JP5578362B2 - 制御装置 - Google Patents
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Description
また、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
車速の増加などにより、入出力間摩擦係合要素の差回転速度がゼロまで減少し、滑りのない直結係合状態になると、入力部材側の回転部材と、出力部材側の回転部材とが、一体的に回転するようになる。この状態になると、回転速度制御中の回転電機は、車速の増加を抑制するように出力トルクを減少させる。回転速度制御による回転電機の出力トルクの負方向への変化量に基づいて、このような現象を検出し、入出力間摩擦係合要素の差回転速度がゼロまで減少したか否か判定できる。
よって、回転速度の検出精度の悪化に影響されず、入出力間摩擦係合要素の係合圧を完全係合圧まで増加させるタイミングを判定することができる。従って、係合圧を増加させるタイミングが前後することにより生じるトルクショックの発生を抑制することができる。
本発明に係る制御装置30の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、車両用駆動装置1を搭載した車両は、駆動力源として内燃機関であるエンジンEと回転電機MGを備えたハイブリッド車両とされている。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。この図に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、回転電機MG及びエンジンEを有する駆動力源に駆動連結される入力部材としての入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力部材としての出力軸Oと、係合状態に応じて入力軸Iと出力軸Oとを選択的に駆動連結させる入出力間摩擦係合要素CL1と、を備える。また、ハイブリッド車両は、車両用駆動装置1を制御するための制御装置30を備える。
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動伝達系の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MGを備え、これらのエンジンEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速機構TMを備えており、当該変速機構TMにより、入力軸Iに伝達されたエンジンE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
次に、車両用駆動装置1の油圧制御系について説明する。油圧制御系は、図示しないオイルパンに蓄えられた作動油を吸引し、車両用駆動装置1の各部に作動油を供給するための油圧源として、少なくとも機械式油圧ポンプMOPの油圧ポンプを備えている。機械式油圧ポンプMOPは、駆動力源からの回転駆動力が伝達される入力軸Iに駆動連結され、エンジンE及び回転電機MGの一方又は双方の回転駆動力により駆動される。
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30の構成について説明する。本実施形態では、図1、2に示すように、制御装置30は、回転電機MGの制御を行う回転電機制御ユニット32と、変速機構TM、並びに入出力間摩擦係合要素CL1及びエンジン分離クラッチCL2の制御を行う動力伝達制御ユニット33と、これらの制御装置を統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御ユニット34と、を有している。また、制御装置30は、エンジンEの制御を行うエンジン制御ユニット31と、通信可能に接続されている。
エンジン制御ユニット31は、エンジン制御部41を備えている。エンジン制御部41は、エンジンEの動作制御を行う機能部である。本実施形態では、エンジン制御部41は、車両制御ユニット34からエンジンEの目標出力トルクが指令されている場合は、車両制御ユニット34から指令された目標出力トルクをトルク指令値に設定し、エンジンEがトルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
