JP6075034B2 - Ipm型電動回転機 - Google Patents

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本発明は、IPM型電動回転機に関し、詳しくは、高効率な回転駆動を実現するものに関する。
各種装置に搭載する電動回転機には、搭載装置に応じた特性が要求される。
例えば、駆動源として内燃機関と共にハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に搭載されたり、単独の駆動源として電気自動車(EV:Electric Vehicle)に搭載される、駆動用モータの場合には、低速回転域で大トルクを発生するのと同時に、広い可変速特性を備えることが要求される。
この種の車両には、燃費向上のために、電動回転機を含めて各コンポーネントにエネルギ変換効率の向上が要求されており、特に、車載の電動回転機においては、常用領域における効率向上が望まれている。さらに、車載の電動回転機には、設置空間の制約や軽量化の観点から、より小型化した高エネルギ密度の構造が求められている。
ところで、HEVやEVでは、一般的に、電動回転機の低速回転・低負荷領域が常用領域である。このことから、車載の電動回転機のトルクに貢献する割合は、電機子電流の大小に応じたリラクタンストルクよりもマグネットトルクの方が大きくなり、高効率化のために高磁力の永久磁石を多く使用する傾向にある。
このような傾向から、電動回転機としては、エネルギ変換効率の向上、特に、低速回転・低負荷領域の常用領域における効率向上のために、高残留磁束密度のネオジム磁石を回転子の鉄心内部に埋め込んだ永久磁石式の同期モータであるIPM(Interior Permanent Magnet)型が多用されている。このIPM型電動回転機では、外周面側に向かって開くV字形になるように永久磁石を回転子内に埋め込むことにより、マグネットトルクに加えて、リラクタンストルクも積極的に利用できる磁気回路にすることが提案されている(例えば、特許文献1)。また、IPM型電動回転機では、永久磁石の両外端側から回転子の外周面に向かって張り出すフラックスバリアを備える構造が提案されており、回転子の外周面側にフラックスバリアの空間を拡大する構造(特許文献2)も、提案されている。
特開2006−254629号公報 特開2012− 29524号公報
ところで、近年の電動回転機には、磁力と耐熱性とを高めるためにNd、Dy、Tbなどのレアアースを含む永久磁石が多用されているが、その稀少性に伴う価格高騰とその流通量の不安定さから、レアアース使用量を低減しつつ高効率化する必要性が高まっている。
しかしながら、HEVやEVでは、電動回転機の常用領域が低速回転・低負荷領域であることから、その領域に寄与するマグネットトルクを大きくするために、特許文献1に記載のようなIPM型モータにおいても、高磁力の永久磁石の使用量を多くする傾向にある。これは、レアアースの使用量の低減という課題の解決を妨げる方向である。
また、特許文献2に記載のIPM型電動回転機では、永久磁石の両外端側のフラックスバリアを無暗に回転子の外周面側に拡大させていることから、その外周面との間の磁気抵抗が大きくなることにより、磁気飽和が起こり易く、回転に伴う磁束量の急激な変動で、コギングトルク等が増大して、高品質な回転を妨げてしまう。すなわち、IPM型電動回転機では、回転子や固定子を含めて、磁気飽和の起こらない磁路に磁束を振り分けることが重要である。
そこで、本発明は、永久磁石の使用量を削減しつつ、磁気飽和の起こらない磁路を形成することにより、高効率かつ高品質な回転駆動を実現して、低コストかつ高エネルギ密度の電動回転機を提供することを目的としている。
上記課題を解決するIPM型電動回転機に係る発明の第1の態様は、永久磁石が埋め込まれて駆動軸と一体回転する回転子と、該回転子を相対回転自在に収納して当該回転子に対面する複数のティース間のスロットにコイルを収容して電機子として機能する固定子と、を備えて、毎極毎相スロット数が2になるように構成された電動回転機であって、前記永久磁石が前記回転子の外周面に向かって開くV字形状に配置されており、前記永久磁石が形成する磁極毎の該永久磁石の中心軸に一致する磁束方向のd軸側まで当該永久磁石を存在させた場合に、該d軸側において前記電機子が発生する電機子磁束を打ち消す方向の磁石磁束を発生する範囲の前記永久磁石を、透磁率の小さな空隙に置き換えて、当該空隙を、前記永久磁石の前記d軸側への延長空間から前記回転子の軸心に向かって拡大するとともに、少なくとも前記永久磁石の近傍付近から前記磁極間の磁束方向のq軸側に向かって拡大する形状に形成したことを特徴とするものである。
上記課題を解決するIPM型電動回転機に係る発明の第2の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記ティースの幅をTW、前記q軸を挟んで対面する前記空隙内面の最短距離をDLw、前記空隙の前記回転子の軸心側端部と前記回転子の内周面の間の最短距離をDLbとした場合に、1.5<DLw/DLb<2.5かつTW<DLwの関係を満たすことを特徴とするものである。
上記課題を解決するIPM型電動回転機に係る発明の第3の態様は、永久磁石が埋め込まれて駆動軸と一体回転する回転子と、該回転子を相対回転自在に収納して当該回転子に対面する複数のティース間のスロットにコイルを収容して電機子として機能する固定子と、を備えて、毎極毎相スロット数が2になるように構成された電動回転機であって、前記永久磁石が前記回転子の外周面に向かって開くV字形状に配置されており、前記永久磁石が形成する磁極毎の該永久磁石の中心軸に一致する磁束方向のd軸側まで当該永久磁石を存在させた場合に、該d軸側において前記電機子が発生する電機子磁束を打ち消す方向の磁石磁束を発生する範囲の前記永久磁石を、透磁率の小さな空隙に置き換えて、前記回転子の軸心から外周面までの外半径をR1、前記回転子の中心から前記固定子の外周面までの外半径をRosとした場合に、0.63<R1/Ros<0.76の関係を満たすことを特徴とするものである。
このように、本発明の上記の第1〜第3の態様によれば、d軸側で、電機子磁束を打ち消す方向の磁石磁束を発生する範囲の永久磁石を、透磁率の小さな空隙に置き換えたので、d軸側で磁石磁束と電機子磁束が干渉(相殺)してしまうことなく、また、その範囲内を電機子磁束が通過してしまうことも制限することができる。したがって、d軸側で電機子磁束を無駄にする磁石磁束をなくし、マグネットトルクと共にリラクタンストルクを有効活用することができ、d軸側永久磁石の置換前以上のトルクを得つつ永久磁石自体の使用量を削減することができる。
さらに、永久磁石を空隙に置換することで、磁石磁束を低減して高速回転側での誘起電圧定数を低減することができ、高速回転側での出力を向上させることができる。また、軽量化することができ、イナーシャを低減することができる。
また、磁石磁束の低減により、弱め界磁領域を削減(弱め界磁量を低減)することができ、磁気歪みとなる空間高調波を低減することができる。このため、永久磁石内での渦電流の発生を制限して発熱を抑えることができ、永久磁石の温度変化による減磁を抑制して耐熱グレードを下げて低コスト化することができる。
特に、本発明の上記の第1の態様によれば、空隙は、d軸側への延長空間を回転子の軸心側に向かって拡大する形状に形成することにより、磁極の一方側のq軸側から回転子内に進入する電機子磁束を永久磁石の外周面側に回り込むのを制限して他方側のq軸側に向かうように迂回させることができ、永久磁石の外周面側に向かう磁石磁束と一緒になって飽和してしまうことを回避することができる。したがって、電機子磁束によるリラクタンストルクをより有効活用することができ、トータルのトルクを増加させることができる。
また、この空隙は、回転子の軸心側への拡大空間に加えて、q軸側にも向かって拡大する形状に形成することにより、回転子内にq軸側から進入する電機子磁束が磁気飽和することを制限しつつ低負荷や高負荷に応じて効率よくトルク発生するように整流することができる。したがって、トルクリプルを効果的に抑制しつつ電機子磁束によるリラクタンストルクをより有効活用することができる。
本発明の上記の第2の態様によれば、上記の態様において、q軸を挟む空隙内面の最短距離(q軸側磁路間隔)DLw/空隙の回転子の軸心側端部と回転子の内周面の間の最短距離(軸心側磁路間隔)DLbを1.5〜2.5とし、さらに、q軸側磁路間隔DLwをティース幅TWよりも大きくすることにより、より有効にトルクリプルを低減することができる。
本発明の上記の第3の態様によれば、磁気飽和等を発生させることなく、回転子の外半径R1/固定子の外半径Rosを0.63〜0.76とすることができ、高品質な回転駆動を維持しつつトルクを増加させることができる。
この結果、高エネルギ密度で高品質に回転駆動する低コストの電動回転機を実現することができる。
さらに、上記の態様に加えて、空隙は、d軸側への延長空間を回転子の外周面側にも向かって拡大する形状に形成することにより、当該d軸側において電機子磁束を打ち消さないまでも有効に合成することのできない磁石磁束の向きを適正にすることができる。したがって、電機子磁束と磁石磁束の合成磁束がトルクの発生に有効に寄与する経路を通るようにすることができ、トータルのトルクをより増加させることができる。
回転子の外周面には、d軸上に軸心と平行なセンタ調整溝を形成することにより、回転子と固定子側ティースとの間のd軸付近の磁気抵抗を増加させるように調整することができ、上記空隙を形成することによりd軸付近の磁石磁束が低下するのに伴って、鎖交する電機子磁束の増加を抑えることができる。したがって、トルクリプルや鉄損の増加により駆動効率を低下させてしまうことを防止することができる。
また、回転子の外周面には、永久磁石の両外端部側に軸心と平行な一対のサイド調整溝を形成することにより、回転子のV字型永久磁石の両外端部付近の磁気抵抗を増加させることができ、鎖交する磁束波形に重畳しようとする高調波を抑えることができる。したがって、コギングトルクを抑えると共にトルクリプルや鉄損の増加により駆動効率を低下させてしまうことを防止することができる。
永久磁石の両外端側から回転子の外周面に向かって張り出すフラックスバリアは、外側端部間の挟角θ6(電気角)を144°〜154.3°とすることにより、5次、7次の空間高調波を抑えることができる。また、d軸から永久磁石の外周面側外面の挟角θ2(機械角)を27.5°〜72.5°に、また、37.5°〜82.5°に、また、37.5°〜72.5°とすることにより、最大負荷時や低負荷時のトルクを高くすることができ、このときのトルクリプルと6次と12次の高調波トルクを抑えて電磁振動や電磁騒音を低減することができる。
毎極毎相スロット数が2になる構造で、フラックスバリアの外端側内面と回転子の外周面との間に形成されて、q軸側とd軸側との間を連結支持するサイドブリッジは、外端側内面におけるd軸側内面とq軸側内面の間(両端側角部の間)の中間点とd軸との間の挟角θ8(電気角)を64.7°〜74.2°とし、d軸側内面の延長面とq軸側内面の間の挟角θ9(機械角)を0°〜37°とすることにより、トルクをほとんど低下させることなく、コギングトルクを低減することができる。
図1は、本発明に係るIPM型電動回転機(モータ)の一実施形態を示す図であり、その概略全体構成を示す平面図である。 図2は、実施形態の構造における低負荷駆動時の電機子磁束の磁束線図である。 図3は、実施形態の構造における低負荷駆動時の磁石磁束の磁束線図である。 図4は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの電流位相に対するトルク特性を示すグラフである。 図5Aは、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの磁石磁束の磁束線図である。 図5Bは、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータのd軸付近における磁石磁束のベクトル図である。 図6Aは、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの最大負荷駆動時における電機子磁束の磁束線図である。 図6Bは、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの最大負荷駆動時におけるd軸付近の電機子磁束のベクトル図である。 図7は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの最大負荷駆動時における磁極(永久磁石)の外周側の磁石磁束ベクトルと電機子磁束ベクトルの相対関係を示すモデル図である。 図8は、IPM型モータの入力電流に対する電流位相と出力トルクの対応関係(特性)を示すグラフである。 図9は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの低負荷駆動時における電機子磁束の磁束線図である。 図10は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータの低負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束の磁束線図と共にその合成磁束が取る経路を示す経路図である。 図11は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの埋設永久磁石を短縮させた場合の発生トルクの変化やトルクリプルの低減率を示すグラフである。 図12は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの埋設永久磁石を短縮させた場合に重畳する5次の空間高調波の変化を示すグラフである。 図13は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータとd軸側空隙付きのV字型IPMモータの低負荷駆動領域におけるトルク発生割合を示すグラフである。 図14は、d軸側に大きな空隙のないV字型IPMモータとd軸側空隙付きのV字型IPMモータの最大負荷駆動領域におけるトルク発生割合を示すグラフである。 図15は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの最大負荷駆動時における電機子磁束を示す磁束線図である。 図16は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの低負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束を示す磁束線図である。 