JP5644357B2 - 樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層 - Google Patents

樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層 Download PDF

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Description

本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性の樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層に関し、より詳細には、内容物の吸着量が低減され、薬効成分の有効量を高く維持することができ、且つ、ヒートシール性に優れ、さらに、成膜が容易である樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層に関する。
従来、包装袋や蓋材等の包装材の最内層には、ヒートシール性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMA等のコポリマー樹脂が使用されている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、種々の有機化合物を吸着し易いことが知られている。したがって、これらの樹脂を最内層、すなわち内容物と接する層として有する包装材は、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装には不適であり、あらかじめ内容物中に有効成分を多めに含ませる等の対策が必要である。
そこで、ヒートシール性を有しながら、有効成分を吸着しにくいシーラント層の開発がなされている。代表的には、アクリロニトリル系樹脂からなる非吸着性シーラント層を最内層とする包装材が使用されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロニトリル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、また高価であるため、より好ましい非吸着性シーラントの開発が求められている。
これに対し、例えば特許文献2には、最内層が、アルミニウム箔または無機物の蒸着膜で形成される非吸着性包装材が開示されている。前記包装材は、前記アルミニウム箔や蒸着膜に部分的に接着性樹脂層を形成することで製袋して使用されている。接着性樹脂層としては、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂などが開示されている。しかしながら、このような包装材は、その製造工程が複雑である。
特開平7−132946号公報 特開平10−45176号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、内容物を吸着しにくくしたものである。すなわち非吸着性に優れ、且つ、ヒートシール性に優れ、さらに、成膜が容易である非吸着性の樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層を提供することを目的とする。
本発明者は、種々研究の結果、基材層上にシーラント層を形成するための、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含む環状ポリオレフィン系樹脂組成物であって、該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在することを特徴とする、シーラント層を形成するための環状ポリオレフィン系樹脂組成物、及びそれよりなる包装材用シーラント層が、上述の目的を達成することを見出した。
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.基材層上にシーラント層を形成するための、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含む環状ポリオレフィン系樹脂組成物であって、
該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在することを特徴とする、シーラント層を形成するための環状ポリオレフィン系樹脂組成物。
2.上記1記載の環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる環状ポリオレフィン系樹脂組成物層と、それに隣接して積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層とを有することを特徴とする、包装材用シーラント層。
3.基材層上に共押出コーティングして形成されることを特徴とする、上記2に記載の包装材用シーラント層。
4.オレフィン系樹脂がエチレンであることを特徴とする、上記2又は3に記載の包装材用シーラント層。
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる包装材用シーラント層は、種々の有機化合物、例えばl−メントールやサリチル酸メチル等の薬効成分を吸着しにくい。また、上記のとおり、主成分として含まれる環状ポリオレフィン系樹脂が高い分子間力を発揮するため、分子間の距離が近い密な表面構造を有する。したがって、低分子量成分の溶出を抑制できるため、保香性にも優れ、また包装材の最内層を形成するのに十分なヒートシール性を示す。
また、一般的に、環状ポリオレフィン系樹脂は、その溶融成膜時に、高い分子間力が働き、ポリマー間で凝集を引き起こすことが知られている。その結果、膜の至る所で樹脂が凝集して瘤状のゲル塊を形成し、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、インフレーション法による成膜時には一層顕著になり、該法により得られる環状ポリオレフィン系樹脂膜は、その表面全体に無数のゲル塊が発生する。
しかしながら、本発明に従って、環状ポリオレフィン系樹脂に流度の高いオレフィン系樹脂を混合することによって、環状ポリオレフィン系樹脂の分子同士の不均一な凝集が抑制される。したがって、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、成膜が容易であり、均質で、良好な透明性を有する美麗な膜を形成することができる。また、インフレーション法による高速成膜時にも同様の効果を得ることができる。
さらに、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる環状ポリオレフィン系樹脂組成物層と、それに隣接して積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層とを有する包装材用シーラント層を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層側の表面を任意の基材層と対向させて積層することにより、優れた層間密着性及びシール強度を有する包装材用積層体が得られる。そして、この包装材用積層体を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が最内層となるように製袋して得られる包装袋や包装容器は、良好な耐衝撃性を示す。
また、本発明の包装材用シーラント層は、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層とを共押出により成膜することにより、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層との層間密着性、及び成膜の安定性が一層高まる。
