JP6414489B2 - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Description
また、回転変化の開始前に、特定係合装置の係合圧が、滑り係合状態で内燃機関の出力トルクに応じたトルクを伝達する第一係合圧よりも高くされるので、回転変化の開始により特定係合装置が滑り係合状態にされた後、滑り係合状態の特定係合装置を介して内燃機関側から回転電機側に伝達される伝達トルクが、内燃機関の出力トルクを上回り、内燃機関の回転速度も低下させることができる。
ところで、特定係合装置を滑り係合状態にした状態で、特定係合装置の係合圧を変化させると、係合圧の制御系の応答遅れにより、滑り係合状態の特定係合装置を伝達する伝達トルクの変化が遅れるため、トルク変動が生じるおそれがある。しかし、上記の特徴構成によれば、特定係合装置と係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、回転電機の回転速度を低下させる回転変化の開始前に、特定係合装置の係合圧が第一係合圧よりも高くされるので、係合圧の変化の応答遅れは、特定係合装置が滑り係合状態にされる前の直結係合状態である間に生じる。直結係合状態では、特定係合装置は、外部から特定係合装置に伝達されるトルクを伝達する。そのため、直結係合状態では、係合圧の変化の応答遅れが生じても、特定係合装置を伝達する伝達トルクは変動しない。よって、係合圧の制御系の応答遅れにより、特定係合装置の伝達トルクが変動することを抑制でき、トルク変動が車輪に伝達されることを抑制できる。
本発明に係る車両用駆動装置1の制御装置30(以下、単に制御装置30と称す)の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30の概略構成を示す模式図である。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。
車両用駆動装置1には、内燃機関ENGと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路2に、内燃機関ENGの側から順に、特定係合装置SSC、回転電機MG、及び変速装置TMが設けられている。特定係合装置SSCは、その係合状態に応じて、内燃機関ENGと回転電機MGとの間を選択的に連結した状態又は分離した状態とする。変速装置TMは、複数の係合装置C1、B1・・・を備えると共に、当該複数の係合装置C1、B1・・・の係合の状態に応じて変速比の異なる複数の変速段が選択的に形成される。
変速制御部43は、複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、変速装置TMに形成する変速段を切り替える変速制御を行う。本実施形態に係る変速制御部43は、特定係合装置SSCが直結係合状態で車輪Wに前進加速方向のトルクを伝達している状態から、複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して変速比が小さい変速段に切り替えるオンアップシフトを実行するように構成されている。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源として内燃機関ENG及び回転電機MGを備え、これらの内燃機関ENGと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速装置TMを備えており、当該変速装置TMにより、入力軸Iに伝達された内燃機関ENG及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
後進段(Rev)は、第三クラッチC3及び第二ブレーキB2が係合されて形成される。
これらの各変速段は、入力軸I(内燃機関ENG)と出力軸Oとの間の変速比(減速比)が大きい順に、第一段、第二段、第三段、第四段、第五段、及び第六段となっている。
第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2は、第一クラッチC1により第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。キャリアCA2は、第二クラッチC2により入力軸Iと選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第二ブレーキB2又はワンウェイクラッチOWCにより非回転部材としてのケースCSに選択的に固定される。ワンウェイクラッチOWCは、一方向の回転のみを阻止することによりキャリアCA2を選択的にケースCSに固定する。リングギヤR2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。第二サンギヤS3は、第三クラッチC3により第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第一ブレーキB1によりケースCSに選択的に固定される。
