JP2017149475A - 真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器 - Google Patents
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Abstract
Description
また、外包材の耐熱温度は、主に、熱溶着層の耐熱性により決定される。例えば、上記の外包材フィルムの耐熱温度は、熱溶着層となるHR−CPPフィルムが劣化しない上限温度である約125℃である。そのため、熱溶着層を構成する樹脂を選択することで、外包材の耐熱性を更に向上させ、真空断熱材全体での耐熱性の向上を図ることが可能である。例えば、上記特許文献1では、HR−CPPフィルムに代えて、HR−CPPよりも高融点を示すポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略する場合がある。)で構成されたPBTフィルムを熱溶着層として用いることで、外包材フィルムの耐熱温度を約181℃まで高めることが可能であるとしている。
ここで、PBTフィルムは、一般に熱溶着層に用いられる樹脂よりも融点が高く、また、延伸されているが故に、溶融温度も高い。このため、外包材をヒートシールする際に、PBTフィルムの溶融温度で加熱すると、保護層やバリア層等の他の機能層が熱ダメージを受けて劣化してしまうという問題がある。そして上記の問題から、保護層やバリア層は、上記溶融温度に耐え得る材質のものを選択しなければならず、材料選択の制限を受けることとなる。また、外包材のヒートシール作業が煩雑化し、加熱条件等によっては十分にシールされない場合がある。
なお、以下の説明において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」とする場合がある。また、「シクロオレフィンコポリマー」を「COC」と略する場合がある。
また、シクロオレフィンコポリマーを主成分とする熱溶着層は、従来公知の真空断熱材用外包材における熱溶着層よりも引張弾性率が高く、上記の機械的物性は、ヒートシールの際の加熱により更に高まることが推量される。このため、真空断熱材の製造の際に外包材同士をヒートシールすることで、上記熱溶着層の引張弾性率がさらに向上して機械的強度が高まるとともに、外包材全体では所望の柔軟性を有することができる。これにより、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に曲げ応力が掛る場合であっても、上記曲げ応力により上記外包材にクラックが発生するのを抑制することができる。
さらに、熱溶着層を構成するシクロオレフィンコポリマーは、ガスや蒸気に対するバリア性能、特に水蒸気に対するバリア性能が、熱溶着層に一般に用いられる他の樹脂よりも高いことから、本発明の外包材は、表面のみならず端面からの水蒸気の侵入を防ぐことができる。上記バリア性能は、ヒートシールの際に熱溶着層が加熱されることで更に高まると推量される。このため、本発明の外包材を用いた真空断熱材は、上記熱溶着層の有するバリア性能により封止端部から内部へ水蒸気が侵入するのを防ぐことができ、また、熱溶着層からの脱ガスも抑制されることから、長期間、内部の真空状態を保つことができる。このように、本発明の外包材は、断熱性能を長期間維持することが可能な真空断熱材を得ることができる。
本発明の真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とするものである。
このため、真空断熱材は、封止端部を十分に接着させて、外部からガスや蒸気が侵入しないようにする必要がある。また、芯材を封入する外包材は、外部のガスや蒸気に対して侵入を阻止するためのバリア性を有することが求められる。
なお、図3において外包材10を構成する各層については図示を省略する。
外包材において熱溶着層は、通常、バリア層と隣接する若しくはバリア層に近接した位置に配置されるが、バリア層はその組成から引張弾性率が熱溶着層よりも高い傾向にあるため、熱溶着層の引張弾性率が小さいと、バリア層との引張弾性率差が大きくなる。その結果、上記外包材にかかる曲げ応力により、バリア層にクラック等が発生しやすくなってしまう。
すなわち、熱溶着層が非晶質であるシクロオレフィンコポリマーを主成分に含むため、本発明の外包材は低温でヒートシールすることが可能である。このため、本発明の外包材を用いた真空断熱材の製造において、外包材同士をヒートシールして芯材を密閉する際に、他の機能層への熱ダメージを抑えることができる。加えて、ヒートシールに要する時間や熱エネルギーの削減を図ることができる。
以下、本発明の外包材の各構成について説明する。
本発明における熱溶着層はシクロオレフィンコポリマー(COC)を主成分とするものである。
上記熱溶着層は、上記外包材を用いて真空断熱材を形成する際に、芯材と接する部位であり、対向する外包材同士の周縁をヒートシールすることで形成される封止端部の、ヒートシール面(接着面)を担う部位である。すなわち、上記熱溶着層は、本発明の外包材において、一方の最外に位置する層となる。
ここで、酸変性シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンと共に、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物を加えて共重合することにより、或いは、環状オレフィンと直鎖または分岐オレフィンとの共重合体に対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
カルボン酸変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えば、炭素数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物が挙げられ、より具体的には、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
例えば、直鎖または分岐オレフィンがエチレンであり、環状オレフィンがノルボルネンである場合、直鎖または分岐オレフィンと環状オレフィンとの割合(モル比)としては、エチレン/ノルボルネン(モル比)が、70/30〜20/80程度、好ましくは65/35〜25/75程度、更に好ましくは60/40〜30/70程度とすることができる。
