JP6064611B2 - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関及び回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転速度を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に関する。
上記のような制御装置に関して、例えば下記の特許文献1に記載された技術が既に知られている。特許文献1に記載されている技術では、車両用駆動装置の動力伝達経路をモデル化した2慣性の軸ねじれ振動系に基づいて、内燃機関の始動制御の実行中に生じる軸ねじれ振動を回転電機MGの出力トルクにより制振する回転速度制御器が設計されている。
特開2012−80665号公報
しかしながら、変速装置が、少なくとも一方向係合装置の係合により形成される特定変速段を有する場合がある。一方向係合装置の係合部材間に第一方向の回転速度差が生じる場合は、一方向係合装置が係合して特定変速段が形成され、動力伝達経路は2慣性の軸ねじれ振動系にモデル化できる。この場合は、特許文献1に係る回転速度制御器は有効に適用することができる。
一方、一方向係合装置の係合部材間に第一方向とは反対の第二方向の回転速度差が生じる場合は、一方向係合装置が解放されて特定変速段が形成されない。この状態では、2つの慣性系が軸により駆動連結されていない状態になり、動力伝達経路は、互いに独立した2つの1慣性系に変化する。この場合は、特許文献1に係る回転速度制御器を適用しても、所望の性能を得ることができない。
このように、変速装置が、一方向係合装置の係合により形成される特定変速段を有する場合は、内燃機関の始動制御の実行中に、2慣性の軸ねじれ振動系に基づいて設計した回転速度制御を実行しても、トルク変動を効果的に抑制することができない場合がある。
また、このような回転速度制御を実行しない場合であっても、一方向係合装置の係合、非係合が変化すると車輪に伝達されるトルクに変動が生じる恐れがある。
そこで、変速装置が少なくとも一方向係合装置の係合により形成される特定変速段を有する場合でも、内燃機関の始動制御の実行中に、トルク変動の発生を抑制できる制御装置が求められる。
本発明に係る、内燃機関及び回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転速度を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、前記変速装置は、一方向係合装置と、前記一方向係合装置と同じ部材間を係合する並列係合装置とを有すると共に、少なくとも前記一方向係合装置又は前記並列係合装置を係合した状態で形成される特定変速段を有し、前記一方向係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向が第一方向の場合は係合し、前記相対回転の方向が前記第一方向とは反対の第二方向の場合は解放する係合装置であり、前記並列係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置であり、前記内燃機関の駆動力を前記車輪に伝達させず、前記回転電機の駆動力を前記車輪に伝達させる電動運転制御を行う電動制御部と、少なくとも前記内燃機関の駆動力を前記車輪に伝達させる並行運転制御を行う並行制御部と、前記電動運転制御から前記並行運転制御へ移行させるために、前記回転電機の駆動力で前記内燃機関の回転速度を上昇させて前記内燃機関の燃焼を開始させる前記内燃機関の始動制御を行う始動制御部と、前記変速装置に前記特定変速段を形成させる状態で、前記電動運転制御が行われている間、及び前記始動制御が行われている間は、前記並列係合装置を係合した状態に維持する固定制御を行う固定制御部と、を備えた点にある。
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
電動運転制御から並行運転制御に移行させるために、内燃機関の始動制御が実行されている間は、内燃機関のフリクショントルクや燃焼開始などによりトルク変動が生じやすく、回転電機にトルク変動が伝達されやすい。
この際、一方向係合装置と並列して備えられた並列係合装置が解放されており、一方向係合装置の係合により特定変速段が形成される状態では、回転電機に伝達されるトルク変動により回転電機の回転速度が変化し、一方向係合装置が解放状態になったり、係合状態になったりする場合がある。
始動制御により生じたトルク変動により一方向係合装置が解放状態になると、車輪にトルクが伝達されなくなり、運転者に違和感を与える恐れがある。
また、始動制御により生じたトルク変動により一方向係合装置が解放状態から係合状態に変化すると、係合の状態の変化によりトルク変動が生じる。
このように、特定変速段が形成される状態で、始動制御が実行されると、一方向係合装置が解放状態と係合状態との間で変化することにより、車輪にトルク変動が伝達され、運転者に違和感を与える恐れがある。
上記の特徴構成によれば、特定変速段を形成させる状態で、電動運転制御及び始動制御が行われている間は、固定制御が実行され、一方向係合装置と並列して備えられた並列係合装置が係合した状態に維持されるので、変速装置に特定変速段を形成させることができる。また、始動制御が開始される前の電動運転制御の実行中から、並列係合装置が係合した状態に制御されているので、始動制御の開始直後から変速装置に特定変速段を形成させることができる。
このため、始動制御の実行中に、内燃機関のフリクショントルクや燃焼開始などによりトルク変動が生じたとしても、一方向係合装置が解放状態と係合状態との間で変化することを防止し、このような係合の状態の変化によるトルク変動の発生を抑制することができる。よって、始動制御の実行中に、車輪に伝達されるトルク変動が大きくなることを抑制することができ、運転者に与える違和感を抑制することができる。
ここで、前記車両用駆動装置は、前記内燃機関と前記入力部材との間の動力伝達経路に機関分離係合装置を更に備え、前記電動制御部は、前記内燃機関を停止させ、前記機関分離係合装置を解放した状態で、前記回転電機に駆動力を出力させ、前記並行制御部は、前記内燃機関を運転させ、前記機関分離係合装置を係合した状態で、少なくとも前記内燃機関に駆動力を出力させ、前記始動制御部は、前記機関分離係合装置を係合させて、前記入力部材から前記内燃機関へ伝達される駆動力により前記内燃機関の回転速度を上昇させると好適である。
内燃機関と入力部材との間の動力伝達経路に機関分離係合装置が備えられている場合は、始動制御の実行中に、機関分離係合装置の係合により回転電機にトルク変動が伝達されやすい。この場合でも、本構成によれば、電動運転制御及び始動制御の実行中に固定制御が実行されるので、始動制御の実行中に車輪に伝達されるトルク変動が大きくなることを抑制することができる。
ここで、前記並行運転制御から前記電動運転制御へ移行させるために、前記機関分離係合装置を解放させ、前記内燃機関を停止させる停止制御を行う停止制御部を更に備え、前記固定制御部は、前記停止制御により前記機関分離係合装置が解放された後及び前記内燃機関が停止された後のいずれか一方から、前記始動制御により前記機関分離係合装置が係合された後及び前記内燃機関の燃焼が開始した後のいずれか一方までの間、前記並列係合装置を係合した状態に維持すると好適である。
上記の構成によれば、電動運転制御の開始後、迅速に並列係合装置を係合させ、特定変速段を形成させることができる。
また、始動制御により機関分離係合装置が係合された後、及び内燃機関の燃焼が開始した後は、始動制御によりトルク変動が生じる可能性が減少し、トルク変動が回転電機に伝達される恐れが低くなる。上記の構成によれば、始動制御により機関分離係合装置が係合された後及び内燃機関の燃焼が開始した後のいずれか一方までの間、並列係合装置が係合され、変速装置に特定変速段が形成されるので、始動制御の実行中に車輪に伝達されるトルク変動が大きくなることを適切に抑制することができる。
ここで、前記並行運転制御から前記電動運転制御へ移行させるために、前記内燃機関を停止させる停止制御を行う停止制御部を更に備え、前記固定制御部は、前記停止制御により前記内燃機関が停止された後から、前記始動制御により前記内燃機関の燃焼が開始した後までの間、前記並列係合装置を係合した状態に維持すると好適である。
この構成によれば、電動運転制御の開始後、迅速に並列係合装置を係合させ、特定変速段を形成させることができる。
また、始動制御により内燃機関の燃焼が開始した後は、始動制御によりトルク変動が生じる可能性が減少し、トルク変動が回転電機に伝達される恐れが低くなる。上記の構成によれば、始動制御により内燃機関の燃焼が開始した後までの間、並列係合装置が係合され、変速装置に特定変速段が形成されるので、始動制御の実行中に車輪に伝達されるトルク変動が大きくなることを適切に抑制することができる。
ここで、前記始動制御の実行中に、前記回転電機の回転速度の変化に基づき、前記車両用駆動装置の動力伝達経路に入力されたトルクである伝達経路入力トルクを推定し、当該伝達経路入力トルクから少なくとも前記回転電機の出力トルクを減算して前記車輪から前記動力伝達経路に入力された外部入力トルクを推定し、前記外部入力トルクと、前記車輪の駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクとに基づいて算出した回転速度を目標回転速度として設定し、前記回転電機の回転速度が目標回転速度に近づくように前記回転電機の出力トルクを制御する回転速度制御を行う回転速度制御部を更に備えていると好適である。
始動制御の実行中は、並列係合装置が係合され、変速装置に特定変速段が形成されるので、動力伝達経路は2慣性系の軸ねじれ振動系になる。そして、始動制御に伴い回転電機にトルク変動が伝達されると、軸ねじれ振動が励起される。上記の構成によれば、始動制御の実行中に回転速度制御が実行されるので、軸ねじれ振動を制振することができ、車輪に伝達されるトルク変動を低減させることができる。
具体的には、外部入力トルクの推定値と車両要求トルクとに基づき、目標回転速度が算出されているので、外部入力トルク及び車両要求トルクに対して外乱成分となるトルク変動による回転速度の変動を、目標回転速度からの偏差として回転速度制御を行うことができる。よって、回転速度制御により、始動制御に伴い生じたトルク変動を打ち消すように回転電機の出力トルクを制御することができる。この回転電機の目標回転速度を算出する上で、車両要求トルクに加えて、推定した外部入力トルクに基づき算出しているので、車両要求トルクに、走行抵抗トルク、ブレーキトルクなどの外部入力トルクを反映させて、外部入力トルクを打ち消さないような、目標回転速度を算出することできる。よって、走行状態、又はブレーキ操作などによる、車両の加減速を維持しつつ、始動制御に伴い生じたトルク変動による回転電機の回転速度の変動成分を低減することができる。また、上記の構成によれば、回転電機の回転速度の変化に基づいて、動力伝達経路に入力された伝達経路入力トルクを推定することができる。そして、推定した伝達経路入力トルクから、回転電機の出力トルクを減算して外部入力トルクの推定値を演算しているので、回転電機の出力トルク以外に、動力伝達経路に入力されているトルクを精度よく推定することができる。このため、車輪から動力伝達経路に入力された外部入力トルクの推定精度を良好にすることができる。また、始動制御の実行中は、変速装置に特定変速段が形成された状態を維持でき、動力伝達経路は2慣性系の軸ねじれ振動系から変化しないようにできるので、伝達経路入力トルクの推定精度を良好に維持できる。
従って、始動制御の実行中に回転速度制御を実行することにより、トルク変動が車輪に伝達されることをより確実に抑制することができる。
本発明の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る制御装置の概略構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図である。 本発明の実施形態に係る変速装置の作動表である。 本発明の実施形態に係る変速装置の速度線図である。 本発明の実施形態に係る固定制御のフローチャートである。 本発明の実施形態に係る動力伝達経路の弾性系のモデルを示す図である。 本発明の実施形態に係る回転速度制御部の構成を示すブロック図である 本発明の実施形態の比較例に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明のその他の実施形態に係る遊星歯車装置の速度線図である。
