以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付記し、適宜その説明を省略する。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の形態1について図1〜3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
本実施の形態では、例えば、飲料原料(原材料)としての乳児用の粉ミルクと加熱した液体とを自動で混合してミルクを生成する調乳器に備えられる撹拌ユニットについて説明する。尚、本実施の形態では、調乳器に備えられる撹拌ユニットについて説明するが、本発明の撹拌ユニットにおいては、必ずしもこれに限らない。本発明の撹拌ユニットは、泡立ちおよび波立ちを低減した撹拌に好適に用いることができ、例えば、化学的合成における撹拌や、工業的な撹拌工程等に用いることができる。
(調乳器1Aの構成)
まず、図2および図3に基づいて、本実施の形態の撹拌ユニット50を備える調乳器(飲料生成装置、撹拌装置、調乳システム)1Aの構成について説明する。図2は、本実施の形態1に係る撹拌ユニット50を含む飲料生成装置としての調乳器1Aの外観構成を示す斜視図である。図3は、撹拌ユニット50を備える調乳器1Aの構成を示す断面図である。
図2および図3に示すように、調乳器1Aは、筐体(ベース本体)としての調乳器本体2と、液体Lを貯留する貯留容器3と、撹拌ユニット50と、撹拌用モータ40(回転駆動ユニット)とを備えている。さらに、調乳器1Aは、調乳器本体2内部に配された、供給配管10と、ファンネル20と、冷却部30と、撹拌用モータ40と、サーミスタTMとを備えている。
貯留容器3は、撹拌ユニット50に供給する液体Lを貯留するタンクである。貯留容器3は、調乳器本体2の上部に配置されていると共に、調乳器本体2に対して着脱可能となっている。貯留容器3には、貯留容器3を着脱、運搬するための容器把手3aが調乳器本体2の外周側となるように配置されている。また、貯留容器3の下部には給水弁3bが設けられており、この給水弁3bは貯留容器3を調乳器本体2から取り外したときには閉まるようになっている。その結果、調乳器本体2から離脱した貯留容器3を、水道にて給水した後に持ち運びをすることができる。貯留容器3は、内部の状態を目視し易いように、透明である方が良い。また、図示しないが貯留容器3の上面開口部を覆うことができるフタを備えていることが、衛生上好ましい。貯留容器3には、調乳に用いるための液体として水道水の他、赤ちゃん用の飲用水、純水または天然水といった赤ちゃんが飲むのに適した水が用いられる。
調乳器本体2は、略中央付近に、撹拌ユニット50を設置(載置)するための設置面2a(載置面)を備える。そして調乳器本体2は、設置面2aと、設置面2aに配された撹拌ユニット50の側方を覆う側部と、設置面2aに配された撹拌ユニット50の上方を覆う上方部とからなる空間部を有する。設置面2aに設置されることで格納された撹拌ユニット50にて、液体Lが過熱された湯と粉ミルクPMとの調整混合といった調乳作業が行われる。
調乳器本体2における撹拌ユニット50の下方には、ユーザーが調乳器1Aを操作するためのコントロールパネル5が設けられている。
調乳器本体2の内部には、図3に示すように、貯留容器3に貯留された液体Lを供給するための供給配管10と、供給配管10の出口側に設けられ、かつ後述するヒータ12にて加熱沸騰された液体Lの温度調節部であるファンネル20と、加熱された液体Lと粉ミルクPMとを混合してミルクを調乳する飲料調製部としての撹拌ユニット50と、撹拌ユニット50を冷却する冷却部30と、撹拌ユニット50内の撹拌子100Aを回転させるための撹拌用モータ40と、撹拌ユニット50内のミルクの温度を測定するサーミスタTMとが設けられている。
供給配管10は、貯留容器3に貯留された液体Lが通る流路となっている。供給配管10は、一方の端部が貯留容器3の給水弁3bと接続され、他方の端部がファンネル20の上方に配されている。供給配管10には、液体Lの貯留容器3への逆流を防ぐフロート式逆止弁11と、供給された液体Lを加熱して煮沸殺菌するための加熱供給部としてのヒータ12と、加熱された液体Lをファンネル20に分散して噴き出させる散水ノズル13とが備えられている。具体的には、フロート式逆止弁11は、供給配管10の一方の端部近傍に配されている。ヒータ12は、フロート式逆止弁11近傍から供給配管10の流路の途中まで供給配管10を覆って配されている。散水ノズル13は、供給配管10の他方の端部に配されており、ファンネル20の上方に配されている。
このため、貯留容器3に貯留された液体Lは、該貯留容器3から供給配管10の一方の端部を通って内部に流入されると、フロート式逆止弁11を経由してヒータ12の入口へと流入され、ヒータ12の出口から散水ノズル13へ流出される。そして、液体Lは、散水ノズル13からファンネル20に散水される。
供給配管10の材質としては、例えばSUS等の金属配管やシリコーンやテフロン(登録商標)系の樹脂配管等の配管を使用することができる。好ましくは、食品用途の供給に適した例えばシリコーン系の部材を選定することが望ましい。本実施の形態では、供給配管10として、例えば内径φ10mmのシリコーンチューブを使用するものとする。チューブの材質や内径等のサイズは任意に設定することができる。また、各パーツとの接続は、チューブのサイズ等に適した任意の固定方法を選択することができる。
フロート式逆止弁11は、液体Lのヒータ12から貯留容器3への逆流を防止する機能、および液体Lの供給をフロート式逆止弁11の水位レベルで止める機能を有している。具体的な構成としては、内径の小さい小径配管部の下に内径の大きい大径配管部を有していると共に、大径配管部には小径配管部の内径よりも大きい外形からなる浮子を有している。
フロート式逆止弁11では、貯留容器3から液体Lが注入されると、その流れによって浮子が下がる。そして、液体Lがフロート式逆止弁11の水位まで満たされると、浮子が浮き、小径配管部を塞ぐので、供給配管10から貯留容器3への逆流が防止されるものとなっている。
ヒータ12は、本実施の形態では、図3に示すように、例えばU字状の配管形状となっており、供給配管10の一部を周囲から覆うように形成されている。ヒータ12には、例えば、ニクロム線が内蔵されており、ミルク生成用の液体Lを加熱して煮沸させて湯にすることで殺菌し、散水ノズル13へ供給する機能を有している。具体的には、以下のとおりである。
(1)貯留容器3から液体Lがフロート式逆止弁11を通して供給配管10におけるU字状のヒータ12に覆われた部分へ流入する。
(2)供給配管10におけるU字状のヒータ12に覆われた部分において、フロート式逆止弁11が取り付けられている高さまで液体Lが満たされる。
(3)ヒータ12による加熱が開始されると、液体Lは沸騰し、その蒸気圧でヒータ12から押し上げられる。
(4)ヒータ12の入口側にはフロート式逆止弁11があるため、逆側のヒータ12出口からのみ液体Lが押し出され、該液体Lは供給配管10を経由して散水ノズル13に供給される。
(5)ヒータ12に覆われた部分の供給配管10の液体Lが減少することによって、ヒータ12に覆われた部分の供給配管10の内部の圧力が低下し、フロート式逆止弁11が開く。この結果、(1)に戻って加熱前の液体Lが流入する。
尚、本実施の形態のヒータ12には、図示しない温度センサーが設置されており、ヒータ12の加熱温度を常に測定できるようになっている。
以上の(1)〜(5)が、液体Lが貯留容器3から無くなるまで繰り返され、ヒータ12にて加熱された液体Lが順次ファンネル20に圧送される。供給配管10の内部に液体Lが無くなると、ヒータ12からの熱が外部に伝わり難くなり、ヒータ12自体の温度が液体Lの沸騰温度以上まで上昇し易くなる。この結果、この上限となる温度を設定して検知することによって、ヒータ12の加熱が停止できるようになっている。
散水ノズル13は、加熱されて圧送されてきた液体Lを分散して噴き出す機能を有している。散水ノズル13の先端である下側の壁面には、複数の小さい穴や細いスリットが形成されている。そして、穴やスリットのサイズを変えることによって、液体Lをシャワー状からより細かい霧状まで分散して噴出させることができる。液体Lが細かく分散されると表面積が増大するので、ファンネル20の空間内に存在する空気との熱交換が促進される。この結果、液体Lの温度が下がることになる。
ファンネル20は、設置面2aに設置された撹拌ユニット50の上方に配されている。ファンネル20は、散水ノズル13によって分散して温度低下した液体Lを集め、下部に設けた出口から下方に設けられた撹拌ユニット50に液体Lを滴下する。したがって、散水ノズル13およびファンネル20は、ヒータ12にて加熱沸騰された液体Lを冷ます第1の温度調節手段として機能している。
撹拌ユニット50は、予め内部にセットしておいた乾燥粉末乳つまり粉ミルクPMとミルク生成用の煮沸済の液体Lとを調整混合することにより、ミルクを生成するものである。撹拌ユニット50は、設置面2aに配されることで、ファンネル20の下方に配される。撹拌ユニット50は、撹拌容器51と、撹拌容器51の底面に配され、粉ミルクPMと液体Lとを撹拌混合するための、後述する撹拌子100Aとを備えている。撹拌子100Aは内部に磁石101(図1参照)が配されており、磁石101は、撹拌ユニット50の下方の調乳器本体2の内部に配置される撹拌用モータ40の回転軸に配置された図示しない磁石と対になっており、撹拌用モータ40の回転動作に対応して撹拌子100Aが回転するようになっている。なお、撹拌ユニット50の具体的な構成は図1を用いて後述する。
撹拌用モータ40は、本実施の形態では、少なくとも液体Lに粉ミルクPMを溶かすのに十分な時間継続稼動するようになっている。撹拌用モータ40は、撹拌子100Aに配された磁石101(図1参照)と対となる磁石を有し、当該磁石を回転させる、または、上記磁石のS極とN極との反転を繰り替えるよう駆動することで、離間している撹拌子100Aを回転させる。
冷却部30は、図3に示すように、送風用のファン32と、吸気口31と、ダクト33A・33Bと、排気口34とから構成され、液体Lおよび混合後のミルクを冷ます第2の温度調節手段として機能している。ダクト33Aの出口は、調乳器本体2の空間部のうち、設置面2aに設置された撹拌ユニット50の側方に位置するように、空間部の側部に配されている。ダクト33Aの入り口に、吸気口31およびファン32が配されている。
ダクト33Bの入り口は、調乳器本体2の空間部のうち、設置面2aに設置された撹拌ユニット50の上方に位置するように、空間部の上方部に配されている。ダクト33Bの出口に排気口34が配されている。
ファン32は、撹拌ユニット50内にあるミルクを目的の温度まで空冷するための送風機能を有している。図3に示すように、ファン32は調乳器本体2内部に配置され、ファン32の上流側に空気を吸い込むための吸気口31が設けられている。また、ファン32の下流側にダクト33Aの出口が配されている。ダクト33Aは、設置面2aに設置された撹拌ユニット50の撹拌容器51の縁が位置する高さを含む高さに配されている。
ダクト33Bの入り口と、ダクト33Aの出口との間に、調乳器本体2の空間部が設けられており、空間部に撹拌ユニット50が配されている。
ダクト33Aは、撹拌ユニット50の撹拌容器51に対して横または下方から風が当たるように調乳器本体2の一部が開口して設けられている。
