[第1実施形態]
第1実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について説明する。
(全体構成)
図1には、第1実施形態の画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、複数のフレーム及び板材を含む部材で構成された装置本体15を有している。また、画像形成装置10は、上下方向(Y方向)の下側から上側へ向けて、記録媒体の一例としての記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録用紙Pに画像形成を行う主動作部14とを有している。さらに、画像形成装置10は、主動作部14の上に設けられ原稿(図示省略)を読み取る原稿読取部16と、主動作部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、を有している。
なお、図中の「○」の中に「×」が記載されたものは、手前から奥へ向かう矢印を意味し、図中の「○」の中に「・」が記載されたものは、奥から手前へ向かう矢印を意味する。また、画像形成装置10をユーザー(図示省略)が立つ側から正面視して、X方向は右方向、−X方向は左方向、Y方向は上方向、−Y方向は下方向、Z方向は奥行き方向、−Z方向は手前方向に相当している。
(用紙収容部)
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙Pを収容可能な第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28を有している。第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28には、収容された記録用紙Pを一枚ずつ送り出す送り出しロール32と、送り出された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路30に搬送する搬送ロール34とが設けられている。
また、搬送路30における搬送ロール34よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送する複数の搬送ロール36が設けられている。さらに、搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙Pを一端停止させると共に、決められたタイミングで後述する二次転写位置へ送り出すことで画像転写の位置合せを行う位置合せロール38が設けられている。
搬送路30の上流側部分は、画像形成装置10の正面視において、矢印Y方向に向けて用紙収容部12の−X方向側から主動作部14の−X方向側下部まで直線状に設けられている。また、搬送路30の下流側部分は、主動作部14の−X方向側下部から主動作部14のX方向側面に設けられた排紙部13まで設けられている。さらに、搬送路30には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路31が接続されている。なお、両面搬送を行わないときの記録用紙Pの搬送方向は、矢印A(以後、A方向という)で示されている。
両面搬送路31は、画像形成装置10の正面視において、主動作部14のX方向側下部から用紙収容部12のX方向側まで矢印Y方向に直線状に設けられた反転部33を有している。さらに、両面搬送路31は、反転部33に搬送された記録用紙Pの後端が進入するとともに図示の−X方向側(矢印Bで示す)に記録用紙Pを搬送する搬送部35を有している。そして、搬送部35の下流側端部は、搬送路30の位置合せロール38よりも上流側に案内部材(図示省略)により接続されている。なお、図1において、反転部33及び搬送部35には複数の搬送ロールが間隔をあけて設けられているが、図示を省略している。また、搬送路30と両面搬送路31との切り替えを行う切替部材、及び反転部33と搬送部35との切り替えを行う切替部材についても図示を省略している。
(原稿読取部)
原稿読取部16には、複数の原稿(図示省略)を置くことが可能な原稿置台41と、一枚の原稿が載せられるガラス42と、ガラス42に載せられた原稿を読み取る原稿読取装置44と、読み取られた原稿が排出される原稿排出部43とが設けられている。
原稿読取装置44は、ガラス42に載せられた原稿に光を照射する光照射部46と、光照射部46によって照射され原稿から反射された反射光をガラス42と平行な方向に反射させて折り返すフルレートミラー48及びハーフレートミラー52とを有している。さらに、原稿読取装置44は、フルレートミラー48及びハーフレートミラー52によって折り返された反射光が入射する結像レンズ54と、結像レンズ54によって結像された反射光を電気信号に変換する光電変換素子56とを有している。
