JP6015350B2 - Ipm型電動回転機 - Google Patents
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Description
例えば、駆動源として内燃機関と共にハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)に搭載されたり、単独の駆動源として電気自動車(EV:Electric Vehicle)に搭載される、駆動用モータの場合には、低速回転域で大トルクを発生するのと同時に、広い可変速特性を備えることが要求される。
ところで、HEVやEVでは、一般的に、電動回転機の低速回転・低負荷領域が常用領域である。このことから、車載の電動回転機のトルクに貢献する割合は、電機子電流の大小に応じたリラクタンストルクよりもマグネットトルクの方が大きくなり、高効率化のために高磁力の永久磁石を多く使用する傾向にある。
このような傾向から、電動回転機としては、エネルギ変換効率の向上、特に、低速回転・低負荷領域の常用領域における効率向上のために、高残留磁束密度のネオジム磁石を回転子の鉄心内部に埋め込んだ永久磁石式の同期モータであるIPM(Interior Permanent Magnet)型が多用されている。このIPM型電動回転機では、外周面側に向かって開くV字形になるように永久磁石を回転子内に埋め込むことにより、マグネットトルクに加えて、リラクタンストルクも積極的に利用できる磁気回路にすることが提案されている(例えば、特許文献1、2)。また、IPM型電動回転機では、回転子の外周面に対する永久磁石の開口度(角度)を所定の角度に設定することも提案されている(例えば、特許文献3、4)。
しかしながら、HEVやEVでは、電動回転機の常用領域が低速回転・低負荷領域であることから、その領域に寄与するマグネットトルクを大きくするために、特許文献1〜4に記載のようなIPM型モータにおいても、高磁力の永久磁石の使用量を多くする傾向にある。これは、レアアースの使用量の低減という課題の解決を妨げる方向である。
また、特許文献3、4に記載のIPM型電動回転機では、回転子の外周面に対する永久磁石の開口度を、トルクの増大を目的に設定していることから、トルクリプルなどを抑えることができず、効率よく回転駆動させることができていない。
そこで、本発明は、永久磁石の使用量を削減しつつ高効率な回転駆動を実現して、低コストかつ高エネルギ密度の電動回転機を提供することを目的としている。
上記課題を解決するIPM型電動回転機に係る発明の第3の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記永久磁石の前記回転子の外周面側外面の延長面と前記d軸との間の挟角をθ2とした場合に、37.5°≦θ2(機械角)≦82.5°の関係を満たすことを特徴とするものである。
上記課題を解決するIPM型電動回転機に係る発明の第4の態様は、上記第1の態様の特定事項に加え、前記永久磁石の前記回転子の外周面側外面の延長面と前記d軸との間の挟角をθ2とした場合に、37.5°≦θ2(機械角)≦72.5°の関係を満たすことを特徴とするものである。
さらに、永久磁石を空隙に置換することで、磁石磁束を低減して高速回転側での誘起電圧定数を低減することができ、高速回転側での出力を向上させることができる。また、軽量化することができ、イナーシャを低減することができる。
また、磁石磁束の低減により、弱め界磁領域を削減(弱め界磁量を低減)することができ、磁気歪みとなる空間高調波を低減することができる。このため、永久磁石内での渦電流の発生を制限して発熱を抑えることができ、永久磁石の温度変化による減磁を抑制して耐熱グレードを下げて低コスト化することができる。
この空隙は、d軸側への延長空間を回転子の外周面側にも向かって拡大する形状に形成することにより、当該d軸側において電機子磁束を打ち消さないまでも有効に合成することのできない磁石磁束の向きを適正にすることができる。したがって、電機子磁束と磁石磁束の合成磁束がトルクの発生に有効に寄与する経路を通るようにすることができ、トータルのトルクをより増加させることができる。
さらに、センタ調整溝が、回転子と固定子側ティースとの間のd軸付近の磁気抵抗を増加させるように調整することができ、上記空隙を形成することによりd軸付近の磁石磁束が低下するのに伴って、鎖交する電機子磁束の増加を抑えることができる。したがって、トルクリプルや鉄損の増加により駆動効率を低下させてしまうことを防止することができる。
また、サイド調整溝が、回転子のV字型永久磁石の両外端部付近の磁気抵抗を増加させることができ、鎖交する磁束波形に重畳しようとする高調波を抑えることができる。したがって、コギングトルクを抑えると共にトルクリプルや鉄損の増加により駆動効率を低下させてしまうことを防止することができる。
さらに加えて、毎極毎相スロット数が2になる構造で、144°≦永久磁石の両端部側のフラックスバリア外側端部間の挟角θ6(電気角)≦154.3°とすることにより、5次、7次の空間高調波を抑えることができる。
この結果、高エネルギ密度で高品質に回転駆動する低コストの電動回転機を実現することができる。
本発明の上記の第3の態様によれば、37.5°≦d軸から永久磁石の外周面側外面の挟角θ2(機械角)≦82.5°とすることにより、低負荷時のトルクを高くすることができ、このときのトルクリプルと6次と12次の高調波トルクを抑えて電磁振動や電磁騒音を低減することができる。
本発明の上記の第4の態様によれば、37.5°≦d軸から永久磁石の外周面側外面の挟角θ2(機械角)≦72.5°とすることにより、最大負荷時と低負荷時のトルクを高くすることができ、このときのトルクリプルと6次と12次の高調波トルクを抑えて電磁振動や電磁騒音を低減することができる。
