JP6068156B2 - エンジン制御装置 - Google Patents
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Description
しかし、このような急速暖機中には、例えば燃料性状のばらつき等に起因して、燃焼が不安定になる場合がある。
また、特許文献2には、急速暖機中のエンジンの回転速度変動(ラフネス)に基づいて点火時期を補正するとともに、O2センサの活性化前(A/Fフィードバック制御の開始前)には空燃比をリッチ化することが記載されている。
また、特許文献3には、筒内噴射(直噴)エンジンにおいて、点火時期を遅角させた急速暖機中におけるアイドル回転数の制御性を改善するため、燃料噴射時期によって回転数を制御することが記載されている。
このような問題に対応するため、燃焼変動が検出された場合、点火遅角量を減少させたり、空燃比を燃料リッチ化することによって、燃焼の安定化を図ることが知られている。
しかし、点火進角(遅角量の減少)のみによっては、十分に燃焼の安定化を図ることができない場合がある。特に直噴エンジンにおいては、遅角量がポート噴射エンジンに対して大きいため、単純に点火時期を進角補正したとしても燃焼安定化が図れるとは限らない。特に、燃料が重質であった場合などは、点火進角に対する効果代が少ない場合も多い。
さらに、直噴エンジンは筒内の平均当量比がリーン雰囲気(成層状態)において触媒暖機を行なうことが一般的であり、このように燃料リーンな状態では点火進角を実施したとしても効果は限定的となってしまう。
また、エンジンの始動直後には、排気系に設けられるA/Fセンサが活性温度に達しておらず、空燃比のフィードバック制御が困難な場合が多く、このような状態で燃料のリッチ化を行うと、空燃比が過度にリッチとなって燃焼がかえって不安定となったり、排ガス性状が悪化することが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、冷間始動後に点火時期を遅角させる急速暖機中における燃焼不安定状態を適切に防止可能なエンジン制御装置を提供することである。
請求項1に係る発明は、エンジンの点火時期及び燃料噴射量を制御するエンジン制御装置であって、前記エンジンの燃焼不安定状態を検出する燃焼状態検出手段を備え、前記エンジンが所定の冷間状態にあるときに前記点火時期を通常時に対して遅角させる暖機促進制御を行うとともに、前記暖機促進制御の実行中に前記燃焼不安定状態を検出した場合に、前記燃焼不安定状態が解消されるまで前記点火時期を進角させるとともに、所定の遅角量下限値まで前記点火時期を進角させても前記燃焼不安定状態が解消しない場合に、前記燃焼不安定状態が解消されるまで空燃比をリッチ化し、前記燃焼不安定状態の検出閾値を、前記エンジンの冷却水温に応じて変化する基準振動レベルに対して所定の余裕値だけ高く設定された許容振動レベルに基づいて設定するとともに、急速暖機を優先する所定の冷却水温範囲において、前記余裕値を他の温度範囲に対して大きく設定することによって、前記エンジンの冷却水温に応じて変化させることを特徴とするエンジン制御装置である。
これによれば、燃焼不安定状態となった際に、まずは点火時期の遅角量を減少することによって、燃料の過度なリッチ化により燃焼が不安定となったり、排ガス性状を悪化させることなく燃焼の安定化を図ることができる。
また、点火時期のみによる燃焼の安定化が不可能である場合にのみ空燃比のリッチ化を行うことによって、上述したリッチ化の弊害を最低限に抑制しつつ燃焼を安定化させることができる。
さらに、エンジンの暖機状態に応じて燃焼不安定状態の検出閾値を最適化させることが可能となり、上述した効果をより確実に得ることができる。
例えば、燃焼不安定に起因する振動がシビアとなりやすい冷却水温の範囲においては、燃焼不安定と判定されやすい傾向とすることによって、振動の発生を抑制することができる。
また、振動がシビアとなりにくい範囲においては、燃焼不安定と判定されにくい傾向とすることによって、暖機促進を優先することができる。
これによれば、A/FセンサやO2センサ等の空燃比検出手段が活性温度に達せずに、空燃比フィードバック制御が正常に行えない状態で燃料リッチ化が行われ、過剰リッチ時に燃焼変動が悪化しやすい成層燃焼の直噴エンジンにおいて燃焼が不安定となったり、排ガスの性状が悪化することを防止できる。