なお、光電変換素子56によって変換された電気信号は、画像処理装置(図示省略)で画像処理され画像形成に用いられるようになっている。また、フルレートミラー48は、ガラス42に沿ってフルレートで移動し、ハーフレートミラー52は、ガラス42に沿ってハーフレートで移動するようになっている。
(主動作部)
主動作部14は、装置本体15内に、記録用紙P上にトナー画像(現像剤像の一例)を形成する現像剤像形成手段の一例としての画像形成部60と、画像形成部60で形成された記録用紙P上の現像剤像を定着する定着装置90と、が設けられている。
画像形成部60は、現像剤の一例としてのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及び ブラック(K)の各トナーに対応して設けられた感光体62K、62C、62M、62Yを備えた画像形成ユニット64K、64C、64M、64Yを有している。なお、以後の説明では、Y、M、C、Kを区別する必要がある場合は、数字の後にY、M、C、Kのいずれかの英字を付して説明し、同様の構成でY、M、C、Kを区別する必要がない場合は、Y、M、C、Kの記載を省略する。
また、画像形成部60は、感光体62K、62C、62M、62Yの外周面に光ビームLを出射して露光する露光ユニット66K、66C、66M、66Yを有している。さらに、画像形成部60は、画像形成ユニット64K、64C、64M、64Yで形成されたトナー画像を記録用紙P上に転写する転写装置100を有している。
露光ユニット66は、光源(図示省略)から出射された光ビームを回転多面鏡(ポリゴンミラー:符号無し)で走査すると共に反射ミラーを含む複数の光学部品で反射して、各トナーに対応した光ビームLを感光体62へ向けて出射する構成となっている。また、感光体62は、露光ユニット66の下方側(−Y方向側)に設けられている。
図2に示すように、画像形成ユニット64は、矢印+R方向(図示の時計回り方向)に回転可能に設けられた感光体62を有している。また、画像形成ユニット64は、感光体62の外周面と対向して回転方向の上流側から下流側へ順に配置された帯電器72、現像器74、及びクリーニングユニット76を有している。なお、帯電器72と現像器74は、感光体62の外周面で帯電器72と現像器74との間の位置に光ビームLが照射されるように配置されている。また、感光体62の外周面で現像器74とクリーニングユニット76との間の位置には、現像器74で現像されたトナー画像が一次転写される後述する中間転写ベルト102が接触している。
感光体62は、導電性を有すると共に接地される円筒状の基材(図示省略)と、この基材の外周面で径方向に順次積層された電荷発生層、電荷輸送層、及び保護層を含む表面層(図示省略)とで構成されている。そして、感光体62は、モータ(図示省略)の駆動により矢印+R方向に回転可能となっている。
帯電器72は、一例として、ワイヤに電圧を印加してコロナ放電により感光体62の外周面をトナーと同極性に帯電させるコロトロン方式の帯電手段で構成されている。そして、画像形成ユニット64では、帯電した感光体62の外周面に画像データに基づいて光ビームLが照射されることで、潜像(静電潜像)が形成されるようになっている。
現像器74は、一例として、磁性体からなるキャリア粒子とトナーが混合された現像剤Gを収容しており、現像器74には、周方向に複数の磁極を有するマグネットロール(図示省略)を内側に備えた円筒状の現像スリーブ75が設けられている。そして、現像器74は、感光体62と対向する部位で磁気ブラシを形成すると共に、現像スリーブ75に現像バイアスが印加されることで、感光体62の外周面の潜像をトナーで顕在化させてトナー画像を形成するようになっている。なお、各現像器74には、画像形成部60の上方に設けられた各トナーカートリッジ79(図1参照)からトナーが供給されるようになっている。
クリーニングユニット76は、感光体62の回転方向に先端側を向けて配置されると共に感光体62の外周面と接触するクリーニングブレード77を有している。そして、クリーニングユニット76は、感光体62の外周面に残留した転写残りのトナーをクリーニングブレード77で掻き落として回収するようになっている。
図1に示すように、駆動ロール112の近くで中間転写ベルト102の外周面と対向する位置には、二次転写後の中間転写ベルト102上の残留トナーや紙粉を除去するクリーニングブレード116が設けられている。なお、中間転写ベルト102の外周面でトナー画像が転写されない非下流側転写領域の基準位置には、一例として、光を反射するシール部材(図示省略)が固定されている。また、このシール部材と対向可能となる位置には、中間転写ベルト102の非下流側転写領域に光を照射すると共に、シール部材で反射された光を受光することで中間転写ベルト102の基準位置を検知する位置センサ(図示省略)が設けられている。これにより、画像形成部60では、位置センサで得られた基準位置の信号に基づいて、各部の画像形成動作が行われる。