図1において、電動回転機(モータ)10は、概略円筒形状に形成された固定子(ステータ)11と、この固定子11内に回転自在に収納されて軸心に一致する回転駆動軸13が固設されている回転子(ロータ)12と、を備えている。この電動回転機10は、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)において、内燃機関と同様の駆動源として、あるいは車輪ホイール内に搭載するのに好適な性能を有している。
回転子12は、外周面12aに向かって開くV字型になるように、一対で1組の永久磁石16を1磁極として埋め込むIPM(Interior Permanent Magnet)構造になるように作製されている。この回転子12は、図面の表裏方向に延在する平板状の永久磁石16の角部16aを嵌め込んで不動状態に収容するV字空間17が外周面12aに対面するように形成されている。
V字空間17は、永久磁石16を嵌め込み収容する空間17aと、その永久磁石16の幅方向の両側方に位置して磁束の回り込みを制限するフラックスバリアとして機能する空間17b、17c(以下ではフラックスバリア17b、17cともいう)と、を備えるように形成されている。このV字空間17には、永久磁石16を高速回転時の遠心力に抗して位置決め保持することができるように、空間17c間で法線方向に延長されて外周側と内周側とを連結支持するセンタブリッジ20が形成されている。
これにより、電動回転機10は、固定子11のスロット18内のコイルに通電してステータティース15から対面する回転子12内に磁束を通すことにより回転駆動させることができる。このとき、電動回転機10(固定子11と回転子12)は、永久磁石16との間に生じる吸引力と反発力に起因するマグネットトルクに加えて、磁束が通過する磁路を最短にしようとするリラクタンストルクとの総合トルクにより回転駆動することができる。よって、電動回転機10は、通電入力する電気的エネルギを、固定子11に対して回転子12と一体回転する回転駆動軸13から、機械的エネルギとして出力することができる。
なお、固定子11と回転子12は、ケイ素鋼などの電磁鋼板材料の薄板を所望の出力トルクに応じた厚さになるように軸方向に重ねており、その積層状態を維持するようにカシメ19などにより一体物に作製されている。
この永久磁石16の磁路(磁石磁束Ψm)は、図3に磁束線図として図示するように、1磁極を構成する一対の永久磁石16の表裏面のN極とS極から鉛直方向に出て繋げる経路を取り、特に、固定子11側では対応するステータティース15からその背面側を通過する経路になる。
これにより、この電動回転機10では、図2に示すように、ステータティース15から回転子12内に進入する電機子磁束Ψrを、V字空間17の外周側に回り込まないように大きく内周(軸心)側に迂回させてステータティース15に戻る経路を取るように形成されている。要するに、電動回転機10は、回転子12がd軸空隙付きV字型IPMモータに構築されている。
また、この電動回転機10は、d軸に対応するステータティース15から進入する電機子磁束Ψrにトルクリプル増加原因となる5次や7次の空間高調波が多く重畳しないように、回転子12側の外周面に、そのステータティース15の内周面15aと平行方向(軸心方向)に延長されるセンタ溝(センタ調整溝)21が形成されている。このセンタ溝21の最適な寸法形状については後述する。
さらに、この電動回転機10は、トルクの減少を最小限にしつつ、無負荷時のコギングトルクや低負荷時および最大負荷時のトルクリプルを低減して全駆動領域でのトルクの脈動を抑えるサイド溝(サイド調整溝)22が磁極を形成する一対の永久磁石16のそれぞれの外端側外周面に形成されている。このサイド溝22の最適な寸法形状については後述する。
Pp:極対数、Ψm:電機子(ステータティース15)鎖交磁石磁束、
id:線電流のd軸成分、iq:線電流のq軸成分、
Ld:d軸インダクタンス、Lq:q軸インダクタンス
この種の電動回転機では、最大負荷駆動時には高トルク・高効率駆動の実現のために電流位相角を進角させて駆動させている。関連技術の回転子12Aでは、図5Bおよび図6Bの磁束ベクトル図に示すように、V字空間17(磁極)の外周側に位置するd軸付近の小領域A1において、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrが逆磁界の関係になって、リラクタンストルクTrがマグネットトルクTmを打ち消し(相殺し)つつ駆動する状態にある。要するに、この磁極外周側小領域A1は、図7に示すように、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψrとが挟角90度以上で逆向きの位置関係で対向する干渉領域であり、この磁極外周側小領域A1に隣接する永久磁石16のd軸側の範囲Bで発生する磁石磁束Ψmを抑え込む(打ち消す)のに電機子磁束Ψrが浪費されている。
このことから、この磁極外周側小領域A1に対応する永久磁石16のd軸側範囲Bは、トルクTに積極的に寄与していないと言うことができ、その永久磁石16におけるd軸側範囲Bの部分を削減しつつ同等の突極比を維持する磁気回路とすることで、永久磁石16自体の磁石量を低減することができる。
ここで、トルクTは、上記式(1)であるため、永久磁石16の磁石量を減らした場合にはリラクタンストルクTrを大きくすることで、永久磁石16の磁石量を減らさない場合と同等にすることができる。このリラクタンストルクTrは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差、すなわち、突極比を大きくすることで増加させることができる。
