JP6068642B2 - シリコンターゲット構造体の製造方法およびシリコンターゲット構造体 - Google Patents

シリコンターゲット構造体の製造方法およびシリコンターゲット構造体 Download PDF

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Description

本発明は、SiO2薄膜の形成に用いられるシリコンターゲットをバッキングプレートに接合してなるシリコンターゲット構造体の製造方法とシリコンターゲット構造体に関する。詳しくは、スパッタリング中にハイパワーをかけてもシリコンターゲットの割れや剥離を生じ難いターゲット構造体の製造方法とシリコンターゲット構造体に関する。
本願は、2013年7月18日に、日本に出願された特願2013−149898号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
スパッタリングに使用されるターゲットは、通常、ターゲット材を銅、銅合金などからなるバッキングプレートに接合した状態で使用される。ターゲット材とバッキングプレートとを接合するボンディング材料には、負荷される大電力に対する耐久性と良好な熱伝導性が必要である。このため、通常、ボンディング材料としてメタルが使用されており、メタルのなかでも融点が低く、良好な柔軟性を有するインジウムはんだ(融点約156℃)が広く使用されている。
しかし、シリコン系のターゲット材は、銅系のバッキングプレートと熱膨張、弾性率等が大きく異なり、またインジウムとの濡れ性も良くない。このため、スパッタ中に、シリコンターゲット材の割れや剥離が生じやすい。このターゲット材の割れや剥離によってシリコン破片や異常放電などが生じ、これが成膜表面のパーティクルを引き起こす問題があった。
そこで、ターゲット材とバッキングプレートとの接着強度を高めるために、ターゲットの接合面(スパッタ面とは反対側)をサンドブラストなどで粗くすることにより、アンカー効果を発揮させることが行われている。しかし、シリコンターゲットとバッキングプレートとの接合性が十分ではないので、局部的にインジウムはんだが損傷する。その結果、伝熱不良のために異常発熱してシリコンターゲットが割れ、この割れにより生じるシリコン破片や異常放電が成膜表面のパーティクル発生の原因になる。また、ターゲット表面をサンドブラストなどで粗くすると、表面に割れの起点を多数形成することになるので、ターゲットの強度が低下して割れ易くなると云う問題がある。
一方、シリコンターゲット材側にInとAuの合金(第1ボンディング層)を用い、バッキングプレート側にInはんだ(第2ボンディング層)を用いたシリコンターゲットが知られている(特許文献1:特許第3660013号)。このシリコンターゲットは第1ボンディング層がAuを含むのでシリコンターゲット材と第1ボンディング層との濡れ性が良くなり、さらに第1ボンディング層と第2ボンディング層は共通してInを含むので互いに濡れ性が良く、接合強度が向上する効果を有している。しかし、シリコンターゲット材にIn−Au合金層を形成することが難しい。しかもIn−Au合金はかなり高価であるので、経済性にも問題がある。
特許第3660013号公報(特開平8−269703号公報)
本発明は、シリコンターゲット構造体における従来の上記課題を解決したものであり、スパッタリング中にハイパワーをかけてもシリコンターゲットの割れや剥離を生じ難く、しかも容易に製造することができるシリコンターゲット構造体の製造方法とシリコンターゲット構造体とを提供する。
本発明の第一の態様は、以下の構成を有するシリコンターゲット構造体の製造方法に関する。
〔1〕シリコンターゲットの接合面にAg膜を形成し、前記Ag膜と銅バッキングプレートの間にインジウムはんだを介在させて前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートと一体にし、前記インジウムはんだを加熱溶融して前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートに接合することによって、前記シリコンターゲットが前記銅バッキングプレートに一体に接合された構造体を製造するシリコンターゲット構造体の製造方法。
〔2〕前記インジウムはんだを加熱溶融することによって、前記シリコンターゲット側の銀リッチな層と前記銅バッキングプレート側のインジウムリッチな層を有する接合層を形成し、それにより前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートに接合する上記〔1〕に記載のシリコンターゲット構造体の製造方法。
〔3〕Agを含有するAgペースト、またはAg粉および融着成分を含有するAgペースト、またはAg2O粉を有機溶剤でペーストにしたAg2Oペーストをペーストとして用い、前記ペーストを前記シリコンターゲットの前記接合面に塗布することにより前記Ag膜を形成する上記〔1〕または上記〔2〕に記載のシリコンターゲット構造体の製造方法。
