JP2017149475A - 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器 - Google Patents

真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ヒートシールによる他の機能層への熱ダメージを抑えることができ、曲げ応力に対する耐久性、およびガスや蒸気に対するバリア性能を向上させた真空断熱材用外包材、それを用いた真空断熱材、および真空断熱材付き機器を提供することを主目的とする。【解決手段】本発明は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材用外包材を提供することにより、上記目的を達成する。【選択図】図1

Description

本発明は、真空断熱材の形成に用いられる真空断熱材用外包材に関する。
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。中でも、消費電力量の低減の観点から、電気製品、車両、建築、貯蔵庫等の物品への真空断熱材の採用が進められている。これらの物品に真空断熱材を備えることで、物品全体としての断熱性能を向上させることが可能となり、エネルギー削減効果が期待される。
真空断熱材は、一般に、対向する一対の外包材の周縁を熱で溶着(ヒートシール)させて袋体とし、その中に発泡樹脂や繊維材等の芯材を入れ、脱気して内部を真空状態とし、袋体の開口を封止して密閉することで形成されている。真空断熱材は、その内部が高真空状態にあり、空気の対流による熱移動が遮断されるため、断熱性能を発揮することができる。
真空断熱材に用いられる外包材は、通常、保護層、酸素等の常温常圧で気体状態であるガス(以下、単にガスと称する場合がある。)や水蒸気やアルコール等の蒸気(以下、単に蒸気と称する場合がある。)の透過を阻止するためのバリア層、および外包材同士をヒートシールするための熱溶着層、の少なくとも3種の機能層を有する。例えば、特許文献1では、ナイロンフィルム、アルミ蒸着膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ箔、およびポリエチレンの一種であるハイレトルト用無延性ポリプロピレン(以下、HR−CPPと略する場合がある。)フィルムが積層された外包材フィルムが開示されている。
また、外包材の耐熱温度は、主に、熱溶着層の耐熱性により決定される。例えば、上記の外包材フィルムの耐熱温度は、熱溶着層となるHR−CPPフィルムが劣化しない上限温度である約125℃である。そのため、熱溶着層を構成する樹脂を選択することで、外包材の耐熱性を更に向上させ、真空断熱材全体での耐熱性の向上を図ることが可能である。例えば、上記特許文献1では、HR−CPPフィルムに代えて、HR−CPPよりも高融点を示すポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略する場合がある。)で構成されたPBTフィルムを熱溶着層として用いることで、外包材フィルムの耐熱温度を約181℃まで高めることが可能であるとしている。
特開2010−255938号公報
上記外包材をヒートシールする場合、熱溶着層に含まれる樹脂の融点や延伸の有無に応じて、所望の溶融温度で加熱する必要がある。
ここで、PBTフィルムは、一般に熱溶着層に用いられる樹脂よりも融点が高く、また、延伸されているが故に、溶融温度も高い。このため、外包材をヒートシールする際に、PBTフィルムの溶融温度で加熱すると、保護層やバリア層等の他の機能層が熱ダメージを受けて劣化してしまうという問題がある。そして上記の問題から、保護層やバリア層は、上記溶融温度に耐え得る材質のものを選択しなければならず、材料選択の制限を受けることとなる。また、外包材のヒートシール作業が煩雑化し、加熱条件等によっては十分にシールされない場合がある。
一方、HR−CPPフィルムは、樹脂の融点が低く、また、無延伸且つ非晶質であるが故に、溶融温度が低い。このため、HR−CPPフィルムを熱溶着層として含む外包材は、比較的低温でヒートシールが可能である。しかし、HR−CPPフィルムはガスや蒸気に対するバリア性能が低いため、上記外包材を真空断熱材に用いると、外部のガスや蒸気がHR−CPPフィルムを透過して真空断熱材内部に侵入してしまう。また、HR−CPPフィルムからも脱ガスが生じる。このため、真空断熱材は、内部真空度が低下してしまい、断熱性能が長期間維持できないという問題がある。
加えて、真空断熱材は、通常、外包材同士の周縁をヒートシールした部分(以下、封止端部と称する場合がある。)を折り曲げる、部材表面に沿って屈曲させる等して所望の部材に配置される。このとき、外包材が硬いと、真空断熱材やその封止端部を曲げるために強い応力を加えなければならず、屈曲部分において各機能層、中でもバリア層に機械的強度の弱い箇所が存在すると、その部分に曲げ応力が集中してしまい、外包材にクラックが発生してしまう。このように外包材にクラックが発生すると、真空断熱材は、内部の真空状態が急激に低下するため、断熱性能を長期間維持することができなくなるという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ヒートシールによる他の機能層への熱ダメージを抑えることができ、曲げ応力に対する耐久性、およびガスや蒸気に対するバリア性能を向上させた真空断熱材用外包材、それを用いた真空断熱材、および真空断熱材付き機器を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。
なお、以下の説明において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」とする場合がある。また、「シクロオレフィンコポリマー」を「COC」と略する場合がある。
本発明によれば、熱溶着層が非晶質であるシクロオレフィンコポリマーを主成分に含むため、本発明の外包材は低温でヒートシールすることが可能であり、他の機能層への熱ダメージを抑えることができる。加えて、ヒートシール作業に要する時間や熱エネルギーの低減を図ることができる。
また、シクロオレフィンコポリマーを主成分とする熱溶着層は、従来公知の真空断熱材用外包材における熱溶着層よりも引張弾性率が高く、上記の機械的物性は、ヒートシールの際の加熱により更に高まることが推量される。このため、真空断熱材の製造の際に外包材同士をヒートシールすることで、上記熱溶着層の引張弾性率がさらに向上して機械的強度が高まるとともに、外包材全体では所望の柔軟性を有することができる。これにより、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に曲げ応力が掛る場合であっても、上記曲げ応力により上記外包材にクラックが発生するのを抑制することができる。
さらに、熱溶着層を構成するシクロオレフィンコポリマーは、ガスや蒸気に対するバリア性能、特に水蒸気に対するバリア性能が、熱溶着層に一般に用いられる他の樹脂よりも高いことから、本発明の外包材は、表面のみならず端面からの水蒸気の侵入を防ぐことができる。上記バリア性能は、ヒートシールの際に熱溶着層が加熱されることで更に高まると推量される。このため、本発明の外包材を用いた真空断熱材は、上記熱溶着層の有するバリア性能により封止端部から内部へ水蒸気が侵入するのを防ぐことができ、また、熱溶着層からの脱ガスも抑制されることから、長期間、内部の真空状態を保つことができる。このように、本発明の外包材は、断熱性能を長期間維持することが可能な真空断熱材を得ることができる。
上記発明においては、上記真空断熱材用外包材の引張弾性率と上記真空断熱材用外包材の厚みの3乗との積(以下、関数Mと称する場合がある。)が3.0MPa・mm以下であることが好ましい。上記関数Mの値を所定の値以下とすることで、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができるからである。
