JP6077313B2 - 立形研削盤 - Google Patents

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Description

本発明は、数値制御によって研削を行う立形研削盤に関し、その中でも特に工作物の心出し技術に関する。
この種の技術に関する先行技術の1つに、研削砥石が装着される工具主軸に、心出し用冶具を装着して心出しを行う工作機械がある(特許文献1)。
この工作機械では、振れ測定装置を用いてワークの振れが測定され、その測定結果に基づいて所定の修正量が求められる。低速で回転するワークの内周面又は外周面に、心出し用冶具を回転させながら押し付け、求めた修正量に基づいてワークを移動させる。これら一連の心出し操作が、ワークの振れが許容範囲内に入るまで行われる。
特開2004−82242号公報
従来、心出しは手作業で行われていたため、手間がかかるうえに熟練を要し、短時間で精度高く安定して行うのが難しかった。
その点、特許文献1の工作機械であれば、ほとんど人手を介さずに心出しが自動的に行えるので、作業負担が軽減でき、心出しのばらつきも抑制できる。
しかし、特許文献1の工作機械の場合、心出しの際に、ワーク及び心出し用冶具の双方の回転速度に加え、心出し用冶具の移動速度及び移動タイミング等も総合的に制御する必要があり、制御が複雑で扱い難い不利がある。
更に、ワークの振れが許容範囲内に入るまでには、通常、心出し操作は複数回行う必要がある。しかも、心出し操作ごとに、ワークの振れの測定や、ワーク及び心出し用冶具の回転を伴ったワークの移動等、時間を要する複数のステップが行われる。従って、特許文献1の工作機械は、心出しの完了までに時間がかかり易いという不利もある。
そこで、本発明の目的は、簡易且つ短時間で心出しができる立形研削盤を実現することにある。
本発明の立形研削盤は、断面が円形の外周面を有するワークを研削加工する立形研削盤である。この立形研削盤は、前記ワークを直立した状態で支持し、鉛直方向に延びる縦軸回りに回転する支持台と、前記支持台に支持された前記ワークに対して研削加工を行う加工装置と、前記支持台及び前記加工装置の駆動を数値制御する加工制御装置と、前記縦軸に対する心ずれに起因する前記ワークの外周面の振れ量を測定する移動可能なプローブと、前記縦軸に対して前記ワークの心出しを行う心出し装置と、を備える。
前記支持台は、前記ワークが水平方向にスライド可能に載置されて当該ワークを任意の位置で固定可能な支持部を有している。前記心出し装置は、前記ワークをスライド変位させて位置決めする位置決め装置と、前記プローブの測定値に基づいて、前記位置決め装置を駆動制御する心出し制御装置と、を有している。
前記位置決め装置は、前記縦軸と直交する横軸に沿って両側から前記ワークを挟み込む第1クランプ及び第2クランプを有している。そして、前記第1クランプは、前記横軸に沿ってスライド可能で、前記ワークの外周面の前記横軸に対して線対称な2箇所に接する受止アームを有し、前記受止アームの位置が、前記心出し制御装置によって制御可能になっている。
すなわち、この立形研削盤には、ワークの外周面の振れ量を測定するプローブと協働して、ワークの心出しが自動的に行える心出し装置が備えられている。その心出し装置は、ワークをスライド変位させて位置決めする位置決め装置を有し、その位置決め装置は、ワークを挟み込む第1クランプを有している。そして、その第1クランプは、横軸に沿ってスライド可能で、ワークの外周面の横軸に対して線対称な2箇所に接する受止アームを有し、この受止アームの位置が制御可能になっている。
この立形研削盤によれば、まず、受止アームでワークを位置決めすることで、横軸と直交する方向についての外周面の心ずれを解消できる。そして、横軸方向についての外周面の心ずれは、プローブで測定した振れ量に基づいて受止アームの位置を補正し、その受止アームでワークを位置決めすることで解消できる。従って、この立形研削盤によれば、簡易且つ短時間で外周面の心出しができる。