回転電気制御装置32は、回転電機制御部42を備えている。回転電機制御部42は、回転電機MGの動作制御を行う機能部である。本実施形態では、回転電機制御部42は、車両制御ユニット34から回転電機MGの目標出力トルクが指令されている場合は、回転電機目標出力トルクをトルク指令値に設定し、回転電機MGがトルク指令値のトルクを出力するように制御するトルク制御を行う。一方、回転電機制御部42は、車両制御ユニット34から回転電機MGの目標回転速度が指令されている場合は、回転電機MGの回転速度を目標回転速度に一致させる回転速度制御を行う。具体的には、回転電機制御部42は、回転電機MGの回転速度を目標回転速度に一致させるように、トルク指令値を増減するフィードバック制御を行う。回転電機MGの回転速度が目標回転速度より大きい場合は、トルク指令値を減少させ、回転速度が目標回転速度より小さい場合は、トルク指令値を増加させる。
動力伝達制御ユニット33は、変速機構TM、並びに入出力間摩擦係合要素CL1及びエンジン分離クラッチCL2の制御を行う制御装置である。動力伝達制御ユニット33には、入力軸回転速度センサSe2、出力軸回転速度センサSe3等のセンサの検出情報が入力されている。動力伝達制御ユニット33は、変速機構制御部43、及びエンジン分離クラッチ制御部44を備えている。
変速機構制御部43は、変速機構TM並びに入出力間摩擦係合要素CL1を制御する機能部である。変速機構制御部43は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速機構TMにおける目標変速段を決定する。そして、変速機構制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速機構TMに備えられた各摩擦係合要素C1、B1、・・・に供給される油圧を制御することにより、各摩擦係合要素を係合又は解放して目標とされた変速段を変速機構TMに形成させる。具体的には、変速機構制御部43は、油圧制御装置PCに各摩擦係合要素B1、C1、・・・の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各摩擦係合要素に供給する。
エンジン分離クラッチ制御部44は、エンジン分離クラッチCL2を制御する機能部である。ここで、エンジン分離クラッチ制御部44は、スリップ走行モードである場合は、車両制御ユニット34からの指令に基づき、油圧制御装置PCを介してエンジン分離クラッチCL2に供給される油圧を制御することにより、エンジン分離クラッチCL2の入出力部材間に滑りがある滑り係合状態に制御するスリップ制御を行う。
車両制御ユニット34は、エンジンE、回転電機MG、変速機構TM、並びに入出力間摩擦係合要素CL1及びエンジン分離クラッチCL2等に対して行われる各種トルク制御、及び各摩擦係合要素の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う制御装置である。車両制御ユニット34は、統合制御部45、スリップ制御部46を備えている。
統合制御部45は、アクセル開度及び車速、並びにバッテリの充電量等に応じて、入力軸I側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である出力軸目標トルクを算出するとともに、エンジンE及び回転電機MGの運転モードを決定し、エンジンEの目標出力トルク、回転電機の目標出力トルク又は目標回転速度、入出力間摩擦係合要素CL1の目標伝達トルク容量、及びエンジン分離クラッチCL2の目標伝達トルク容量を算出し、それらを他の制御部41〜44に指令して統合制御を行う機能部である。
また、本実施形態では、機械式油圧ポンプMOPが入力軸Iに駆動連結されており、各摩擦係合要素に十分な油圧を供給するためには、入力軸I(回転電機MG)を所定の回転速度以上で回転させる必要がある。従って、エンジンEに燃焼を行わせない電動モードでも、回転電機MG(入力軸I)の回転速度を機械式油圧ポンプMOPの油圧生成のために必要な所定の油圧生成回転速度(例えば、300rpm)以上で運転させる。
よって、本実施形態では、パラレルモード、エンジン発電モード、エンジン始動モード、並びに電動モードが、後述するスリップ制御部46において実行されるスリップ走行モードに関連している。すなわち、エンジンEの回転速度を所定の下限回転速度以上、又は回転電機MGの回転速度を所定の油圧生成回転速度以上で運転させるために、スリップ走行モードを実行して少なくとも入出力間摩擦係合要素CL1を滑らせる。
