以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のシートスライドロック装置の一実施形態の平面図、図2は、図1のシートスライドロック装置の側面図、図3は、シートスライドロック装置の操作部材を省略した状態の左スライド部の側面図、図4は、図3の底面図、図5は、図3の拡大した背面図である。尚、図1のX方向を前方側とし、Y方向を後方側として説明する。
本発明のシートスライドロック装置は、アッパーレール2がロアレール1に対してスライドするのを適宜ロック及びアンロック(ロック解除)するもので、この実施形態では、車両としての自動車用のものとされている。
この実施形態のシートスライドロック装置は、図1〜図5に示すように、車両用シート、例えば運転者用シートの左下方側に配設される左スライド部10aと、運転者用シートの右下方側に配設される右スライド部10bとを備えている。
これらの左スライド部10aと右スライド部10bとは、左右対称をなすように配設されている。以下、左スライド部10aについて説明し、右スライド部10bの説明を省略する。
左スライド部10aは、図3〜図5に示すように、ロアレール1と、アッパーレール2と、ロック部材3と、ロック解除操作部材7とを備えている。
ロアレール1は、長尺状のものから構成されており、その長手方向を自動車の前後方向に沿わすようにして自動車のフロアに固定される。このロアレール1は、図5に示すように互いに左右方向に距離を持って対向配置された第1壁としての左側壁11及び第2壁としての右側壁12と、それらの両側壁の下端側(基端側)を連結した第3壁としての底壁13とを備えている。
この実施形態では、左側壁11と右側壁12とは、底壁13の左端縁、右端縁それぞれから上方に折り曲げ成形されている。又、これらの左側壁11及び右側壁12は、それぞれ、上端から内側に折り返された折り返し片10を備えている。
又、底壁13は、図4に示すように後述のロック部材3の第1ロック片4を入り込ませるための複数の四角形状の開口係止部としてのロック孔14、15を備えている。また、この実施形態のロック孔は、複数の短ロック孔14と、複数の長ロック孔15との前後長さの異なる2種類のものから構成されている。
これらの短ロック孔14と長ロック孔15とは、この実施形態では、底壁13の上面から下面に貫通するようにあけられた孔から構成されている。
各短ロック孔14の前後長さ及び左右幅は、後述の第1ロック片4のロック爪部41の前後長さ(厚さ)及び左右幅と略同じに形成されており、ロック爪部41が短ロック孔14それぞれに出入りできるようになっている。
各長ロック孔15の左右の幅W10は、短ロック孔14のそれと略同じであるが、前後の長さは、短ロック孔14の前後長さの略2倍、即ち、後述の各第1ロック片4のロック爪部41の前後長さの略2倍に形成されており、長ロック孔15それぞれに、2つの第1ロック片4のロック爪部41が同時に出入りできるようになっている。
そして、短ロック孔14と長ロック孔15とは、底壁13の長手方向に沿って交互に並設されている。又、互いに隣り合う短ロック孔14と長ロック孔15との距離がその短ロック孔14の前後長さ、即ち第1ロック片4のロック爪部41の前後長さと略同じに設定されている。
アッパーレール2は、ロアレール1とほぼ同じ長さの長尺状のものから構成されており、自動車のシート(図示せず)に固定的に取り付けられてロアレール1の長手方向に沿ってスライド可能に配置される。そして、アッパーレール2がロアレール1をスライドすることにより、自動車のシートが前後方向に移動可能とされる。
このアッパーレール2は、図5に示すように左右方向に距離を持って対向配置された第1壁としての左側壁21及び第2壁としての右側壁22と、それらの上端側(基端側)を連結した上壁23とを備えている。
又、この実施形態では、左側壁21と右側壁22とは、上壁23の左右両端から下方に折り曲げ成形されているとともに、その下先端側から外側上方に折り曲げられた折り返し片26を備えている。
又、左側壁21と右側壁22とは、それぞれ、長手方向(前後方向)に距離をもって形成された前後一対の第1係止孔25を備えている。また、左側壁21と右側壁22とは、それぞれ、その下方側に、第2係止孔27を備えている。
