JP6414499B2 - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材とを結ぶ動力伝達経路に、油圧式の摩擦係合装置が設けられた車両用駆動装置の制御装置に関する。
上記のような制御装置に関して、例えば下記の特許文献1に記載された技術が既に知られている。特許文献1の技術では、入力部材の回転速度が、同期回転速度に略等しくなった場合に、変速装置の摩擦係合装置を係合させて変速段を形成させるように構成されている。
特開2010−223399号公報
しかしながら、油圧式の摩擦係合装置には、係合圧を変化させる指令に対する実際の係合圧の追従遅れがあり、摩擦係合装置の係合を開始してから、係合されるまでに遅れが生じる。特許文献1の技術のように、入力部材の回転速度が、同期回転速度に近づいた場合に、摩擦係合装置を係合させる制御では、摩擦係合装置の係合を開始したときの、入力部材の回転速度の変化率が大きい場合は、係合圧の追従遅れの間、入力部材の回転速度が同期回転速度から離れる。そのため、摩擦係合装置の係合部材間の回転速度差が大きくなった後、摩擦係合装置の実際の係合圧が上昇するため、摩擦係合装置の伝達トルクが増加し、出力部材側にトルク変動が伝達されるおそれがあった。
そこで、入力部材の回転速度が同期回転速度に近づいたときの、入力部材の回転速度の変化率を考慮して、摩擦係合装置の係合圧を増加させ、トルク変動が生じることを抑制できる車両用駆動装置の制御装置が望まれる。
上記に鑑みた、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材とを結ぶ動力伝達経路に、油圧式の摩擦係合装置が設けられた車両用駆動装置の制御装置の特徴構成は、前記駆動力源により、前記入力部材の回転速度を、前記摩擦係合装置の一対の係合部材間の回転速度差が無くなる同期回転速度に近づける制御を行っている状態で、前記摩擦係合装置を解放状態から係合状態に移行させる場合に、前記摩擦係合装置を係合させるための準備制御を行い、当該準備制御の終了後に、前記入力部材の現在の回転速度と、前記入力部材の回転速度の変化率とに基づいて、推定時間後の前記入力部材の回転速度である推定回転速度を推定し、前記推定回転速度と前記同期回転速度との回転速度差である推定回転速度差が係合判定閾値以下である場合に、前記摩擦係合装置の係合を実行する点にある。
上記の特徴構成によれば、入力部材の回転速度の変化率の大きさが小さく、推定時間後の推定回転速度差が、係合判定閾値以下である場合に、摩擦係合装置の係合を実行する為、摩擦係合装置の係合部材間の回転速度差が小さい状態で摩擦係合装置を係合させることができ、係合によるトルク変動を抑制できる。
本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図である。 本発明の実施形態に係る車両用駆動装置及び制御装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る変速装置の作動表である。 本発明の比較例に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るタイムチャートである。 本発明の実施形態に係るフローチャートである。
1.実施形態
実施形態に係る車両用駆動装置1を制御するための車両用駆動装置の制御装置30について、図面を参照して説明する。
車両用駆動装置1には、駆動力源に駆動連結される入力部材Iと、車輪Wに駆動連結される出力部材Oとを結ぶ動力伝達経路2に、油圧式の摩擦係合装置CLが設けられている。図1及び図2は、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30の概略構成を示す模式図である。図1及び図2に示すように、本実施形態では、入力部材Iに駆動連結される駆動力源は、内燃機関ENGとされている。入力部材Iと出力部材Oとを結ぶ動力伝達経路2には変速装置TMが設けられている。変速装置TMは、複数の係合装置C1、B1、・・・を備えると共に当該複数の係合装置C1、B1、・・・の係合又は解放に応じて複数の変速段が形成され、各変速段の変速比で入力部材Iの回転を変速して出力部材Oに伝達する。摩擦係合装置CLは、変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1、・・・の一つとされている。
なお、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
本実施形態では、車両用駆動装置1は、入力部材I及び摩擦係合装置CLを介さずに車輪Wに駆動連結される駆動力源として回転電機MGを備えている。回転電機MGは、出力部材Oが駆動連結された車輪W(本例では前輪)とは、異なる車輪W(本例では後輪)に駆動連結されている。また、本実施形態では、内燃機関ENGは、トルクコンバータTCを介して、入力部材Iに駆動連結されている。なお、内燃機関ENGは、車両用駆動装置1には含まれない。
車両5には、車両用駆動装置1を制御するための制御装置30が備えられている。本実施形態では、図3に示すように、制御装置30は、回転電機MGの制御を行う回転電機制御ユニット32と、変速装置TM及びロックアップクラッチLCの制御を行う動力伝達制御ユニット33と、これらの制御ユニットを統合して車両用駆動装置1の制御を行う車両制御ユニット34と、を有している。また、車両5には、内燃機関ENGの制御を行う内燃機関制御装置31も備えられている。
このような構成において、本実施形態に係る制御装置30は、図3に示すように、係合制御部44を備えている。
係合制御部44は、駆動力源により、入力部材Iの回転速度ωiを、摩擦係合装置CLの一対の係合部材間の回転速度差が無くなる同期回転速度ωsに近づける制御を行っている状態で、摩擦係合装置CLを解放状態から係合状態に移行させる場合に、摩擦係合装置CLを係合させるための準備制御を行い、当該準備制御の終了後に、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、推定時間ΔTe後の入力部材Iの回転速度ωiである推定回転速度ωieを推定し、推定回転速度ωieと同期回転速度ωsとの回転速度差である推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下である場合に、摩擦係合装置CLの係合を実行する。
1−1.車両用駆動装置1の構成
まず、本実施形態に係る車両用駆動装置1の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の駆動伝達系及び油圧供給系の構成を示す模式図である。なお、この図2は、軸対称の構成を一部省略して示している。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は電力の供給経路を示している。この図に示すように、車両用駆動装置1は、トルクコンバータTCを介して入力部材Iに駆動連結される内燃機関ENGの回転駆動力を、変速装置TMで変速して出力部材Oに伝達する構成となっている。
内燃機関ENGは、燃料の燃焼により駆動される熱機関であり、例えば、ガソリン内燃機関やディーゼル内燃機関などの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関ENGのクランクシャフト等の内燃機関出力軸Eoが、トルクコンバータTCを介して入力部材Iに駆動連結されている。
トルクコンバータTCは、内部に充填された作動油を介して、内燃機関出力軸Eoに駆動連結されたポンプインペラTCaと、入力部材Iに駆動連結されたタービンランナTCbとの間で駆動力の伝達を行う動力伝達装置である。トルクコンバータTCは、ポンプインペラTCaとタービンランナTCbとの間に、ワンウェイクラッチを備えたステータTCcを備えており、また、ポンプインペラTCaとタービンランナTCbとを一体回転させるように連結するロックアップクラッチLCを備えている。機械式オイルポンプMPは、ポンプインペラTCaと一体回転するように駆動連結されている。
また、本実施形態においては、内燃機関ENGに隣接してスタータ13が設けられている。スタータ13は、直流モータ等で構成され、バッテリ24に電気的に接続されている。スタータ13は、内燃機関ENGが停止された状態でバッテリ24から供給される電力により駆動されて内燃機関出力軸Eoを回転させ、内燃機関ENGを始動させることができるように構成されている。
また、内燃機関ENGに隣接してスタータジェネレータBISGが設けられている。スタータジェネレータBISGは、内燃機関出力軸Eoにプーリーなどを介して駆動連結されており、内燃機関ENGの回転駆動力で発電するジェネレータ(発電機)としての機能に加えて、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能を備えている。なお、スタータジェネレータBISGは、発電機の機能を備えるが、電動機の機能を備えないように構成されてもよい。