本発明の第二の態様は、以下の構成からなるシリコンターゲット構造体に関する。
〔4〕シリコンターゲットが接合層を介して銅バッキングプレートと一体に接合されている構造体であって、前記接合層が前記シリコンターゲット側の銀リッチな層と前記銅バッキングプレート側のインジウムリッチな層とを有しているシリコンターゲット構造体
〔5〕引張応力2.9MPaに対して、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合が保たれる上記[4]に記載のシリコンターゲット構造体。
〔6〕引張応力2.5MPaに対して、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合が保たれる上記[4]に記載のシリコンターゲット構造体。
〔7〕前記シリコンターゲットの接合面に平行な方向に引張応力を負荷した際に、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合よりも、インジウムリッチな層の内部が先に破壊される上記[4]に記載のシリコンターゲット構造体。
本発明のシリコンターゲット構造体の製造方法によれば、スパッタリング中にハイパワーをかけてもシリコンターゲットの割れや剥離が生じ難いシリコンターゲット構造体を容易に製造することができる。また、本発明のシリコンターゲット構造体によれば、スパッタリング中にハイパワーをかけても割れや剥離が生じ難い。
本発明の実施形態に係るシリコンターゲット構造体の長手方向の模式断面図(シリコンターゲットの接合面に垂直な断面の模式図)である。 本発明の実施形態に係る製造方法を示すシリコンターゲット構造体の模式断面図である。 Ag粉の銀ペーストを用いて形成されたAg膜の組織を示す顕微鏡写真である。 Ag2Oペーストを用いて形成されたAg膜の組織を示す顕微鏡写真である。 本発明の実施形態に係るシリコンターゲット構造体の断面のSEM画像である。 図5のA部の拡大図である。 引張強度試験で用いる試験片の模式図である。
以下に、本発明の一実施形態に係るシリコンターゲット構造体の製造方法およびシリコンターゲット構造体について、図面を参照して説明する。
〔製造方法〕
本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、図1のように、シリコンターゲット11が接合層12を介して銅バッキングプレート13と一体に接合されている構造体であって、図2の右図のように上記接合層12がシリコンターゲット11側の銀リッチな層12a(銀が主体の層)と銅バッキングプレート13側のインジウムリッチな層12b(インジウムが主体の層)を有している。
本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、図2のように、シリコンターゲット11の接合面(図2では下面)にAg膜20を形成した後に、該Ag膜20と銅バッキングプレート13の間にインジウムはんだ21を介在させてシリコンターゲット11を銅バッキングプレート13と一体にし、インジウムはんだ21を加熱溶融してシリコンターゲット11を銅バッキングプレート13に接合することによって製造することができる。すなわち、本実施形態のシリコンターゲット構造体10の製造方法は、シリコンターゲット11の接合面にAg膜20を形成する工程と、Ag膜20が形成されたシリコンターゲット11と銅バッキングプレート13とインジウムはんだ21とを、Ag膜20と銅バッキングプレート13の間にインジウムはんだ21が位置するように積層する工程と、積層されたシリコンターゲット11と銅バッキングプレート13とインジウムはんだ21とをインジウムはんだ21が溶融する温度まで加熱する工程と、を備える。
まず、Ag膜20について説明する。シリコンターゲット11は、スパッタ面(図2では上面)と、スパッタ面とは反対側の接合面(図2では下面)とを有する。Ag膜20は、シリコンターゲット11の接合面にAg膜形成用のペーストを塗布し、これを焼成することにより形成される。Ag膜形成用のペーストとして、Agを含有するAgペースト、Ag粉および融着成分を含有するAgペースト、またはAg2O粉を有機溶剤でペーストにしたAg2Oペーストを用いることができる。
Agを含有するAgペーストは、例えば銀アルコキシド等を利用したペーストであり、具体的には、アルコールと銀を結合させたペーストである。このようなAgペーストを用いる場合、シリコンターゲット11の接合面にこのAgペーストを塗布し、加水分解などによってAgを析出させてAg膜を形成する。