これによって、排ガス悪化レベルを最小限に抑制するとともに、急速暖機中のアイドル品質(回転の滑らかさ)を向上することができる。
実施例のエンジン制御装置は、例えば乗用車等の自動車に搭載され成層燃焼を行うガソリン直噴エンジンの燃料噴射時期、燃料噴射量、点火時期等を統括的に制御するエンジン制御ユニットである。
図1は、実施例のエンジン制御装置を有するエンジンの構成を示す模式図である。
エンジン1は、シリンダ10、ピストン20、シリンダヘッド30、吸気装置40、排気装置50、燃料供給装置60、エンジン制御ユニット(ECU)100等を有して構成されている。
シリンダ10は、図示しないクランクケースと一体に形成されたシリンダブロックに形成されている。
ピストン20は、コンロッド21を介して図示しないクランクシャフトに接続されている。
ピストン20の冠面22は、シリンダヘッド30と協働してエンジン1の燃焼室を構成する。
シリンダヘッド30は、燃焼室31、吸気ポート32、排気ポート33、吸気バルブ34、排気バルブ35、点火栓36等を備えている。
燃焼室31は、ピストン20の冠面22と対向して形成された凹部であって、例えばペントルーフ型に形成されている。
吸気ポート32は、燃焼室31に燃焼用空気(新気)を導入する流路である。
排気ポート33は、燃焼室31から既燃ガス(排ガス)を排出する流路である。
吸気ポート32及び排気ポート33は、例えば、1気筒あたり2本ずつが形成されている。
吸気バルブ34、排気バルブ35は、吸気ポート32、排気ポート33を、所定のバルブタイミングでそれぞれ開閉するものである。
吸気バルブ34、排気バルブ35は、カムシャフト、ロッカアーム等の動弁駆動系によって駆動される。
点火栓36は、ECU100が生成する点火信号に応じて、所定の点火時期にスパークを発生し、混合気に点火するものである。
点火栓36は、燃焼室31の実質的に中心部(シリンダ10の中心軸近傍)に配置されている。
吸気装置40は、インテークダクト41、エアクリーナ42、スロットル43、インテークマニホールド44等を有して構成されている。
インテークダクト41は、大気中から空気を導入してエンジン1へ供給する管路である。
エアクリーナ42は、インテークダクト41の入口近傍に設けられ、空気中のダスト等を濾過して浄化するものである。
スロットル43は、インテークダクト41におけるエアクリーナ42の下流側に設けられ、吸入空気量を絞ることによってエンジン1の出力調整を行うものである。
スロットル43は、バタフライバルブ等の弁体、及び、これを駆動する電動アクチュエータを備えて構成されている。
電動アクチュエータは、ECU100からの制御信号に応じて駆動される。
インテークマニホールド44は、スロットル43の下流側に設けられ、容器状に形成されたサージタンク、及び、各気筒の吸気ポート32に接続され新気を導入する分岐管を有して構成されている。
排気装置50は、エキゾーストパイプ51、触媒コンバータ52、A/Fセンサ53等を有して構成されている。
エキゾーストパイプ51は、排気ポート33から出た排ガスを排出する管路である。
触媒コンバータ52は、エキゾーストパイプ51の中間部に設けられている。
触媒コンバータ52は、ハニカム状のアルミナ担体にプラチナ、ロジウム等の貴金属を担持させて構成され、HC、NOx、CO等を浄化する三元触媒を備えている。
A/Fセンサ53は、エキゾーストパイプ51における触媒コンバータ52の上流側に設けられ、排ガス中の酸素濃度に基づいてエンジン1の空燃比を検出する空燃比検出手段である。
燃料タンク61は、燃料(ガソリン)を貯留する容器であって、例えば車体後部の床下に搭載されている。
フィードポンプ(低圧ポンプ)62は、燃料タンク61内の燃料を、燃料搬送管63を介して高圧ポンプ64に圧送するものである。
高圧ポンプ64は、フィードポンプ62から供給された燃料を高圧に昇圧し、燃料配管65を経由して蓄圧室を兼ねたデリバリーパイプ66に供給するものである。
高圧ポンプ64は、シリンダヘッド30に設けられ吸気バルブ34を駆動するカム軸64aによって駆動される。
インジェクタ67は、例えばソレノイドやピエゾ素子を有するアクチュエータによって駆動されるニードルバルブを備え、デリバリーパイプ66内に蓄圧された高圧燃料を、ECU100が生成する噴射信号に応じて、所定の時期に所定の噴射量だけ噴射するものである。