上壁23は、図6に示すようにロック片挿通用孔23aと、ロック片挿通用孔23aの前後両側それぞれに形成された前がたつき防止用孔23bと後がたつき防止用孔23cとを備えている。
ロック片挿通用孔23aは、図9に示すように、長方形状のものから構成されており、後述の第1ロック片4の第1挿通部48が上下移動可能に挿通される。
又、このアッパーレール2は、上記ロアレール1と同様に、その左側壁21と右側壁22と上壁23との少なくとも1つは(この実施形態では、全部)、弾性を有するものから構成されている。
又、図5に示すようにアッパーレール2における左側壁21と右側壁22との間の下方側には、壁間開口部24が形成されている。そして、この壁間開口部24は、壁間開口部24の開口幅を広げるような外力がかかると、左側壁21と右側壁22と上壁23とが撓んでその開口幅が押し広げられ、その外力が除去されると、弾性によって元の幅に復元する。
次に、ロック部材3について説明する。このロック部材3は、図8に示すように、複数(この実施形態では5つ)のロック片4と、ロック片4を保持した保持部材とを備えている。
ロック片は、この実施形態では、同一構成を採る5つの第1ロック片4により構成されている。
各第1ロック片4は、下部側に、後述の保持部材の保持用挿通孔8に上下移動可能に挿通される第2挿通部46と、第2挿通部46の下方側にロアレール1のロック孔14、15に出入りするロック爪部41とを備えている。
第2挿通部46は、図10に示すように四角柱状のロック片本体部46aと、突片46bとから構成されている。突片46bは、厚さt1がロック片本体部46aの厚さt2よりも薄く、ロック片本体部46aの幅方向の左右の両側面のそれぞれの前後中央部に、各側面から幅方向に突設されている。
ロック爪部41は、この実施形態では、図8に示すように、下方側に漸次厚さが薄くなるテーパ部を備え、このテーパ部によって、ロアレール1のロック孔14、15に出入りし易いようになっている。尚、この実施形態では、突片46bがロック爪部41の下端まで延されている。従って、この実施形態では、ロック爪部41の幅は第2挿通部46の幅と略同じになっている。尚、突片46bは、ロック爪部41の下端まで延される形態のものに限らず、第2挿通部46にのみ配設されたものでもよく、適宜変更し得る。
又、第1ロック片4は、その上部側に、上記アッパーレール2のロック片挿通用孔23aに上下移動可能に挿通される第1挿通部48と、その第1挿通部48の上方側に後述のロック解除操作部材に引き上げ操作される被操作部42とを備えている。
このように構成された5つの第1ロック片4は、図8〜図10に示すように、それぞれの厚さ方向をアッパーレール2の長手方向に沿わすようにして1列状に並設される。
保持部材は、図8に示すように第1ロック片4を上下移動可能に保持した保持枠5と、保持枠5を支持したブラケット6とを備えている。
ブラケット6は、前後方向に距離を持って対向配置された前後一対の第1片61及び第2片62と、これらの下端側(基端側)を連結した連結片63とを備えている。この実施形態では、所定厚さの一枚の板状体の前後両側部を上方に折り曲げ成形することにより、第1片61、第2片62及び連結片63が形成されている。
第1片61と第2片62とは、それぞれ、その左右の幅方向の両端に、左方向、右方向のそれぞれに突設された第1レール係止片65を備えている。
これらの第1レール係止片65それぞれの前後長さは、上記アッパーレール2の第1係止孔25の前後長さと同程度に設定されている。第1レール係止片65同士の距離は、アッパーレール2の第1係止孔25同士の距離と同程度に設定されており、第1レール係止片65が第1係止孔25それぞれに入り込めるようになっている。
又、第1片61と第2片62とは、それぞれ、その先端側に、アッパーレール2に対する保持部材のがたつきを防止するための第1がたつき防止部64a、第2がたつき防止部64bを備えている。これらの第1及び第2がたつき防止部64a、64bは、それらの互いの前後の距離を小さく又は大きくする方向の外力がかかると、第1片61と第2片62と連結片63との少なくとも1つ(この実施形態では、全部)が撓んで(弾性に抗して)その距離が小さく又は大きくなる。そして、その外力が除去されると、がたつき防止部64a、64bは、弾性によって復元して元の距離に戻るように構成されている。