具体的には、前記心出し制御装置は、前記ワークの基準となるマスターワークを用いて位置決めされる前記受止アーム及び前記プローブの基準位置を記憶するマスター記憶部と、前記加工制御装置と協働して、前記ワークの心出しを制御する心出し制御部と、を有している。前記ワークは、基準位置にスライドした前記受止アームによって位置決めされ、前記プローブは、その基準位置に移動して、位置決めされた前記ワークの振れ量を測定する。そして、前記心出し制御部が、両端の振れ量の差が最大となる前記ワークの直径方向が前記横軸に一致する位置に前記支持台を回転させた後、前記振れ量の差の最大値の半量分を、前記受止アームを基準位置からシフトさせることにより、前記ワークの外周面の心出しを行う。
この場合、いったん、マスター記憶部にマスターワークで基準位置を記憶しておけば、その後は、ワークごとに基準位置を設定する必要がなくなるため、利便性に優れる。ワークの外周面の横軸方向の心出しも、ワークを所定位置に回転させて所定量シフトさせるだけで済むため、よりいっそう簡易且つ短時間でできる。
更に、内周面の心出しも簡易且つ短時間で行えるようにするとよい。
具体的には、前記ワークは、更に、断面が円形の内周面を有し、前記プローブは、更に、前記縦軸に対する心ずれに起因する前記ワークの内周面の振れ量を測定する。そして、前記心出し制御部が、前記ワークの外周面の心出しを行った後に、当該ワークの内周面の心出しを行うようにする。
そうすれば、内周面が偏心していても、簡易且つ短時間で正確な心出しが行える。
本発明の立形研削盤によれば、簡易且つ短時間で心出しができるようになる。
本実施形態の立形研削盤を示す概略斜視図である。 立形研削盤の要部を前方から見た、断面図を含む概略図である。 図2の要部を上方から見た、断面図を含む概略図である。 心出し制御装置の概略構成を示すブロック図である。 (a)〜(c)は、ワークを説明する概略図である。 心出しの流れを示すフロー図である。 ティーチングの流れを示すフロー図である。 ティーチング時における、ある状態を示す概略図である。 外径のセンターリングの流れを示すフロー図である。 (a)〜(c)は、外径のセンターリング時における、ある状態を示す概略図である。 受止アームとワークとの関係を説明する図である。 (a),(b)は、振れ量とワークとの関係を説明する図である。 内径のセンターリングの流れを示すフロー図である。 ワークの概略平面図である。 内径のセンターリング時における、ある状態を示す概略図である。 (a),(b)は、振れ量とワークとの関係を説明する図である。 内径のセンターリング時における、ある状態を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<立形研削盤の構成>
図1に、本願発明を適用した立形研削盤1を示す。この立形研削盤1は、数値制御によって自動的に研削加工ができる、いわゆるNC工作機械である。
この立形研削盤1では、主に円筒形状をした金属製の工作物(ワークW)が加工対象とされており、ワークWの外周面及び内周面の研削加工ができる。ここでいう円筒状のワークWとは、必ずしもワークWの全体が円筒形状でなくてもよく、少なくともその外周面及び内周面の各々に、同心円状になった、断面が真円に近い円形の部分があればよい。
立形研削盤1は、ベッド2やコラム3などで構成されている。ベッド2は、左右横方向に延びるように水平な設置面に載置される。コラム3は、上下縦方向に延びるようにベッド2の後側に併設されている。ベッド2やコラム3の周囲は箱形のカバーで覆われているが、そのカバー等、特に説明を要しない立形研削盤1の構成については、図示を省略している。
ベッド2の上面には、左右横方向(X軸方向ともいう)に延びる横軸Jyに沿ってスライド可能なベース4が設置されており、ベース4の上面には、チャック30(支持台)及び心出し装置50が設置されている。加工時には、チャック30の上にワークWが直立した状態で支持され、ベース4が待機位置から加工位置へとスライドする。
コラム3の前面には、加工装置70及びプローブ5が設置されている。コラム3には、また、これらの駆動制御に関連するNC加工制御装置6などの各種装置も設置されている。
加工装置70は、ターレット71や内面研削用の第1工具72及び外面研削用の第2工具73などで構成されており、チャック30に支持されたワークWに対して研削加工を行う。ターレット71は、コラム3の前面に設置され、鉛直方向(Z軸方向ともいう)にスライド変位するとともに、前後横方向(Y軸方向ともいう)に延びる回転軸Jk回りに回転する。