図17は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの最大負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束を示す磁束線図である。 図18は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの最大負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束を示す磁束線図を含み、図17の本実施形態の構造と比較する構造図である。 図19は、図17の本実施形態構造Aと図18の比較構造Bで発生する、平均トルク中の瞬時トルクを示すグラフである。 図20は、図17の本実施形態構造Aと図18の比較構造Bで発生する、図19の瞬時トルクの波形に重畳する高調波トルクの割合を示すグラフである。 図21は、図17の本実施形態構造Aと図18の比較構造Bにおける、ギャップGを介する1歯鎖交磁束波形に含まれる空間高調波成分の含有率を示すグラフである。 図22は、フラックスバリア17cの軸心側の端部壁面位置の軸心からの離隔距離R2/回転子の外半径R1、をパラメータとしたときのトルクの変化を示すグラフである。 図23は、回転子の外半径R1/フラックスバリア17cの軸心側の端部壁面位置の軸心からの離隔距離R2、をパラメータとしたときのトルクの変化を示すグラフである。 図24は、d軸側に大きな空隙を形成するが外周面側に未拡大のV字型IPMモータの最大負荷駆動時における、永久磁石のd軸側角部付近での磁石磁束ベクトルと電機子磁束ベクトルの相対関係を示すモデル図である。 図25は、d軸側に大きな空隙を形成して外周面側にも拡大するV字型IPMモータの最大負荷駆動時における、永久磁石のd軸側角部付近での磁石磁束ベクトルと電機子磁束ベクトルの相対関係を示すモデル図である。 図26は、図25に示す拡大空隙の寸法形状を決定する際に使用するパラメータを示す回転子の一磁極を拡大した構造図である。 図27は、図26で示すパラメータDLdを変化させたときの形状のモデル例を示す構造図である。 図28は、図26で示すDLdの外半径R1に対する比率をパラメータとして変化させたときのトルクと高調波トルクの変化を示すグラフである。 図29は、図26で示すDLdの外半径R1に対する比率をパラメータとして変化させたときのトルクリプルの変化を示すグラフである。 図30は、図26で示すθ1の磁石開口度θ2に対する比率をパラメータとして変化させたときのトルクと高調波トルクの変化を示すグラフである。 図31は、図26で示すθ1の磁石開口度θ2に対する比率をパラメータとして変化させたときのトルクリプルの変化を示すグラフである。 図32は、拡大した空隙であるフラックスバリアを備える場合を未拡大の場合と比較する平均トルク中の瞬時トルクを示すグラフである。 図33は、図32の平均トルク中の瞬時トルクの波形に重畳する高調波トルクの割合を示すグラフである。 図34Aは、d軸側に大きな空隙のないセンタ溝未形成のV字型IPMモータの磁石磁束の磁束線図である。 図34Bは、d軸側に大きな空隙のないセンタ溝未形成のV字型IPMモータの最大負荷時におけるd軸付近の電機子磁束と磁石磁束の合成磁束のベクトル図である。 図35Aは、d軸側に大きな空隙を形成したセンタ溝未形成のV字型IPMモータの磁石磁束の磁束線図である。 図35Bは、d軸側に大きな空隙を形成したセンタ溝未形成のV字型IPMモータの最大負荷時におけるd軸付近の電機子磁束と磁石磁束の合成磁束のベクトル図である。 図36は、図34Aに示すd軸側に大きな空隙のないセンタ溝未形成の構造と図35Aに示すd軸側に大きな空隙を形成したセンタ溝未形成の構造とを比較する1歯鎖交磁束波形を示すグラフである。 図37は、その図36に示す磁束波形をフーリエ級数展開して、1歯鎖交磁束波形に重畳する空間高調波の含有率を示すグラフである。 図38は、d軸側に大きな空隙を形成したセンタ溝形成済みのV字型IPMモータの最大負荷時におけるd軸付近の電機子磁束と磁石磁束の合成磁束のベクトル図である。 図39は、本実施形態と図35Aに示すセンタ溝未形成の構造とを比較する最大負荷時におけるトルク波形を示すグラフである。 図40は、その図39に示すトルク波形をフーリエ級数展開して、そのトルク波形に重畳する高調波トルクの重畳程度を比較するグラフである。 図41は、センタ溝の寸法形状を決定する際に使用するパラメータを示す回転子の一磁極を拡大した構造図である。 図42は、図41で示すセンタ溝の寸法形状におけるR4の外半径R1に対する比率をパラメータとして変化させたときのトルクリプルの変化を示すグラフである。 図43は、図41で示すセンタ溝の寸法形状における外開口角θaをパラメータとして変化させたときの相電圧波形と線間電圧波形を示すグラフである。 図44は、本実施形態と図35Aに示すセンタ溝未形成の構造とを比較する低負荷時におけるトルク波形を示すグラフである。 図45は、その図44に示すトルク波形をフーリエ級数展開して、そのトルク波形に重畳する高調波トルクの重畳程度を比較するグラフである。 図46は、サイド溝未形成の構造で一磁極におけるステータティースの位置関係を示す構造図である。 図47は、図46に示すサイド溝未形成の構造の無負荷時におけるギャップ磁束波形を示すグラフである。 図48は、図46に示すサイド溝未形成の構造の最大負荷時におけるギャップ磁束波形を示すグラフである。 図49は、回転子の外周面に形成するサイド溝の寸法形状を決定する際に使用するパラメータを示す回転子の一磁極を拡大した構造図である。 図50は、最大負荷時に、図49で示すサイド溝の寸法形状におけるd軸からの内挟角θ5/外挟角θ4をパラメータとして変化させたときのトルクと高調波トルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図51は、低負荷時に、図49で示すサイド溝の寸法形状におけるd軸からの内挟角θ5/外挟角θ4をパラメータとして変化させたときのトルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図52は、最大負荷時に、図49で示すサイド溝の寸法形状における溝深さRG/エアギャップ幅AGをパラメータとして変化させたときのトルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図53は、無負荷時におけるサイド溝ありとサイド溝なしでのギャップ磁束波形で重畳する高調波の大きさを比較するグラフである。 図54は、最大負荷時におけるサイド溝ありとサイド溝なしでのトルク波形からトルクリプルの大きさを比較するグラフである。 図55は、低負荷時におけるサイド溝ありとサイド溝なしでのトルク波形からトルクリプルの大きさを比較するグラフである。 図56は、無負荷時時におけるサイド溝ありとサイド溝なしでのコギングトルク波形からそのコギングトルクの低減率を確認するグラフである。 図57は、磁極開口度θ6や磁石開口度θ2を示す回転子の一磁極を拡大した構造図である。 図58は、1歯に鎖交するギャップ磁束の近似波形を示すグラフである。 図59は、1歯に鎖交するギャップ磁束の近似波形と磁極開口度および磁石開口度の関係を示す概念説明図である。 図60は、1歯に鎖交するギャップ磁束の理論波形(矩形波)と現実の波形(台形波)を重ねて示すグラフである。 図61は、最大負荷時に、磁石開口度θ6をパラメータとして変化させたときのトルクと高調波トルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図62は、低負荷時に、磁石開口度θ6をパラメータとして変化させたときのトルクと高調波トルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図63は、サイドブリッジの形状を示す回転子の一磁極を拡大した構造図である。 図64は、V字型IPMモータの無負荷時におけるサイドブリッジ付近での磁石磁束のベクトル図である。 図65Aは、無負荷時の回転子と固定子の間のエアギャップにおける磁束密度波形を示すグラフである。 図65Bは、図65Aにおける磁束密度波形の立ち上がり領域の拡大グラフである。 図66は、V字型IPMモータの最大負荷時におけるサイドブリッジ付近での電機子磁束のベクトル図である。 図67は、V字型IPMモータの高速回転時に大きなミゼス応力が生じる箇所を示す機械的強度の解析結果のコンター図である。 図68は、外側のフラックスバリアの外端側内面における屈折箇所を変化させたときのコギングトルクの変化を示すグラフである。 図69は、外側のフラックスバリアの外端側内面における屈折箇所を変化させたときのトルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図70は、外側のフラックスバリアの外端側内面の屈折量を変化させたときのトルクとトルクリプルの変化を示すグラフである。 図71は、固定子と回転子の寸法形状やその回転子内のフラックスバリアの形状を示す構造図である。 図72は、そのフラックスバリアの形状を示す拡大平面図である。 図72は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの最大負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束を示す磁束線図である。 図74は、d軸側空隙付きのV字型IPMモータの低負荷駆動時における磁石磁束と電機子磁束の合成磁束を示す磁束線図である。 図75は、フラックスバリアの形状比率を変化させたときのトルクの変化を示すグラフである。 図76は、フラックスバリアの形状比率を最適化したときの磁束量を示す磁束線図である。 図77Aは、回転子と固定子の間のエアギャップを変化させたときの低負荷時のトルクやトルクリプルの変化を示すグラフである。 図77Bは、回転子と固定子の間のエアギャップを変化させたときの最大負荷時のトルクやトルクリプルの変化を示すグラフである。 図78は、固定子と回転子の外半径の比率を変化させたときのトルクの変化を示すグラフである。 図79Aは、トルクTと電流位相角βとの関係(β−T特性)を示すグラフである。 図79Bは、トルクリプル率と電流位相角βとの関係(β−トルクリプル特性)を示すグラフである。 図80Aは、電流位相角βを変化させた場合のトルクの変化を示すグラフである。 図80Bは、電流位相角βを変化させた場合のトルクリプルの変化を示すグラフである。 図81は、本実施形態のサイドブリッジ付近での磁束密度を示す磁束線図である。 図82は、本実施形態と比較する比較例のサイドブリッジ付近での磁束密度を示す磁束線図である。 図83は、図81と図82に示す構造で重畳する高調波トルクの割合を示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図83は本発明に係るIPM型電動回転機の一実施形態を示す図である。ここで、本実施形態の説明では、固定子に対して回転子を反時計回り(CCW:counterclockwise)方向に回転させる場合を一例にしてその回転方向を図示する。
図1において、電動回転機(モータ)10は、概略円筒形状に形成された固定子(ステータ)11と、この固定子11内に回転自在に収納されて軸心に一致する回転駆動軸13が固設されている回転子(ロータ)12と、を備えている。この電動回転機10は、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)において、内燃機関と同様の駆動源として、あるいは車輪ホイール内に搭載するのに好適な性能を有している。
固定子11には、回転子12の外周面12aにギャップGを介して内周面15a側を対面させるように軸心の法線方向に延在する複数本のステータティース15が形成されている。このステータティース15には、内部に対面収納されている回転子12を回転駆動させる磁束を発生させるコイルを構成する3相巻線(不図示)が分布巻により巻付形成されている。
回転子12は、外周面12aに向かって開くV字型になるように、一対で1組の永久磁石16を1磁極として埋め込むIPM(Interior Permanent Magnet)構造になるように作製されている。この回転子12は、図面の表裏方向に延在する平板状の永久磁石16の角部16aを嵌め込んで不動状態に収容するV字空間17が外周面12aに対面するように形成されている。
V字空間17は、永久磁石16を嵌め込み収容する空間17aと、その永久磁石16の幅方向の両側方に位置して磁束の回り込みを制限するフラックスバリアとして機能する空間17b、17c(以下ではフラックスバリア17b、17cともいう)と、を備えるように形成されている。このV字空間17には、永久磁石16を高速回転時の遠心力に抗して位置決め保持することができるように、空間17c間で法線方向に延長されて外周側と内周側とを連結支持するセンタブリッジ20が形成されている。同様な機能を有するサイドブリッジ30については後述する。
この電動回転機10は、固定子11側のステータティース15間の空間が、巻線を通して巻き掛けることによりコイルを形成するためのスロット18を構成している。これに対して、回転子12は、8組の永久磁石16のそれぞれに、固定子11側の6本のステータティース15が対面している。要するに、この電動回転機10では、回転子12側の一対の永久磁石16側が構成する1磁極に、固定子11側の6スロット18が対応するように構築されている。すなわち、電動回転機10は、隣接する1磁極毎に永久磁石16のN極とS極の表裏を交互にした、8極(4極対)、48スロットで、単相分布巻5ピッチで巻線した3相IPMモータに作製されている。言い換えると、電動回転機10は、毎極毎相スロット数q=(スロット数/極数)/相数=2のIPM型構造に作製されている。
これにより、電動回転機10は、固定子11のスロット18内のコイルに通電してステータティース15から対面する回転子12内に磁束を通すことにより回転駆動させることができる。このとき、電動回転機10(固定子11と回転子12)は、永久磁石16との間に生じる吸引力と反発力に起因するマグネットトルクに加えて、磁束が通過する磁路を最短にしようとするリラクタンストルクとの総合トルクにより回転駆動することができる。よって、電動回転機10は、通電入力する電気的エネルギを、固定子11に対して回転子12と一体回転する回転駆動軸13から、機械的エネルギとして出力することができる。
なお、固定子11と回転子12は、ケイ素鋼などの電磁鋼板材料の薄板を所望の出力トルクに応じた厚さになるように軸方向に重ねており、その積層状態を維持するようにカシメ19などにより一体物に作製されている。
