本発明の一実施形態に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂と、全モノマーユニットに対する、主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合が1モル%以下であるエラストマーと、溶剤と、を含んでおり、上記炭化水素樹脂100重量部に対して、上記エラストマーを1重量部以上、20重量部未満の範囲で含む。
なお、本明細書において「モノマーユニット」とはポリマーを構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造をいう。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体成分を重合してなる樹脂である。本実施形態に係る接着剤組成物に含まれる炭化水素樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(以下、「樹脂A」ともいう)、ならびにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂B」ともいう)が挙げられる。
シクロオレフィンポリマーは、単量体成分であるシクロオレフィンモノマーを重合してなる樹脂である。シクロオレフィンモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ヒドロキシジシクロペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。樹脂(A)としては、これらシクロオレフィンモノマーのうち1種のみを重合させてなるものであってもよいし、2種以上を共重合させてなるものであってもよい。
また、樹脂(A)に含まれる単量体成分はシクロオレフィンモノマーに限定されるものではなく、当該シクロオレフィンモノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーが挙げられ、そのようなアルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、および1−ヘキセン等のα−オレフィンが挙げられる。なお、アルケンモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂(A)の分子量は特に限定されないが、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が50,000〜200,000であり、より好ましくは50,000〜150,000である。樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ特定の溶剤への溶解性を得ることができる。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分は、その5モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることが高耐熱性(低い熱分解性・熱重量減少性)の点から好ましく、10モル%以上がシクロオレフィンモノマーであることがより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、80モル%以下であることが溶解性および溶液での経時安定性の点から好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましい。他のモノマーとして、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有する場合、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対して10〜90モル%であることが溶解性および柔軟性の点から好ましく、20〜85モル%がさらに好ましく、30〜80モル%が特に好ましい。
単量体成分の重合方法および重合条件は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて行えばよい。
樹脂(A)として用いられ得る市販品としては、例えば、三井化学社製の「APEL(商品名)」、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(商品名)」、日本ゼオン社製の「ZEONOR(商品名)」および「ZEONEX(商品名)」、ならびにJSR社製の「ARTON(商品名)」が挙げられる。
樹脂(B)は、上述したようにテルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂および水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステルおよび変性ロジン等が挙げられる。石油系樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂およびマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特に、水添テルペン樹脂および水添テルペンフェノール樹脂が好ましい。
樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、例えば、GPCによるポリスチレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)が300〜10,000であり、より好ましくは500〜5,000である。樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、成膜後にクラックが発生し難く、且つ高い耐熱性(熱分解性・昇華性への耐性)が得られる。
なお、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合して使用してもよい。樹脂(A)の含有量は炭化水素樹脂全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。樹脂(A)の含有量が炭化水素樹脂全体の40重量部以上である場合には、柔軟性とともに高い耐熱性(低い熱分解性)を発揮することができる。