よって、本実施形態の回転子12では、永久磁石16のd軸側範囲Bを透磁率の小さな空隙(制限領域)に置き換えることで、永久磁石16の磁石量を低減しつつ突極比を増加させて置換前と同等以上のトルクTを得ることができる。見方を換えると、リラクタンストルクTrは、永久磁石16のd軸側範囲Bで発生する磁石磁束Ψmを抑え込むのに浪費されていた電機子磁束Ψrを有効活用することで大きくすることができ、永久磁石16の磁石量を削減しても同等のトルクTを得ることができる。
β:電流位相角度、Ia:相電流値
磁路MP1は、固定子11側のステータティース15からエアギャップGを介して回転子12Aに鎖交して磁極間に進入した後に、回転方向進行側(図中左側)の磁極を形成する近接側の永久磁石16を内周側から抜ける経路を取る。さらに、この磁路MP1は、その磁極の外周側領域A2を通過して、再度エアギャップGを介してステータティース15に戻る経路を取る。
磁路MP2は、磁路MP1と同様に磁極間に進入した後に、回転方向進行側の磁極を形成する離隔側の永久磁石16を内周側から抜けて、その磁極の外周側領域A2を通過して、再度エアギャップGを介してステータティース15に戻る経路を取る。
反対に、一対の永久磁石16の中心側(磁極内端部)を削って外側に寄せた場合には、その中心側に大きなフラックスバリアが存在して磁極の両側に磁束経路を分散させることができ、磁極外周側領域A2の右側の経路も含めて積極的に有効活用してその領域A2を満遍なく磁束が通過できる。この構造の場合には、回転方向後進側の磁極の永久磁石16を外周側から内周側に向かって抜けた後、隣接する磁極の永久磁石16のN極・S極間を結合する磁路MP3も取ることができる。この磁路MP3では、磁路MP1と同様の経路を通って、回転方向進行側の磁極の外周側領域A2を通過することができ、磁束の分散化効率が高い。
このことから、回転子12は、磁極を形成する一対の永久磁石16の埋設構造として、リラクタンストルクTrを発生させる電機子磁束Ψrを妨げないようにV字型を維持しつつ、両端側(磁極外端部)に寄せる形状を採用するのが好適である。さらに、その一対の永久磁石16の間(磁極内端部)には、磁束が短絡経路を取るのを制限するフラックスバリア17cを形成する構造を採用するのが好適である。また、回転子12のd軸上の外周面には、固定子11側のステータティース15から進入する電機子磁束Ψrの飽和を制限する、言い換えると、その磁束Ψrを分散させるセンタ溝21を形成する構造を採用するのが好適である。このような構造を採用することにより、回転子12は、q軸磁路(磁束)を分散化させてq軸インダクタンスLqを大きくし、リラクタンストルクTrを積極的に利用することができる。
具体的には、極数Pと、回転子12の軸心から外周面までの外半径R1とを固定値として、磁極外端部に設置する永久磁石16の長さWpmを変数(内端側端辺の位置を変位)とし、下記の式(3)で算出する比率δを変化させて決定する。この決定要素として、比率δに対する、最大負荷時のトルクTのper unit単位での変化と、そのトルクTの変動幅であるトルクリプル(torque ripple)の低減率の変化とを磁界解析してグラフ表示すると、図11のようになる。なお、per unit単位では、例えば、1.0[p.u.]の場合に同等であることを意味している。
δ=(P×Wpm)/R1 ・・・(3)
図11では、比率δ=1.84が長さWpmを短縮しない形状寸法(磁石低減量0%)の永久磁石16の場合であり、比率δ=1.38の寸法形状(磁石低減量24.7%)の場合に非短縮時と同等(1.0[p.u.])のトルクTを得ることができることが分かる。この永久磁石16は、常用の低速回転負荷時においても、比率δ=1.38とすることで、同等のトルクTを得ることができる。
ここで、この図11では、V字空間17の内外端側に同等の大きさのフラックスバリア17b、17dを備える関連技術の回転子12Aを比較対象としている。これに対して、本実施形態の回転子12の場合には、フラックスバリア17cとセンタ溝21を備えることで、電機子磁束Ψrを効果的に分割して振り分けることができる。このため、この回転子12では、リラクタンストルクTrを有効に発生させることができ、永久磁石16が同等の長さWpmである比率δ=1.84でもトルクTが向上するとともにトルクリプルも低減されている。すなわち、図11では、この回転子12の構造で永久磁石16の長さWpmを短縮させて、比率δに対するトルクTとトルクリプルの変化を図示している。なお、関連技術の回転子12Aの構造のまま永久磁石16の長さWpmを短縮する場合には、比率δ=1.84から比率δ=1.38付近までトルクTの大きな変化はない(1.0[p.u.])ものと想定される。
そこで、電動回転機10は、同等のトルクTとなる、永久磁石16の長さWpmを短縮して比率δ=1.38の寸法形状に形成するd軸空隙付きV字型のIPMモータの場合と、永久磁石16を短縮しないV字型のIPMモータの場合とで磁界解析すると、図13および図14に示すように、マグネットトルクTmとリラクタンストルクTrの比率が変化して同等のトルクTを出力可能なことが分かる。なお、d軸空隙付きV字型のIPMモータは、大きな空隙のフラックスバリア17cをd軸側に備える構造であり、単なるV字型のIPMモータは、小さなフラックスバリア17dをd軸側に備える構造である。