駆動力源が駆動連結される入力部材Iには、変速装置TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比(ギヤ比)の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速装置TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の係合装置C1、B1・・・とを備えている。変速装置TMは、各変速段の変速比で、入力部材Iの回転速度ωiを変速するとともにトルクを変換して、出力部材Oへ伝達する。変速装置TMから出力部材Oへ伝達されたトルクは、差動歯車装置を介して左右二つの車輪Wに伝達される。ここで、変速比(ギヤ比)は、変速装置TMにおいて各変速段が形成された場合の、出力部材Oの回転速度に対する入力部材Iの回転速度ωiの比であり、本願では入力部材Iの回転速度ωiを出力部材Oの回転速度で除算した値である。すなわち、入力部材Iの回転速度ωiを変速比で除算した回転速度が、出力部材Oの回転速度になる。また、入力部材Iから変速装置TMに伝達されるトルクに、変速比を乗算したトルクが、変速装置TMから出力部材Oに伝達されるトルクになる。
本実施形態では、図4の作動表に示すように、変速装置TMは変速比(減速比)の異なる6つの変速段(第一段1st、第二段2nd、第三段3rd、第四段4th、第五段5th、及び第六段6th)を前進段として備えている。これらの変速段を構成するため、変速装置TMは、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2を備えてなる歯車機構と、6つの係合装置C1、C2、C3、B1、B2、Fと、を備えて構成されている。ワンウェイクラッチFを除くこれら複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、第一遊星歯車機構PG1及び第二遊星歯車機構PG2の各回転要素の回転状態を切り替え、複数の係合装置C1、B1・・・を選択的に係合することにより、6つの変速段が切り替えられる。なお、変速装置TMは、上記6つの変速段のほかに、一段の後進段Revも備えている。
図4において、「○」は各係合装置が係合状態にあることを示しており、「無印」は、各係合装置が解放状態にあることを示している。「(○)」は、内燃機関ブレーキを行う場合などにおいて、係合装置が係合した状態にされることを示している。また、「△」は、一方向に回転する場合には解放した状態となり、他方向に回転する場合には係合した状態となることを示している。
第一段(1st)は、第一クラッチC1及びワンウェイクラッチFが係合されて形成される。内燃機関ブレーキを行うときなどは、第一段は、第一クラッチC1及び第二ブレーキB2が係合されて形成される。第二段(2nd)は、第一クラッチC1及び第一ブレーキB1が係合されて形成される。第三段(3rd)は、第一クラッチC1及び第三クラッチC3が係合されて形成される。第四段(4th)は、第一クラッチC1及び第二クラッチC2が係合されて形成される。第五段(5th)は、第二クラッチC2及び第三クラッチC3が係合されて形成される。第六段(6th)は、第二クラッチC2及び第一ブレーキB1が係合されて形成される。
後進段(Rev)は、第三クラッチC3及び第二ブレーキB2が係合されて形成される。
これらの各変速段は、入力部材I(内燃機関ENG)と出力部材Oとの間の変速比(減速比)が大きい順に、第一段、第二段、第三段、第四段、第五段、及び第六段となっている。
第一遊星歯車機構PG1は、図2に示すように、複数のピニオンギヤP1を支持するキャリアCA1と、ピニオンギヤP1にそれぞれ噛み合うサンギヤS1及びリングギヤR1と、の三つの回転要素を有したシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。第二遊星歯車機構PG2は、第一サンギヤS2及び第二サンギヤS3の二つのサンギヤと、リングギヤR2と、第一サンギヤS2及びリングギヤR2の双方に噛み合うロングピニオンギヤP2並びにこのロングピニオンギヤP2及び第二サンギヤS3に噛み合うショートピニオンギヤP3を支持する共通のキャリアCA2と、の四つの回転要素を有したラビニヨ型の遊星歯車機構とされている。
第一遊星歯車機構PG1のサンギヤS1は、非回転部材としてのケースCsに固定されている。キャリアCA1は、第三クラッチC3により第二遊星歯車機構PG2の第二サンギヤS3と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第一クラッチC1により第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2と選択的に一体回転するように駆動連結され、第一ブレーキB1によりケースCsに選択的に固定される。リングギヤR1は、入力部材Iと一体回転するように駆動連結されている。
第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2は、第一クラッチC1により第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。キャリアCA2は、第二クラッチC2により入力部材Iと選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第二ブレーキB2又はワンウェイクラッチFにより非回転部材としてのケースCsに選択的に固定される。ワンウェイクラッチFは、一方向の回転のみを阻止することによりキャリアCA2を選択的にケースCsに固定する。リングギヤR2は、出力部材Oと一体回転するように駆動連結されている。第二サンギヤS3は、第三クラッチC3により第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第一ブレーキB1によりケースCsに選択的に固定される。
本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイクラッチFを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、いずれも摩擦係合装置とされている。具体的には、これらは油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキにより構成されている。これらの係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、油圧制御装置PCから供給される油圧により、係合の状態が制御される。なお、ロックアップクラッチLCも摩擦係合装置である。
摩擦係合装置は一対となる2つの係合部材を備え、その係合部材間の摩擦により、係合部材間でトルクを伝達する。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある場合は、動摩擦により回転速度の大きい方の部材から小さい方の部材に伝達トルク容量の大きさのトルク(スリップトルク)が伝達される。摩擦係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない場合は、摩擦係合装置は、伝達トルク容量の大きさを上限として、静摩擦により摩擦係合装置の係合部材間に作用するトルクを伝達する。ここで、伝達トルク容量とは、摩擦係合装置が摩擦により伝達することができる最大のトルクの大きさである。伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置の係合圧に比例して変化する。係合圧とは、2つの係合部材(摩擦板)を相互に押し付け合う圧力(又は力)である。本実施形態では、係合圧は、供給されている油圧の大きさに比例して変化する。すなわち、本実施形態では、伝達トルク容量の大きさは、摩擦係合装置に供給されている油圧の大きさに比例して変化する。
摩擦係合装置は、ピストンとリターンばねを備えており、ピストンは、ばねの反力により解放側に付勢されている。そして、摩擦係合装置の油圧シリンダに供給される油圧によりピストンに生じる力がばねの反力を上回ると、2つの係合部材を相互に押し付け合う圧力がピストンにより発生し、摩擦係合装置に伝達トルクが生じ始め、摩擦係合装置は、解放状態から係合状態に変化する。このように伝達トルクが生じ始めるときの係合圧(本例では油圧)を、トルク伝達開始圧と称す。摩擦係合装置は、供給される係合圧(油圧)がトルク伝達開始圧を上回った後、係合圧(油圧)の増加に比例して、その伝達トルク容量が増加するように構成されている。なお、摩擦係合装置は、リターンばねを備えておらず、油圧シリンダのピストンの両側にかかる油圧の差圧によって制御させる構造でもよい。