(エラストマー)
本実施形態に係る接着剤組成物は、全モノマーユニットに対する、主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合が1モル%以下であるエラストマーを、上記炭化水素樹脂100重量部に対して、1重量部以上、20重量部未満の範囲で含むことが好ましい。
上記エラストマーを用いることによって、得られる接着剤組成物の柔軟性を向上させ、被接着物(例えば、基板)の界面への接着性(追従性)を向上させることができる。これにより、膜応力による接着剤組成物の塗膜の剥がれや、被接着物の反り等を抑制することができる。特に、上記エラストマーを、上記炭化水素樹脂100重量部に対して1重量部以上含む接着剤組成物の塗膜は、十分な柔軟性を有する。また、上記エラストマーは、炭化水素樹脂と相溶するので、良好な塗膜を形成することができる。特に、上記エラストマーを、上記炭化水素樹脂100重量部に対して20重量部未満含む接着剤組成物では、炭化水素樹脂と上記エラストマーとが十分に相溶する。また、上記エラストマーを、上記炭化水素樹脂100重量部に対して20重量部未満含む接着剤組成物は、十分な耐熱性を有する。
なお、上記エラストマーの含有量は、より好ましくは、上記炭化水素樹脂100重量部に対して、1重量部以上、15重量部以下の範囲であり、さらに好ましくは、1重量部以上、10重量部以下の範囲である。
上記エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPT)、及び、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SeptonV9461(株式会社クラレ製)、SeptonV9475(株式会社クラレ製))、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(反応性のポリスチレン系ハードブロックを有する、SeptonV9827(株式会社クラレ製))等であって、全モノマーユニットに対する、主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合が1モル%以下であるものを用いることができる。また、エラストマーは複数の種類を混合してもよい。
また、エラストマーの中でも水添物がより好ましい。水添物であれば熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、炭化水素系溶剤への溶解性及びレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。特に、ビニル芳香族炭化水素(特に、スチレン)及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。このようなエラストマーは、炭化水素樹脂に対する相溶性が高いため、より良好な塗膜を形成することができる。また、熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。
エラストマーの重量平均分子量は10,000以上、200,000以下の範囲であることがより好ましく、下限値は20,000以上であることがさらに好ましく、50,000以上、150,000以下であることが特に好ましい。
また、上記エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでおり、当該スチレン単位の含有量は、14重量%以上、50重量%以下であることがより好ましい。
本明細書において「構成単位」とは、重合体を構成する構造において、一分子の単量体に起因する主鎖の構造をいう。
本明細書において「スチレン単位」とは、スチレンまたはスチレン誘導体を重合した際に重合体に含まれる当該スチレン由来の構成単位であり、当該「スチレン単位」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
スチレン単位の含有量が14重量%以上であれば、基板の貼付性または研削性の低下をより好適に抑えて、薄化、実装等のプロセスに供することができる。スチレン単位の含有量が50重量%以下であれば、接着剤組成物の薬品耐性をより好適に維持することができる。
スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であり、エラストマーの重量平均分子量が20,000以上、200,000以下の範囲であれば、後述する炭化水素系の溶剤に容易に溶解するので、より容易にかつ迅速に接着剤組成物を除去することができる。また、重量平均分子量が上記の範囲であることにより、ウエハがレジストリソグラフィー工程に供されるときに曝されるレジスト溶剤(例えば、PGMEA、PGME、NMP等)、酸(フッ化水素酸等)、アルカリ(TMAH等)に対して優れた耐性を発揮する。
スチレン単位の含有量は、17重量%以上、40重量%以下の範囲であることがさらに好ましい。
接着剤組成物に含まれるエラストマーは、主鎖の構成単位として含まれるスチレン単位の含有量が互いに異なる二種類以上のスチレン系エラストマーを含んでいてもよい。例えば、株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton8007L及びSepton2004などの、スチレン単位の含有量が異なるエラストマーを二種類含んでいてもよい。
つまり、接着剤組成物は複数の種類のエラストマーを含んでもよい。複数の種類のエラストマーのうち少なくとも一つが、全モノマーユニットに対する、主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合が1モル%以下であれば、本発明の範疇である。また、接着剤組成物において、複数の種類のエラストマーを含む場合、混合した結果、スチレン単位の含有量が上記の範囲となるように調整してもよい。例えば、スチレン単位の含有量が30重量%である株式会社クラレ製のセプトン(商品名)のSepton4033と、スチレン単位の含有量が13重量%であるセプトン(商品名)のSepton2063とを重量比1対1で混合すると、接着剤組成物に含まれるエラストマー全体に対するスチレン含有量は21〜22重量%となり、14重量%以上となる。また、例えば、スチレン単位が10重量%のものと60重量%のものとを1対1で混合すると35重量%となり、上記の範囲内となる。なお、接着剤組成物に含まれる複数の種類のエラストマーは、全て上記の範囲でスチレン単位を含んでいることが特に好ましい。