上記発明においては、上記熱溶着層の引張弾性率が1.0GPa以上であることが好ましい。本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができるからである。また、上記真空断熱材に内包される芯材からの突き刺しによる、ピンホールの発生を抑制できるからである。さらに、本発明の外包材を、層構成の少ないものとすることができるからである。
本発明は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材を提供する。
本発明によれば、上述の外包材を用いて芯材が封入されていることから、長期間断熱性能を維持することが可能な真空断熱材とすることができる。
本発明は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を少なくとも備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材付き機器を提供する。
本発明によれば、機器に備わる真空断熱材が、上述の外包材を用いた真空断熱材であり、長期間断熱性能を維持することができる。このため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が上昇することを防止することができる。一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本発明においては、ヒートシールによる他の機能層への熱ダメージを抑えることができ、曲げ応力に対する耐久性、およびガスや蒸気に対するバリア性能を向上させた真空断熱材用外包材を提供できるといった作用効果を奏する。
本発明の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。 本発明の真空断熱材の一例を示す概略斜視図および概略断面図である。 本発明の真空断熱材の使用例を示す模式図である。 本発明の真空断熱材用外包材の屈曲部分での屈曲状態を説明する説明図である。 実施例および比較例で得た真空断熱材の、90℃環境下における熱伝導率の経時変化を示すグラフである。 実施例および比較例で得た真空断熱材の、130℃環境下における熱伝導率の経時変化を示すグラフである。 実施例および比較例で得た外包材の、関数Mの値と酸素透過度または水蒸気透過度との相関図である。
以下、本発明の真空断熱材用外包材、真空断熱材、および、真空断熱材付き機器について説明する。
A.真空断熱材用外包材
本発明の真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とするものである。
本発明の外包材について図を参照して説明する。図1は本発明の外包材の一例を示す概略断面図である。本発明の外包材10は、熱溶着層1、バリア層2および保護層3を有し、熱溶着層1はシクロオレフィンコポリマーを主成分とするものである。通常、外包材10は、図1で示すように、熱溶着層1と保護層3との間にバリア層2を有する層構成を有する。
図2(a)は、本発明の外包材を用いた真空断熱材の一例を示す概略斜視図であり、図2(b)は図2(a)のX−X線断面図である。図2(a)および(b)に例示するように、真空断熱材20は、対向する2枚の外包材10の周縁がヒートシールされて封止されており、外包材10により密閉された空間内部に芯材11が収納され、内部が減圧されて真空状態となっている。外包材10の周縁のヒートシールされた部分が、真空断熱材20の封止端部12である。なお、図2中の外包材10を構成する各層の符号については、図1と同様である。
真空断熱材は、内部が減圧されて真空状態にあることで、内部の気体の対流が遮断されるため、断熱性能を発揮することができる。すなわち、真空断熱材の断熱性能を長期間維持するには、内部の真空状態が長期間維持される必要がある。
このため、真空断熱材は、封止端部を十分に接着させて、外部からガスや蒸気が侵入しないようにする必要がある。また、芯材を封入する外包材は、外部のガスや蒸気に対して侵入を阻止するためのバリア性を有することが求められる。
さらに、真空断熱材は使用に際し、図3で例示するように、封止端部12が折り曲げられ、若しくは図示しないが配置面の曲面に沿って屈曲される等により、屈曲部分13に曲げ応力が掛るが、このとき、外包材の硬軟によって破損やピンホール等の欠陥が発生しやすくなる。このため、上記外包材は、曲げ応力に対する耐久性を有することが求められる。
なお、図3において外包材10を構成する各層については図示を省略する。
ここで、真空断熱材の封止端部が周囲の温度に曝されて剥離するのを防ぐために、外包材の熱溶着層として、高融点樹脂層や延伸されたシーラント層等の、溶融温度の高いものが用いられる。しかし、熱溶着層の溶融温度が高すぎると、外包材をヒートシールする際に加わる熱により、外包材を構成する他の機能層が熱ダメージを受けて劣化してしまう。このため、バリア層のバリア性の低下や外部衝撃による外包材の破損等が生じやすくなり、真空断熱材の内部真空度の低下を引き起こすことになる。また、上記溶融温度に耐え得る材質のバリア層や保護層を選択する必要があり、材料の選択が制限されてしまう。
また、外包材のヒートシール性を良好とする観点から、熱溶着層として、非晶質樹脂層、無延伸のシーラント層等の溶融温度が比較的低いものも用いられる。しかし、これらの層は、一般にバリア性能が低い傾向にあるため、上記熱溶着層を介して真空断熱材の封止端部の側面からガスや蒸気が侵入してしまう。また、熱溶着層からの脱ガスも生じる。そして、真空断熱材の内部にガスや蒸気が侵入すると、内部の真空状態が低下して気体の対流が生じるため、断熱性能が低下してしまう。
さらに、外包材は、その硬軟によって屈曲させた際にかかる曲げ応力の程度が異なり、屈曲部に掛る曲げ応力を小さくするためには、上記外包材は柔軟性を有する必要がある。しかし、外包材全体が所望の柔軟性を有する場合であっても、上記外包材を構成する各層の機械的物性の違い、特に引張弾性率の差が大きい場合、曲げ応力によるクラックが生じやすくなる。
外包材において熱溶着層は、通常、バリア層と隣接する若しくはバリア層に近接した位置に配置されるが、バリア層はその組成から引張弾性率が熱溶着層よりも高い傾向にあるため、熱溶着層の引張弾性率が小さいと、バリア層との引張弾性率差が大きくなる。その結果、上記外包材にかかる曲げ応力により、バリア層にクラック等が発生しやすくなってしまう。
これに対し、本発明によれば、熱溶着層を構成する樹脂としてシクロオレフィンコポリマーを選択することで、上述の問題を解決することが可能となる。
すなわち、熱溶着層が非晶質であるシクロオレフィンコポリマーを主成分に含むため、本発明の外包材は低温でヒートシールすることが可能である。このため、本発明の外包材を用いた真空断熱材の製造において、外包材同士をヒートシールして芯材を密閉する際に、他の機能層への熱ダメージを抑えることができる。加えて、ヒートシールに要する時間や熱エネルギーの削減を図ることができる。
また、シクロオレフィンコポリマーを主成分とする熱溶着層は、従来公知の真空断熱材用外包材における熱溶着層よりも引張弾性率が高く、上記の機械的物性は、ヒートシールの際の加熱により更に高まることが推量される。このため、真空断熱材の製造の際に外包材同士をヒートシールすることで、上記熱溶着層の引張弾性率がさらに向上して機械的強度が高まるとともに、外包材全体では所望の柔軟性を有することができる。これにより、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に曲げ応力が掛る場合であっても、上記曲げ応力により上記外包材にクラックが発生するのを抑制することができる。
さらに、熱溶着層を構成するシクロオレフィンコポリマーは、ガスや蒸気に対するバリア性能、特に水蒸気に対するバリア性能が、熱溶着層に一般に用いられる他の樹脂よりも高いことから、本発明の外包材は、表面のみならず端面からの水蒸気の侵入を防ぐことができる。上記バリア性能は、ヒートシールの際に熱溶着層が加熱されることにより、更に高まると推量される。このため、本発明の外包材を用いた真空断熱材は、上記熱溶着層の有するバリア性能により封止端部から内部へ水蒸気が侵入するのを防ぐことができ、また、熱溶着層からの脱ガスも抑制されることから、長期間、内部の真空状態を保つことができる。このように、本発明の外包材は、断熱性能を長期間維持することが可能な真空断熱材を得ることができる。