本実施形態において、係合状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じている状態であり滑り係合状態と直結係合状態とが含まれる。解放状態とは、係合装置に伝達トルク容量が生じていない状態である。また、滑り係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態であり、直結係合状態とは、係合装置の係合部材間に回転速度差(滑り)がない係合状態である。また、非直結係合状態とは、直結係合状態以外の係合状態であり、解放状態と滑り係合状態とが含まれる。
なお、摩擦係合装置には、制御装置30により伝達トルク容量を生じさせる指令が出されていない場合でも、係合部材(摩擦部材)同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。例えば、ピストンにより摩擦部材同士が押圧されていない場合でも、摩擦部材同士が接触し、摩擦部材同士の引き摺りによって伝達トルク容量が生じる場合がある。そこで、「解放状態」には、制御装置30が摩擦係合装置に伝達トルク容量を生じさせる指令を出していない場合に、摩擦部材同士の引き摺りにより、伝達トルク容量が生じている状態も含まれるものとする。
<回転電機MG>
回転電機MGは、非回転部材に固定されたステータと、このステータと対応する位置で径方向内側に回転自在に支持されたロータと、を有している。回転電機MGのロータは、入力部材I及び摩擦係合装置CLを介さずに車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、図1に示すように、回転電機MGは、変速装置TMが駆動連結された前輪ではなく、後輪に駆動連結されている。回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、インバータを介してバッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは車輪Wから伝達される回転駆動力により発電し、発電された電力は、インバータを介してバッテリに蓄電される。ここで、車輪Wから伝達される回転駆動力には、車輪W及び路面を介して伝達された内燃機関ENGの駆動力も含まれる。
1−2.油圧制御装置PCの構成
車両用駆動装置1の油圧制御系は、内燃機関ENGによって駆動される機械式オイルポンプMP、及び専用の電動モータ23によって駆動される電動オイルポンプEPから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。油圧制御装置PCは、各係合装置C1、B1・・・、LC等に対して供給される油圧を調整するための複数のリニアソレノイド弁などの油圧制御弁を備えている。油圧制御弁は、制御装置30から供給される油圧指令の信号値に応じて弁の開度を調整することにより、当該信号値に応じた油圧の作動油を各係合装置C1、B1・・・及びLC等に供給する。制御装置30から各リニアソレノイド弁に供給される信号値は電流値とされている。そして、各リニアソレノイド弁から出力される油圧は、基本的に制御装置30から供給される電流値に比例する。
油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁から出力される油圧(信号圧)に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速装置TMが有する複数の係合装置C1、B1・・・及びロックアップクラッチLC等に供給される。
1−3.制御装置30の構成
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及び内燃機関制御装置31の構成について、図3を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置(コンピュータ)からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜46などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜46の機能が実現される。
また、車両用駆動装置1は、センサSe1〜Se5などのセンサを備えており、各センサから出力される電気信号は制御装置30及び内燃機関制御装置31に入力される。制御装置30及び内燃機関制御装置31は、入力された電気信号に基づき各センサの検出情報を算出する。
入力回転速度センサSe1は、入力部材Iの回転速度ωiを検出するためのセンサである。制御装置30は、入力回転速度センサSe1の入力信号に基づいて入力部材Iの回転速度ωi(角速度)を検出する。出力回転速度センサSe2は、出力部材Oの回転速度を検出するためのセンサである。制御装置30は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて出力部材Oの回転速度(角速度)を検出する。また、出力部材Oの回転速度は車速に比例するため、制御装置30は、出力回転速度センサSe2の入力信号に基づいて車速を算出する。機関回転速度センサSe3は、内燃機関出力軸Eo(内燃機関ENG)の回転速度を検出するためのセンサである。内燃機関制御装置31は、機関回転速度センサSe3の入力信号に基づいて内燃機関ENGの回転速度ωe(角速度)を検出する。
シフト位置センサSe4は、運転者により操作されるシフトレバーの選択位置(シフト位置)を検出するためのセンサである。制御装置30は、シフト位置センサSe4の入力信号に基づいてシフト位置を検出する。シフトレバーは、パーキングレンジ(Pレンジ)、後進走行レンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、前進走行レンジ(Dレンジ)などに選択可能とされている。また、シフトレバーは、Dレンジの一種として、形成する前進変速段の範囲を制限する「2レンジ」や「Lレンジ」などの変速段制限レンジが選択可能に構成されている。また、シフトレバーは、Dレンジを選択しているときに、変速装置TMに対してアップシフトを要求する「アップシフト要求スイッチ」やダウンシフトを要求する「ダウンシフト要求スイッチ」を操作可能に構成されている。
アクセル開度センサSe5は、アクセルペダルの操作量を検出するためのセンサである。制御装置30は、アクセル開度センサSe5の入力信号に基づいてアクセル開度を検出する。
1−3−1.車両制御ユニット34
車両制御ユニット34は、統合制御部46を備えている。統合制御部46は、内燃機関ENG、回転電機MG、変速装置TM、及びロックアップクラッチLC等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う。
統合制御部46は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、駆動力源側から車輪W側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクを算出するとともに、内燃機関ENG及び回転電機MGの運転モードを決定する。運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源として走行する電動モードと、少なくとも内燃機関ENGを駆動力源として走行するパラレルモードと、を有する。例えば、アクセル開度が小さく、バッテリの充電量が大きい場合に、運転モードとして電動モードが決定され、それ以外の場合、すなわちアクセル開度が大きい、もしくはバッテリの充電量が小さい場合に、運転モードとしてパラレルモードが決定される。
そして、統合制御部46は、車両要求トルク、運転モード、及びバッテリの充電量等に基づいて、内燃機関ENGに対して要求する出力トルクである内燃機関要求トルク、回転電機MGに対して要求する出力トルクである回転電機要求トルク、及びロックアップクラッチLCに供給する油圧の目標である油圧指令、及び変速装置TMの目標変速段を算出し、それらを他の制御ユニット32、33及び内燃機関制御装置31に指令して統合制御を行う。なお、内燃機関要求トルクは、パラレルモードにおいて、アクセル開度以外のパラメータである車速及びバッテリの充電量等が変化しない条件では、アクセル開度に比例する。
<目標変速段の決定>
統合制御部46は、車速、変速入力要求トルク、及びシフト位置に基づいて、変速装置TMにおける目標変速段を決定する。ここで、変速入力要求トルクは、変速装置TMの入力部材Iに伝達される駆動力源の要求トルクであって、本実施形態では、内燃機関要求トルクとされる。