記録用紙Pの移動方向で二次転写ロール106よりも下流側には、トナー画像の二次転写が終了した記録用紙Pを定着装置90へ搬送する搬送ベルト96が設けられている。搬送ベルト96は、支持ロール97及び駆動ロール98に巻き掛けられており、モータ(図示省略)が駆動ロール98を回転駆動することによって、定着装置90へ記録用紙Pを搬送するようになっている。
<要部構成>
次に、転写装置100の一例について説明する。
図1に示すように、転写装置100は、像保持部材及びベルトの一例としての中間転写ベルト102と、一次転写ロール104と、転写部材、設定手段、及び加圧部材の一例としての二次転写ロール106及び補助ロール108とを有している。さらに、転写装置100は、転写電圧を二次転写ロール106に印加する電圧印加手段の一例としての電源120(図4参照)を有している。
(中間転写ベルト)
中間転写ベルト102は、一例として、ポリイミドあるいはポリアミドからなる樹脂にカーボンブラック(帯電防止剤)を含有させた無端状のベルトで構成されている。中間転写ベルト102の内側には、画像形成ユニット64Y及び一次転写ロール104Y側に配置されモータ(図示省略)により回転駆動される駆動ロール112と、回転可能に設けられた複数の搬送ロール114とが配置されている。
そして、中間転写ベルト102は、駆動ロール112、搬送ロール114、及び補助ロール108に巻き掛けられている。これにより、中間転写ベルト102は、駆動ロール112が図示の反時計周りに回転すると、C方向(図示の反対時計回り方向である矢印C方向)に周回移動するようになっている。なお、本実施形態では、一例として、中間転写ベルト102は、Z方向に見てX方向に長い逆鈍角三角形状の姿勢とされており、補助ロール108が−Y側の頂部に位置している。
(一次転写ロール)
一次転写ロール104は、一例として、ステンレス鋼で構成された円柱状のシャフトの周囲にスポンジ層(図示省略)が形成された構成となっており、シャフトの両端部がベアリングで支持されることにより、Z方向を軸方向として回転可能となっている。そして、一次転写ロール104は、感光体62とで中間転写ベルト102を挟むように中間転写ベルト102の内周面に接触することで、一次転写部N1を形成している。また、一次転写ロール104は、電源(図示省略)からシャフトにトナーの極性とは逆極性の転写電圧が印加されることで、感光体62から中間転写ベルト102上にトナー画像を一次転写させるようになっている。
(二次転写ロール)
二次転写ロール106は、一例として、一次転写ロール104と同様の構成となっており、搬送路30における位置合せロール38の下流側に配置され、Z方向を軸方向として回転可能に設けられている。また、二次転写ロール106は、補助ロール108とで中間転写ベルト102を挟むように中間転写ベルト102の外周面に接触することで、中間転写ベルト102との間に転写部の一例としての二次転写部N2を形成している。そして、二次転写ロール106は、補助ロール108と共に、二次転写部N2の後述する圧力分布を設定するように構成されている。
(補助ロール)
補助ロール108は、一例として、接地されたステンレス鋼製の軸部(図示省略)を有しており、二次転写ロール106の対向電極を形成している。ここで、二次転写ロール106に電源120から転写電圧が印加されることで、補助ロール108と二次転写ロール106との間に電位差が生じ、中間転写ベルト102上のトナー画像が二次転写部N2に搬送される記録用紙P上に二次転写される。
(電源)
図4に示すように、電源120は、二次転写ロール106に電気的に接続されている。そして、電源120は、トナー像TAの極性とは逆極性の直流電圧に交流成分の電圧を重畳した転写電圧を二次転写ロール106に印加するようになっている。なお、直流電圧は、二次転写部N2において、トナー像TAを中間転写ベルト102から記録用紙Pへ転写させる電界を形成するために印加される。また、交流成分の電圧は、中間転写ベルト102上のトナー像TAを構成するトナー粒子を中間転写ベルト102の厚み方向に振動させて、トナー像TAを中間転写ベルト102から離れやすくするために印加される。
<比較例>
図11及び図12(C)には、比較例の転写装置200の二次転写部N2が示されている。転写装置200は、中間転写ベルト102と、二次転写ロール106と、補助ロール108と、電源120とを有している。そして、転写装置200は、X方向において、二次転写ロール106の回転中心位置OAが補助ロール108の回転中心位置OBよりも−X側に配置されている。ここで、回転中心位置OAを通りY方向に沿った直線Vと、回転中心位置OA、OBを結ぶ線分ABとのなす角度(オフセット角度)をθaとする。
また、転写装置200の中間転写ベルト102は、移動方向(C方向)における搬送ロール114よりも下流側の部位で且つ二次転写部N2よりも上流側の部位が、X方向に沿った直線Hに対してY側に角度θbとなるように延びている。一例として、転写装置200では、θa=30[°]、θb=15[°]となっている。