ここで、本発明者は、シクロオレフィンコポリマーを主成分とする熱溶着層は、外包材をヒートシールする際に加わる熱により、機械的強度およびバリア性能が向上すると推量する。その理由については定かではないが、上記理由は、熱溶着層に含まれるシクロオレフィンコポリマーの結晶化に因るものと推量される。すなわち、ヒートシール前の熱溶着層に含まれるシクロオレフィンコポリマーは、上述したように非晶状態を有するが、ヒートシールの際に熱が加わることで結晶化が進み、熱溶着層中のシクロオレフィンコポリマーの結晶化度が向上することが予想される。一般に、樹脂層は、結晶化度が高いほど弾性率が高く、また、バリア性能も向上することから、本発明における熱溶着層についても、ヒートシール時の加熱により結晶化度が向上して、上記の現象が生じていると考えられる。
本発明の外包材は、通常、熱溶着層、バリア層および保護層を、この順で有するものである。
以下、本発明の外包材の各構成について説明する。
1.熱溶着層
本発明における熱溶着層はシクロオレフィンコポリマー(COC)を主成分とするものである。
上記熱溶着層は、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位であり、対向する外包材同士の周縁をヒートシールすることで形成される封止端部の、ヒートシール面(接着面)を担う部位である。すなわち、上記熱溶着層は、本発明の外包材において、一方の最外に位置する層となる。
上記熱溶着層に含まれるシクロオレフィンコポリマーは、環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンとを構成単位に有する共重合体であり、非晶質である。
シクロオレフィンコポリマーの構成単位である環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、置換ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン、ビニルノルボルネン、ノルボルナジエン誘導体等が挙げられる。
シクロオレフィンコポリマーの構成単位である直鎖または分岐オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
また、上記シクロオレフィンコポリマーは、上述の環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンとを構成単位に有する酸変性物(酸変性シクロオレフィンコポリマー)であってもよい。
ここで、酸変性シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンと共に、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物を加えて共重合することにより、或いは、環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンとの共重合体に対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
カルボン酸変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が挙げられ、より具体的には、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
中でも、上記シクロオレフィンコポリマーは、エチレンとノルボルネンとの共重合体であることが好ましい。組成比によって耐熱性の制御が可能だからである。
上記シクロオレフィンコポリマーを構成する直鎖または分岐オレフィンと環状オレフィンとの割合は、上記熱溶着層が所望のヒートシール性や引張弾性率等の機械的物性を有することができれば特に限定されず、選択する直鎖または分岐オレフィンや環状オレフィンの種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、直鎖または分岐オレフィンがエチレンであり、環状オレフィンがノルボルネンである場合、直鎖または分岐オレフィンと環状オレフィンとの割合(モル比)としては、エチレン/ノルボルネン(モル比)が、70/30〜20/80程度、好ましくは65/35〜25/75程度、更に好ましくは60/40〜30/70程度とすることができる。
シクロオレフィンコポリマーの重量平均分子量、数平均分子量、および分子量分布、は、上記熱溶着層が所望のヒートシール性や引張弾性率等の機械的物性を有することができれば特に限定されず、選択する直鎖または分岐オレフィンや環状オレフィンの種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、シクロオレフィンコポリマーが、エチレンとノルボルネンとの共重合体である場合、上記重量平均分子量としては、特に制限されないが、例えば、20000〜400000の範囲内、好ましくは30000〜200000の範囲内とすることができる。また、数平均分子量としては、特に制限されないが、例えば15000〜200000の範囲内、好ましくは20000〜100000の範囲内とすることができる。更に、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、例えば1.0〜5.0の範囲内、好ましくは1.0〜3.0の範囲内とすることができる。
なお、シクロオレフィンコポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(測定装置:GPC150−CALC(ウォーターズ社製)、カラム:AT−806M/S(SHODEX社製)2本、測定温度:140℃、展開溶剤:THF)により測定したポリスチレン換算値である。測定サンプルは、試料約4mgに1,2−ジクロロベンゼン約4mlを加えて、ヒーターで加熱し140℃で1時間かけて溶解させ、不溶分をフィルターで除去して調製したものを用いた。
また、シクロオレフィンコポリマーのガラス転移温度は、上記熱溶着層が所望のヒートシール性や引張弾性率等の機械的物性を有することができれば特に限定されず、選択する直鎖または分岐オレフィンや環状オレフィンの種類に応じて適宜設定することができる。
例えば、シクロオレフィンコポリマーが、エチレンとノルボルネンとの共重合体である場合、上記ガラス転移温度としては、例えば65℃〜210℃の範囲内であることが好ましく、中でも75℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。シクロオレフィンコポリマーのガラス転移温度を上記の範囲内とすることで、熱溶着層の耐熱性と強靭性が向上する、本発明の外包材をヒートシールした後の、熱膨張による破裂温度(耐熱破裂温度)が上昇する等、熱溶着層の特性をより一層向上させることができるからである。
上記ガラス転移温度は、ISO 11357に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
上記シクロオレフィンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて共重合されたものが好適に使用される。メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーは、分子量分布が均一で側鎖の分岐が少なく、強靭で安定したガラス転移温度を有するため、ヒートシールを良好に行うことが可能になる。
また、後述するように熱溶着層が、シクロオレフィンコポリマーに加え、ポリオレフィン等の他の樹脂成分を含む場合、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーは、上記他の樹脂成分との相溶性が良好となる。シクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分との相溶性が悪いと、延伸された熱溶着層は、他の層との界面でクラックが発生しやすくなる。また、ヒートシールの際の熱により上記界面での剥離やクラックが発生しやすくなる傾向を示す。