この実施形態では、第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとの前後方向の距離は、外力が付与されていない通常状態で、アッパーレール2の前がたつき防止用孔23bと後がたつき防止用孔23cとの距離(前がたつき防止用孔23bを区画形成した前内側面と後がたつき防止用孔23cを区画形成した後内側面との距離、図6参照)より大きくなるように設定されている。
そして、第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとが、その前後の距離を小さくする方向の外力がかかると、第1片61と第2片62と連結片63とが弾性に抗して撓んでその距離を狭めてアッパーレール2の前がたつき防止用孔23b、後がたつき防止用孔23cそれぞれに入り込むようになっている。
また、この実施形態では、第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとには、それぞれ、先端側(上端側)に行くに従い、漸次互いの距離が小さくなるように形成された傾斜面からなる案内部64cが設けられている。この案内部64cによって、第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとがアッパーレール2の前がたつき防止用孔23b、後がたつき防止用孔23cそれぞれに入る際に入り込み易いようになっている。
連結片63は、図8に示すように第1ロック片4を下方に通す保持用挿通孔8と、左右の幅方向の両端側のそれぞれに、幅方向に突設された第2レール係止片67とを備えている。
保持用挿通孔8は、図10に示すように、1つの本体挿通孔81と、複数の突片挿通孔82とを備えている。本体挿通孔81は、平面視で前後方向に長い矩形状を呈しており、5つの第1ロック片4の第2挿通部46におけるロック片本体部46aが挿通される。
突片挿通孔82は、ロック片本体部46aに挿通された第1ロック片4の突片46bが挿通される。突片挿通孔82は、本体挿通孔81を区画した内周壁81aにおける対向する左右の壁面81b、81cのそれぞれに、各壁面81b、81cから凹まされるようにして、前後方向に並列するように形成されている。
又、このようにして形成された突片挿通孔82同士の間には、両者を仕切った仕切壁83が形成されている。そして、図11に示すように、この仕切壁83に、突片挿通孔82に挿通された突片46bが当接した状態で、隣接した2つの第1ロック片4のロック片本体部46a同士の間に間隙84ができるように構成されている。
又、これらの仕切壁83は、図12に示すように、挿通された第1ロック片4に所定の負荷がかかって突片46bに押圧されると弾性変形し、隣接した2つの第1ロック片4のロック片本体部46a同士が当接するように構成されている。
尚、仕切壁83は、挿通された第1ロック片4に所定の負荷がかかって突片46bに押圧されると弾性変形される形態のものに限らず、例えば図13に示すように仕切壁83は、挿通された第1ロック片4に所定の負荷がかかって突片46bに押圧されると仕切壁83が押し潰れされるように構成されてもよく、適宜変更し得る。
連結片63の第2レール係止片67は、この実施形態では、上記アッパーレール2の第2係止孔27(図5参照)に対応する位置に、第2係止孔27の前後長さと略同じ前後長さで形成されている。
次に、保持部材の保持枠5について説明する。保持枠5は、図8に示すように筒部51を備え、この筒部51内に、第1ロック片4が前後に並べられて上下移動可能に保持されている(図9参照)。
又、この筒部51に保持された第1ロック片4は、付勢部材としてのコイルバネ44によって、常時保持枠5に対して下方側に付勢されている。
詳しくは、コイルバネ44は、第1ロック片4に設けられた第1バネ受け部45と、保持枠5に設けられた第2バネ受け部52との間に配設されている。そして、コイルバネ44の下端が、第1バネ受け部45に当接され、コイルバネ44の上端が第2バネ受け部52に当接されており、第1バネ受け部45がコイルバネ44の付勢力によって第2バネ受け部52に対して離れる方向の下方側に付勢されている。
そして、この保持枠5は、前後両端それぞれに設けられた支持片53が、上記ブラケット6の第1片61と第2片62とのそれぞれに設けられた支持孔68に入れられるようにして第1片61と第2片62とに支持されている。