ファン32が回転することで、吸気口31から吸気された空気は、ファン32を介してダクト33Aの出口から撹拌容器51の側面、特に、撹拌容器51の縁部分に側方から吹き付けられる。そして、撹拌容器51の側面、特に、撹拌容器51の縁部分に側方から吹き付けられた空気は、ダクト33Bの入り口からダクト33B内に流入し、調乳器本体2の内部から排気口34を通って、調乳器本体2の外部へ排気される。このような構成とすることによって、設置面2aに設置された撹拌ユニット50の上方側である空間部の上方部の上側に空気の流れができ、撹拌ユニット50の内部から熱気が引き寄せられて抜け易くなる。この結果、対流によるミルクからの放熱が促進される。逆に、ファン32を停止することで撹拌ユニット50への送風を止めた場合、撹拌ユニット50内の空間が熱溜りとなってしまうため、ミルクからの放熱がされ難い状態となる。
ここで、撹拌ユニット50内にあるミルクに風を直接当てると素早く冷やすことができる。しかしながら、風をミルクに直接当てると、埃等の異物をミルクに入れてしまう可能性が高くなる。埃等は、液体Lに触れると表面張力により液体L中にトラップされて取り込まれてしまう。このため、赤ちゃんに飲ませる飲み物を作る方法としては非常に不適切である。
そこで、本実施の形態では、上述のようなミルクに風を直接当てない構成としている。具体的には、調乳器1Aにおいては、撹拌ユニット50へ送風するための吸気口31、ファン32およびダクト33Aを、設置面2aに配された撹拌ユニット50の側方に配し、撹拌ユニット50へ送風された空気を調乳器本体2の内部から外部へ排気するためのダクト33Bおよび排気口34を、設置面2aに配された撹拌ユニット50の上方に配することで、撹拌ユニット50の放熱と、撹拌ユニット50内のミルクの熱が上昇することによる生じる撹拌ユニット50上部の熱溜りを抜くことによる放熱との2つの風の流れによる放熱によって、ミルクの冷却を実現している。
サーミスタTMは、撹拌ユニット50内の液体Lまたはミルクの温度を間接的に計測するためのものである。撹拌ユニット50内のミルク温度とサーミスタTMでの計測温度との対応関係を予め計測しておくことにより、ユーザー側で出来上がりのミルク温度を設定しておくことが可能となる。これにより、サーミスタTMで検知した温度から調乳完了の判断を行い、音またはランプ表示によりユーザーに出来上がりを知らせる。
本実施の形態では、撹拌ユニット50の外側表面の温度から内部の液体Lまたはミルクの温度を確認することになる。このため、サーミスタTMを撹拌ユニット50に当接させてサーミスタTMと撹拌ユニット50との伝熱を確実にするための板ばねや、撹拌ユニット50と調乳器本体2との位置関係を一定とするための位置決めピンやガイドを設けておくことが望ましい。
また、出来上がったミルクは哺乳瓶に移して赤ちゃんに与えることになる。このため、音またはランプ表示によりユーザーに出来上がりを知らせる場合には、授乳の目安である40℃よりも高めの温度、目安としては45℃前後で検知するように設定しておくことが望ましい。
このような自動調乳装置としての調乳器1Aでは、所望の量のミルクを調乳するために必要な液体Lと粉ミルクPMとを、それぞれ貯留容器3と撹拌ユニット50とに秤量し、調乳器1Aを動作させることによって、自動でミルクを調乳し、ミルクを素早く冷却することができる。ここで、撹拌ユニット50において従来の撹拌機構を用いる場合には、調乳したミルクには気泡が多く含有されてしまうという問題がある。すなわち、例えば従来の棒状等の撹拌子を用いる場合、該撹拌子の回転によってミルクに大きな渦流や、うねりが発生し、渦の中心部等から空気を巻き込むことにより、ミルクの気泡含有量が増大する。あるいは、特許文献1に開示されているミルクフォーマーのように、軸部によって撹拌ヘッドを支持する構成においては、軸部にて空気を噛み込んでしまい、ミルクの気泡含有量が増大する。
一方、本実施の形態における撹拌子100Aは、後述するように、回転したときに抵抗となる突起物が少なく、円盤状であり、表面がフラットな平面であるため、回転してもミルクに気泡が発生し難い。また、撹拌子100Aは磁石101を有し、離間して配されている撹拌用モータ40からの磁気により回転する。このため、特許文献1に開示されているミルクフォーマーとは異なり、撹拌子100Aを回転させるための軸部を撹拌子100Aに設ける必要がないため、軸部の回転によるミルク内への気泡の発生も無い。これによっても、ミルク内の気泡の含有を低減することを可能にしている。また、撹拌ユニット50から着脱が容易であって、洗浄が容易である。さらに、本実施の形態の撹拌子100Aは、回転安定性が高い。
この結果、本実施の形態の撹拌子100Aを備える撹拌ユニット50を含む調乳器1Aを使用することによって、「乳児用乾燥粉末乳の安全な調乳、保存および取扱いに関するガイドライン」に順守した上で、ミルクを生成し、かつ調乳から任意温度までの冷却を自動で行うことができる。
ここで、本発明の撹拌子が気泡の発生を効果的に抑制できる理由を以下に詳細に説明する。一般的な撹拌子の回転により気泡が発生する原因としては、以下の2つの現象が挙げられる。
(1)撹拌子の回転中心の付近で回転の流れが多大となるために液面に渦が発生し、該渦により空気が液中に取り込まれる現象
(2)撹拌子の回転により液体に作用力を与える部分で乱流が発生し、この乱流の影響が液面に及ぶことにより、同様に空気が液中に取り込まれる現象。
したがって、上記気泡の発生を抑制するためには、上記の現象を低減する必要がある。しかし、一般的な撹拌子では、撹拌性を向上させるために撹拌の回転速度を十分に大きくすると、撹拌子の回転中心の付近において回転の流れが大きくなり、渦が発生し易い。また、撹拌効率を高めるには、撹拌子の回転により液体に作用力を与える突起部などの部材を撹拌子に設けることが望ましいが、当該部材は本質的に乱流を発生させやすい。このため、一般的な撹拌子においては、上記の現象の低減は非常に困難である。
これに対し、本発明の撹拌子は、上記の問題を解決するために、円盤状の形状であって、かつ、上面が回転運動に対して流線形の形状をしている。ここで「流線形」とは流体の相対的流れに対し、渦または乱流を生じさせない、あるいは生じさせ難い形状であり、1方向からの層流の定常流の中で、流線が変化しない形状であり、液体に対する抗力が小さい形状である。すなわち、流れの方向に対する撹拌子の断面積の変化が小さく、かつ流体の撹拌性を高めるために液体に対する抗力を生じる突起部などの主要な構造が撹拌子の上面側に存在しないことを意味している。これにより、撹拌子の回転運動により撹拌子の上面から渦または乱流が発生することを抑制することができる。
さらに、本発明の撹拌子は、撹拌容器の底部と対向する撹拌子の下面に、撹拌容器の底部に接触する接触部と、撹拌容器の底部から離間した非接触部とを備えており、該非接触部において撹拌容器の底面に対して空間を空けた状態で回転する。このような構造により、撹拌容器の底面と撹拌子との間で発生する回転流を撹拌に有効に活用することができるようになっている。
本発明の望ましい形態としては、流体の撹拌性を高めるために液体に対する抗力を生じる突起部などの主要な構造を、撹拌子の下面に設けることが挙げられる。すなわち、撹拌子の下面は非流線形であることが望ましい。このような形態であれば、撹拌子の下面で乱流が発生したとしても、該乱流の影響が円盤状の撹拌子の本体部分に遮蔽されるため、液面に乱流の影響が及ぶことが無い。
一方、撹拌子の下面で生じた回転流は、その一部が円盤状の撹拌子の側面と撹拌容器の側壁との隙間から撹拌子の上側の液体側に漏れ出すことにより、撹拌子の上側の液体を間接的に回転させて、液体全体を撹拌する。円盤状の撹拌子の側面と撹拌容器の側壁との隙間から漏れだした回転流は、撹拌容器の側壁に沿って層流を成して大きな回転運動を行うため、空気が液体内に取り込まれて気泡を発生させることが少ない。また、回転中心においては、回転流が漏れ出す回転外側部分から距離が離れているため、回転流の速度が相対的に小さくなり、回転中心に渦が発生することが抑制される。
このように、本発明の撹拌子は液面における渦の発生および乱流の影響を低減することができ、気泡の発生を抑制することができるのである。
なお、撹拌子の上面における流線形の一例としては、平面状、回転体状などが挙げられる。また、渦や乱流が発生しない程度であれば、上記撹拌子の上面に凸部または凹部が設けられていてもよい。
ここで、上記平面状の上面は、完全に平坦である必要は無く、上記撹拌子の全体のスケールで見た場合に平面に近い形状であればよい。上記平面状の上面の一例としては、後述するように、全体が平坦な形状、周縁部から回転中心に向かうにつれて膨らんだ形状、例えば、上記平面状の上面には、全体が平坦な形状が含まれ、周縁部から回転中心に向かうにつれて膨らんだ形状が含まれ、中央部が平坦な形状であり、かつ、周縁部が下方へ傾斜している形状が含まれる。
(撹拌ユニット50の構成)
撹拌子100Aについて、図1の(a)および(b)に基づいて説明する。
図1の(a)は、本実施の形態に係る撹拌子100Aの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Aを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50の断面図である。この断面図は、(a)のA−A線で断面し、矢印方向に見た図である。以下では、撹拌子100Aが撹拌容器51に配された状態および撹拌動作について説明する。
撹拌ユニット50は、撹拌容器51と、撹拌子100Aとを備えている。撹拌容器51は、底面51a(底部)の略中心部分に、底面51aから突出する凸部52(容器側凸部)を備えている。凸部52は、撹拌子100Aを、回転軸AXを中心として回転させる際の軸として機能する部材である。凸部52は、撹拌容器51と一体として構成されている。本実施形態では、凸部52は、円柱形状を有している。すなわち、凸部52は、撹拌容器51を上方から下方(図1の(b)に示す紙面上から下方向)へ見た平面視において円形状である。撹拌子100Aは、円盤状の板部103と、複数の磁石101と、複数の突起部102(接触部、第1の突起部、点状突起部)とを備えている。撹拌子100Aは、平面視において、円形状を有している。
板部103は、円板形状を有する、板部103のうち、撹拌容器51の底面51aと対向する面である裏面103a(下面)には、撹拌子100Aの回転中心に対して同心円状(同心円上)に配され、裏面103aから突起する適合部106が配されている。板部103および適合部106は、食品用に適した樹脂を用いることが好ましく、例えば、供給配管10の材質と同様のシリコーン、テフロン(登録商標)系やポリプロピレン等を用いることが望ましい。板部103のうち、裏面103aとは逆側(反対側)の面である表面103b(上面)は平面となっており、突起物は配されていない。
適合部106は、3点以上の多点により、回転する撹拌子100Aを凸部52に当接させて支持するための複数の突起部102からなる。本実施の形態では、平面視において、3個の突起部102が、撹拌子100Aの回転軸AXを中心に点対称に配されている。なお、適合部106は、複数の突起部102からなるものではなく、回転軸AXと同心円状となる円環形状であってもよい。すなわち、適合部106は、凸部52に適合する形状であればよい。突起部102の先端は撹拌容器51の底面51aと接している。
凸部52は、撹拌子100Aのうち、複数の突起部102と、板部103の裏面103aにおける複数の突起部102により囲まれた領域とにより覆われている。尚、凸部52表面と、板部103の裏面103aのうち突起部102により囲まれた領域とが接することによって、突起部102の先端と撹拌容器51の底面51aとが接していなくともよい。
磁石101は、撹拌子100Aの内部に複数配置されている。磁石101それぞれは、突起部102のそれぞれに挿入されている。磁石101の表面は、図示しない樹脂で覆った構造となっている。これにより、磁石101が露出しない構造となっている。磁石101の表面に用いる樹脂は、食品用に適した樹脂を用いることが好ましく、例えば、調乳器本体2内部の供給配管10の材質と同様のシリコーン、テフロン(登録商標)系やポリプロピレン等を用いることが望ましい。なお、磁石101の表面を覆う樹脂は、板部103および突起部102と一体形成されていてもよい。
