JP6074920B2 - 包装材料 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性の包装材料に関し、より詳細には、内容物の吸着量が低減することができ、且つ、ガスバリア性とヒートシール性に優れる包装材料に関する。
従来、包装袋や蓋材等の包装材の最内層には、ヒートシール性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂(EMMA)等のコポリマー樹脂が使用されている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、種々の有機化合物を吸着し易いことが知られている。したがって、これらの樹脂を最内層、すなわち内容物と接する層として有する包装材は、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装には不適であり、あらかじめ内容物中に有効成分を多めに含ませる等の対策が必要である。また、上記の樹脂はガスバリア性に劣ることから、上記樹脂を用いて包装材料を形成する場合、例えば、バリア層としてアルミニウム箔などを設ける必要があるが、前記バリア性層とこれと隣接する層との間に層間剥離(デラミネーション)が生じ、実用に耐えることができない。
そのため、シーラント層に使用する材料として、ヒートシール性を有しながら、有効成分を吸着しにくいものの開発がなされている。代表的には、アクリロニトリル系樹脂からなる非吸着性シーラント層を最内層とする包装材が使用されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロニトリル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、また高価であるため、より好ましい非吸着性シーラントの開発が求められている。
これに対し、例えば、特許文献2には、最内層が、アルミニウム箔又は無機物の蒸着膜で形成される非吸着性包装材が開示されている。前記包装材は、前記アルミニウム箔や蒸着膜に部分的に接着性樹脂層を形成することで製袋して使用されている。接着性樹脂層としては、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂などが開示されている。しかしながら、このような包装材は、その製造工程が複雑である。
特開平7−132946号公報 特開平10−45176号公報
本発明は、上記の問題点を解決して、有機化合物成分を吸着しにくくした、すなわち非吸着性に優れ、且つ、良好なガスバリア性とヒートシール性を有する包装材料を提供することを目的とする。
本発明者は、種々研究の結果、少なくとも、基材層、バリア層、バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層されたシーラント層を有する包装材料であって、該アンカーコート層は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層であり、且つ、該シーラント層は、該アンカーコート層に隣接する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLD
PE、密度0.900〜0.940g/cm3)層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とを有する層であることを特徴とする上記包装材料が、上述の目的を達成することを見出した。
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、基材層、バリア層、バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層されたシーラント層を有する包装材料であって、
該アンカーコート層は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層であり、且つ、
該シーラント層は、該アンカーコート層に隣接する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と、環状ポリオレフィン系樹脂層とを有する層であることを特徴とする、上記包装材料。
2.前記シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層であることを特徴とする、請求項1に記載の包装材料。
3.前記バリア層が、アルミニウム箔、並びにアルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜及びアルミナ蒸着膜からなる群より選択される少なくとも1種からなる層であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装材料。
4.接着層のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂硬化剤は、芳香族部位を分子中に含むエポキシ樹脂硬化剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装材料。
5.接着層のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂は、メタキシレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装材料。
6.直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装材料。
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる包装材用シーラント層は、種々の有機化合物、例えば、l−メントールやサリチル酸メチル等の薬効成分を吸着しにくい。また、上記のとおり、主成分として含まれる環状ポリオレフィン系樹脂が高い分子間力を発揮するため、分子間の距離が近い密な表面構造を有する。したがって、低分子量成分の溶出を抑制できるため、保香性にも優れ、また包装材の最内層を形成するのに十分なヒートシール性を示す。
また、一般的に、環状ポリオレフィン系樹脂は、その溶融成膜時に、高い分子間力が働き、ポリマー間で凝集を引き起こすことが知られている。その結果、膜の至る所で樹脂が凝集して瘤状のゲル塊を形成し、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、インフレーション法による成膜時には一層顕著になり、該法により得られる環状ポリオレフィン系樹脂膜は、その表面全体に無数のゲル塊が発生する。