第1工具72及び第2工具73は、いずれも回転可能な工具軸74と、その先端に取り付けられた砥石75とで構成されており、ターレット71の前面に互いに逆向きに設置されている。この立形研削盤1では、ターレット71をスライド制御及び回転制御し、第1工具72及び第2工具73のいずれか一方を選択して研削加工を行うことにより、一台でワークWの内外両面の加工ができるようになっている。
プローブ5は、ワークWの振れ量を測定する接触式のセンサであり、ワークWから離れる待機位置と、チャック30の上にあるワークWに接する測定位置とに移動可能に設置されている。プローブ5の測定位置は、任意に設定可能である。
例えば、ワークWの外周面に接触する測定位置にプローブ5を移動させれば、縦軸Jtに対する心ずれによって生じるワークWの外周面の振れ量が測定できる。また、ワークWの内周面に接触する測定位置にプローブ5を移動させれば、縦軸Jtに対する心ずれによって生じるワークWの内周面の振れ量が測定できる。
NC加工制御装置6は、高性能なコンピュータと、これに実装されたプログラム等のソフトウエアとで構成されている。加工装置70、ベース4、プローブ5及びチャック30などは、NC加工制御装置6と電気的に接続されており、研削加工時には、これらの速度や位置、作動タイミング等がNC加工制御装置6によって数値制御される。
図2及び図3に詳しく示すように、チャック30には、軸部31、サーボモータ32などが備えられている。
軸部31は、不図示のベアリングを介してベース4に回転自在に支持されており、鉛直方向に延びる縦軸Jt回りに回転する。縦軸Jtは、横軸Jyと交わるように配置されている。この軸部31の上端部に円板状のチャック30が取り付けられていて、チャック30はベース4の上側に配置されている。軸部31は、ベルトを介してサーボモータ32と連結されており、チャック30及び軸部31は、サーボモータ32によって回転駆動される。
チャック30の上面30aは、水平方向に拡がる平坦面となっており、その上にワークWが載置される。チャック30には電磁石が内蔵されている。電磁石及びサーボモータ32は、NC加工制御装置6と電気的に接続されていてる。
そのため、チャック30の上面30aに載置されたワークWは、水平方向にスライド可能であり、電磁石に電流を供給することにより、ワークWをチャック30の上面30aの任意の位置で固定することができる。また、ワークWを縦軸Jt回りに回転させ、任意の回転位置で固定することもできる。すなわち、この立形研削盤1では、チャック30の上面30aが支持部を構成している。
心出し装置50は、縦軸Jtに対してワークWの心出しを自動的に行う装置であり、位置決め装置51や、位置決め装置51を駆動制御する心出し制御装置60などで構成されている。この立形研削盤1では、心出し制御装置60は、NC加工制御装置6に組み込まれている。心出し制御装置60については後述する。
位置決め装置51は、チャック30の上面30aに載置されたワークWを、水平方向にスライド変位させて所定位置に位置決めする装置であり、横軸Jyに沿って左右両側からワークWを挟み込むV形クランプ53(第1クランプ)及びI形クランプ54(第2クランプ)を有している。
V形クランプ53は、ベース4の上のチャック30の左側に配置されており、受止アーム55、アクチュエータ56などで構成されている。アクチュエータ56は、ベース4の上面に取り付けられており、サーボモータ56a、ネジ軸56b、支持軸56c、スライド部材56dなどで構成されている。ネジ軸56bは、X軸方向をチャック30側に向かって延びており、支持軸56cは、ネジ軸56bの両側に有り、それぞれネジ軸56bと平行に配置されている。サーボモータ56aは、ネジ軸56bを回転駆動する。
スライド部材56dは、X軸方向に貫通したネジ孔及びガイド孔を有しており、ネジ孔にはネジ軸56bがねじ込まれ、ガイド孔には支持軸56cが挿入されている。従って、スライド部材56dは、両支持軸56cに支持された状態で、ネジ軸56bの回転によって高精度に位置決めされながら、X軸方向にスライド変位する。このスライド部材56dに、受止アーム55が固定されている。
受止アーム55は、板状の部材からなり、チャック30側に張り出すように、スライド部材56dの上面に固定されている。受止アーム55の張り出し部分の先端側には、略V字状に凹む切欠55aが形成されている。切欠55aの各側縁55bは、一直線に延びており、横軸Jyに対して線対称に配置されている。