突起部102は、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転しているとき、突起部102の側面が、凸部52の側面(外周)と当接することで、凸部52に撹拌子100Aを支持する。突起部102は、例えば円筒状の形状であるが、形状としてはこれに限らない。突起部102の形状は、撹拌子100Aが回転する際、凸部52の側面との摩擦が少ない形状であればよい。撹拌子100Aの回転軸AXを中心に回転する各突起部102の中心が描く軌跡となる円を、支持部回転円CCとする。換言すると、突起部102は、撹拌子100Aの回転軸AXを中心に同心円状に複数個設けられている。
撹拌子100Aは、撹拌容器51の底面51aに設けられた円柱状の凸部52を覆って配されている。すなわち、撹拌容器51の凸部52に、撹拌子100Aは回転可能に装着される。これにより、撹拌子100Aが装着されることで、凸部52は、3個以上の突起部102に囲まれ、かつ、3個の突起部102が凸部52の外周と離間する程度に、回転軸AXと同心円状に配されている。このため、撹拌子100Aを撹拌容器51の底面51aにおける定位置へのセットが容易にできる。すなわち、凸部52を覆うように、撹拌子100Aを容易にセットすることができる。それゆえ、ユーザーは、撹拌子100Aのセットが簡便であるため、撹拌子100Aを撹拌容器51にセットするに際し、煩わしい作業を減らすことができる。
撹拌子100は、突起部102の内部に磁石101が配されている。このため、撹拌子100Aが磁石101の重みにより、自重が増すとともに、撹拌用モータ40に配されている磁石と磁力によって結合することで、撹拌子100Aの回転の安定性が向上する。すなわち、各突起部102に設けられた磁石101と、撹拌用モータ40に支持される磁石とが引き合うことで、撹拌子100Aの凸部52への装着が安定する。そして、撹拌子100Aの回転中に、撹拌子100Aの回転と撹拌用モータ40の回転との連動が外れたとしても、撹拌子100Aは撹拌容器51内で暴れることなく、撹拌子100Aの突起部102に設けられた磁石101と撹拌用モータ40とは再度、磁力によって結合することができる。
そのため、撹拌動作や、上部からお湯等が注がれることによる上下方向のブレに対して安定するため、高速回転や脱離の防止が可能となる。この構成により、安定性を保つために必要であった軸部を取り除くことができる。そのため、構成要素が少ない撹拌子100Aの構成をとることが可能となる。
これにより、特許文献1に記載されたミルクフォーマーの撹拌機構のような軸状の支えが必要なくとも撹拌子100Aは安定に回転することができ、軸取り付け作業を減らすことができる。すなわち、簡単に取り外すことができ、洗浄が容易である。
ここで、凸部52の直径が小さすぎる、すなわち凸部52と突起部102との間隔が大きすぎると、撹拌子100Aの回転により凸部52から外れてしまう場合がある。このため、突起部102と、凸部52とは、撹拌子100Aが回転しても凸部52から外れない程度に離間していることが好ましい。
また、よりブレに対して安定させるために撹拌子100A内に、重量を増すウェイトをインサート成形等により、撹拌子100A内に同封してもよい。
撹拌子100Aの磁石101は撹拌用モータ40に配置された磁石と対になるように、当該磁石と設置面2aおよび撹拌容器51の底面51a等を介して対面するよう整列配置され、撹拌用モータ40により駆動される、これにより撹拌子100Aが回転する。
撹拌容器51内において、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転していると、遠心力により外側の液面が上昇し、中央部は下降する。このような状態となることによって、ミルクと撹拌容器51の内面との接触面積およびミルクの表面積がともに増加する。このため、ミルクの放熱面積が増加し、ミルクが冷え易くなる。また、このような液面の変化があるため、撹拌容器51のサイズはミルクの調乳量よりも十分大きくしておく必要がある。
ここで、撹拌子100Aの回転速度をできる限り大きくし、ミルクと撹拌容器51内面との接触面積およびミルクの表面積ができる限り大きくなるようにすることによって、ミルクをさらに素早く冷やすことができる。
しかしながら、回転速度を大きくするとミルクのしぶきやうねり等が発生し易くなり、ミルク内に気泡が多量に取り込まれてしまう。気泡を含有するミルクは、授乳時に赤ちゃんの胃内に入る空気を増大させる。その結果、赤ちゃんから大きなげっぷが出易くなり、げっぷが未だ上手くできない赤ちゃんにおいては、げっぷの拍子にミルクを吐き戻し易くなる。そのようなミルクの吐き戻しは、赤ちゃんへの再度の授乳または頻繁な授乳を必要とし、母親等の授乳する者の負担を非常に増大させる。従って、気泡を大量に含むミルクを生成する方法は、赤ちゃんに与えるミルクを作る方法としては非常に不適切である。
特に、撹拌容器内部のミルクは、撹拌容器側面などの障害物にぶつかり、空気が取り込まれることで、ミルクの泡立ちが促進される。そのため、撹拌子の形状としてプロペラ形状といった流れをかき乱しうねりを増長する形状や、撹拌容器内にミルクの回転流れを妨げる構造を設けると、ミルク内に空気を取り込みやすくなる。
一方、本実施の形態における撹拌子100Aは、形状として、回転軸AXを中心とした線対称となっており、表面103bが平らな形状をしている。すなわち、調乳器1Aは、軸を有しない構成かつ、平らな形状をしている撹拌子100Aを有するため、撹拌容器51内のミルク流れを妨げる要因が少ない。そのため、調乳時に空気が取り込まれる可能性が低減される。これによって、ミルクをより冷却し易くすると共に、気泡の含有を軽減することができるものとなっている。従って、撹拌子100Aを用いた調乳器1Aによると、気泡含有量の少ないミルクを生成することができる。
(調乳器1Aによる主な利点)
上述のように、調乳器1Aは、撹拌子100Aと撹拌容器51とからなる撹拌ユニット50と、撹拌ユニット50を設置するための設置面2aの下方に、撹拌子100Aを磁気駆動するための撹拌用モータ40が配された調乳器本体2とを備えている。
そして、撹拌子100Aは、表面103bが平坦であることから、回転運動に対して流線形である。これにより、撹拌子100Aの回転運動により撹拌子100Aの表面103bから渦または乱流が発生することを抑制することができる。
また、撹拌子100Aは、裏面103aにおいて、撹拌容器51の底面51aに接触する突起部102を有している。これにより、撹拌容器51の底面51aと撹拌子100Aとの間で発生する回転流を撹拌に有効に活用できると共に、上記回転流による渦または乱流が液面に影響を及ぼすことを抑制することができる。従って、気泡の発生を抑制することができる。さらに、また、突起部102によって、撹拌子100Aが回転することにより液体を撹拌する能力(撹拌力)を向上することができる。また、突起部102は、裏面103aに設けられているので、空気を噛み込む可能性が低く、従って、突起部102による気泡の発生の増加を抑制することができる。
また、撹拌子100Aは、内部に磁石101が配されている。このため、撹拌容器51の外部に配された撹拌用モータ40からの磁力により、磁石101が磁気駆動することで、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転することができる。これにより、特許文献1に記載の撹拌機構のような撹拌子と接続され撹拌子を回転させるための軸を設ける必要がない。このため、軸が回転することによる撹拌容器51内のミルクへの気泡の混入を防止することができる。
また、撹拌子100Aによると、撹拌子を回転させるための軸を設ける必要がないため、撹拌容器51への着脱が容易であり、利便性が高い。
そして、撹拌子100Aは、平面視において円形状を有するため、側面に突起物がなくスムーズに回転し、例えば、棒状の撹拌子と比べて、ミルクの泡立ちを抑えることができる。
なお、撹拌子100Aは、表面103bが円形状であるため、棒状の撹拌子と比べて表面103bとミルクとの接触面積を大きく確保することができ、棒状の撹拌子と比べても粉ミルクPMと液体Lとを撹拌する機能はほぼ同等である。
さらに、撹拌子100Aは、裏面103aに、撹拌容器51の底面51aに配された平面視において円形状である凸部52の外周を囲むように、撹拌子100Aの回転軸AXに対して同心円状に配されている適合部106が配されている。これにより、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転する際、適合部106と凸部52とが一体となり、構造としての回転軸として機能する。このため、撹拌子100Aは、回転軸AXからずれることなく安定して同じ場所で回転するため、この点からも、例えば、棒状の撹拌子と比べて、ミルク内の気泡の発生を抑えつつ、かつ、撹拌能力の低下を抑制することができる。
また、適合部106は、3点以上の多点により、回転する撹拌子100Aを凸部52に支持するための複数の突起部102からなる。具体的には、一例として、適合部106は、3個の突起部102からなる。この3個の突起部102により、2個以下の突起部102が設けられる場合に比べて、上記撹拌力をさらに向上することができ、また、撹拌子100Aが凸部52の側面に支持されることで、撹拌子100Aが回転しても、凸部52から外れることを防止することができる。このため、安定して、撹拌子100Aは回転軸AXを中心に回転することができる。なお、突起部102は、3個に限定されず、4個以上の突起部102が、回転軸AXを中心に同心円状に配されていてもよい。これによると、撹拌子100Aは、回転軸AXを中心に、より安定して回転することができる。さらに、適合部106は、複数の突起部102からならずとも、回転軸AXを中心に同心円状となる円環形状を有していてもよい。これによっても、撹拌子100Aを、回転軸AXを中心に、より安定して回転させることができる。
突起部102は、回転軸AXを中心として点対称に配されている。換言すると、3個の突起部102は、それぞれ、隣接する突起部102との距離が等しい。これにより、撹拌子100Aが回転する場合に、突起部102の部分に発生する遠心力が、撹拌子100Aの中心から対称的に発生するために、撹拌子100Aの回転の安定性が向上する。
なお、適合部106は、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転しているときに、板部103を凸部52上に保持できるような形状および配置であればよい。
また、撹拌子100Aにおいて、磁石101は、突起部102の内部に配されている。これにより、磁石101が、撹拌子100Aにおいて外部に近い位置に配置されることになるので、外部からの磁力(磁気的な作用力)を受け易くなる。また、磁石101の重みにより撹拌子100Aの自重が増し、撹拌用モータ40の磁石と磁力により結合することで、撹拌子100Aを、より、回転軸AXを中心に回転させることができる。すなわち、回転する撹拌子100Aを、より確実に、凸部52に装着した状態とすることができるため、撹拌しているミルクへの気泡の発生を抑えると共に、より確実にミルクを撹拌することができる。
さらに、磁石101を、突起部102内に配することで、磁石101を、磁石101の下端部近傍が、凸部52の外周を囲むように配することができる。これにより、磁石101を、例えば、板部103内にだけ配する場合と比べて、撹拌子100Aの重心が下がり、より安定して回転させることができる。
また、撹拌子100Aが回転している際、凸部52と突起部102の外周とが接触すると摩擦が生じる。そのため、凸部52と突起部102とは、摩擦係数の低い材質によって構成されていることが好ましい。