ここで、この電動回転機10は、図2に磁束線図として図示するように、1磁極を構成する一対の永久磁石16に対応する複数のステータティース15毎に、固定子11の外周側(ステータティース15の背面側)から回転子12内を通過する経路の磁路(電機子磁束)を形成するように、スロット18内に巻線コイルが分布巻きされている。その永久磁石16は、電機子磁束Ψrの磁路に沿うように、言い換えると、その電機子磁束Ψrの形成を妨げないように、形成されているV字空間17の嵌込空間17a内に収容されている。
この永久磁石16の磁路(磁石磁束Ψm)は、図3に磁束線図として図示するように、1磁極を構成する一対の永久磁石16の表裏面のN極とS極から鉛直方向に出て繋げる経路を取り、特に、固定子11側では対応するステータティース15からその背面側を通過する経路になる。
そして、回転子12内に永久磁石16をV字に埋め込んだIPM構造では、磁極が作る磁束の方向、すなわち、V字の永久磁石16間の中心軸をd軸とし、また、そのd軸と電気的・磁気的に直交する、隣接する磁極間の永久磁石16間の中心軸をq軸とする。この回転子12は、V字空間17のd軸側に位置する内側の空間17cを、軸心に向かう大きな空隙に拡大されてフラックスバリア17cとして機能するように形成されている。このV字空間17におけるフラックスバリア17cの最適な寸法形状については後述する。
これにより、この電動回転機10では、図2に示すように、ステータティース15から回転子12内に進入する電機子磁束Ψrを、V字空間17の外周側に回り込まないように大きく内周(軸心)側に迂回させてステータティース15に戻る経路を取るように形成されている。要するに、電動回転機10は、回転子12がd軸空隙付きV字型IPMモータに構築されている。
また、この電動回転機10は、d軸に対応するステータティース15から進入する電機子磁束Ψrにトルクリプル増加原因となる5次や7次の空間高調波が多く重畳しないように、回転子12側の外周面に、そのステータティース15の内周面15aと平行方向(軸心方向)に延長されるセンタ溝(センタ調整溝)21が形成されている。このセンタ溝21の最適な寸法形状については後述する。
さらに、この電動回転機10は、トルクの減少を最小限にしつつ、無負荷時のコギングトルクや低負荷時および最大負荷時のトルクリプルを低減して全駆動領域でのトルクの脈動を抑えるサイド溝(サイド調整溝)22が磁極を形成する一対の永久磁石16のそれぞれの外端側外周面に形成されている。このサイド溝22の最適な寸法形状については後述する。
このように、回転子12内に永久磁石16をV字型に埋め込むIPM構造の電動回転機10の場合、トルクTは、下記の式(1)で表すことができ、図4に示すように、マグネットトルクTmとリラクタンストルクTrとの和が最大となる電流位相にて駆動することで高トルク・高効率運転を実現している。
Figure 0006075034

Pp:極対数、Ψm:電機子(ステータティース15)鎖交磁石磁束、
id:線電流のd軸成分、iq:線電流のq軸成分、
Ld:d軸インダクタンス、Lq:q軸インダクタンス
ところで、d軸側空隙のフラックスバリア17cに代えて、V字空間17の外側のフラックスバリア17bと同等のフラックスバリア17dを備える関連技術の回転子12Aの場合には、図5Aの磁束線図に図示する永久磁石16の磁路が形成され、その磁石磁束Ψmは、図5Bの磁束ベクトル図に図示する向きのベクトルVmになっている。また、スロット18に収容されるコイルへの通電により発生する電機子磁束Ψrは、図6Aの磁束線図に図示する磁路に形成され、図6Bの磁束ベクトル図に図示する向きのベクトルVrになっている。
この種の電動回転機では、最大負荷駆動時には高トルク・高効率駆動の実現のために電流位相角を進角させて駆動させている。関連技術の回転子12Aでは、図5Bおよび図6Bの磁束ベクトル図に示すように、V字空間17(磁極)の外周側に位置するd軸付近の小領域A1において、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrが逆磁界の関係になって、リラクタンストルクTrがマグネットトルクTmを打ち消し(相殺し)つつ駆動する状態にある。要するに、この磁極外周側小領域A1は、図7に示すように、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrとが挟角90度以上で逆向きの位置関係で対向する干渉領域であり、この磁極外周側小領域A1に隣接する永久磁石16のd軸側の範囲Bで発生する磁石磁束Ψmを抑え込む(打ち消す)のに電機子磁束Ψrが浪費されている。
このことから、この磁極外周側小領域A1に対応する永久磁石16のd軸側範囲Bは、トルクTに積極的に寄与していないと言うことができ、その永久磁石16におけるd軸側範囲Bの部分を削減しつつ同等の突極比を維持する磁気回路とすることで、永久磁石16自体の磁石量を低減することができる。
ここで、トルクTは、上記式(1)であるため、永久磁石16の磁石量を減らした場合にはリラクタンストルクTrを大きくすることで、永久磁石16の磁石量を減らさない場合と同等にすることができる。このリラクタンストルクTrは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差、すなわち、突極比を大きくすることで増加させることができる。
よって、本実施形態の回転子12では、永久磁石16のd軸側範囲Bを透磁率の小さな空隙(制限領域)に置き換えることで、永久磁石16の磁石量を低減しつつ突極比を増加させて置換前と同等以上のトルクTを得ることができる。見方を換えると、リラクタンストルクTrは、永久磁石16のd軸側範囲Bで発生する磁石磁束Ψmを抑え込むのに浪費されていた電機子磁束Ψrを有効活用することで大きくすることができ、永久磁石16の磁石量を削減しても同等のトルクTを得ることができる。
なお、トルクTは、下記の式(2)のように表すこともでき、電流値Iaが小さな低負荷領域ではマグネットトルクTmの割合が高くなり、図8に示すように、電流値Iaが低いほど最大トルク時の電流位相βはゼロに近くなる。この図8中の波形i〜vは、各電流値Ia(i)〜Ia(v)における電流位相−トルク特性を示しており、電流値Iaの大きさは、i<ii<iii<iv<vの関係となっている。よって、低負荷駆動時には、マグネットトルクTmの割合(依存)が自ずと高くなるが、そのマグネットトルクTmを最大限に有効活用する磁気回路が望ましい。
Figure 0006075034

β:電流位相角度、Ia:相電流値
関連技術の回転子12Aでは、図9に示すように、低電流値の低負荷領域では電流位相βがゼロに近い条件で駆動させるため、電機子磁束Ψrの磁束量がq軸となる磁極間(隣接する別磁極の永久磁石16の間)で多くなる。このため、この電機子磁束Ψrに磁石磁束Ψmを合成した磁束Ψsの経路としては、図10に示す磁路MP1、MP2を通過する磁気回路とするのが好適である。これにより、合成磁束Ψsは、q軸磁路(磁束)を分散化させて(飽和することを回避して)q軸インダクタンスLqを大きくすることができ、リラクタンストルクTrを積極的に利用可能にすることができる。
磁路MP1は、固定子11側のステータティース15からエアギャップGを介して回転子12Aに鎖交して磁極間に進入した後に、回転方向進行側(図中左側)の磁極を形成する近接側の永久磁石16を内周側から抜ける経路を取る。さらに、この磁路MP1は、その磁極の外周側領域A2を通過して、再度エアギャップGを介してステータティース15に戻る経路を取る。
磁路MP2は、磁路MP1と同様に磁極間に進入した後に、回転方向進行側の磁極を形成する離隔側の永久磁石16を内周側から抜けて、その磁極の外周側領域A2を通過して、再度エアギャップGを介してステータティース15に戻る経路を取る。
例えば、この磁路MP1、MP2では、一対の永久磁石16の両端側(磁極外端部)を削って内側に寄せた場合には、その両端側に大きなフラックスバリアが存在して磁極の中心付近に集中することになり、特に、磁極外周側領域A2の右側の経路が取り難くなって、その領域A2全体を有効に利用できない。
反対に、一対の永久磁石16の中心側(磁極内端部)を削って外側に寄せた場合には、その中心側に大きなフラックスバリアが存在して磁極の両側に磁束経路を分散させることができ、磁極外周側領域A2の右側の経路も含めて積極的に有効活用してその領域A2を満遍なく磁束が通過できる。この構造の場合には、回転方向後進側の磁極の永久磁石16を外周側から内周側に向かって抜けた後、隣接する磁極の永久磁石16のN極・S極間を結合する磁路MP3も取ることができる。この磁路MP3では、磁路MP1と同様の経路を通って、回転方向進行側の磁極の外周側領域A2を通過することができ、磁束の分散化効率が高い。
このことから、回転子12は、磁極を形成する一対の永久磁石16の埋設構造として、リラクタンストルクTrを発生させる電機子磁束Ψrを妨げないようにV字型を維持しつつ、両端側(磁極外端部)に寄せる形状を採用するのが好適である。さらに、その一対の永久磁石16の間(磁極内端部)には、磁束が短絡経路を取るのを制限するフラックスバリア17cを形成する構造を採用するのが好適である。また、回転子12のd軸上の外周面には、固定子11側のステータティース15から進入する電機子磁束Ψrの飽和を制限する、言い換えると、その磁束Ψrを分散させるセンタ溝21を形成する構造を採用するのが好適である。このような構造を採用することにより、回転子12は、q軸磁路(磁束)を分散化させてq軸インダクタンスLqを大きくし、リラクタンストルクTrを積極的に利用することができる。
この永久磁石16は、図面内の長手方向の長さ(幅)Wpmの最適値を、その長さWpmを短縮しない場合を基準にして比較決定する。
具体的には、極数Pと、回転子12の軸心から外周面までの外半径R1とを固定値として、磁極外端部に設置する永久磁石16の長さWpmを変数(内端側端辺の位置を変位)とし、下記の式(3)で算出する比率δを変化させて決定する。この決定要素として、比率δに対する、最大負荷時のトルクTのper unit単位での変化と、そのトルクTの変動幅であるトルクリプル(torque ripple)の低減率の変化とを磁界解析してグラフ表示すると、図11のようになる。なお、per unit単位では、例えば、1.0[p.u.]の場合に同等であることを意味している。
δ=(P×Wpm)/R1 ・・・(3)
図11では、比率δ=1.84が長さWpmを短縮しない形状寸法(磁石低減量0%)の永久磁石16の場合であり、比率δ=1.38の寸法形状(磁石低減量24.7%)の場合に非短縮時と同等(1.0[p.u.])のトルクTを得ることができることが分かる。この永久磁石16は、常用の低速回転負荷時においても、比率δ=1.38とすることで、同等のトルクTを得ることができる。
ここで、この図11では、V字空間17の内外端側に同等の大きさのフラックスバリア17b、17dを備える関連技術の回転子12Aを比較対象としている。これに対して、本実施形態の回転子12の場合には、フラックスバリア17cとセンタ溝21を備えることで、電機子磁束Ψrを効果的に分割して振り分けることができる。このため、この回転子12では、リラクタンストルクTrを有効に発生させることができ、永久磁石16が同等の長さWpmである比率δ=1.84でもトルクTが向上するとともにトルクリプルも低減されている。すなわち、図11では、この回転子12の構造で永久磁石16の長さWpmを短縮させて、比率δに対するトルクTとトルクリプルの変化を図示している。なお、関連技術の回転子12Aの構造のまま永久磁石16の長さWpmを短縮する場合には、比率δ=1.84から比率δ=1.38付近までトルクTの大きな変化はない(1.0[p.u.])ものと想定される。
また、電動回転機では、回転子の回転に伴って、埋設する永久磁石量に応じた誘起電圧(逆起電圧)が発生して弱め界磁に起因する磁気歪みの空間高調波が重畳することになる。この空間高調波は、5次、7次、11次、13次の成分がトルクリプルの発生要因になり、鉄損の増加原因となっている。このことから、比率δに対する、例えば、5次の空間高調波の発生をper unit単位でグラフ化すると、図12のようになり、比率δ=1.75以下にするほど、その5次の空間高調波の発生を抑えることができることが分かる。この場合には、永久磁石16の磁石量を4.7%以上削減することができ、また、磁気歪みの空間高調波の低減により鉄損を低減して駆動効率を向上させつつ永久磁石16内での渦電流の発生を制限して発熱を抑えることができる。
このことからすると、本実施形態の回転子12では、関連技術の回転子12Aと同等のトルクTを得つつ永久磁石16の使用量を削減するには、その永久磁石16の長さWpmを短縮(磁石量を24.7%削減)して比率δ=1.38程度にするのが好適であり、トルクリプルも低減することができる。要するに、永久磁石16は、トルクTやトルクリプル等の所望の特性に応じて比率δ=1.38(磁石低減量24.7%)から1.75(磁石低減量4.7%)の範囲内の寸法形状で適宜選択すればよい。
そこで、電動回転機10は、同等のトルクTとなる、永久磁石16の長さWpmを短縮して比率δ=1.38の寸法形状に形成するd軸空隙付きV字型のIPMモータの場合と、永久磁石16を短縮しないV字型のIPMモータの場合とで磁界解析すると、図13および図14に示すように、マグネットトルクTmとリラクタンストルクTrの比率が変化して同等のトルクTを出力可能なことが分かる。なお、d軸空隙付きV字型のIPMモータは、大きな空隙のフラックスバリア17cをd軸側に備える構造であり、単なるV字型のIPMモータは、小さなフラックスバリア17dをd軸側に備える構造である。
この図13は、低負荷領域でのトルクTm、Trの割合を図示しており、図14は、最大負荷領域でのトルクTm、Trの割合を図示している。いずれでも、d軸空隙付きV字型のIPMモータの場合には、永久磁石16を短縮するためにマグネットトルクTmが小さくなるのに代わって、リラクタンストルクTrが大きくなっていることが分かる。すなわち、電動回転機10は、d軸付近の永久磁石16に置換して大きな空隙空間のフラックスバリア17cやセンタ溝21を形成することで、図6Bと図7に示す磁極外周側小領域A1で電機子磁束Ψrを打ち消す磁石磁束Ψmを少なくすることができている。この結果、電動回転機10は、q軸インダクタンスLqを大きくしてd軸インダクタンスLdとの差(突極比)を非短縮V字型のIPMモータよりも大きくすることができ、リラクタンストルクTrを有効活用して同等のトルクTを確保することができている。
この構造により、電動回転機10は、図15に磁束線図として図示するように、磁極を