統合制御部46は、ROM等に格納された変速マップを参照し、車速及び内燃機関要求トルクに基づいて目標変速段を決定する。変速マップには複数のアップシフト線と複数のダウンシフト線とが設定されており、車速及び内燃機関要求トルクが変化して変速マップ上でアップシフト線又はダウンシフト線を跨ぐと、統合制御部46は、変速装置TMにおける新たな目標変速段を決定する。
なお、統合制御部46は、シフト位置として「2レンジ」や「Lレンジ」などの変速段制限レンジが選択されている場合は、各レンジに応じた変速マップを用い、車速及び内燃機関要求トルクとに基づいて、各レンジにおいて選択可能な変速段を目標変速段として決定する。統合制御部46は、「Rレンジ」が選択されている場合は、後進段Revを目標変速段に決定する。統合制御部46は、「Pレンジ」又は「Nレンジ」が選択されている場合には、全ての係合装置C1、C2、・・・を解放状態にするニュートラル状態を目標変速段に決定する。この、ニュートラル状態を、便宜上、ニュートラル段と称す。
また、統合制御部46は、運転者によるシフト位置の変更により、アップシフト要求又はダウンシフト要求があった場合に、目標変速段を変更する場合がある。なお、ダウンシフトとは変速比の小さい変速段から変速比の大きい変速段への変更を意味し、アップシフトとは変速比の大きい変速段から変速比の小さい変速段への変更を意味する。
1−3−2.内燃機関制御装置31
内燃機関制御装置31は、内燃機関ENGの動作制御を行う内燃機関制御部41を備えている。本実施形態では、内燃機関制御部41は、統合制御部46から内燃機関要求トルクが指令されている場合は、内燃機関ENGが内燃機関要求トルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
内燃機関制御部41は、統合制御部46などから内燃機関ENGの回転停止指令があった場合は、内燃機関ENGへの燃料供給や点火などを停止して、内燃機関ENGを回転停止状態にする。
また、内燃機関制御部41は、統合制御部46などから始動指令があった場合は、スタータ13に電力を供給するリレー回路をオンにするなどして、スタータ13に電力を供給させて内燃機関ENGを回転させると共に、内燃機関ENGへの燃料供給及び点火などを開始して、内燃機関ENGの燃焼を開始させる。
1−3−3.回転電機制御ユニット32
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、統合制御部46から回転電機要求トルクが指令されている場合は、回転電機MGが回転電機要求トルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクを制御する。
1−3−4.動力伝達制御ユニット33
動力伝達制御ユニット33は、変速装置TMの制御を行う変速制御部43と、ロックアップクラッチLCの制御を行うロックアップ制御部45と、を備えている。
1−3−4−1.ロックアップ制御部45
ロックアップ制御部45は、ロックアップクラッチLCの係合の状態を制御する。本実施形態では、ロックアップ制御部45は、ロックアップクラッチLCに供給される油圧が、統合制御部46から指令されたロックアップクラッチLCの油圧指令に一致するように、油圧制御装置PCに備えられた各リニアソレノイド弁に供給される信号値を制御する。
1−3−4−2.変速制御部43
変速制御部43は、変速装置TMが備えた複数の係合装置C1、B1・・・の係合及び解放を制御して、変速装置TMの状態を制御する。
本実施形態では、変速制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1・・・に供給される油圧を制御することにより、各係合装置C1、B1・・・を係合又は解放して、統合制御部46から指令された目標変速段を変速装置TMに形成させる。具体的には、変速制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(油圧指令)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(油圧指令)に応じた油圧を各係合装置に供給する。本実施形態では、変速制御部43は、油圧制御装置PCが備えた各油圧制御弁に供給される信号値を制御することにより、各係合装置に供給される油圧を制御するように構成されている。
変速制御部43は、変速段を切り替える変速制御を行なう場合は、各係合装置C1、B1・・・の油圧指令を制御して、各係合装置C1、B1・・・の係合又は解放を行い、変速装置TMに形成させる変速段を目標変速段に切り替える。この際、変速制御部43は、変速段の切り替えのために解放される係合装置である解放側係合装置、及び変速段の切り替えのために係合される係合装置である係合側係合装置を設定する。そして、変速制御部43は、予め計画された変速制御のシーケンスに従い、解放側係合装置を解放させると共に係合側係合装置を係合させる、いわゆるつなぎ替え変速を行う。
<ニュートラル走行制御>
本実施形態では、変速制御部43は、車輪Wの回転中に、複数の係合装置C1、B1・・・の全てを解放状態に制御して変速装置TMを駆動力の伝達を行わないニュートラル状態とするように制御するニュートラル走行制御を行うように構成されている。ニュートラル状態では、変速装置TMにいずれの変速段も形成されておらず、変速装置TMの入力部材Iと出力部材Oとの間で駆動力の伝達を行わない。
ニュートラル走行制御は、例えば、車輪Wの回転中に、車速等に応じた車両の走行抵抗に対して車両要求トルクが微小となる所定の緩やかな減速運転状態となった場合や、内燃機関ENGの駆動力を用いずに、回転電機MGの駆動力により走行する電動モードの場合等に実行される。ニュートラル走行制御中は、内燃機関ENGと車輪Wとの間の駆動連結が非連結状態になる。
本実施形態では、変速制御部43は、ニュートラル走行制御の実行中は、内燃機関制御部41に対して回転停止指令を伝達して、内燃機関ENGの回転を停止させるように構成されている。なお、変速制御部43は、ニュートラル走行制御の実行中に、内燃機関ENGを回転停止状態にさせず、アイドリング運転状態に制御させるように構成されてもよい。
変速制御部43は、ニュートラル走行制御中に、アクセル開度の増加や、バッテリの充電量の低下などにより、ニュートラル走行制御条件が不成立となった場合に、変速装置TMに変速段を形成させて通常走行に復帰させる復帰制御を実行する。変速制御部43は、復帰制御により、目標変速段を変速装置TMに形成させる際に、目標変速段を形成する複数の係合装置を、順番に係合させるように構成されている。
1−3−4−3.係合制御部44
係合制御部44は、駆動力源により、入力部材Iの回転速度ωiを、摩擦係合装置CLの一対の係合部材間の回転速度差が無くなる同期回転速度ωsに近づける制御を行っている状態で、摩擦係合装置CLを解放状態から係合状態に移行させる場合に、摩擦係合装置CLを係合させるための準備制御を行い、当該準備制御の終了後に、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、推定時間ΔTe後の入力部材Iの回転速度ωiである推定回転速度ωieを推定し、推定回転速度ωieと同期回転速度ωsとの回転速度差である推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下である場合に、摩擦係合装置CLの係合を実行する係合制御を実行する。
本実施形態では、摩擦係合装置CLは、変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の一つとされている。変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の内、目標変速段を形成する単数又は複数(本例では二つ)の係合装置(目標係合装置と称す)の一つとされる。係合制御部44は、目標係合装置が複数の場合は、複数の目標係合装置の内、摩擦係合装置CLとされた係合装置以外の係合装置(先係合装置と称す)が係合されている状態で、摩擦係合装置CLの係合を実行する係合制御を実行する。摩擦係合装置CLが係合されると、変速装置TMに変速段(目標変速段)が形成され、入力部材Iと出力部材Oとが連結される。同期回転速度ωsは、変速装置TMに変速段(目標変速段)が形成された場合の入力部材Iの回転速度ωiであり、出力部材Oの回転速度に目標変速段の変速比を乗算した回転速度になる。