なお、突起部102のそれぞれは、突起部102のそれぞれの中心を回転中心として、板部103に対して回転可能に接続されていてもよい。これにより、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転している際、突起部102の側面と、凸部52の側面とが接触しても、突起部102が回転するため、突起部102と凸部52との摩擦を抑えることができる。これにより、より安定して、撹拌子100Aを、回転軸AXを中心として回転させることができる。
また、複数の突起部102は、互いに隣接する突起部102間の距離が、凸部52の直径よりも小さい。これにより、回転中の撹拌子100Aの回転軸AXが、凸部52の中心からずれる場合、凸部52が突起部102間を通過できないため、撹拌子100Aが凸部52から外れることがない。従って、撹拌子100Aの回転中に、撹拌子100Aが凸部52から外れることを防止することができる。
なお、突起部102は、凸部52と接触する代わりに、底面51aと接触してもよい。この場合、突起部102と底面51aとの間で摩擦が生じることになる。該摩擦について、突起部102が回転軸AXから離れるほど、突起部102の回転量(移動距離)が大きくなり、上記摩擦によるエネルギー損失が大きくなる。従って、突起部102は、回転軸AXに近い方が望ましい。
〔実施の形態2〕
本発明の実施の形態2について、図4の(a)および(b)に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明する以外の構成は、実施の形態1と同じである。
図4の(a)は、本発明の実施形態2に係る撹拌子100Bの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Bを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Bの断面図である。この断面図は、(a)のB−B線で断面し、矢印方向に見た図である。
調乳器1A(図3参照)は、撹拌ユニット50に換えて、撹拌ユニット50Bを備えていてもよい。なお、調乳器1Aのうち調乳器本体2は、図3を用いて実施形態1にて説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
撹拌ユニット50Bは、撹拌容器51と、撹拌子100Bとからなる。ここで、実施の形態1の撹拌ユニット50に備えられる撹拌子100A(図1参照)では、撹拌子100Aの板部103の表面103bは平面であり、突起物は配されていない構成であった。
これに対して、図4に示すように、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Bが備える撹拌子100Bは、板部103における表面103bの回転中心に、突起物であるセパレータ105(上面突起部)が配されている。撹拌子100Bの他の構成は、撹拌子100Aと同様である。
セパレータ105は、板部103の表面103bに、板部103と一体形成されている。すなわち、セパレータ105は、板部103の表面103bに固定されている。セパレータ105は円錐形状を有し、頭頂部が撹拌子100Bの回転軸AX上に位置するように配されている。
セパレータ105は、ユーザーが、撹拌容器51に粉ミルクPMを入れたとき、粉ミルクPMを効率よく、撹拌容器51内に分配供給する役割をする。すなわち、撹拌容器51の上方から撹拌子100B上に供給された粉ミルクPMは、セパレータ105によって、撹拌子100Bの表面103b上に放射状に広がって供給される。
これにより、撹拌ユニット50Bに、加熱された液体Lが供給された際に、表面が濡れた粉ミルクPMの固まりが発生することを抑制することができる。
粉ミルクPMの固まりは、一旦できてしまうと溶解することは容易ではなく、特に、ミルクに気泡を発生させず比較的緩やか撹拌する場合、粉ミルクPMの固まりが発生すると溶解しにくく、調乳したミルクに溶け残りが存在する可能性がある。
一方、セパレータ105を設けた撹拌子100Bにより撹拌することで、ミルク内における気泡の発生を防止しつつ、さらに、粉ミルクPMの溶け残り発生を防止することができる。このため、効率よく粉ミルクPMを溶かすことができる。
セパレータ105は、どのような形状でも良いが、乾燥粉末乳を周囲に万遍なく振り分けることが可能な円錐形状であることが好ましい。なお、セパレータ105は、三角錐や四角錐といった多角錐形状でもよい。それにより、撹拌子100Bが回転する際に、セパレータ105の側面がミルクの撹拌を助長することができる。このとき、セパレータ105の先端である頭頂部は回転軸AX付近にあり、セパレータ105の先端から撹拌子100Bの表面103bへと斜めにセパレータ105の側面がなっていることから、撹拌子100Bが回転するときに、ミルクに渦はあまりおきない。なお、撹拌時の気泡の発生を抑える効果が高い点からは、セパレータ105は円錐形状であることが好ましい。
〔実施の形態3〕
本発明の実施の形態3について、図5の(a)および(b)に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1および2と同じである。
図5の(a)は、本発明の実施形態3に係る撹拌子100Cの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Cを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Cの断面図である。この断面図は、(a)のC−C線で断面し、矢印方向に見た図である。
調乳器1A(図3参照)は、撹拌ユニット50に換えて、撹拌ユニット50Cを備えていてもよい。なお、調乳器1Aのうち調乳器本体2は、図3を用いて実施形態1にて説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
撹拌ユニット50Cは、撹拌容器51と、撹拌子100Cとからなる。撹拌子100Cは、撹拌子100Bが備えていたセパレータ105に換えて、セパレータ105Cを備えている点で、撹拌子100Bと相違する。撹拌子100Cの他の構成は撹拌子100Bと同様である。
セパレータ105Cは、セパレータ105の表面に、ディンブル形状またはエンボス形状等からなる複数の窪みを設けた構成である。撹拌子100Cによると、セパレータ105Cの表面に設けられた窪みにより、粉ミルクPMの撹拌を促進することができるため、セパレータ105を備えていた撹拌子100Bの効果に加え、さらに、粉ミルクPMの溶け残りがなく、かつ、効率良くミルクを調整することができる。
〔実施の形態4〕
本発明の実施の形態4について、図6の(a)および(b)に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明する以外の構成は、実施の形態1〜3と同じである。
図6の(a)は、本発明の実施形態4に係る撹拌子100Dの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Dを撹拌容器51Dに配した撹拌ユニット50Dの断面図である。この断面図は、(a)のD−D線で断面し、矢印方向に見た図である。
調乳器1A(図3参照)は、撹拌ユニット50に換えて、撹拌ユニット50Dを備えていてもよい。なお、調乳器1Aのうち調乳器本体2は、図3を用いて実施形態1にて説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
撹拌ユニット50Dは、撹拌容器51Dと、撹拌子100Dとからなる。
撹拌容器51Dは、撹拌容器51(図1参照)のうち凸部52に換えて、凸部52Dを備えている。撹拌容器51Dの他の構成は、撹拌容器51と同様である。
凸部52Dは、円錐形状である。平面視において、凸部52Dは円形状である。凸部52Dの頭頂部は、撹拌子100Dの回転軸AX上に配されている。
撹拌子100Dは、円盤部103Dと、複数の磁石101とを備えている。円盤部103Dにおいて、撹拌容器51Dの底面51Daと対向する面である裏面103Daは、中央部(凸部52Dの頭頂部と重なる部分)が凹んだ形状である。
撹拌容器51Dの裏面103Daには、平面視において円形状である凸部52Dの外周を囲むように、撹拌子100Dの回転軸AXに対して同心円状に突起している適合部106Dを備えている。適合部106Dの裏面103Daは、撹拌子100Dの縁部から適合部106Dの頭頂部である底面51Daとの接触部にかけて次第に膨らんでいる形状である。また、適合部106Dの裏面103Daは、中央部から適合部106Dの頭頂部にかけて次第に膨らんでいる形状である。この適合部106Dにより、撹拌容器51Dの凸部52Dを覆っている。
撹拌子100Dにおける、裏面103Daとは逆側の面である表面103Dbは、中央部105D(回転軸AX上に位置する部分)が膨らんだ形状である。すなわち、撹拌子100Dにおける表面103Dbは、縁部から中央部105Dにかけて次第に膨らんだ形状である。換言すると、撹拌子100Dの表面103Dbは、中央部105Aから縁部にかけて緩やかに傾斜するテーパ形状であると表現することもできる。
撹拌子100Dによると、表面103Dbが平らな形状と比べて、撹拌時における液体の流れによる抵抗を減らすことができ、気泡の発生をさらに抑制することができる。また、表面103Dbの中央部105Dから縁部にかけて次第に傾斜した形状であるため、ユーザーが、撹拌容器51Dに粉ミルクPMを入れたとき、撹拌子100Dの中央部105Dに偏ることなく、効率よく撹拌容器51D内に分配供給する役割をする。このため、粉ミルクPMの溶け残り発生を防止することができる。加えて、撹拌子100Dの表面103Dbが平らな形状と比べて、撹拌時の水流の抵抗を減らす効果がある。このため、さらに、ミルク内の気泡の発生を防止することができる。
また、撹拌子100Dの裏面103Daに配された適合部106Dは、環状であるため、上記撹拌力をさらに向上することができる。また、環状の適合部106Dは、重心が回転軸AX上に位置するので、撹拌子100Dは安定して回転することができる。
また、適合部106Dは、縁部から適合部106Dの頭頂部にかけて次第に膨らむ形状であるため、撹拌時の水流(液体の流れ)の抵抗を減らすとともに、撹拌容器51Dと撹拌子100D間の摩擦抵抗を低減する役割をする。適合部106Dは、断面が半球面形状となるようにしてもよい。
この撹拌子100Dを備えた調乳器1Aによると、粉ミルクPMの溶け残りがなく、かつ、効率良くミルクを調整することができる。
〔実施の形態5〕
本発明の実施の形態5について図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜4と同じである。
図7は、実施の形態5に係る飲料生成装置1Eの構成を表す断面図である。飲料生成装置1Eは、調乳器1A(図3参照)が備えていた、ファンネル20、冷却部30、ダクト33B、排気口34、および、サーミスタTNを省略した構成である。飲料生成装置1Eの他の構成は、調乳器1Aと同様である。
飲料生成装置1Eの構成によると、撹拌子100Aが配された撹拌ユニット50を備える、安価な飲料生成装置1Eを得ることができる。
飲料生成装置1Eに用いられる混合物の原料としては、粉ミルクに限定するわけではなく、例えばインスタントコーヒーや抹茶の粉末など、各種の撹拌用の粉末Pを用いることができる。この粉末Pと、液体Lとを、撹拌容器51内に供給し、撹拌子100Aにて撹拌することで、気泡が少ない飲料を生成することができる。
撹拌子100Aの回転数を、撹拌容器51に供給される液体Lの量に合わせて制御することで、泡立てたい飲料を混合する場合は、供給される液体Lが規定量と違っても均一な泡の量を有する飲料を提供することが可能である。また、泡立てたくない飲料を混合する場合も、液体Lの量が規定量と違っても、確実に泡立てずに飲料を提供することができる。
〔実施の形態6〕