本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1> 本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体の層構成
図1は、本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
本発明の包装材用シーラント層を有する包装材用積層体としては、図1に示すように、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層1及びそれに隣接して積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層2からなる包装材用シーラント層Aと、任意の基材層Bとを有する積層体を挙げることができる。この積層体において、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層1が、最表層を形成し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層2側の表面が、基材層Bと対向する。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
<2> 環状ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含むものである。
環状ポリオレフィン系樹脂
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(COP)、及び、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、すなわち環状オレフィンコポリマー(COC)を包含する。
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。環状オレフィンは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、上記の環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
本発明において、環状オレフィンコポリマーの製造は、25〜45モル%のα−オレフィンと、55〜75モル%の環状オレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
本発明において好適に使用される開環メタセシス重合体及び環状オレフィンコポリマーは、いくつか市販されており、例えば日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR(R)」やポ
リプラスチック株式会社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
オレフィン系樹脂
環状ポリオレフィン系樹脂に、高流度のオレフィン系樹脂を混合することにより、成膜時の環状ポリオレフィン系樹脂同士の凝集によるゲル塊の発生を防ぎ、均一な膜表面を得ることができる。
本発明において、オレフィン系樹脂としては、190℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10分、好ましくは10〜35g/10分、さらに好ましくは15〜30g/10分である任意のオレフィン系樹脂を使用することができる。
メルトフローレートが5g/10分より小さいと、環状ポリオレフィン系樹脂に適切な流動性を与えることができず、ゲル塊の発生を防ぐことができない。
一方、メルトフローレートが40g/10分より大きいと、成膜適性が失われ、均一なフィルムを得ることが困難となる。
なお、本発明において、メルトフローレートは、JIS−K−7210(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定する。
オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
具体的には、日本ポリエチレン株式会社製の「ノバテック(R)」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物において、オレフィン系樹脂は、該樹脂組成物中に3〜50質量%、好ましくは5〜10質量%の比率で配合される。
また、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を含んでもよい。
混合物全体に対して、オレフィン系樹脂の配合比率が3質量%未満であると、環状ポリオレフィン系樹脂に適切な流動性を与えることができず、ゲル塊の発生の原因となる。
一方、配合比率が50質量%より多いと、環状ポリオレフィンの有する非吸着性が損なわれ、また、透明性が低下する。
<3> 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる環状ポリオレフィン系樹脂組成物層上に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を積層することにより、非吸着性の包装材用シーラント層が得られる。
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を形成する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒から得ることができる、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのコポリマーである。ここで、炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、などが挙げられる。これらモノマーを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法を用いて重合する。通常は、短鎖分岐として炭素数1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超えるような長鎖分岐は有しない。通常、直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製された直鎖状低密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
本発明において使用するのに好適な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、住友化学
株式会社製の「スミカセン」等が挙げられる。
さらに、本発明において、上記のような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
<4> 基材層
本発明の包装材用シーラント層を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層側の表面を任意の基材層と対向させて積層することにより、優れた層間密着性及びシール強度を有する包装材用積層体が得られる。
ここで用いる基材層としては、基材フィルム単独、又は基材フィルム上にガスバリア層を設けたガスバリア性フィルム、等を使用することができる。