本実施形態では、係合制御部44は、ニュートラル走行制御から復帰し、変速装置TMに変速段を形成させる際に、係合制御を実行するように構成されている。内燃機関制御部41は、ニュートラル走行制御から復帰する際に、内燃機関ENGを始動させた後、ロックアップクラッチLCが直結係合状態である場合は、内燃機関ENGの出力トルクを制御して、内燃機関ENGの回転速度ωe(もしくは入力部材Iの回転速度ωi)を同期回転速度ωsに近づけるように構成されている。内燃機関制御部41は、ニュートラル走行制御から復帰する際に、内燃機関ENGを始動させた後、ロックアップクラッチLCが解放状態である場合は、内燃機関ENGの回転速度ωeと入力部材Iの回転速度ωiとの回転速度差を考慮し、内燃機関ENGの出力トルクを制御して、内燃機関ENGの回転速度ωe(もしくは入力部材Iの回転速度ωi)を同期回転速度ωsに近づけるように構成されている。なお、本実施形態では、内燃機関制御部41は、制御装置30に備えられておらず、内燃機関ENGにより内燃機関ENGの回転速度ωeを同期回転速度ωsに近づける制御は、制御装置30が実行する制御には含まれない。
<係合制御の課題>
図5に、本実施形態とは異なる比較例のタイムチャートを示す。図5の比較例では、本実施形態のように、推定回転速度差Δωiesに応じて、摩擦係合装置CLの係合を実行するように構成されておらず、入力部材Iの回転速度ωiが同期回転速度ωsに近づいた場合に、摩擦係合装置CLの係合を実行するように構成されている。時刻T01で内燃機関ENGを始動させた後、時刻T04で、入力部材Iの回転速度ωiが、同期回転速度ωsよりも所定回転速度だけ小さく設定された判定下限回転速度ωsLに到達した場合に、摩擦係合装置CLの係合圧を変化させる指令(本例では油圧指令)を増加させ、係合を開始している。摩擦係合装置CLの実際の係合圧(本例では油圧)は、係合圧を変化させる指令(油圧指令)に対して遅れて増加する。そのため、時刻T04で、係合圧を変化させる指令(油圧指令)の増加を開始した後、実際の係合圧(油圧)が増加し始めるまでには、追従遅れが生じる。
図5に示すように、入力部材Iの回転速度ωiが同期回転速度ωsに近づいたときの、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωi(本例では上昇速度)が大きい場合は、係合圧の追従遅れの間、入力部材Iの回転速度ωiが、同期回転速度ωsをオーバーシュートして、同期回転速度ωsよりも所定回転速度だけ大きく設定された判定上限回転速度ωsHよりも大きくなっている(時刻T05)。摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差が大きくなった後、摩擦係合装置CLの実際の係合圧(油圧)が上昇するため、摩擦係合装置CLの伝達トルクが増加し、出力部材O側にトルク変動が伝達される(時刻T05から時刻T06)。
<課題の解決>
上記のようなトルク変動を低減するためには、入力部材Iの回転速度ωiが同期回転速度ωsに近づいたときの、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiを考慮して、摩擦係合装置CLの係合圧を増加させることが好ましい。
そこで、係合制御部44は、上記のように、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、推定時間ΔTe後の入力部材Iの回転速度ωiである推定回転速度ωieを推定し、推定回転速度ωieと同期回転速度ωsとの回転速度差である推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下である場合に、摩擦係合装置CLの係合を実行するように構成されている。
ここで、摩擦係合装置CLの係合を実行するとは、摩擦係合装置CLの係合圧(係合圧を変化させる指令)をトルク伝達開始圧(待機圧)以上に増加させることであり、本実施形態では、摩擦係合装置CLの油圧(油圧指令)をトルク伝達開始圧(待機圧)以上に増加させることである。
入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiの大きさが小さく、推定時間ΔTe後の推定回転速度差Δωiesが、係合判定閾値以下である場合は、摩擦係合装置CLの係合を実行しても、摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差が大きく増加することなく、摩擦係合装置CLを係合させることができ、係合によりトルク変動が出力部材Oに伝達されることを抑制できる。
本実施形態では、係合制御部44は、入力部材Iの現在の回転速度ωiと同期回転速度ωsとの回転速度差である実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定回転速度ωieを推定するように構成されている。この構成によれば、入力部材Iの回転速度ωiが、同期回転速度ωsに近づいた場合に、推定回転速度ωieの推定を行って、摩擦係合装置CLを係合させることができる。判定実行閾値は、予め定められた値でもよく、その都度算出された値でもよい。
本実施形態では、係合制御部44は、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値より大きい場合は、摩擦係合装置CLの係合を実行しないように構成されている。
入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiの大きさが大きく、推定時間ΔTe後の推定回転速度差Δωiesが、係合判定閾値よりも大きい場合は、摩擦係合装置CLの係合を実行しないので、摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差が大きい状態で、摩擦係合装置CLが係合されないようにでき、係合によりトルク変動が出力部材Oに伝達されないようにできる。
また、係合制御部44は、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値より大きく、摩擦係合装置CLの係合を実行しなかった後、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下になった場合に、摩擦係合装置CLの係合を実行するように構成されている。本実施形態では、摩擦係合装置CLの係合を実行しなかった後、実回転速度差Δωiの大きさが、再び、判定実行閾値以下になった場合に、推定回転速度ωieを推定するように構成されている。この構成によれば、係合の不実行であった後、再び、推定回転速度ωieを推定し、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下になった場合に、トルク変動を抑制して、摩擦係合装置CLを係合させることができる。
本実施形態では、係合制御部44は、次式に示すように、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiに推定時間ΔTeを乗算した値を、入力部材Iの現在の回転速度ωiに加算した値を、推定回転速度ωieとして算出するように構成されている。ここで、tは時間変数である。
ωie(t)=ωi(t)+Dωi(t)×ΔTe ・・・(1)
入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiは、次式に示すように、入力部材Iの回転速度ωiの時間微分値に相当する。係合制御部44は、例えば、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiを、現在の入力部材Iの回転速度ωiから、所定時間ΔT0前の入力部材Iの回転速度ωiを減算した後、所定時間ΔT0で除算して算出することができる。
Dωi(t)=dωi(t)/dt=(ωi(t)−ωi(t-ΔT0))/ΔT0
・・・(2)
この構成によれば、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、簡単な演算により、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定することができる。
図8から図11に、推定回転速度ωieの算出の例をしめす。図8から図11に示す例では、係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiが、同期回転速度ωsに近づき、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合(時刻T1)に、時刻T1で算出した入力部材Iの回転速度ωiの変化率dωi/dtに推定時間ΔTeを乗算した値を、時刻T1の入力部材Iの回転速度ωiに加算して、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定している。そして、係合制御部44は、時刻T1で、推定回転速度ωieと同期回転速度ωsとの回転速度差である推定回転速度差Δωiesを算出し、推定回転速度差Δωiesと係合判定閾値とを比較し、摩擦係合装置CLの係合の実行か係合の不実行かを判定している。
