより検出した給湯温度と浴槽4内の下層の浴湯温度との温度差が、第1の設定閾値よりも大きい第2の設定閾値として例えば3℃から外れると、噴流発生装置11による浴湯の攪拌動作を自動的に行うようにするとよい。
制御部27は、給湯温度と浴槽4内下方の浴湯温度との間の温度差が、第1の設定閾値から外れたり、第2の設定閾値から外れたりして、給湯温度と浴槽4内の浴湯温度との間に温度差があって噴流ノズル11bによる浴湯の攪拌中であるときは、攪拌中報知部26を作動して、噴流ノズル11bによる浴湯の攪拌中であることを介助者に報知する。この報知により、浴湯が攪拌中の状態であることを介助者が容易に認識することができる。
なお、浴湯攪拌手段は、噴流ノズル11bに限定されるものではなく、例えば入浴者にマッサージ効果を付与するため浴湯中に微細な気泡を含んだ噴出流を放出させる噴出ノズルを備えた気泡発生装置(不図示)が装備されていれば、この気泡発生装置を作動させ、浴湯中に気泡を発生させることで浴湯を攪拌させてもよい。
このように入浴システムに予め備え付けられている噴流発生装置や気泡発生装置を流用して浴湯の攪拌動作が行えるようにすることで、別途新たに浴湯攪拌手段を設ける必要がなく、入浴システムが小型でき、コストも抑えることができる。もちろん、浴湯の攪拌手段は、噴流発生装置11や気泡発生装置に限定されず、浴湯を攪拌できる機能を備えたものであれば、何でもよい。
図6に本発明の第二の実施形態を示す。図6において図1と同一又は同等の構成要素については、同一符号を付記して、特に説明を要する場合を除いて構成要素の説明は省略する。他の実施形態は、浴槽4に浴槽4内の上層または上層近傍の浴湯温度検出する浴槽内上方温度センサ28を追加したものである。浴槽内上方温度センサ28は、給湯口13aが設けられる側または給湯口13a近傍の浴槽側壁(浴槽内下方温度センサ17が設けられる側壁に対向する側壁)に設けられている。これにより給湯口13aから給湯される湯水の温度を素早く検知し、浴湯撹拌手段の動作を制御(開始及び停止)させることが可能となる。また、浴槽内上方温度センサ28と浴槽内下方温度センサ17の二個の温度センサを設けることで、浴槽内に温度センサを一つだけ設ける場合に比して、浴湯の温度や温度分布をより正確に検出できる
。
本発明は前述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、第一及び第二の実施形態の浴槽内下方温度センサ17は、浴湯の下層温度を検出するものであったが、浴湯の下層温度ではでなく、底壁若しくは底壁近傍の浴湯温度のほか、浴湯の上層と下層との中間層もしくは中間層近傍、または上層若しくは上層近傍の浴湯温度を検出するようにしてもよい。温度センサの取着位置(上下左右位置)はこれらに限定されるものではない。
また、浴槽内の温度センサを、3個、4個・・・とし、これらを浴槽4内の上層から下層まで適宜間隔で配置してもよい。この場合、複数ある浴槽内温度センサから出力される検出結果を単純に平均化して浴槽4内の浴湯温度をしてもよく、また、複数ある浴槽内温度センサから出力される検出結果それぞれに配置箇所に応じた所定の重み付けを付したうえで、重み付けした検出結果を平均化して浴槽4内の浴湯温度としてもよい。
また、3個以上の温度センサを用いる場合は、各温度センサで検出した浴湯の最大温度と最小温度の値の差が設定閾値以上になると、噴流ノズルから噴流を発生させて浴湯の攪拌を開始したり、逆に設定閾値未満になると撹拌を停止するように構成することができる。
また、複数の温度センサを浴槽4に対してどのような位置及び方向に取着するかなどに関しても、第一及び第二の実施形態に限定されるものではない。浴槽内における浴湯の温度が最も高くなる位置またはその近傍位置と、浴槽内における浴湯の温度が最も低くなる位置またはその近傍位置に温度センサが配設されるように構成するのが望ましい。
また、入浴システムは、被介助者を浴槽に入浴させることができるものであれば、如何なる構成のものであっても構わない。例えば、第一及び第二の実施形態における浴槽4は入浴部4d内に支持台5を設けた昇降式浴槽であったが、浴槽を入浴部4d内に支持台5を設けない昇降式浴槽とし、この昇降式浴槽と、昇降式浴槽内において被介助者を載置した載置部を下降させて入浴させることが可能な昇降式ストレッチャーとを組み合わせた入浴システムとしてもよい。また、浴槽を入浴部4d内に支持台5を設けない非昇降式の固定浴槽とし、この固定浴槽と、固定浴槽内において被介助者を載置した載置部を下降させて入浴させることが可能な昇降式ストレッチャーとを組み合わせた入浴システムとしてもよい。
また、貯湯槽と浴槽から構成され、貯湯槽から浴槽の一方向に湯を移送可能な入浴システムのほか、貯湯槽と浴槽との間で湯を循環させて入浴が可能な入浴システムにも本発明は適用できる。この場合、給湯温度検出手段は、浴槽に直接給湯される湯水の温度を検出する温度センサに加えて、貯湯槽から浴槽へ送湯される湯水の温度を検出する温度センサを採用することができる。