基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの二軸延伸フィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの二軸延伸フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムを好適に使用できるほか、防湿セロハン、合成紙、紙なども使用することができる。 これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて積層して使用することもできる。
また、ガスバリア層は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズなどの無機酸化物やアルミニウムなどの金属の蒸着層であってよい。または、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロンMXD6、ポリアクリロニトリル(PAN)などのフィルムのほか、アルミニウム箔などの金属フィルム、或いは、PVDCやポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)などの塗膜層を設けた二軸延伸ナイロンフィルム(ONフィルム)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)などのガスバリアフィルムを、接着剤層を介して基材フィルム上に貼り合せたものであってもよい。
ガスバリア層の積層方法としては、ガスバリア層が蒸着層である場合は、化学気相成長法及び物理気相成長法等の任意の蒸着法によって、基材フィルム上に積層される。蒸着層の層厚は、適宜に設定することができるが、好適には、約5〜100nmの範囲である。
ガスバリア層がガスバリアフィルムである場合は、接着剤層を介して基材フィルム上に貼り合せることによって積層される。貼り合せに使用する接着剤としては、任意のものを用いることができるが、押出ラミネート法(いわゆる、サンドイッチラミネート法)で貼り合わせる場合は、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、低密度ポリエチレンなどを単独で使用するか、またはこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使用することができる。
また、基材フィルムとガスバリアフィルムとをドライラミネート法で貼り合わせてもよく、その場合は接着剤として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。
基材層上に本発明の包装材用シーラント層を積層する前に、または基材フィルム上にガスバリア層を積層する前に、層間密着性を高めるために、必要に応じて、これらの層が積層される側の面に任意の表面前処理を行ってもよい。このような表面前処理としては、例えば、該面に、あらかじめアンカーコート剤層を設けること等が挙げられる。
本発明において好適に使用されるアンカーコート剤としては、特に限定されないが、慣用の有機チタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤(ウレタン系)、ポリブタジエン系アンカーコート剤のほか、ポリオレフィン共重合体を水に分散した水性ポリオレフィン共重合体系アンカーコート剤等が挙げられる。
<5> 製造方法
本発明の包装材用シーラント層の製造は、任意の方法によりなされるが、成膜安定性の観点から好ましくは、共押出コーティング法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを、基材層上に共押出コーティングすることにより形成するか、又は、溶融共押出法(例えばTダイ法、インフレーション法)等の成膜法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを共押出して多層シーラントフィルムを製造し、これを基材層とラミネートする。
基材層上に共押出コーティングするか、又は多層シーラントフィルムを基材層とラミネートする際に、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層側の面と基材層とを対向させて積層する。
特に、共押出コーティングすることにより、基材層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、及び、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層間の密着性が高まり、一層高いシール強度を示すシーラント層を提供することができる。
<6> 層厚
本発明の包装材用シーラント層は、任意の層厚を有するものであってよいが、安定した成膜化及び製品コストの観点から好適には、全体として12〜150μmの層厚を有する。ここで、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の厚さは、包装材の用途に応じて適宜に設定することができるが、安定した成膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層厚は、望ましくは2〜30μmであり、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の層厚は、望ましくは10〜120μmである。
<7> 使用
本発明の包装材用シーラント層を使用し、これが最表層となるように、基材層上に積層し、積層体を製造することができる。
また、このようにして得られた積層体を、本発明のシーラント層が最内層となるように製袋して、包装袋とすることができる。また、該積層体を、本発明のシーラント層を最内層とする蓋材として使用し、包装容器を製造することができる。
本発明の包装材用シーラント層は、優れた非吸着性を示し、且つ良好なヒートシール性を示す。したがって、これを有する積層体や包装袋、包装容器は、特に、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装のために、例えば、貼付剤の外袋、散剤の分包袋、顆粒剤のスティック袋として、好適に使用することができる。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
(1)環状オレフィンコポリマー(ポリプラスチックス(株)製TOPAS(R)8007−F04;メルトフローレート1.9g/10分(190℃);密度1.02g/cm3)90質量%、及び、低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックM6525;メルトフローレート28.0g/10分(190℃);密度0.916g/cm3)10質量%を含む混合物を十分に混練して、本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。
(2)基材フィルムとして、2軸延伸ポリエステルフィルム(PET;東洋紡績(株)製エスペット(R)T4102;厚さ12μm)を用い、その一方の面上に接着剤(ロックペイント(株)製ロックボンドJ/アドロック、RU77T/H−7;配合比10/1)を、版深90μmの斜線版を用いて塗工量3.0g/m2で塗布し、厚さ7μmのアルミ箔(日本製箔(株)製A1N30H−O)と貼り合せた後、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させて、基材層を製造した。
(3)上記で得られた基材層のアルミ箔を設けた面に、アンカーコート剤(三井化学(株)製タケラック/タケネート、A−3210/A−3075;配合比3/1)を、版深20μmの斜線版を用いて塗工量0.4g/m2で塗布した。