本発明の実施の形態6について、図8〜10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜5と同じである。
図8の(a)は本実施の形態に係る撹拌子100Fの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Fを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Fと、撹拌ユニット50Fの下方に設置された撹拌用モータ40と、該撹拌用モータ40の回転軸に取り付けられている回転誘導板41F(回転駆動ユニット)とを含む撹拌機構500Fの断面図である。この断面図は、(a)のF1−F2線で断面し、矢印方向に見た図である。また、図9は、上記回転誘導板41Fの上面図である。
調乳器1A(図3参照)は、撹拌ユニット50、撹拌用モータ40、および回転誘導板(図示せず)を含む撹拌機構に換えて、撹拌機構500Fを備えていてもよい。なお、調乳器1Aのうち調乳器本体2は、図3を用いて実施形態1にて説明したものと同様であるため、その説明を省略する。
(撹拌容器51)
撹拌容器51は、中心軸が軸AXである円筒形状の容器である。撹拌容器51の内底面には、軸AXを中心軸とする円柱形状の支持部52F(容器側凸部)が形成されている。支持部52Fは、撹拌容器51と一体に構成されており、軸AXを回転軸として撹拌子100Fを回転させる時の接触支持部となる。
支持部52Fの上面(頂点)には、支持曲面52Fa(容器側頂点凹部)および上面ガイド52Fb(リング状壁部)が設けられている。支持曲面52Faは凹面(凹状の曲面)であり、撹拌容器51の底面からの高さが軸AX上において最も低くなる。上面ガイド52Fbは、支持曲面52Faの周縁部であり、支持部52Fにおいて撹拌容器51の底面からの高さが最も高い部分から上方に突き出すように設けられている。支持曲面52Faおよび上面ガイド52Fbは、いずれも軸AXに対して回転対称な形状を有する。つまり、上面ガイド52Fbは、リング状の突起であると言い換えることもできる。また、支持部52Fの側面を側面ガイド52Fcと呼ぶ。
本実施の形態においては、撹拌容器51の内径Φは約110mmであり、高さは約70mmである。支持部52Fの直径Φは約20mmであり、軸AXにおける高さは底面から約5.1mmであり、上面ガイド52Fbの高さは底面から約5.9mmであり、支持曲面52Faの曲率Rは約100mmである。
(撹拌子100F)
撹拌子100Fは、円板状の板部103、3個の磁石101F、およびリブ状のリング108(第1のリンク状突起部)を備える。以下の説明においては、板部103の中心軸をBXとする。本実施の形態においては、撹拌子100Fの外径Φは約80mmである。
撹拌子100Fが安定回転している場合、言い換えると板部103の面が水平に保たれた状態で回転している場合には、軸BXは、撹拌容器51の中心軸AXと平行になる。一方、撹拌子100Fが不安定な回転をしている場合、言い換えると板部103の面が水平に保たれず傾きながら回転している場合には、軸BXも傾くため、軸AXに対して角度がつくことになる。
リング108は、裏面103aの磁石101Fよりも内周側に、軸BXを中心として形成される凸部である。本実施の形態においては、リング108の内径Φは約27mmであり、裏面103aからのリング108の高さは約3.5mmである。
さらに、裏面103aには、滑らかな軸曲面107(接触部、撹拌子側凸部)が形成されている。軸曲面107の形状は、軸BXを回転軸とする回転対称形であり、軸BXにおいて裏面103aからの高さがもっとも高くなる凸面(凸状の曲面)である。軸曲面107は、支持曲面52Faの曲率よりも小さい曲率を有するように形成される。本実施の形態においては、軸曲面107の軸BX上における裏面103aからの高さは約2.3mmであり、軸曲面107の曲率Rは約30mmである。
なお、支持曲面52Faおよび軸曲面107の構造は、逆であってもよい。つまり、支持曲面52Faが支持部52Fの上面に対して凸面に形成され、軸曲面107が裏面103aに対して凹面に形成されてもよい。この場合には、支持曲面52Faが、軸曲面107の曲率より小さい曲率を有するように形成される。
磁石101Fは、円柱状のネオジウム磁石である。磁石101Fは、板部103の裏面103aに3個配されている。具体的には、3個の磁石101Fは、軸BXを中心とする支持部回転円CC上に中心が等間隔で位置するように配されている。本実施の形態においては、磁石101Fの直径Φは約8mmであり、厚みは約5mmである。また、支持部回転円CCの直径Φは約40mmである。
磁石101Fは、インサート成形により撹拌子100F本体と一体に形成され、または撹拌子100Fに形成された挿入穴に磁石101Fを挿入した後、当該挿入穴に蓋を被せるように超音波により溶着されることで、撹拌子100Fの内部に密閉されている。このため、磁石101Fは、撹拌子100Fの外部に露出しない。磁石101Fを覆う撹拌子100Fの部分を突起部102Fと呼ぶ。3個の磁石101Fを覆う3個の突起部102Fと、リング108とにより、撹拌容器51の支持部52Fに適合し、撹拌子100Fを適切な位置に配置するための適合部106Fが構成される。
本実施の形態では、3個の磁石101Fの極性(S極からN極への方向)は、軸BXに平行であり、かつ、同じ向きである。このため、撹拌子100Fをどのような方向で撹拌容器51に配しても、磁石101Fと回転誘導板41F側の誘導磁石42Fとを磁力により容易に結合させることができる。
(回転誘導板41F)
図8の(b)に示すように、回転誘導板41Fは、撹拌容器51の下方に、撹拌用モータ40に固定された状態で配されている。回転誘導板41Fの回転中心は、撹拌容器51の中心軸である軸AXとほぼ重なっている。図9に示すように、回転誘導板41Fには3個の誘導磁石42Fが、撹拌子100Fの3個の磁石101Fと対を成すように同じ支持部回転円CC上に取り付けられている。撹拌用モータ40が回転誘導板41Fを回転させることで、磁力により回転誘導板41Fと結合された撹拌子100Fが同調して回転する。
撹拌用モータ40および回転誘導板41Fは、調乳器1Aが備える調乳器本体2の内部に搭載されている。そして、調乳作業を行う時に、撹拌容器51および撹拌子100Fを備える撹拌ユニット50Fを調乳器本体2にセットして使用される。調乳器本体2には、撹拌容器51のセット位置を拘束するための図示されていない位置決め機構が備わっているため、回転誘導板41Fの回転中心と撹拌容器51の軸AXとをほぼ同じ位置に合わせることができる。
(撹拌ユニット50Fの動作)
特許文献1に記載されているミルクファーマーの撹拌機構を代表とする一般的な撹拌機構は、撹拌子(回転体)の中心軸に複数の部品を使用することで、回転安定性の向上と摩擦による摩耗の低減、さらには騒音の低減を実現している。しかし、本実施の形態の調乳器のように、免疫力の弱い乳幼児に与えるミルクを生成する場合は、ミルクが付着した部品は毎回、確実に洗浄消毒する必要がある。そのため、撹拌機構を構成する部品は単純な形状であることが好ましく、部品数は少ないほど好ましい。さらに、各部品の着脱のし易さも重要である。
ここで、撹拌機構を構成する部品数を極力少なくし、各部品の着脱をし易くする場合、つまり、各部品の間で機械的な締結がなされておらず、ユーザーが各部品を任意に組み合わせるだけで撹拌の事前準備が整うように構成した場合について考える。この場合の欠点として、回転中心軸が一意に決まらないため、撹拌子(回転体)の回転挙動が不安定になり易い点が挙げられる。本実施の形態のように、撹拌子100Fを磁力締結により回転させる場合は、撹拌子100Fの回転が不安定になることで各磁石間の磁力に偏りが生じ、最終的には磁力締結が外れてしまい(脱調)、撹拌子100Fの回転が中断する虞がある。本実施の形態における上記問題点の解決方法を、図10を参照して説明する。
図10の(a)は、本実施の形態に係る撹拌機構500Fについて、撹拌子100Fの回転速度が低速から高速に遷移する場合における概略を示す断面図である。図10の(b)は、比較例に係る撹拌機構500F´について、撹拌子100Fの回転速度が低速から高速に遷移する場合における概略を示す断面図である。この断面図は、この断面図は、図8の(a)におけるF1−F3線で断面し、矢印方向に見た図である。
本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fにおいては、撹拌容器51の支持部52Fにおける最高点である上面ガイド52Fbと軸AX上における支持曲面52Faとの高さの差が、後述する比較例に係る撹拌ユニット50F´と比較して大きい。したがって、上面ガイド52Fbと撹拌子100Fの裏面103aとの距離が近い状態にある。このため、撹拌子100Fの回転速度が0である場合には、図10の(a)に示すように、撹拌子100Fは、支持部52Fの支持曲面52Faおよび上面ガイド52Fbの2点と接触した状態で静止する。このため、軸AXに対する軸BXの傾きは、後述する比較例に係る撹拌ユニット50F´における上記傾きと比較して小さい。
一方、比較例に係る撹拌ユニット50F´においては、撹拌容器51の支持部52Fにおける最高点である上面ガイド52Fbと軸AX上における支持曲面52Faとの高さの差が、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fと比較して小さい。したがって、上面ガイド52Fbと撹拌子100Fの裏面103aとの距離が離れている状態にある。このため、撹拌子100Fの回転速度が0である場合には、図10の(b)に示すように、撹拌子100Fは、支持部52Fの支持曲面52Faの内壁と撹拌容器51の内底面との2点と接触した状態で静止する。このため、軸AXに対する軸BXの傾きは、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fにおける上記傾きと比較して大きい。
撹拌ユニット50Fおよび50F´において、撹拌用モータ40を回転駆動すると、撹拌子100Fは、それぞれ上述した2点において撹拌容器51と接触した状態で回転を開始する。撹拌子100Fの回転速度が低速から高速(例えば約1000rpm)へ移行する加速域では、撹拌子100Fが備える磁石101Fと回転誘導板41Fが備える誘導磁石42Fとの間での吸引力と、撹拌子100Fが回転することで発生する遠心力とのバランスが不安定な状態である。このため、上記加速域においては撹拌子100Fの振動が発生し易い。
特に比較例に係る撹拌ユニット50F´においては、図10の(b)に示すように、軸AXに対する軸BXの傾きが大きいため、撹拌子100F側の磁石101Fと回転誘導板41F側の誘導磁石42Fとの間に働く吸引力に、磁石ごとに大きな偏りが発生する。一方、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fにおいては、図10の(a)に示すように、軸AXに対する軸BXの傾きが小さいため、磁石間に働く吸引力に生じる磁石ごとの偏りは小さい。このため、比較例に係る撹拌ユニット50F´は、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fと比較して、撹拌子100Fが上下振動し易いといえる。