Ag粉および融着成分を含有するAgペーストは、例えば、平均粒子径がサブミクロンであり、ペースト全体の質量に対し80質量%〜85質量%のAg粉に融着成分となるガラスフリット1〜10質量%を混合し、バインダー成分(樹脂と溶剤)5〜19質量%を加えてペーストにしたものである。Ag粉の組成が純度95%以上であり、Ag粉の平均粒径が50μm程度であることが好ましい。バインダー成分の溶剤としてテキサノールを用いることができる。このようなAgペーストを用いる場合、シリコンターゲット11の接合面に塗布した銀主成分のペースト、すなわちAg粉および融着成分を含有するAgペーストを350℃〜400℃で50分〜1時間程度加熱してバインダーを除去し、さらに700℃〜900℃で5分〜15分焼成してAg膜が形成される。なお、加熱前のAgペーストの塗布量を単位面積あたり0.1g/cmとすることが好ましい。
Ag2Oペーストは、例えば、平均粒子径が数ミクロンであり、ペースト全体の質量に対し80質量%〜85質量%のAg2O粉を有機溶剤でペーストにしたものである。このようなAg2Oペーストを用いる場合、シリコンターゲットの接合面に塗布された酸化銀主成分のペーストを350℃〜400℃で5分〜15分加熱することによってAg2Oが還元されてAg膜が形成される。なお、加熱前のAg2Oペーストの塗布量を単位面積あたり0.1g/cmとすることが好ましい。
Ag粉および融着成分を含有するAgペースト(ガラスフリットを混合したAgペースト)を上記の条件で加熱、焼成して形成されたAg膜20の組織状態を図3に示す。図3は、Ag膜20を膜厚方向(シリコンターゲット11の接合面に垂直な方向)からデジタルマイクロスコープを用いて撮影した顕微鏡写真である。図3において、白い部分が銀粒子(Ag粒子)20aであり、黒い部分がガラス粒子20bである。図3のように、このAg膜20は、10μm前後のAg粒子20aの隙間を、微細なガラス粒子20bが埋め尽くした状態に形成されている。一方、Ag2Oペーストを加熱して形成されたAg膜20の組織状態を図4に示す。図4も図3と同様に撮影された顕微鏡写真である。図4において、白い部分は銀粒子20dであり、黒い部分が銀粒子20dの隙間(空隙)20cである。このAg膜20は、1μm以下のAg粒子20dが微細な空隙20cを保って凝集した状態に形成されている。
図2に示すように、上述の方法でシリコンターゲット11の接合面にAg膜20を形成した後に、該Ag膜20と銅バッキングプレート13の間にインジウムはんだ21を介在させてシリコンターゲット11を銅バッキングプレート13と一体にし、インジウムはんだ21を加熱溶融してシリコンターゲット11を銅バッキングプレート13に接合する。
インジウムはんだ21は、インジウム(In:100%)またはインジウム合金(Sn-In系など)などが用いられる。
Ag膜20と銅バッキングプレート13の間にインジウムはんだ21が位置するように積層されたシリコンターゲット11、銅バッキングプレート13、およびインジウムはんだ21を、インジウムはんだ21の融点以上(約200℃〜約250℃)に加熱し、加圧(約10〜100g/cm2程度)しながら200℃〜250℃の範囲内の一定温度に1〜10分間保持する。これによりインジウムはんだ21が溶融して液相が形成され、この液相が凝固することによりシリコンターゲット11と銅バッキングプレート13との間に接合層12が形成される。それと共に、シリコンターゲット11と銅バッキングプレート13とが接合される。ここで、加熱保持時間が長すぎるとインジウムとAgが反応してAgが無くなってしまうので、高温保持時間は短いことが好ましく、本実施形態では高温保持時間を1〜10分とする。
このようにして形成された接合層12では、図2の右図で模式的に示されるように、シリコンターゲット11側に銀リッチな層12aが形成され、銅バッキングプレート13側にインジウムリッチな層12bが形成される。そして、このような接合層12が形成される過程において、シリコンターゲット11が銀リッチな層12aに密着し、インジウムリッチな層12bに銅バッキングプレート13が密着したシリコンターゲット構造体10が形成される。
このように形成されたシリコンターゲット構造体10の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を図5、6に示す。図5は、Ag粉および融着成分を含有するAgペーストを用いて形成されたシリコンターゲット構造体10の、シリコンターゲット11の接合面に垂直な断面のSEM画像である。図6は図5のA部の拡大図である。
図6に示されるように、銀リッチな層12aはインジウムリッチな層12bとシリコンターゲット11との間に形成された薄い層であり、図6では約1μmの厚さを有する。銀リッチな層12aは、インジウムリッチな層12bよりも銀が多く、インジウムが少ない層である。具体的には、銀を9質量%以上含有する層である。インジウムリッチな層12bは、銀リッチな層12aよりもインジウムが多く、銀が少ない層である。具体的には、インジウムを50質量%以上含有する層である。