スリップ制御部46は、入力軸Iが回転している状態で、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧を制御することにより、少なくとも入出力間摩擦係合要素CL1を滑らせて、入力軸I側から出力軸O側にトルクを伝達させつつ車両を走行させるスリップ走行モードを実行する機能部である。
そして、スリップ制御部46は、スリップ走行モードの実行中に、回転電機MGの回転速度を目標回転速度に一致させるように制御する回転速度制御の実行を指令するとともに、当該回転速度制御による回転電機MGの出力トルクの負方向への変化量を検出する。そして、スリップ制御部4は、負方向への変化量が所定値以上となった際に完全係合条件が成立したと判定して、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧を、滑りのない係合状態を維持できる係合圧である完全係合圧まで増加させる。
また、スリップ制御部46は、回転電機MGの回転速度制御の実行中における回転電機MGの回転速度が所定の切替判定値以上である場合には、負方向への変化量が所定値以上となったことに代えて、入力軸Iの回転速度及び出力軸Oの回転速度に基づいて検出される入出力間摩擦係合要素CL1の差回転速度が所定値以下となった際に完全係合条件が成立したと判定して、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧を、完全係合圧まで増加させる。
なお、完全係合圧は、駆動力源から入力軸Iに伝達されるトルクが変動しても、滑りのない係合状態を維持できる係合圧である。本実施形態では、完全係合圧は、エンジンE及び回転電機MGの駆動力源から出力されるトルクが最大の出力トルクとなっても摩擦係合要素に滑りを生じない係合圧(指令圧)に設定される。
以下で、スリップ制御部46によって実行されるスリップ走行モードの処理について、図3〜図5に示すタイムチャートの例、及び図7に示すフローチャートを参照して説明する。
スリップ制御部46は、出力軸Oの回転速度(車速)、及び変速機構TMの目標変速段に基づき、スリップ走行モード、及び直結走行モードのいずれかの走行モードを決定する(図7のステップ#01)。すなわち、スリップ制御部46は、各摩擦係合要素を直結係合状態にした場合に、エンジンEの回転速度又は回転電機MGの回転速度が、所定の判定回転速度より小さくなると判断される場合は、スリップ走行モードに決定し、所定の判定回転速度以上になると判断される場合は、直結走行モードに決定する。
そして、スリップ制御部46は、直結入力回転速度が判定回転速度より小さくなる場合は、スリップ走行モードに決定し、直結入力回転速度が判定回転速度以上になる場合は、直結走行モードに決定する。
なお、図3及び図4に示す例では、時刻t11、時刻t21までは、エンジン分離クラッチCL2は、その係合圧(指令圧)が完全係合圧にされ、直結係合状態となっており、エンジンE及び回転電機MG(入力軸I)は下限回転速度以上で回転している。また、図5に示す例では、エンジン分離クラッチCL2は、解放状態にされ、エンジンEの回転速度はゼロとなっており、回転電機MGは油圧生成回転速度以上で回転している。
スリップ制御部46は、スリップ走行モードに決定されている場合に、少なくとも入出力間摩擦係合要素CL1を、その入出力部材間に滑りがある滑り係合状態に制御するスリップ制御を行う。
スリップ制御部46は、スリップ走行モードに決定された場合(図7のステップ#01:Yes)に、入出力間摩擦係合要素CL1を介して、入力軸Iから出力軸O側に伝達されるトルクである入出力間伝達トルクが出力軸目標トルクとなるように、入出力間摩擦係合要素CL1を滑り係合状態に制御する入出力間スリップ制御を開始する(図7のステップ#02)。本実施形態では、スリップ制御部46は、出力軸目標トルクに基づいて、入出力間摩擦係合要素CL1の目標伝達トルク容量を算出する。ここで、入出力間摩擦係合要素CL1の入力部材が、入力軸Iと同じ回転速度で回転する摩擦係合要素とされる場合には、出力軸目標トルクが目標伝達トルク容量に設定される。一方、入出力間摩擦係合要素CL1の入力部材が、ギヤなどが介在することにより、入力軸Iと同じ回転速度で回転しない摩擦係合要素である場合には、出力軸目標トルクと各ギヤ比とに基づいて、出力軸目標トルクから入出力間摩擦係合要素CL1の入力部材に作用するトルクを算出して、当該作用トルクを入出力間摩擦係合要素CL1の目標伝達トルク容量に設定する。そして、スリップ制御部46は、動力伝達制御ユニット33に指令して、入出力間摩擦係合要素CL1の伝達トルク容量を目標伝達トルク容量に制御する。本実施形態では、スリップ制御部46は、スリップ走行モードに決定された場合に、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧(指令圧)を、予備係合圧に設定した後、目標伝達トルク容量に対応する係合圧(指令圧)まで増加させる。ここで、予備係合圧は、ストロークエンド圧より所定圧だけ小さい圧に設定される。また、ストロークエンド圧は、摩擦係合要素に伝達トルク容量を発生させる直前の係合圧である。