中間転写ベルト102と二次転写ロール106との接触部(以後、ニップ部という)内の各位置におけるニップ圧力の変化は、図12(D)に示すグラフGbのようになる。ここで、後述する境界Kの規定方法に基づいて、C方向におけるニップ部を上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとに区別している。下流側転写領域Sbは、転写電圧を印加したとき、上流側転写領域Saに比べて記録用紙Pに転写されるトナー量が多くなる領域である。
グラフGbは、上流側転写領域Saの上流側から徐々にニップ圧力が増加し、下流側転写領域Sb内の最大位置NPbにおいてニップ圧力が最大値Pcとなり、下流側転写領域Sbの出口側(下流側)へ向けてニップ圧力が減少している。また、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界位置NPaにおいて、転写装置200のニップ圧力は、後述する設定圧力の一例としてのニップ圧力Paよりも低くなっている。なお、以後の説明では、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界を境界Kと記載する。
なお、転写装置200の変形例として、図12(C)においてオフセット角度θa=0[°]と設定した場合、各部材は図12(A)に示す配置状態となる。この設定の場合、図12(B)に示すように、ニップ圧力のグラフGaは、上流側から徐々にニップ圧力が増加し、下流側転写領域Sb内においてニップ圧力が最大値Pbとなり、下流側転写領域Sbの下流側へ向けてニップ圧力が減少する。また、境界Kにおけるニップ圧力は、後述するニップ圧力Paよりも低くなっている。
ここで、画像形成部60(図1参照)において、複数の直交する縦線及び横線からなる格子画像(図13(A)参照)を形成し、図11に示すように、比較例の転写装置200を用いて、記録用紙Pにトナー像TAを二次転写した。その結果、図13(B)に示すように、記録用紙P上において、A方向(記録用紙Pの搬送方向)にトナー像がずれて転写される現象(以後、トナー飛散Tsという)が見られた。
A方向のトナー飛散Tsは、トナーに対して転写電界が作用したときにトナーに作用する圧力が不足し、トナーが自由に移動可能な状態であるため、記録用紙P上で発生すると推定される。言い換えると、A方向のトナー飛散Tsを抑制するには、図12(D)に示す上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界K付近において、トナーの移動を規制可能なニップ圧力を作用させればよいと考えられる。このため、境界Kの規定と、トナー飛散Tsを抑制するために境界K付近で必要な圧力とについて確認実験を行った。
<境界の規定方法>
記録用紙Pの単位面積に予め設定した質量のトナーを付着させた状態を100%として表す画像濃度をCinという。一例として、Cin20%とは、記録用紙Pの単位面積に予め設定した質量の20%分を付着させる画像濃度を意味している。ここで、図1に示す画像形成部60において、単色Cin20%のトナー像Tw(図5(A)参照)を形成し、中間転写ベルト102上に一次転写する。
続いて、二次転写ロール106を中間転写ベルト102から離した状態で中間転写ベルト102を移動させ、二次転写部N2にトナー像Twを配置する。そして、中間転写ベルト102と二次転写ロール106との間に記録用紙Pを配置し、二次転写ロール106を中間転写ベルト102に向けて移動させる(元の位置に戻す)。記録用紙Pは、一例として、OSコート紙W(127[g/m2])を用いる。
これにより、図5(A)に示すように、中間転写ベルト102上のトナー像Twと記録用紙Pとが接触する。この接触状態を10秒間維持した後、二次転写ロール106を中間転写ベルト102から離し、記録用紙Pを取り出す。そして、記録用紙P上に転写されたトナー像Twを覆うようにScotchメンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)を貼り付け、トナー像Twの転写領域(ニップ部)の画像濃度を濃度測定器により測定する。画像濃度は、ニップ部の入口側から出口側へ向けて、境界Kが分かるように複数箇所測定する。
なお、測定した画像濃度をトナー量に換算するため、予め、画像濃度とトナー量との検量線を作成してある。また、トナー像Twが無い状態で記録用紙Pに既述のテープを貼り付け、画像濃度を測定しておくことで、テープのみによる画像濃度のずれ分は測定値から除いてある。濃度測定器は、一例として、X−rite938(エックスライト株式会社製)を用いるが、蛍光分光濃度計FD−7(コニカミノルタ株式会社製)を用いてもよい。測定環境は、一例として、温度22[℃]、湿度55[%]である。ここで、画像濃度とトナー量との検量線と、測定した画像濃度とから、二次転写部N2において記録用紙Pに転写されたトナー像Twの各位置でのトナー量が得られる。