これに対し、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーを用いることで、他の樹脂成分を併用する際のこれらの不都合を解消することができる。
上記熱溶着層は、シクロオレフィンコポリマーを主成分とするものであればよく、シクロオレフィンコポリマーのみを含んでいてもよく、シクロオレフィンコポリマーに加えて他の樹脂成分を含んでいてもよい。
ここで、本発明における熱溶着層が、「シクロオレフィンコポリマーを主成分とする」とは、上記熱溶着層において、上述した本発明の作用効果を奏することが可能な程度の量のシクロオレフィンコポリマーが含有されていることをいい、具体的には、熱溶着層中にシクロオレフィンコポリマーが50質量%以上含まれていればよく、中でも75質量%以上含まれていることが好ましく、特に100質量%含まれていること、すなわち、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーのみからなることが好ましい。
また、シクロオレフィンコポリマー以外に上記熱溶着層に含有可能な他の樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレンポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;ポリメチルペンテン;環状オレフィン等が挙げられる。
また、カルボン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いはポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
カルボン酸変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物については、上述のシクロオレフィンコポリマーのカルボン酸変性に用いられるものと同様とすることができる。
カルボン酸変性されるポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−αオレフィン共重合体;プロピレン−αオレフィン共重合体;トリメチルペンテン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
上記熱溶着層が、シクロオレフィンコポリマーおよび上記他の樹脂成分を含む場合、これらの樹脂の含有比率としては、特に制限されないが、例えば、上記シクロオレフィンコポリマー100質量部当たり、他の樹脂成分を1質量部〜90質量部の範囲内で含むことができる。
上記熱溶着層は、上述したシクロオレフィンコポリマーおよび他の樹脂成分の他に例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、有機充填剤等の他の材料を含んでいてもよい。
上記熱溶着層の引張弾性率は、後述するように、本発明の外包材が、所望の範囲内に関数Mの値を有することができれば特に限定されるものではないが、1.0GPa以上であることが好ましく、中でも1.0GPa〜5.0GPaの範囲内であることが好ましく、特に1.5GPa〜4.0GPaの範囲内であることが好ましい。
上記熱溶着層の引張弾性率を上述の範囲内とすることにより、本発明の外包材に曲げ応力が掛る場合であっても、バリア層へのクラックの発生をより効果的に抑制することができる。すなわち、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができる。また、上記真空断熱材に用いられる芯材からの突き刺しによるピンホールの発生を抑制できる。
なお、関数Mについては、後で詳細に説明する。
さらに、後述するように、上記バリア層を隣接して挟持する2つの層の引張弾性率が所定の範囲内であることが好ましいとの観点から、上記熱溶着層の引張弾性率を上述の範囲内とすることにより、上記熱溶着層を、上記バリア層を隣接して挟持する2つの層の一方として用いることが可能となる。したがって、上記バリア層を隣接して挟持する2つの層の一方として所定の引張弾性率の内面側保護層等を上記バリア層および上記熱溶着層の間に配置すること等を不要とすることができ、上記外包材を層構成の少ないものとすることができる。また、その結果、後述する関数Mの値を所定の値以下とすることが容易になる。
上記引張弾性率の測定方法は、JIS K7161に準拠し、上記熱溶着層を幅15mm、長さ120mmに短冊状にカットした後、引張試験機を用いてチャック間距離100mm、引張速度100mm/minで引張弾性率を測定する方法を用いることができる。上記引張弾性率の測定条件は23℃、湿度55%の条件とすることができる。上記引張試験機としては、例えば、テンシロン万能試験機RTC−1250Aを用いることができる。
また、上記引張弾性率は、最低5個の試験片を用いて行い、得られた5個以上の引張弾性率の平均値を用いることができる。上記熱溶着層が長尺状である場合には、上記引張弾性率は、長手方向(巻きだし方向)および長手方向に直交する短手方向(幅方向)のそれぞれの引張弾性率の平均値を用いることができる。
なお、本明細書内において、引張弾性率は上記の方法で測定したものとする。
上記熱溶着層の厚みは、熱溶着層としての機能を発揮することが可能な厚みであればよく、例えば20μm〜100μmの範囲内が好ましく、中でも25μm〜90μmの範囲内が好ましく、特に30μm〜80μmの範囲内が好ましい。熱溶着層の厚みが上記範囲よりも大きいと、外包材のバリア性が低下する場合等があり、一方、上記範囲よりも小さいと、本発明の外包材をヒートシールする際に所望の接着力が得られない場合がある。
上記熱溶着層は、単層であってもよく、多層構成を有していてもよい。単層の熱溶着層としては、例えば、1種類のシクロオレフィンコポリマーを含むもの、MFR、数平均分子量、分子量分布等の異なる2種以上のシクロオレフィンコポリマーを含むもの、1種類以上のシクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分とを含むもの等が挙げられる。
上記熱溶着層は、シクロオレフィンコポリマーを主成分に含む市販の樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、倉敷紡績株式会社製COXEC等が好適に用いられる。
2.バリア層
本発明におけるバリア層は、通常、熱溶着層と保護層との間に配置される。
上記バリア層は、酸素等の常温常圧で気体状態であるガスや、水蒸気やアルコール等の蒸気の透過を防ぐ機能(バリア性能)を有する。
バリア層としては、例えばアルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタニウム等の金属箔、金属、金属酸化物、酸化珪素等の無機物等をPETフィルム等の樹脂フィルムの片面に蒸着した蒸着フィルム、上記蒸着フィルムにポリビニルアルコール系樹脂およびエチレンビニルアルコール共重合体の少なくともいずれかを含有するバリア性能組成物によるバリア性能塗布膜を設けたもの等、一般にバリア層として使用されるものを用いることもできる。このようなバリア層を用いることにより、長期間断熱性能を維持することが可能な真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。
上記バリア層は、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層した多層体であってもよい。上記バリア層が蒸着フィルムの場合、蒸着膜は単層であってもよく、2層以上の同一組成のバリア膜、または、異なる組成のバリア膜が積層されていてもよい。また、上記バリア層は、バリア性能および他の機能層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
上記バリア層の厚みは、例えば、2μm〜50μmの範囲内、中でも5μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。上記バリア層の厚みが上記範囲よりも小さいと、バリア層にピンホール等が生じやすくなり、上記バリア層の厚みが上記範囲よりも大きいと、曲げ応力によりクラック等が生じやすくなり、断熱性能が低下する場合がある。また、アルミニウム箔等の金属のバリア層を適用する場合はヒートブリッジが生じやすくなり、断熱性能が低下する場合がある。