スリップ制御部46は、スリップ走行モードに決定された場合に、回転電機MGの回転速度を目標回転速度に一致させるように制御する回転速度制御の実行開始を指令する(図7のステップ#03)。本実施形態では、スリップ制御部46は、回転電機制御部42に、回転電機MGの回転速度制御の実行を指令するとともに、回転速度制御における目標回転速度を指令する。スリップ制御部46は、回転電機MGの目標回転速度を、駆動力源の運転モードがパラレルモード、エンジン始動モード、又はエンジン発電モードである場合には、下限回転速度以上の所定の回転速度に設定し、電動モードである場合には、油圧生成回転速度以上の所定の回転速度に設定する。
図3〜図5に示す例では、スリップ走行モードに決定された場合(時刻t11、時刻21、時刻31)に、既に回転電機MGの回転速度制御が実行されているが、この時点からスリップ制御部46による、回転電機MGの回転速度制御の実行を開始している。
スリップ制御部46は、エンジン分離クラッチCL2が直結係合状態であって、入出力間摩擦係合要素CL1の摩擦熱が所定値以上になる場合に、当該摩擦熱を低下させるために、エンジン分離クラッチCL2を滑り係合状態に制御する分離スリップ条件が成立したと判定する(図7のステップ#04:Yes)。一方、スリップ制御部46は、入出力間摩擦係合要素CL1の摩擦熱が所定値より小さくなる場合には、エンジン分離クラッチCL2を直結係合状態に維持すると判定し、分離スリップ条件が不成立であると判定する(図7のステップ#04:No)。なお、スリップ制御部46は、電動モードの場合は、エンジン分離クラッチCL2が解放状態にされるため、分離スリップ条件が不成立であると判定する(図7のステップ#04:No)。
本実施形態では、スリップ制御部46は、入出力間摩擦係合要素CL1の差回転速度と伝達トルク容量とを乗算した値が、所定の分離スリップ判定値以上になる場合に、分離スリップ条件が成立したと判定する。具体的には、スリップ制御部46は、入力軸Iの回転速度から直結入力回転速度を減算した差回転速度である入出力間差回転速度と、出力軸目標トルクとを乗算した値を入出力間摩擦熱として算出する。そして、スリップ制御部46は、入出力間摩擦熱が分離スリップ判定値以上である場合に、分離スリップ条件が成立したと判定する。ここで、直結入力回転速度は、上記したように、出力軸Oの回転速度に、目標変速段の変速比を乗算した回転速度であり、変速段を構成する各摩擦係合要素、並びに入出力間摩擦係合要素CL1を直結係合状態にしたと仮定した状態における入力軸Iの回転速度である。
図3、図4に示す例では、車速がゼロであり、入力軸Iの回転速度が高い状態のため入出力間差回転速度が大きく、出力軸目標トルクが比較的大きいため、入出力間摩擦熱が分離スリップ判定値以上になり、分離スリップ条件が成立したと判定されている(時刻t11、時刻21)。なお、図5に示す例では、エンジン分離クラッチCL2が解放状態にされているため、分離スリップ条件が不成立であると判定されている(時刻t31)。
スリップ制御部46は、分離スリップ条件が成立したと判定した場合(図7のステップ#04:Yes)に、エンジン分離クラッチCL2を滑り係合状態に制御する分離スリップ制御を開始する(図7のステップ#05)。分離スリップ制御により、エンジンEの回転速度を下限回転速度以上に維持しつつ入力軸Iの回転速度を低下させる。これにより、入出力間摩擦係合要素CL1の差回転速度を減少させて入出力間摩擦熱を低下させる。一方、入力軸Iの回転速度の低下分だけ、エンジン分離クラッチCL2の差回転速度が増加し、その摩擦熱が増加する。従って、分離スリップ制御により、入出力間摩擦係合要素CL1の摩擦熱を、エンジン分離クラッチCL2に分散させて低下させることができる。