車両用駆動装置1の油圧制御系は、車両の駆動力源や専用のモータによって駆動される油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。油圧制御装置PCは、各係合装置C1、B1・・・、SSCなどに対して供給される油圧を調整するための複数のリニアソレノイド弁などの油圧制御弁を備えている。油圧制御弁は、制御装置30から供給される油圧指令の信号値に応じて弁の開度を調整することにより、当該信号値に応じた油圧の作動油を各係合装置C1、B1・・・、SSCなどに供給する。制御装置30から各リニアソレノイド弁に供給される信号値は電流値とされている。そして、各リニアソレノイド弁から出力される油圧は、基本的に制御装置30から供給される電流値に比例する。
油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁から出力される油圧(信号圧)に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速装置TMが有する複数の係合装置C1、B1・・・及び特定係合装置SSC等に供給される。
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及び内燃機関制御装置31の構成について、図2を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜45などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜45の機能が実現される。
入力回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するためのセンサである。入力軸Iには回転電機MGのロータRoが一体的に駆動連結されているので、回転電機制御ユニット32は、入力回転速度センサSe1の入力信号に基づいて回転電機MGの回転速度(角速度)、並びに入力軸Iの回転速度を検出する。出力回転速度センサSe2は、出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて出力軸Oの回転速度(角速度)を検出する。また、出力軸Oの回転速度は車速に比例するため、動力伝達制御ユニット33は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて車速を算出する。機関回転速度センサSe3は、内燃機関出力軸Eo(内燃機関ENG)の回転速度を検出するためのセンサである。内燃機関制御装置31は、機関回転速度センサSe3の入力信号に基づいて内燃機関ENGの回転速度(角速度)を検出する。
車両制御ユニット34は、統合制御部45を備えている。統合制御部45は、内燃機関ENG、回転電機MG、変速装置TM、及び特定係合装置SSC等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う。
統合制御部45は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、入力軸I側から出力軸O側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクを算出するとともに、内燃機関ENG及び回転電機MGの運転モードを決定する。運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源として走行する電動モードと、少なくとも内燃機関ENGを駆動力源として走行するパラレルモードと、を有する。例えば、アクセル開度が小さく、バッテリの充電量が大きい場合に、運転モードとして電動モードが決定され、それ以外の場合、すなわちアクセル開度が大きい、もしくはバッテリの充電量が小さい場合に、運転モードとしてパラレルモードが決定される。
そして、統合制御部45は、車両要求トルク、運転モード、及びバッテリの充電量等に基づいて、内燃機関ENGに対して要求する出力トルクである内燃機関要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、特定係合装置SSCに供給する油圧の目標である油圧指令、及び変速装置TMの各係合装置C1、B1・・・に供給する油圧の目標である油圧指令を算出し、それらを他の制御ユニット32、33及び内燃機関制御装置31に指令して統合制御を行う。なお、基本的に、内燃機関要求トルクと回転電機要求トルクの合計が、車両要求トルクに一致するように設定される。
内燃機関制御装置31は、内燃機関ENGの動作制御を行う内燃機関制御部41を備えている。本実施形態では、内燃機関制御部41は、統合制御部45又は変速制御部43から内燃機関要求トルクが指令されている場合は、内燃機関ENGが内燃機関要求トルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、統合制御部45又は変速制御部43から回転電機要求トルクが指令されている場合は、回転電機MGが回転電機要求トルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクTmgを制御する。
動力伝達制御ユニット33は、変速装置TMの制御を行う変速制御部43と、特定係合装置SSCの制御を行う特定係合制御部44と、を備えている。
特定係合制御部44は、特定係合装置SSCの係合状態を制御する。本実施形態では、特定係合制御部44は、特定係合装置SSCに供給される油圧が、統合制御部45又は変速制御部43から指令された特定係合装置SSCの油圧指令に一致するように、油圧制御装置PCに備えられた各リニアソレノイド弁に供給される信号値を制御する。