上記バリア層のバリア性能としては、酸素透過度が0.2cc/m/day/atm以下であることが好ましく、中でも0.1cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.2g/m/day以下であることが好ましく、中でも0.1g/m/day以下であることが好ましい。
上記バリア層の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、ガスや蒸気が透過しにくくなり、本発明の外包材を用いた真空断熱材において、外部から侵入するガスや蒸気を内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。
上記酸素透過度は、JIS K7126Bに基づき、温度23℃、湿度60%RHの条件下において酸素透過度測定装置を用いて測定した値とすることができる。上記酸素透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN)を挙げることができる。
また、上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いてJIS K7129に従い測定することができる。上記水蒸気透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、パ−マトラン(PERMATRAN)を用いることができる。
3.保護層
本発明における保護層は、本発明の外包材において、バリア層に対し熱溶着層側とは反対側に位置する層であり、通常、本発明の外包材において他方の最外に位置する層である。
上記保護層は、本発明の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な機械的強度を有し、耐熱性、防湿性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。
上記保護層の材料としては、熱溶着層よりも高融点の樹脂が好ましく、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
上記保護層は、シートでもよく、一軸延伸または二軸延伸されたフィルムでもよい。
また、上記保護層は、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層して多層としたものであってもよい。
上記保護層は、他の機能層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
上記保護層の厚みは、熱溶着層およびバリア層を保護することができる厚みであれば特に限定されるものではないが、一般に5μm〜80μmの範囲内程度とすることができる。
4.その他
本発明の外包材は、上記外包材を構成する各層が、直接接触して積層されていてもよく、層間接着剤を介して積層されていてもよい。層間接着剤については、一般に真空断熱材用の外包材に使用される接着剤を用いることができる。
上記外包材は、保護層またはバリア層を複数有するものであってもよい。上記外包材は、例えば、熱溶着層と保護層との間にバリア層を2層以上設けてもよく、熱溶着層およびバリア層の上に、第1保護層および第2保護層のように保護層を2層以上設けてもよい。
また、上記外包材は、熱溶着層とバリア層との間に内面側保護層が設けられてもよいが、本発明においては、上記熱溶着層と上記バリア層との間に上記内面側保護層を含まないことが好ましい。上記外包材の層構成を少ないものとすることができ、さらに、後述する関数Mの値を所定の値以下とすることが容易になるからである。
さらに、上記外包材は、アンカーコート層、耐ピンホール層等の任意の層を有していても良い。
本発明の外包材は、透明性を有していてもよく、有さなくてもよく、本発明の外包材が用いられる真空断熱材の用途に応じて適宜設定することができる。上記外包材の透明性については、厳密な透過率で規定されず、用途等に応じて適宜決定することができる。
本発明の外包材が透明性を有する場合、上記外包材を用いた真空断熱材は、その内部の視認が可能となる。このため、真空断熱材の内部に芯材と共に検知剤を入れることで、検知剤の変化から内部の真空状態を目視で確認することが可能となる。
5.真空断熱材用外包材の機械的特性
本発明の外包材は、上記外包材の引張弾性率と上記外包材の厚みの3乗との積(関数M)が3.0MPa・mm以下であることが好ましい。上記関数Mの値を所定の値以下とすることで、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができるからである。
中でも関数Mが0.5MPa・mm〜2.5MPa・mmの範囲内であることが好ましく、特に0.5MPa・mm〜2.0MPa・mmの範囲内であることが好ましく、0.5MPa・mm〜1.0MPa・mmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、上記関数Mの値が所定の値以下であることにより、本発明の外包材の屈曲部分における上記バリア層へのクラックの発生を抑制できる理由については明らかではないが、以下のように推察される。
すなわち、物体に対して応力を加えた場合の変形量については、物体が引張弾性率Eの特性を有し、その形状が幅b、厚みhの直方体であり、応力Fが加えられる位置が直方体状の物体を支持する端部から距離Lの位置である場合、その変形量vは、一般的にv=4FL/(bEh)で表わされる。
一方、上記外包材の引張弾性率Eと上記外包材の厚みhの3乗との積である上記関数Mは、M=Ehで表わされ、上記変形量vとの間で、反比例の関係にある。このため、上記関数Mの値は、その値が小さいほど、同じ応力が加わった際の変形量が大きくなる関係になり、上記外包材の柔らかさの指標となる。
したがって、上記関数Mの値が所定の値以下であるとは、上記外包材が所定の柔軟性を有していることを示すものである。
また、上述のように、上記関数Mの値が所定の値以下である場合、上記関数Mの値が所定の値より大きいものと比較して、上記外包材を屈曲させた際に上記屈曲部分に上記屈曲部分の形成方向に沿った方向と略平行に形成されるしわの数が多くなる。
このようなことから、上記関数Mの値が所定の値より大きく、上記外包材が硬い場合には、強い応力を加えないと上記外包材を屈曲させることができず、上記バリア層に機械的強度の弱い箇所が1点でもあると、その1点で屈曲しようと応力が集中してクラックが発生する。
一方、上記関数Mの値が所定の値以下であり、上記外包材が柔らかい場合には、上記外包材は小さい応力で屈曲できることから、上記バリア層に機械的強度の弱い箇所があるとしても、その強度の弱い箇所に応力が集中することなくその他の箇所でも屈曲が可能となり、応力を分散させることができると考えられる。そして、上記関数Mの値が所定の値より小さいものは、複数箇所に応力が分散され、多くの箇所で屈曲が生じる結果、上記屈曲部分に形成されるしわの数が、上記関数Mの値が所定の値より大きいものと比較して多くなるのである。
また、図4に例示するように、屈曲部分13における屈曲箇所(しわ)13aが少ない場合(図4(a))と比較して、屈曲部分13における屈曲箇所(しわ)13aが多い場合(図4(b))には、それぞれの屈曲箇所(しわ)13aでの屈曲の角度αが小さいものとなる結果、それぞれの屈曲箇所(しわ)においてバリア層に加わる応力を小さいものとすることができる。このような観点からも、上記屈曲部分等での上記バリア層へのクラックの発生を抑制できるのである。
なお、上記関数Mにおける上記外包材の厚みは、1枚当たりの上記外包材の厚みをいうものであり、例えば、2枚の上記外包材を用いて形成された上記真空断熱材における上記外包材の関数Mの計算に用いる厚みは、1枚の上記外包材の厚みをいう。
上記外包材の引張弾性率は、上記関数Mの値を所望の範囲内とすることができれば特に限定されるものではないが、1.5GPa〜5.0GMPaの範囲内であることが好ましく、中でも2.0GPa〜4.0GPaの範囲内であることが好ましく、特に2.5GPa〜3.5GPaの範囲内であることが好ましい。上記関数Mの値を所定の値以下とすることが容易だからである。