スリップ制御部46は、エンジン分離クラッチCL2を滑り係合状態(分離スリップ状態)にした場合の入出力間摩擦熱が、目標入出力間摩擦熱以下まで低下するように、回転電機MGの目標回転速度を低下させる(図7のステップ#06)。すなわち、スリップ制御部46は、回転電機MGの目標回転速度から直結入力回転速度を減算した入出力間差回転速度と、出力軸目標トルクとを乗算した入出力間摩擦熱が、目標入出力間摩擦熱に一致するような、分離スリップ状態における回転電機MGの目標回転速度を算出する。よって、分離スリップ状態における回転電機MGの目標回転速度は、出力軸目標トルクに比例して減少されるように算出される。図3に示す例では、出力軸目標トルクが大きいため、分離スリップ状態における回転電機MGの目標回転速度は、後述する切替判定値以下まで低下されており、低下量が大きくなっている。一方、図4に示す例では、出力軸目標トルクが小さいため、分離スリップ状態における回転電機MGの目標回転速度は、切替判定値より大きい回転速度に留まっており、低下量は小さくなっている。
スリップ制御部46は、回転電機MGの目標回転速度を低下させた後、又は低下と同時に、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧(指令圧)を、予備係合圧から目標伝達トルク容量に対応する係合圧(指令圧)まで増加させる増加制御を開始する(図7のステップ#07)。一方、スリップ制御部46は、分離スリップ条件が不成立であると判定した場合(図7のステップ#04:No)は、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧(指令圧)を予備係合圧に設定してから所定時間経過した後に、目標伝達トルク容量に対応する係合圧(指令圧)まで増加させる(図7のステップ#07)。この係合圧の増加により、入出力間摩擦係合要素CL1を介して、入力軸Iから出力軸O側に伝達される入出力間伝達トルクが出力軸目標トルクまで増加する。
スリップ制御部46は、入出力間伝達トルクの増加を開始した後、又は開始と同時に、エンジン分離クラッチCL2の目標伝達トルク容量を、入出力間伝達トルクの増加分だけ増加させる増加制御を開始する(図7のステップ#08)。また、スリップ制御部46は、エンジンEの目標出力トルクを、入出力間伝達トルクの増加分だけ増加させる。
スリップ制御部46は、入出力間摩擦係合要素CL1のスリップ制御中に、入出力間摩擦係合要素CL1の差回転速度が減少して直結係合状態になる、又は直結係合状態になったと判定した場合に、完全係合条件が成立したと判定する。本実施形態では、回転速度制御における回転電機MGの回転速度が所定の切替判定値以上である場合と、切替判定値より小さい場合とで、完全係合条件の判定方法を切り替える。
一方、ケース2のように入力軸Iの回転速度が切替判定値以上の回転速度域(例えば時間間隔ΔT4に対応する回転速度域)では、入出力間摩擦係合要素CL1が直結係合状態になるときの、出力軸回転速度センサSe3の単位時間当たりのパルス数が多くなり、出力軸Oの回転速度の検出精度が許容できるほど良好になる。
スリップ制御部46は、上記のように、入力軸Iの回転速度が切替判定値より小さい場合には、回転速度制御による回転電機MGの出力トルクの負方向への変化量に基づいて完全係合条件の成立を判定する。
本実施形態では、スリップ制御部46は、回転速度制御中の回転電機MGのトルク指令値における基準指令値からの負方向の変化量が所定の係合判定値以上になった場合(図7のステップ#10:Yes)に、完全係合条件が成立したと判定する(図7のステップ#12)。スリップ制御部46は、基準指令値を、回転電機MGのトルク指令値に対して移動平均処理又は一次遅れフィルタ処理などのローパスフィルタ処理を行った値に設定する。もしくは、スリップ制御部46は、基準指令値を、仮に、回転電機MGのトルク制御を行うようにした場合に、設定されるトルク指令値に設定するようにしてもよい。また、トルク指令値に代えて、回転電機MGの実際の出力トルクが用いられるようにしてもよい。
スリップ制御部46は、上記のように、入力軸Iの回転速度が切替判定値以上の場合には、入力軸Iの回転速度及び出力軸Oの回転速度に基づき、完全係合条件の成立を判定する。