本実施形態では、係合判定閾値は、判定実行閾値と同じ値に設定されている。同期回転速度ωsに、係合判定閾値(判定実行閾値)を加算した回転速度を、判定上限回転速度ωsHとし、同期回転速度ωsから係合判定閾値(判定実行閾値)を減算した回転速度を、判定下限回転速度ωsLとしている。よって、係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiが、判定上限回転速度ωsHから判定下限回転速度ωsLの範囲内になった場合(時刻T1)に、推定回転速度ωieを推定している。係合制御部44は、推定回転速度ωieが、判定上限回転速度ωsHから判定下限回転速度ωsLの範囲内である場合は、摩擦係合装置CLの係合を実行し、範囲外である場合は、摩擦係合装置CLの係合を実行しない。
図8の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、大きい変化率で上昇しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも大きくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも大きくなっているため、摩擦係合装置CLの係合を実行しないと判定している(時刻T1)。図9の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、小さい変化率で上昇しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも小さくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも小さくなっているため、摩擦係合装置CLの係合を実行すると判定している(時刻T1)。
図10の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、大きい変化率で下降しており、推定回転速度ωieは、判定下限回転速度ωsLよりも小さくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも大きくなっているため、摩擦係合装置CLの係合を実行しないと判定している(時刻T1)。図11の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、小さい変化率で下降しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも大きくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも小さくなっているため、摩擦係合装置CLの係合を実行すると判定している(時刻T1)。
推定時間ΔTeは、摩擦係合装置CLの係合圧を変化させる指令に対する実際の係合圧の追従遅れ時間ΔTpに応じた時間に決定されている。本実施形態では、摩擦係合装置CLの係合圧は、油圧アクチュエータにより制御されるように構成されており、油圧指令に対して実際の油圧に追従遅れが生じる。よって、追従遅れ時間ΔTpは、油圧制御系の遅れ時間になる。推定時間ΔTeは、係合圧の追従遅れ時間ΔTpに応じた時間であれば、予め定められた時間でもよく、その都度算出された時間でもよい。
この構成によれば、摩擦係合装置CLにおける係合圧の追従遅れ時間ΔTpを考慮して、推定回転速度ωieを推定することができる。よって、摩擦係合装置CLの実際の係合圧が増加するときの摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差を推定でき、トルク変動を許容範囲内に収めることができるかを判定することができる。
係合判定閾値が小さい値に設定されるほど、摩擦係合装置CLが係合される際に生じるトルク変動が小さくなる。一方、係合判定閾値が小さい値に設定され過ぎると、摩擦係合装置CLの係合を実行すると判定される条件が厳しくなり、摩擦係合装置CLの係合が遅れるおそれがある。そこで、係合判定閾値は、摩擦係合装置CLの係合時のトルク変動が許容範囲内になるように決定されている。よって、摩擦係合装置CLの係合によるトルク変動を許容範囲内で抑制しつつ、摩擦係合装置CLの係合が遅延し過ぎないようにできる。係合判定閾値は、摩擦係合装置CLの係合時のトルク変動が許容範囲内になる値であれば、予め定められた値でもよく、その都度算出された値でもよい。
<タイムチャート>
制御挙動について、図6のタイムチャートを参照して説明する。
時刻T11まで、ニュートラル走行制御が行われており、変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の全てが解放状態に制御されており、油圧が供給されていない。車輪W(出力部材O)が回転しており、出力部材Oに目標変速段の変速比を乗算して算出される同期回転速度ωsがゼロより大きくなっている。また、内燃機関ENGが回転停止状態にされている。
時刻T11で、変速制御部43は、アクセル開度の増加や、バッテリの充電量の低下などにより、ニュートラル走行制御条件が不成立となり、変速装置TMに変速段を形成させて通常走行に復帰させる復帰制御を実行すると判定している。復帰制御の開始により、内燃機関ENGの始動が開始されている。内燃機関ENGの始動開始後、内燃機関ENGの回転速度ωeが上昇していく。トルクコンバータTCのロックアップクラッチLCは解放状態に制御されており、入力部材Iの回転速度ωiは、内燃機関ENGの回転速度ωeを下回り、内燃機関ENGの回転速度ωeと回転速度差を有した状態で追従する。
内燃機関ENGの回転速度ωeが上昇を開始すると、目標変速段を形成する複数の係合装置(本例では二つ)の内、先係合装置の係合を開始する(時刻T12)。係合制御部44は、先係合装置の油圧指令をトルク伝達開始圧よりも小さい圧に設定された待機圧まで増加させる予備充填を行った後、油圧指令を次第に増加させていき、先係合装置を係合させている。係合制御部44は、予備充填の開始直後、先係合装置の油圧指令を、待機圧よりも一時的に増加させ、実圧の立ち上がりを速めている。係合制御部44は、先係合装置の係合開始後、摩擦係合装置CLの油圧指令をトルク伝達開始圧よりも小さい圧に設定された待機圧まで増加させる予備充填を開始する(時刻T13)。本実施形態では、摩擦係合装置CLの予備充填は、先係合装置の予備充填の完了後(本例では、油圧指令を待機圧から一時的に増加させる増加制御の終了後)に開始されている。係合制御部44は、予備充填の開始直後、摩擦係合装置CLの油圧指令を、待機圧よりも一時的に増加させ、実圧の立ち上がりを速めている。摩擦係合装置CLの係合圧(油圧)が、待機圧まで増加されると、摩擦係合装置CLを係合させるための準備制御が終了する。準備制御の期間は、予備充填の開始後、摩擦係合装置CLの係合圧(油圧)が待機圧まで増加するまでの期間であり、本例では、油圧指令の油圧指令を待機圧から一時的に増加させている期間に相当する。
係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiが、判定下限回転速度ωsLまで上昇し、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定している(時刻T14)。図6の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、大きい変化率で上昇しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも大きくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも大きくなる。そのため、係合制御部44は、摩擦係合装置CLの係合を行わないと判定している(時刻T14)。係合制御部44は、摩擦係合装置CLの油圧指令を待機圧に維持している(時刻T14から時刻T16)。よって、図5の比較例の場合のように、摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差が大きくなった状態で、摩擦係合装置CLの実際の係合圧(油圧)が上昇し、出力部材O側にトルク変動が伝達されることを防止できている。
