JP6071318B2 - 光学部材および光学部材の製造方法 - Google Patents
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Description
(基材)
本発明に使用される基材として、ガラス、プラスチックを用いることができる。基材を構成するプラスチックの代表的なものとしては、ポリエステル、トリアセチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルの如き熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂の如き熱硬化性樹脂が挙げられる。また、基材としては、レンズの如き成形品やフィルムも用いることができる。基材としては、透明性および成形性の点から、ガラスを用いることが好ましい。
本発明に係る反射防止層は、表面に微細な複数の突起を有し、ホウ素を含有している。
S0:測定面が理想的にフラットであるとした時の面積、|XR−XL|×|YT−YB|、F(X,Y):測定点(X,Y)における高さ、XはX座標、YはY座標、
XLからXR:測定面のX座標の範囲、
YBからYT:測定面のY座標の範囲、
Z0:測定面内の平均の高さ。
Sr=S/S0 (4)
〔S0:測定面が理想的にフラットであるときの面積。S:実際の測定面の表面積。〕
なお、実際の測定面の表面積は次のようにして求める。先ず、最も近接した3つのデータ点(A,B,C)より成る微小三角形に分割し、次いで各微小三角形の面積△Sを、ベクトル積を用いて下記式(5)により求める。
〔但し、AB、BCおよびACは各辺の長さである。sは、0.5×(AB+BC+AC)で定義される。〕
△Sの総和によって表面積Sが求まり、反射防止膜の表面積比Srが求められる。
反射防止層の表面の突起は、酸化アルミニウムを主成分として形成されていることが好ましい。例えば、突起は、アルミニウムの酸化物又は水酸化物又はそれらの水和物の結晶から形成される。これらの中で、突起がベーマイトであることがより好ましい。本明細書では、アルミニウムの酸化物若しくは水酸化物又はそれらの水和物を『酸化アルミニウム』と記載する。
本発明の光学部材は、基材と突起との間に、突起を支持する支持層を有することが好ましい。
図1は、本発明の光学部材のSEMによる断面の写真である。図1で、突起の部分aと、突起を支持する支持層bが存在することが解る。さらに、図1から、突起を支持する支持層bは、多孔質であることがわかる。
本発明の光学部材の製造方法は、基材及び反射防止層を有する光学部材の製造方法に関する。本発明の光学部材の製造方法は、基材表面に、ホウ素を含有して酸化アルミニウムを主成分とする層を形成する工程と、作製した前記酸化アルミニウムを主成分とする層を温度60℃乃至100℃の温水又は温度60℃乃至100℃の水系媒体で処理して、表面に微細な複数の突起を有する反射防止層を生成する工程と、を有することを特徴とする。
酸化アルミニウムを主成分とする層を形成する工程は、基材の表面に、ホウ素を含有し酸化アルミニウムを主成分とする層を形成する。
B(OR)3 (1)
[式(1)において、Rは炭素数1以上10以下のアルキル基を示す。]
B3O3(OR)3 (2)
[式(2)において、Rは炭素数1以上10以下のアルキル基を示す。]
で示される化合物である。
反射防止層を生成する工程は、生成した層を温度60℃以上乃至100℃以下の温水又は温度60℃以上乃至100℃以下の水系媒体で処理して、表面に微細な複数の突起を有する前記反射防止層を生成する。
アルミニウム−sec−ブトキシド(ASBD、川研ファインケミカル製)24gとアルミニウム−sec−ブトキシドに対して0.5当量の3−メチル−2,4−ペンタンジオン(安定化剤)と2−エチルブタノールとを均一になるまで混合攪拌した。アルミニウム−sec−ブトキシドに対して1.5当量の0.01M希塩酸を2−エチルブタノール/1−エトキシ−2−プロパノールの混合溶媒に溶解してから、アルミニウム−sec−ブトキシドの溶液にゆっくり加え、60分間攪拌した。溶媒は最終的に2−エチルブタノールと1−エトキシ−2−プロパノールの混合比が質量比で7:3の混合溶媒になるように調整した。さらに、温度110℃に加熱したオイルバス中で2時間攪拌した。その後、添加剤として、表1に記載のホウ素化合物を混合することによって塗工液1乃至塗工液11を調製した。ホウ素化合物の代わりにシリカアルコキシドを用いて、塗工液中のアルミニウム化合物をアルミニウムに換算した物質量とテトラエトキシシランをケイ素に換算した物質量との比(モル比)で1:0.29の混合することによって塗工液12を調製した。調製に用いた安定化剤、添加剤および塗工液中のアルミニウムとホウ素の物質量比を表1に示した。表1で、アルミニウムとホウ素の質量比は、塗工液中のアルミニウム化合物をアルミニウムに換算した質量とホウ素化合物をホウ素に換算した質量との比を示す。表1のアルミニウムとホウ素の質量比で、『−』はホウ素を含有しないことを示す。
片面だけ研磨され、もう一方の面がスリガラス状の大きさ約直径(φ)30mm、厚さ約1mmの円盤状ガラス基板をアルカリ洗剤中で超音波洗浄した後、オーブン中で乾燥して用いた。
顕微分光測定機(USPM−RU、オリンパス製)を用い、400nmから700nmの範囲の入射角0°時の反射率測定を行った。測定範囲の反射率の平均値と、比視感度が高い領域である530nmから570nmにおける反射率の平均値と、測定範囲の最低反射率を求めた。
二次イオン質量分析法(ATOMIKA4500)を用い、反射防止層を大きさ約φ30mm、厚さ約0.5mmの円盤状Si基板上に形成し、表面の突起構造の影響を避けるために裏面からスパッタし、支持層中のホウ素の含有量を測定した。検出領域は30μm×60μmであり、一次イオン種 はO2 +を用い、 一次加速電圧 は5.0kVとした。
画像処理ソフト(ImageJ)を用いて、SEMによる断面の観察写真から突起を支持する支持層の酸化アルミニウム部と空孔部とを二値化し、任意の箇所の面積における空孔部分のピクセル数の割合から空孔率を求めた。