本発明に係る車両用駆動装置1の制御装置30(以下、単に制御装置30と称す)の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30の概略構成を示す模式図である。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、概略的には、内燃機関ENG及び回転電機MGを駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力を、動力伝達機構を介して車輪Wへ伝達する構成となっている。車両用駆動装置1は、内燃機関ENG及び回転電機MGに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、入力軸Iの回転速度を変速して出力軸Oに伝達する変速装置TMと、を備えている。本実施形態に係る車両用駆動装置1は、内燃機関ENGと入力軸Iとの間の動力伝達経路2に機関分離クラッチSSCを備えている。すなわち、車両用駆動装置1には、内燃機関ENGと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路2に、内燃機関ENGの側から順に、機関分離クラッチSSC、回転電機MG、及び変速装置TMが備えられている。ここで、機関分離クラッチSSCは、その係合状態に応じて、内燃機関ENGと回転電機MGとの間を選択的に連結した状態又は分離した状態とする。なお、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当し、機関分離クラッチSSCが本発明における「機関分離係合装置」に相当する。
変速装置TMは、例えば、図3に示すように、複数の係合装置OWC、C1、B1・・・を備えており、複数の係合装置OWC、C1、B1・・・の係合の状態に応じて形成される複数の変速段1st、2nd・・・を有している。
変速装置TMは、図3に示すように、一方向係合装置としてのワンウェイブレーキOWCと、ワンウェイブレーキOWCと同じ部材間を係合する並列係合装置としての第二ブレーキB2とを有している。そして、変速装置TMは、少なくともワンウェイブレーキOWC又は第二ブレーキB2を係合した状態で形成される特定変速段としての第一段1stを有している。一方向係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向が第一方向の場合は係合し、相対回転の方向が第一方向とは反対の第二方向の場合は解放する係合装置である。並列係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置である。
ハイブリッド車両には、車両用駆動装置1を制御対象とする制御装置30が備えられている。本実施形態に係わる制御装置30は、回転電機MGの制御を行う回転電機制御ユニット32と、変速装置TM、及び機関分離クラッチSSCの制御を行う動力伝達制御ユニット33と、これらの制御装置を統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御ユニット34と、を有している。また、ハイブリッド車両には、内燃機関ENGの制御を行う内燃機関制御装置31も備えられている。
制御装置30は、図2に示すように、電動制御部45、並行制御部46、始動制御部47、及び固定制御部48などの機能部を備えている。
電動制御部45は、内燃機関ENGの駆動力を車輪Wに伝達させず、回転電機MGの駆動力を車輪Wに伝達させるように制御する電動運転制御を行う。
並行制御部46は、少なくとも内燃機関ENGの駆動力を車輪Wに伝達させるように制御する並行運転制御を行う。
始動制御部47は、電動運転制御から並行運転制御へ移行させるために、回転電機MGの駆動力で内燃機関ENGの回転速度を上昇させて内燃機関ENGの燃焼を開始させる内燃機関ENGの始動制御を行う。
このような構成において、固定制御部48は、変速装置TMに特定変速段としての第一段1stを形成させる状態で、電動運転制御が行われている間、及び始動制御が行われている間は、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合した状態に維持する固定制御を行う点に特徴を有している。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
1.車両用駆動装置1の構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源として内燃機関ENG及び回転電機MGを備え、これらの内燃機関ENGと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速装置TMを備えており、当該変速装置TMにより、入力軸Iに伝達された内燃機関ENG及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
内燃機関ENGは、燃料の燃焼により駆動される熱機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関ENGのクランクシャフト等の機関出力軸Eoが、機関分離クラッチSSCを介して、回転電機MGに駆動連結された入力軸Iと選択的に連結又は分離される。すなわち、内燃機関ENGは、摩擦係合装置である機関分離クラッチSSCを介して回転電機MGに選択的に連結又は分離される。また、機関出力軸Eoには、図示しないダンパが備えられており、内燃機関ENGの間欠的な燃焼による出力トルク及び回転速度の変動を減衰して、車輪W側に伝達可能に構成されている。
回転電機MGは、車両用駆動装置1を収容するケースCSに固定されたステータStと、このステータと対応する位置で径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有している(図3参照)。この回転電機MGのロータRoは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸Iに内燃機関ENG及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、インバータを介してバッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは内燃機関ENGや車輪Wから伝達される回転駆動力により発電し、発電された電力は、インバータを介してバッテリに蓄電される。
駆動力源が駆動連結される入力軸Iには、変速装置TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速装置TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の係合装置OWC、C1、B1・・・とを備えている。変速装置TMは、各変速段の変速比で、入力軸Iの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、出力軸Oへ伝達する。変速装置TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右二つの車軸AXに分配されて伝達され、各車軸AXに駆動連結された車輪Wに伝達される。ここで、変速比は、変速装置TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力軸Oの回転速度に対する入力軸Iの回転速度の比であり、本願では入力軸Iの回転速度を出力軸Oの回転速度で除算した値である。すなわち、入力軸Iの回転速度を変速比で除算した回転速度が、出力軸Oの回転速度になる。また、入力軸Iから変速装置TMに伝達されるトルクに、変速比を乗算したトルクが、変速装置TMから出力軸Oに伝達されるトルクになる。
本実施形態では、変速装置TMは変速比(減速比)の異なる6つの変速段(第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、及び第六段6th)を前進段として備えている。これらの変速段を構成するため、変速装置TMは、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2を備えてなる歯車機構と、6つの係合装置C1、C2、C3、B1、B2、OWCと、を備えて構成されている。ワンウェイブレーキOWCを除くこれら複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2の各回転要素の回転状態を切り替え、複数の係合装置C1、B1・・・を選択的に係合することにより、6つの変速段が切り替えられる。なお、変速装置TMは、上記6つの変速段のほかに、一段の後進段Revも備えている。
本実施形態においては、図3に示すように、第一遊星歯車機構PG1は、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。すなわち、第一遊星歯車機構PG1は、複数のピニオンギヤP1を支持するキャリアCA1と、ピニオンギヤP1にそれぞれ噛み合うサンギヤS1及びリングギヤR1と、の3つの回転要素を有して構成されている。第一遊星歯車機構PG1が有するこれら3つの回転要素は、回転速度の順にサンギヤS1(第一回転要素)、キャリアCA1(第二回転要素)、及びリングギヤR1(第三回転要素)となっている。
また、第二遊星歯車機構PG2は、入力軸Iと同軸上に配置されたラビニヨ型の遊星歯車機構とされている。すなわち、第二遊星歯車機構PG2は、第一サンギヤS2及び第二サンギヤS3の二つのサンギヤと、リングギヤR2と、第二サンギヤS3及びリングギヤR2の双方に噛み合うロングピニオンギヤP2並びにロングピニオンギヤP2及び第一サンギヤS2に噛み合うショートピニオンギヤP3を支持する共通のキャリアCA2と、の四つの回転要素を有して構成されている。第二遊星歯車機構PG2が有するこれら4つの回転要素は、回転速度の順に第二サンギヤS3(第一回転要素)、キャリアCA2(第二回転要素)、リングギヤR2(第三回転要素)、および第一サンギヤS2(第四回転要素)となっている。
なお、「回転速度の順」とは、各回転要素の回転状態における回転速度の順番のことである。各回転要素の回転速度は、遊星歯車機構PG1、PG2の回転状態によって変化するが、各回転要素の回転速度の高低の並び順は、遊星歯車機構PG1、PG2の構造によって定まるものであるため一定となる。なお、「各回転要素の回転速度の順」は、各回転要素の速度線図(共線図)における配置順に等しい。ここで、「各回転要素の速度線図における配置順」とは、速度線図(共線図)における各回転要素に対応する軸が、当該軸に直交する方向に沿って配置される順番のことである。
第一遊星歯車機構PG1のサンギヤS1は、非回転部材としてのケースCSに固定されている。キャリアCA1は、第一クラッチC1を介して第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第三クラッチC3を介して第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3と選択的に一体回転するように駆動連結される。リングギヤR1は、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されているとともに、第二クラッチC2を介して第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2と選択的に一体回転するように駆動連結される。
第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3は、第三クラッチC3を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。キャリアCA2は、第二クラッチC2を介して入力軸I及び第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第二ブレーキB2又はワンウェイブレーキOWCを介して非回転部材としてのケースCSに選択的に固定される。リングギヤR2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。第一サンギヤS2は、第一クラッチC1を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。