I形クランプ54は、ベース4の上のチャック30の右側に配置されており、押付アーム54a、支持アーム54bなどで構成されている。支持アーム54bは、ベース4に取り付けられていて、鉛直方向に延びる揺動軸Js回りに揺動する。押付アーム54aは、矩形棒状の部材からなり、支持アーム54bの先端に、支持アーム54bと直交して固定されている。
押付アーム54aは、チャック30の上面30aに載置されたワークWを受止アーム55に向かって押し込むクランプ位置と、チャック30から離れて退避する待機位置との間を変位する。従って、チャック30の上面30aに載置されたワークWは、水平方向にスライド可能な状態で、押付アーム54aによって受止アーム55に向かって押し込まれると、ワークWは、受止アーム55の両側縁55bに誘導されながら両クランプ53,54によって挟み込まれる。
最終的には、ワークWは、受止アーム55と接する、その外周面における横軸Jyに対して線対称な2箇所と、押付アーム54aの先端が接する、横軸Jyの上又はその近傍の1箇所との計3箇所で3点支持されることとなる。
V形クランプ53及びI形クランプ54は、心出し制御装置60と電気的に接続されており、ワークWの心出し時に駆動制御される。特に、V形クランプ53の受止アーム55の位置が、プローブ5の測定値に基づいて駆動制御されることで心出しが行われる。
図4に、心出し制御装置60の構成を示す。心出し制御装置60には、マスター記憶部61、V形クランプ駆動部62、I形クランプ駆動部63、心出し制御部64が備えられている。心出し制御装置60は、NC加工制御装置6との間で情報交換が可能であり、適宜、NC加工制御装置6と協働して心出し制御を実行する。
マスター記憶部61は、受止アーム55の心出し基準位置及びプローブ5の測定基準位置を記憶する。これら心出し基準位置及び測定基準位置は、研削加工後のワークWの基準(原器)となるマスターワークMWを用いて位置決めされる。マスター記憶部61はまた、事前に入力される、心出しとして許容される心ずれ量(心ずれ許容量)も記憶する。
V形クランプ駆動部62はV形クランプ53を駆動制御し、I形クランプ駆動部63はI形クランプ54を駆動制御する。心出し制御部64は、これらV形クランプ駆動部62やI形クランプ駆動部63、更にはNC加工制御装置6と協働して、ワークWの心出しの工程を制御する。
<ワークの心出し>
図5に、本実施形態のワークWの平面図を例示する。なお、便宜上、ワークWの大小等を誇張して表している場合がある。
図5の(a)に示すように、ワークWは、同心円である、外径Roの外周面及び内径Riの内周面を有している。研削加工前のワークWは、高度な真円度を有していても、図5の(b)に示すように、マスターワークMWの半径Rsに対して、R’やR’’等の寸法のばらつきが、外径Ro及び内径Riの双方に存在する。
また、図5の(c)に示すように、マスターワークMWの中心Osに対して、内周面が偏心し、Oi’やOi’’等の中心位置のばらつきも存在する。これら成形誤差のばらつきは、通常、1mm以下の僅かなものではあるが、そのまま加工すれば中心位置がずれるため、高精度な研削加工を行う場合には問題となる。
そのため、研削加工時には、ワークWごとに心出しの作業が必要になる。ところが、ワークWは、重量物が多く、微妙な調整が必要なため、心出しを手作業で行うと、手間がかかるうえに熟練を要し、短時間で精度高く安定して行うのは難しい。
それに対し、この立形研削盤1では、心出し装置50を用いて、外周面及び内周面の各々の心出しが迅速かつ容易にできるように工夫されている。
図6に示すように、心出しは、マスターワークMWを用いた位置決め(ティーチング:ステップS1)、外周面の心出し(外径のセンターリング:ステップS2)及び内周面の心出し(内径のセンターリング:ステップS3)の順に行われる。各センターリングは研削加工するワークWごとに行う必要があるが、ティーチングは、各種ワークWに対して最初に一度だけ行えばよい。
(ティーチング)
図7を参照しながら、ティーチングの流れを示す。ティーチングでは、まず、マスターワークMWがチャック30の上面に載置され、マスターワークMWの中心Osと縦軸Jtとが一致するように位置決めされる(ステップS11)。そうして位置決めされたマスターワークMWに対し、図8に示すように、受止アーム55が、マスターワークMWの外周面と、横軸Jyに対して線対称な2箇所で接するまでV形クランプ53をスライドさせる。そうして、その位置を心出し基準位置としてマスター記憶部61に記憶させる(ステップS12)。