以上のように構成されたロック部材3は、次のようにしてアッパーレール2に取り付けられている。
ブラケット6の第1片61と第2片62とのそれぞれの支持孔68に保持枠5の支持片53を入れて支持した状態で、第1片61と第2片62とを、アッパーレール2の壁間開口部24から押し入れる。
これにより、図5に示すように、第1片61と第2片62とのそれぞれにおける第1レール係止片65がアッパーレール2の壁間開口部24をアッパーレール2の弾性に抗して押し広げ、第1片61と第2片62とがアッパーレール2の左側壁21と右側壁22との間の上方側(奥)に入っていく。
そして、第1片61の第1がたつき防止部64aの案内部64cがアッパーレール2の前がたつき防止用孔23bを区画した前内側壁に当接するとともに、第2片62の第2がたつき防止部64bの案内部64cが後がたつき防止用孔23cを区画した後内側壁に当接する。
この状態から更に、第1片61及び第2片62が、アッパーレール2の上方側に押し入れられると、図6に示すように上記各案内部64cが上記前内側壁、後内側壁を滑り上がる。これにより、第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとは、弾性に抗して互いの距離が小さくなり、前がたつき防止用孔23b、後がたつき防止用孔23cそれぞれに入り込む。
その際、案内部64cによって第1がたつき防止部64aと第2がたつき防止部64bとを、容易に前がたつき防止用孔23b、後がたつき防止用孔23cそれぞれに入り込ませることができ、操作容易なものにできる。
更に、第1片61及び第2片62が押し入れられていき、第1片61及び第2片62それぞれの第1レール係止片65がアッパーレール2の左側壁21、右側壁22それぞれの第1係止孔25に合致すると、図5に示すように、それらに入り込む。第1レール係止片65が第1係止孔25に入り込むと、アッパーレール2の壁間開口部24が弾性によって復元しその開口幅が元の状態に戻る。
これにより、第1片61及び第2片62のアッパーレール2に対する下方側への移動に際して第1レール係止片65が第1係止孔25を区画した下内側面に係止して第1係止孔25から抜け止めされる。
又、第1レール係止片65とアッパーレール2の第1係止孔25とが合致するのと略同時期に、第2レール係止片67が、アッパーレール2の第2係止孔27に合致し、上記アッパーレール2の復元に際して第2係止孔27に入り込む。
この状態で、第1片61の第1がたつき防止部64aがアッパーレール2の前がたつき防止用孔23bを区画した前内側壁を弾性によって前方側に押圧すると同時に、第2がたつき防止部64bが後がたつき防止用孔23cを区画した後内側壁を弾性によって後方側に押圧し、ロック部材3とアッパーレール2との互いのがたつきがないものにできる。
又、ロック部材3に、アッパーレール2に対する長手方向に沿う前後方向の力がかかったような場合には、第1レール係止片65が第1係止孔25を区画した前又は後内側面に当接することに加えて、第2レール係止片67が第2係止孔27を区画した前又は後内側面に当接する。
従って、ロック部材3がアッパーレール2から外れるおそれの少ないものにでき、しかも、ブラケット6の変形を抑えることができ、両者の固定状態を維持できる。
次に、ロック解除操作部材7について、説明する。ロック解除操作部材7は、第1ロック片4をロック解除操作するためのもので、図1〜図5に示すように、第1ロック片4を引き上げるロック片引上部材71と、ロック片引上部材71を付勢する引上部材用付勢バネ70と、ロック片引上部材71を可動操作する操作部材72とを備えている。
ロック片引上部材71は、図7に示すようにその一端側に、第1ロック片4の被操作部42と係脱自在に係止するロック片係止部71aを備え、他端側に、操作部材72に押圧操作される押圧操作部71bを備えている。
このロック片係止部71aは、図3に示すように、その前後方向の長さが5つの第1ロック片4全体の前後方向の長さよりも長く設定されている。そして、このロック片係止部71aは、第1ロック片4それぞれの被操作部42の下方位置に配置されている。
又、ロック片引上部材71におけるロック片係止部71aと押圧操作部71bとの間には、図3、図5に示すように、アッパーレール2に設けられた取付部材20に回動自在に軸支された軸支部71cが設けられている。