変速制御部43は、複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、変速装置TMに形成する変速段を切り替える変速制御を行う。
本実施形態では、変速制御部43は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速装置TMに形成させる目標変速段を決定する。そして、変速制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1・・・に供給される油圧を制御することにより、各係合装置C1、B1・・・を係合又は解放して目標とされた変速段を変速装置TMに形成させる。具体的には、変速制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(油圧指令)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(油圧指令)に応じた油圧を各係合装置に供給する。本実施形態では、変速制御部43は、油圧制御装置PCが備えた各リニアソレノイド弁に供給される信号値を制御することにより、各係合装置に供給される油圧を制御するように構成されている。
例えば、変速前の変速段が第二段2ndで、変速後の変速段が第三段3rdである場合は、図4に示すように、第一ブレーキB1が解放側係合装置に設定され、第三クラッチC3が係合側係合装置に設定される。
また、係合側係合装置は、変速制御の開始前は解放され、変速制御により係合される係合装置である。解放側係合装置は、変速制御の開始前は係合され、変速制御により解放される係合装置である。
変速制御部43は、特定係合装置SSCが直結係合状態で車輪Wに前進加速方向のトルクを伝達している状態から、複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して変速比が小さい変速段に切り替えるアップシフトを実行するように構成されている。
まず、図5に示す、比較例のタイムチャートを参照して、オンアップシフトの課題を説明する。
オンアップシフトでは、回転電機MG(入力軸I)の回転速度を、変速前同期回転速度Wbfから変速後同期回転速度Wafまで低下させて、係合側係合装置の回転速度差ΔWtmを減少させる係合側係合装置のイナーシャ相の期間(図5では時刻T03から時刻T04)を、できるだけ短縮することが求められる。車輪Wに前進加速方向のトルクを伝達している状態から行われるオンアップシフトでは、係合側係合装置のイナーシャ相において、係合側係合装置を滑り係合状態に制御して、駆動力源の駆動力を車輪W側に伝達させるように構成することが望ましい。しかし、係合側係合装置のイナーシャ相の期間が長くなると、係合側係合装置の発熱量が大きくなるため、係合側係合装置の耐久性が悪化するおそれがあった。そこで、係合側係合装置の耐久性を向上するため、係合側係合装置のイナーシャ相(以下、単にイナーシャ相とも称する)の期間をできるだけ短くすることが望まれる。
本実施形態に係る変速制御部43は、オンアップシフトの実行する場合に、特定係合装置SSCと、変速段の切り替えのために係合される係合装置である係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、回転電機MGの回転速度を低下させる回転変化(以下、回転電機MGの回転変化とも称す)を行う特定係合スリップ制御を実行するように構成されている。
特定係合装置SSCを滑り係合状態にした状態で、特定係合装置SSCの係合圧を変化させると、係合圧の制御系の応答遅れにより、滑り係合状態の特定係合装置SSCを伝達する伝達トルクTsscの変化が遅れるため、トルク変動が生じるおそれがある。
図6に示す例では、回転電機MGの回転速度が変速後同期回転速度Wafまで低下させ、係合側係合装置を直結係合状態に移行させた後、内燃機関ENGの回転速度を変速後同期回転速度Waf(回転電機MGの回転速度)まで低下させ、特定係合装置SSCを直結係合状態に移行させるように構成されている。
そこで、本実施形態では、変速制御部43は、オンアップシフトを実行する場合に、特定係合装置SSCと係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、回転電機MGの回転速度を低下させる回転変化の開始前に、特定係合装置SSCの係合圧を、滑り係合状態で内燃機関ENGの出力トルクTenに応じたトルクを伝達する係合圧である第一係合圧ΔP1よりも高くし、回転電機MGの回転速度の低下とともに、内燃機関ENGの回転速度も低下させるように構成されている。
なお、図7(及び図6)には、内燃機関ENGに作用する各トルクをまとめて1つのグラフで示し、内燃機関ENGに作用する各トルクの合計トルクTsmenを示している。また、回転電機MGに作用する各トルクをまとめて1つのグラフで示し、回転電機MGに作用する各トルクの合計トルクTsmmgを示している。変速装置TMから出力軸Oに伝達される出力トルクを1つのグラフで示している。
変速制御部43は、時刻T21から時刻T22の期間で、プレ相の制御を行い、解放側係合装置及び係合側係合装置の係合圧を予め変化させている。
変速制御部43は、時刻T21から時刻T22の期間で、解放側係合装置の係合圧(油圧指令)を、完全係合圧から直結限界係合圧より大きい解放側予備圧まで減少させ、係合側係合装置の係合圧(油圧指令)を、ゼロからストロークエンド圧より所定圧だけ小さい係合側予備圧まで増加させている。なお、完全係合圧は、駆動力源から各係合装置に伝達されるトルクが変動しても滑りのない係合状態を維持するために設定される最大限の係合圧(供給油圧、油圧指令)である。直結限界係合圧は、係合装置が滑り始める係合圧(供給油圧、油圧指令)である。