なお、上記の銀リッチな層12aおよびインジウムリッチな層12bの成分組成は、シリコンターゲット11の接合面に垂直な断面についてエネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことにより測定される。
〔シリコンターゲット構造体〕
本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、図1および図2のように、シリコンターゲット11が接合層12を介して銅バッキングプレート13と一体に接合されている構造体であって、上記接合層12がシリコンターゲット11側の銀リッチな層12aと銅バッキングプレート11側のインジウムリッチな層12bを有している。
図1に本実施形態のシリコンターゲット構造体を示す。図1に示すように、本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、板状のシリコン結晶からなるシリコンターゲット11が接合層12を介して銅バッキングプレート13に接合された構造体である。
シリコンターゲット11を割れ難くするために、1300℃で5時間アニール処理した板状のシリコン結晶をシリコンターゲット11として用いることが好ましい。さらに、シリコンターゲット11のエッジ部分を研磨処理ないしエッチング処理することにより、エッジ部分の加工損傷の長さを1μm以下とすることが好ましい。
図2に示すように、接合層12は銀リッチな層12aとインジウムリッチな層12bとを備える。シリコンターゲット11の接合面上のAg膜20と銅バッキングプレート13との間にインジウムはんだ21を介在させた状態で、インジウムはんだ21を加熱溶融してシリコンターゲット11を銅バッキングプレート13に接合する過程において、Ag膜20中の銀とインジウムはんだ21中のインジウムとの相互拡散が進み、シリコンターゲット11側は銀リッチな層12aになり、銅バッキングプレート13側はインジウムリッチな層12bになる。この銀リッチな層12aとインジウムリッチな層12bとを合わせて接合層12と云う。シリコンターゲット11は銀リッチな層12aに密着しており、インジウムリッチな層12bは銅バッキングプレート13に密着している。
Ag膜20は、上述した通り、例えば、Agを含有するAgペースト、Ag粉および融着成分を含有するAgペースト、またはAg2O粉を有機溶剤でペーストにしたAg2Oペーストを用いて形成される。Ag膜20の膜厚は1μm〜1mmが良く、5μm〜15μmが好ましく、10μm前後がより好ましい。Ag膜が1μmより薄いと、Agとインジウムとが反応してAgが消滅する場合があり、Ag膜が1mmより厚いとコスト高である。
インジウムはんだ21の厚さは0.1μm〜0.3μmが好ましい。銅バックキングプレート13は、例えば、銅含有量99質量%以上の無酸素銅あるいは銅合金である。
以上説明した本実施形態のシリコンターゲット構造体10及びその製造方法によれば、シリコンターゲット11がAg膜20に接触しており、シリコンに対してAgは親和性が高いので、シリコンターゲット11とAg膜20とが強固に接合される。また、本実施形態のシリコンターゲット構造体10の製造方法では、シリコンターゲット11の接合面に形成されたAg膜20と銅バッキングプレート13との間にインジウムはんだ21を介在させた状態で、インジウムはんだ21を加熱溶融することにより、シリコンターゲット11を銅バッキングプレート13に接合する。このような方法によれば、溶融したインジウムはんだ21が凝固する際にインジウムおよび銀の相互拡散が進み、インジウムを含む銀リッチな層12aと銀を含むインジウムリッチな層12bとが形成される。また、銅バッキングプレート13中に銀およびインジウムが拡散するので、接合層12(インジウムリッチな層12b)と銅バッキングプレート13とは強固に接合される。さらに、銀はインジウムに対して濡れ性が良いので、銀リッチな層12aとインジウムリッチな層12bは強固に一体化されて接合層12を形成する。また、インジウムリッチな層12bは銅バッキングプレート13に接触しており、インジウムは銅に対して濡れ性が良いので、インジウムリッチな層12と銅バッキングプレート13とはさらに強固に接合される。従って、本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、シリコンターゲット11と接合層12、接合層12と銅バッキングプレート13とが強固に接合されるので、ハイパワー(高出力(高電力))をかけてもシリコンターゲット11の割れや剥離を生じ難い。
なお、Ag粉および融着成分を含有するAgペーストを用いてAg膜20を形成した場合、シリコンターゲット11表面の酸化層SiOと、Agペーストの融着成分であるガラス質との結合によって、シリコンターゲット11とAg膜20との密着性が向上する。また、Ag2O粉を有機溶剤でペーストにしたAg2Oペーストを用いてAg膜20を形成した場合、Ag2OとSiOの極薄膜層がSi(シリコンターゲット11)とAg膜20との界面に形成されるので、シリコンターゲット11とAg膜20との密着性が向上する。