スチレン単位の含有量が互いに異なるエラストマーを二種類含む場合、スチレン単位の含有量がより多いスチレン系エラストマーは、スチレン単位の含有量が20重量%以上、80重量%以下の範囲であることが好ましい。また、スチレン単位の含有量がより少ないスチレン系エラストマーは、スチレン単位の含有量が1重量%以上、30重量%以下の範囲であることが好ましい。スチレン単位の含有量がより多いスチレン系エラストマーを用いることにより、基板の貼付性または研削性を低下させることなく、薄化、実装等のプロセスに供することができる。スチレン単位の含有量がより少ないスチレン系エラストマーを用いることにより、接着剤組成物の薬品耐性を好適に維持することができる。
さらに、スチレン単位の含有量が互いに異なるエラストマーを二種類含む場合、スチレン系エラストマーの総量に対して、スチレン単位の含有量がより多いスチレン系エラストマーは、20重量%以上、80重量%以下の範囲であることが好ましい。
また、両端がスチレンのブロック重合体であるエラストマーがより好ましい。熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることで、当該エラストマーがより高い耐熱性を示すからである。
より具体的には、エラストマーは、スチレン及び共役ジエンのブロックコポリマーの水添物であることがより好ましい。これにより、熱に対する安定性が一層向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。また、熱安定性の高いスチレンを両末端にブロックすることでより高い耐熱性を示す。さらに、炭化水素系溶剤への溶解性への耐性の観点からもより好ましい。
本実施形態に係る接着剤組成物に含まれるエラストマーとして用いられ得る市販品としては、例えば、クラレ社製「セプトン(商品名)」、クラレ社製「ハイブラー(商品名)」、旭化成社製「タフテック(商品名)」、JSR社製「ダイナロン(商品名)」等が挙げられる。
(溶剤)
本実施形態に係る接着剤組成物は、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解する溶剤を含んでいることが好ましい。このような溶剤としては、例えば、非極性の炭化水素系溶剤、極性及び無極性の石油系溶剤等を用いることができる。
好ましくは、溶剤は、縮合多環式炭化水素を含み得る。溶剤が縮合多環式炭化水素を含むことによって、接着剤組成物を液状形態で(特に低温にて)保存した際に生じ得る白濁化を避けることができ、製品安定性を向上させることができる。
炭化水素系溶剤としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素が挙げられる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素;p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、α−ピネン、β−ピネン、ツジャン、α−ツジョン、β−ツジョン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
また、石油系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ナフタレン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどが挙げられる。
また、縮合多環式炭化水素とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給してできる縮合環の炭化水素であり、2つの単環が縮合されてなる炭化水素を用いることが好ましい。
そのような炭化水素としては、5員環及び6員環の組み合わせ、又は2つの6員環の組み合わせが挙げられる。5員環及び6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、インデン、ペンタレン、インダン、テトラヒドロインデン等が挙げられ、2つの6員環を組み合わせた炭化水素としては、例えば、ナフタレン、テトラヒドロナフタリン(テトラリン)及びデカヒドロナフタリン(デカリン)等が挙げられる。
また、溶剤が上記縮合多環式炭化水素を含む場合、溶剤に含まれる成分は上記縮合多環式炭化水素のみであってもよいし、例えば、飽和脂肪族炭化水素等の他の成分を含有していてもよい。この場合、縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上であることが好ましく、60重量部以上であることがより好ましい。縮合多環式炭化水素の含有量が炭化水素系溶剤全体の40重量部以上である場合には、上記樹脂に対する高い溶解性を発揮することができる。縮合多環式炭化水素と飽和脂肪族炭化水素との混合比が上記範囲内であれば、縮合多環式炭化水素の臭気を緩和させることができる。
上記飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン等が挙げられる。
なお、本実施形態に係る接着剤組成物における溶剤の含有量としては、当該接着剤組成物を用いて成膜する接着層の厚さに応じて適宜調整すればよいが、例えば、接着剤組成物の全量を100重量部としたとき、20重量部以上、90重量部以下の範囲であることが好ましい。溶剤の含有量が上記範囲内であれば、粘度調整が容易となる。
(熱重合禁止剤)