変速制御部43は、プレ相の後、時刻T22から時刻T23の期間で、トルク相の制御を行っている。具体的には、変速制御部43は、時刻T22から時刻T23の期間で、係合側係合装置の係合圧(油圧指令)を、車両要求トルクに応じた係合圧まで次第に増加させて、係合側係合装置を滑り係合状態にさせ、解放側係合装置の係合圧(油圧指令)を、ストロークエンド圧未満まで次第に減少させて解放側係合装置を解放状態にさせている。解放側係合装置の係合圧の減少により、解放側係合装置を介して回転電機MGから出力軸O側に伝達される伝達トルクが次第に減少していく。一方、係合側係合装置の係合圧の増加により、係合側係合装置を介して回転電機MGから出力軸O側に伝達される伝達トルクが次第に増加していく。なお、アップシフトにより変速比が減少するため、出力軸Oに伝達される出力トルクは、変速比の減少分、次第に減少していく。このトルク相の制御により、トルクの関係は、変速後の状態に移行されるが、回転速度の関係は、変速前の状態に維持され、係合側係合装置は滑り係合状態にされ、解放側係合装置は解放状態にされる。この状態になると、入力軸Iと出力軸Oとが一体的に回転しなくなり、入力軸I(回転電機MG)側の慣性系が、出力軸O側の慣性系から切り離された状態となる。
変速制御部43は、トルク相の後、時刻T23から時刻T26の期間で、回転電機MGの回転速度を低下させる回転変化を行うイナーシャ相の制御を行っている。具体的には、変速制御部43は、時刻T23から時刻T26の期間で、回転電機MGの回転速度を、変速前同期回転速度Wbfから変速後同期回転速度Wafまで低下させ、係合側係合装置の回転速度差ΔWtmをゼロまで減少させている。
また、変速前同期回転速度Wbfは、解放側係合装置が直結係合状態になったと仮定した場合の回転電機MG(入力軸I)の回転速度であり、変速制御部43は、出力軸Oの回転速度に変速前の変速段の変速比を乗算して、変速前同期回転速度Wbfを算出する。
本実施形態では、変速制御部43は、回転電機MGの出力トルクTmgを、回転電機MGの回転速度を低下させるためのイナーシャトルク(以下、回転電機MGのイナーシャトルクとも称す)に応じたトルクである第一トルクΔT1と、内燃機関ENGの回転速度を低下させるためのイナーシャトルクに応じたトルクである第二トルクΔT2との合計トルク分だけ低下させるように構成されている。
よって、係合側係合装置、特定係合装置SSCの順に、トルク変動が生じることを抑制しつつ、直結係合状態に移行させ、オンアップシフトを完了させることができる。
次に、オンアップシフトの処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、変速制御部43は、オンアップシフトを開始する条件が成立したか否か判定する(ステップ♯01)。変速制御部43は、オンアップシフトの開始条件が成立した場合(ステップ♯01:Yes)に、回転電機MGの回転速度を低下させる回転変化の開始前に、特定係合装置SSCの係合圧を、第一係合圧ΔP1よりも高くする(ステップ♯02)。また、変速制御部43は、オンアップシフトの開始条件が成立した場合(ステップ♯01:Yes)に、上記したプレ相の制御を実行する(ステップ♯03)。変速制御部43は、プレ相の制御の終了後、上記したトルク相の制御を実行する(ステップ♯04)。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
以上で説明した本発明の実施形態は、少なくとも以下の構成を備えている。
内燃機関(ENG)と車輪(W)とを結ぶ動力伝達経路(2)に、内燃機関(ENG)の側から順に、特定係合装置(SSC)、回転電機(MG)、及び変速装置(TM)が設けられた車両用駆動装置(1)を制御対象とする制御装置(30)であって、変速装置(TM)は、複数の係合装置(C1、B1・・・)を備えると共に、当該複数の係合装置(C1、B1・・・)の係合の状態に応じて変速比の異なる複数の変速段が選択的に形成され、特定係合装置(SSC)が直結係合状態で車輪(W)に前進加速方向のトルクを伝達している状態から、複数の係合装置(C1、B1・・・)の係合及び解放を制御して変速比が小さい変速段に切り替えるオンアップシフトを実行する場合に、特定係合装置(SSC)と、変速段の切り替えのために係合される係合装置である係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、回転電機(MG)の回転速度を低下させる回転変化の開始前に、特定係合装置(SSC)の係合圧を、滑り係合状態で内燃機関(ENG)の出力トルク(Ten)に応じたトルクを伝達する係合圧である第一係合圧(ΔP1)よりも高くし、回転電機(MG)の回転速度の低下とともに、内燃機関(ENG)の回転速度も低下させる。
また、回転変化の開始前に、特定係合装置(SSC)の係合圧が、滑り係合状態で内燃機関(ENG)の出力トルク(Ten)に応じたトルクを伝達する第一係合圧(ΔP1)よりも高くされるので、回転変化の開始により特定係合装置(SSC)が滑り係合状態にされた後、滑り係合状態の特定係合装置(SSC)を介して内燃機関(ENG)側から回転電機(MG)側に伝達される伝達トルク(Tssc)が、内燃機関(ENG)の出力トルク(Ten)を上回り、内燃機関(ENG)の回転速度も低下させることができる。