形成する一対の永久磁石16の外周側の小領域A1に集中していた電機子磁束Ψrを、その磁極外周側小領域A1を通過する磁路Mr1からV字空間17のd軸側空間17cの内周側を迂回する磁路Mr2にも効果的に分割(分流)させることができる。この結果、電動回転機10は、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψr(d軸・q軸)の磁気的干渉を低減して、磁極外周側小領域A1の回転方向進行側(図中左側)で局所的に磁気飽和状態になってしまうことを回避してトルクTの発生に効果的に寄与させることができる。
したがって、電動回転機10は、図16の磁束線図に図示するように、低負荷駆動時には磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrの合成磁束Ψsが主に永久磁石16を通過する磁路MP0を通過するのに対して、最大負荷駆動時にはその合成磁束Ψsは図17の磁束線図に図示するように、磁路MP1、磁路MP2に分割させることができる。この結果、磁気的干渉の低減と共に局所的な磁気飽和状態の回避を実現して、永久磁石16の磁石量を低減しつつ同等以上のトルクTを効率よく発生させることができる。なお、低負荷駆動時の合成磁束Ψsは、電機子磁束Ψrよりも磁石磁束Ψmの割合が大きい。
また、電動回転機10は、永久磁石16を、例えば、比率δ=1.44の寸法形状にして低透磁率のフラックスバリア17cに置換(磁石磁束Ψmを低減)し磁石量を23%削減すると、イナーシャ(慣性力)の低減と共に、誘起電圧定数も13.4%程度低減することができ、高速回転側での出力を増加させることができる。さらに、この電動回転機10では、磁気歪みとなる空間高調波が低減されることで、永久磁石16内で発生する渦電流による発熱や鉄損および電磁騒音を抑えることができる。
これに対して、例えば、図18の磁束線図に示すように、回転子12の軸心側に拡大させていないフラックスバリア17eの場合には、合成磁束Ψsを十分に分割させることができずに、磁極外周側小領域A1の回転方向進行側(図中左側)での局所的な磁気飽和を回避することができていない。
図17に図示するフラックスバリア17cの本実施形態構造Aと、図18に図示するフラックスバリア17eの比較構造Bでは、図19に最大負荷時の特性を図示するように、トルクの大きさおよびその変動(トルクリプル)で比較すると、構造Aの方がトルクが約6%増加しているのと同時にトルクリプルが小さくなって高品質に回転駆動させることができることが分かる。なお、図19には、図18の構造Bを基準として平均トルクを算出し、その回転角(電気角)に応じた瞬時トルクをper unit単位で、図17の構造Aの場合と共にその構造Bの場合を図示している。
この構造A、Bでは、図19に示す波形をフーリエ級数展開すると、図20に示すように、トルクに重畳する高調波トルクを比較することができ、構造Aの方が構造Bよりも、特に、12次と24次の高調波トルクを大きく低減できていることが分かる。これにより、本実施形態の構造Aでは、特に12次の高調波トルクを大幅に低減して、登坂加速時におけるジャダーの発生を抑制するとともに、電磁騒音も大幅に低減することができる。なお、この図20には、構造A、Bのトルクに含まれる高調波トルクの割合(%)を図示している。
さらに、構造A、Bでは、1つのステータティース15にギャップGを介して鎖交する磁束波形をフーリエ級数展開して、11次と13次の空間高調波成分の含有率を比較すると、図21に示すように、構造Aの方が構造Bよりも、低減できていることが分かる。なお、この図21には、構造A、Bの1歯鎖交磁束の基本波形成分を正規化してper unit単位で図示している。
ところで、電動回転機10のトルクリプルは、3相の場合、1相1極毎の磁束波形に重畳する空間高調波と相電流に含まれる時間高調波に起因して、電気角で6f次成分(f=1、2,3…:自然数)で発生することが分かっている。
以下に、トルクリプルの発生原因について説明すると、3相出力(電力)P(t)とトルクτ(t)は、角速度をωm、各相の誘起起電力をEu(t)、Ev(t)、Ew(t)、各相の電流をIu(t)、Iv(t)、Iw(t)とすると、次の式(4)、式(5)で求めることができる。
P(t)=E(t)I(t)+E(t)I(t)+E(t)I(t) ・・・(4)
τ(t)=P(t)/ω
=[E(t)I(t)+E(t)I(t)+E(t)I(t)] ・・・(5)
3相トルクは、U相、V相、W相のそれぞれのトルクの和であり、mを電流の高調波成分、nを電圧の高調波成分を表すものとし、U相電流I(t)を次の式(6)と置くと、U相トルクτ(t)は次の式(7)のように表すことができる。
Figure 0006075034
相電流I(t)と相電圧E(t)は、いずれも対称波であるために「n」と「m」は奇数のみとなる。U相以外のV相トルクとW相トルクは、それぞれU相誘起電圧E(t)、U相電流I(t)に対して「+2π/3(rad)」、「−2π/3(rad)」の位相差であることから、全体のトルクとしては、「6」の係数の項だけが残るようにキャンセル(相殺)されて、
6f=n±m(f:自然数)、s=nα+mβ、t=nα−mβ
と、置くと、次の式(8)のように表すことができる。
Figure 0006075034

また、この誘起電圧は、磁束を時間微分して求めることができることから、各誘起電圧に含まれる高調波の次数と1相1極磁束に含まれる高調波も同じ次数成分が発生することになる。その結果、3相交流モータにおいては、磁束(誘起電圧)に含まれる空間高調波次数nと相電流に含まれる時間高調波次数mとの組み合わせが6fになるときに、その6f次成分のトルクリプルが発生していることになる。
よって、3相モータのトルクリプルは、上述するように、1相1極における磁束波形における空間高調波nと相電流の時間高調波mにおいては、n±m=6f(f:自然数)のときに発生することから、例えば、11次と13次の空間高調波(n=11、13)が重畳していると相電流の基本波(m=1)との合わせにより12次の高調波トルクが発生することが分かる。
そして、この電動回転機10では、回転子12におけるV字空間17のフラックスバリア17cとして、永久磁石16を比率δ=1.44の寸法形状にしつつ軸心に向けての拡大サイズを最適化するために、軸心側の端部壁面位置を決定する。
まず、図1に戻って、この回転子12の構造は、フラックスバリア17cの軸心側の端部壁面位置の軸心からの法線方向の離隔距離R2を変化させて、その外周面までの外半径R1と内周面までの内半径R3に対する比率R2/R1、R3/R2をパラメータとしたときに得られる、図22、図23に示すトルク特性により決定する。ここで、回転子12の寸法形状は、回転駆動軸13の圧入時の電磁鋼板に掛かる圧縮応力に起因するミゼス応力で透磁率(磁束の通り易さ)が悪化することから、そのミゼス応力を考慮した数値で決定している。なお、この図22、図23は、図18の比較構造Bを基準として、最大負荷時に得られるトルクをper unit単位で図示している。
まず、図22からは、R2/R1が0.56〜0.84の範囲A内で構造B以上のトルクが得られることが分かり、好ましくは、傾向の変化する位置付近の0.565〜0.75の範囲B内、より好ましくは、トルクが5%程度増加する0.59〜0.63程度の範囲C内になるように、フラックスバリア17cの軸心側端部位置の離隔距離R2を決定する。
さらに、図23からは、R3/R2が0.54〜0.82の範囲A内で構造B以上のトルクが得られることが分かり、好ましくは、傾向の変化する位置付近の0.60〜0.81の範囲B内、より好ましくは、トルクが5%程度増加する0.70〜0.77程度の範囲C内になるように、フラックスバリア17cの軸心側端部位置の離隔距離R2を決定する。
これにより、図17における磁路MP2の磁路幅を十分に確保することができ、その磁路MP2で磁気飽和が発生することがないようにフラックスバリア17cのサイズを決定することができる。
また、図24に示す回転子12Bでは、上述するように、永久磁石16の長手方向の長さ(幅)を最適値Wpmにした場合にも、d軸に接近する角部16a付近では、磁石磁束ΨmのベクトルVmに対して対向する電機子磁束ΨrのベクトルVrが存在する。具体的には、このd軸に接近する角部16a付近では、磁極外周側小領域A1の軸心側最深部に向かう磁路を通過する電機子磁束ΨrのベクトルVrが磁石磁束ΨmのベクトルVmに対して挟角90度を超える逆向き方向で対向(干渉)して打ち消す(相殺する)逆磁界の関係になる状態が残っている。このため、この回転子12Bの構造では、永久磁石16のd軸側角部16a付近を通過する電機子磁束Ψrが磁石磁束Ψmを抑え込む(打ち消す)のに浪費される。
このことから、この電動回転機10(回転子12)では、図25に示すように、フラックスバリア17cをd軸側で外周面12aに向かっても拡大する空隙形状に形成している。これにより、この回転子12では、d軸に接近する永久磁石16の角部16a付近の電機子磁束ΨrのベクトルVrが磁石磁束ΨmのベクトルVmに対して挟角90度以下となる磁路をその電機子磁束Ψrが通るようにして、電機子磁束Ψrおよび磁石磁束Ψmを有効活用できる構造にしている。
詳細には、この電動回転機10では、回転子12におけるV字空間17のフラックスバリア17cとして、永久磁石16を比率δ=1.44の寸法形状にしつつ外周面12a側に向けての拡大空隙を最適化するために、その寸法形状1、2を決定する。
まず、この回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状1としては、図26に示すように、そのフラックスバリア17cの外周面側端面(平面形状)17cuの延長面とd軸との交点Yから外周面12a(交点X)までの離隔距離DLdを決定する。例えば、その離隔距離DLdは、回転子12の外半径R1に対する比率DLd/R1をパラメータとしたときに得られる平均トルク、高調波トルクおよびトルクリプルにより決定する。言い換えると、このフラックスバリア17cの寸法形状1としては、回転子12における磁極外周側領域A2を通過する磁路MP1の磁束密度を飽和させないなど最適特性を得ることができるように外周面12aから外周面側端面17cuのd軸側端部までの間隔(離隔距離)DLdを決定する。
例えば、この回転子12の外周面12aからフラックスバリア17cの外周面側端面17cuを、図27に示すように、V字空間17の収容空間17aの外周面側壁面(永久磁石16の外面)17auの延長面に一致するDLd/R1=0.194からDLd/R1=0.086まで外周面12a側に拡大させる。この場合には、図28、図29のグラフに示すようにトルク特性が変化することが分かる。なお、図28では、DLd/R1=0.194を基準として最大負荷時に得られる平均トルクをper unit単位で図示している。また、図28の高周波トルクは、その6次と12次の成分(電気角)の重畳率を図示しており、図29のトルクリプルは、トルクの変動率を図示している。
この図28からすると、回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状1としては、DLd/R1=0.098〜0.194の範囲A内にすることにより、単にV字空間17の収容空間17aの外周面側壁面17auを延長しただけの構造よりも大きなトルクが得られることが分かる。この寸法形状1としては、好ましくは、DLd/R1=0.11〜0.194程度の範囲B内にすることにより12次の高調波トルクを低減することができ、また、より好ましくは、DLd/R1=0.12〜0.14程度の範囲C内にすることにより最大トルクを得ることができる。また、図29からすると、この寸法形状1としては、DLd/R1=0.139のベストポイント形状BP1とすることによりトルクリプルを最低にすることができる。
さらに、この回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状2としては、図26に示すように、フラックスバリア17cの外周面側端面17cuがV字空間17の収容空間17aの外周面側壁面17auに対して傾斜する角度αを決定する。
例えば、この傾斜角αは、DLd/R1=0.139をベースにしつつ、フラックスバリア17cの外周面側端面17cuとd軸との間の挟角θ1と、V字空間17の収容空間17aの外周面側壁面17auとd軸との間の挟角θ2と、の比率θ1/θ2を決定する。この比率θ1/θ2は、パラメータとして変化させたときに得られる図30、図31に図示する平均トルク、高調波トルクおよびトルクリプルにより決定する。言い換えると、このフラックスバリア17cの寸法形状2としては、回転子12の磁極外周側小領域A1のd軸に接近する永久磁石16の角部16a付近で、電機子磁束Ψrが磁石磁束Ψmを抑えない磁路を形成して最適特性を得ることができるように傾斜角αを決定する。なお、図30では、θ1/θ2=1.7を基準として最大負荷時に得られる平均トルクをper unit単位で図示している。また、図30の高周波トルクは、その6次と12次の成分の重畳率を図示しており、図31のトルクリプルは、トルクの変動率を図示している。このθ2は永久磁石16の磁石開口度と称されることもあり、このことから、θ1はフラックスバリア開口度と称することもできる。
この図30からすると、回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状2としては、θ1/θ2=1.2〜1.7程度の範囲Dにすることにより大きなトルクが得られるとともに12次の高調波トルクを低減することができることが分かる。さらに、この寸法形状2としては、図31からすると、好ましくは、θ1/θ2=1.52のベストポイント形状BP2とすることにより最大トルク・最小トルクリプルにすることができる。
ここで、フラックスバリア17cの寸法形状1、2の双方を考慮すると、DLd/R1=0.098〜0.194の範囲Aとする場合には、この条件でのθ1を、変位させるθ2で除することにより求めることができ、θ1/θ2=1.0〜2.13とすることにより好適なトルク特性を得ることができる。また、DLd/R1=0.11〜0.194程度の範囲B内にする場合には、同様に、θ1/θ2=1.0〜2.02とすることでより好適なトルク特性を得ることができる。
また、フラックスバリア17cの寸法形状1、2の双方を考慮したDLd/R1=0.139とθ1/θ2=1.5で最適化した場合には、図32に示すように、図24に示す比較構造例の場合よりも、平均トルクを約1.8%増加させつつトルクリプルを小さく抑えることができる。また、この寸法形状1、2では、図33に示すように、図24に示す比較構造例の場合よりも、12次と24次の高調波トルクを大きく低減することができている。これにより、この寸法形状1、2では、特に12次の高調波トルクを大幅に低減して、登坂加速時にジャダーの発生を抑制するとともに、電磁騒音も大幅に低減することができる。