しかしながら、本発明に従って、環状ポリオレフィン系樹脂層をLLDPE層と隣接させて一緒に製膜することによって、環状ポリオレフィン系樹脂の分子同士の不均一な凝集が抑制される。したがって、本発明の包装材料のシーラント層は、製膜が容易であり、均質で、良好な透明性を有する美麗な層を形成することができる。また、インフレーション法による高速製膜時にも、ゲル塊の発生を抑えることができる。
このような本発明の包装材料において、環状ポリオレフィン系樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂の高い分子間力に基づいて、分子間の距離が近い密な表面構造を形成しており、またLLDPE層は、該環状ポリオレフィン系樹脂層と高い層間密着性を発揮し、該環状ポリオレフィン系樹脂層に良好な製膜安定性を付与している。このような構造を有する本発明の包装材料は、内容物中の成分を吸着しにくく、すなわち非吸着性に優れている。
また、本発明の包装材料を形成するシーラント層は、良好なヒートシール性を示し、幅広いシール温度範囲でヒートシールが可能であり、低温でのヒートシールでも十分なシール強度を発揮する。したがって、加工が容易であり、樹脂酸化臭等の発生が少ない。そして、この包装材料を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が最内層となるように製袋して得られる包装袋や包装容器は、良好な耐衝撃性を示す。
また、本発明の包装材料において使用するアンカーコート剤は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層であり、前記硬化物は重合体(ポリマー)を形成する。アンカーコート剤として、例えば、ポリウレタン系接着剤などを使用した場合、前記接着剤に含まれる有機低分子量物質が、シーラント層を通過し、内容物中に溶出するが、本発明において使用されるエポキシ樹脂硬化物はポリマーであり、シーラント層を通過しないことから、内容物を劣化させることがない。さらに、上記アンカーコート剤は、優れたガスバリア性を有するものであることから、バリア層と相俟って、外部からの酸素ガスなどの進入を防止することができる。
さらに、本発明の包装材料はバリア層を有する。ここで、バリア層は、優れたガスバリア性を有することから、前記包装材料を使用した包装容器は外部からの酸素ガスや水蒸気ガスなどの進入を防止することができ、前記ガスに起因する内容物の変性を有効に防止することができる。
したがって、本発明の包装材料は、特に内容物の品質保持性が要求される包装容器を形成するのに好適なものである。
本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1>本発明の包装材料を形成する積層体の層構成
図1は、本発明の包装材料の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
本発明の包装材料は、図1に示すように、基材層1、バリア層2、アンカーコート層3、及びシーラント層4をこの順に積層した構成を基本とする。ここで、シーラント層4は、LLDPE層(a)と環状ポリオレフィン系樹脂層(b)の2層からなる層であり、LLDPE層(a)がアンカーコート層3と隣接する。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
<2>基材層
本発明の包装材料に用いる基材層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの二軸延伸フィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの二軸延伸フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムを好適に使用できるほか、防湿セロハン、合成紙、紙なども使用することができる。これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて積層して使用することもできる。
本発明において、基材層の層厚としては、6〜100μm、より好ましくは、9〜50μmが望ましい。
<3>バリア層
本発明において、バリア層は、外部への内容物のにおい漏れや、外部からの酸素及び水蒸気ガスの浸入を抑え、内容物の変質を防ぐためのものであり、適用する包装材料の用途に応じて任意のバリア層を形成することができる。
例えば、バリア層を構成する材料として、アルミニウム箔等の金属箔を用いることができ、この場合には、優れたガスバリア性が得られ、また遮光性を有することとなる。さらに、バリア層を構成する材料として、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂又はポリアクリロニトリル系樹脂の少なくともいずれか一種からなるバリア性フィルムを用いることもできる。好適に使用されるこれらのバリア性フィルムの厚さは、5〜30μm程度である。
また、バリア層は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズなどの無機酸化物やアルミニウムなどの金属の蒸着層であってよい。
バリア層の積層方法としては、バリア層が金属箔やプラスチックフィルムである場合は、接着剤層を介して基材フィルム上に貼り合せることによって積層される。貼り合せに使用する接着剤としては、任意のものを用いることができるが、押出ラミネート法(いわゆる、サンドイッチラミネート法)で貼り合わせる場合は、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE、密度0.910〜0.925g/cm3)などを単独で使用するか、又はこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。さらに、基材フィルムと上記金属箔あるいはフィルムとをドライラミネート法で貼り合わせてもよく、その場合は接着剤として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。
また、バリア層が蒸着層である場合は、化学気相成長法及び物理気相成長法等の任意の蒸着法によって、基材フィルム上に積層される。蒸着層の層厚は、適宜に設定することができるが、好適には、約5〜100nmの範囲である。
<4>アンカーコート層
本発明において、アンカーコート層は、シーラント層とバリア層とを接着するためのものである。
本発明において使用するアンカーコート層は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層である。アンカーコート層に使用するエポキシ樹脂組成物としては、例えば、特開2003−155465号公報や特開2007−126627号公報に記載されたものが挙げられる。