インジェクタ67は、1サイクルあたり複数回の燃料噴射を行なう機能を有する。
インジェクタ67のノズルは、図1等に示すように、燃焼室31の側方(シリンダボア側)における吸気バルブ34側から筒内に挿入されている。
ECU100は、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス、これらを接続するバス等を有して構成されている。
ECU100は、エンジン1の点火時期、燃焼噴射量、燃料噴射時期、スロットル開度等を総括的に制御するものである。
また、ECU100は、エンジン回転数検出手段、筒内圧検出手段、エンジン水温検出手段、吸気管圧検出手段、エンジン負荷検出手段を有し、さらにこれらの出力に基づいて燃焼変動の検出や失火・サージの判定を行なう手段を備えている。
このような急速暖機中には、例えば燃料であるガソリンの性状のばらつき等に起因して、燃焼が不安定となる場合がある。
ECU100は、燃焼が不安定状態となった場合に、点火時期及び空燃比を変更して燃焼を安定化させる燃焼変動抑制制御を実行する。
以下、ステップ毎に順を追って説明する。
また、図3は、実施例のエンジンにおける燃焼変動抑制制御中のエンジン回転数、点火時期、空燃比の推移の一例を示すグラフである。
<ステップS01:急速暖機中判断>
ECU100は、エンジン1がコールドスタート直後に点火時期を遅延させて排ガス温度を昇温させる急速暖機(暖機促進)制御中であるか否かを判別する。
急速暖機制御中である場合にはステップS02に進み、その他の場合には一連の処理を終了(リターン)する。
ECU100は、エンジン1における燃焼不安定状態による回転速度の変動が予め設定された許容値以上であるか否かを判別する。
この許容値は、排ガス性状の悪化を招かず、また、ユーザが感じる車体振動レベルが極端に悪化しないレベルを考慮して設定されている。
また、許容値は、エンジンの各温度パラメータ(エンジン冷却水温、エンジン油温、吸入空気温度等)に応じて変化するように設定されている。
図4は、一例として、エンジンの冷却水温と燃焼不安定に起因する車体振動レベルとの相関を示すグラフである。
図4に示すように、基準振動レベル(燃焼が安定した状態での振動レベル)はエンジンの冷却水温に応じて変化しており、許容振動レベルは、この基準振動レベルよりも所定の余裕値だけ高く設定されている。
この余裕値も冷却水温に応じて変化しており、例えば冷却水温が20〜40℃の範囲では、振動抑制よりも急速暖機を優先するため、他の温度範囲に対して余裕値が大きく設定されている。
回転速度変動の許容値は、このような許容振動レベルに基づいて設定されている。
回転速度変動が許容値以上(悪)である場合には、改善が必要な燃焼不安定状態が発生しているものと判断してステップS03に進み、その他の場合には一連の処理を終了(リターン)する。
ECU100は、現在の点火時期が、予め設定された急速暖機時における進角上限点火時期に達しているか否かを判別する。
この進角上限点火時期は、排ガスの昇温という急速暖機制御の目的を得られる範囲内で最も進角した点火時期(触媒昇温性能を著しく悪化させない点火時期)であり、通常運転時(急速暖機時)以外の点火時期に対しては遅角して設定される。
進角上限点火時期に達していない場合にはステップS04に進み、進角上限点火時期に達している場合にはステップS05に進む。
ECU100は、エンジン1の点火時期を、ステップ状に所定量だけ進角させる。
その後、ステップS08に進む。
ECU100は、A/Fセンサ53が正常作動温度範囲内まで昇温され、空燃比のフィードバック制御が実行されているか否かを判別する。
空燃比のフィードバック制御が実行されている場合にはステップS06に進み、実行されていない場合には一連の処理を終了(リターン)する。
ECU100は、現在の空燃比が、予め設定されたリッチ化上限値に達しているか否かを判別する。
このリッチ化上限値は、本来の目標空燃比(例えば理論空燃比(ストイキ)近傍)に対してリッチでありかつ、リッチ化に起因する燃焼不安定を生じさせないことを考慮して設定される。
空燃比がリッチ化上限値に達していない場合にはステップS07に進み、リッチ化上限値に達している場合には一連の処理を終了(リターン)する。