この図13は、低負荷領域でのトルクTm、Trの割合を図示しており、図14は、最大負荷領域でのトルクTm、Trの割合を図示している。いずれでも、d軸空隙付きV字型のIPMモータの場合には、永久磁石16を短縮するためにマグネットトルクTmが小さくなるのに代わって、リラクタンストルクTrが大きくなっていることが分かる。すなわち、電動回転機10は、d軸付近の永久磁石16に置換して大きな空隙空間のフラックスバリア17cやセンタ溝21を形成することで、図6Bと図7に示す磁極外周側小領域A1で電機子磁束Ψrを打ち消す磁石磁束Ψmを少なくすることができている。この結果、電動回転機10は、q軸インダクタンスLqを大きくしてd軸インダクタンスLdとの差(突極比)を非短縮V字型のIPMモータよりも大きくすることができ、リラクタンストルクTrを有効活用して同等のトルクTを確保することができている。
形成する一対の永久磁石16の外周側の小領域A1に集中していた電機子磁束Ψrを、その磁極外周側小領域A1を通過する磁路Mr1からV字空間17のd軸側空間17cの内周側を迂回する磁路Mr2にも効果的に分割(分流)させることができる。この結果、電動回転機10は、磁石磁束Ψmと電機子磁束Ψr(d軸・q軸)の磁気的干渉を低減して、磁極外周側小領域A1の回転方向進行側(図中左側)で局所的に磁気飽和状態になってしまうことを回避してトルクTの発生に効果的に寄与させることができる。
また、電動回転機10は、永久磁石16を、例えば、比率δ=1.44の寸法形状にして低透磁率のフラックスバリア17cに置換(磁石磁束Ψmを低減)し磁石量を23%削減すると、イナーシャ(慣性力)の低減と共に、誘起電圧定数も13.4%程度低減することができ、高速回転側での出力を増加させることができる。さらに、この電動回転機10では、磁気歪みとなる空間高調波が低減されることで、永久磁石16内で発生する渦電流による発熱や鉄損および電磁騒音を抑えることができる。
図17に図示するフラックスバリア17cの本実施形態構造Aと、図18に図示するフラックスバリア17eの比較構造Bでは、図19に最大負荷時の特性を図示するように、トルクの大きさおよびその変動(トルクリプル)で比較すると、構造Aの方がトルクが約6%増加しているのと同時にトルクリプルが小さくなって高品質に回転駆動させることができることが分かる。なお、図19には、図18の構造Bを基準として平均トルクを算出し、その回転角(電気角)に応じた瞬時トルクをper unit単位で、図17の構造Aの場合と共にその構造Bの場合を図示している。
さらに、構造A、Bでは、1つのステータティース15にギャップGを介して鎖交する磁束波形をフーリエ級数展開して、11次と13次の空間高調波成分の含有率を比較すると、図21に示すように、構造Aの方が構造Bよりも、低減できていることが分かる。なお、この図21には、構造A、Bの1歯鎖交磁束の基本波形成分を正規化してper unit単位で図示している。
以下に、トルクリプルの発生原因について説明すると、3相出力(電力)P(t)とトルクτ(t)は、角速度をωm、各相の誘起起電力をEu(t)、Ev(t)、Ew(t)、各相の電流をIu(t)、Iv(t)、Iw(t)とすると、次の式(4)、式(5)で求めることができる。
P(t)=Eu(t)Iu(t)+Ev(t)Iv(t)+Ew(t)Iw(t) ・・・(4)
τ(t)=P(t)/ωm
=[Eu(t)Iu(t)+Ev(t)Iv(t)+Ew(t)Iw(t)] ・・・(5)
3相トルクは、U相、V相、W相のそれぞれのトルクの和であり、mを電流の高調波成分、nを電圧の高調波成分を表すものとし、U相電流Iu(t)を次の式(6)と置くと、U相トルクτu(t)は次の式(7)のように表すことができる。
6f=n±m(f:自然数)、s=nαn+mβm、t=nαn−mβm
と、置くと、次の式(8)のように表すことができる。
また、この誘起電圧は、磁束を時間微分して求めることができることから、各誘起電圧に含まれる高調波の次数と1相1極磁束に含まれる高調波も同じ次数成分が発生することになる。その結果、3相交流モータにおいては、磁束(誘起電圧)に含まれる空間高調波次数nと相電流に含まれる時間高調波次数mとの組み合わせが6fになるときに、その6f次成分のトルクリプルが発生していることになる。
よって、3相モータのトルクリプルは、上述するように、1相1極における磁束波形における空間高調波nと相電流の時間高調波mにおいては、n±m=6f(f:自然数)のときに発生することから、例えば、11次と13次の空間高調波(n=11、13)が重畳していると相電流の基本波(m=1)との合わせにより12次の高調波トルクが発生することが分かる。
まず、図1に戻って、この回転子12の構造は、フラックスバリア17cの軸心側の端部壁面位置の軸心からの法線方向の離隔距離R2を変化させて、その外周面までの外半径R1と内周面までの内半径R3に対する比率R2/R1、R3/R2をパラメータとしたときに得られる、図22、図23に示すトルク特性により決定する。ここで、回転子12の寸法形状は、回転駆動軸13の圧入時の電磁鋼板に掛かる圧縮応力に起因するミゼス応力で透磁率(磁束の通り易さ)が悪化することから、そのミゼス応力を考慮した数値で決定している。なお、この図22、図23は、図18の比較構造Bを基準として、最大負荷時に得られるトルクをper unit単位で図示している。
いる。
さらに、図23からは、R3/R2が0.54〜0.82の範囲A内で構造B以上のトルクが得られることが分かり、好ましくは、傾向の変化する位置付近の0.60〜0.81の範囲B内、より好ましくは、トルクが5%程度増加する0.70〜0.77程度の範囲C内になるように、フラックスバリア17cの軸心側端部位置の離隔距離R2を決定する。
これにより、図17における磁路MP2の磁路幅を十分に確保することができ、その磁路MP2で磁気飽和が発生することがないようにフラックスバリア17cのサイズを決定することができる。