ここで、ワンウェイブレーキOWCなどの一方向係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向が第一方向の場合は係合し、相対回転の方向が前記第一方向とは反対の第二方向の場合は解放する係合装置である。言い換えると、一方向係合装置は、入力側の係合部材が出力側の係合部材に対して第一方向に回転する場合は直結係合状態になり、係合部材間に回転速度差が生じることを阻止し、入力側の係合部材が出力側の係合部材に対して第一方向とは反対の第二方向に回転する場合は解放状態になり、係合部材間に回転速度差を生じさせる係合装置である。すなわち、一方向係合装置は、係合部材間の相対的な回転速度差において、第一方向の回転速度差が生じる場合は直結係合状態になり、第二方向の回転速度差が生じる場合は解放状態になる。本実施形態では、ワンウェイブレーキOWCは、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に連結された入力側の係合部材が、ケースCSに連結されて回転速度がゼロである出力側の係合部材に対して負回転となるときに直結係合状態となり、正回転となるときに解放状態になるように構成されている。すなわち、ワンウェイブレーキOWCは、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が負方向に回転する(回転速度がゼロ以下になる)ときに直結係合状態になり、キャリアCA2が正方向に回転する(回転速度がゼロより大きくなる)ときに解放状態になるように構成されている。従って、キャリアCA2の回転速度は、ゼロ未満に低下しない。
本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイブレーキOWCを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置とされている。本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイブレーキOWCを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、いずれも摩擦係合装置とされている。具体的には、これらは油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキにより構成されている。これらの係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、油圧制御装置PCから供給される油圧により、係合の状態が制御される。なお、機関分離クラッチSSCも摩擦係合装置である。
摩擦係合装置は、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合装置は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合装置の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合装置が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、入力側係合部材(摩擦板)と出力側係合部材(摩擦板)とを相互に押し付け合う圧力である。本実施形態では、係合圧は、供給されている油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置に供給されている油圧の大きさに比例して変化する。
各摩擦係合装置は、リターンばねを備えており、ばねの反力により解放側に付勢されている。そして、各摩擦係合装置の油圧シリンダに供給される油圧により生じる力がばねの反力を上回ると、各摩擦係合装置に伝達トルク容量が生じ始め、各摩擦係合装置は、解放状態から係合状態に変化する。この伝達トルク容量が生じ始めるときの油圧を、ストロークエンド圧と称す。各摩擦係合装置は、供給される油圧がストロークエンド圧を上回った後、油圧の増加に比例して、その伝達トルク容量が増加するように構成されている。なお、摩擦係合装置は、リターンばねを備えておらず、油圧シリンダのピストンの両側にかかる油圧の差圧によって制御させる構造でもよい。
本実施形態において、係合状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態であり滑り係合状態と直結係合状態とが含まれる。解放状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態である。また、滑り係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態であり、直結係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、非直結係合状態とは、直結係合状態以外の係合状態であり、解放状態と滑り係合状態とが含まれる。
なお、摩擦係合装置には、制御装置30により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合でも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。例えば、ピストンにより摩擦部材同士が押圧されていない場合でも、摩擦部材同士が接触し、摩擦部材同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。そこで、「解放状態」には、制御装置30が摩擦係合装置に伝達トルク容量を生じさせる指令を出していない場合に、摩擦部材同士の引き摺りにより、伝達トルク容量が生じている状態も含まれるものとする。
次に、変速装置TMにより実現される6つの変速段について説明する。図4は、各変速段での複数の係合装置OWC、C1、B1・・・の作動状態を示す作動表である。この図において、「○」は各係合装置が係合状態にあることを示しており、「無印」は、各係合装置が解放状態にあることを示している。「(○)」は、エンジンブレーキを行う場合などにおいて、係合装置が係合状態にされることを示している。また、「△」は、第方向に回転する(キャリアCA2が正方向に回転する)場合には解放状態となり、第方向に回転する(キャリアCA2が負方向に回転する)場合には直結係合状態になることを示している。
図5は、変速装置TMの速度線図である。この速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は回転速度がゼロであることを示しており、上側が正回転(回転速度が正)、下側が負回転(回転速度が負)である。そして、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、第一遊星歯車機構PG1の各回転要素及び第二遊星歯車機構PG2の各回転要素に対応している。すなわち、各縦線の上側に記載されている「R1」、「CA1」、「S1」はそれぞれ第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1、キャリアCA1、サンギヤS1に対応している。また、各縦線の上側に記載されている「S2」、「R2」、「CA2」、「S3」はそれぞれ第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2、リングギヤR2、キャリアCA2、第二サンギヤS3に対応している。また、並列配置された複数本の縦線間の間隔は、各遊星歯車機構PG1、PG2のギヤ比λ(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)に基づいて定まっている。
また、「●」は、各回転要素に連結された係合装置が、直結係合状態にあることを示している。それぞれの「●」に隣接して記載された「C1」、「C2」、「C3」、「B1」、「B2」、「OWC」は、直結係合状態にされた係合装置を示している。「☆」は、出力軸Oに連結される回転要素(第二遊星歯車機構PG2のリングギヤR2)の回転速度の状態を示している。なお、それぞれの「☆」に隣接して記載された「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」、「5th」、「6th」、及び「Rev」は、形成される変速段を示している。
図4及び図5に示すように、特定変速段としての第一段1stは、第一クラッチC1の係合とワンウェイブレーキOWCとが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態では、入力軸Iから第一遊星歯車機構PG1のリングギヤR1に入力される駆動力源の回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。そして、第一クラッチC1が係合した状態で、入力軸Iから出力軸Oへの回転駆動力が伝達されて第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が負回転する際に、ワンウェイブレーキOWCが係合した状態となってケースCSに固定され、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2に基づいて減速されて出力軸Oに伝達される。なお、出力軸Oから入力軸Iへ回転駆動力が伝達されて第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2が正回転する際には、ワンウェイブレーキOWCは解放した状態となる。このようにして実現される第一段は、入力軸Iから出力軸Oへの回転駆動力は伝達し、出力軸Oから入力軸Iへの回転駆動力は伝達しない一方向変速段となる。
また、特定変速段としての第一段1stは、第一クラッチC1の係合と第二ブレーキB2の係合とが協働しても実現される。本実施形態では、第一段1stでエンジンブレーキを行うなどのために、運転者によりシフト位置がローレンジなどに変更されたとき、及び固定制御部48により固定制御が行われているときなどに、第二ブレーキB2が係合されて、ワンウェイブレーキOWCが空転し係合しない状態でも、第一段1stが形成される。具体的には、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第二ブレーキB2が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2に基づいてさらに減速されて出力軸Oに伝達される。
第二段2ndは、第一クラッチC1の係合と第一ブレーキB1の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第一ブレーキB1が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ2及びλ3に基づいてさらに減速されて出力軸Oに伝達される。
第三段3rdは、第一クラッチC1の係合と第三クラッチC3の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第三クラッチC3が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。そして、第二サンギヤS3と第一サンギヤS2とが同速度で回転することで、ギヤ比λ1に基づいて減速された入力軸Iの回転駆動力がそのまま出力軸Oに伝達される。
第四段4thは、第一クラッチC1の係合と第二クラッチC2の係合とが協働して実現される。すなわち、第一クラッチC1が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2に伝達される。また、第二クラッチC2が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。そして、キャリアCA2及び第一サンギヤS2の回転速度とギヤ比λ2とに基づいて決まる入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される。
第五段5thは、第二クラッチC2の係合と第三クラッチC3の係合とが協働して実現される。すなわち、第二クラッチC2が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。また、第三クラッチC3が係合した状態で、入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。そして、第二サンギヤS3及びキャリアCA2の回転速度とギヤ比λ3とに基づいて決まる入力軸Iの回転駆動力が出力軸Oに伝達される。
第六段6thは、第二クラッチC2の係合と第一ブレーキB1の係合とが協働して実現される。すなわち、第二クラッチC2が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がそのまま第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2に伝達される。また、第一ブレーキB1が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3がケースCSに固定される。そして、キャリアCA2の回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて増速されて出力軸Oに伝達される。