(4)次いで、このアンカーコート剤の塗布面に、本発明の包装材用シーラント層を形成した。すなわち、該塗布面上に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCW8003;メルトフローレート8.0g/10分(190℃);密度0.914g/m3)、及び、上記(1)で調製した本発明の環状ポリオレフィン系樹脂組成物を、共押出コーティング法によりこの順で積層した。これにより、本発明の包装材用シーラント層を有する積層体が得られた。得られた積層体の層構成は以下のとおりであった:
基材フィルム/接着剤/アルミ箔/アンカーコート剤/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(30μm)/環状ポリオレフィン系樹脂組成物層(10μm)
[実施例2]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=95:5(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、本発明の包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例1]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=98:2(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例2]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=40:60(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例3]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=100:0(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例4]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、環状オレフィンコポリマーと混合するオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレン(メルトフローレート28.0g/10分)の代わりに、異なるメルトフローレートを有する低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLC522;メルトフローレート4.0g/10分(190℃);密度0.923g/cm3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例5]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の代わりに、低密度ポリエチレン樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックM6555;メルトフローレート55.0g/10分(190℃);密度0.917g/cm3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、包装材用シー
ラント層を有する積層体を製造した。
[比較例6]
シーラント層の形成において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の代わりに、非直鎖状の低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCE4009;メルトフローレート7.0g/10分(190℃);密度0.920g/m3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[比較例7]
実施例1と同様にして基材層を製造し、アンカーコート剤を塗布した。
次いで、このアンカーコート剤の塗布面に、シーラント層として、低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCE4009;メルトフローレート7.0g/10分(190℃);密度0.920g/m3)を、押出コーティングにより、厚みが40μmとなるように積層して、包装材用シーラント層を有する積層体を製造した。
[評価方法・結果]
(1)吸着性試験
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体を10cm×10cm四方に切り取り、その初期重量を測定した。
容積10リットルのステンレス容器内にl−メントール固体10gを入れ、蓋をして容器内をl−メントール蒸気で満たし、その中に、切り取った積層体を吊り下げて、40℃で7日間保管した。
保管後、積層体を取り出して、重量を測定し、初期重量との差から、l−メントールの吸着量を算出した。
(2)シール強度試験
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体を、シーラント層が最内層となるように重ね合せ、ヒートシーラー(テスター産業(株)製TP-701S HEAT SEAL TESTER)で、160℃で1秒間、圧力1kgf/cm2でヒートシールした。
次いで、これを幅15mmの短冊状に切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて圧着されたシール部を引き剥がし、シール強度を測定した。このときの引張速度は300mm/分とした。
(3)フィルム外観評価
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体のシーラント層の外観を検査し、ゲル塊の有無及び表面の平滑性について確認を行った。ゲル塊が見られず、平滑な表面が得られた場合は「良」とし、ゲル塊が見られたり、不均一な表面が得られたりした場合は「悪」と判定した。
以下の表に結果を示す。
Figure 0005644357
A 包装材用シーラント層
B 基材層
1 環状ポリオレフィン系樹脂組成物層
2 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層

Claims (3)

  1. 環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる環状ポリオレフィン系樹脂組成物層と、それに隣接して積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層とを有する包装材用シーラント層であって、
    該環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含み、
    該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが10〜40g/10分であって、且つ、該環状ポリオレフィン系樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在し、
    該環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、積層体における内容物と接する側の最表層であって内容物に対して非吸着性を有する上記包装材用シーラント層。
  2. 基材層上に共押出コーティングして形成されることを特徴とする、請求項に記載の包装材用シーラント層。
  3. オレフィン系樹脂がエチレンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の包装材用シーラント層。
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