このことから、この電動回転機10(回転子12)では、図25に示すように、フラックスバリア17cをd軸側で外周面12aに向かっても拡大する空隙形状に形成している。これにより、この回転子12では、d軸に接近する永久磁石16の角部16a付近の電機子磁束ΨrのベクトルVrが磁石磁束ΨmのベクトルVmに対して挟角90度以下となる磁路をその電機子磁束Ψrが通るようにして、電機子磁束Ψrおよび磁石磁束Ψmを有効活用できる構造にしている。
まず、この回転子12のフラックスバリア17cの寸法形状1としては、図26に示すように、そのフラックスバリア17cの外周面側端面(平面形状)17cuの延長面とd軸との交点Yから外周面12a(交点X)までの離隔距離DLdを決定する。例えば、その離隔距離DLdは、回転子12の外半径R1に対する比率DLd/R1をパラメータとしたときに得られる平均トルク、高調波トルクおよびトルクリプルにより決定する。言い換えると、このフラックスバリア17cの寸法形状1としては、回転子12における磁極外周側領域A2を通過する磁路MP1の磁束密度を飽和させないなど最適特性を得ることができるように外周面12aから外周面側端面17cuのd軸側端部までの間隔(離隔距離)DLdを決定する。
例えば、この回転子12の外周面12aからフラックスバリア17cの外周面側端面17cuを、図27に示すように、V字空間17の収容空間17aの外周面側壁面(永久磁石16の外面)17auの延長面に一致するDLd/R1=0.194からDLd/R1=0.086まで外周面12a側に拡大させる。この場合には、図28、図29のグラフに示すようにトルク特性が変化することが分かる。なお、図28では、DLd/R1=0.194を基準として最大負荷時に得られる平均トルクをper unit単位で図示している。また、図28の高周波トルクは、その6次と12次の成分(電気角)の重畳率を図示しており、図29のトルクリプルは、トルクの変動率を図示している。
例えば、この傾斜角αは、DLd/R1=0.139をベースにしつつ、フラックスバリア17cの外周面側端面17cuとd軸との間の挟角θ1と、V字空間17の収容空間17aの外周面側壁面17auとd軸との間の挟角θ2と、の比率θ1/θ2を決定する。この比率θ1/θ2は、パラメータとして変化させたときに得られる図30、図31に図示する平均トルク、高調波トルクおよびトルクリプルにより決定する。言い換えると、このフラックスバリア17cの寸法形状2としては、回転子12の磁極外周側小領域A1のd軸に接近する永久磁石16の角部16a付近で、電機子磁束Ψrが磁石磁束Ψmを抑えない磁路を形成して最適特性を得ることができるように傾斜角度αを決定する。なお、図30では、θ1/θ2=1.7を基準として最大負荷時に得られる平均トルクをper unit単位で図示している。また、図30の高周波トルクは、その6次と12次の成分の重畳率を図示しており、図31のトルクリプルは、トルクの変動率を図示している。このθ2は永久磁石16の磁石開口度と称されることもあり、このことから、θ1はフラックスバリア開口度と称することもできる。
例えば、回転子12Aのd軸付近では、図34Bの最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、電機子磁束Ψrの磁路ループに対応して、対面するステータティース15Dから鎖交する磁束密度は高くない。これに対して、回転子12Cのd軸付近では、図35Bの最大負荷時の磁束ベクトル図に示すように、図34Bのステータティース15Dにおける磁束よりも鎖交する磁束密度が高くなって、流入する磁束が増加している。
このことは、回転子12A(フラックスバリア17d、センタ溝21なし)と回転子12B(フラックスバリア17c、センタ溝21なし)で、1つのステータティース15との間のギャップGを通過する1歯鎖交磁束波形を比較すると、図36のグラフに示すように、回転子12Bの方が、d軸付近が影響する図中に「P」で示す箇所において、磁束が流れ易く高調波が重畳し易くなっている。例えば、図36に示す磁束波形をフーリエ級数展開すると、図37に示すように、回転子12Aよりも回転子12Bの磁束波形の方が、5次、7次の空間高調波の含有率が大きく重畳していることからも分かる。
また、この回転子12(センタ溝21あり)と回転子12C(センタ溝21なし)では、トルク波形を比較すると、図39のグラフに示すように、回転子12Cを基準にして(1.0[p.u.])、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が振幅を小さくすることができ、トルクリプルを抑えることができる。また、この図39に示すトルク波形をフーリエ級数展開すると、図40に示すように、センタ溝21ありの回転子12のトルク波形の方が、6次、12次、18次、24次の高調波トルクを大幅に低減できている。なお、図39には、回転子12Cの平均トルクを基準にして(1.0[p.u.])瞬時トルクのトルク波形を図示している。
このセンタ溝21は、図41に示すように、軸心からの法線方向の溝底21aまでの離隔距離R4を変化させて、回転子12の外周面12aまでの外半径R1に対する比率R4/R1をパラメータとしたときに得られる、図42に示すトルクリプルにより寸法形状を決定する。
まず、センタ溝21の深さとしては、センタ溝21のない寸法形状(R4/R1=1.0)を基準として、最大負荷時に発生するトルクリプルを低減可能に、次の寸法形状に形成する。
0.98≦R4/R1<1.0