また、図34Aに示す回転子12Aでは、永久磁石16がd軸付近まで存在することにより磁極外周側領域A2に多くの磁石磁束Ψmが発生している。これに対して、図35Aに示すセンタ溝21を設けていない回転子12Cでは、そのd軸付近には空隙のフラックスバリア17cが形成されていることから、永久磁石16から発生する磁石磁束Ψmの直交性が低下、言い換えると、d軸付近における磁石磁束Ψmの磁束密度が低下している。このため、q軸磁路Ψqにとってはd軸付近における磁気抵抗が下がることでインダクタンスが高くなる。この結果、回転子12Cでは、外周面12aに鎖交する磁束の密度に差が生じることに起因して、磁束に高調波が重畳してしまいトルクリプルや鉄損の増加により効率が低下してしまう。
例えば、回転子12Aのd軸付近では、図34Bの最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、電機子磁束Ψrの磁路ループに対応して、対面するステータティース15Dから鎖交する磁束密度は高くない。これに対して、回転子12Cのd軸付近では、図35Bの最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、図34Bのステータティース15Dにおける磁束よりも鎖交する磁束密度が高くなって、流入する磁束が増加している。
このことは、回転子12A(フラックスバリア17d、センタ溝21なし)と回転子12B(フラックスバリア17c、センタ溝21なし)で、1つのステータティース15との間のギャップGを通過する1歯鎖交磁束波形を比較すると、図36のグラフに示すように、回転子12Bの方が、d軸付近が影響する図中に「P」で示す箇所において、磁束が流れ易く高調波が重畳し易くなっている。例えば、図36に示す磁束波形をフーリエ級数展開すると、図37に示すように、回転子12Aよりも回転子12Bの磁束波形の方が、5次、7次の空間高調波の含有率が大きく重畳していることからも分かる。
そこで、電動回転機10は、回転子12の外周面12aのd軸上に、ステータティース15の内周面15aとの間のギャップGにおける磁気抵抗を増加させるように調整するセンタ溝21を形成している。このセンタ溝21を形成した回転子12では、図38の最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、回転子12のd軸付近で対面するステータティース15から進入する磁束の増加を抑えることができている。
また、この回転子12(センタ溝21あり)と回転子12C(センタ溝21なし)では、トルク波形を比較すると、図39のグラフに示すように、回転子12Cを基準にして(1.0[p.u.])、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が振幅を小さくすることができ、トルクリプルを抑えることができる。また、この図39に示すトルク波形をフーリエ級数展開すると、図40に示すように、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が、6次、12次、18次、24次の高調波トルクを大幅に低減できている。なお、図39には、回転子12Cの平均トルクを基準にして(1.0[p.u.])瞬時トルクのトルク波形を図示している。
そして、この電動回転機10では、このトルクリプルなどのトルク特性に基づいて、回転子12におけるセンタ溝21の最適な寸法形状を決定している。
このセンタ溝21は、図41に示すように、軸心からの法線方向の溝底21aまでの離隔距離R4を変化させて、回転子12の外周面12aまでの外半径R1に対する比率R4/R1をパラメータとしたときに得られる、図42に示すトルクリプルにより寸法形状を決定する。
まず、センタ溝21の深さとしては、センタ溝21のない寸法形状(R4/R1=1.0)を基準として、最大負荷時に発生するトルクリプルを低減可能に、次の寸法形状に形成する。
0.98≦R4/R1<1.0
また、回転子12のセンタ溝21は、固定子11側のステータティース15に対する相対的な関係から寸法形状を決定する必要があり、図41に示すように、回転子12の軸心を中心とした外周面12aにおける外開口角θaと、その外周面12aよりも内側の溝底21aの内開口角θbとで規定することができる。
この回転子12は、センタ溝21の外開口角θaをパラメータとして変化させると、図43に相電圧と線間電圧とを対応させているグラフに示すように、図中のピークFと頂部Wで示す箇所で影響を受ける。
具体的には、例えば、図43における、U相電圧波形のG1からG3の幅は、固定子11と回転子12との相対的な位置関係からセンタ溝21の外開口角θaの幅に応じて変化する。そのU相電圧波形は、外開口角θaを狭くしていくとG1−G3間も狭くなって頂部Wが最頂点となる尖った波形となり、線間電圧波形は、ピークFが頂部Wに近づいて、三角波に近似する波形となる。反対に、U相電圧波形は、センタ溝21の外開口角θaを広くしていくとG1−G3間の頂部Wが平坦形状になる波形となり、線間電圧波形は、ピークFが頂部Wから離れて裾広がりな台形波に近似する波形となって、5次、7次の空間高調波が重畳し易くなる。
ここで、センタ溝21は、上述するように、回転子12とステータティース15の間のギャップGにおける磁気抵抗を大きくする(透磁率を下げる)必要がある一方、外開口角θaを広くし過ぎると、5次、7次の空間高調波が重畳し易くなることから、必要最低限の寸法形状にする必要がある。
この回転子12と固定子11の構造を、図41に示すように、スロット18の回転子12側の開口幅SO、ステータティース15の内周面15aの対面幅TB、ステータティース15の内周面15aよりも内側の先端部幅TW、回転子12とステータティース15の間のギャップGのエアギャップ幅AGとすると、次のようになる。
まず、センタ溝21は、ギャップGにおける磁気抵抗を大きくする必要があることから、ステータティース15の対面幅TB以上必要である。これから外開口角θaの下限値としては、その対面幅TBと回転子12の軸心とで囲む形状が二等辺三角形(2×直角三角形)に近似するものとして、
2×tan−1((TB/2)/(R1+AG))≦θa
とすることができる。
また、スロット18は、コイルの自動インサートや必要なエネルギ密度を考慮すると、スロット18の開口幅SO>エアギャップ幅AGにする必要がある。この関係からスロット18の開口空間よりもギャップGにおける磁気抵抗が低く、ステータティース15の先端角部K(図36を参照)から回転子12側に鎖交する磁束量を低減する必要がある。このことから、センタ溝21は、隣接するステータティース15の内周面15aまでの幅以下にする必要があり、これから外開口角θaの上限値としては、同様に、
θa≦2×tan−1((SO+(TB/2))/(R1+AG))
とすることができる。
次に、センタ溝21の溝底21aの内開口角θbは、外開口角θaと同様に、隣接するステータティース15の内周面15aまでの幅以下の外開口角θaを上限値として、
θb≦2×tan−1((SO+(TB/2))/(R1+AG))
とすることができる。
その一方で、センタ溝21の溝底21aの内開口角θbの下限値は、外開口角θaの下限値をステータティース15の対面幅TBにして、ギャップGにおける磁気抵抗を上げるように調整することから、溝底21aなしの
0°≦θb
としてもよい。
なお、ステータティース15の対面幅TBと先端部幅TWは、ステータティース15の先端部を尖った形状にすると上記条件が不成立となることから、
TW≦TB
となる。
ここで、この回転子12では、低負荷時においても同様に、センタ溝21なしの回転子12Cとトルク波形を比較すると、図44のグラフに示すように、回転子12Cを基準にして(1.0[p.u.])、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が振幅を小さく、トルクリプルを抑えることができている。また、この図44に示すトルク波形をフーリエ級数展開すると、図45に示すように、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が、6次の高調波トルクを低減できている。
なお、以上では、センタ溝21がトルク特性に与える影響について主に説明するが、このセンタ溝21は、組立などの製造時にも目印にすることができるなど有用である。例えば、永久磁石16の軸方向における位置関係を捩じった状態にして、所謂、スキューを施す場合には、そのセンタ溝21の軸方向への直線性からスキューの有無を確認することができる。
また、図46に示すサイド溝22のない回転子12Dでは、図47に無負荷時のギャップGにおける磁束密度波形を図示するように、基本波から台形波に近い波形に変形していることが分かる。このギャップGでは、固定子11側のステータティース15や、回転子12側のV字型の永久磁石16やV字空間17のフラックスバリア17b、17cの構造に応じたギャップ磁束波形にさらに空間高調波が重畳することによりトルクリプルや電磁騒音や鉄損の増加の要因となっている。
ギャップ磁束波形は、電気角90°がd軸に該当し、電気角0°、180°がq軸に該当しており、回転子12Dの一磁極中のステータティース15a〜15g毎に電気角30°毎の領域A〜Gが対応している。このギャップ磁束波形は、d軸側のフラックスバリア17c(空隙)に対応する領域A前後で窪んでおり、基本波形と比較すると、領域B、C間と領域E、F間で磁束密度が高すぎることが分かる。すなわち、回転子12Dでは、d軸から進行方向側に向かって2番目のステータティース15bから3番目のステータティース15cと、d軸から後退方向側に向かって2番目のステータティース15eから3番目のステータティース15fと、で空間高調波の重畳が多くなっていることが分かる。
このことから、回転子12Dでは、ステータティース15b、15c間と、ステータティース15e、15f間と、に対応する外周面12aの2箇所(d軸±30°〜60°)の範囲内に、鎖交する磁束密度を低減させるためのサイド溝22を一対形成するのが有効である。
ところで、IPM型モータでは、回転子を捻ることにより、軸方向の永久磁石間に所謂、段スキューを施すことで、特定次数のトルクリプルを打ち消すことができる。例えば、三相モータの場合には、電気角15°の段スキューを施すことにより12次のトルクリプルを完全に打ち消すことができる。
詳細には、磁束に重畳する12次の高調波を関数で表すと、
F(θ)=sin12θ
と置くことができ、電気角15°ずれた波形は、
F(θ+15°)=sin12(θ+15°)=−sin12θ
となり、理論的には、11次と13次の空間高調波で相殺させてキャンセルすることができ、この結果、12次のトルクリプルを低減できる。
このことから、無負荷時だけでなく、負荷時の高調波の重畳するギャップ磁束波形を確認すると、図48に示すような波形になっている。なお、この図48には、サイド溝22なしのまま段スキューの有無の場合の双方を図示している。
このギャップ磁束波形では、段スキューを施すことにより、重畳する空間高調波が抑えられていることを確認できるが、無負荷時と同様に、基本波形と比較すると、領域B、C間と領域E、F間で磁束密度が高すぎることが分かる。
そして、この電動回転機10では、このような、トルクやトルクリプルなどのトルク特性に基づいて、回転子12におけるサイド溝22の最適な寸法形状を決定している。
サイド溝22は、図49(図26)に示すように、永久磁石16の外周面12a側壁面(外周面側壁面17au)の延長面とd軸との間の挟角、所謂、磁石開口度θ2と、軸心から永久磁石16の外周面12a側角部16bを繋げる延長線とd軸との間の挟角、所謂、磁石端部開き角θ3と、外側端辺22oとd軸との間の外挟角θ4と、内側端辺22iとd軸との間の内挟角θ5と、で形成位置を規定することができる。
まず、サイド溝22は、磁石端部開き角θ3や磁石開口度θ2の外側に位置してしまうと、図47に示すギャップ磁束波形における領域C、D間と領域F、G間に対応してしまい、磁束密度の低減位置から外れてしまう。また、回転子12は、外周面12aとフラックスバリア17bの間の磁極内外を連結支持する、後述のサイドブリッジ30に、高速回転する際の永久磁石16の遠心力に起因するミゼス応力が集中することから、その応力集中による破断を防止するために、ある程度の幅が必要である。このことから、サイド溝22の形成位置としては、
内挟角θ5<外挟角θ4≦磁石端部開き角θ3
となる。
また、サイド溝22は、内挟角θ5/外挟角θ4の比率をパラメータとしたときに得られる、図50、図51に示すトルクや高調波トルクやトルクリプルのトルク特性により寸法形状を決定する。
まず、サイド溝22は、図50の最大負荷時のトルク特性からすると、サイド溝22のない回転子12D(θ5/θ4=1.0)を基準にして(1.0[p.u.])、
0.945≦θ5/θ4≦0.98
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。特に、このサイド溝22は、θ5/θ4=0.97とすることによりトルクリプルを最低限にすることができる。
また、このサイド溝22は、図51の低負荷時のトルク特性からしても、
θ5/θ4≦0.98
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。
また、このサイド溝22は、図49に示すように、溝深さRG/エアギャップ幅AGの比率をパラメータとしたときに得られる、図52に示すトルクやトルクリプルのトルク特性により寸法形状を決定する。
まず、サイド溝22は、図52の最大負荷時のトルク特性からすると、サイド溝22のない回転子12D(RG/AG=0.0)を基準にして(1.0[p.u.])、
0.00<RG/AG≦0.73
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。特に、このサイド溝22は、0.30≦RG/AG≦0.45程度にすることによりトルクリプルを最低限にすることができる。
これにより、電動回転機10は、図53のギャップ磁束波形のグラフに示すように、サイド溝22を回転子12の外周面12aの最適位置に形成することにより、台形波における、特に、領域B、C間と領域E、F間の磁束密度を低減することができている。
また、電動回転機10は、図54の最大負荷時のトルク波形や図55の低負荷時のトルク波形のグラフに示すように、サイド溝22を回転子12の外周面12aの最適位置に形成することにより、いずれでもトルクリプルを低減することができている。
さらに、電動回転機10は、図56のコギングトルク波形のグラフに示すように、サイド溝22を回転子12の外周面12aの最適位置に形成することにより、コギングトルクを50%以上低減することができている。