続いて、同様の手順で、中間転写ベルト102上のトナー像Tw(1回目と同じ画像)と記録用紙Pとを接触させる。ここで、二次転写ロール106を記録用紙Pに接触させるのと同時に二次転写ロール106に転写電圧(一例として、50[V]で電流値0.2[μA])を印加する。この状態を10秒間維持した後、二次転写ロール106を中間転写ベルト102から離し、記録用紙Pを取り出す。そして、記録用紙P上に転写されたトナー像Twを覆うように既述のテープを貼り付け、トナー像Twの転写領域の画像濃度を既述の濃度測定器により測定し、トナー量に換算する。
図6には、ニップ部(二次転写部N2)の入口から出口までのトナー量のグラフG1、G2が示されている。グラフG1(一点鎖線)は、転写電圧を印加していない(圧力のみの)場合のトナー量を表しており、グラフG2(実線)は、転写電圧を印加した場合のトナー量を表している。グラフG1、G2から、C方向(図3(A)参照)におけるニップ部は、転写電圧の印加によるトナー付着量が少ない上流側の領域と、転写電圧の印加によるトナー付着量が多い(最大値含む)下流側の領域とを有していることが分かった。なお、グラフG2の方がグラフG1よりもトナー付着量が多い。
ここで、グラフG2におけるトナー量の最大値Wp、グラフG1のトナー付着量とグラフG2のトナー付着量とのトナー付着量差ΔWとして、ニップ部内のΔW/Wpの値を確認した。その結果、トナー付着量が少ない上流側の領域はΔW/Wpが0.4よりも小さくなっており、トナー付着量が多い下流側の領域はΔW/Wpが0.4以上となっていることが分かった。具体的には、後述する水準(2)の条件において、ニップ部の上流側はΔW/Wp=0.39、下流側はΔW/Wp=0.69という数値を確認している。また、後述する水準(5)の条件において、上流側はΔW/Wp=0.31、下流側はΔW/Wp=0.72という数値を確認している。これらから、ΔW/Wp=0.4という境界を定義している。このため、本実施形態では、ΔW/Wp<0.4となる領域を上流側転写領域Sa、ΔW/Wp≧0.4となる領域を下流側転写領域Sbとする。
すなわち、本実施形態では、図5(B)に示す記録用紙P上のトナー像Twの付着領域を、境界Kを挟んで上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとに区分する。
<トナー飛散評価>
図1に示す画像形成装置10において、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界Kのニップ圧力を変更して、記録用紙Pへのトナー像Twの転写後のトナー飛散Ts(図13(B)参照)を評価した。なお、境界Kのニップ圧力の変更は、二次転写ロール106の補助ロール108に対するオフセット角度(既述のオフセット角度θa(図11参照))と、中間転写ベルト102への二次転写ロール106の食い込み量とを変えて行った。また、トナー像Twは、中間転写ベルト102への一次転写段階でトナー飛散Tsが生じていないことを確認した。
評価条件として、二次転写ロール106は、SUS製で外径15[mm]のシャフトにCO,ECO系の導電ゴム層を被覆して外径28[mm]とした。二次転写ロール106の電気抵抗は、100[V]印加において8.0[logΩ]である。また、二次転写ロール106には、0.5[kV]の直流電圧に振幅8[kV]で周波数150[Hz]の交流電圧を重畳した重畳電圧を印加した。
補助ロール108は、SUS製で外径14[mm]のシャフトにCO,ECO系の導電ゴム層を被覆して外径20[mm]とした。補助ロール108の電気抵抗は、1500[V]印加において6.4[logΩ]である。また、補助ロール108は接地した。
中間転写ベルト102は、ポリイミド製で厚みを80[μm]とした。また、中間転写ベルト102の体積抵抗は、19.6[N]の荷重をかけた状態で500[V]印加を5秒間行うことで測定したところ、10.0[logΩ・cm]であった。体積抵抗の測定器は、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社Advantest製)及びURプローブMCP−HTP12(ダイアインスツルメンツ株式会社製)を用いた。なお、測定環境は、22[℃]、55[%]であった。また、中間転写ベルト102の移動速度は110[mm/s]であり、記録用紙Pは、レザック250gsmを用いた。
トナー飛散Tsの評価は、目視でほとんど飛散が見えないものを○、目視で部分的に僅かな飛散が見られるが許容レベルであるものを△、目視で許容できない程の飛散が見られるものを×として、三段階評価で行った。なお、トナー飛散Tsの評価は、既述のように、二次転写ロール106の補助ロール108に対するオフセット角度と、中間転写ベルト102への二次転写ロール106の食い込み量とを変えて行った。