外包材の引張弾性率は、「1.熱溶着層」の項で説明した方法と同様の方法で測定することができる。
また、上記外包材の上記バリア層に隣接して挟持する2つの層(以下、隣接層と称する場合がある。)のそれぞれの引張弾性率は、上記関数Mの値を所定の範囲内とすることが可能であれば特に限定されるものではないが、例えば1.0GPa〜5.0GPaの範囲内であることが好ましく、中でも1.5GPa〜5.0GPaの範囲内であることが好ましく、特に2.0GPa〜4.5GPaの範囲内であることが好ましい。
上記2つの隣接層の引張弾性率が、それぞれ上述の範囲内であることにより、上記バリア層と2つの隣接層との引張弾性率の差を小さくすることができる結果、上記バリア層へのクラックの発生をより効果的に抑制できるからである。
隣接層の引張弾性率は、「1.熱溶着層」の項で説明した方法と同様の方法で測定することができる。
上記2つの隣接層は、本発明の外包材の層構成に応じて適宜選択される。具体的には、本発明の外包材が熱溶着層/バリア層/保護層の層構成を有する場合には、上記2つの隣接層とは、熱溶着層および保護層をいう。また、本発明の外包材が熱溶着層/バリア層/第1保護層/第2保護層の層構成を有する場合には、上記2つの隣接層とは、熱溶着層および第1保護層をいう。さらに、本発明の外包材が熱溶着層/内面側保護層/バリア層/保護層の層構成を有する場合には、上記2つの隣接層とは、内面側保護層および保護層をいう。
なお、上記2つの隣接層には、バリア層と各層との間を接着する層間接着剤層は含まない。
本発明の外包材の厚みは、上記関数Mの値を所定の範囲内とすることが可能となるように適宜設計することができる。上記厚みとしては、例えば、30μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の外包材の引張強度は、50N以上であることが好ましく、中でも80N以上であることが好ましい。本発明の外包材を用いて形成された真空断熱材を屈曲させる際に、破断等が生じにくくなるためである。上記引張強度は、JIS Z1707の規格に基づいて測定した値であり、具体的には、上記規格において引用するJIS K7127(15mm幅)の規格に基づいて測定することができる。
6.製造方法
本発明の外包材の製造方法は、一方の最表層に保護層を有し、他方の最表層に熱溶着層を有するようにして各層を積層することが可能な方法であれば特に限定されず、公知の積層方法を用いることができる。
例えば、予め成膜した各層を上述した層間接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させた各層の材料をTダイ等で押出しして貼り合せ、得られた積層体に層間接着剤を介して熱溶着層を貼り合せて形成する方法等が挙げられる。
B.真空断熱材
次に、本発明の真空断熱材について説明する。本発明の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明したものであることを特徴とするものである。
本発明の真空断熱材については、既に説明した図2に例示するものと同様とすることができる。
本発明によれば、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を用いて芯材が封入されていることから、長期間断熱性能を維持することができる。
本発明の真空断熱材は、真空断熱材用外包材および芯材を少なくとも有するものである。
以下、本発明の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
1.真空断熱材用外包材
本発明における真空断熱材用外包材は、上記芯材を封入するものであり、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明したものである。
ここで、上記外包材が芯材を封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に、芯材が密封されることをいうものである。
本発明における外包材の詳細については、上記の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
2.芯材
本発明における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。
上記芯材は、熱伝導度の低いものであることが好ましく、中でも空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。熱伝導率の低い芯材とすることができるからである。
上記芯材を構成する材料としては、例えば、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
また、上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらのなかでも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
上記芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
上記芯材の厚みは、所望の断熱効果を発揮できれば特に限定されない。例えば、減圧後の状態で5mm〜30mmの範囲内であることが好ましい。
3.真空断熱材
本発明の真空断熱材は、上記外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
上記真空断熱材の熱伝導率は低いことが好ましい。例えば、上記真空断熱材の25℃における熱伝導率(初期熱伝導率)は、5mW/m・K以下であることが好ましく、中でも4mW/m・K以下であることが好ましく、特に3mW/m・K以下であることが好ましい。真空断熱材の熱伝導率を上記範囲とすることにより、上記真空断熱材は熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。また、上記真空断熱材の90℃で1000時間劣化後の熱伝導率が15mW/m・K以下好ましく、中でも10mW/m・K以下であることが好ましい。
上記熱伝導率は、JIS A1412−3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、例えば熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を用いることができる。
4.製造方法
本発明の真空断熱材は、従来公知の方法を用いて製造することができる。例えば、予め上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着層が内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置する。製袋機等によって重なった2枚の上記外包材の外周の一方を開口部とし、残り三方をヒートシールする。これにより、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体が得られる。次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
また、上記製造方法は、2枚の外包材に代えて、1枚の上記外包材を2つ折りにして行ってもよい。すなわち、1枚の上記外包材を熱溶着層が内側に向き合うように2つ折りにし、その間に上記芯材を配置する。製袋機等によって重なった1対の外包材の外周の一方を開口部とし、残り二方をヒートシールすることで、1枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体が得られる。上述と同様の方法で減圧密封することで、真空断熱材を得ることができる。
5.用途
本発明の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温下においても断熱性および耐久性に優れるものである。従って、本発明の真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。