例えば、シクロオレフィンコポリマーが、エチレンとノルボルネンとの共重合体である場合、上記重量平均分子量としては、特に制限されないが、例えば、20000〜400000の範囲内、好ましくは30000〜200000の範囲内とすることができる。また、数平均分子量としては、特に制限されないが、例えば15000〜200000の範囲内、好ましくは20000〜100000の範囲内とすることができる。更に、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、例えば1.0〜5.0の範囲内、好ましくは1.0〜3.0の範囲内とすることができる。
例えば、シクロオレフィンコポリマーが、エチレンとノルボルネンとの共重合体である場合、上記ガラス転移温度としては、例えば65℃〜210℃の範囲内であることが好ましく、中でも75℃〜190℃の範囲内であることが好ましい。シクロオレフィンコポリマーのガラス転移温度を上記の範囲内とすることで、熱溶着層の耐熱性と強靭性が向上する、本発明の外包材をヒートシールした後の、熱膨張による破裂温度(耐熱破裂温度)が上昇する等、熱溶着層の特性をより一層向上させることができるからである。
上記ガラス転移温度は、ISO 11357に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
また、後述するように熱溶着層が、シクロオレフィンコポリマーに加え、ポリオレフィン等の他の樹脂成分を含む場合、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーは、上記他の樹脂成分との相溶性が良好となる。シクロオレフィンコポリマーと他の樹脂成分との相溶性が悪いと、延伸された熱溶着層は、他の層との界面でクラックが発生しやすくなる。また、ヒートシールの際の熱により上記界面での剥離やクラックが発生しやすくなる傾向を示す。
これに対し、メタロセン触媒を用いて共重合されたシクロオレフィンコポリマーを用いることで、他の樹脂成分を併用する際のこれらの不都合を解消することができる。
ここで、本発明における熱溶着層が、「シクロオレフィンコポリマーを主成分とする」とは、上記熱溶着層において、上述した本発明の作用効果を奏することが可能な程度の量のシクロオレフィンコポリマーが含有されていることをいい、具体的には、熱溶着層中にシクロオレフィンコポリマーが50質量%以上含まれていればよく、中でも75質量%以上含まれていることが好ましく、特に100質量%含まれていること、すなわち、上記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーのみからなることが好ましい。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレンポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;ポリメチルペンテン;環状オレフィン等が挙げられる。
カルボン酸変性に用いられるα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物については、上述のシクロオレフィンコポリマーのカルボン酸変性に用いられるものと同様とすることができる。
上記熱溶着層の引張弾性率を上述の範囲内とすることにより、本発明の外包材に曲げ応力が掛る場合であっても、バリア層へのクラックの発生をより効果的に抑制することができる。すなわち、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができる。また、上記真空断熱材に用いられる芯材からの突き刺しによるピンホールの発生を抑制できる。
なお、関数Mについては、後で詳細に説明する。
また、上記引張弾性率は、最低5個の試験片を用いて行い、得られた5個以上の引張弾性率の平均値を用いることができる。上記熱溶着層が長尺状である場合には、上記引張弾性率は、長手方向(巻きだし方向)および長手方向に直交する短手方向(幅方向)のそれぞれの引張弾性率の平均値を用いることができる。
なお、本明細書内において、引張弾性率は上記の方法で測定したものとする。
本発明におけるバリア層は、通常、熱溶着層と保護層との間に配置される。
上記バリア層は、酸素等の常温常圧で気体状態であるガスや、水蒸気やアルコール等の蒸気の透過を防ぐ機能(バリア性能)を有する。
上記バリア層の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、ガスや蒸気が透過しにくくなり、本発明の外包材を用いた真空断熱材において、外部から侵入するガスや蒸気を内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。
また、上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いてJIS K7129に従い測定することができる。上記水蒸気透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、パ−マトラン(PERMATRAN)を用いることができる。
本発明における保護層は、本発明の外包材において、バリア層に対し熱溶着層側とは反対側に位置する層であり、通常、本発明の外包材において他方の最外に位置する層である。
上記保護層は、本発明の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な機械的強度を有し、耐熱性、防湿性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。
また、上記保護層は、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層して多層としたものであってもよい。
本発明の外包材は、上記外包材を構成する各層が、直接接触して積層されていてもよく、層間接着剤を介して積層されていてもよい。層間接着剤については、一般に真空断熱材用の外包材に使用される接着剤を用いることができる。
本発明の外包材が透明性を有する場合、上記外包材を用いた真空断熱材は、その内部の視認が可能となる。このため、真空断熱材の内部に芯材と共に検知剤を入れることで、検知剤の変化から内部の真空状態を目視で確認することが可能となる。