本実施形態では、スリップ制御部46は、入力軸Iの回転速度、出力軸Oの回転速度、及び変速段の変速比に基づき、入出力間摩擦係合要素CL1の差回転速度が所定値以下となった場合(図7のステップ#11:Yes)に、完全係合条件が成立したと判定する(図7のステップ#12)。図4に示す例では、入力軸Iの回転速度と、出力軸Oの回転速度に変速段の変速比を乗算した直結入力回転速度との差回転速度W1が、判定差回転速度以下になった場合(時刻t25)に、完全係合条件が成立したと判定している。また、後述するように、完全係合条件が成立した場合に、回転電機MGの回転速度制御が終了され、トルク制御に切り替えられる(時刻t25)。よって、直結係合状態になる前に、回転電機MGの回転速度制御が終了するので、上記のように、回転電機MGの出力トルクの減少によるトルクショックの発生が抑制される。また、判定差回転速度は、完全係合条件が成立したと判定された場合に、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧が完全係合圧まで増加されても、係合に伴うトルクショックの発生が抑制されるような値に設定される。
スリップ制御部46は、完全係合条件が成立したと判定した場合(図7のステップ#12)に、回転電機MGの回転速度制御を終了し、回転電機MGの出力トルクを目標トルクに一致させるように制御するトルク制御の実行を指令する(図7のステップ#13)。
本実施形態では、スリップ制御部46は、完全係合条件が成立したと判定した場合に、回転電機制御ユニット32に、目標回転速度に代えて、トルク指令値を伝達する。回転電機MGのトルク指令値は、駆動力源側から入力軸Iに伝達されているトルクが出力軸目標トルクに一致するように設定される。図3及び図4に示す例では、回転電機MGのトルク指令値は、エンジン分離クラッチCL2の伝達トルクと回転電機MGのトルク指令値とを合計したトルクが出力軸目標トルクに一致するように設定される(時刻t16、時刻t25)。図5に示す例では、回転電機MGのトルク指令値は、出力軸目標トルクに一致するように設定される(時刻t35)。なお、滑り係合状態においても、回転電機MGの回転速度制御により自動的に、回転電機MGの出力トルクは、駆動力源側から入力軸Iに伝達されているトルクが出力軸目標トルクに一致するように設定されるので、回転速度制御からトルク制御への切替前後で大きなトルク段差が生じない。
スリップ制御部46は、完全係合条件が成立したと判定した場合(図7のステップ#12)に、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧を、駆動力源から入力軸Iに伝達されるトルクが変動しても滑りのない係合状態を維持できる係合圧である完全係合圧まで増加させる(図7のステップ#14)。
本実施形態では、スリップ制御部46は、完全係合条件が成立したと判定した場合に、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧(指令圧)を次第に増加させる係合圧スイープアップ制御を行った後、入出力間摩擦係合要素CL1の係合圧(指令圧)を完全係合圧まで増加させる係合圧増加制御を行う。図3から図5に示す例では、スリップ制御部46は、完全係合条件が成立したと判定した時点から所定時間(時刻t16からt17、時刻t25からt26、時刻t35からt36)、スイープアップ制御を行った後、ステップ的に係合圧(指令圧)を完全係合圧まで増加している。そして、スリップ制御部46は、完全係合圧まで増加させた後、入出力間スリップ制御を終了する(時刻t17、時刻t26、時刻t36)。
スリップ制御部46は、車速の増加により、エンジン分離クラッチCL2の差回転速度W2が所定値以下に減少した場合に、エンジン分離クラッチCL2の係合圧(指令圧)を完全係合圧まで増加させて分離スリップ制御を終了するとともに、スリップ走行モードを終了する(図7のステップ#15:Yes)。図3及び図4に示す例では、スリップ制御部46は、エンジンEの回転速度と入力軸Iの差回転速度W2がゼロになった場合に、エンジン分離クラッチCL2の係合圧(指令圧)を完全係合圧までステップ的に増加させている(時刻t18、時刻t28)。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