具体的には、上記エポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と芳香族部位を分子中に含むエポキシ樹脂硬化剤とからなるものを使用することができる。好ましくは、アンカーコート層に使用するエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物により形成されるエポキシ樹脂硬化物中に式(1)に示される骨格構造が40質量%以上含有されることを特徴とするエポキシ樹脂組成物を使用することができる。
Figure 0006074920
さらに、アンカーコート層に使用するエポキシ樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、該樹脂組成物より形成される硬化物中の上記式(1)式に示される骨格構造の含有量が30質量%以上であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物についても使用することができる。
上記のエポキシ樹脂としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、特にメタキシレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また、これらの樹脂は、単独でも2種以上を任意に混合しても使用することができる。
また、上記のエポキシ樹脂硬化剤としては、一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができるが、ガスバリア性をさらに向上させるために、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましく、上記(1)の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤を使用することがより好ましい。具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、エピクロルヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類とのとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
さらに、ガスバリア性、およびバリア層やシーラント層との接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)と(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えば、エステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの炭素数1〜8の一価のカルボン酸およびそれらの誘導体、例えば、エステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などを上記多官能性化合物と併用して開始ポリアミンと反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性および各種フィルム材料への良好な接着強度が得られる。
また、上記の硬化促進剤としては、硬化時間の短縮または低温硬化性を増大させるものであれば特に制約はなく、例えば、三ハロゲン化ホウ素錯体や有機酸に加え、フェノール、m−クレゾール、p−クロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、o−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、フロログリシノール、ビスフェノールA、トリスジメチルアミノフェノールなどのフェノール類;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、チオグリセノール、ペンタエリスリトール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアルコールのようなアルコール類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫、トリフェニルホスフィン、リン酸トリフェニルなどを使用することができる。中でも三ハロゲン化ホウ素錯体および有機酸が好ましい。これらの硬化促進剤は単独または2種以上を併用して用いることができる。
三ハロゲン化ホウ素錯体としては、特に三フッ化ホウ素錯体がより好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素のエーテル錯体;その他三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素リン酸錯体、三フッ化ホウ素アセトニトリル錯体などが挙げられ、特に三フッ化ホウ素のアミン錯体、中でも三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体が好適に用いられる。これらの三ハロゲン化ホウ素錯体は単独または2種以上を併用して用いることができる。
有機酸としてはp−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、安息香酸、p−トルイル酸、p−アミノ安息香酸、p−クロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、n−酪酸、iso−酪酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクタン酸、n−ヘプチル酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、などが挙げられ、特にp−トルエンスルホン酸が好適に用いられる。これらの有機酸は単独または2種以上を併用して用いることができる。
上記のアンカーコート層は、バリア層あるいはシーラント層上に、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、ブレードコート、ショートドウェル、キャストコート等の塗工方法を用いて、上記エポキシ樹脂組成物を0.01〜0.1g/m2塗布し、乾燥することにより形成することができる。
本発明において使用するのに好適なエポキシ樹脂組成物としては、株式会社日本触媒製のエポミン(アンカーコート剤)が挙げられる。
<5>シーラント層