具体的には、オフセット角度を22.8、30.8、33.6、36.5、39.6、42.7[°]とし、食い込み量を0.9[mm]で一定とした水準(1)から水準(6)までと、比較のために設定した水準(7)とについて評価を行った。水準(7)は、オフセット角度が30.8[°]、食い込み量が2.0[mm]である。
また、水準(2)、(4)、(5)については、境界K(図5(B)参照)におけるニップ圧力を測定して比較した。ニップ圧力の測定は、タクタイルセンサ(ニッタ株式会社製)を中間転写ベルト102と二次転写ロール106とで挟み、30秒経過した後の数値を読み取ることで行った。その結果、水準(2)は0.01[MPa]、水準(4)は0.02[MPa]、水準(3)は0.03[MPa]であった。ここで、トナー飛散Tsの評価結果を表1に示す。
表1に示すように、トナー飛散状態は、水準(1)、(2)、(3)、(7)で×、水準(4)で△、水準(5)、(6)で○となった。すなわち、境界Kにおけるニップ圧力が0.03[MPa]以上であれば、トナー飛散が抑制されることが分かった。これらの評価結果に基づいて、第1実施形態の転写装置100(図3(A)参照)では、オフセット角度θaを39.6[°]、食い込み量0.9[mm]、既述の角度θb=15[°]とした。
図3(B)には、転写装置100の二次転写部N2(図3(A)参照)におけるニップ圧力(圧力分布)のグラフGcが示されている。グラフGcは、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界K(設定位置の一例としての境界位置NP1)のニップ圧力がPa、下流側転写領域Sbにおける最大位置NP2のニップ圧力(最大圧力)がPdとなっている。ここで、転写装置100では、境界Kのニップ圧力Paを0.03[MPa]とした。なお、上流側転写領域Saの中央部よりも入口側でニップ圧力が0.03[MPa]以上となっていても、境界Kでニップ圧力が0.03[MPa]よりも小さくなる構成では、本実施形態の作用は得られない。これは、ニップ圧力によるトナーの拘束力が小さくなるためである。すなわち、境界K付近でのニップ圧力が0.03[MPa]以上となることが必要条件である。
(作用)
次に、第1実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、転写装置100の二次転写部N2において、記録用紙P上に中間転写ベルト102上のトナー像TAを転写する。このとき、上流側転写領域Saでは、二次転写ロール106及び補助ロール108により、トナー像TAが記録用紙Pに押し付けられる。そして、トナー像TAは、加圧された状態で下流側転写領域Sbに進入して、転写電界Eの作用により記録用紙Pに転写される。
ここで、電源120による重畳電圧の印加でトナー像TAを形成するトナーが振動しようとしても、境界K(図3(B)参照)には0.03[MPa]のニップ圧力が作用している。このため、転写装置100では、境界Kでのニップ圧力が0.03[MPa]よりも低い構成に比べて、境界Kを含む境界Kの周辺部でのトナーの振動(移動)が規制された状態で転写電界Eが作用する。これにより、転写装置100では、記録用紙Pの搬送方向(A方向)にトナーがずれて転写される(飛散する)ことが抑制される。
画像形成装置10では、図13(A)に示すように、二次転写部N2におけるトナーの飛散が抑制されるので、境界Kに作用するニップ圧力が0.03[MPa]よりも低い転写装置を有する構成に比べて、トナーの飛散に起因する画像欠陥が抑制される。
また、転写装置100は、二次転写ロール106が中間転写ベルト102及び記録用紙Pを補助ロール108に向けて加圧する構成となっている。このため、転写装置100では、中間転写ベルト102及び記録用紙Pを補助ロール108に向けて加圧する構成を有していないものと比べて、上流側転写領域Sa及び下流側転写領域Sbにおける加圧力の調整が容易となる。
さらに、転写装置100は、二次転写ロール106が二次転写部N2の設定手段を兼ねているので、二次転写ロール106が設定手段を兼ねていない構成に比べて、転写装置100の構成が簡単な構成となる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図7(A)には、第2実施形態に係る転写装置130の二次転写部N2及びその周辺部が示されている。転写装置130は、第1実施形態の画像形成装置10(図1参照)において、転写装置100(図1参照)に換えて設けられている。なお、転写装置130は、二次転写部N2を除く他の部位は、転写装置100と同様の構成である。
転写装置130は、中間転写ベルト102と、二次転写ロール106と、補助ロール108と、設定手段及び押付部材の一例としての巻掛ロール132とを有している。補助ロール108は接地され、二次転写ロール106に電源120(図4参照)から重畳電圧が印加されるようになっている。