具体的な用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き機器」で説明する機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
C.真空断熱材付き機器
本発明の真空断熱材付き機器は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を少なくとも備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、上述の「B.真空断熱材」の項で説明したものであることを特徴とするものである。
ここで、「熱源部」とは、機器自体が駆動することにより、当該機器本体または機器内部において発熱する部位をいうものであり、例えば電源やモーター等をいう。また、「被保温部」とは、機器本体または内部に熱源部を有さないが、上記機器が外部の熱源から熱を受けて、高温になる部位をいうものである。
本発明によれば、機器に備わる真空断熱材が、上述の「B.真空断熱材」の項で説明した真空断熱材、すなわち、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を用いた真空断熱材であり、長期間断熱性能を維持することができる。このため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が上昇することを防止することができる。一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
本発明における真空断熱材については、上述した「B.真空断熱材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における機器とは、本体又は本体の内部に熱源部もしくは被保温部を有するものであるが、なかでも、80℃〜150℃の範囲内程度の高温に達する熱源部または被保温部を少なくとも有するものが好ましい。本発明における機器としては、例えば、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(登録商標「エコキュート」)、冷蔵庫、自動販売機、炊飯ジャー、ポット、電子レンジ、業務用オーブン、IHクッキングヒーター、OA機器等の電化機器、自動車等が挙げられる。なかでも本発明においては、上記機器が、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、業務用オーブン、電子レンジ、自動車に上述の本発明の真空断熱材を用いることが好ましい。
上記真空断熱材を機器に装着する態様としては、当該機器の熱源部もしくは被保温部に直接真空断熱材を貼り付けてもよく、被保温部と熱源部または外部熱源との間に真空断熱材を挟みこむようにして装着してもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(真空断熱材用外包材の作製)
保護層/バリア層/熱溶着層の層構成を有する外包材を作製した。COCフィルム(COC30、厚み:30μm、製品名:COXEC、倉敷紡績株式会社製)を熱溶着層として、アルミニウム箔(AL6、厚み:6μm、製品名:1N−30、UACJ製箔社製)をバリア層として、PETフィルム(PET16、厚み:16μm、製品名:PTMB、ユニチカ株式会社製)を保護層として用いた。
上記各層は、下層となる層の面上に層間接着剤(製品名:LX500/KR−90S、DICグラフィックス株式会社製)を、塗布量3.5g/mとなるようにダイコーターを用いて塗布して乾燥させ、上層となる層をラミネートすることにより積層した。
(真空断熱材の作製)
得られた外包材を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作成した。芯材としてグラスウール(外寸:300mm×300mm×30mm)を用い、乾燥処理(145℃で1時間)を行った後、上記袋体に上記芯材および吸着剤を収納して、上記袋体内部を真空排気した。その後、上記袋体の開口部分をヒートシールにより密封して、真空断熱材を得た。封止圧力は0.05Paとした。
[実施例2]
第2保護層/第1保護層/バリア層/熱溶着層の層構成を有する外包材を作製した。ナイロンフィルム(ON25、厚み:25μm、製品名:ハーデンフィルムN1102、東洋紡株式会社製)を第2保護層とし、PETフィルム(PET12、厚み:12μm、製品名:E5100、東洋紡株式会社製)を第1保護層として用いた。上記以外は、実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
[比較例1]
熱溶着層として、CPPフィルム(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
[比較例2]
熱溶着層として、CPPフィルム(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例2と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例2と同様に真空断熱材を作製した。
[比較例3]
熱溶着層として、LLDPEフィルム(LLDPE50、厚み:50μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
[比較例4]
熱溶着層として、LLDPEフィルム(LLDPE50、厚み:50μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例2と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例2と同様に真空断熱材を作製した。
以下、実施例1〜2、および比較例1〜4の各真空断熱材に用いた外包材の層構成を表1に示す。表1中のスラッシュ「/」は積層界面を示す。以下、同様とする。
[評価1]
実施例1〜2および比較例1〜4で得られた真空断熱材について、90℃および130℃のそれぞれの環境下における熱伝導率の経時変化を測定した。各真空断熱材の熱伝導率は、JIS A1412−3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(英弘精機製 HC−074)を用いた。90℃の測定結果および130℃の測定結果を、それぞれ図5および図6に示す。
図5、図6の真空断熱材の熱伝導率の経時変化の測定結果から、外包材の層構成がPET16/AL6/COC30である実施例1、ON25/PET12/AL6/COC30である実施例2は、熱伝導率の経時変化が、比較例よりも極めて少なかった。
外包材の層構成は実施例1および2と同じでも、熱溶着層としてCPPまたはLLDPEを用いた比較例1および2は、実施例1および2よりも熱伝導率の経時変化が大きいことが示された。比較例3および4は、初期熱伝導率が実施例1および2、ならびに比較例1および2と同等であったが、130℃環境下に置くと熱溶着層のデラミにより真空リークが発生した。このため、比較例3および4の130℃環境下、100時間以降の熱伝導率は、芯材単体の熱伝導率(35mW/mk)を示した(図6において図示せず)。
[比較例5]
(外包材の作製)
第2保護層として両面に易接着処理が施されたナイロンフィルム(ON35、厚み:35μm、製品名:エンブレム ONBC、ユニチカ株式会社製)の易接着面に、上記実施例1と同じ層間接着剤を塗布量3.5g/mとなるようにダイコーターを用いて塗布し乾燥させた。その後、第1保護層として両面を易接着処理されたPETフィルム(PET12、厚み:12μm、製品名:E5100、東洋紡株式会社製)を、層間接着剤が塗布された第2保護層の表面にラミネートした。
次に、得られた2層フィルムのPET12(第1保護層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/mで塗布し乾燥させた。バリア層としてAl箔(AL6、厚み:6μm、製品名:1N−30、UACJ製箔社製)を、層間接着剤が塗布された第1保護層の表面にラミネートした。