本発明のシーラント層は、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂層とを有する。本発明の包装材料において、該LLDPE層は、シーラント層の表面(貼合面)に位置し、アンカーコート層と隣接する。
(1)シーラント層の構造
本発明の一態様において、シーラント層は、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層である。この構成を有するシーラント層は、環状ポリオレフィン系樹脂層が、本発明の包装材料の最表層、すなわち包装容器の最内層となるため、優れた非吸着性を示すことができる。
当該構成において、シーラント層の総厚は、任意であってよいが、安定した成膜化及び製品コストの観点から好適には、12〜150μmの層厚を有する。ここで、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層及びLLDPE層の厚さは、包装材の用途に応じて適宜に設定することができるが、安定した成膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層厚は、望ましくは2〜30μmであり、LLDPE層の層厚は、望ましくは10〜120μmである。
(2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)層
本発明において、シーラント層中のLLDPE層を構成するLLDPEは、密度0.900〜0.940g/cm3の直鎖状ポリエチレンであって、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒又はチーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト系触媒を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを低温、低圧で共重合させて得られるコポリマーである。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。
また、共重合方法としては、エチレン及びα−オレフィンを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法が挙げられる。
本発明に使用するLLDPEは、短鎖分岐として炭素数1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超える長鎖分岐を有しない点で、LDPEと区別される。通常、LLDPEにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製されたLLDPEを好適に使用することができる。
本発明において使用するのに好適なLLDPEとしては、住友化学(株)社製の「スミカセン」等が挙げられる。
さらに、上記のようなLLDPEを主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
(3)環状ポリオレフィン系樹脂層
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂層を構成する環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(COP)、及び、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、すなわち環状オレフィンコポリマー(COC)を包含する。
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。環状オレフィンは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、上記の環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
また、環状オレフィンコポリマーの製造は、25〜45モル%のα−オレフィンと、55〜75モル%の環状オレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
本発明において好適に使用される開環メタセシス重合体及び環状オレフィンコポリマーは、いくつか市販されており、例えば、日本ゼオン(株)社製の「ZEONOR(R)」やポリプラスチック(株)社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
なお、上記環状ポリオレフィン系樹脂には、製膜時の環状ポリオレフィン系樹脂同士の凝集によるゲル塊の発生を抑制して、一層均一な膜表面を得るために、高流度のオレフィン系樹脂を、非吸着性を損なわない範囲で任意に添加することができる。該オレフィン系樹脂としては、任意のポリエチレン及びポリプロピレン等であって、190℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10分、好ましくは15〜30g/10分のものを使用することができる。また、添加量としては、全体の3〜50質量%、好ましくは5〜10質量%の比率でオレフィン系樹脂を配合するとよい。
また、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、架橋剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
(4)シーラント層の製造方法
本発明の包装材用シーラント層の製造は、任意の方法によりなされるが、成膜安定性の観点から好ましくは、共押出コーティング法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物とLLDPEとを、アンカーコート層上に共押出コーティングすることにより形成するか、又は、溶融共押出法(例えば、Tダイ法、インフレーション法)等の成膜法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物とLLDPEとを共押出して多層シーラントフィルムを製造し、これを基材層、バリア層、アンカーコート層からなる積層体とラミネートする。
アンカーコート層上に共押出コーティングするか、又は多層シーラントフィルムを基材層、バリア層、アンカーコート層からなる積層体とラミネートする際に、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、LLDPE層側の面とアンカーコート層とを対向させて積層する。