ECU100は、エンジン1の空燃比を、ステップ状に所定量だけリッチ化させる。
その後、ステップS08に進む。
ECU100は、エンジン1における燃焼不安定状態による回転速度の変動が予め設定された許容値以下であるか否かを判別する。
回転速度変動が許容値以下(良)である場合には一連の処理を終了し、その他の場合にはステップS03に戻ってそれ以降の処理を繰り返す。
なお、上述した急速暖機が終了した場合には、ECU100は、点火進角補正量及び空燃比リッチ化補正量の学習を行い、次回以降の急速暖機時では学習によって得られた点火進角補正量、空燃比リッチ化補正量を利用して制御を行なう。
(1)燃焼不安定状態となり回転速度変動が許容値以上となった際に、まずは点火時期を進角させることによって、燃料の過度なリッチ化により燃焼が不安定となったり、排ガス性状を悪化させることなく燃焼の安定化を図ることができる。
また、点火時期のみによる燃焼の安定化が不可能である場合にのみ空燃比のリッチ化を行うことによって、上述したリッチ化の弊害を最低限に抑制しつつ燃焼を安定化させることができる。
(2)空燃比フィードバック制御の実行中にのみ空燃比のリッチ化を行うことによって、A/Fセンサが活性温度に達せずに空燃比フィードバック制御が行えない状態で燃料リッチ化が行われ、過剰リッチ時に燃焼変動が悪化しやすい成層燃焼の直噴エンジンにおいて燃焼が不安定となったり、排ガスの性状が悪化することを防止できる。
(3)燃焼不安定状態を検出する閾値を、エンジンの冷却水温に応じて変化するように設定したことによって、エンジンの暖機状態の変化に適合した最適な燃焼状態制御を行なうことができ、ユーザーが体感するアイドリング品質を向上することができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば実施例のエンジンは成層燃焼を行う直噴(筒内噴射)エンジンであるが、本発明はこれに限らず、例えばポート噴射式のエンジンにも適用することができる。
また、ガソリンエンジンに限らず、他の燃料を用いる火花点火式のエンジンにも適用することが可能である。
20 ピストン 21 コンロッド
22 冠面 30 シリンダヘッド
31 燃焼室 32 吸気ポート
33 排気ポート 34 吸気バルブ
35 排気バルブ 36 点火栓
40 吸気装置 41 インテークダクト
42 エアクリーナ 43 スロットル
44 インテークマニホールド 50 排気装置
51 エキゾーストマニホールド 52 触媒コンバータ
53 A/Fセンサ
60 燃料供給装置 61 燃料タンク
62 フィードポンプ 63 燃料搬送管
64 高圧ポンプ 64a カム軸
65 燃料配管 66 デリバリーパイプ
67 インジェクタ 100 エンジン制御ユニット(ECU)
Claims (2)
- エンジンの点火時期及び燃料噴射量を制御するエンジン制御装置であって、
前記エンジンの燃焼不安定状態を検出する燃焼状態検出手段を備え、
前記エンジンが所定の冷間状態にあるときに前記点火時期を通常時に対して遅角させる暖機促進制御を行うとともに、
前記暖機促進制御の実行中に前記燃焼不安定状態を検出した場合に、前記燃焼不安定状態が解消されるまで前記点火時期を進角させるとともに、所定の遅角量下限値まで前記点火時期を進角させても前記燃焼不安定状態が解消しない場合に、前記燃焼不安定状態が解消されるまで空燃比をリッチ化し、
前記燃焼不安定状態の検出閾値を、前記エンジンの冷却水温に応じて変化する基準振動レベルに対して所定の余裕値だけ高く設定された許容振動レベルに基づいて設定するとともに、急速暖機を優先する所定の冷却水温範囲において、前記余裕値を他の温度範囲に対して大きく設定することによって、前記エンジンの冷却水温に応じて変化させること
を特徴とするエンジン制御装置。 - 前記エンジンは、成層燃焼を行う直噴エンジンであるとともに、空燃比を検出する空燃比検出手段、及び、前記空燃比検出手段の出力を用いて空燃比をフィードバック制御する空燃比制御手段を有し、
前記暖機促進制御の実行中における前記空燃比のリッチ化は、前記空燃比検出手段が正常に利用可能な状態においてのみ実行されること
を特徴とする請求項1に記載のエンジン制御装置。
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