本発明の外包材は、上記外包材の引張弾性率と上記外包材の厚みの3乗との積(関数M)が3.0MPa・mm3以下であることが好ましい。上記関数Mの値を所定の値以下とすることで、本発明の外包材を用いた真空断熱材やその封止端部に掛る曲げ応力により、屈曲部分においてバリア層にクラックが発生することを抑制することができるからである。
中でも関数Mが0.5MPa・mm3〜2.5MPa・mm3の範囲内であることが好ましく、特に0.5MPa・mm3〜2.0MPa・mm3の範囲内であることが好ましく、0.5MPa・mm3〜1.0MPa・mm3の範囲内であることがより好ましい。
すなわち、物体に対して応力を加えた場合の変形量については、物体が引張弾性率Eの特性を有し、その形状が幅b、厚みhの直方体であり、応力Fが加えられる位置が直方体状の物体を支持する端部から距離Lの位置である場合、その変形量vは、一般的にv=4FL3/(bEh3)で表わされる。
一方、上記外包材の引張弾性率Eと上記外包材の厚みhの3乗との積である上記関数Mは、M=Eh3で表わされ、上記変形量vとの間で、反比例の関係にある。このため、上記関数Mの値は、その値が小さいほど、同じ応力が加わった際の変形量が大きくなる関係になり、上記外包材の柔らかさの指標となる。
したがって、上記関数Mの値が所定の値以下であるとは、上記外包材が所定の柔軟性を有していることを示すものである。
このようなことから、上記関数Mの値が所定の値より大きく、上記外包材が硬い場合には、強い応力を加えないと上記外包材を屈曲させることができず、上記バリア層に機械的強度の弱い箇所が1点でもあると、その1点で屈曲しようと応力が集中してクラックが発生する。
一方、上記関数Mの値が所定の値以下であり、上記外包材が柔らかい場合には、上記外包材は小さい応力で屈曲できることから、上記バリア層に機械的強度の弱い箇所があるとしても、その強度の弱い箇所に応力が集中することなくその他の箇所でも屈曲が可能となり、応力を分散させることができると考えられる。そして、上記関数Mの値が所定の値より小さいものは、複数箇所に応力が分散され、多くの箇所で屈曲が生じる結果、上記屈曲部分に形成されるしわの数が、上記関数Mの値が所定の値より大きいものと比較して多くなるのである。
外包材の引張弾性率は、「1.熱溶着層」の項で説明した方法と同様の方法で測定することができる。
上記2つの隣接層の引張弾性率が、それぞれ上述の範囲内であることにより、上記バリア層と2つの隣接層との引張弾性率の差を小さくすることができる結果、上記バリア層へのクラックの発生をより効果的に抑制できるからである。
隣接層の引張弾性率は、「1.熱溶着層」の項で説明した方法と同様の方法で測定することができる。
なお、上記2つの隣接層には、バリア層と各層との間を接着する層間接着剤層は含まない。
本発明の外包材の製造方法は、一方の最表層に保護層を有し、他方の最表層に熱溶着層を有するようにして各層を積層することが可能な方法であれば特に限定されず、公知の積層方法を用いることができる。
例えば、予め成膜した各層を上述した層間接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させた各層の材料をTダイ等で押出しして貼り合せ、得られた積層体に層間接着剤を介して熱溶着層を貼り合せて形成する方法等が挙げられる。
次に、本発明の真空断熱材について説明する。本発明の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材は、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明したものであることを特徴とするものである。
以下、本発明の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
本発明における真空断熱材用外包材は、上記芯材を封入するものであり、上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明したものである。
ここで、上記外包材が芯材を封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に、芯材が密封されることをいうものである。
本発明における外包材の詳細については、上記の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
本発明における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。
上記芯材は、熱伝導度の低いものであることが好ましく、中でも空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。熱伝導率の低い芯材とすることができるからである。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
本発明の真空断熱材は、上記外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
上記熱伝導率は、JIS A1412−3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、例えば熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を用いることができる。
本発明の真空断熱材は、従来公知の方法を用いて製造することができる。例えば、予め上述の「A.真空断熱材用外包材」の項で説明した外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着層が内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置する。製袋機等によって重なった2枚の上記外包材の外周の一方を開口部とし、残り三方をヒートシールする。これにより、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体が得られる。次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