ここで、トルクコンバータTCは、入力軸Iと変速機構TMとの間に備えられ、駆動力源から入力軸Iに伝達されるトルクを、流体継手又はロックアップクラッチCL1を介して変速機構TMに伝達する装置である。このトルクコンバータTCは、入力軸Iに駆動連結されたポンプインペラTCaと、変速機構TM(中間軸M)に駆動連結されたタービンランナTCbと、これらの間に設けられたステータTCcと、を備えて構成されている。そして、トルクコンバータTCは、内部に充填された作動油を介して、駆動側のポンプインペラTCaと従動側のタービンランナTCbとの間のトルクの伝達を行う、流体継手として機能する。ロックアップクラッチCL1は、伝達効率を高めるために、ポンプインペラTCaとタービンランナTCbとを一体回転させるように連結するクラッチである。また、動力伝達制御ユニット33は、油圧制御装置PCを介して、ロックアップクラッチCL1の係合圧を制御するように構成されている。そして、スリップ制御部46が、スリップ走行モードで、ロックアップクラッチCL1のスリップ制御を行う。
E:エンジン(内燃機関)
I:入力軸(入力部材)
O:出力軸(出力部材)
TM:変速機構
MOP:機械式油圧ポンプ
W:車輪
DF:出力用差動歯車装置
CL1:入出力間摩擦係合要素
CL2:内燃機関分離摩擦係合要素(エンジン分離クラッチ)
Se1:エンジン回転速度センサ
Se2:入力軸回転速度センサ
Se3:出力軸回転速度センサ
Se4:アクセル開度検出センサ
1:車両用駆動装置
30:制御装置
31:エンジン制御ユニット
32:回転電機制御ユニット
33:動力伝達制御ユニット
34:車両制御ユニット
41:エンジン制御部
42:回転電機制御部
43:変速機構制御部
44:エンジン分離クラッチ制御部
45:統合制御部
46:スリップ制御部
Claims (5)
- 少なくとも回転電機を有する駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、係合状態に応じて前記入力部材と前記出力部材とを選択的に駆動連結させる入出力間摩擦係合要素と、を備えた車両用駆動装置の制御をおこなうための制御装置であって、
前記入力部材が回転している状態で、前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を制御することにより、前記入出力間摩擦係合要素を滑らせて、前記入力部材側から前記出力部材側にトルクを伝達させつつ車両を走行させるスリップ走行モードを実行可能であり、
前記スリップ走行モードの実行中に、前記回転電機の回転速度を目標回転速度に一致させるように制御する回転速度制御の実行を指令するとともに、当該回転速度制御による前記回転電機の出力トルクの負方向への変化量を検出し、
前記変化量が所定値以上となった際に完全係合条件が成立したと判定して、前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を、滑りのない係合状態を維持できる係合圧である完全係合圧まで増加させる制御装置。 - 前記駆動力源は、更に内燃機関を有し、
前記車両用駆動装置は、係合状態に応じて前記内燃機関を前記入力部材に選択的に駆動連結する内燃機関分離摩擦係合要素を有し、
少なくとも前記スリップ走行モードの実行中に、前記内燃機関が回転している状態で、前記内燃機関分離摩擦係合要素を滑らせて、前記内燃機関から前記入力部材にトルクを伝達しつつ車両を走行させる請求項1に記載の制御装置。 - 前記回転速度制御における前記回転電機の回転速度が所定値以上である場合には、前記変化量が所定値以上となったことに代えて、前記入力部材の回転速度及び前記出力部材の回転速度に基づいて検出される前記入出力間摩擦係合要素の差回転速度が所定値以下となった際に前記完全係合条件が成立したと判定して、前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を、前記完全係合圧まで増加させる請求項1又は2に記載の制御装置。
- 前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を前記完全係合圧まで増加させる場合に、前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を次第に増加させる係合圧スイープアップ制御を行った後、前記入出力間摩擦係合要素の係合圧を前記完全係合圧まで増加させる係合圧増加制御を行う請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記完全係合条件が成立したと判定した場合に、前記回転速度制御を終了し、前記回転電機の出力トルクを目標トルクに一致させるように制御するトルク制御の実行を指令する請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
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