分光エリプソメトリー(J.A.Woollam EC−400)を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を被膜した基材を測定し、解析ソフトW−VASEを用いたシミュレーションによって光の波長550nmにおける屈折率を求めた。
SEMによる断面観察から突起の太さを測定し、5nm以上50nm以下である場合は○とし、そうでない場合は×とした。
原子力間顕微鏡を(SPA−400、SII製)を用い、突起構造の平均表面粗さRa’を求めた。
前記の方法で洗浄したオハラ社製L−BAL42(nd=1.583)円盤状ガラス基板に塗工液1を適量滴下し、スピンコートによって反射率を下げるのに適した膜厚になるように塗布を行った後、温度140℃の熱風循環オーブンで30分間熱処理し、非晶性酸化アルミニウム層で円盤状ガラス基板を被膜した。その後、非晶性酸化アルミニウム層を温度75℃の温水に浸漬することにより、円盤状ガラス基板上に酸化アルミニウムの突起とホウ素を含む支持層とを有する反射防止層を形成し、光学部材を製造した。
塗工液1の代わりに塗工液2から8を用いて、非晶性酸化アルミニウムの層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、成膜温度を120℃にし、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、成膜温度を200℃にし、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、基材にオハラ社製S−LAL8(nd=1.713)円盤状ガラス基板を用い、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、基材にオハラ社製S−TIM25(nd=1.673)円盤状ガラス基板を用い、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、基材にオハラ社製S−TIM3(nd=1.613)円盤状ガラス基板を用い、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液2を用いて、基材にオハラ社製S−FSL5(nd=1.488)円盤状ガラス基板を用い、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
光学ガラス(オハラ社製、L−BAL42)を用いて、ガラス製の光学レンズ(直径34mm、中心深さ11.7mm、開角72°、nd=1.583)を作製した。作製したレンズの表面に、実施例1で使用した塗工液1を使用して、実施例1と同様にしてレンズの表面に反射防止膜を形成した。
塗工液1の代わりに塗工液9から12を用いて、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
塗工液1の代わりに塗工液10を用いて、成膜温度を200℃にし、非晶性酸化アルミニウム層を形成した以外は実施例1と同様に行った。
実施例1乃至14、比較例1乃至5で製造した光学膜(光学部材)の性能を評価した。評価結果を、表2に示す。表2において、平均反射率1(%)は、光の波長400nmから700nmの範囲の入射角0°時における絶対反射率の平均値を示す。表2において、平均反射率2(%)は、光の波長530nmから570nmの範囲の入射角0°時における反射率の平均値絶対反射率の平均値を示す。表2において、最低反射率(%)は、光の波長400nmから700nmの範囲の入射角0°時における反射率の最低反射率を示す。
実施例1乃至5と比較例1乃至3、5の平均反射率1、平均反射率2、最低反射率の結果を比較すると、実施例に係る光学用部材はすべての項目において優れた反射率特性を示すことが確認された。特に、比視感度が高い領域である530nmから570nmにおける反射率の平均値と、測定範囲の最低反射率の特性に優れていた。実施例の光学部材の反射率は光の波長530nmから570nmまでの間に極小値をもつ下に凸の形状となっているが、比較例1乃至2、5の光学部材の光の波長530nmから570nmまでの間に極大値をもつ上に凸の形状となっている。例えば、可視域400nmから700nmまでの平均反射率が同じであっても、下に凸の反射率形状は比視感度の高い光の波長530nmから570nmの領域において反射率が低くなるため、上に凸の反射率形状より好ましい。
2 塗膜
3 酸化アルミニウムを主成分とする膜(層)
4 反射防止層
5 突起
6 支持層
7 酸化アルミニウムの突起を有する層
8 突起9 酸化アルミニウムの突起を支持する支持層
10 傾斜方向
11 基材の表面の接線
12 酸化アルミニウム以外を主成分とする層
Claims (22)
- 基材と、前記基材の上に反射防止層とを有する光学部材であり、
前記反射防止層は、表面に微細な複数の突起と前記突起を支持する支持層を有し、
前記突起は、酸化アルミニウムを主成分とし、
前記支持層は、酸化アルミニウムと、ホウ素を7×1019atom/cm3以上2.5×1020atom/cm3以下、含有していることを特徴とする光学部材。 - 前記支持層は、多孔質であることを特徴とする請求項1に記載の光学部材。
- 前記反射防止層は、見かけの屈折率が厚さ方向に変化しており、
前記反射防止層は、酸化アルミニウム固有の屈折率より低い見かけの屈折率を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学部材。 - 前記支持層は、厚さが10nm以上100nm以下であり、前記支持層の断面における空孔率が20%以上45%以下であり、前記突起は、太さが5nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学部材。
- 前記基材は、屈折率ndが1.48以上1.71以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学部材。
- 反射防止層は、平均面粗さの値Ra’が、18nm以上25nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学部材。