入力部材Iの回転速度ωiは、同期回転速度ωsをオーバーシュートし、上昇した後、再び、同期回転速度ωsに向かって下降していく。係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiが、判定下限回転速度ωsLまで上昇し、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定している(時刻T16)。入力部材Iの回転速度ωiは、小さい変化率で下降しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも大きくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも小さくなる。そのため、係合制御部44は、摩擦係合装置CLの係合を実行すると判定している(時刻T16)。係合制御部44は、摩擦係合装置CLの油圧指令を待機圧から次第に増加させている(時刻T16以降)。摩擦係合装置CLの実際の油圧は、油圧指令に対して、追従遅れ時間ΔTp遅れて増加している。しかし、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωi(下降速度)が小さい場合は、摩擦係合装置CLの実際の油圧が増加し始めたとき、入力部材Iの回転速度ωiは、同期回転速度ωsから大きく離れておらず、摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差は小さくなっている(時刻T17付近)。そのため、摩擦係合装置CLの伝達トルクの増加が抑制され、出力部材O側にトルク変動が伝達されることを抑制できている。
図7に別のタイムチャートの例を示す。
時刻T34までは、図6の時刻T14までと、内燃機関ENG及び入力部材Iの回転速度の上昇速度を除き、同様であるので説明を省略する。
係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiが、判定下限回転速度ωsLまで上昇し、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定している(時刻T34)。図7の例では、入力部材Iの回転速度ωiは、小さい変化率で上昇しており、推定回転速度ωieは、判定上限回転速度ωsHよりも小さくなり、推定回転速度差Δωiesは、係合判定閾値よりも小さくなる。そのため、係合制御部44は、摩擦係合装置CLの係合を実行すると判定している(時刻T34)。係合制御部44は、摩擦係合装置CLの油圧指令を待機圧から次第に増加させている(時刻T34以降)。摩擦係合装置CLの実際の油圧は、油圧指令に対して、追従遅れ時間ΔTp遅れて増加している。しかし、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωi(上昇速度)が小さい場合は、摩擦係合装置CLの実際の油圧が増加し始めたとき、入力部材Iの回転速度ωiは、同期回転速度ωsから大きく離れておらず、摩擦係合装置CLの係合部材間の回転速度差は小さくなっている(時刻T35付近)。そのため、摩擦係合装置CLの伝達トルクの増加が抑制され、出力部材O側にトルク変動が伝達されることを抑制できている。
<フローチャート>
次に、係合制御の処理について、図12のフローチャートを参照して説明する。
まず、係合制御部44は、駆動力源により、入力部材Iの回転速度ωiを同期回転速度ωsに近づける制御を行っている状態で、摩擦係合装置CLを解放状態から係合状態に移行させる係合制御の開始条件が成立したと判定した場合に、係合制御の処理を開始する(ステップ♯01:Yes)。係合制御部44は、摩擦係合装置CLを係合させるための準備制御の処理を実行する(ステップ♯02)。係合制御部44は、入力部材Iの現在の回転速度ωiと同期回転速度ωsとの回転速度差である実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になったか否かを判定する(ステップ♯03)。係合制御部44は、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になったと判定した場合(ステップ♯03:Yes)に、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、推定時間ΔTe後の入力部材Iの回転速度ωiである推定回転速度ωieを推定する処理を行う(ステップ♯04)。
係合制御部44は、推定回転速度ωieと同期回転速度ωsとの回転速度差である推定回転速度差Δωiesが、係合判定閾値以下であるか否を判定する(ステップ♯05)。係合制御部44は、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値以下であると判定した場合(ステップ♯05:Yes)に、摩擦係合装置CLの係合を実行する(ステップ♯06)。一方、係合制御部44は、推定回転速度差Δωiesが係合判定閾値よりも大きい場合(ステップ♯05:No)に、摩擦係合装置CLの係合を実行しない(係合の不実行)(ステップ♯07)。摩擦係合装置CLの係合を実行しなかった後、ステップ♯03に戻り、実回転速度差Δωiの大きさが、再び、判定実行閾値以下になった場合に、推定回転速度ωieを推定するように構成されている。
〔その他の実施形態〕
最後に、その他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態においては、回転電機MGは、出力部材Oが駆動連結された車輪Wとは、異なる車輪Wに駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機MGは、出力部材Oが駆動連結された車輪Wとは、同じ車輪Wに駆動連結されていてもよい。この場合は、例えば、回転電機MGは、摩擦係合装置CLと車輪Wとの間の動力伝達経路、例えば、変速装置TMより車輪W側において出力部材Oに駆動連結されてもよい。或いは、車両5は、回転電機MGを備えなくてもよい。
(2)上記の実施形態においては、入力部材Iに、駆動力源として内燃機関ENGが駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMの入力部材Iに、駆動力源として内燃機関ENG及び回転電機MGが駆動連結されてもよく、内燃機関ENGに代えて回転電機MGが駆動連結されてもよい。
(3)上記の実施形態では、摩擦係合装置CLは、変速装置TMの複数の係合装置C1、B1・・・の一つとされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。摩擦係合装置CLは、入力部材Iと出力部材Oとを結ぶ動力伝達経路2に設けられる油圧式の摩擦係合装置であれば、どのような摩擦係合装置でもよい。例えば、摩擦係合装置CLは、内燃機関ENGと入力部材Iとの間に設けられた油圧式の摩擦係合装置とされてもよく、トルクコンバータTCのロックアップクラッチLCとされてもよい。
(4)上記の実施形態では、係合制御中、ロックアップクラッチLCが解放状態に制御されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。係合制御中、ロックアップクラッチLCが係合状態に制御されてもよい。
(5)上記の実施形態では、係合制御部44は、内燃機関ENGが始動された後、係合制御を実行するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。係合制御部44は、内燃機関ENGが、アイドリング状態などの回転状態から、係合制御を実行するように構成されてもよい。
(6)上記の実施形態では、係合制御部44は、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiに推定時間ΔTeを乗算した値を、入力部材Iの現在の回転速度ωiに加算した値を、推定回転速度ωieとして算出するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。係合制御部44は、入力部材Iの現在の回転速度ωiと、入力部材Iの回転速度ωiの変化率Dωiとに基づいて、推定時間ΔTe後の推定回転速度ωieを推定すれば、どのような演算式を用いてもよい。
(7)上記の実施形態では、係合制御部44は、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定回転速度ωieを推定するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。係合制御部44は、例えば、実回転速度差Δωiの大きさが、判定実行閾値以下である場合に、常時、推定回転速度ωieを推定するように構成されてもよく、或いは、実回転速度差Δωiの大きさにかかわらず、常時、推定回転速度ωieを推定するように構成されてもよい。
(8)上記の実施形態においては、内燃機関ENGと変速装置TMとの間に、トルクコンバータTCが備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、内燃機関ENGと変速装置TMとの間に、トルクコンバータTCが備えられていない、又はトルクコンバータTCの代わりにクラッチが備えられてもよい。