そして、この軸支部71cによって、ロック片引上部材71は、押圧操作部71bが下方側に押し下げられるとロック片係止部71aが上方側に移動するようになっている。又、この上方側への移動に際してロック片係止部71aが第1ロック片4それぞれの被操作部42と係止して第1ロック片4それぞれを上方に引き上げる。
引上部材用付勢バネ70は、一端側が取付部材20に係止され、他端側がロック片引上部材71における軸支部71cよりも右側の押圧操作部71b側の部分に取り付けられており、これにより、引上部材用付勢バネ70の付勢力によって、押圧操作部71bが常時上方側に付勢されている。
操作部材72は、この実施形態では、図1、図2に示すように、丸棒をほぼU字状に折り曲げ成形したものから構成されており、前端に把持部72aを備え、操作部材72の左右の後端には、それぞれ、左スライド部10a、右スライド部10bのロック片引上部材71の押圧操作部71bを押圧する押圧部72bを備えている。
把持部72aは、図示しないシートの前端側の下方側に配置されるようになっており、シートに座った着座者が座った状態で把持部72aを把持できるようになっている。また、押圧部72bは、押圧操作部71bの上方側に配置されている。
そして、この操作部材72は、この実施形態では、軸73を介して揺動自在に配置されている。詳しくは、アッパーレール2に軸73が保持されている。そして、操作部材72は、把持部72aと押圧部72bとの中間部がその軸73に回動自在に取り付けられてい
る。
これにより、着座者によって把持部72aが上方側に引き上げられると、押圧部72bが下方側に移動して押圧操作部71bを下方側に押圧するようになっている。又、この実施形態の軸73は、操作部材用付勢バネ74によって付勢されており、把持部42aが手で上方側に引き上げられた後、その手が放されると、その操作部材用付勢バネ74によって、把持部72aが元の図2の状態にまで戻されるようになっている。
次に、この実施形態の車両用シートスライドロック装置の動作について説明する。着座者によって、操作部材72の把持部72aが引き上げ操作されるとロック片引上部材71の押圧操作部71bが下方側に押圧される。
これにより、図14に示すようにロック片引上部材71のロック片係止部71aが全ての第1ロック片4の被操作部42と係止して全ての第1ロック片4をコイルバネ44の付勢力に抗して上方に引き上げることができる。この状態で、全ての第1ロック片4のロック爪部41がロック孔14、15から出た状態になる。
又、この状態で、アッパーレール2は、ロアレール1に対してスライド可能状態になり、例えばシートが着座者によって前方側又は後方側に押圧されると、アッパーレール2がロアレール1に対して前方側又は後方側にスライドし、シートが前方側又は後方側に移動する。
そして、シートが着座者によって前方側又は後方側の適宜位置に前後位置調整がされた後、把持されていた操作部材72から手が放されると、操作部材72が操作部材用付勢バネ74の付勢力によって元の状態に戻ると共に、任意な位置に配置された第1ロック片4がコイルバネ44によって下方側に付勢される。
この付勢によって、5つの第1ロック片4の内の3つが適宜短ロック孔14及び長ロック孔15に入り込んでアッパーレール2とロアレール1とがロック状態になってスライド不能状態になる(図6参照)。
このロック状態において、アッパーレール2にロアレール1に対してスライドするような力がかかると、その力を、短ロック孔14及び長ロック孔15に入り込んだ第1ロック片4が受けてアッパーレール2の動きを止める。
又、その際、ブラケット6の保持用挿通孔8の突片挿通孔82の前後方向の長さと第1ロック片4の突片46bの厚さとの差により生じる隙間t3(図11に図示)は、突片挿通孔82と1つの第1ロック片4の突片46bの厚さの略製作公差に依存するため、小さく抑えられている。
従って、上記力がアッパーレール2にかかると、図11に示すように第1ロック片4の突片46bがブラケット6の保持用挿通孔8の突片挿通孔82における内壁面82aと当接してアッパーレール2を受けることができ、アッパーレール2の動きを抑えることができる。よって、アッパーレール2とロアレール1とのがたつきを抑えることができる。