ところで、特定係合装置(SSC)を滑り係合状態にした状態で、特定係合装置(SSC)の係合圧を変化させると、係合圧の制御系の応答遅れにより、滑り係合状態の特定係合装置(SSC)を伝達する伝達トルク(Tssc)の変化が遅れるため、トルク変動が生じるおそれがある。しかし、上記の特徴構成によれば、特定係合装置(SSC)と係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、回転電機(MG)の回転速度を低下させる回転変化の開始前に、特定係合装置(SSC)の係合圧が第一係合圧(ΔP1)よりも高くされるので、係合圧の変化の応答遅れは、特定係合装置(SSC)が滑り係合状態にされる前の直結係合状態である間に生じる。直結係合状態では、特定係合装置(SSC)は、外部から特定係合装置(SSC)に伝達されるトルクを伝達する。そのため、直結係合状態では、係合圧の変化の応答遅れが生じても、特定係合装置(SSC)を伝達する伝達トルクは変動しない。よって、係合圧の制御系の応答遅れにより、特定係合装置(SSC)の伝達トルクが変動することを抑制でき、トルク変動が車輪(W)に伝達されることを抑制できる。
よって、係合側係合装置、特定係合装置(SSC)の順に、トルク変動が生じることを抑制しつつ、直結係合状態に移行させ、オンアップシフトを完了させることができる。
2 :動力伝達経路
30 :制御装置
31 :内燃機関制御装置
43 :変速制御部
B1 :第一ブレーキ
B2 :第二ブレーキ
ENG :内燃機関
I :入力軸
MG :回転電機
O :出力軸
Ten :内燃機関の出力トルク
Tmg :回転電機の出力トルク
Tsmen :内燃機関に作用する合計トルク
Tsmmg :回転電機に作用する合計トルク
Tssc :特定係合装置の伝達トルク
Waf :変速後同期回転速度
Wbf :変速前同期回転速度
ΔP1 :第一係合圧
ΔP2 :第二係合圧
ΔT1 :第一トルク
ΔT2 :第二トルク
ΔWssc :特定係合装置の回転速度差
ΔWtm :係合側係合装置の回転速度差
Claims (5)
- 内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、特定係合装置、回転電機、及び変速装置が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記変速装置は、複数の係合装置を備えると共に、当該複数の係合装置の係合の状態に応じて変速比の異なる複数の変速段が選択的に形成され、
前記特定係合装置が直結係合状態で前記車輪に前進加速方向のトルクを伝達している状態から、前記複数の係合装置の係合及び解放を制御して変速比が小さい変速段に切り替えるオンアップシフトを実行する場合に、前記特定係合装置と、変速段の切り替えのために係合される前記係合装置である係合側係合装置との双方を滑り係合状態として、前記回転電機の回転速度を低下させる回転変化の開始前に、前記特定係合装置の係合圧を、滑り係合状態で前記内燃機関の出力トルクに応じたトルクを伝達する係合圧である第一係合圧よりも高くし、前記回転電機の回転速度の低下とともに、前記内燃機関の回転速度も低下させ、
前記特定係合装置の係合圧を、前記第一係合圧と、滑り係合状態で前記内燃機関の回転速度を低下させるためのイナーシャトルクに応じたトルクを伝達する係合圧である第二係合圧との合計に設定する車両用駆動装置の制御装置。 - 前記回転電機の出力トルクを変化させるトルク制御により、前記回転変化を生じさせる請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記回転電機の出力トルクを、前記回転電機の回転速度を低下させるためのイナーシャトルクに応じたトルクである第一トルクと、前記内燃機関の回転速度を低下させるためのイナーシャトルクに応じたトルクである第二トルクとの合計トルク分だけ低下させる請求項1又は2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記内燃機関の回転速度と、前記係合側係合装置が直結係合状態になったと仮定した場合の前記回転電機の回転速度である変速後同期回転速度との回転速度差が減少するに従って、前記特定係合装置の係合圧に含まれる前記第二係合圧をゼロまで次第に変化させると共に、前記回転電機の出力トルクに含まれる前記第二トルクをゼロまで次第に変化させる請求項3に記載の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記回転電機の回転速度と前記変速後同期回転速度との回転速度差が減少するに従って、前記回転電機の出力トルクに含まれる前記第一トルクをゼロまで次第に変化させ、その後、前記内燃機関の回転速度と前記変速後同期回転速度との回転速度差が減少するに従って、前記特定係合装置の係合圧に含まれる前記第二係合圧をゼロまで次第に変化させると共に、前記回転電機の出力トルクに含まれる前記第二トルクをゼロまで次第に変化させる請求項4に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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