続いて、得られた3層フィルムのAL6(バリア層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/mで塗布し乾燥させた。内面側保護層としてPET12を、層間接着剤が塗布されたAL6(バリア層)の表面にラミネートした。
次に得られた、4層フィルムのPET12(内面側保護層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/mで塗布し乾燥させた。熱溶着層として未延伸ポリプロピレン(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社社製)を、層間接着剤が塗布されたPET12(内面側保護層)の表面にラミネートし、外包材を得た。
[比較例6]
第2保護層として、両面に易接着処理が施されたナイロンフィルム(ON25、膜厚:25μm、製品名:ONM、ユニチカ株式会社製)を用いた以外は、比較例5と同様にして外包材を得た。
[比較例7]
第2保護層を形成せず、熱溶着層として未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP30、厚み:30μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いた以外は、比較例5と同様にして外包材を得た。
[実施例3]
熱溶着層として、シクロオレフィンコポリマーフィルム(COC30、厚み:30μm、製品名:COXEC、倉敷紡績株式会社製)を用いた以外は、比較例7と同様にして外包材を得た。
[実施例4]
第1保護層および内面側保護層として両面にコロナ処理が施されたナイロンフィルム(ON15、厚み:15μm、製品名:N−1200、東洋紡株式会社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして外包材を得た。
[実施例5]
第1保護層として両面を易接着処理されたPETフィルム(PET16、厚み:16μm、製品名:PTMB、ユニチカ株式会社製)を用い、内面側保護層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして外包材を得た。
[実施例6]
第1保護層としてON25を用いた以外は実施例5と同様にして外包材を得た。
[比較例8]
熱溶着層として、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE30、厚み:30μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして外包材を得た。
[比較例9]
第1保護層および内面側保護層としてON25を用いた以外は、比較例8と同様にして外包材を得た。
[比較例10]
第1保護層および内面側保護層としてPET12を用いた以外は、比較例9と同様にして外包材を得た。
[評価2]
(外包材の関数Mの計算)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材について、厚みおよび引張弾性率を測定し、関数Mの値を計算した。
外包材の引張弾性率の測定方法は、JIS K7161に準拠し、上記外包材を幅15mm、長さ120mmに短冊状にカットした後、温度23℃、湿度55%の条件で、引張試験機としてテンシロン万能試験機RTC−1250Aを用いてチャック間距離100mm、引張速度100mm/minで引張弾性率を測定した。また、上記引張弾性率は、上記外包材の長手方向および短手方向のそれぞれの引張弾性率の平均値とした。
引張弾性率、厚み、および関数Mの値を下記表2に示す。
また、外包材の関数Mの値と後述する「バリア性能評価」で得られた酸素透過度との相関図を図7(a)に、外包材の関数Mの値と後述する「バリア性能評価」で得られた水蒸気透過度との相関図を図7(b)に示す。
[評価3]
(バリア性能評価)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材について、ゲルボフレックステスタ−により3回屈曲処理を実施後に、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
酸素透過度は、温度23℃、湿度60%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機(機種名、オクストラン(OX−TRAN))にて測定して評価した。また、水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機(機種名、パ−マトラン(PERMATRAN))にて測定して評価した。
各外包材の酸素透過度および水蒸気透過度を、下記表2に示す。
[評価4]
(外包材の構成材料の引張弾性率測定)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材の形成に用いたON35、PET12、CPP30およびCOC30、LLDPE30について、上記評価2の「外包材の関数Mの計算」の項に記載の外包材の引張弾性率の測定方法と同様の方法を用いて引張弾性率を測定した。結果を下記表3に示す。
表2より、関数Mの値が3.0MPa・mm以下である実施例3〜6および比較例6〜10の外包材は、関数Mの値が3.0MPa・mmよりも高い比較例5よりも、屈曲処理後の水蒸気バリア性及び酸素バリア性に優れたものであった。このことから、関数Mの値を3.0MPa・mm以下とした外包材は、屈曲に対する機械的強度に優れたものであることが確認された。
また、積層数が4層の実施例3と、積層数が3層の実施例5とを比較すると、積層数に因らず引張弾性率や関数Mが同程度であり、屈曲処理後の水蒸気バリア性及び酸素バリア性も同等であることから、引張弾性率が1.0GPa以上の熱溶着層を用いることにより、クラックの発生を抑制した状態で、外包材の層構成を少ないものとすることができることが確認できた。
上記のように、COCを主成分とする熱溶着層を用いることで、ガスや蒸気に対するバリア性能が、一般に熱溶着層に用いられる他の樹脂よりも高いことから、外包材は、表面のみならず端面からの蒸気およびガスの侵入をより防ぐことが示唆された。
1 … 熱溶着層
2 … バリア層
3 … 保護層
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
20 … 真空断熱材

Claims (5)

  1. 熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
    前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材用外包材。
  2. 前記真空断熱材用外包材の引張弾性率と前記真空断熱材用外包材の厚みの3乗との積が3.0MPa・mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
  3. 前記熱溶着層の引張弾性率が1.0GPa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材用外包材。
  4. 芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
    前記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
    前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材。
  5. 本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を少なくとも備える真空断熱材付き機器であって、
    前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
    前記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
    前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材付き機器。
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