上記操作に引き続き、マスターワークMWの外周面の振れ量が適切に測定できる位置にプローブ5を移動させ、その位置を外径測定位置(基準位置)としてマスター記憶部61に記憶させる。同様にして、マスターワークMWの内周面の振れ量が適切に測定できる位置にプローブ5を移動させ、その位置を内径測定位置(基準位置)としてマスター記憶部61に記憶させる。(ステップS13)。ステップS12及びステップS13は、順序が逆であってもよい。
(外径のセンターリング)
図9を参照しながら、外径のセンターリングの流れを示す。最初に、加工するワークWを、目視レベルで、その外周面の中心O’が縦軸Jtと重なるようにチャック30の上面に載置する(ステップS21)。次に、立形研削盤1を操作して、V形クランプ53を心出し基準位置に前進させる(ステップS22)。
これと同時かその後に、図10の(a)に示すように、ワークWは、I形クランプ54によってV形クランプ53に押し付けられる(ステップS23)。そうすることで、ワークWは、心出し基準位置にある受止アーム55の切欠55aに誘導されながらスライドし、最終的に、図10の(b)に示すように、3点支持された状態で位置決めされる。このとき、ワークWは外径寸法の違いによってX軸方向にのみ心ずれしている。
詳しくは、切欠55aの両側縁55bは、横軸Jyに対して線対称に位置しているため、ワークWのY軸方向の心ずれは、クランプ時における切欠55aの誘導によって解消される。従って、3点支持された状態でのワークWの心ずれはX軸方向だけになる。
具体的には、図11に示すように、ワークWがマスターワークMWよりも小さい場合には(R’<Rs)、ワークWの中心O’は、横軸Jyの上を、マスターワークMWの中心Osから受止アーム55側にずれて位置している。また、ワークWがマスターワークMWよりも大きい場合には(R’’>Rs)、ワークWの中心O’は、横軸Jyの上を、マスターワークMWの中心Osから受止アーム55の逆側にずれて位置している。
続いて、自重によってワークWが動かずに安定し、静止した状態でワークWの振れ量の測定ができる場合にはそのままで、ワークWが動くおそれがある場合には電磁石によって固定した後、V形クランプ53及びI形クランプ54が後退し、ワークWから離れる(ステップS24)。
次に、図10の(c)に示すように、プローブ5が外径測定位置に移動し(ステップS25)、チャック30が縦軸Jt回りに低速で回転(少なくとも1回転)することにより、ワークWの振れ量の測定が行われる(ステップS26)。
ちなみに、ここでいう振れ量とは、中心Osが縦軸Jtと一致するように位置決めされマスターワークMWの外径(±0)を基準として、そこから半径方向に外れる大きさである。
振れ量は、プローブ5の測定位置を通る直径線の上に、ワークWの中心O’が位置する場合に最大値又は最小値を示す。例えば、図12の(a)に示すように、中心O’が縦軸Jtよりもプローブ5から離れて位置した時に振れ量は最小になり、図12の(b)に示すように、中心O’が縦軸Jtよりもプローブ5に近づいて位置した時に振れ量は最大になる。
そうして、心出し制御部64は、振れ量の最大値及び最小値を取得すると、これらの差の絶対値(最大振れ量差)と、それに対応して設定された心ずれ許容量とを比較する(ステップS27)。その結果、最大振れ量差が心ずれ許容量よりも大きい場合には、心出しが必要と判断し(ステップS27でYes)、心出しのステップを行う。
すなわち、心出し制御部64は、NC加工制御装置6と協働して、最大振れ量差となるワークWの直径の方向を求め、その直径の方向が、V形クランプ53のスライド方向、つまりX軸方向と一致するまでチャック30を回転させる(ステップS28)。
心出し制御部64は、その位置ずれした方向に応じて、最大振れ量差の半量分だけ、受止アーム55の固定位置を心出し基準位置からシフトさせる(ステップS29)。具体的には、図12の(a)に示したようにチャック30を回転させた後、最大振れ量差の1/2の量を、受止アーム55の固定位置を心出し基準位置から前進させる。なお、図12の(b)に示したようにチャック30を回転させ、受止アーム55の固定位置を心出し基準位置から最大振れ量差の1/2だけ後退させてもよい。