また、比較例に係る撹拌ユニット50F´においては、図10の(b)に示すように、撹拌子100Fが軸BXから外周側に離れた場所で撹拌容器51と接触している。このため、撹拌子100Fの傾きが大きく、撹拌子100Fと撹拌容器51との接触による異音が大きくなる。一方、本実施の形態に係る撹拌ユニット50Fにおいては、図10の(a)に示すように、撹拌子100Fが軸BXの近傍で撹拌容器51と接触している。このため、撹拌子100Fの傾きが小さく、撹拌子100Fと撹拌容器51との接触による異音が小さくなる。さらに、本実施形態に係る撹拌ユニット50Fにおいては、上記傾きが小さいことで、撹拌子100Fが安定した回転状態に遷移するまでに要する時間が短くなる。安定した回転状態とは、撹拌子100Fの回転速度が十分に高速になり、撹拌子100Fが備える磁石101Fと回転誘導板41Fが備える誘導磁石42Fとの間の吸引力より撹拌子100Fの回転による遠心力の方が大きくなった状態である。この状態においては、撹拌子100Fは、軸BXの近傍の1点においてのみ撹拌容器51と接触した状態で、安定した水平回転を行う。
なお、撹拌子100Fの振動をさらに抑制し、脱調を発生させずに安定して回転させる手法としては、撹拌子100Fに設けられたリブ状のリング108の内径と、撹拌容器51に設けられた支持部52Fの外径との隙間を狭くすることで回転の拘束を増やす手法が挙げられる。
ただし、粘性の高い混合液体および/または固形物を含む液体を撹拌する場合には、撹拌子100Fの横振れも大きくなることから、撹拌子100Fのリング108と撹拌容器51の支持部52Fとの接触も増えることになり接触音が発生し易くなる。また、本実施の形態に係わる調乳器1Aにおいては、撹拌容器51は調乳器1Aに対して取り外し可能であり、図示していない位置決め構造によって撹拌用モータ40の回転中心と撹拌容器51の軸AXを合わせる方法を採用している。このため、撹拌用モータ40の回転中心軸と撹拌容器51の軸AXとが大きくズレてしまうと、騒音が大きくなるだけではなく、回転が不可能になる虞がある。
従って、撹拌子100Fに設けられたリブ状のリング108の内径と、撹拌容器51に設けられた支持部52Fの外径との隙間の大きさは、上記位置決め構造、撹拌する溶液の種類、接触音の大きさ等を基準にして適切に設定することが望ましい。
(撹拌ユニット50Fの効果)
撹拌ユニット50Fにおいては、撹拌子100Fの回転中心に対応する部分にて撹拌容器51と接触し、その他の部分では撹拌容器51と接触しないので、回転運動時の摩擦がさらに少なくて済む。また、凸部である撹拌子100Fの軸曲面107が、凹部である撹拌容器51の支持曲面52Faに規制されるので、撹拌子100Fの脱調の発生を抑制することができる。
また、撹拌子100Fの軸曲面107は、撹拌容器51の支持曲面52Faよりも曲率が大きいので、撹拌子100Fの回転中心が、支持曲面52Faの中心からずれても、支持曲面52Faの中心に復原するので、撹拌子100Fは、安定して回転することができる。また、撹拌容器51の支持曲面52Faの縁部に設けられた上面ガイド52Fbにより、撹拌子100Fの脱調の発生をさらに抑制することができる。
また、撹拌子100Fが高速回転してミルクを撹拌している場合には、図8の(b)に示すように、遠心力によって撹拌容器51内の外周においては液面が上昇し、中心では液面が下降する。この場合、液面が水平である場合と比較して空気に接触するミルクの表面積が増加する。したがって、ミルクの放熱面積が増加し、短時間で冷却することが可能になる。
図8の(a)に示すように、磁石101Fを覆う突起部102Fは、リブ状のリング108よりも外周側に突出した形状を有する。また、突起部102Fは、撹拌子100Fの裏面103a側に設けられているため、撹拌ユニット50Fによりミルクを撹拌する時には、中心の液面が下降した場合であっても常にミルクの中に位置するため、空気を巻き込むことなく効率的にミルクを撹拌することができる。
一方、撹拌子100Fの表面103b側、つまりミルクと空気との境界面が現れる側は、突起のない滑らかな平面となっている。このため、撹拌ユニット50Fは、撹拌子100Fが高速回転する場合においても、気泡の発生を抑制することができる。
また、上述した液面の変化があるため、撹拌容器51のサイズをミルクの調乳量よりも十分大きくしておく必要がある。撹拌容器51のサイズを十分に大きくすることで、ミルクをより冷却し易くすると共に、気泡の含有を軽減することができるものとなっている。また、調乳器1Aの給湯口6が撹拌容器51の中央付近に位置するため、撹拌子100Fの表面103bの中央付近における粉ミルクの溶け残りが抑制される。従って、撹拌子100Fを用いた撹拌ユニット50Fによると、気泡含有量が少なく、粉ミルクの溶け残りのないミルクを生成することができる。
〔実施の形態7〕
本発明の実施の形態7について、図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜6と同じである。
図11の(a)は、本実施の形態に係る撹拌子100Gの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Gを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Gと、実施の形態6における撹拌用モータ40および回転誘導板41Fとを含む撹拌機構500Gの断面図である。この断面図は、(a)のG−G線で断面し、矢印方向に見た図である。
撹拌ユニット50Gは、撹拌容器51と、撹拌子100Gを備える。ここで、実施の形態6の撹拌子100F(図8参照)には、裏面103aに、3個の磁石101Fを覆う突起部102Fと、リブ状のリング108とが設けられていた。そして、突起部102Fがリブ状のリング108よりも外周側に配されていることで、撹拌を促進できた。これに対し、本実施の形態に係る撹拌子100Gの裏面103aには、突起部102Fおよびリブ状のリング108に加えて、リブ状の外リング109(第2のリンク状突起部)が設けられている。外リング109は、リング108と同心円状に、かつ突起部102Fの外周側を囲むように配されている。撹拌子100Gの他の構成は、実施の形態6に係る撹拌子100Fと同様である。
本実施の形態に係る撹拌子100Gは、回転時に回転抵抗となる突起部102Fを外リング109により囲うことで、回転抵抗を大幅に減少させることができる。したがって、液体の撹拌に用いた場合に、実施の形態6に係る撹拌子100Fと比較して安定して回転速度を上げることができる。
特に、撹拌する液体の粘性が高い場合、または固形物を含んだ液体を撹拌する場合には、溶解途中の液体の中で濃度の偏りが発生するため、機械的な拘束がされていない撹拌子は不安定に振動し易い。この場合にも、撹拌子100Gは、突起物のない滑らかな表面103bによる遠心力によって、液体の撹拌を行うことができる。
なお、実施の形態6および7では、使用される磁石(磁石101Fおよび誘導磁石42F)は全てΦ8mm、かつ高さ5mmの、円柱形のネオジウム磁石に統一されている。しかし、これらの磁石について、全て統一されている必要はなく、撹拌する液体の粘性などを考慮して撹拌子と回転誘導板とを結合させる磁力を調整するために、磁石の材質、大きさ、または方向などを変更してもよい。
〔実施の形態8〕
本発明の実施の形態8について、図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜7と同じである。
図12の(a)は、本実施の形態に係る回転誘導板41Hを含む撹拌機構500Hの断面図であり、(b)は(a)に示す回転誘導板41Hの上面図であり、(c)は比較対象とする実施の形態6における回転誘導板41Fの上面図である。なお、図12の(b)・(c)では、回転誘導板41H・41Fに内在している誘導磁石42H・42Fを明示している。
本実施の形態に係る撹拌機構500Hは、実施の形態6に係る撹拌機構500Fに比べて、回転誘導板41Fに換えて回転誘導板41Hを含む点が異なり、その他の構成は同様である。
本実施の形態では、回転誘導板41Hに設けられる3個の誘導磁石42Hの極性は、支持部回転円CCに沿う方向(支持部回転円CCの接線方向)であって、平面視において左回りの向きとなっている。すなわち、誘導磁石42Hの向きは、実施の形態6における誘導磁石42Fの向きとは垂直となっている。
実施の形態6に係る撹拌機構500Fにおいては、回転誘導板41F(図8参照)に設けられた3個の誘導磁石42Fと、撹拌子100Fに設けられた3個の磁石101Fとは、全て極性が同じ向きであるように配置されている。このため、概略的には図12の(c)に示すように、回転誘導板41Fには、誘導磁石42Fに対し反極性を示す反極スポット42F´が形成されていると解釈できる。つまり、回転誘導板41Fの支持部回転円CC上には、誘導磁石42Fと上述の反極スポット42F´とが交互に配されることになり、それにしたがって磁力線が図12の(c)において点線矢印で示すように形成されている。
撹拌子100Fによる液体の撹拌中に大きな外乱が加わり、そのまま撹拌を続行すると、回転誘導板41Fの回転速度に撹拌子100Fの回転が追従できず、最終的には回転誘導板41Fと撹拌子100Fとの間の磁力による結合が外れる(脱調する)ことがある。上記の外乱の例としては、例えば撹拌子100Fの表面103bの外周の一点に、固形物の塊が強固に付着し、撹拌子100Fの重心が大きく偏ることなどが挙げられる。
このとき、撹拌用モータ40は、目標回転速度で回転するように制御されているため、撹拌子100Fが脱調すると、撹拌用モータ40にかかる負荷の減少に合わせて撹拌用モータ40に流れる電流値が減少する。電流値の変化が大きければ、その差分値に基づいて異常動作を検知し、エラー音などによりユーザーに脱調の発生を報知することができる。
しかし、お湯と粉ミルクを撹拌してミルクを生成する場合、1回に生成するミルク量は80ml〜240mlと範囲がある。このため、撹拌用モータ40にかかる負荷も、ミルク量および脱調するタイミングなどによって異なり、どのタイミングの脱調においても確実に異常動作を検知するのは難しい。そして、撹拌子100Fの脱調を検知できなかった場合は、撹拌用モータ40は脱調した状態のまま空回りし続けることになる。
実施の形態6の撹拌ユニット50Fにおいて上記の脱調が発生し、撹拌用モータ40が空回りし続けた場合、回転誘導板41Fは目標回転速度で回転し続け、撹拌子100Fは撹拌容器51の支持部52Fに嵌った状態で、回転方向にほぼ静止した状態となる。正確には、撹拌子100Fは脱調しているが回転誘導板41Fは回転し続けているため、回転誘導板41Fの誘導磁石42Fに励磁されて、撹拌子100Fは回転誘導板41Fの回転方向と同じ方向に、非常にゆっくり回転する。
このため、回転方向にほぼ静止した撹拌子100Fの磁石101Fの下方を、回転誘導板41Fの誘導磁石42Fと反極スポット42F´とが交互に通過する。撹拌子100Fの磁石101Fは、誘導磁石42Fには吸引され、反極スポット42F´には反発する。つまり、撹拌子100Fは吸引と反発とを繰り返すことで上下に振動する。上下に振動する撹拌子100Fは撹拌容器51の支持部52Fに繰り返し接触するため、非常に大きな異音が発生し続ける。
特に生後間もない乳児に対しては、夜間にミルクを調製し与える必要がある。このような状況において、騒音の発生は、乳児およびミルクを調製する者に精神的ストレスを与えるため、抑制されるべきである。
これに対し、本実施の形態に係る回転誘導板41Hにおいては、誘導磁石42Fにより形成される磁力線は、概略的には図12の(b)に実線矢印で示すような、回転方向に対して一方向の磁力線となる。このため、撹拌子100Fの脱調が発生し、撹拌用モータ40が空回りし続けた場合に、撹拌子100Fに発生する上下振動は非常に小さくなる。それに伴い、撹拌子100Fが撹拌容器51の支持部52Fに接触することで発生する異音も大幅に抑制される。
したがって、撹拌用モータ40に流れる電流値の変化から撹拌子100Fの脱調を検出できない場合においても、乳児およびミルクを調製する者に与える精神的ストレスは大いに軽減される。
〔実施の形態9〕
本発明の実施の形態9について、図13および図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜8と同じである。