(9)上記の実施形態において、制御装置30は、複数の制御ユニット32〜34を備え、これら複数の制御ユニット32〜34が分担して複数の機能部41〜46を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置30は、上述した複数の制御ユニット32〜34を任意の組み合わせで統合又は分離した制御装置として備えるようにしてもよく、複数の機能部41〜46の分担も任意に設定することができる。
(10)上記の実施形態においては、変速装置TMは、2つの遊星歯車機構を有し、6つの係合装置を有し、6つの前進変速段を有し、各変速段は2つの係合装置が係合されることにより形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMは、少なくとも1つ以上の係合装置の係合で形成される変速段を1つ以上有していれば、どのような構成であってもよい。すなわち、変速装置TMは、2つ以上又は1つの遊星歯車機構を有してもよく、1つ以上の係合装置を有してもよく、1つ以上の前進変速段を有してもよく、各変速段は1つの係合装置が係合されることにより、或いは3つ以上の係合装置が係合されることにより形成されてもよい。
2.本発明の実施形態の概要
以上で説明した本発明の実施形態は、少なくとも以下の構成を備えている。
駆動力源に駆動連結される入力部材(I)と、車輪(W)に駆動連結される出力部材(O)とを結ぶ動力伝達経路(2)に、油圧式の摩擦係合装置(CL)が設けられた車両用駆動装置(1)の制御装置(30)であって、駆動力源により、入力部材(I)の回転速度(ωi)を、摩擦係合装置(CL)の一対の係合部材間の回転速度差が無くなる同期回転速度(ωs)に近づける制御を行っている状態で、摩擦係合装置(CL)を解放状態から係合状態に移行させる場合に、摩擦係合装置(CL)を係合させるための準備制御を行い、当該準備制御の終了後に、入力部材(I)の回転速度(ωi)と、入力部材(I)の回転速度(ωi)の変化率(Dωi)とに基づいて、推定時間(ΔTe)後の入力部材(I)の回転速度(ωi)である推定回転速度(ωie)を推定し、推定回転速度(ωie)と同期回転速度(ωs)との回転速度差である推定回転速度差(Δωies)が係合判定閾値以下である場合に、摩擦係合装置(CL)の係合を実行する。
この構成によれば、入力部材(I)の回転速度(ωi)の変化率(Dωi)の大きさが小さく、推定時間(ΔTe)後の推定回転速度差(Δωies)が、係合判定閾値以下である場合は、摩擦係合装置(CL)の係合を実行する為、摩擦係合装置(CL)の係合部材間の回転速度差が小さい状態で摩擦係合装置(CL)を係合させることができ、係合によるトルク変動を抑制できる。
また、本発明の実施形態では、係合判定閾値は、摩擦係合装置(CL)の係合時のトルク変動が許容範囲内になるように決定されていると好適である。
上記の構成によれば、摩擦係合装置(CL)の係合によるトルク変動を許容範囲内に収めることができる。
また、本発明の実施形態では、推定時間(ΔTe)は、摩擦係合装置(CL)の係合圧を変化させる指令に対する実際の係合圧の追従遅れ時間(ΔTp)に応じた時間に決定されていると好適である。
この構成によれば、摩擦係合装置(CL)における係合圧の追従遅れ時間(ΔTp)を考慮して、推定回転速度(ωie)を推定することができる。よって、摩擦係合装置(CL)の実際の係合圧が増加するときの摩擦係合装置(CL)の係合部材間の回転速度差を推定でき、トルク変動を許容範囲内に収めることができるかを判定することができる。
また、本発明の実施形態では、入力部材(I)の回転速度(ωi)の変化率(Dωi)に推定時間(ΔTe)を乗算した値を、入力部材(I)の現在の回転速度(ωi)に加算した値を、推定回転速度(ωie)として算出すると好適である。
この構成によれば、入力部材(I)の現在の回転速度(ωi)と、入力部材(I)の回転速度(ωi)の変化率(Dωi)とに基づいて、簡単な演算により、推定時間(ΔTe)後の推定回転速度(ωie)を推定することができる。
また、本発明の実施形態では、推定回転速度差(Δωies)が係合判定閾値より大きい場合は、摩擦係合装置(CL)の係合を実行せず、その後、推定回転速度差(Δωies)が係合判定閾値以下になった場合に、摩擦係合装置(CL)の係合を実行すると好適である。
入力部材(I)の回転速度(ωi)の変化率(Dωi)の大きさが大きく、推定時間(ΔTe)後の推定回転速度差(Δωies)が、係合判定閾値よりも大きい場合は、摩擦係合装置(CL)の係合が行われず待機されるので、摩擦係合装置(CL)の係合部材間の回転速度差が大きい状態で、摩擦係合装置(CL)が係合されないようにでき、係合によるトルク変動が出力部材(O)に伝達されないようにできる。
また、係合を実行しなかった後、再び、推定回転速度(ωie)を推定し、推定回転速度差(Δωies)が係合判定閾値以下になった場合に、トルク変動を抑制して、摩擦係合装置(CL)を係合させることができる。
また、本発明の実施形態では、入力部材(I)の現在の回転速度(ωi)と同期回転速度(ωs)との回転速度差である実回転速度差(Δωi)の大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、推定回転速度(ωie)を推定すると好適である。
この構成によれば、入力部材(I)の回転速度(ωi)が、同期回転速度(ωs)に近づいた場合に、推定回転速度(ωie)の推定を行って、摩擦係合装置(CL)を係合させることができる。
また、本発明の実施形態では、係合判定閾値は、判定実行閾値と同じ値に設定されていると好適である。
この構成によれば、係合判定閾値及び判定実行閾値の設定を簡略化でき、判定処理を簡略化できる。
本発明は、駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材とを結ぶ動力伝達経路に、油圧式の摩擦係合装置が設けられた車両用駆動装置の制御装置に好適に利用することができる。
1 :車両用駆動装置
30 :車両用駆動装置の制御装置
44 :係合制御部
CL :摩擦係合装置
Dωi :入力部材の回転速度の変化率
ENG :内燃機関
I :入力部材
MG :回転電機
O :出力部材
TM :変速装置
W :車輪
ωe :内燃機関の回転速度
ωi :入力部材の回転速度
ωie :入力部材の推定回転速度
ωs :同期回転速度
ωsH :判定上限回転速度
ωsL :判定下限回転速度

Claims (6)

  1. 駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材とを結ぶ動力伝達経路に、油圧式の摩擦係合装置が設けられた車両用駆動装置の制御装置であって、
    前記駆動力源により、前記入力部材の回転速度を、前記摩擦係合装置の一対の係合部材間の回転速度差が無くなる同期回転速度に近づける制御を行っている状態で、前記摩擦係合装置を解放状態から係合状態に移行させる場合に、前記摩擦係合装置を係合させるための準備制御を行い、該準備制御の終了後に、前記入力部材の現在の回転速度と、前記入力部材の回転速度の変化率とに基づいて、推定時間後の前記入力部材の回転速度である推定回転速度を推定し、前記推定回転速度と前記同期回転速度との回転速度差である推定回転速度差が係合判定閾値以下である場合に、前記摩擦係合装置の係合を実行し、
    前記推定時間は、前記摩擦係合装置の係合圧を変化させる指令に対する実際の係合圧の追従遅れ時間に応じた時間に決定されている車両用駆動装置の制御装置。
  2. 前記係合判定閾値は、前記摩擦係合装置の係合時のトルク変動が許容範囲内になるように決定されている請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  3. 前記入力部材の回転速度の変化率に前記推定時間を乗算した値を、前記入力部材の現在の回転速度に加算した値を、前記推定回転速度として算出する請求項1又は2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  4. 前記推定回転速度差が前記係合判定閾値より大きい場合は、前記摩擦係合装置の係合を実行せず、その後、前記推定回転速度差が前記係合判定閾値以下になった場合に、前記摩擦係合装置の係合を実行する請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  5. 前記入力部材の現在の回転速度と前記同期回転速度との回転速度差である実回転速度差の大きさが、判定実行閾値以下になった場合に、前記推定回転速度を推定する請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  6. 前記係合判定閾値は、前記判定実行閾値と同じ値に設定されている請求項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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