巻掛ロール132は、一例として、補助ロール108よりも小径のロールであり、中間転写ベルト102の内側で補助ロール108の−X側に配置され、外周面が中間転写ベルト102の内周面と接触している。また、巻掛ロール132は、二次転写ロール106と同様にZ方向に沿った軸部周りに回転可能となっている。さらに、巻掛ロール132は、電気的にフロート状態(接地されない状態)となっている。
ここで、中間転写ベルト102は、巻掛ロール132に巻き掛けられることで−Y側に押し付けられて(張り出して)いる。これにより、中間転写ベルト102の外周面の一部は、二次転写ロール106の外周面の一部(中心角θcの範囲)に巻き掛けられた状態となっている。なお、オフセット角度θa<中心角θcとなっている。このように、巻掛ロール132は、二次転写部N2を広げるように中間転写ベルト102を二次転写ロール106に押し付けている。
図7(B)には、転写装置130の二次転写部N2(図7(A)参照)におけるニップ圧力(圧力分布)のグラフGdが示されている。グラフGdは、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界K(設定位置の一例としての境界位置NP3)のニップ圧力がPe(>0.03[MPa])、下流側転写領域Sbの最大位置NP4におけるニップ圧力(最大圧力)がPf(>Pe)となっている。本実施形態では、一例として、ニップ圧力Peを0.04[MPa]とした。なお、図7(B)は、実際の値(絶対値)を示すものではない。また、記録用紙Pの移動方向(A方向)における上流側転写領域Saの幅は、第1実施形態よりも広くなっている。
(作用)
次に、第2実施形態の作用について説明する。
図7(A)、(B)に示すように、転写装置130の二次転写部N2において、記録用紙P上に中間転写ベルト102上のトナー像TAを転写する。このとき、トナー像TAを形成するトナーが振動しようとしても、境界Kには0.04[MPa]のニップ圧力が作用している。このため、転写装置130では、境界Kでのニップ圧力が0.03[MPa]よりも低い構成に比べて、境界Kを含む境界Kの周辺部でのトナーの振動(移動)が規制された状態で転写電界が作用する。これにより、転写装置130では、記録用紙Pの搬送方向(A方向)にトナーが飛散することが抑制される。
また、転写装置130は、巻掛ロール132が、中間転写ベルト102を二次転写ロール106に向けて押し付ける(加圧する)構成となっているので、巻掛ロール132の位置を変えることでニップ圧力が変更される。これにより、転写装置130では、巻掛ロール132を有していない構成に比べて、上流側転写領域Sa及び下流側転写領域Sbにおけるニップ圧力(加圧力)の調整が容易となる。
さらに、転写装置130は、巻掛ロール132の位置をY側又は−Y側に変えることで境界Kでのニップ圧が変わるので、巻掛ロール132を有していない構成に比べて、境界Kでのニップ圧の変更が容易となる。
(変形例)
図8(A)には、転写装置130(図7(A)参照)の変形例として、転写装置140の二次転写部N2及びその周辺部が示されている。なお、転写装置140は、二次転写部N2を除く他の部位は、転写装置130と同様の構成である。
転写装置140は、転写装置130の巻掛ロール132を補助ロール108側に近づけ、巻掛ロール132と二次転写ロール106とで中間転写ベルト102を挟んだ構成となっている。そして、中間転写ベルト102の外周面の一部は、二次転写ロール106の外周面の一部(中心角θdの範囲)に巻き掛けられた状態となっている。中心角θdは、巻掛ロール132の回転中心位置をOCとして、線分ABと、回転中心位置OA、OCを結ぶ線分ACとのなす角度である。なお、オフセット角度θa<中心角θdとなっている。このように、巻掛ロール132が、直接、中間転写ベルト102を二次転写ロール106に押し付けた構成としても、転写装置130と同様の作用が得られる。
図8(B)には、転写装置140の二次転写部N2(図8(A)参照)におけるニップ圧力(圧力分布)のグラフGeが示されている。グラフGeは、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界K(設定位置の一例としての境界位置NP6)のニップ圧力がPe(>0.03[MPa])となっている。さらに、グラフGeは、上流側転写領域Saの位置NP5におけるピーク圧力がPg、下流側転写領域Sbの最大位置NP7における最大圧力がPf(>Pg)となっている。一例として、ニップ圧力Pe=0.04[MPa]である。なお、図8(B)は、実際の値(絶対値)を示すものではない。また、記録用紙Pの移動方向(A方向)における上流側転写領域Saの幅は、第1実施形態よりも広くなっている。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1、第2実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1、第2実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図9(A)には、第3実施形態に係る転写装置150の二次転写部N2及びその周辺部が示されている。転写装置150は、第1実施形態の画像形成装置10(図1参照)において、転写装置100(図1参照)に換えて設けられている。なお、転写装置150は、二次転写部N2を除く他の部位は、転写装置100と同様の構成である。