後進段Revは、第三クラッチC3の係合と第二ブレーキB2の係合とが協働して実現される。すなわち、第三クラッチC3が係合した状態で、駆動力源から伝達された入力軸Iの回転駆動力がギヤ比λ1に基づいて減速されて第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3に伝達される。また、第二ブレーキB2が係合した状態で、第二遊星歯車機構PG2のキャリアCA2がケースCSに固定される。そして、第一サンギヤS2の回転駆動力がギヤ比λ3に基づいて減速されるとともに回転方向が逆転されて出力軸Oに伝達される。
本実施形態に係る変速装置TMは、少なくとも第一クラッチC1の係合により実現される変速段として、第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、及び第四段4thを備えている。これらの各変速段は、入力軸Iと出力軸Oとの間の変速比(減速比)が大きい順に、第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、及び第六段6thとなっている。
2.油圧制御系の構成
車両用駆動装置1の油圧制御系は、車両の駆動力源や専用のモータによって駆動される油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速装置TMが有する複数の係合装置C1、B1・・・及び機関分離クラッチSSC等に供給される。
3.制御装置の構成
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及び内燃機関制御装置31の構成について、図2を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜50などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜50の機能が実現される。
また、車両用駆動装置1は、センサSe1〜Se3を備えており、各センサから出力される電気信号は制御装置30及び内燃機関制御装置31に入力される。制御装置30及び内燃機関制御装置31は、入力された電気信号に基づき各センサの検出情報を算出する。
入力回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するためのセンサである。入力軸Iには回転電機MGのロータが一体的に駆動連結されているので、回転電機制御ユニット32は、入力回転速度センサSe1の入力信号に基づいて回転電機MGの回転速度(角速度)、並びに入力軸Iの回転速度を検出する。出力回転速度センサSe2は、出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて出力軸Oの回転速度(角速度)を検出する。また、出力軸Oの回転速度は車速に比例するため、動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて車速を算出する。機関回転速度センサSe3は、機関出力軸Eo(内燃機関ENG)の回転速度を検出するためのセンサである。内燃機関制御装置31は、機関回転速度センサSe3の入力信号に基づいて内燃機関ENGの回転速度(角速度)を検出する。
3−1.内燃機関制御装置31
内燃機関制御装置31は、内燃機関ENGの動作制御を行う内燃機関制御部41を備えている。本実施形態では、内燃機関制御部41は、車両制御ユニット34から内燃機関要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された内燃機関要求トルクを出力トルク指令値に設定し、内燃機関ENGが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
また、内燃機関制御装置31は、内燃機関の燃焼開始要求があった場合は、内燃機関ENGの燃焼開始が指令されたと判定して、内燃機関ENGへの燃料供給及び点火を開始するなどして、内燃機関ENGの燃焼を開始する制御を行う。
一方、内燃機関制御装置31は、内燃機関の停止要求があった場合は、内燃機関ENGの燃焼停止が指令されたと判定して、内燃機関ENGへの燃料供給及び点火を停止するなどして、内燃機関ENGの燃焼を停止する制御を行う。
3−2.動力伝達制御ユニット33
動力伝達制御ユニット33は、変速装置TMの制御を行う変速装置制御部43と、機関分離クラッチSSCの制御を行う機関分離係合装置制御部44と、を備えている。
3−2−1.変速装置制御部43
変速装置制御部43は、変速装置TMを制御する機能部である。変速装置制御部43は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速装置TMに形成させる目標変速段を決定する。そして、変速装置制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1・・・に供給される油圧を制御することにより、各係合装置C1、B1・・・を係合又は解放して目標とされた変速段を変速装置TMに形成させる。具体的には、変速装置制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各係合装置に供給する。
本実施形態では、変速装置制御部43は、シフト位置がドライブレンジである場合は、車速、アクセル開度に基づいて目標変速段を決定する。変速装置制御部43は、シフト位置がドライブレンジであり目標変速段を第一段1stに決定している場合は、後述する固定制御部48により固定制御が実行されている場合を除き、ワンウェイブレーキOWCと並列配置されている第二ブレーキB2を係合させずに解放させるように構成されている。
一方、変速装置制御部43は、運転者によりシフト位置がドライブレンジから、特定の変速段を指定するレンジ(以下、変速段指定レンジと称す)、例えば、セカンドレンジやローレンジなどに変更された場合は、目標変速段に決定される変速段を制限する。具体的には、変速装置制御部43は、シフト位置がセカンドレンジに設定されている場合は、目標変速段を第二段2nd又は第一段1stに決定する。変速装置制御部43は、シフト位置がローレンジに設定されている場合は、目標変速段を第一段1stに決定する。変速装置制御部43は、シフト位置が変速段指定レンジであり目標変速段を第一段1stに決定している場合は、エンジンブレーキが行えるように、ワンウェイブレーキOWCと並列配置されている第二ブレーキB2を係合させるように構成されている。
また、本実施形態では、変速装置制御部43は、後述する固定制御部48により固定制御が行われているときは、第二ブレーキB2の伝達トルク容量が、車両制御ユニット34から指令された目標トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介して第二ブレーキB2に供給される油圧を制御する。具体的には、変速装置制御部43は、第二ブレーキB2の目標トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を第二ブレーキB2に供給する。
3−2−2.機関分離係合装置制御部44
機関分離係合装置制御部44は、機関分離クラッチSSCの係合状態を制御する。本実施形態では、機関分離係合装置制御部44は、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が、車両制御ユニット34から指令された機関分離クラッチSSCの目標トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介して機関分離クラッチSSCに供給される油圧を制御する。具体的には、機関分離係合装置制御部44は、目標トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を機関分離クラッチSSCに供給する。
3−3.回転電機制御ユニット32
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、車両制御ユニット34から回転電機要求トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された回転電機要求トルクを出力トルク指令値に設定し、回転電機MGが出力トルク指令値のトルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクを制御する。
3−4.車両制御ユニット34
車両制御ユニット34は、内燃機関ENG、回転電機MG、変速装置TM、及び機関分離クラッチSSC等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
車両制御ユニット34は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、入力軸I側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクTrqを算出するとともに、内燃機関ENG及び回転電機MGの運転モードを決定する。運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源として走行する電動モードと、少なくとも内燃機関ENGを駆動力源として走行するパラレルモードと、を有する。例えば、アクセル開度が小さく、バッテリの充電量が大きい場合に、運転モードとして電動モードが決定され、それ以外の場合、すなわちアクセル開度が大きい、もしくはバッテリの充電量が小さい場合に、運転モードとしてパラレルモードが決定される。
そして、車両制御ユニット34は、内燃機関ENGに対して要求する出力トルクである内燃機関要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、機関分離クラッチSSCに対して要求する伝達トルク容量である目標トルク容量、及び変速装置TMの各係合装置C1、B1・・・に対して要求する伝達トルク容量である目標トルク容量を算出し、それらを他の制御ユニット32、33及び内燃機関制御装置31に指令して統合制御を行う。
本実施形態では、車両制御ユニット34は、電動制御部45、並行制御部46、始動制御部47、固定制御部48、停止制御部49、及び回転速度制御部50などを備えている。以下、各制御部について詳細に説明する。
3−4−1.各運転モードにおける制御
<電動モード>
運転モードが電動モードに決定されている場合は、電動制御部45が、内燃機関ENGの駆動力を車輪Wに伝達させず、回転電機MGの駆動力を車輪Wに伝達させるように制御する電動運転制御を行うように構成されている。
本実施形態では、電動制御部45は、内燃機関ENGを停止させ、機関分離クラッチSSCを解放した状態で、回転電機MGに駆動力を出力させるように構成されている。具体的には、電動制御部45は、内燃機関ENGの停止要求を内燃機関制御装置31に指令して、内燃機関ENGの燃焼を停止した状態に制御する。また、電動制御部45は、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロに設定して、機関分離クラッチSSCを解放した状態に制御する。電動制御部45は、車両要求トルクTrqに応じて回転電機要求トルクを設定して、回転電機MGに車両要求トルクTrqに応じたトルクを出力させる。
<パラレルモード>
運転モードがパラレルモードに決定されている場合は、並行制御部46が、少なくとも内燃機関ENGの駆動力を車輪Wに伝達させるように制御する並行運転制御を行うように構成されている。
本実施形態では、並行制御部46は、内燃機関ENGを運転させ、機関分離クラッチSSCを係合した状態で、内燃機関ENGに駆動力を出力させると共に、必要に応じて回転電機MGにも駆動力を出力させるように構成されている。具体的には、並行制御部46は、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロより大きく設定し、機関分離クラッチSSCを係合状態に制御する。また、並行制御部46は、車両要求トルクTrqに応じて内燃機関要求トルク及び回転電機要求トルクを設定して、内燃機関ENG及び回転電機MGに車両要求トルクTrqに応じたトルクを出力させる。
<電動モードからパラレルモードへの移行>
運転モードが電動モードからパラレルモードに変更された場合は、始動制御部47は、電動運転制御から並行運転制御へ移行させるために、回転電機MGの駆動力で内燃機関ENGの回転速度を上昇させて内燃機関ENGの燃焼を開始させる内燃機関ENGの始動制御を行うように構成されている。