この回転子12は、センタ溝21の外開口角θaをパラメータとして変化させると、図43に相電圧と線間電圧とを対応させているグラフに示すように、図中のピークFと頂部Wで示す箇所で影響を受ける。
具体的には、例えば、図43における、U相電圧波形のG1からG3の幅は、固定子11と回転子12との相対的な位置関係からセンタ溝21の外開口角θaの幅に応じて変化する。そのU相電圧波形は、外開口角θaを狭くしていくとG1−G3間も狭くなって頂部Wが最頂点となる尖った波形となり、線間電圧波形は、ピークFが頂部Wに近づいて、三角波に近似する波形となる。反対に、U相電圧波形は、センタ溝21の外開口角θaを広くしていくとG1−G3間の頂部Wが平坦形状になる波形となり、線間電圧波形は、ピークFが頂部Wから離れて裾広がりな台形波に近似する波形となって、5次、7次の空間高調波が重畳し易くなる。
この回転子12と固定子11の構造を、図41に示すように、スロット18の回転子12側の開口幅SO、ステータティース15の内周面15aの対面幅TB、ステータティース15の内周面15aよりも内側の先端部幅TW、回転子12とステータティース15の間のギャップGのエアギャップ幅AGとすると、次のようになる。
まず、センタ溝21は、ギャップGにおける磁気抵抗を大きくする必要があることから、ステータティース15の対面幅TB以上必要である。これから外開口角θaの下限値としては、その対面幅TBと回転子12の軸心とで囲む形状が二等辺三角形(2×直角三角形)に近似するものとして、
2×tan−1((TB/2)/(R1+AG))≦θa
とすることができる。
また、スロット18は、コイルの自動インサートや必要なエネルギ密度を考慮すると、スロット18の開口幅SO>エアギャップ幅AGにする必要がある。この関係からスロット18の開口空間よりもギャップGにおける磁気抵抗が低く、ステータティース15の先端角部K(図36を参照)から回転子12側に鎖交する磁束量を低減する必要がある。このことから、センタ溝21は、隣接するステータティース15の内周面15aまでの幅以下にする必要があり、これから外開口角θaの上限値としては、同様に、
θa≦2×tan−1((SO+(TB/2))/(R1+AG))
とすることができる。
θb≦2×tan−1((SO+(TB/2))/(R1+AG))
とすることができる。
その一方で、センタ溝21の溝底21aの内開口角θbの下限値は、外開口角θaの下限値をステータティース15の対面幅TBにして、ギャップGにおける磁気抵抗を上げるように調整することから、溝底21aなしの
0°≦θb
としてもよい。
なお、ステータティース15の対面幅TBと先端部幅TWは、ステータティース15の先端部を尖った形状にすると上記条件が不成立となることから、
TW≦TB
となる。
なお、以上では、センタ溝21がトルク特性に与える影響について主に説明するが、このセンタ溝21は、組立などの製造時にも目印にすることができるなど有用である。例えば、永久磁石16の軸方向における位置関係を捩じった状態にして、所謂、スキューを施す場合には、そのセンタ溝21の軸方向への直線性からスキューの有無を確認することができる。
ギャップ磁束波形は、電気角90°がd軸に該当し、電気角0°、180°がq軸に該当しており、回転子12Dの一磁極中のステータティース15a〜15g毎に電気角30°毎の領域A〜Gが対応している。このギャップ磁束波形は、d軸側のフラックスバリア17c(空隙)に対応する領域A前後で窪んでおり、基本波形と比較すると、領域B、C間と領域E、F間で磁束密度が高すぎることが分かる。すなわち、回転子12Dでは、d軸から進行方向側に向かって2番目のステータティース15bから3番目のステータティース15cと、d軸から後退方向側に向かって2番目のステータティース15eから3番目のステータティース15fと、で空間高調波の重畳が多くなっていることが分かる。
このことから、回転子12Dでは、ステータティース15b、15c間と、ステータティース15e、15f間と、に対応する外周面12aの2箇所(d軸±30°〜60°)の範囲内に、鎖交する磁束密度を低減させるためのサイド溝22を一対形成するのが有効である。
詳細には、磁束に重畳する12次の高調波を関数で表すと、
F(θ)=sin12θ
と置くことができ、電気角15°ずれた波形は、
F(θ+15°)=sin12(θ+15°)=−sin12θ
となり、理論的には、11次と13次の空間高調波で相殺させてキャンセルすることができ、この結果、12次のトルクリプルを低減できる。
このことから、無負荷時だけでなく、負荷時の高調波の重畳するギャップ磁束波形を確認すると、図48に示すような波形になっている。なお、この図48には、サイド溝22なしのまま段スキューの有無の場合の双方を図示している。
このギャップ磁束波形では、段スキューを施すことにより、重畳する空間高調波が抑えられていることを確認できるが、無負荷時と同様に、基本波形と比較すると、領域B、C間と領域E、F間で磁束密度が高すぎることが分かる。
サイド溝22は、図49(図26)に示すように、永久磁石16の外周面12a側壁面(外周面側壁面17au)の延長面とd軸との間の挟角、所謂、磁石開口度θ2と、軸心から永久磁石16の外周面12a側角部16bを繋げる延長線とd軸との間の挟角、所謂、磁石端部開き角θ3と、外側端辺22oとd軸との間の外挟角θ4と、内側端辺22iとd軸との間の内挟角θ5と、で形成位置を規定することができる。
まず、サイド溝22は、磁石端部開き角θ3や磁石開口度θ2の外側に位置してしまうと、図47に示すギャップ磁束波形における領域C、D間と領域F、G間に対応してしまい、磁束密度の低減位置から外れてしまう。また、回転子12は、外周面12aとフラックスバリア17bの間の磁極内外を連結支持する渡り部12cに、高速回転する際の永久磁石16の遠心力に起因するミゼス応力が集中することから、その応力集中による破断を防止するために、ある程度の幅が必要である。このことから、サイド溝22の形成位置としては、