本発明の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温下においても断熱性および耐久性に優れるものである。従って、本発明の真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。
具体的な用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き機器」で説明する機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
本発明の真空断熱材付き機器は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を少なくとも備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、上述の「B.真空断熱材」の項で説明したものであることを特徴とするものである。
(真空断熱材用外包材の作製)
保護層/バリア層/熱溶着層の層構成を有する外包材を作製した。COCフィルム(COC30、厚み:30μm、製品名:COXEC、倉敷紡績株式会社製)を熱溶着層として、アルミニウム箔(AL6、厚み:6μm、製品名:1N−30、UACJ製箔社製)をバリア層として、PETフィルム(PET16、厚み:16μm、製品名:PTMB、ユニチカ株式会社製)を保護層として用いた。
上記各層は、下層となる層の面上に層間接着剤(製品名:LX500/KR−90S、DICグラフィックス株式会社製)を、塗布量3.5g/m2となるようにダイコーターを用いて塗布して乾燥させ、上層となる層をラミネートすることにより積層した。
得られた外包材を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作成した。芯材としてグラスウール(外寸:300mm×300mm×30mm)を用い、乾燥処理(145℃で1時間)を行った後、上記袋体に上記芯材および吸着剤を収納して、上記袋体内部を真空排気した。その後、上記袋体の開口部分をヒートシールにより密封して、真空断熱材を得た。封止圧力は0.05Paとした。
第2保護層/第1保護層/バリア層/熱溶着層の層構成を有する外包材を作製した。ナイロンフィルム(ON25、厚み:25μm、製品名:ハーデンフィルムN1102、東洋紡株式会社製)を第2保護層とし、PETフィルム(PET12、厚み:12μm、製品名:E5100、東洋紡株式会社製)を第1保護層として用いた。上記以外は、実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
熱溶着層として、CPPフィルム(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
熱溶着層として、CPPフィルム(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例2と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例2と同様に真空断熱材を作製した。
熱溶着層として、LLDPEフィルム(LLDPE50、厚み:50μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例1と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例1と同様に真空断熱材を作製した。
熱溶着層として、LLDPEフィルム(LLDPE50、厚み:50μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ株式会社製)を用いたこと以外は上記実施例2と同様に外包材を作製し、得られた外包材を用いて実施例2と同様に真空断熱材を作製した。
実施例1〜2および比較例1〜4で得られた真空断熱材について、90℃および130℃のそれぞれの環境下における熱伝導率の経時変化を測定した。各真空断熱材の熱伝導率は、JIS A1412−3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(英弘精機製 HC−074)を用いた。90℃の測定結果および130℃の測定結果を、それぞれ図5および図6に示す。
外包材の層構成は実施例1および2と同じでも、熱溶着層としてCPPまたはLLDPEを用いた比較例1および2は、実施例1および2よりも熱伝導率の経時変化が大きいことが示された。比較例3および4は、初期熱伝導率が実施例1および2、ならびに比較例1および2と同等であったが、130℃環境下に置くと熱溶着層のデラミにより真空リークが発生した。このため、比較例3および4の130℃環境下、100時間以降の熱伝導率は、芯材単体の熱伝導率(35mW/mk)を示した(図6において図示せず)。
(外包材の作製)
第2保護層として両面に易接着処理が施されたナイロンフィルム(ON35、厚み:35μm、製品名:エンブレム ONBC、ユニチカ株式会社製)の易接着面に、上記実施例1と同じ層間接着剤を塗布量3.5g/m2となるようにダイコーターを用いて塗布し乾燥させた。その後、第1保護層として両面を易接着処理されたPETフィルム(PET12、厚み:12μm、製品名:E5100、東洋紡株式会社製)を、層間接着剤が塗布された第2保護層の表面にラミネートした。
次に、得られた2層フィルムのPET12(第1保護層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/m2で塗布し乾燥させた。バリア層としてAl箔(AL6、厚み:6μm、製品名:1N−30、UACJ製箔社製)を、層間接着剤が塗布された第1保護層の表面にラミネートした。
続いて、得られた3層フィルムのAL6(バリア層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/m2で塗布し乾燥させた。内面側保護層としてPET12を、層間接着剤が塗布されたAL6(バリア層)の表面にラミネートした。
次に得られた、4層フィルムのPET12(内面側保護層)面に、同様に層間接着剤を塗布量3.5g/m2で塗布し乾燥させた。熱溶着層として未延伸ポリプロピレン(CPP50、厚み:50μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社社製)を、層間接着剤が塗布されたPET12(内面側保護層)の表面にラミネートし、外包材を得た。