特に、共押出コーティングすることにより、基材層、バリア層、アンカーコート層からなる積層体とLLDPE層、及び、LLDPE層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層間の密着性が高まり、一層高いシール強度を示すシーラント層を提供することができる。
<6>使用
本発明の包装材料は、シーラント層が最内層となるように製袋することにより、包装袋とすることができる。また、本発明の包装材料をシーラント層を最内層とする蓋材として使用し、包装容器を製造することができる。
本発明の包装材料は、優れた非吸着性を示し、且つ良好なガスバリア性とヒートシール性を示す。したがって、これを有する積層体や包装袋、包装容器は、特に、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装のために、例えば、コーヒー豆、米、茶、豆、おかき、せんべい等の乾燥食品の包装袋として、好適に使用することができる。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと厚さ7μmのアルミニウム箔(AL箔)とを、PETフィルムの貼り合わせ面にイソシアネート系のアンカーコート剤を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥してアンカーコート層(アンカーコート〔1〕)を形成し、LDPEを用いて押し出し温度295℃で厚さ15μmに押し出しラミネートを行った。次に、そのAL箔面に、アンカーコートとして、ポリエチレンイミン系のアンカーコート剤(株式会社日本触媒製 エポミン)を使用して、乾燥時の厚さが0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥して層(アンカーコート〔2〕)を形成した。
次いで、このアンカーコート〔2〕層上に、LLDPE(住友化学(株)社製スミカセンHi−α CW8003)及び環状オレフィンコポリマー(ポリプラスチック(株)社製 TOPAS 8007F−500)を、共押出コーティング法によりこの順で積層した。これにより、本発明の包装材を形成する積層体が得られた。得られた積層体の層構成は以下のとおりであった:
PETフィルム/アンカーコート〔1〕/LDPE/AL箔/アンカーコート〔2〕/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(20μm)/環状ポリオレフィン樹脂層(5μm)
なお、本願明細書の積層体の記載において、「/」はその左右の層が積層一体化されていることを示す。
[比較例1]
シーラント層の形成において、環状ポリオレフィン樹脂の代わりに、LLDPEを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
[比較例2]
シーラント層の形成において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の代わりに、LLDPEを使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
[比較例3]
シーラント層の形成において、LLDPEの代わりに、環状ポリオレフィン樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
[評価方法・結果]
(1)吸着性試験
実施例1及び比較例1〜3の積層体を10cm×10cm四方に切り取り、その初期重量を測定した。
容積10リットルのステンレス容器内にl−メントール固体10gを入れ、蓋をして容器内をl−メントール蒸気で満たし、その中に、切り取った積層体を吊り下げて、40℃で7日間保管した。
保管後、積層体を取り出して、重量を測定し、初期重量との差から、l−メントールの吸着量を算出した。
(2)シール強度試験
実施例1及び比較例1〜3の積層体を、基材層を外側にして重ね合せ、ヒートシーラー(テスター産業(株)製TP-701S HEAT SEAL TESTER)で、160℃で1秒間、圧力1kgf/cm2でヒートシールした。
次いで、これを幅15mmの短冊状に切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて圧着されたシール部を引き剥がし、シール強度を測定した。このときの引張速度は300mm/分とした。
以下の表に結果を示す。
Figure 0006074920
環状ポリオレフィン系樹脂層を有する実施例1及び比較例2、3の積層体は、比較例1の積層体と比較してメントール吸着量が少ないという傾向があった。
また、シール強度については、LLDPE層を有さない比較例3の積層体は実施例1の積層体と比較してシール強度が弱かった。
1:基材層
2:バリア層
3:アンカーコート層
4:シーラント層
a:LLDPE層
b:環状ポリオレフィン系樹脂層

Claims (5)

  1. 少なくとも、基材層、バリア層、バリア層上に隣接して積層されたアンカーコート層、該アンカーコート層上に隣接して積層されたシーラント層を有する包装材料であって、
    該アンカーコート層は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする組成物を硬化してなる層であり、且つ、
    該シーラント層は、該アンカーコート層に隣接する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と、環状ポリオレフィン系樹脂層との2層からなる層であり、
    該環状ポリオレフィン系樹脂層は、環状ポリオレフィン系樹脂のみからなる、層厚2〜5μmの層であることを特徴とする、上記包装材料。
  2. 前記バリア層が、アルミニウム箔、並びにアルミニウム蒸着膜、酸化珪素蒸着膜及びアルミナ蒸着膜からなる群より選択される少なくとも1種からなる層であることを特徴とする、請求項1に記載の包装材料。
  3. 接着層のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂硬化剤は、芳香族部位を分子中に含むエポキシ樹脂硬化剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装材料。
  4. 接着層のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂は、メタキシレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の包装材料。
  5. 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の包装材料。
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