内挟角θ5<外挟角θ4≦磁石端部開き角θ3
となる。
まず、サイド溝22は、図50の最大負荷時のトルク特性からすると、サイド溝22のない回転子12D(θ5/θ4=1.0)を基準にして(1.0[p.u.])、
0.945≦θ5/θ4≦0.98
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。特に、このサイド溝22は、θ5/θ4=0.97とすることによりトルクリプルを最低限にすることができる。
また、このサイド溝22は、図51の低負荷時のトルク特性からしても、
θ5/θ4≦0.98
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。
まず、サイド溝22は、図52の最大負荷時のトルク特性からすると、サイド溝22のない回転子12D(RG/AG=0.0)を基準にして(1.0[p.u.])、
0.00<RG/AG≦0.73
の寸法形状にすることにより、ある程度のトルクを得つつトルクリプルを効果的に低減することができる。特に、このサイド溝22は、0.30≦RG/AG≦0.45程度にすることによりトルクリプルを最低限にすることができる。
また、電動回転機10は、図54の最大負荷時のトルク波形や図55の低負荷時のトルク波形のグラフに示すように、サイド溝22を回転子12の外周面12aの最適位置に形成することにより、いずれでもトルクリプルを低減することができている。
さらに、電動回転機10は、図56のコギングトルク波形のグラフに示すように、サイド溝22を回転子12の外周面12aの最適位置に形成することにより、コギングトルクを50%以上低減することができている。
よって、空間高調波を考慮して磁束密度Bを次式(11)のように表したときには、径方向電磁力frは磁束密度Bの2乗を含むことから、空間高調波の重畳は径方向電磁力frの増加の要因となる。すなわち、空間高調波を低減することは、トルクリプルの低減、引いては、モータ電磁騒音の低減と共に駆動効率の向上を実現できる。
しかしながら、3相のIPM構造の場合には、図58に示すように、1つのステータティース15に界磁磁束が鎖交する磁束波形がほぼ矩形波となるため、構造的にも、5次、7次の空間高調波n(6f次=6次の高調波)は重畳し易く低減することは困難である。
このため、トルクリプル低減のためには、5次、7次の空間高調波を低減する構造を採用する必要がある。
条件1:「cos5ω・L1=0」
条件2:「cos7ω・L1=0」
角周波数(角速度)ω=2π/T=2π/(4L1+2L2) ……(16)
条件1:5ωL1=5・2πL1/(4L1+2L2)=±π/2 ……(17)
条件1A:L1=L2/8
同様に、条件2の変形式は、次式(18)のようになり、「L1、L2>0」であることから、これを整理すると、次の条件2Aを満たすことにより7次の空間高調波をゼロにして抑えることができることが分かる。
条件2:7ωL1=7・2πL1/(4L1+2L2)=±π/2 ……(18)
条件2A:L1=L2/12
機械角45度=電気角周期T/2
V(m/sec)=2πR1・(45°/360°)/(T/2)
=2πR1・(45°/360°)/((4L1+2L2)/2)
=R1(m)・ω(rad/sec) ……(19)
2L1+L2=π/4ω ……(20)
これに条件1Aと条件2Aを代入すると、次の条件を導くことができる。
5次空間高調波=0 ⇒ (L2、L1)=(π/5ω、π/40ω)
7次空間高調波=0 ⇒ (L2、L1)=(3π/14ω、π/56ω)
これから、電動回転機10では、次の関係式(21)を満たすようにレイアウトすることで、5次と7次の空間高調波を低減傾向にして、トルクリプルを抑えることができる。
π/5ω≦L2≦3π/14ω(sec) ……(21)
この図58の磁束波形を参照すると、「θ=ωt」の関係式が成り立つことから、
「θ1=ωL2」と置き換えることができ、各種表示形式では次のように表すことができる。例えば、8極48スロットモータの構造(1磁極に対して6スロットが対応する構造)の毎極毎相スロット数=2の電動回転機10では、8極中の2極で1周期であることから、回転子12の機械角1周期の360°回転は電気角4周期に相当し、次の関係式が成り立つことになる。
π/5(rad)≦θ6(機械角)≦3π/14(rad)
36(degree)≦θ6(機械角)≦270/7(degree)
θ6(機械角)=(8極/2極)・θ6(電気角)
144(degree)≦θ6(電気角)≦154.3(degree)
このことから、電動回転機10では、図59に示すように、永久磁石16と両端側フラックスバリア17bの外端部までを含めた1磁極の磁極開口度θ6が次のようなレイアウトになるように回転子12内に設置されている。なお、図59におけるθ7はq軸間の開口度に対応している。
36°≦θ6(機械角)≦38.6°
144°≦θ6(電気角)≦154.3°
この電動回転機10は、最大負荷時には、d軸側よりも磁石磁束Ψmの影響の少ないq軸付近(q軸磁路)に電機子磁束Ψrが流れ込んで、磁束密度が高くなる傾向にあることから、そのq軸磁路が磁気飽和近くなると透磁率が低下してトルクが低下する。このことから、磁極開口度θ6は、q軸磁路をできるだけ確保してトルク(磁束通過効率)を高めるために小さい(狭い)方が有利であり、144°(電気角)に近い値とする。この磁極開度θ6は、固定子11のステータティース15の対面幅TBやスロット18の開口幅SOや回転子12とステータティース15の間のエアギャップ幅AGなどとの相関関係から磁界解析を行って、5次や7次の空間高調波を低減でき、また、コギングトルクも低減できる最適値として、146.8°(電気角)に決定している。