本実施形態では、始動制御部47は、機関分離クラッチSSCを係合させて、入力軸Iから内燃機関ENGへ伝達される駆動力により内燃機関ENGの回転速度を上昇させるように構成されている。具体的には、始動制御部47は、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロから増加し、機関分離クラッチSSCを滑り係合状態に制御する。これにより、入力軸I側から内燃機関ENG側に機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量に応じたトルクを伝達させ、内燃機関ENGの回転速度を上昇させる。そして、始動制御部47は、燃焼開始要求を内燃機関制御装置31に指令して、内燃機関ENGの燃焼を開始させる。
<パラレルモードから電動モードへの移行>
運転モードがパラレルモードから電動モードに変更された場合は、停止制御部49は、並行運転制御から電動運転制御へ移行させるために、内燃機関ENGを停止させる停止制御を行うように構成されている。
本実施形態では、停止制御部49は、機関分離クラッチSSCを解放させ、内燃機関ENGを停止させるように構成されている。具体的には、停止制御部49は、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロまで減少し、機関分離クラッチSSCを解放状態に制御する。また、停止制御部49は、内燃機関の停止要求を内燃機関制御装置31に指令して、内燃機関ENGの燃焼を停止させる。
3−4−2.固定制御
固定制御部48は、変速装置TMに特定変速段としての第一段1stを形成させる状態で、電動運転制御が行われている間及び始動制御が行われている間は、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合した状態に維持する固定制御を行う。
本実施形態では、固定制御部48は、停止制御により機関分離クラッチSSCが解放された後及び内燃機関ENGが停止された後のいずれか一方から、始動制御により機関分離クラッチSSCが係合された後及び内燃機関ENGの燃焼が開始した後のいずれか一方までの間(以下、一方向固定期間とも称す)、第二ブレーキB2を係合した状態に維持するように構成されている。
上記のように、シフト位置がドライブレンジであり目標変速段が第一段1stに決定されている状態では、固定制御が行われない場合は、第二ブレーキB2は解放状態に制御される。固定制御部48は、このシフト位置がドライブレンジであり目標変速段が第一段1stに決定されている状態でも、一方向固定期間では、第二ブレーキB2を係合した状態に制御する。具体的には、固定制御部48は、第二ブレーキB2の目標トルク容量をゼロから増加させ、第二ブレーキB2を直結係合状態に制御する。
<フローチャート>
図6に固定制御のフローチャートを示す。
まず、固定制御部48は、ステップ♯01で、変速装置TMに特定変速段としての第一段1stを形成させる状態であるか否かを判定する。そして、固定制御部48は、変速装置TMに特定変速段を形成させる状態である場合(ステップ♯01:Yes)に、電動運転制御の実行中であるか否かを判定する(ステップ♯02)。固定制御部48は、電動運転制御の実行中でない場合(ステップ♯02:No)に、始動制御の実行中であるか否かを判定する(ステップ♯03)。
固定制御部48は、電動運転制御の実行中である場合(ステップ♯02:Yes)、又は始動制御の実行中である場合(ステップ♯03:Yes)に、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合させる固定制御を行う(ステップ♯04)。
一方、固定制御部48は、電動運転制御及び始動制御のいずれも実行中でない場合(ステップ♯02:No、ステップ♯03:No)は、固定制御を実行せずに、並列係合装置としての第二ブレーキB2を解放させる(ステップ♯05)。また、固定制御部48は、変速装置TMに特定変速段を形成させる状態でない場合(ステップ♯01:No)も、並列係合装置を解放させる(ステップ♯05)。
3−4−3.回転速度制御
回転速度制御部50は、図8に示すように、目標回転速度ωmoを算出し、回転電機MGの回転速度ωmが目標回転速度ωmoに近づくように回転電機MGの出力トルクTmを制御する回転速度制御を行う回転速度制御器53を備えている。
回転速度制御部50は、外部入力推定器51、低振動速度算出器52、及び回転速度制御器53により、目標回転速度ωmoを算出するように構成されている。
外部入力推定器51は、回転電機MGの回転速度ωmの変化に基づき、動力伝達経路2に入力されたトルクである伝達経路入力トルクTinを推定し、推定伝達経路入力トルクTineから少なくとも回転電機の出力トルクTmを減算して車輪Wから動力伝達経路2に入力された外部入力トルクTwを推定する。そして、低振動速度算出器52は、推定外部入力トルクTwreと、車輪Wの駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクTrqとに基づいて、目標回転速度ωmoを算出する。
本実施形態では、回転速度制御部50は、始動制御の実行中に、回転速度制御を行うように構成されている。
3−4−3−1.動力伝達経路2の2慣性系へのモデル化
図7に、回転速度制御の基礎となる動力伝達経路2のモデルを示す。動力伝達経路2を軸ねじれ振動系にモデル化している。回転電機MGは、機関分離クラッチSSCが直結係合状態である場合に、内燃機関ENGに駆動連結され、第二ブレーキB2又はワンウェイブレーキOWCが直結係合状態である場合に、変速装置TMに駆動連結される。変速装置TMは、出力軸O及び車軸AXを介して、負荷Lとなる車両に駆動連結されている。変速装置TMは、変速比Krで、入力軸Iと出力軸Oとの間の回転速度を変速すると共に、トルクの変換を行う。なお、以下では出力軸O及び車軸AXをまとめて、出力シャフトと称する。
内燃機関ENG、回転電機MG、及び負荷L(車両)を、それぞれ慣性モーメント(イナーシャ)Je、Jm、Jlを有する剛体としてモデル化している。各剛体間は、機関出力軸Eo、入力軸I、出力シャフトの軸により駆動連結されている。始動制御中のように機関分離クラッチSSCが滑り係合状態であり、第二ブレーキB2又はワンウェイブレーキOWCが直結係合状態である場合は、回転電機MG及び負荷(車両の)の2慣性系にモデル化できる。
ここで、Teは内燃機関ENGが出力する出力トルクであり、ωeは内燃機関ENGの回転速度(角速度)であり、機関分離クラッチSSCが滑り係合状態である場合に、機関分離クラッチSSCから回転電機MG側に伝達されるスリップトルク(第一スリップトルクと称す)である。また、Tmは回転電機MGが出力する出力トルクであり、ωmは回転電機MGの回転速度(角速度)であり、Tcrは、変速装置TMを介して回転電機MGに伝達される出力シャフトのねじり反力トルクである。ωoは、出力シャフトの変速装置TM側端部の回転速度(角速度)である。
一方、Tcは負荷L(車両)に伝達される出力シャフトのねじりトルクであり、Twは、車輪Wから動力伝達経路2に入力される、坂路抵抗、空気抵抗、タイヤ摩擦抵抗等の走行抵抗トルク、及びブレーキトルクなどの外部入力トルクである。ωlは出力シャフトの負荷側端部の回転速度(角速度)であって、負荷L(車輪)の回転速度(角速度)である。変速装置TMに変速段が直結係合状態で形成されている場合に、回転電機MGの回転速度ωmを、変速比Krで除算した回転速度が、変速装置TM側端部における出力シャフトの回転速度ωoになり、負荷Lに伝達される出力シャフトのねじりトルクTcを、変速比Krで除算したトルクが、回転電機MGに伝達される出力シャフトのねじり反力トルクTcrになる。
また、Kcは出力シャフトのねじりばね定数であり、Ccは出力シャフトの粘性摩擦係数である。
3−4−3−2.2慣性モデルの伝達関数
動力伝達経路2を図7に示すような2慣性系にモデル化した場合、回転電機MGの出力トルクTm、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTf、及び外部入力トルクTwから回転電機MGの回転速度ωmまでの伝達関数P(s)は、式(1)に示すようになる。
Figure 0006064611
ここで、Tinは動力伝達経路2に入力される、回転電機MGの出力トルクTm、第一スリップトルクTf、及び外部入力トルクTwの合計値であり、外部入力トルクTwは、回転電機MGの回転速度ωmに対して、変速比Krで除算された形で影響する。Jは動力伝達経路2全体の慣性モーメントである。ωaは動力伝達経路2の共振周波数であり、ζaは共振点減衰率であり、ωzは動力伝達経路2の反共振周波数であり、ζzは反共振点減衰率である。それらは、出力シャフトのねじりばね定数Kc及び粘性摩擦係数Cc、負荷(車両)の慣性モーメントJl、回転電機MGの慣性モーメントJm、及び変速比Krを用いて、式(2)に示すようになる。
変速比Krは、変速装置TMに形成された変速段によって変化する。よって、動力伝達経路2全体の慣性モーメントJ、及び共振周波数ωaは、変速比Krによって変化する。
Figure 0006064611
3−4−3−3.外部入力推定器
<伝達経路入力トルクの推定>
式(1)から、回転電機MGの回転速度ωmは、伝達経路入力トルクTinを、動力伝達経路2全体の慣性モーメントJで除算し、積分した回転速度に、動力伝達経路2の固有振動数である共振周波数ωaの振動成分が加算された回転速度になる。よって、回転電機MGの回転速度ωmに基づき、伝達経路入力トルクTinを推定する上で、少なくとも回転電機MGの回転速度ωmの共振周波数ωaの振動成分を低減することが必要であることがわかる。また、この振動成分を低減するとともに、微分演算処理を行い、動力伝達経路2全体の慣性モーメントJを乗算することにより、伝達経路入力トルクTinを推定できることがわかる。
よって、外部入力推定器51は、上記したように、動力伝達経路2の共振周波数の振動成分を低減させた回転電機MGの回転速度ωmの変化に基づき、動力伝達経路2に入力されたトルクである伝達経路入力トルクTinを推定するように構成されている。
本実施形態では、図8に示すように、外部入力推定器51に備えられた入力トルク推定器55が、回転電機MGの回転速度ωmに対して、少なくとも動力伝達経路2の振動成分を低減する信号処理である固有振動低減処理60と、微分演算処理61と、動力伝達経路2全体の慣性モーメントJの乗算処理62と、を行って伝達経路入力トルクTinの推定値Tineを算出するように構成されている。なお、固有振動低減処理60、慣性モーメントの乗算処理62、微分演算処理61との処理順序は、任意の順序に変更されてもよい。
図8に示す例では、入力トルク推定器55は、式(1)及び式(2)で示した、回転電機MGの出力トルクTmから回転電機MGの回転速度ωmまでの伝達特性である伝達関数P(s)の逆伝達特性である1/P(s)に基づき設定された信号処理を行うように設定されている。
本例では、固有振動低減処理60は、2慣性の振動特性の逆特性に基づき、式(3)の伝達関数Pr(s)に設定されている。
Figure 0006064611
この固有振動低減処理60の伝達関数Pr(s)は、動力伝達経路2の共振周波数ωaの振動成分を低減する周波数特性を備えている。
また、入力トルク推定器55の各制御定数は、式(2)に示したように、変速装置TMの変速段の変更によって変化する変速比Krに応じて変更される。
或いは、固有振動低減処理60を、動力伝達経路2の共振周波数ωa付近の周波数帯域をカットオフするフィルタ処理に設定するように構成してもよい。このようなフィルタ処理として、ローパスフィルタ処理、バンドバスフィルタ処理を用いることができる。この場合も、フィルタ周波数帯域は、変速比Krに応じて変更される。
或いは、動力伝達経路2の振動特性をより高次の伝達関数にモデル化し、その逆伝達特性に基づき、固有振動低減処理60を設定するようにしてもよい。もしくは、実験的に求めた動力伝達経路2の伝達特性の逆伝達特性に基づき、固有振動低減処理60を設定するようにしてもよい。
<外部入力トルクの推定>
また、式(1)に示すように、伝達経路入力トルクTinには、外部入力トルクTwに加えて、回転電機MGの出力トルクTm、及び第一スリップトルクTfが含まれている。よって、推定伝達経路入力トルクTineに基づき、車輪Wから動力伝達経路2に入力された外部入力トルクTwを推定する上で、少なくとも回転電機MGの出力トルクTmを減算することが必要であることがわかる。また、機関分離クラッチSSCが滑り係合状態であり、第一スリップトルクTfが生じている場合には、この回転電機MGの出力トルクTmの減算に加えて、更にスリップトルクTfを減算することが必要であることがわかる。