本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、例えば、シリコンターゲット11の接合面に平行な方向に負荷される引張応力2.9MPaに対して、シリコンターゲット11とAg膜20との界面の接合、および銀リッチな層12aとインジウムリッチな層12bとの界面の接合を維持する接合強度を有する。後述する試験例では、本実施形態のシリコンターゲット構造体10に2.9MPaの引張応力を加えると、シリコンターゲット11と銀リッチな層12aとの界面および銀リッチな層12aとインジウムリッチな層12bとの間は剥離せず、インジウムリッチな層12bの内部が破壊される。この試験例によれば、本実施形態のシリコンターゲット構造体10のシリコンターゲット11と銀リッチな層12aとの界面は、インジウムはんだ21内部の破壊強度よりも大きな接合強度を有している。このように、本実施形態のシリコンターゲット構造体10によれば、シリコンターゲット11と銀リッチな層12aとの接合性が高いので、シリコンターゲット11と銅バッキングプレート13とが強固に接合される。その結果、熱伝導性が向上する。
本実施形態のシリコンターゲット構造体10は、シリコンターゲット11が強固に銅バッキングプレート13に接合されるので、ハイパワーを加えてもシリコンターゲット11が割れ難い。従って、シリコンターゲット11の使用寿命が長くなる利点を有する。また、接合強度を高めるためにシリコンターゲット11の接合面を粗くする必要が無いので、低コストでシリコンターゲット構造体10を製造できる。さらに、In−Au合金よりも容易に、かつ格段に低コストでAg膜20を形成することができる。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
本発明の実施形態に係る実施例を比較例と共に以下に示す。引張強度試験を規格JIS Z 2241:2011(ISO 6892-1:2009に基づく)に従って行った。また、引張強度試験における引張方向をシリコンターゲット11の接合面に平行な方向とした。引張試験強度試験における試験片を、図7に模式的に示される形状とした。詳細には、引張方向TDにおいて、シリコンターゲット110と銅バッキングプレート130とをずらして配置し、シリコンターゲット110と銅バッキングプレート130との間に接合層120を後述する方法で形成した。シリコンターゲット110及び銅バッキングプレート130の接合層120と逆側の端部を、それぞれ試験片を引張試験機に取り付けるためのチャック部とし、チャック部を樹脂111、131で被覆した。樹脂111、131を互いの厚みが等しくなるように成形し、引張方向TDがシリコンターゲット11の接合面に平行となるようにした。
〔実施例1〕
サブミクロンのAg粉80質量%にガラスフリット5質量%を混合し、残部が樹脂および溶剤の銀ペーストを、シリコンターゲット(厚さ10mm)の接合面にスクリーン印刷で塗布した。次に、銀ペーストの塗布されたシリコンターゲットを370℃で1時間加熱してバインダー成分を除去した後に、800℃に加熱して10分保持(昇温10℃/min)した後に室温まで冷却し、膜厚約10μmのAg膜を形成した。次に、このAg膜を形成したシリコンターゲットと銅バッキングプレート(厚さ15mm)の間に、インジウムはんだ(層厚0.2mmのシート)を挿入した。このように積層されたシリコンターゲット、銅バッキングプレート、及びインジウムはんだを200℃に加熱し加圧した。このように、シリコンターゲットと銅バッキングプレートとを一体に接合し、シリコンターゲット構造体を製造した。
このシリコンターゲット構造体について引張試験を行ったところ、引張応力2.9MPaにおいて、ターゲットと銀リッチな層の界面は剥離せずに、インジウムリッチな層の内部が破壊された。
〔実施例2〕
数ミクロンのAg2O粉85質量%を有機溶剤15質量%でペーストにした酸化銀ペーストを用い、シリコンターゲット(厚さ10mm)の接合面にこの酸化銀ペーストをスクリーン印刷で2回塗布した。次に、銀ペーストの塗布されたシリコンターゲットを400℃に加熱して10分保持(昇温10℃/min)した後に室温まで冷却し、膜厚約10μmのAg膜を形成した。このAg膜を形成したシリコンターゲットと銅バッキングプレート(厚さ15mm)の間に、インジウムはんだ(層厚0.2mmのシート)を挿入した。このように積層されたシリコンターゲット、銅バッキングプレート、及びインジウムはんだを200℃に加熱し加圧した。このように、シリコンターゲットと銅バッキングプレートとを一体に接合し、シリコンターゲット構造体を製造した。
このシリコンターゲット構造体について引張試験を行ったところ、引張応力2.5MPaにおいて、ターゲットと銀リッチな層の界面は剥離せずに、インジウムリッチな層の内部が破壊された。
〔比較例1、2〕