尚、上記実施形態では、アッパーレール2のロック片挿通用孔23aは、長方形状のものから構成されているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
例えば図15に示すように、第1ロック片4の第1挿通部148を、第1挿通部用ロック片本体部148aと、第1挿通部用ロック片本体部148aにおける幅方向の一方端に形成された第1挿通部用突片148bとを備えたものとする。そして、ロック片挿通用孔123を、第1ロック片4の第1挿通部用ロック片本体部148aが挿通される本体挿通孔123aと、第1挿通部用突片148bが挿通される第1挿通部用突片挿通孔123bとから構成してもよい。このように構成することにより、第1ロック片4をアッパーレール2に、がたつきを抑えるようにして保持できる。
又、上記実施形態では、第1ロック片4の突片46bは、ロック片本体部46aの前面及び後面のそれぞれと段部ができるように形成されたが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えば図16に示すように第1ロック片4の突片146bは、ロック片本体部146aの前面と後面とのいずれか一方面と面一に形成され、他方面と段部ができるように形成されてもよい(図16では、ロック片本体部146aの後面と面一に形成され、前面と段部ができるように形成されたものを例示している)。
又、上記実施形態では、ロック片を、5つの第1ロック片4から構成したが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
例えば図17に示すように2つの第1ロック片4aと、3つの第2ロック片4bとから構成してもよい。詳しくは、第1ロック片4aは、上記実施形態のものと同構成を採っており、ロック片本体部46aと、突片46bとを備えている。第2ロック片4bは、第1ロック片4aのロック片本体部46aと同構成のロック片本体部246のみで構成されている。
そして、2つの第1ロック片4aは、それぞれ、3つの第2ロック片4bの前側と後側とのそれぞれに配設されている。
又、ブラケット6の保持用挿通孔108は、第1ロック片4aの突片46bに対応する位置に突片挿通孔182が形成されている。
このようにしても、ブラケット6の保持用挿通孔108の突片挿通孔182の前後方向の長さと第1ロック片4aの突片46bの厚さとの差により生じる隙間は、突片挿通孔182と1つの第1ロック片4aの突片46bの厚さの略製作公差に依存するため、従来のものに比して小さく抑えることができ、アッパーレール2とロアレール1とのがたつきを抑えることができる。
又、常時、第1ロック片4aを少なくとも1つ、ロック孔14、15に入れてロック状態にできる。従って、第1ロック片4aとロック孔14、15との幅方向のがたを抑えることができる。
又、第1ロック片4aと第2ロック片4bとから構成する場合において、例えば図18に示すように3つの第1ロック片4aと、2つの第2ロック片4bとから構成し、それらを交互に配設するようにしてもよい。この場合においても、常時、第1ロック片4aを少なくとも1つ、ロック孔に入れてロック状態にできる。
又、上記実施形態では、5つのロック片から構成しているが、ロック片の数は、少なくとも1つの第1ロック片4aを有する2つ以上の複数から構成でき、適宜変更できる。
例えば図19に示すように2つの第1ロック片4aと2つの第2ロック片4bとの合計4つから構成してもよい。又、その場合において、2つの第1ロック片4aの間に、2つの第2ロック片4bを配設して第1ロック片4aそれぞれを第2ロック片4bと隣接したものにするとともに、図20に示すようにロアレール1のロック孔140を、全部第1ロック片4a及び第2ロック片4bのそれぞれの厚さと同じに形成する。
このように形成した場合でも、常時、第1ロック片4aと第2ロック片4bとをロック孔140に入れてロック状態にでき、ロック片4a、4bが破損等するおそれのないものにできるとともに、第1ロック片4aとロック孔140との幅方向のがたを抑えることができる。
又、上記実施形態では、突片は、ロック片本体部の幅方向の両側面のそれぞれに形成されたが、この形態のものに限らず、突片は、ロック片本体部の幅方向のいずれか一方側の側面に形成されるものであってもよく、適宜変更できる。