図13の(a)は、本実施の形態に係る撹拌子100Iの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Iを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Iを含む撹拌機構500Iの断面図である。この断面図は、(a)のI−I線で断面し、矢印方向に見た図である。また、図14の(a)は、本実施の形態に係る撹拌機構500Fに含まれる回転誘導板41Iの上面図であり、(b)は比較対象である回転誘導板41Jの上面図である。
実施の形態6における撹拌子100Fおよび回転誘導板41Fは、それぞれ3個の磁石を備えおり、計6個の磁石は、極性が全て同じ向きになるように配置されていた。これに対し、本実施の形態においては、図13の(a)・(b)に示すように、撹拌子100Iは4個の磁石101Iを備える。4個の磁石101Iは、隣接する磁石の極性が互いに逆向きであるように配される。また、図14の(a)に示すように、回転誘導板41Iは4個の誘導磁石42Iを備える。回転誘導板41Iが備える4個の誘導磁石42Iも、隣接する磁石の極性が互いに逆向きであるように配される。
また、撹拌子100Iが備える4個の磁石101Iは、それぞれ突起部102Iにより覆われている。4個の突起部102Iにより、撹拌容器51の支持部52Fに適合し、撹拌子100Iを適切な位置に配置するための適合部106Iが構成される。
本実施の形態の撹拌ユニット50Iにおいては、撹拌子100Iと回転誘導板41Iとを結合させるための磁石の数が、実施の形態6の撹拌ユニット50Fより多い。このため、個々の磁石が有する磁力の強度が同一であれば、本実施の形態の撹拌ユニット50Iの方が実施の形態6の撹拌ユニット50Fより撹拌子100Iと回転誘導板41Iとを結合させる磁力が強くなり、脱調が発生しにくくなることは明白である。しかし、使用する磁石の数の増加に伴い、本実施形態の撹拌ユニット50Iは、実施の形態6の撹拌ユニット50Fより製造コストが上昇する。
上記の製造コストの上昇を抑制するために、本実施形態の撹拌ユニット50Iにおいて使用する磁石の磁力を、実施の形態6の撹拌ユニット50Fにおいて使用される磁石の磁力より弱くすることが考えられる。例えば本実施形態の撹拌ユニット50Iにおいて使用する磁石の磁力を、実施の形態6の撹拌ユニット50Fにおいて使用される磁石の磁力の3/4倍にした場合、撹拌子100Iと回転誘導板41Iとの間の結合力は実施の形態6の撹拌ユニット50Fにおける上記結合力と同程度である。しかも、個々の磁石を小型化し、製造コストの上昇を抑制することができる。
特に、撹拌子100Iに備えられる磁石101Iを小型化すると、磁石101Iを囲う突起部102Iも小型化することができる。したがって、撹拌子100Iの洗浄性を向上させることができる。
以下の説明では、本実施形態の撹拌ユニット50Iにおいて使用する磁石の磁力を、実施の形態6の撹拌ユニット50Fにおいて使用される磁石の磁力の3/4倍にした場合について記述する。
図13の(a)に示すように、撹拌子100Iに配された4個の磁石101Iは極性が交互に異なるように配置されている。同様に、図14の(a)に示すように、回転誘導板41Iの誘導磁石42Iも極性が交互になるように配されている。
ここで、図14の(b)は、本実施の形態の回転誘導板41Iと比較される対象である、回転誘導板41Jの上面図を示している。図14の(b)に示すように、回転誘導板41Jにおいては、4個の誘導磁石42Jは極性の向きが全て同じになるように配されている。このため、回転誘導板41Jには、誘導磁石42Jに対し反極性を示す反極スポット42J´が形成されると概略的に説明することができる。つまり、誘導磁石42Jと反極スポット42J´の交互配置に従って、図14の(b)に点線矢印で示したような磁力線が形成される。
しかし、反極スポット42J´は、実際には明確に現れるものではなく、ぼんやりとした範囲を伴って発生している。なぜならば、誘導磁石42Jからの磁力線が反極スポット42J´においてさほど集束しないためである。このため、回転誘導板41Jと撹拌子100Iとを効率よく結合させることができない。
これに対して、図14の(a)に示す本実施の形態の回転誘導板41Iでは、誘導磁石42Iの極性が交互に異なるように配置されている。したがって、図14(a)において実線矢印で示す、誘導磁石42Iの間で発生する磁力線は、それぞれの誘導磁石42Iにおいて高密度に収束する。このため、回転誘導板41Iと撹拌子100Iとを効率よく結合させることができる。
よって、本実施の形態における撹拌子100Iと回転誘導板41Iとは、効率的な磁力締結によって吸引されているため、同じ極性をすべて揃えて配された磁石配置(図14の(b)参照)の場合よりも脱調に対する耐性が高く、より安定した撹拌動作を可能とする。つまり、本実施の形態の撹拌子100Iは、実施の形態6の撹拌子100Fと比べた場合、磁石1個当たりの磁力を弱くすることができるだけではなく、安定した撹拌回転が可能となる点で優れている。
さらに、本実施の形態の撹拌ユニット50Iにおいて、撹拌子100Iが脱調し、回転誘導板41Iとの位置関係が最も締結磁力が強い位置に対して90度ずれた時、撹拌子100Iが備える4個の磁石101Iと、回転誘導板41Iが備える4個の誘導磁石42Iとの間に大きな反発力が発生する。回転誘導板41Iは撹拌用モータ40によって回転し続けているため、撹拌子100Iと回転誘導板41Iの間に発生する大きな反発力は、軸AXに平行な成分のみでなく、軸AXに対して斜めの成分も発生する。このため、機械的な拘束のなされていない撹拌子100Iは、その裏面103aに配されたリング108が撹拌容器51の支持部52Fから外れるように脱調する様子が確認できた。
つまり、撹拌子100Iの脱調が発生し、撹拌用モータ40が空回りし続けた場合でも、撹拌子100Iと撹拌容器51とが接触することによる異音の発生は抑制される。よって、撹拌用モータ40に流れる電流値の変化から撹拌子100Iの脱調を検出できない場合においても、乳児やミルクを調製する者に与える精神的ストレスは大きく軽減される。
〔実施の形態10〕
本発明の実施の形態10について、図15に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、実施の形態1〜9と同じである。
図15の(a)は本実施の形態に係る撹拌子100Jの上面図であり、(b)は(a)に示す撹拌子100Jを撹拌容器51に配した撹拌ユニット50Jと、撹拌ユニット50Jの下方に設置された撹拌用モータ40と、該撹拌用モータ40の回転軸に取り付けられている回転誘導板41F(回転駆動ユニット)とを含む撹拌機構500Jの断面図である。この断面図は、(a)のJ−J線で断面し、矢印方向に見た図である。
撹拌ユニット50Jは、撹拌容器51と、撹拌子100Jを備える。ここで、実施の形態6の撹拌子100F(図8参照)では、板部103の表面103bは、全体が平坦な形状である。これに対し、本実施の形態に係る撹拌子100Jでは、板部103Jの表面103Jbは、中央部103Jcが平坦であり、周縁部103Jdが外側に向かうにつれて緩やかに下降する形状となっている。撹拌子100Jの他の構成は、実施の形態6に係る撹拌子100Fと同様である。
本実施の形態に係る撹拌子100Jの表面103Jbは、周縁部103Jcが、実施の形態4の撹拌子100D(図6参照)の表面103Dbの周縁部と同様の形状である。従って、実施の形態4の撹拌子100Dと同様に、撹拌時における液体の流れによる抵抗を減らすことができるので、気泡の発生をさらに抑制することができる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る撹拌子100は、液体を撹拌するための撹拌容器51の底部(底面51a)に配される円盤状の撹拌子であって、外部からの磁気的な作用力により円盤の中心を回転中心として回転運動するものであり、上記撹拌容器の底部と対向する上記撹拌子の下面103aにおける上記回転中心から離間した位置に、上記撹拌容器の底部に向けて突出する少なくとも1つの突起部102を備えており、上記下面と反対側の上面103bは平面状である構成である。
上記構成によると、撹拌子は、上面が平面状であるため、上述のように、上記撹拌子の回転運動により上記撹拌子の上面から渦または乱流が発生することを抑制することができる。
また、上記撹拌子は、下面に突起部を有する。これにより、上述のように、上記撹拌容器の底部と上記撹拌子との間で発生する回転流を撹拌に有効に活用できると共に、上記回転流による渦または乱流が液面に影響を及ぼすことを抑制することができるので、気泡の発生を抑制することができる。さらに、上記撹拌子が回転することにより液体を撹拌する能力(撹拌力)を向上することができる。また、上記突起部は、下面に設けられているので、空気を噛み込む可能性が低く、従って、上記突起部による気泡の発生を抑制することができる。
本発明の態様2に係る撹拌子は、上記態様1において、上記上面は、周縁部が外側に向かうにつれて下方へ傾斜している形状であってもよい。この場合、上述のように、撹拌時における液体の流れによる抵抗を減らすことができるので、気泡の発生をさらに抑制することができる。
本発明の態様3に係る撹拌子は、上記態様2において、上記上面は、中央部が平坦な形状であってもよい。
このように、上記撹拌子の上面は、完全に平坦である必要は無く、上記撹拌子の全体のスケールで見た場合に平面に近い形状であればよい。例えば、上記撹拌子の上面は、上記回転運動に対して流線形であってもよい。また、上記液体に対し、抗力が発生する部材が設けられていない形状であってもよい。
また、上記突起部は、先端が上記撹拌容器の底部と接触するように延在していてもよい。この場合、上記撹拌力をさらに向上することができる。
本発明の態様4に係る撹拌子は、上記態様2において、上記下面には、3個以上の上記突起部が、上記回転中心に対して同心円状に設けられていてもよい。この場合、2個以下の上記突起部が設けられる場合に比べて、上記撹拌力をさらに向上することができる。なお、3個以上の上記突起部の重心が上記回転中心と一致する場合、上記撹拌子は安定して回転することができる。
本発明の態様5に係る撹拌子は、上記態様2または3において、上記下面には、上記回転中心を中心とする環状の上記突起部が設けられていてもよい。この場合、上記撹拌力をさらに向上することができる。また、環状の上記突起部は、重心が上記回転中心と一致するので、上記撹拌子は安定して回転することができる。このように、上記突起部は、種々の形状を取り得る。
本発明の態様6に係る撹拌子は、上記態様4または5において、上記下面は、縁部から、上記突起部にかけて次第に膨らんでいてもよい。この場合、撹拌時における液体の流れによる抵抗を減らすことができる。
本発明の態様7に係る撹拌子は、上記態様2から6において、上記磁気的な作用力を受けるための磁石であって、少なくとも一部が上記突起部の内部に設けられる磁石をさらに備えてもよい。この場合、磁石が、撹拌子において外部に近い位置に配置されることになるので、外部からの磁気的な作用力を受け易くなる。
なお、上記撹拌子の上記上面における上記回転中心に上面突起部(セパレータ105)が設けられていてもよい。この場合、例えば、液体に原材料を溶かして撹拌する場合、上記撹拌子の回転中心に原材料が位置しても、上記上面突起部により上記原材料が上記撹拌子の縁部に移動し易い。従って、上記原材料の溶け残りの発生を防止することができ、その結果、効率よく上記原材料を上記液体に溶かすことができる。また、上記撹拌子が回転しても、上記上面突起部における液体の流れによる抵抗はさほど大きくないので、気泡の発生の増加を抑制することができる。
また、上記上面突起部の表面に、複数の窪みが形成されていてもよい。この場合、さらに、効率よく原材料を溶かすことができる。