シリコンターゲット(厚さ10mm)の接合面をサンドブラストで粗くした後に、ターゲットと銅バッキングプレート(厚さ15mm)の間に、インジウムはんだ(層厚0.2mmのシート)を挿入した。このように積層されたシリコンターゲット、銅バッキングプレート、及びインジウムはんだを200℃に加熱し加圧した。このように、シリコンターゲットと銅バッキングプレートとを一体に接合し、シリコンターゲット構造体を製造した。
このシリコンターゲット構造体について引張試験を行ったところ、引張応力1.6MPaにおいて、ターゲットとインジウムはんだの界面で剥離断した(比較例1)。
また、シリコンターゲットの接合面をサンドブラストせずに、比較例1と同様の条件で比較例2のシリコンターゲット構造体を製造した。詳細には、シリコンターゲットの接合面をサンドブラストせずに、ターゲットと銅バッキングプレート(厚さ15mm)の間に、インジウムはんだ(層厚0.2mmのシート)を挿入して、200℃に加熱し加圧して一体に接合した。この場合、引張応力1.5MPaにおいて、ターゲットとインジウムはんだの界面で剥離した(比較例2)。
〔参考例〕
実施例1のシリコンターゲットのAg膜の表面に溶融したインジウムを載せ、温度をインジウムの融点以上(210℃)に保ち、Ag膜に対する溶融インジウムの接触角を測定すると77°であった。同様に、実施例2のシリコンターゲットのAg膜について溶融インジウムの接触角を測定すると76°であった。
一方、比較例1および比較例2のシリコンターゲット接合面について同様に溶融インジウムの接触角を測定すると何れも116°であった。
この接触角から、比較例1、2よりも、実施例1、2のAg膜はインジウムに対して格段に濡れ性が高いことがわかる。
本発明のシリコンターゲット構造体の製造方法によれば、スパッタリング中にハイパワーをかけてもシリコンターゲットの割れや剥離が生じ難いシリコンターゲット構造体を容易に製造することができる。また、本発明のシリコンターゲット構造体によれば、スパッタリング中にハイパワーをかけても割れや剥離が生じ難い。このため、本発明の方法で形成されたシリコンターゲット構造体および本発明のシリコンターゲット構造体を用いることにより、パーティクルの少ないSiO薄膜を形成できる。
10:シリコンターゲット構造体
11:シリコンターゲット
12:接合層
12a:銀リッチな層
12b:インジウムリッチな層
13:銅バッキングプレート
20:Ag膜
21:インジウムはんだ

Claims (7)

  1. シリコンターゲットの接合面にAg膜を形成し、前記Ag膜と銅バッキングプレートの間にインジウムはんだを介在させて前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートと一体にし、前記インジウムはんだを加熱溶融して前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートに接合することによって、前記シリコンターゲットが前記銅バッキングプレートに一体に接合された構造体を製造するシリコンターゲット構造体の製造方法。
  2. 前記インジウムはんだを加熱溶融することによって、前記シリコンターゲット側の銀リッチな層と前記銅バッキングプレート側のインジウムリッチな層を有する接合層を形成し、それにより前記シリコンターゲットを前記銅バッキングプレートに接合する請求項1に記載のシリコンターゲット構造体の製造方法。
  3. Agを含有するAgペースト、またはAg粉および融着成分を含有するAgペースト、またはAgO粉を有機溶剤でペーストにしたAgOペーストをペーストとして用い、前記ペーストを前記シリコンターゲットの前記接合面に塗布することにより前記Ag膜を形成する請求項1または請求項2に記載のシリコンターゲット構造体の製造方法。
  4. シリコンターゲットが接合層を介して銅バッキングプレートと一体に接合されている構造体であって、
    前記接合層が前記シリコンターゲット側の銀リッチな層と前記銅バッキングプレート側のインジウムリッチな層とを有しているシリコンターゲット構造体。
  5. 引張応力2.9MPaに対して、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合が保たれる請求項4に記載のシリコンターゲット構造体。
  6. 引張応力2.5MPaに対して、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合が保たれる請求項4に記載のシリコンターゲット構造体。
  7. 前記シリコンターゲットの接合面に平行な方向に引張応力を負荷した際に、前記シリコンターゲットと前記銀リッチな層との界面の接合よりも、インジウムリッチな層の内部が先に破壊される請求項4に記載のシリコンターゲット構造体。
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