- 前記基材は、ガラスで形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学部材。
- 基材と、前記基材の上に突起と前記突起を支持する支持層とを有する反射防止層を有する光学部材の製造方法であって、
前記基材の表面に、アルミニウム化合物をアルミニウムに換算した質量とホウ素化合物をホウ素に換算した質量との比が1:0.02〜1:0.20で前記アルミニウム化合物及び前記ホウ素化合物を含有する塗工液を塗布して、酸化アルミニウムを主成分とする層を形成する工程と、
前記層を温度60℃以上乃至100℃以下の温水又は温度60℃以上乃至100℃以下の水系媒体で処理して、表面に微細な複数の突起と前記突起を支持する層とを有する前記反射防止層を生成する工程と、を有することを特徴とする光学部材の製造方法。 - 前記酸化アルミニウムを主成分とする層を形成する工程は、溶媒とアルミニウム化合物を混合して第1の液体を調製し、
前記第1の液体と水系媒体を混合して前記アルミニウム化合物を加水分解して第2の液体を調製し、
前記第2の液体とホウ素化合物とを混合して、前記反射防止層を形成するため、前記アルミニウム化合物をアルミニウムに換算した質量と前記ホウ素化合物をホウ素に換算した質量との比が1:0.02〜1:0.20で前記アルミニウム化合物及び前記ホウ素化合物を含有する塗工液を調製し、
前記基材の表面に前記塗工液を塗布して塗膜を前記基材の表面に形成し、
前記塗膜を乾燥して前記基材上にホウ素を含有し酸化アルミニウムを主成分とする層を形成することを特徴とする請求項8に記載の光学部材の製造方法。 - 前記アルミニウム化合物は、アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物であることを特徴とする請求項9に記載の光学部材の製造方法。
- 前記ホウ素化合物は、アルコキシホウ素化合物であることを特徴とする請求項9又は10に記載の光学部材の製造方法。
- 前記アルコキシホウ素化合物は、下記式(1)又は下記式(2)
B(OR)3 (1)
[式(1)において、Rは炭素数1以上10以下のアルキル基を示す。]
B3O3(OR)3 (2)
[式(2)において、Rは炭素数1以上10以下のアルキル基を示す。]
で示される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の光学部材の製造方法。 - 前記アルコキシホウ素化合物は、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸−n−オクチル、ホウ酸トリデシル、ホウ酸トリテトラデシル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)、トリメトキシシクロトリボロキサン、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリ−o−トリル、及び、トリス(トリメチルシリル)ボラートからなるグループから選択される化合物であることを特徴とする請求項11又は12に記載の光学部材の製造方法。
- 前記アルミニウム化合物は、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、アルミニウム−tert−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、またこれらのオリゴマー、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び、水酸化アルミニウムからなるグループから選択される化合物であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記反射防止層は、前記突起を支持する支持層を有し、前記支持層は、多孔質であることを特徴とする請求項8乃至14のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記突起は、酸化アルミニウムで形成され、前記支持層は、酸化アルミニウムとホウ素で形成されていることを特徴とする請求項8乃至15のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記支持層は、ホウ素を7×1019atom/cm3以上2.5×1020atom/cm3以下含有していることを特徴とする請求項8乃至16のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記突起は酸化アルミニウムを主成分とし、前記反射防止層は見かけの屈折率が厚さ方向に変化しており、前記反射防止層は酸化アルミニウム固有の屈折率より低い見かけの屈折率を有することを特徴とする請求項8乃至17のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記支持層は、厚さが10nm以上100nm以下であり、前記支持層の断面における空孔率が20%以上45%以下であり、前記突起は、太さが5nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項8乃至18のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記基材は、屈折率ndが1.48以上1.71以下であることを特徴とする請求項8乃至19のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 反射防止層は、平均面粗さの値Ra’が、18nm以上25nm以下であることを特徴とする請求項8乃至20のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
- 前記基材は、ガラスで形成されていることを特徴とする請求項8乃至21のいずれか一項に記載の光学部材の製造方法。
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