本発明の態様8に係る撹拌子は、上記態様1から7において、上記上面は、縁部から上記回転中心にかけて次第に膨らんでいてもよい。この場合、上面が平らな形状と比べて、撹拌時における液体の流れによる抵抗を減らすことができ、気泡の発生をさらに抑制することができる。
本発明の態様9に係る撹拌装置(調乳器1A)は、上記態様1から8の撹拌子と、上記撹拌子が配される撹拌容器とを備えていてもよい。この場合、上述の撹拌子と同様の作用効果を奏する。
本発明の態様10に係る撹拌装置は、上記態様9において、上記撹拌容器は、上記底部の位置であって、上記回転中心に対応する位置に上記撹拌子に向けて突出する容器側凸部(凸部52)を備えてもよい。
なお、上記撹拌子が上記容器側凸部を覆うように配置されてもよい。この場合、上記撹拌子は、上記回転中心からずれることなく安定して同じ場所で回転することができる。
また、上記撹拌子の下面における上記容器側凸部と対向する部分にて、該容器側凸部と接触するようになってもよい。この場合、上記撹拌子の回転中心に対応する位置が接触部となるので、回転運動時の摩擦がさらに少なくて済む。
本発明の態様11に係る撹拌装置は、上記態様10において、上記容器側凸部は、頂点が凹んだ容器側頂点凹部(支持曲面52Fa)を備えており、上記撹拌子は、上記容器側凸部と対向する位置に、上記撹拌容器の底部に向けて突出した撹拌子側凸部(軸曲面107)を備えており、上記撹拌子側凸部の先端が容器側頂点凹部の内壁と接触してもよい。この場合、上記撹拌子側凸部が上記容器側頂点凹部内に規制されるので、上記撹拌子の脱調の発生を抑制することができる。
なお、上記容器側頂点凹部は、凹状の曲面を有し、上記撹拌子側凸部は、凸状の曲面を有し、上記撹拌子側凸部の凸状の曲面は、上記容器側頂点凹部の凹状の曲面よりも曲率が大きいことが好ましい。この場合、上記撹拌子の回転中心が、上記容器側頂点凹部の中心からずれても、上記容器側頂点凹部の中心に復原するので、上記撹拌子は、安定して回転することができる。
また、上記撹拌容器は、上記容器側頂点凹部の縁部から上記撹拌子に向けて突出するリング状壁部(上面ガイド52Fb)を備えてもよい。この場合、上記撹拌子の脱調の発生をさらに抑制することができる。
本発明の態様12に係る撹拌装置は、上記態様10または11において、上記撹拌子は、上記撹拌容器の上記容器側凸部を取り囲むように、上記下面から上記撹拌容器の底部に向けて突出する第1のリング状突起部を備えてもよい。この場合、上記撹拌子は、さらに、上記回転中心からずれることなく安定して同じ場所で回転することができる。
本発明の態様13に係る撹拌装置は、上記態様12において、上記撹拌子は、上記下面において、第1のリング状突起部(リング108)よりも外側の位置に、上記撹拌容器の底部に向けて突出する少なくとも1つの点状突起部を備えてもよい。この場合、上記撹拌子の撹拌力をさらに向上することができる。
本発明の態様14に係る撹拌装置は、上記態様13において、上記撹拌子は、上記第1のリング状突起部および上記点状突起部(突起部102)を取り囲むように、上記下面から上記撹拌容器の底部に向けて突出する第2のリング状突起部(外リング109)を備えてもよい。この場合、上記撹拌子の回転抵抗を大幅に減少させることができ、安定して回転速度を上昇させることができる。
本発明の態様15に係る撹拌装置は、上記態様9から14において、上記撹拌容器が載置される載置面(設置面2a)を有し、上記磁気的な作用力により上記撹拌子を回転駆動するための回転駆動ユニット(撹拌用モータ40、回転誘導板41)をさらに備えることが好ましい。この場合、上記撹拌容器内の液体を上記撹拌子が安定して撹拌することができる。
なお、上記回転駆動ユニットは、撹拌用モータと、該撹拌用モータが回転駆動する回転誘導板とを備え、該回転誘導板は、同心円上に配置された複数の誘導磁石42を有しており、上記撹拌子は、上記回転誘導板における複数の誘導磁石に対応して配置された複数の磁石101を有していることが好ましい。この場合、上記回転誘導板における複数の誘導磁石と、上記撹拌子における複数の磁石とが、それぞれ磁気結合する。従って、撹拌用モータが上記回転誘導板を回転駆動することにより、上記撹拌子を回転駆動することができる。
また、上記回転誘導板における隣り合う誘導磁石の極性は、上記回転誘導板の回転の軸に平行であり、かつ、互いに逆向きであり、上記撹拌子における隣り合う磁石の極性は、上記撹拌子の回転の軸に平行であり、かつ、互いに逆向きであってもよい。この場合、上記回転誘導板における複数の誘導磁石と、上記撹拌子における複数の磁石とを、効率よく磁気結合することができる。
また、上記回転誘導板における複数の誘導磁石の極性は、上記同心円に沿う方向であり、上記撹拌子における複数の磁石の極性は、上記撹拌子の回転の軸に平行であってもよい。この場合、上記誘導磁石と上記磁石との反発力が低下する。これにより、上記撹拌子が脱調する一方、上記回転誘導板の回転が継続されて、上記撹拌子の磁石が上記回転誘導板の誘導磁石と引き合ったり反発したりすることによって発生する異音を抑制することができる。
また、上記撹拌容器は、上記撹拌子により上記液体と原材料とを撹拌してもよい。この場合、液体に原材料を溶かして撹拌することができる。
また、上記撹拌装置は、水に粉ミルクを溶かす調乳器であってもよい。
本発明の態様A1に係る撹拌子100Aは、液体Lと原材料(粉ミルクPM)とを撹拌するための撹拌容器51の底面51aに配される撹拌子100Aであって、平面視において円形状を有し、内部に配されている磁石101と、上記撹拌容器51の底面51aに配された平面視において円形状である凸部52の外周を囲むように、上記撹拌子100Aの回転中心(回転軸AX)に対して同心円状に、上記撹拌容器51の底面51aと対向する面(裏面103a)に配されている第1の突起部(適合部106・突起部102)とを備えていることを特徴とする。
上記構成によると、撹拌子100Aは、内部に磁石101が配されている。このため、撹拌容器51の外部に配された撹拌用モータ40からの磁力により、磁石101が磁気駆動することで、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転することができる。これにより、撹拌子と接続され撹拌子を回転させるための軸を設ける必要がない。このため、軸が回転することによる撹拌容器51内の飲料への気泡の混入を防止することができる。また、撹拌子100Aによると、撹拌子を回転させるための軸を設ける必要がないため、撹拌容器51への着脱が容易であり、利便性が高い。
そして、撹拌子100Aは、平面視において円形状を有するため、側面に突起物がなくスムーズに回転し、例えば、棒状の撹拌子と比べて、飲料の泡立ちを抑えることができる。
さらに、撹拌子100Aは、裏面103aに、撹拌容器51の底面51aに配された平面視において円形状である凸部52の外周を囲むように、撹拌子100Aの回転軸AXに対して同心円状に配されている第1の突起部(適合部106・突起部102)が配されている。これにより、撹拌子100Aが回転軸AXを中心に回転する際、第1の突起部(適合部106・突起部102)と凸部52とが一体となり、構造としての回転軸として機能する。このため、撹拌子100Aは、回転軸AXからずれることなく安定して同じ場所で回転するため、この点からも、例えば、棒状の撹拌子と比べて、飲料内の気泡の発生を抑えつつ、かつ、撹拌能力の低下を抑制することができる。
本発明の態様A2に係る撹拌子100Aは、上記態様A1において、上記第1の突起部(適合部106)は、3点以上の多点により、回転する上記撹拌子100Aを上記凸部52に当接させて支持するための複数の突起部102を有することが好ましい。上記構成により、撹拌子100Aは、複数の突起部102を備えるため、3点以上の多点により、凸部52の側面に支持される。このため、撹拌子100Aが回転しても、撹拌子100Aが凸部52から外れることを防止することができる。このため、安定して、撹拌子100Aは回転軸AXを中心に回転することができる。
本発明の態様A3に係る撹拌子100Aは、上記態様A1またはA2において、上記磁石101は、上記第1の突起部(適合部106・突起部102)内に配されていることが好ましい。
上記構成によると、磁石101の重みにより撹拌子100Aの自重が増し、撹拌用モータ40の磁石と磁力により結合することで、撹拌子100Aを、より、回転軸AXを中心に回転させることができる。すなわち、回転する撹拌子100Aを、より確実に、凸部52に装着した状態とすることができるため、撹拌している飲料への気泡の発生を抑えると共に、より確実に飲料を撹拌することができる。
加えて、磁石101を、突起部102内に配することで、磁石101を、磁石101の下端部近傍が、凸部52の外周を囲むように配することができる。これにより、撹拌子100Aの重心が下がり、より安定して回転させることができる。
本発明の態様A4に係る撹拌子100Bは、上記態様A1〜A3において、上記撹拌容器51の底面51aと対向する面(裏面103a)と逆側の面(表面103b)であって、上記回転中心(回転軸AX)上に配された上面突起部(セパレータ105)を備えていることが好ましい。上記構成によると、ユーザにより、原材料(粉ミルクPM)が撹拌容器51内に供給されたとき、原材料(粉ミルクPM)は、上面突起部(セパレータ105)の表面に沿って放射状に広がって、撹拌容器51内に供給される。これにより、撹拌容器51内で原材料(粉ミルクPM)の固まりが発生することを防止することができるため、原材料(粉ミルクPM)の溶け残りの発生を防止することができる。このため、効率よく原材料(粉ミルクPM)を溶かすことができる。
本発明の態様A5に係る撹拌子100Cは、上記態様A4において、上記上面突起部(セパレータ105C)の表面に、複数の窪みを有することが好ましい。上記構成によると、さらに、効率よく原材料(粉ミルクPM)を溶かすことができる。
本発明の態様A6に係る撹拌子100Dは、上記態様A1〜A3において、上記撹拌容器51Dの底面51Daと対向する面(裏面103Da)と逆側の面(表面103Db)は、縁部から上記回転中心(中央部105D)にかけて次第に膨らんでいることが好ましい。上記構成によると、ユーザーが、撹拌容器51D内に原料(粉ミルクPM)を入れたとき、撹拌子100Dの中央部105Dに偏ることなく、効率よく撹拌容器51D内に供給することができる。このため、原料(粉ミルクPM)の溶け残りを防止することができる。加えて、撹拌子100Dの表面103Dbが平らな形状と比べて、撹拌時の水流の抵抗を減らす効果がある。このため、さらに、飲料内の気泡の発生を防止することができる。
本発明の態様A7に係る撹拌子100Dは、上記態様A1において、上記第1の突起部(適合部106D)は、縁部から上記撹拌容器51Dの底面51Daと接触する部分にかけて次第に膨らんでいることが好ましい。上記構成により、撹拌時の水流の抵抗を減らすとともに、撹拌容器51Dと撹拌子100D間の摩擦抵抗を低減することができる。
本発明の態様A8に係るミキシング容器(撹拌ユニット50)は、上記態様A1〜A7において、上記撹拌子100Aと、上記底面51aに配された凸部52を覆って上記撹拌子100Aが配される撹拌容器51とを備えていることが好ましい。上記構成により、飲料内の気泡の発生を抑えつつ、かつ、撹拌能力の低下が抑制されたミキシング容器(撹拌ユニット50)を得ることができる。
本発明の態様A9に係る飲料生成装置(調乳器1A)は、上記態様A8において、上記ミキシング容器(撹拌ユニット50)と、上記ミキシング容器(撹拌ユニット50)の設置面2aの下方に配され、上記撹拌子100Aを磁気駆動するための撹拌用モータ40とを備えていることが好ましい。上記構成により、飲料内の気泡の発生を抑えつつ、かつ、撹拌能力の低下が抑制された飲料生成装置(調乳器1A)を得ることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。