第2保護層として、両面に易接着処理が施されたナイロンフィルム(ON25、膜厚:25μm、製品名:ONM、ユニチカ株式会社製)を用いた以外は、比較例5と同様にして外包材を得た。
第2保護層を形成せず、熱溶着層として未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP30、厚み:30μm、製品名:3301、東レフィルム加工株式会社製)を用いた以外は、比較例5と同様にして外包材を得た。
熱溶着層として、シクロオレフィンコポリマーフィルム(COC30、厚み:30μm、製品名:COXEC、倉敷紡績株式会社製)を用いた以外は、比較例7と同様にして外包材を得た。
第1保護層および内面側保護層として両面にコロナ処理が施されたナイロンフィルム(ON15、厚み:15μm、製品名:N−1200、東洋紡株式会社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして外包材を得た。
第1保護層として両面を易接着処理されたPETフィルム(PET16、厚み:16μm、製品名:PTMB、ユニチカ株式会社製)を用い、内面側保護層を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして外包材を得た。
第1保護層としてON25を用いた以外は実施例5と同様にして外包材を得た。
熱溶着層として、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE30、厚み:30μm、製品名:TUX−HCE、三井化学東セロ社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして外包材を得た。
第1保護層および内面側保護層としてON25を用いた以外は、比較例8と同様にして外包材を得た。
第1保護層および内面側保護層としてPET12を用いた以外は、比較例9と同様にして外包材を得た。
(外包材の関数Mの計算)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材について、厚みおよび引張弾性率を測定し、関数Mの値を計算した。
外包材の引張弾性率の測定方法は、JIS K7161に準拠し、上記外包材を幅15mm、長さ120mmに短冊状にカットした後、温度23℃、湿度55%の条件で、引張試験機としてテンシロン万能試験機RTC−1250Aを用いてチャック間距離100mm、引張速度100mm/minで引張弾性率を測定した。また、上記引張弾性率は、上記外包材の長手方向および短手方向のそれぞれの引張弾性率の平均値とした。
引張弾性率、厚み、および関数Mの値を下記表2に示す。
また、外包材の関数Mの値と後述する「バリア性能評価」で得られた酸素透過度との相関図を図7(a)に、外包材の関数Mの値と後述する「バリア性能評価」で得られた水蒸気透過度との相関図を図7(b)に示す。
(バリア性能評価)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材について、ゲルボフレックステスタ−により3回屈曲処理を実施後に、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
酸素透過度は、温度23℃、湿度60%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機(機種名、オクストラン(OX−TRAN))にて測定して評価した。また、水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機(機種名、パ−マトラン(PERMATRAN))にて測定して評価した。
各外包材の酸素透過度および水蒸気透過度を、下記表2に示す。
(外包材の構成材料の引張弾性率測定)
実施例3〜6および比較例5〜10で得た外包材の形成に用いたON35、PET12、CPP30およびCOC30、LLDPE30について、上記評価2の「外包材の関数Mの計算」の項に記載の外包材の引張弾性率の測定方法と同様の方法を用いて引張弾性率を測定した。結果を下記表3に示す。
また、積層数が4層の実施例3と、積層数が3層の実施例5とを比較すると、積層数に因らず引張弾性率や関数Mが同程度であり、屈曲処理後の水蒸気バリア性及び酸素バリア性も同等であることから、引張弾性率が1.0GPa以上の熱溶着層を用いることにより、クラックの発生を抑制した状態で、外包材の層構成を少ないものとすることができることが確認できた。
上記のように、COCを主成分とする熱溶着層を用いることで、ガスや蒸気に対するバリア性能が、一般に熱溶着層に用いられる他の樹脂よりも高いことから、外包材は、表面のみならず端面からの蒸気およびガスの侵入をより防ぐことが示唆された。
2 … バリア層
3 … 保護層
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
20 … 真空断熱材
Claims (5)
- 熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材用外包材。 - 前記真空断熱材用外包材の引張弾性率と前記真空断熱材用外包材の厚みの3乗との積が3.0MPa・mm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
- 前記熱溶着層の引張弾性率が1.0GPa以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材用外包材。
- 芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
前記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材。 - 本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を少なくとも備える真空断熱材付き機器であって、
前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
前記真空断熱材用外包材は、熱溶着層、バリア層および保護層を有し、
前記熱溶着層がシクロオレフィンコポリマーを主成分とすることを特徴とする真空断熱材付き機器。
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