ところで、電動回転機10は、永久磁石16を図57に示す位置関係になるように回転子12内に埋め込むIPM構造の場合、固定子11のステータティース15の1歯における磁束の変化は、図58に示すように、矩形波に近似することができる。この磁束波形には、5次や7次などの低次の空間高調波が重畳することにより、鉄損や、トルクの変動幅であるトルクリプルが増加して、熱エネルギとしての浪費による効率低下と共に、振動や騒音の発生要因となっている。鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損に分けることができる。ヒステリシス損は周波数と磁束密度の積であるとともに、渦電流損は周波数の2乗と磁束密度の積であることから、空間高調波を抑えることにより損失を低減することができ、電気エネルギの入力に対する駆動効率を向上させることができる。なお、図58では、縦軸を界磁磁束とし、横軸を時間にして、1つのステータティース15に対して、L1間では磁束の鎖交がなく、L2間で磁束が正逆鎖交する、電気角1周期T(4L1+2L2)における磁束波形の近似矩形波を図示している。
また、モータ(電動回転機)の電磁騒音は、スタータ(固定子)側に働く電磁力により、そのステータが振動することで発生しており、ステータに働く電磁力は、ロータ(回転子)とステータの磁気結合に起因する径方向電磁力と、トルクに起因する周方向電磁力とが存在する。径方向電磁力は、1ステータティース15毎に、モータを線形磁気回路で近似して考察した場合には、磁束φ、磁気エネルギW、径方向電磁力fr、磁気抵抗Rg、磁束密度B、磁束鎖交面積S、エアギャップG間距離x、磁路透磁率μとすると、磁気エネルギWと径方向電磁力frは次の式(9)、式(10)のように表すことができる。
Figure 0006075034

よって、空間高調波を考慮して磁束密度Bを次式(11)のように表したときには、径方向電磁力frは磁束密度Bの2乗を含むことから、空間高調波の重畳は径方向電磁力frの増加の要因となる。すなわち、空間高調波を低減することは、トルクリプルの低減、引いては、モータ電磁騒音の低減と共に駆動効率の向上を実現できる。
Figure 0006075034
毎極毎相スロット数=2となる分布巻方式の3相IPMモータである電動回転機10の場合には、1磁極対当たり12個のスロット18が対応することになるので、電気角の1周期内においては、磁気抵抗が大となるスロット18が12箇所存在し、該当するスロット18の磁気抵抗により、11次、13次の空間高調波nが磁束波形に重畳することになる。この11次、13次の空間高調波nは、一般にスロット高調波といって、永久磁石16の軸方向における設置位置に応じて軸心を中心に捩じったスキュー角を持たせることで容易に低減可能である。
しかしながら、3相のIPM構造の場合には、図58に示すように、1つのステータティース15に界磁磁束が鎖交する磁束波形がほぼ矩形波となるため、構造的にも、5次、7次の空間高調波n(6f次=6次の高調波)は重畳し易く低減することは困難である。
このため、トルクリプル低減のためには、5次、7次の空間高調波を低減する構造を採用する必要がある。
この3相のIPM構造の1つのステータティース15における磁束波形を矩形波近似したときのフーリエ変換式f(t)は、次式(12)のように表され、図58に図示する磁束波形F(t)は、次式(13)のように表すことができる。この磁束波形F(t)は、7次までの空間高調波を含む近似式とすると、次式(14)のように表され、三角関数の和積の公式で展開し整理すると、次式(15)のように変形することができ、この式から5次または7次の高調波を低減するには、次の条件1または条件2を満たす必要があることが分かる。
条件1:「cos5ω・L1=0」
条件2:「cos7ω・L1=0」
Figure 0006075034
ところで、図58の磁束波形を参照すると、次式(16)であることから、条件1の変形式に代入すると、次式(17)のようになる。ここで、「L1、L2>0」であることから、これを整理すると、次の条件1Aを満たすことにより5次の空間高調波をゼロにして抑えることができることが分かる。
角周波数(角速度)ω=2π/T=2π/(4L1+2L2) ……(16)
条件1:5ωL1=5・2πL1/(4L1+2L2)=±π/2 ……(17)
条件1A:L1=L2/8
同様に、条件2の変形式は、次式(18)のようになり、「L1、L2>0」であることから、これを整理すると、次の条件2Aを満たすことにより7次の空間高調波をゼロにして抑えることができることが分かる。
条件2:7ωL1=7・2πL1/(4L1+2L2)=±π/2 ……(18)
条件2A:L1=L2/12
そして、毎極毎相スロット数=2の電動回転機10では、回転子12の外半径R1を使って次の関係にあることから、周速度Vを使って次の式(19)、式(20)のように整理することができる。
機械角45度=電気角周期T/2
V(m/sec)=2πR1・(45°/360°)/(T/2)
=2πR1・(45°/360°)/((4L1+2L2)/2)
=R1(m)・ω(rad/sec) ……(19)
2L1+L2=π/4ω ……(20)
これに条件1Aと条件2Aを代入すると、次の条件を導くことができる。
5次空間高調波=0 ⇒ (L2、L1)=(π/5ω、π/40ω)
7次空間高調波=0 ⇒ (L2、L1)=(3π/14ω、π/56ω)
これから、電動回転機10では、次の関係式(21)を満たすようにレイアウトすることで、5次と7次の空間高調波を低減傾向にして、トルクリプルを抑えることができる。
π/5ω≦L2≦3π/14ω(sec) ……(21)
ここで、当該関係式(21)の「L2」は、図58の磁束波形におけるステータティース15に対面する回転子12側の磁路を形成する領域に相当し、永久磁石16の両側のフラックスバリア17bの外端部までの領域を含む範囲の軸心を中心とする拡開角度θ6、言い換えると、磁極開口度θ6とすることができる。
この図58の磁束波形を参照すると、「θ=ωt」の関係式が成り立つことから、
「θ1=ωL2」と置き換えることができ、各種表示形式では次のように表すことができる。例えば、8極48スロットモータの構造(1磁極に対して6スロットが対応する構造)の毎極毎相スロット数=2の電動回転機10では、8極中の2極で1周期であることから、回転子12の機械角1周期の360°回転は電気角4周期に相当し、次の関係式が成り立つことになる。
π/5(rad)≦θ6(機械角)≦3π/14(rad)
36(degree)≦θ6(機械角)≦270/7(degree)
θ6(機械角)=(8極/2極)・θ6(電気角)
144(degree)≦θ6(電気角)≦154.3(degree)
このことから、電動回転機10では、図59に示すように、永久磁石16と両端側フラックスバリア17bの外端部までを含めた1磁極の磁極開口度θ6が次のようなレイアウトになるように回転子12内に設置されている。なお、図59におけるθ7はq軸間の開口度に対応している。
36°≦θ6(機械角)≦38.6°
144°≦θ6(電気角)≦154.3°
ところで、このときに、回転子12における1磁極の磁極開口度θ6は、図58に示すような磁束波形の近似波形における、磁束がステータティース15に鎖交する期間L2に対応し、図59に示すように、その鎖交期間L2はq軸間θ7の中心に位置して、さらに、その鎖交期間L2の中心線にd軸が一致するタイミングの磁束波形となっている。なお、図57中の角度θ7は、q軸間の角度に相当して機械角度45°であり、また、磁束波形における半周期の電気角度θである。
したがって、電動回転機10は、回転子12内の永久磁石16のフラックスバリア17bを含む磁極開口度θ6を、相電流の時間高調波mの基本波形となるm=1としたときに、トルクリプルの低減に有効な特定次数である6f次(n=5、7)にする相電圧の空間高調波nの5次、7次を抑える角度範囲(144°≦θ6(電気角)≦154.3°)にすることによって、トルクリプルを低減して振動や騒音を少なく回転軸13を高品質に回転駆動させることができる。また、同時に、トルクリプルを低減させることにより振動を少なくすることによる熱損失と共に、ヒステリシス損と渦電流損の鉄損を抑えることができ、損失の少ない高効率に回転駆動させることができる。
実際には、図60に示すように、矩形波近似した磁束波形に対して両肩部で漏れ磁束が発生するため、理論的な値(波形)から微小なズレが発生する。この微小なズレは、144°≦磁極開口度θ6(電気角)≦154.3°の範囲内で磁界解析等により調整可能である。
この電動回転機10は、最大負荷時には、d軸側よりも磁石磁束Ψmの影響の少ないq軸付近(q軸磁路)に電機子磁束Ψrが流れ込んで、磁束密度が高くなる傾向にあることから、そのq軸磁路が磁気飽和近くなると透磁率が低下してトルクが低下する。このことから、磁極開口度θ6は、q軸磁路をできるだけ確保してトルク(磁束通過効率)を高めるために小さい(狭い)方が有利であり、144°(電気角)に近い値とする。この磁極開口度θ6は、固定子11のステータティース15の対面幅TBやスロット18の開口幅SOや回転子12とステータティース15の間のエアギャップ幅AGなどとの相関関係から磁界解析を行って、5次や7次の空間高調波を低減でき、また、コギングトルクも低減できる最適値として、146.8°(電気角)に決定している。
また、電動回転機10は、磁石開口度θ2をパラメータとして、図61、図62に示すトルクや6次、12次の高調波トルクやトルクリプルのトルク特性により決定する。なお、この図61、図62では、θ2=90°(電気角)を基準にして(1.0[p.u.])、これらトルク特性を図示している。
まず、磁石開口度θ2(機械角)は、最大負荷時には、図61に示すように、27.5°未満になるとトルクが大きく低下し、また、72.5°を超えると、トルクリプルや高調波トルクが大きくなることから27.5°〜72.5°の範囲Eに収めるのが好ましく、トルクからすると、37.5°〜67.5°程度の範囲F内にするのがより好ましい。
また、磁石開口度θ2(機械角)は、低負荷時には、図62に示すように、37.5°未満になるとトルクが急激に低下し、また、82.5°を超えると、トルクの急落と共にトルクリプルや高調波トルクが大きくなることから37.5°〜82.5°の範囲Gに収めるのが好ましく、トルクからすると、42.5°〜67.5°程度の範囲H内にするのがより好ましい。
これら最大負荷時と低負荷時からすると、磁石開口度θ2(機械角)は、37.5°〜72.5°に収めるのが好ましく、トルクからすると、42.5°〜67.5°程度にするのがより好ましく、さらに、52.5°にするのがトルクリプルや高調波トルクを抑えつつトルクを最大にすることができて好適である。
この電動回転機10は、図63に示すように、回転子12内に永久磁石16をV字型に埋め込むIPM構造を採用することから、上述のセンタブリッジ20に加えて、フラックスバリア17bの外端側にサイドブリッジ30を備えることにより、一対の永久磁石16を含む磁極が高速回転する際の遠心力により生じるミゼス応力に抗して形状を維持するように連結支持している。センタブリッジ20は、回転子12の軸心からd軸に一致する法線方向に延長されて磁極を連結支持している。サイドブリッジ30は、回転子12の外周面12aとフラックスバリア17bの外端側内面17b1との間に形成されて、回転子12内で一磁極を形成する一対の永久磁石16の外側(外周面12a側)のd軸側と、隣接する別磁極側のq軸側との間を連結支持している。
サイドブリッジ30は、図64の無負荷時の磁束ベクトル図に示すように、磁極のd軸側とq軸側の間に位置することから(理想的には磁束の回り込みをできるだけ抑制したいところだが)、永久磁石16の磁石磁束Ψm(図中にはベクトルVmとして図示)の回込磁路としても機能する。また、サイドブリッジ30は、回転子12の回転に伴って、エアギャップGを介してステータティース15との間で磁石磁束Ψmを鎖交させる領域がq軸側とd軸側とで切り替わる間の磁路としても機能する。このサイドブリッジ30は、回転子12の外周面12aの背面側に位置するフラックスバリア17bの外端側内面17b1の形状に応じて磁気抵抗を調整することができ、その回転子12の回転に伴って鎖交などして通過する磁石磁束Ψmの磁束密度を変化させることができる。
この磁石磁束Ψmは、無負荷時には、図65Aに示すように、固定子11(ステータティース15)と回転子12との間のエアギャップGにおける磁束密度が矩形波に近い波形で変化しており、この磁石磁束Ψmの磁束密度の変化によりコギングトルクが発生している。磁石磁束Ψmの磁束密度は、正弦波に近似する波形で変化させることでスムーズな駆動を実現できて理想的であるが、実現することは難しいことから、その磁束の時間的変化(dΨ/dt)を小さくするのがコギングトルクを低減できて有効である。特に、図65Bに示すように、磁束(密度波形で図示)の立ち上がり領域や収束領域において時間的変化を緩やかにするのが効果的である。このことから、コギングトルクの低減には、サイドブリッジ30を形成するフラックスバリア17bの外端側内面17b1の形状を最適化することが考えられる。
また、サイドブリッジ30は、図66の最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、同様に、回転子12の回転に伴って、エアギャップGを介してステータティース15との間で電機子磁束Ψr(図中にはベクトルVrとして図示)を鎖交させる領域がq軸側とd軸側とで切り替わる間の磁路としても機能する。この電機子磁束Ψrは、磁石磁束Ψmと同様に、矩形波に近似する磁束波形になることで、上述するように、5次、7次、11次、13次などの(6f±1)次の空間高調波が重畳し易く、このために、トルクリプルが発生している。このことから、サイドブリッジ30は、同様に、特に、磁束の立ち上がり領域や収束領域において電機子磁束Ψrの時間的変化(dΨ/dt)を緩やかにするようにフラックスバリア17bの外端側内面17b1の形状を最適化することが、トルクリプルを低減することができて有効である。
そこで、この電動回転機10では、回転子12の外周面12aに対するフラックスバリア17bの外端側内面17b1の形状を緩やかに変化させてサイドブリッジ30の厚さ(図中における幅)を調整することでエアギャップGにおける磁気抵抗を調整する。
このサイドブリッジ30は、図67に示すように、回転子12の一対の永久磁石16の外側(外周面12a側)に位置する領域をセンタブリッジ20と共に連結支持することから、高速回転時のミゼス応力が、回転子12の外周面12aのd軸側領域MS1と、フラックスバリア17bの外端側内面17b1のq軸側領域MS2と、に集中している。なお、センタブリッジ20側では、回転子12の外周面側領域MS3でミゼス応力が集中している。