そうしておいて、心出し制御部64は、その固定位置がシフトしたV形クランプ53に対して、I形クランプ54でワークWを押し付け、ワークWのX軸方向における位置を微調整する(ステップS30)。受止アーム55を前進させる場合には、V形クランプ53によってワークWを押し出すことができるので、I形クランプ54による押し付けは省略してもよい。
その結果、ワークWの外径の差に基づく心ずれが解消される。心ずれが解消できたかどうかを確認するために、プローブ5でワークWの振れ量を測定してもよい。なお、ステップS27において、最大振れ量差が心ずれ許容量よりも小さい場合には、心出しは不要と判断され(ステップS27でNo)、一連の心出しのステップは行われない。
後は、V形クランプ53及びI形クランプ54を後退させ、ワークWから離せば(ステップS31)、ワークWの外周面の心出しは完了する。従って、外周面の研削加工を行う場合には、続いて電磁石でワークWをクランプすることにより、研削の工程に移行することができる。
(内径のセンターリング)
ワークWの内周面に寸法誤差があっても、外周面と同心円であれば心出しの作業は不要である。しかしながら、図5の(c)に示したように、ワークWの内周面は僅かに偏心している場合がある。
その場合、外周面の心出しを行っただけでは、内周面の高精度な研削加工が行えない。従って、内周面について高精度な研削加工を行う場合には、内周面の心出しが必要になる。
ところが、ワークWの外周面には寸法誤差があるため、外周面と同じようにして、いきなり内周面の心出しを行うと、外周面の寸法誤差が内周面の振れ量の測定に影響し、正確な心出しができない。
そこで、この立形研削盤1では、事前に外周面の心出しを行って外周面の中心O’と縦軸Jtとを一致させてから、内周面の心出しを行うようにしている。
図13を参照しながら、内径のセンターリングの流れを示す。本実施形態では、外周面の心出しに引き続き、内周面の心出しが行われる。なお、説明では、図14に示すように、ワークWの内周面の中心O’’は、寸法aだけ外周面の中心O’から偏心しているものとする。
外周面の心出しが完了したステップS31の後、その状態で、図15に示すように、プローブ5が内径測定位置に移動し(ステップS41)、チャック30が縦軸Jt回りに低速で回転(少なくとも1回転)することにより、ワークWの振れ量の測定が行われる(ステップS42)。
このとき、外周面の中心O’は、縦軸Jtと一致しているため、偏心量aの分だけ、内周面の中心O’’が偏心した状態で回転する。ここでの振れ量は、中心Osが縦軸Jtと一致するように位置決めされたマスターワークMWの内径を基準(±0)として、そこから半径方向に外れる大きさである。
振れ量は、プローブ5の測定点を通る直径線の上にワークWの中心O’’が位置する場合に最大値又は最小値を示す。例えば、図16の(a)に示すように、中心O’’が縦軸Jtよりもプローブ5から離れて位置した時に振れ量は最小になり、図16の(b)に示すように、中心O’’が縦軸Jtよりもプローブ5に近づいて位置した時に振れ量は最大になる。
そうして、心出し制御部64は、振れ量の最大値及び最小値を取得すると、これらの差の絶対値(最大振れ量差)と心ずれ許容量とを比較する(ステップS43)。この例では、最大振れ量差は2aである。その結果、最大振れ量差が心ずれ許容量よりも大きい場合には、心出しが必要と判断し(ステップS43でYes)、心出しのステップを行う。
すなわち、心出し制御部64は、NC加工制御装置6と協働して、最大振れ量差となるワークWの直径の方向を求め、その直径の方向が、V形クランプ53のスライド方向、つまりX軸と一致するまでチャック30を回転させる(ステップS44)。
心出し制御部64は、その位置ずれした方向に応じて、最大振れ量差の半量分、つまり寸法aだけ、受止アーム55を心出し基準位置からシフトさせる(ステップS45)。
具体的には、図16の(a)に示したようにチャック30を回転させた後、受止アーム55の固定位置を心出し基準位置から寸法aの分だけ前進させる。なお、図16の(b)に示したようにチャック30を回転させ、受止アーム55の固定位置を心出し基準位置から寸法aの分だけ後退させてもよい。
そうしておいて、図17に示すように、心出し制御部64は、その固定位置がシフトしたV形クランプ53に対して、I形クランプ54でワークWを押し付け、ワークWのX軸方向における位置を微調整する(ステップS46)。受止アーム55を前進させる場合には、I形クランプ54でワークWを押し付けるのを省略して、単にV形クランプ53でワークWを押し出すだけでもよい。