まず、磁石開口度θ2(機械角)は、最大負荷時には、図61に示すように、27.5°未満になるとトルクが大きく低下し、また、72.5°を超えると、トルクリプルや高調波トルクが大きくなることから27.5°〜72.5°の範囲Eに収めるのが好ましく、トルクからすると、37.5°〜67.5°程度の範囲F内にするのがより好ましい。
また、磁石開口度θ2(機械角)は、低負荷時には、図62に示すように、37.5°未満になるとトルクが急激に低下し、また、82.5°を超えると、トルクの急落と共にトルクリプルや高調波トルクが大きくなることから37.5°〜82.5°の範囲Gに収めるのが好ましく、トルクからすると、42.5°〜67.5°程度の範囲H内にするのがより好ましい。
これら最大負荷時と低負荷時からすると、磁石開口度θ2(機械角)は、37.5°〜72.5°に収めるのが好ましく、トルクからすると、42.5°〜67.5°程度にするのがより好ましく、さらに、52.5°にするのがトルクリプルや高調波トルクを抑えつつトルクを最大にすることができて好適である。
したがって、永久磁石16の使用量を削減しつつ、d軸側での電機子磁束Ψrや磁石磁束Ψmを有効に活用して、大きなマグネットトルクTmとリラクタンストルクTrを得ることができる。また、誘起電圧定数の低減による高速回転側での出力の増加を図ることができるとともに、永久磁石16の渦電流に起因する発熱を抑えて温度変化による減磁を抑制して耐熱グレードを下げることによるコスト削減をすることができる。
また、フラックスバリア17cは、回転子12の外周面までの離隔距離DLdを回転子12の外半径R1に対して、0.098≦DLd/R1<0.194にすることで、大きなトルクを効率よく発生させることができる。さらに、このフラックスバリア17cは、好ましくは、0.12≦DLd/R1≦0.14かつ1.2≦フラックスバリア開口角θ1/磁石開口角θ2≦1.7になるように、さらに、DLd/R1=0.139かつθ1/θ2=1.52になるようにすることで、より大きなトルクを効率よく発生させることができる。
さらに、このセンタ溝21は、2×tan−1((ティース対面幅TB/2)/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))≦外開口角θa≦2×tan−1((スロット開口幅SO+(ティース対面幅TB/2))/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))、0°≦内開口角θb≦2×tan−1((スロット開口幅SO+(ティース対面幅TB/2))/(回転子外半径R1+エアギャップ幅AG))、ティース先端部幅TW≦ティース対面幅TBとなる寸法形状にすることで、高調波トルクをより抑えて、トルクリプルをより削減することができる。
この結果、固定子11内の回転子12を低コストに作製して高エネルギ密度で高品質に回転駆動させることができる。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
11 固定子
12 回転子
12a 外周面
13 回転駆動軸
15 ステータティース
16 永久磁石
16a、16b 角部
17 V字空間
17b、17c フラックスバリア
18 スロット
20 センタブリッジ
21 センタ溝
22 サイド溝
AG エアギャップ幅
B d軸側範囲
G エアギャップ
MP0、MP1〜MP3、Mr1、Mr2 磁路
RG 溝深さ
Ψm 磁石磁束
Ψr 電機子磁束
Ψs 合成磁束
θ2 磁石開口度
θ3 磁石端部開き角
θ4 d軸からの外挟角
θ5 d軸からの内挟角
θ6 磁極開口度
Claims (1)
- 永久磁石が埋め込まれている回転子と、当該回転子に対面する複数のスロットにコイルが収容されている固定子と、を備えて、毎極毎相のスロット数が2になるように構成された電動回転機であって、
前記永久磁石が前記回転子の外周面に向かって開くV字形状に配置されており、
前記永久磁石が形成する磁極毎に、前記永久磁石のd軸側への延長空間から前記回転子の軸心に向かって拡大するとともに該回転子の外周面に向かって拡大する形状の空隙が形成されており、
前記回転子の外周面には、前記d軸上に軸心と平行なセンタ調整溝が形成されており、前記永久磁石の両外端部側に軸心と平行な一対のサイド調整溝が形成されており、
前記永久磁石の両外端側にはフラックスバリアが備えられており、
前記回転子の軸心を中心とする前記フラックスバリアの外側端部の間の電気角θ6が、
144°≦θ6≦154.3°
の関係を満たし、
前記永久磁石の外周面側の外面の延長面と前記d軸との間の機械角θ2が、
37.5°≦θ2≦72.5°
の関係を満たすことを特徴とするIPM型電動回転機。
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US10944347B2 (en) | 2017-02-16 | 2021-03-09 | Mitsubishi Electric Corporation | Rotary electrical machine control device, rotary electrical machine, and rotary electrical machine control method |
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