よって、外部入力推定器51は、上記したように、推定伝達経路入力トルクTineから少なくとも回転電機MGの出力トルクTmを減算して外部入力トルクTwを推定するように構成されている。
本実施形態では、回転速度制御の実行中は、機関分離クラッチSSCが滑り係合状態であるので、外部入力推定器51は、図8に示すように、推定伝達経路入力トルクTineから、回転電機MGの出力トルクTmを減算すると共に、推定第一スリップトルクTfeの絶対値を加算して外部入力トルクTwを推定するように構成されている。ここで、外部入力推定器51は、外部入力トルクTwを変速比Krで除算したトルク(Tw/Kr)を推定することとなる。よって、推定外部入力トルクTwreは、Tw/Krの推定値である。以下では、この回転電機MG側の値に換算した外部入力トルクTw/Krを、単に、外部入力トルクTwと称して説明する。
ここで、本実施形態では、回転電機MGは、指令値に対するトルク出力の応答遅れが小さいため、回転電機要求トルクTmoを回転電機MGの出力トルクTmに設定している。
なお、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の増加中は、推定第一スリップトルクTfeの推定誤差などにより、推定外部入力トルクTwreが実際の外部入力トルクTwから変動して推定誤差が生じる恐れがある。
よって、外部入力推定器51は、少なくとも機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の増加中には、当該伝達トルク容量の増加前に推定した推定外部入力トルクTwreを保持するように構成されてもよい。これにより、推定外部入力トルクTwreの推定誤差の発生を抑制できる。
3−4−3−4.低振動速度算出器
低振動速度算出器52は、上記したように、推定外部入力トルクTwreと、車輪Wの駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクTrqとに基づいて、目標回転速度ωmoを算出する。目標回転速度ωmoは、回転電機MGの回転速度ωmの振動成分を低減した回転速度となる。
本実施形態では、図8に示すように、低振動速度算出器52は、推定外部入力トルクTwreと車両要求トルクTrqとを加算したトルクに対して、動力伝達経路2全体の慣性モーメントJによる除算処理を行って回転加速度(角加速度)を算出し、回転加速度の積分演算処理を行って、目標回転速度ωmoを算出するように構成されている。
3−4−3−5.回転速度制御器
回転速度制御器53は、上記したように、回転電機MGの回転速度ωmを目標回転速度ωmoに近づけるような回転制御トルク指令Tpを算出する。
本実施形態では、図8に示すように、回転速度制御器53は、目標回転速度ωmoから回転電機MGの回転速度ωmを減算した回転速度偏差Δωmに基づき、フィードバック制御を行って、回転制御トルク指令Tpを算出するように構成されている。
回転速度制御器53には、PID制御器や、PI制御器のような、各種のフィードバック制御器を用いることができる。
そして、加算器54が、車両要求トルクTrqに推定第一スリップトルクTfeの絶対値を加算して算出された基本回転電機要求トルクTbと、回転制御トルク指令Tpと、を加算した値を、回転電機要求トルクTmoとして設定するように構成されている。
なお、車両要求トルクTrqに加算される推定第一スリップトルクTfeの絶対値が、第一スリップトルクTfの変化に対するフィードフォワード制御項であり、回転制御トルク指令Tpが、第一スリップトルクTfの変化に対するフィードバック制御項である。なお、基本回転電機要求トルクTbを加算せずに、回転制御トルク指令Tpの値のみを、回転電機要求トルクTmoとして設定するように構成されてもよい。
3−4−3−6.機関分離クラッチSSCのスリップトルクの推定
<機関分離クラッチSSCのスリップトルク>
機関分離クラッチSSCの実際の伝達トルク容量は、目標トルク容量の変化に対して応答遅れを持って変化する。目標トルク容量がゼロから増加された後、機関分離クラッチSSCの油圧シリンダに油が充填され、伝達トルク容量がゼロから増加し始めるまでには、むだ時間が生じる。また、むだ時間遅れの後、伝達トルク容量は、一次遅れ的に増加していく。すなわち、伝達トルク容量の応答遅れ特性は、むだ時間遅れ及び一次遅れでモデル化できる。
始動制御部47は、伝達トルク容量の応答遅れ特性を用い、目標トルク容量又は目標油圧に基づいて、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量(第一伝達トルク容量)を推定するように構成されている。
本実施形態では、始動制御部47は、目標トルク容量に対して、むだ時間遅れ処理及び一次遅れフィルタ処理を行って、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を推定するように構成されている。ここで、むだ時間及び一次遅れフィルタ係数(時定数)は、予め設定された値に設定される。或いは、始動制御部47は、目標トルク容量をゼロから増加させた後の経過時間と、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の変化との関係が予め設定された過渡挙動マップを備えるように構成され、当該過渡挙動マップを用い、目標トルク容量をゼロから増加させた後の経過時間に基づいて、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量を推定するように構成されてもよい。
そして、始動制御部47は、推定した第一伝達トルク容量に基づき、動摩擦により機関分離クラッチSSCから回転電機MG側に伝達している第一スリップトルクTfの推定値(推定第一スリップトルクTfe)を算出する。始動制御中は、機関分離クラッチSSCの回転電機MG側から内燃機関ENG側にトルクが伝達するので、始動制御部47は、推定第一伝達トルク容量に負の符号(−1)を乗算した値を、推定第一スリップトルクTfeに設定する。
3−4−4.固定制御の課題
次に、図9に示す比較例のタイムチャートを参照して、固定制御の課題を説明する。図9に示す比較例では、本実施形態とは異なり固定制御が実行されていない。
よって、図9に示す例では、目標変速段が第一段1stであり第二ブレーキB2が係合されていない状態で、内燃機関ENGの始動制御が行われている(時刻T04から時刻T08)。なお、第一クラッチC1は直結係合状態に制御されている。
始動制御の開始後(時刻T04)、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量がゼロから増加されており、その後機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量がゼロから増加している(時刻T05以降)。
機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量が増加すると、回転電機MG側から内燃機関ENG側に機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfが伝達される(時刻T05以降)。このため、回転電機MGの回転速度ωmが低下する方向にトルクが作用する。本実施形態では、上記のように、始動制御部47は、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfを推定し、推定第一スリップトルクTfeに応じて回転電機MGの出力トルクTmをフィードフォワード的に増加させるように構成されている。しかし、むだ時間や時定数などの応答遅れ特性の変動などにより、第一スリップトルクTfに推定誤差が生じる場合がある。推定誤差の発生により、回転電機MGの出力トルクTmにより、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの増加を十分に補償できずに、回転電機MGの回転速度ωmが低下する方向にトルクが作用する場合が生じる。
図9に示す例では、時刻T04で機関分離クラッチSSCの目標トルク容量がゼロからステップ的に増加された後、機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量は、時刻T05までむだ時間遅れが生じた後、一次遅れ的に増加している。機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量の増加に応じて、回転電機MG側から内燃機関ENG側に伝達する第一スリップトルクTfの大きさが増加するため、回転電機MGに作用するトルク(入力トルク)は、負の値になっている。
一方、回転電機MGの出力トルクTmは、推定誤差などの要因により、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの減少に対して遅れて増加しており、回転電機MGの出力トルクTmと第一スリップトルクTfとを合計したトルクは、車両要求トルクTrqから大きく減少している。機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの減少開始後の減少速度は大きくなるため、減少開始後の合計トルクの減少量は大きくなっている。図9の例のように、車両要求トルクTrqが十分に大きくない場合は、合計トルクは負の値まで減少する場合が生じる。また、内燃機関ENGの回転速度を短期間で上昇させるために、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量が大きく設定されている場合は、合計トルクの減少量は大きくなる。
図9に示すように、電動モードにおいて第二ブレーキB2が解放され、ワンウェイブレーキOWCの係合により第一段1stが形成される状態で、電動モードからパラレルモードに移行させるために始動制御を行う場合において、合計トルクが負の値になると、回転電機MGの回転速度ωmがワンウェイブレーキOWCの同期回転速度より低下し、ワンウェイブレーキOWCが解放状態になる。ここで、ワンウェイブレーキOWCの同期回転速度は、ワンウェイブレーキOWCが係合する回転電機MGの回転速度ωmである。
ワンウェイブレーキOWCが解放状態になると、図7に示すように、回転電機MGと負荷L(車輪W)とが駆動連結されていない状態になり、動力伝達経路2が2慣性の軸ねじれ振動系から、回転電機MGと負荷Lとがそれぞれ独立している2つの1慣性系に変化する。この状態になると、回転電機MGには、負荷L側からねじり反力トルクTcrが作用しなくなり、回転電機MGの回転速度ωmは、回転電機MGの出力トルクTmと第一スリップトルクTfとの合計トルク及び回転電機MGの慣性モーメントJmに応じて変化するようになる。
合計トルクが負の値である間(時刻T05から時刻T06)、回転電機MGの回転速度ωmは同期回転速度に対して低下し続ける。このとき、負荷L側からねじり反力トルクTcrが作用しないため、回転速度の低下量が大きくなっている。そして、回転電機MGの出力トルクTmが増加してくると、合計トルクが正の値になり、回転電機MGの回転速度ωmは上昇し始める(時刻T06以降)。回転電機MGの回転速度ωmが同期回転速度まで上昇したとき(時刻T07)、ワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になる。ワンウェイブレーキOWCが解放状態になっている期間(時刻T05から時刻T07)は、回転電機MG側から車輪W側に車両要求トルクTrqに応じたトルクを伝達することができない。このため、運転者に違和感を与える。
また、ワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になると、動力伝達経路2が2つの独立した1慣性系から2慣性の軸ねじれ振動系に変化する。このとき、合計トルクがステップ的に2慣性の軸ねじれ振動系に入力され、ねじれ振動が励起される。図9に示す例では、出力シャフトは、車輪Wに正のトルクを伝達する側にねじれた状態で、ねじれ角度が振動して、回転電機MGの回転速度ωmが共振周波数ωaで振動している。合計トルクがステップ的に入力されるため、励起されるねじれ振動が大きくなり、回転電機MG側から負荷L(車輪W)に伝達される出力シャフトのねじりトルクTcが大きくなっている(時刻T07以降)。このため、大きなトルク変動が車輪Wに伝達され、運転者に違和感を与える。