その結果、ワークWの内径の偏心に基づく心ずれが解消される。心ずれが解消できたかどうかを確認するために、プローブ5でワークWの振れ量を測定してもよい。なお、ステップS43において、最大振れ量差が心ずれ許容量よりも小さい場合には、心出しは不要と判断され(ステップS43でNo)、一連の心出しのステップは行われない。
後は、V形クランプ53及びI形クランプ54を後退させ、ワークWから離せば(ステップS47)、ワークWの内周面の心出しは完了する。従って、続いて電磁石でワークWをクランプすることにより、内周面の研削の工程に移行することができる。
なお、本発明にかかる立形研削盤1は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
例えば、実施形態では、ワークWの内外両面の研削加工が可能な立形研削盤1を示したが、外面又は内面の各面だけ研削加工が可能な立形研削盤にも適用できる。前者の場合であれば、内面の心出しに関する構成は省略できる。
心出し制御装置60は、NC加工制御装置6と別に構成してもよい。加工装置70の構成は、一例である。例えば、多種の工具を交換可能に設置して、端面加工等もできるようにしてもよい。I形クランプ54等の構成も一例である。仕様に応じて適宜変更できる。
1 立形研削盤
5 プローブ
6 NC加工制御装置
30 チャック(支持台)
30a 上面(支持部)
50 心出し装置
51 位置決め装置
53 V形クランプ(第1クランプ)
54 I形クランプ(第2クランプ)
55 受止アーム
60 心出し制御装置
64 心出し制御部
70 加工装置
W ワーク
MW マスターワーク
Jy 横軸
Jt 縦軸

Claims (1)

  1. 断面が円形の外周面及び内周面を有するワークを研削加工する立形研削盤であって、
    前記ワークを直立した状態で支持し、鉛直方向に延びる縦軸回りに回転する支持台と、
    前記支持台に支持された前記ワークに対して研削加工を行う加工装置と、
    前記支持台及び前記加工装置の駆動を数値制御する加工制御装置と、
    前記縦軸に対する心ずれに起因する前記ワークの外周面の振れ量を測定する移動可能なプローブと、
    前記縦軸に対して前記ワークの心出しを行う心出し装置と、
    を備え、
    前記支持台は、前記ワークが水平方向にスライド可能に載置されて当該ワークを任意の位置で固定可能な支持部を有し、
    前記心出し装置は、
    前記ワークをスライド変位させて位置決めする位置決め装置と、
    前記プローブの測定値に基づいて、前記位置決め装置を駆動制御する心出し制御装置と、
    を有し、
    前記位置決め装置は、前記縦軸と直交する横軸に沿って両側から前記ワークを挟み込む第1クランプ及び第2クランプを有し、
    前記第1クランプは、前記横軸に沿ってスライド可能で、前記ワークの外周面の前記横軸に対して線対称な2箇所に接する受止アームを有し、
    前記受止アームの位置が、前記心出し制御装置によって制御可能となっており、
    前記心出し制御装置は、更に、
    前記ワークの基準となるマスターワークを用いて位置決めされる前記受止アーム及び前記プローブの基準位置を記憶するマスター記憶部と、
    前記加工制御装置と協働して、前記ワークの心出しを制御する心出し制御部と、
    を有し、
    前記ワークは、基準位置にスライドした前記受止アームによって位置決めされ、
    前記プローブは、その基準位置に移動して、位置決めされた前記ワークの振れ量を測定し、
    前記心出し制御部が、両端の振れ量の差が最大となる前記ワークの直径方向が前記横軸に一致する位置に前記支持台を回転させた後、前記振れ量の差の最大値の半量分を、前記受止アームを基準位置からシフトさせることにより、前記ワークの外周面の心出しを行い、
    前記プローブは、更に、前記縦軸に対する心ずれに起因する前記ワークの内周面の振れ量を測定し、
    前記心出し制御部が、前記ワークの外周面の心出しを行った後に、当該ワークの内周面の心出しを行う立形研削盤。
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