転写装置150は、中間転写ベルト102と、転写部材、設定手段、及び加圧部材の一例としての二次転写ロール152と、補助ロール108とを有している。補助ロール108は接地され、二次転写ロール152に電源120(図4参照)から重畳電圧が印加されるようになっている。
二次転写ロール152は、一例として、基層が発泡エピクロルヒドリンゴムで構成された発泡ゴムロールであり、外径が第1実施形態の二次転写ロール106(破線で示す)の外径に比べて大径とされている。また、二次転写ロール152は、外周面が中間転写ベルト102の外周面と接触しており、Z方向に沿った軸部周りに回転可能となっている。さらに、二次転写ロール152は、回転中心位置ODを通りY方向に沿った直線Vと、回転中心位置OD、OBを結ぶ線分BDとのなす角度がθeとなっている。
図9(B)には、転写装置150の二次転写部N2(図9(A)参照)におけるニップ圧力(圧力分布)のグラフGfが示されている。グラフGfは、上流側転写領域Saと下流側転写領域Sbとの境界K(設定位置の一例としての境界位置NP8)のニップ圧力がPh(>0.03[MPa])、下流側転写領域Sbの最大位置NP9におけるニップ圧力(最大圧力)がPi(>Ph)となっている。本実施形態では、一例として、ニップ圧力Phを0.04[MPa]とした。なお、図9(B)は、実際の値(絶対値)を示すものではない。
(作用)
次に、第3実施形態の作用について説明する。
図9(A)、(B)に示すように、転写装置150の二次転写部N2において、記録用紙P上に中間転写ベルト102上のトナー像TAを転写する。このとき、トナー像TAを形成するトナーが振動しようとしても、境界Kには0.04[MPa]のニップ圧力が作用している。このため、転写装置150では、境界Kでのニップ圧力が0.03[MPa]よりも低い構成に比べて、境界Kを含む境界Kの周辺部でのトナーの振動(移動)が規制された状態で転写電界が作用する。これにより、転写装置150では、記録用紙Pの搬送方向(A方向)にトナーが飛散することが抑制される。
また、転写装置150は、二次転写ロール152の外径を変えることでニップ圧力が変わるので、他の加圧部材を用いずに済み、部品点数が減る。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
図10(A)には、第2実施形態の転写装置130(図7(A)参照)の他の変形例として、転写装置160の二次転写部N2及びその周辺部が示されている。転写装置160は、像保持部材の一例としての円筒状の転写ドラム162と、二次転写ロール106と、設定手段及び加圧部材の一例としての加圧ブロック164とを有している。転写ドラム162は、軸方向両端部が回転駆動可能に支持され、外周面の図示しない部位でトナー像TAが一次転写されるようになっている。
加圧ブロック164は、二次転写部N2の入口側に転写ドラム162及び二次転写ロール106と非接触状態で配置されている。具体的には、加圧ブロック164は、転写ドラム162の外周面と対向配置される対向面164Aと、二次転写ロール106の外周面と対向配置される対向面164Bとを有している。
対向面164Aと転写ドラム162の外周面との間隔は、トナー像TAが対向面164Aと接触しない大きさとなっている。また、対向面164Bと二次転写ロール106の外周面との間隔は、記録用紙P(図示省略)がA方向に進入可能な大きさとなっている。そして、対向面164Bは、対向面164Bと二次転写ロール106との間に進入した記録用紙Pが、対向面164Bと接触し、且つ転写ドラム162の外周面に押し付けられるように(転写ドラム162への巻き掛け領域が広がるように)傾斜している。
このように、中間転写を行う部材がベルトではなくドラム状のものであっても、記録用紙Pが、加圧ブロック164により二次転写ロール106に向けて加圧されるので、転写装置160において、転写装置130、140と同様の作用が得られる。
図10(B)には、第3実施形態の転写装置150(図9(A)参照)の変形例として、転写装置170の二次転写部N2及びその周辺部が示されている。転写装置170は、転写ドラム162と、二次転写ロール152とを有しており、中間転写ベルトは有していない。このように、中間転写を行う部材がベルトではなくドラム状のものであっても、記録用紙Pが、二次転写ロール152によって加圧されるので、転写装置150と同様の作用が得られる。
転写部材及び加圧部材は、回転するロールに限らず、固定され、中間転写ベルト102が摺動する部材であってもよい。また、転写部材及び加圧部材は、1本に限らず、複数本で構成されていてもよい。