本実施形態では、始動制御の実行中に回転速度制御が行われるように構成されているが、回転速度制御によっても、回転電機MGの回転速度ωmの低下が十分抑制できていない。これは、ワンウェイブレーキOWCが解放状態になっている期間(時刻T05から時刻T07)は、回転電機MGの回転速度ωmが変化しているが、2慣性の軸ねじれ振動系の共振周波数ωaの応答性で変化しておらず、1慣性系の応答性で変化しており、共振周波数ωaより低い周波数の成分を多く有している。このため、共振周波数ωaの振動成分を低減する固有振動低減処理60により回転電機MGの回転速度ωmの変化が低減されず、回転電機MGの回転速度ωmの変化に応じて、車輪Wから動力伝達経路2に入力された外部入力トルクの推定値Twreが変化する。そして、推定外部入力トルクTwreの変化に応じて、目標回転速度ωmoが変化する。よって、目標回転速度ωmoが、回転電機MGの回転速度ωmの変化に応じて同様に変化する。すなわち、ワンウェイブレーキOWCの解放状態では、回転電機MGの回転速度ωmの変化が、外部入力トルクTwrの変化により生じたと誤推定し、目標回転速度ωmoが変化されてしまう。そのため、ワンウェイブレーキOWCの解放状態で回転速度制御を実行しても、回転電機MGの回転速度ωmの変動を抑制するように、回転電機MGの出力トルクTmを十分変化させることができず、上記のような課題が生じる(時刻T05から時刻T07)。一方、ワンウェイブレーキOWCが直結係合状態になった後(時刻T07以降)は、回転速度制御により軸ねじれ振動を減衰できているが、合計トルクがステップ的に入力されたために、整定するまでに生じるトルク変動が大きくなっている。
また、電動運転制御の実行中も、第二ブレーキB2が係合されていないので、図9に示す例のように、ワンウェイブレーキOWCが解放状態になり、独立した2つの1慣性系になる場合が生じる。この場合は、回転速度制御を実行することができない、或いは実行しても外部入力トルクTwrの推定誤差を生じる。このため、始動制御の開始時の推定外部入力トルクTwreの初期値を得るため、電動運転制御の実行中に外部入力推定器51の処理を実行するように構成しても、外部入力トルクTwrの推定誤差が生じることを抑制できない。
3−4−5.固定制御の挙動
次に、図10に示すタイムチャートを参照して、本実施形態に係る固定制御について詳細に説明する。図10は、図9と同様の運転条件で、固定制御を実行した場合の本実施形態に係る例である。
時刻T11までは、運転モードがパラレルモードに決定されており、並行制御部46が、並行運転制御を実行している。具体的には、並行制御部46は、機関分離クラッチSSCを係合させた状態で、内燃機関ENGを運転させ、少なくとも内燃機関ENGに駆動力を出力させるように制御している。また、目標変速段が特定変速段としての第一段1stに決定されているが、固定制御部48は、並行運転制御が実行されているので、並列係合装置としての第二ブレーキB2を解放状態のままに制御している(時刻T11)。なお、第一段1stを形成する第一クラッチC1は直結係合状態に制御されている。
図10に示す例では、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量は、完全係合容量に設定されており、機関分離クラッチSSCは直結係合状態に制御されている。ここで、完全係合容量とは、駆動力源から機関分離クラッチSSCに伝達されるトルクが変動しても滑りのない係合状態を維持できる伝達トルク容量である。なお、機関分離クラッチSSCは滑り係合状態に制御されてもよい。また、図10に示す例では、車両要求トルクTrqはゼロ付近に設定されており、内燃機関ENG及び回転電機MGの出力トルクはゼロ付近に制御されている。そして、回転電機MGの回転速度ωmは、ワンウェイブレーキOWCの同期回転速度より低くなっており、ワンウェイブレーキOWCは解放状態になっている。なお、車両要求トルクTrqがゼロより大きく設定され、駆動力源から正のトルクが出力される場合は、回転電機MGの回転速度ωmは、ワンウェイブレーキOWCの同期回転速度まで上昇し、ワンウェイブレーキOWCは直結係合状態になる。
図10に示す例では、時刻T11で運転モードがパラレルモードから電動モードに変更されたため、停止制御部49は、並行運転制御から電動運転制御へ移行させるために、内燃機関ENGを停止させる停止制御を開始している。本実施形態では、停止制御部49は、機関分離クラッチSSCを解放させた後、内燃機関ENGを停止させるように構成されている。具体的には、停止制御部49は、停止制御の開始後、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロまで次第に減少させるスイープダウンを実行している(時刻T11から時刻T12)。停止制御部49は、スイープダウンの終了後、内燃機関制御装置31に内燃機関ENGの停止要求を指令している(時刻T12)。その後、内燃機関ENGの回転速度がゼロまで低下し、内燃機関ENGが停止状態に移行している(時刻T14)。
停止制御が終了した後、電動制御部45は、回転電機MGの駆動力を車輪Wに伝達させるように制御する電動運転制御を開始している(時刻T13)。図10に示す例では、車両要求トルクTrqがゼロ付近に設定されているので、固定制御が行われない場合は、図9に示す比較例のように、ワンウェイブレーキOWCが解放状態になる。
一方、図10に示す例では、固定制御部48は、変速装置TMに特定変速段としての第一段1stを形成させる状態で、電動運転制御が開始されたので、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合した状態に維持する固定制御を開始している(時刻T13)。本実施形態では、固定制御部48は、停止制御により機関分離クラッチSSCが解放され、内燃機関ENGが停止された後(時刻T13)に、固定制御を開始するように構成されている。
なお、固定制御部48は、停止制御により機関分離クラッチSSCが解放された後(時刻T12)に、固定制御を開始するように構成されてもよい。
また、固定制御部48は、停止制御の開始時点から第二ブレーキB2の伝達トルク容量を増加させるまでの期間(時刻T11から時刻T13)、直ぐに係合状態に移行させることができるように、予め第二ブレーキB2に伝達トルク容量が生じない程度の低い予備油圧を供給する予備油圧制御を実行するように構成されてもよい。
本実施形態では、固定制御部48は、固定制御の開始後、第二ブレーキB2の目標トルク容量をゼロから、完全係合容量より低い所定容量まで増加させるように構成されている。ここで、所定容量は、回転電機MGの回転速度ωmが上昇し、第二ブレーキB2が直結係合状態に移行したときに生じるトルクショックが大きくならないように十分小さく設定される。
そして、固定制御部48は、回転電機MGの回転速度ωmとワンウェイブレーキOWCの同期回転速度との回転速度差が所定判定値以下になった場合(時刻T14)に、第二ブレーキB2の目標トルク容量を完全係合容量まで増加させ、直結係合状態に維持するように構成されている。ここで、ワンウェイブレーキOWCの同期回転速度は、出力軸Oの回転速度に、第一段1stの変速比Krを乗算して算出される。よって、固定制御により、変速装置TMに第一段1stを形成させる状態における電動運転制御の実行中(時刻T14から時刻T15)も、第二ブレーキB2が直結係合状態に制御されることにより、変速装置TMに第一段1stが形成されて、回転電機MGと負荷L(車輪W)とが駆動連結される。これにより、動力伝達経路2が、2慣性の軸ねじれ振動系に制御される。
時刻T15で、アクセル開度(車両要求トルクTrq)の増加などにより、運転モードが電動モードからパラレルモードに変更されている。始動制御部47は、電動運転制御から並行運転制御へ移行させるために、内燃機関ENGの始動制御を開始している(時刻T15)。
本実施形態では、始動制御部47は、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量をゼロから所定の始動トルクに増加させている(時刻T15)。始動トルクは、内燃機関ENGの回転速度を上昇できるように、内燃機関ENGのフリクショントルクなど、内燃機関ENGの負トルクの絶対値より大きいトルクに設定される。機関分離クラッチSSCの伝達トルク容量(第一スリップトルクTf)は、目標トルク容量の増加に対して応答遅れを持って変化している。図10に示す例では、目標トルク容量がゼロからステップ的に増加された時点(時刻T15)から、むだ時間遅れの後(時刻T16)、伝達トルク容量が一次遅れ的に増加し、第一スリップトルクTfがゼロから減少している。
図10に示す例でも、図9に示す比較例と同様に、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの推定誤差が生じており、回転電機MGの回転速度ωmが低下する方向に作用するトルク外乱(合計トルクの負方向の変化)が、動力伝達経路2に入力されている(時刻T16以降)。
本実施形態では、始動制御が開始される前の電動運転制御中から固定制御が実行されているので、始動制御の開始時点から第二ブレーキB2が直結係合状態に制御されており、動力伝達経路2が2慣性の軸ねじれ振動系に制御されている。よって、トルク外乱が回転電機MG側の慣性系に入力された後、軸ねじれ振動系の動特性に従って、回転電機MGの回転速度ωmが変化する。具体的には、図9に示す比較例とは異なり、回転電機MGには負荷L側からねじり反力トルクTcrが作用する。これにより、回転電機MGの回転速度ωmは、共振周波数ωaの成分を多く有して変化する。
このため、図8に示す共振周波数ωaの成分を低減する固有振動低減処理60により回転電機MGの回転速度ωmの変化が低減される。よって、トルク外乱により回転電機MGの回転速度ωmが変化したとしても、車輪Wから動力伝達経路2に入力された外部入力トルクの推定値Twreが大きく変化しない。そして、推定外部入力トルクTwreの変化が小さいため、目標回転速度ωmoが大きく変化しない。よって、回転電機MGの回転速度ωmが変化しても、目標回転速度ωmoが大きく変化しない。そして、回転速度制御により、回転電機MGの回転速度ωmが目標回転速度ωmoに近づくように、回転電機MGの出力トルクTmが変化される。これにより、機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの推定誤差を打ち消すように、回転電機MGの出力トルクTmが増加され、トルク外乱(合計トルクの負方向の変化)が大きくなることが抑制されている。そのため、トルク外乱により励起されるねじれ振動が大きくなることが抑制されている。そして、トルク外乱により励起されたねじれ振動が、回転速度制御により比較的早期に減衰されている(時刻T16から時刻T17)。よって、回転電機MG側から車輪W(負荷L)に伝達される出力シャフトのねじりトルクTcが大きくなることを抑制でき(時刻T16以降)、運転者に与える違和感を低減することができる。
なお、図9及び図10における入力トルクは、回転電機MGの慣性系に作用するトルクであり、出力トルクは、負荷L(車両)の慣性系に作用するトルクである。
機関分離クラッチSSCの第一スリップトルクTfの大きさが、内燃機関ENGのフリクショントルクを上回ると、内燃機関ENGの回転速度が上昇を開始する。本実施形態では、内燃機関ENGの回転速度が燃焼を開始可能な回転速度を上回った後、内燃機関ENGの燃焼が開始されている(時刻T17から時刻T18の間)。また、始動制御部47は、内燃機関ENGの回転速度と回転電機MGの回転速度との回転速度差が所定判定値以下になった場合に、機関分離クラッチSSCの目標トルク容量を始動トルクから完全係合容量まで増加させて、機関分離クラッチSSCを直結係合状態に移行させ、始動制御を終了している(時刻T18)。
なお、始動制御部47は、機関分離クラッチSSCを直結係合状態に移行させた後、内燃機関ENGの燃焼を開始させるように構成されてもよい。この場合は、内燃機関ENGの燃焼が開始した後、始動制御が終了される。
本実施形態では、固定制御部48は、始動制御が終了した後、固定制御を終了し、第二ブレーキB2を解放状態に制御するように構成されている。図10に示す例では、固定制御部48は、機関分離クラッチSSCが直結係合状態に移行されて始動制御が終了した後(時刻T18)、第二ブレーキB2の目標トルク容量を完全係合容量からステップ的に減少させた後、ゼロまで次第に減少させるように構成されている。
また、本実施形態では、回転速度制御部50は、始動制御の開始時点(時刻T15)から終了時点(時刻T18)まで回転速度制御を行うように構成されている。
並行制御部46は、始動制御が終了した後、並行運転制御を開始している(時刻T18)。
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態においては、回転電機MGと変速装置TMとの間の動力伝達経路2に係合装置が備えられていない場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両用駆動装置1は、図11に示すように、回転電機MGと変速装置TMと間の動力伝達経路2に更に係合装置SSC2を備えるように構成されてもよい。