このことから、図63に戻って、サイドブリッジ30は、フラックスバリア17bの外端側内面17b1の両端側角部17b1cの中間点17b1mで、その外端側内面17b1を屈折させてq軸側の厚さ(図面上の幅)を厚くし、所謂、フィレット形状にしている。これにより、サイドブリッジ30は、q軸側領域MS2をミゼス応力に対して有利な形状にするとともに、エアギャップGにおける磁気抵抗が緩やかに低下するように調整して、そのエアギャップGにおける磁石磁束Ψmや電機子磁束Ψrが緩やかに変化するように調整をする。
具体的には、サイドブリッジ30の回転子12内部のフラックスバリア17bの外端側内面17b1は、中間点17b1mの両側にd軸側内面17b1dとq軸側内面17b1qとを有している。この外端側内面17b1は、回転子12の軸心および中間点17b1mを通過する直線とd軸との間の挟角θ8と、d軸側内面17b1dのq軸側への延長面とq軸側内面17b1qとの間の挟角θ9と、をパラメータとして変化させたときに得られるトルクやコギングトルクやトルクリプルの特性により決定する。なお、この特性比較では、上述した磁極開口度θ6を最適化した構造での挟角θ8=74.2°(挟角θ9=0、屈折なし)を基準としてper unit単位で図示している。また、このフラックスバリア17bの外端側内面17b1の両端側角部17b1cや中間点17b1mでは、d軸側内面17b1dおよびq軸側内面17b1qのそれぞれの両端側が滑らかに連続するように湾曲形状に形成して、所謂、面とり形状に形成されている。
まず、サイドブリッジ30のフラックスバリア17bの外端側内面17b1は、図68に示すように、中間点17b1mの挟角θ8(電気角)としては、64.7°以上で74.2°未満の範囲Iとすることにより、無負荷時におけるコギングトルクを低減できることが分かる。この挟角θ8は、より好ましくは、66°〜72°の範囲Jとすることにより、コギングトルクをより効果的に低減できることが分かる。
また、サイドブリッジ30のフラックスバリア17bの外端側内面17b1は、図69に示すように、中間点17b1mの挟角θ8(電気角)としては、64.9°以上で74.2°未満の範囲Kとすることにより、最大負荷時におけるトルクの低下を微小に抑えつつトルクリプルを低減できることが分かる。この挟角θ8は、より好ましくは、66°〜78°の範囲Lとすることにより、トルクリプルをより効果的に低減でき、また、70°〜72°の範囲Mで72°寄りとすることにより、トルクの低下をより抑えつつトルクリプルを効果的に低減できることが分かる。
一方、サイドブリッジ30のフラックスバリア17bの外端側内面17b1は、図70に示すように、d軸側内面17b1dの延長面とq軸側内面17b1qの間の挟角θ9(機械角)、言い換えると、d軸側内面17b1dに対するq軸側内面17b1qの屈曲角θ9(機械角)としては、0°を超えて37°以下の範囲Nとすることにより、最大負荷時におけるトルクの低下を微小に抑えつつトルクリプルをより効果的に低減できることが分かる。この挟角θ9は、より好ましくは、10°〜27°の範囲Pで10°寄りとすることにより、トルクの低下をより抑えつつトルクリプルを効果的に低減できることが分かる。
ところで、電動回転機10は、図71に示すように、回転子12内で永久磁石16のd軸側に位置するフラックスバリア17cを、軸心に向かう大きな空隙に形成するのに加えて、q軸側にも向かって拡大させている。これにより、電動回転機10は、q軸側を通過する磁束を、磁気飽和が発生しないように、永久磁石16側と軸心側とに最適な磁束量となるように分割(分流)している。
フラックスバリア17cは、図72に示すように、永久磁石16に隣接する位置からq軸側に向かって拡大されている。詳細には、このフラックスバリア17cは、永久磁石16の角部16aを嵌め込んでV字空間17の収容空間17a内に位置決めする回転子12の固定爪12fの隣接位置からq軸側に向かうように拡大延長されており、q軸側延長面17cq1と、q軸平行面17cq2と、軸心側端部壁面17cq3とを繋げた形状に形成されている。
q軸側延長面17cq1は、回転子12の固定爪12fを挟むように形成されている収容空間17aの軸心側壁面17ai(永久磁石16の外面)との間の挟角θqとして、q軸と平行になる145°(機械角)よりも小さくするのがq軸側磁路の磁束容量を確保するために望ましい。この挟角θqは、後述するように、磁束経路を整流するために20°〜90°(機械角)の範囲内で、機械的強度や必要な回転速度や製造条件などを考慮して決定するのが好ましい。
q軸平行面17cq2は、q軸側延長面17cq1から連続してq軸と平行になるように形成されており、軸心側端部壁面17cq3はこのq軸平行面17cq2から連続して軸心から離隔距離R2に位置するように形成されている。なお、本実施形態では、q軸側延長面17cq1と軸心側端部壁面17cq3の間をq軸と平行なq軸平行面17cq2を形成するが、これに限るものではなく、q軸を挟む最短の対面間隔が後述の角部17cq4間で最短距離DLwになる形状に形成するのが好適である。
この構成により、フラックスバリア17cは、図73に示すように、最大負荷駆動時には、q軸側を通る磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrの合成磁束Ψsを、q軸側延長面17cq1とq軸平行面17cq2の間の角部17cq4で効果的に分割させることができる。このため、その合成磁束Ψsは、磁気飽和を発生しないように、永久磁石16に鎖交して通過する磁路MP0と、反対側のq軸側へ迂回する磁路MP2とに振り分けて、それぞれq軸側延長面17cq1とq軸平行面17cq2に沿うように案内することができる(図15〜図17も参照)。
また、このフラックスバリア17cは、図74に示すように、低負荷駆動時には、合成磁束Ψsにおける割合として、電機子磁束Ψrの磁束量が少なく、磁石磁束Ψmが支配的で、主に永久磁石16のN−S間結合の磁路MP0を選択するのが有利である。このことから、その合成磁束Ψsは、永久磁石16に鎖交して通過する磁路MP0を優先的に選択するようにq軸側延長面17cq1で案内することができ、両隣りの磁極間で磁石磁束結合(N−S結合)を形成し易くして、マグネットトルクを有効利用することができる。このため、低負荷領域の合成磁束Ψsでも、高効率に駆動させて高トルクを得ることができる。
そして、この電動回転機10では、回転子12におけるV字空間17のフラックスバリア17cが有効に機能するように、q軸側延長面17cq1だけでなく、q軸平行面17cq2と軸心側端部壁面17cq3の位置を決定して形状を最適化する。
まず、この回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状3としては、図71に戻って、そのフラックスバリア17cのq軸を挟んで対面するq軸平行面(内面)17cq2間の最短距離DLwと、その軸心側端部壁面17cq3と回転子12の内周面12bの間の最短距離DLbと、の比率DLw/DLbをパラメータとしたときに得られるトルクにより決定する。
比率DLw/DLbとしては、図75に示すように、現実的な寸法比率として0.8から2.6まで変化させたところ、1.5から2.5の範囲内で最高レベルのトルク出力を得ることができることが分かる。なお、図75では、回転子12の構造における比率DLw/DLbをパラメータとして変化させたときに得られるトルクの変動を1目盛=2Nmのグラフに図示するものである。
これは、フラックスバリア17cは、最大負荷時にも磁気飽和を起こさないように、q軸側を通る磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrの合成磁束Ψsをq軸側延長面17cq1とq軸平行面17cq2の間の角部17cq4で磁路MP0、MP2のそれぞれに振り分けているためである。すなわち、図76に示すように、回転子12の内周面12bと軸心側端部壁面17cq3の間(DLb)を磁路として通過する合成磁束Ψs(磁束量ψ)は、永久磁石16のN極側とS極側のそれぞれで合流して2倍の磁束量2ψとなって、q軸平行面17cq2の間(DLw)に流れ込むことになる。この最短距離DLb、DLwは、それぞれの磁路としての磁束容量がバランスしている必要があり、その比率として、DLw/DLb=1.5〜2.5の範囲内が最適であることが分かる。
また、回転子12の外周面12aには、q軸側においては、ステータティース15の少なくとも一歯から電機子磁束Ψrが鎖交して進入する。このことから、そのフラックスバリア17cのq軸を挟むq軸平行面(内面)17cq2間の最短距離DLwは、ステータティース15の内周面15aよりも内側の先端部幅TWよりも大きな厚さ(幅)に形成する必要がある。
また、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrは、回転子12の外周面12aから固定子11のステータティース15の内周面15aに向かって鎖交した後に、その固定子11の外周面11aとスロット18の間に位置してバックヨークBYとして機能するステータティース15の背面側領域を通過する。このことから、回転子12のd軸およびq軸の磁路を通る磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrは、固定子11ではステータティース15の背面側領域(バックヨーク)BYを磁路とすることから、固定子11と回転子12の磁路における磁束容量をバランスさせることが重要である。
また、固定子11(内周面15a)と回転子12(外周面12a)の間には、磁気抵抗になるエアギャップGが介在することから、そのエアギャップGの大きさに応じてトルクが変動するとともに、鎖交する磁束への空間高調波の重畳し易さも変化することから、そのエアギャップ幅AGを最適化することも重要である。
例えば、電動回転機10は、コンパクトカー(小型車両)クラスのHEVを駆動するのに必要な駆動用モータとする場合、電機子起磁力F(アンペア・ターン)を3000〜5000(A)とし、永久磁石16を常温時の残留磁束密度Br=1.1〜1.3(T)で保持力Hcj=1.6〜2.5の特性となるように設定して、電機子起磁力と永久磁石起磁力とを有効利用するのが高効率で好ましい。
この性能を発揮するために必要な固定子11の寸法形状としては、固定子11の軸心から外周面11aまでの外半径Rosに対する、そのステータティース15の軸心から内周面15aまでの内半径Risの比率Ris/Rosが0.645よりも大きくなるように設定するのが好ましい。
この条件での固定子11(内周面15a)と回転子12(外周面12a)の間のエアギャップ幅AGとしては、その構造上かつ製造上の都合に起因する公差や同心度などの機械的要素の関係から0.6mm以上で0.1mm刻みのパラメータとして最適寸法を決定する。
エアギャップ幅AGは、図77Aに示すように、低負荷時に、できるだけ大きなトルクを得つつトルクリプルを小さくするためには、0.8mm以下(アンダー)にするのが最適であり、0.7mmよりも大きくしてできるだけ0.8mm近くにするのが好ましい。このエアギャップ幅AGの寸法条件は、図77Bに示す最大負荷時においても同様であり、できるだけ大きなトルクを得つつトルクリプルを小さくするには、0.8mmアンダーにするのが最適である。なお、図77A、図77Bでは、最小のエアギャップ幅AG=0.6mmを基準として低負荷時や最大負荷時に得られるトルクをper unit単位で図示している。
また、固定子11と回転子12の磁路における磁束容量を最適バランスにする寸法条件としては、d軸側空隙のフラックスバリア17cに代えて、V字空間17の外側のフラックスバリア17bと同等のフラックスバリア17dを備える関連技術の回転子12Aの場合と比較して決定する。
その固定子11の外半径Rosに対する回転子12の軸心から外周面12aまでの外半径R1の比率R1/Rosは、図78に示すように、0.63<R1/Ros<0.76の範囲内にするのが、その関連技術の回転子12Aよりも大きなトルクを得ることができて好ましい。なお、図78では、回転子12、12Aの比率R1/Rosをパラメータとして変化させたときに得られるトルクを算出して、本実施形態の回転子12が関連技術の回転子12Aを超えた比率を基準として(1.0[p.u.])、per unit単位で図示している。
ここで、本実施形態の電動回転機10(回転子12)が関連技術の回転子12Aよりも大きなトルクを得られるのは、フラックスバリア17cのq軸側延長面17cq1とq軸平行面17cq2の間の角部17cq4でq軸側を通る合成磁束Ψsを最大負荷時でも磁気飽和を起こさないように磁路MP0、MP2のそれぞれに振り分けるためである。
詳細には、本実施形態の回転子12では、最大負荷時における磁気飽和の発生を回避する最適な合成磁束Ψsの分散を実現することにより、回転子12側から磁束を受け取るステータティース15の厚さ(図中における幅)を回転子12Aとの組み合わせの場合よりも薄くしつつスロット18の容量(面積)を同等に確保することができ、固定子11側のバックヨークBYに余裕を生じさせて回転子12のロータ外径である外半径R1を大きくできるためである。
この比率R1/Ros<0.63で関連技術の回転子12Aよりトルクの出力性能が小さくなるのは、本実施形態の回転子12における永久磁石16の磁石量が少なく、また、そのロータ外径が相対的に小さいためであり、0.63<比率R1/Rosとなることにより得られるトルクは上昇する。
反対に、比率R1/Rosを大きくし過ぎると最大負荷時の磁束に対する磁路幅(磁束容量)が足りなくなって、比率R1/Ros=0.665〜0.68付近をピークにして磁気飽和気味になって、得られるトルクが低下する。さらに、0.76<比率R1/Rosになると関連技術の回転子12Aよりも得られるトルクが小さくなってしまう。
このことから、回転子12は、比率R1/Ros=0.63〜0.76の範囲内とし、好ましくは、変化率が切り換わる比率R1/Ros=0.65〜0.73の範囲内に収めて、さらに、比率R1/Ros=0.665〜0.68付近にするのが好ましい。
ところで、モータのトルクPoutは、ステータ外径Rosと電磁鋼板の積厚Lとをパラメータとする、Pout∝Ros×Lの関係にあり、車載するモータにはコンパクトな構造が求められてステータ外径Rosや電磁鋼板の積厚Lに制約がある。
このことから、車載モータとしては、ステータ外径Rosと電磁鋼板の積厚Lをそのままにしてロータ外径R1を大きくすることが大出力化・大トルク化に有効であり、入力に対する出力の大きさを向上させることができ、高効率化を実現することができる。