或いは、車両用駆動装置1は、図12に示すように、回転電機MGと変速装置TMと間の動力伝達経路2に更にトルクコンバータTCを備え、トルクコンバータTCの入出力部材間を直結係合状態にするロックアップクラッチSSC2を備えるように構成されてもよい。
(2)上記の実施形態においては、車両用駆動装置1は、内燃機関ENGと回転電機MGとの動力伝達経路2に機関分離クラッチSSCを備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両用駆動装置1は、図13に示すように、内燃機関ENGと回転電機MGとの動力伝達経路2に遊星歯車機構PG3を備えるように構成されてもよい。図13に示す例では、遊星歯車機構PG3は、シングルピニオン型の遊星歯車機構とされており、遊星歯車機構PG3の第一回転要素(リングギヤR3)に、他の回転要素を介することなく、回転電機MGが駆動連結され、遊星歯車機構PGの第二回転要素(キャリアCA3)に、他の回転要素を介することなく、内燃機関ENGが駆動連結され、遊星歯車機構PG3の第三回転要素(サンギヤS4)に、他の回転要素を介することなく、第二回転電機MG2が駆動連結されている。遊星歯車機構PG3が有するこれら3つの回転要素は、回転速度の順(速度線図における並び順)に第一回転要素(リングギヤR3)、第二回転要素(キャリアCA3)、及び第三回転要素(サンギヤS4)となっている。
図14の速度線図に示すように、電動運転制御の実行中において、内燃機関ENGを停止させる場合は、第二回転電機MG2により第三回転要素(サンギヤS4)の回転速度が負に制御されて、内燃機関ENGの回転速度がゼロ付近に維持され、内燃機関ENGの燃焼が停止される。一方、始動制御及び並行運転制御の実行中において、内燃機関ENGを始動させて、運転させる場合は、第二回転電機MG2により第三回転要素(サンギヤS4)の回転速度が正に制御されて、内燃機関ENGの回転速度がゼロから燃焼可能な回転速度まで上昇される。なお、第二回転電機MG2は、回転電機MGと同様に回転電機制御ユニット32により制御される。
図13の例に示すように、車両用駆動装置1に機関分離クラッチSSCが備えられていない場合は、固定制御部48は、停止制御により内燃機関ENGが停止された後から、始動制御により内燃機関ENGの燃焼が開始した後までの間、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合した状態に維持するように構成される。
図13に示す例でも、始動制御中は、内燃機関ENGのフリクショントルク及び燃焼開始時の出力トルクの変動が、回転電機MG側に伝達されるため、固定制御を実行しない場合は、上記の実施形態で説明したような課題が生じる。
或いは、車両用駆動装置1に機関分離クラッチSSC及び遊星歯車機構PG3が備えられずに、回転電機MGと内燃機関ENGとが常時一体回転するように駆動連結されるように構成されてもよい。この場合も、固定制御部48は、停止制御により内燃機関ENGが停止された後から、始動制御により内燃機関ENGの燃焼が開始した後までの間、並列係合装置としての第二ブレーキB2を係合した状態に維持するように構成される。この場合も始動制御中は、内燃機関ENGの出力トルクの変動が、回転電機MG側に伝達されるためである。
(3)上記の実施形態においては、機関分離クラッチSSC及び変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・が油圧により制御される係合装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、機関分離クラッチSSC及び変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の一方又は双方は、油圧以外の駆動力、例えば、電磁石の駆動力、サーボモータの駆動力など、により制御される係合装置であってもよい。
(4)上記の実施形態においては、並列係合装置として第二ブレーキB2は、摩擦係合装置とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、並列係合装置として第二ブレーキB2は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置であればどのような係合装置であってもよく、例えば、一対の係合部材間が歯(凹凸部)の噛み合いにより係合又は解放される噛み合い係合装置(ドグクラッチ)などであってもよい。
(5)上記の実施形態において、制御装置30は、複数の制御ユニット32〜34を備え、これら複数の制御ユニット32〜34が分担して複数の機能部41〜50を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30は、上述した複数の制御ユニット32〜34を任意の組み合わせで統合又は分離した制御装置として備えるようにしてもよく、複数の機能部41〜50の分担も任意に設定することができる。
(6)上記の実施形態においては、変速装置TMは、2つの遊星歯車機構を有し、6つの係合装置を有し、6つの前進変速段を有し、各変速段は2つの係合要素が係合されることにより形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMは、少なくとも一方向係合装置又は並列係合装置を係合した状態で形成される特定変速段を有していれば、どのような構成であってもよい。すなわち、変速装置TMは、2つ以上又は1つの遊星歯車機構を有してもよく、2つ以上の係合装置を有してもよく、2つ以上の前進変速段を有してもよく、各変速段は2つ以上又は1つの係合装置が係合されることにより形成されてもよい。
(7)上記の実施形態においては、特定変速段が、第一クラッチC1の係合、及び一方向係合装置としてのワンウェイブレーキOWC又は並列係合装置としての第二ブレーキB2の係合で形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMは、少なくとも一方向係合装置又は並列係合装置を係合した状態で形成される特定変速段を有していれば、どのような構成であってもよい。すなわち、特定変速段は、一方向係合装置又は並列係合装置の係合に加えて1又は2以上の他の係合装置の係合で形成されてもよい。
(8)上記の実施形態においては、特定変速段が、変速比の最も大きい第一段1stである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、特定変速段は、変速比の最も大きい第一段1st以外の変速段、例えば第二段2ndであってもよい。
(9)上記の実施形態においては、図10などのタイムチャートの例において、アクセル開度の増加により、運転モードが電動モードからパラレルモードに変更される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、アクセル開度の増加以外、例えば、バッテリの充電量の低下などにより、運転モードが電動モードからパラレルモードに変更されるように構成されてもよい。
本発明は、内燃機関及び回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転速度を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に好適に利用することができる。
1 :車両用駆動装置
2 :動力伝達経路
30 :車両用駆動装置の制御装置
31 :内燃機関制御装置
32 :回転電機制御ユニット
33 :動力伝達制御ユニット
34 :車両制御ユニット
41 :内燃機関制御部
42 :回転電機制御部
43 :変速装置制御部
44 :機関分離係合装置制御部
45 :電動制御部
46 :並行制御部
47 :始動制御部
48 :固定制御部
49 :停止制御部
50 :回転速度制御部
B2 :第二ブレーキ(並列係合装置)
ENG :内燃機関
I :入力軸(入力部材)
O :出力軸(出力部材)
MG :回転電機
OWC :ワンウェイブレーキ(一方向係合装置)
SSC :機関分離クラッチ(機関分離係合装置)
TM :変速装置
Trq :車両要求トルク

Claims (5)

  1. 内燃機関及び回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材の回転速度を変速して前記出力部材に伝達する変速装置と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
    前記変速装置は、一方向係合装置と、前記一方向係合装置と同じ部材間を係合する並列係合装置とを有すると共に、少なくとも前記一方向係合装置又は前記並列係合装置を係合した状態で形成される特定変速段を有し、
    前記一方向係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向が第一方向の場合は係合し、前記相対回転の方向が前記第一方向とは反対の第二方向の場合は解放する係合装置であり、
    前記並列係合装置は、一対の係合部材間の相対回転の方向に関わらず、係合又は解放を制御可能である係合装置であり、
    前記内燃機関の駆動力を前記車輪に伝達させず、前記回転電機の駆動力を前記車輪に伝達させる電動運転制御を行う電動制御部と、
    少なくとも前記内燃機関の駆動力を前記車輪に伝達させる並行運転制御を行う並行制御部と、
    前記電動運転制御から前記並行運転制御へ移行させるために、前記回転電機の駆動力で前記内燃機関の回転速度を上昇させて前記内燃機関の燃焼を開始させる前記内燃機関の始動制御を行う始動制御部と、
    前記変速装置に前記特定変速段を形成させる状態で、前記電動運転制御が行われている間、及び前記始動制御が行われている間は、前記並列係合装置を係合した状態に維持する固定制御を行う固定制御部と、
    を備えた車両用駆動装置の制御装置。
  2. 前記車両用駆動装置は、前記内燃機関と前記入力部材との間の動力伝達経路に機関分離係合装置を更に備え、
    前記電動制御部は、前記内燃機関を停止させ、前記機関分離係合装置を解放した状態で、前記回転電機に駆動力を出力させ、
    前記並行制御部は、前記内燃機関を運転させ、前記機関分離係合装置を係合した状態で、少なくとも前記内燃機関に駆動力を出力させ、
    前記始動制御部は、前記機関分離係合装置を係合させて、前記入力部材から前記内燃機関へ伝達される駆動力により前記内燃機関の回転速度を上昇させる請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  3. 前記並行運転制御から前記電動運転制御へ移行させるために、前記機関分離係合装置を解放させ、前記内燃機関を停止させる停止制御を行う停止制御部を更に備え、
    前記固定制御部は、前記停止制御により前記機関分離係合装置が解放された後及び前記内燃機関が停止された後のいずれか一方から、前記始動制御により前記機関分離係合装置が係合された後及び前記内燃機関の燃焼が開始した後のいずれか一方までの間、前記並列係合装置を係合した状態に維持する請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  4. 前記並行運転制御から前記電動運転制御へ移行させるために、前記内燃機関を停止させる停止制御を行う停止制御部を更に備え、
    前記固定制御部は、前記停止制御により前記内燃機関が停止された後から、前記始動制御により前記内燃機関の燃焼が開始した後までの間、前記並列係合装置を係合した状態に維持する請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  5. 前記始動制御の実行中に、前記回転電機の回転速度の変化に基づき、前記車両用駆動装置の動力伝達経路に入力されたトルクである伝達経路入力トルクを推定し、当該伝達経路入力トルクから少なくとも前記回転電機の出力トルクを減算して前記車輪から前記動力伝達経路に入力された外部入力トルクを推定し、前記外部入力トルクと、前記車輪の駆動のために要求されているトルクである車両要求トルクとに基づいて算出した回転速度を目標回転速度として設定し、前記回転電機の回転速度が目標回転速度に近づくように前記回転電機の出力トルクを制御する回転速度制御を行う回転速度制御部を更に備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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