しかしながら、ステータ外径Rosをそのままにしてロータ外径R1を大径化すると、ステータティース15の背面側領域のバックヨークBYの厚さ(幅)が小さくなることから、小さな磁束容量で磁気飽和してしまう。あるいは、ロータ外径R1の大径化に伴って、ステータティース15が短くなってスロット18の空間容積が小さくなり、必要なターン数分のコイルを巻くことができなくなる。このような場合には、トルクや効率が低下してしまう。
スロット18におけるコイルのターン数は、電機子起磁力F=コイルターン数N×電機子電流Iで表されるように起磁力向上に有効である。このコイルに鎖交する磁束φと誘起電圧Vとでは、V=N×dφ/dtで表されることから、多く巻きすぎると誘起電圧Vが高くなり過ぎる。誘起電圧Vが高いと、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を考慮した電圧制限に低回転領域から掛かってしまい弱め磁界量を増やす必要が生じる。すると、広い可変領域が必要なモータの設計が困難になり、また、巻線抵抗値が高くなるために、銅損が増加し、連続定格性能が著しく低下する。
これに対して、本実施形態の電動回転機10(回転子12)では、磁極における永久磁石16を短くして形成される空隙をフラックスバリア17cとして拡大形成して、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrの合成磁束Ψsを最適に分散させることができる。これにより、回転子12では、固定子11のステータ外径Rosおよび電磁鋼板の積厚Lを変更することなく、磁気飽和を発生させずに、ロータ外径R1を大きくすることができ、しかも、その合成磁束Ψsの各磁路MP0、MP2における磁束容量の最適化により、電流位相角βに対するトルク特性(β−T特性)とトルクリプル率(β−トルクリプル特性)を改善することができている。
具体的には、本実施形態の電動回転機10(回転子12)は、関連技術の回転子12Aを採用する場合を比較例として比較すると、図79Aに示すように、最大トルクとなる電流位相角βは、ほぼβ=50°と一致して同様な特性となっている。なお、同図では、本実施形態と比較例の回転子12、12Aの何れでも、最大トルクを基準(1.0[p.u.])とするper unit単位で図示している。
その一方で、高効率駆動を実現するためには、一般的に電流値を最小にしつつ最大トルクを得ることができる電流制御、すなわち、銅損最小制御を実行して直流バス電圧(バッテリ電圧)に応じた基底回転速度までの範囲内では最大トルクを得られる電流位相角β=50°で駆動させる。この点では、本実施形態と比較例(回転子12、12A)のいずれも同様な傾向の特性で駆動させることができている。
しかしながら、その基底回転速度を超えると、IGBT等のスイッチング素子が誘起電圧により損傷してしまうことを回避するために磁石磁束を弱める弱め界磁制御を実行する必要があり、永久磁石16の磁石磁束ベクトルに電機子磁束ベクトルが対向するように逆磁界を掛けるために電流位相角βを進角させる。
図79Bに示すように、比較例の回転子12Aの場合には、電流位相角βを進角させると、磁束波形が歪んで空間高調波を多く重畳するようになってトルクリプルが増加してしまう。これに対して、本実施形態の回転子12の場合には、そのトルクリプルの増加を大幅に抑制することができている。
ここで、図79A、図79Bのいずれも、最大負荷時の特性のグラフであるが、全駆動領域においてもほぼ同様の傾向となる特性グラフとなる。
また、電流位相角βとトルクTのβ−T特性は、図80Aに示すように、最大負荷(電流入力100%)時に対する電流割合20%〜80%に応じて最大トルクとなる電流位相角βは前後する。その電流割合毎の電流位相角βに応じたトルクリプル率のβ−トルクリプル特性は、図80Bに示すように、全般的に安定しているが、電流割合20%まで低下させて電流位相角βをβ=70°より大きく進角させると、大きく上昇する傾向にある。
しかしながら、本実施形態の電動回転機10では、最大トルクを得る電流制御(銅損最小制御)を行うことから、電流割合20%では最大トルクが電流位相角β=30°であり、この銅損最小制御では駆動制御範囲外となって問題とならない。したがって、全駆動領域においてトルクリプルを大幅に低減することができる。
このことから、本実施形態の電動回転機10(回転子12)では、反時計回り(CCW)方向に回転駆動させる際の最大負荷時に電流位相角β=80°で駆動させたときには、図81に示すように、特に、図中の破線で囲むサイドブリッジ30付近でも過剰な磁束線の集中は認められない。
これに対して、比較例(回転子12A)では、同様に、最大負荷時に電流位相角β=80°で駆動させると、図82に示すように、特に、図中の破線で囲むサイドブリッジ30´付近に過剰な磁束線の集中が発生して磁気飽和近くとなる磁束密度の上昇が認められる。
詳細には、上述するように、比較例(回転子12A)では、q軸側の電機子磁束Ψrがd軸側に回り込んで磁石磁束Ψmと対向する逆磁界関係や合成ベクトル方向に向く合成磁束Ψsとして狭いサイドブリッジ30´に向かって、磁束密度を高くして磁気飽和させ易く、駆動効率の向上を妨げてしまう。
その一方で、本実施形態の電動回転機10(回転子12)では、永久磁石16の磁石量を削減して磁石磁束Ψmを低減しているとともに、q軸側の電機子磁束Ψrをフラックスバリア17cで最適に分割(分流)させて振り分けることにより、d軸側で合成磁束Ψsが狭いサイドブリッジ30に集中してしまうことを解消することができ、この結果、トルクリプルを大幅に低減することができている。
このトルクリプルは、上述するように、磁束波形に空間高調波や時間高調波が重畳することに起因しており、三相モータの場合には、基本磁束波形に重畳する(6f±1)次の5次、7次、11次、13次の空間高調波が多く重畳することによりトルクリプルが増加することになる。
このことから、本実施形態の電動回転機10(回転子12)では、最大負荷時に電流位相角β=80°で駆動させたときにステータティース15の1歯に鎖交する磁束波形をフーリエ級数展開すると、図83に示すように、比較例(回転子12A)よりも5次、7次、11次、13次の空間高調波を大幅に低減することができており、また、3次、9次の空間高調波も大幅に低減して鉄損も大きく抑えることができることが分かる。なお、図83では、本実施形態と比較例(回転子12、12A)のそれぞれの基本波磁束を基準として次数毎の磁束が重畳する割合をper unit単位で図示している。
このように本実施形態においては、永久磁石16のd軸側範囲Bを削減して大きなフラックスバリア17cに置き換えたので、電機子磁束Ψrを打ち消す方向の磁石磁束Ψmをなくして互いに干渉(相殺)してしまうことをなくすことができ、また、その範囲B内を電機子磁束Ψrが通過してしまうことも制限することができる。
したがって、永久磁石16の使用量を削減しつつ、d軸側での電機子磁束Ψrや磁石磁束Ψmを有効に活用して、大きなマグネットトルクTmとリラクタンストルクTrを得ることができる。また、誘起電圧定数の低減による高速回転側での出力の増加を図ることができるとともに、永久磁石16の渦電流に起因する発熱を抑えて温度変化による減磁を抑制して耐熱グレードを下げることによるコスト削減をすることができる。
なお、本実施形態では、8極48スロットモータの構成の電動回転機10を一例にして説明するが、極数が変わるなどした場合には、同様の処理を適用して導出した機械角で空隙(フラックスバリア)を形成すればよい。
また、フラックスバリア17cの軸心側端部までの離隔距離R2を回転子12の外半径R1と内半径R3との関係(寸法形状)が0.56≦R2/R1≦0.84、かつ、0.54≦R3/R2≦0.82になるようにすることで、大きなトルクTを効率よく発生させることができる。
また、フラックスバリア17cは、回転子12の外周面までの離隔距離DLdを回転子12の外半径R1に対して、0.098≦DLd/R1<0.194にすることで、大きなトルクを効率よく発生させることができる。さらに、このフラックスバリア17cは、好ましくは、0.12≦DLd/R1≦0.14かつ1.2≦フラックスバリア開口角θ1/磁石開口角θ2≦1.7になるように、さらに、DLd/R1=0.139かつθ1/θ2=1.52になるようにすることで、より大きなトルクを効率よく発生させることができる。
さらに、このフラックスバリア17cは、q軸側に拡大させてq軸側延長面17cq1とq軸平行面17cq2の間の角部17cq4で回転子12内にq軸側から進入する電機子磁束Ψrを適切に分割させて振り分けることができる。このため、d軸側で磁気飽和が発生することをなくして、トルクリプルを効果的に抑制しつつ電機子磁束Ψrによるリラクタンストルクをより有効活用できる。
このq軸平行面17cq2間の最短距離DLwと、軸心側端部壁面17cq3と回転子12の内周面12bの間の最短距離DLbとの比率を、1.5<DLw/DLb<2.5、かつ、ティース先端部幅TW<DLwになるようにすることで、より有効にトルクリプルを低減できる。
また、このフラックスバリア17cを有することにより、回転子の外半径R1と、固定子11の外半径Rosの比率を、0.63<R1/Ros<0.76として、高品質な回転駆動を維持しつつトルクを増加させることができる。
また、回転子12のセンタ溝21は、溝底21aまでの長さR4を回転子12の外半径R1に対して、0.98≦R4/R1<1.0にすることで、高調波トルクを抑えて効果的にトルクリプルを低減することができる。
さらに、このセンタ溝21は、2×tan−1((ティース対面幅TB/2)/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))≦外開口角θa≦2×tan−1((スロット開口幅SO+(ティース対面幅TB/2))/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))、0°≦内開口角θb≦2×tan−1((スロット開口幅SO+(ティース対面幅TB/2))/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))、ティース先端部幅TW≦ティース対面幅TBとなる寸法形状にすることで、高調波トルクをより抑えて、トルクリプルをより削減することができる。
また、回転子12のサイド溝22は、外挟角θ4≦磁石端部開き角θ3、0.945≦内挟角θ5/外挟角θ4≦0.98、0.00<溝深さRG/エアギャップ幅AG≦0.73にすることで、ギャップ磁束波形に重畳しようとする空間高調波を抑えることができ、コギングトルクやトルクリプルや鉄損の増加により駆動効率を低下させてしまうことを防止することができる。
さらに、V字型に埋め込む一対の永久磁石16の構造として、144°≦磁極開口度θ6(電気角)≦154.3°、かつ、27.5°〜37.5°≦磁石開口度θ2(機械角)≦72.5°〜82.5°、より好ましくは、37.5°≦θ2(機械角)≦72.5°とすることにより、最大負荷時や低負荷時のトルクを高くすることができ、このときのトルクリプルと6次と12次の高調波トルクを抑えて電磁振動や電磁騒音を低減することができる。
さらに、上記構造に加えて、サイドブリッジ30のd軸側内面17b1dおよびq軸側内面17b1qの中間点17b1mとd軸との間の挟角θ8を64.9°〜74.2°(電気角)とし、そのd軸側内面17b1dの延長面とq軸側内面17b1qの間の挟角θ9を0°〜37°(機械角)とすることにより、トルクをほとんど低下させることなく、コギングトルクやトルクリプルを低減させることができる。このため、トルクリプルに起因して発生する固定子(ステータ)鉄心の電磁振動も低減して、これに伴う電磁騒音をも低減させることができる。なお、コギングトルクの低減を目的とする場合には、挟角θ8を64.7°以上と条件を緩和してもよい。
さらに、挟角θ8は、66°〜68°や70°〜72°とし、また、挟角θ9は、10°〜27°とすることにより、より効果的に、トルクをほとんど低下させることなく、コギングトルクやトルクリプルを低減させることができる。
この結果、固定子11内の回転子12を低コストに作製して高エネルギ密度で高品質に回転駆動させることができる。
ここで、本実施形態では、8極48スロットモータの構成の電動回転機10を一例にして説明するが、これに限るものではなく、毎極毎相スロット数q=2の構造であれば、そのまま好適に適用することができ、例えば、6極36スロット、4極24スロット、10極60スロットのモータ構造にもそのまま適用することができる。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
10 電動回転機(IPM型)
11 固定子
11a 外周面
12 回転子
12a 外周面
12b 内周面
12f 固定爪
13 回転駆動軸
15 ステータティース
16 永久磁石
17 V字空間
17b、17c フラックスバリア
17cq1 d軸側延長面
17cq2 q軸平行面
17cq3 軸心側端部壁面
17cq4 角部
18 スロット
20 センタブリッジ
21 センタ溝
22 サイド溝
30 サイドブリッジ
B d軸側範囲
G エアギャップ
DLb 軸心側の最短距離
DLw q軸側の最短距離
R1 回転子の外半径
Ris 固定子の内半径
Ros 固定子の外半径
TW ティース先端部幅

Claims (2)

  1. 永久磁石が埋め込まれている回転子と当該回転子に対面すスロットにコイル収容されている固定子と、を備えて、毎極毎相スロット数が2になるように構成された電動回転機であって、
    前記永久磁石が前記回転子の外周面に向かって開くV字形状に配置されており、
    前記永久磁石が形成する磁極毎に、前記永久磁石d軸側への延長空間から前記回転子の軸心に向かって拡大するとともに、少なくとも前記永久磁石の近傍付近から前記磁極間の磁束方向のq軸側に向かって拡大する形状の空隙が形成されており、
    前記ティースの幅をTW、前記q軸を挟んで対面する前記空隙内面の最短距離をDLw、前記空隙の軸心側端部と前記回転子の内周面との間の最短距離をDLbとした場合に、
    1.5<DLw/DLb<2.5
    かつ
    TW<DLw
    の関係を満たすことを特徴とするIPM型電動回転機。
  2. 前記回転子の軸心から外周面までの半径をR1、前記回転子の中心から前記固定子の外周面までの半径をRosとした場合に、
    0.63<R1/Ros<0.76
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のIPM型電動回転機。
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