本実施形態に係る接着剤組成物は、熱重合禁止剤を含有していてもよい。熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止する機能を有する。具体的には、熱重合禁止剤はラジカルに対して高い反応性を示すため、モノマーよりも優先的に反応してモノマーの重合を禁止する。そのような熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に、250℃〜350℃)において重合反応が抑制される。
例えば半導体製造工程において、支持体が接着されたウエハを250℃で1時間加熱する高温プロセスを含む場合がある。このとき、高温により接着剤組成物の重合が起こると、高温プロセス後にウエハからサポートプレート(支持板)を剥離する剥離液への溶解性が低下し、ウエハからサポートプレートを良好に剥離することができない。しかし、熱重合禁止剤を含有している本実施形態の接着剤組成物では、熱による酸化及びそれに伴う重合反応が抑制されるため、高温プロセスを経たとしてもサポートプレートを容易に剥離することができ、残渣の発生を抑えることができる。
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノールを有する熱重合禁止剤が好ましい。これにより、大気下での高温処理後にも良好な溶解性を確保することができる。そのような熱重合禁止剤としては、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤を用いることが可能であり、例えば、ピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n−ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−[1−〔4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”−エチリデントリス(2−メチルフェノール)、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、n−オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、チバ・ジャパン社製)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。熱重合禁止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱重合禁止剤の含有量は、炭化水素樹脂又はエラストマーの種類、並びに接着剤組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、例えば、炭化水素樹脂又はエラストマーの量を100重量部としたとき、0.1重量部以上、10重量部以下であることがより好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後において、接着剤組成物の剥離液に対する溶解性の低下をさらに抑えることができる。
また、本実施形態に係る接着剤組成物は、熱重合禁止剤を溶解し、炭化水素樹脂又はエラストマーを溶解するための溶剤とは異なる組成からなる添加溶剤を含有する構成であってもよい。添加溶剤としては、特に限定されないが、接着剤組成物に含まれる成分を溶解する有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤としては、例えば、接着剤組成物の各成分を溶解し、均一な溶液にすることができればよく、任意の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、例えば、極性基として酸素原子、カルボニル基又はアセトキシ基等を有するテルペン溶剤が挙げられ、例えば、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファーが挙げられる。また、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、上記多価アルコール類又は上記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。
添加溶剤の含有量は、熱重合禁止剤の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、熱重合禁止剤を1重量部としたとき、1重量部以上、50重量部以下であることがより好ましく、1〜30重量部がさらに好ましく、1〜15重量部が最も好ましい。熱重合禁止剤の含有量が上記範囲内であれば、熱重合禁止剤を十分に溶解することができる。
(その他の成分)
本実施形態に係る接着剤組成物には、本実施形態における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤及び界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに用いることができる。
(接着剤組成物の調製方法)
本実施形態に係る接着剤組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよいが、例えば、炭化水素樹脂とエラストマーとを溶剤に溶解させ、既存の攪拌装置を用いて、各組成を攪拌することにより、本実施形態に係る接着剤組成物を得ることができる。
また、本実施形態に係る接着剤組成物に熱重合禁止剤を添加する場合には、熱重合禁止剤を、予め熱重合禁止剤を溶解させるための添加溶剤に溶解させたものを添加することが好ましい。
(本実施形態に係る接着剤組成物の用途)
本実施形態に係る接着剤組成物は、基板と、当該基板の支持体とを接着するために用いられる。好ましくは、ウエハ(基板)と当該ウエハの支持体とを接着するために用いられる。
支持体は、例えば、ウエハを薄化する工程で支持する役割を果たす部材であり、本実施形態に係る接着剤組成物によってウエハに接着される。一実施形態において、支持体は、例えば、その膜厚が500〜1000μmであるガラス又はシリコンで形成されている。
なお、一実施形態において、支持体には、支持体を厚さ方向に貫通する孔が設けられている。この孔を介して接着剤組成物を溶解する溶剤を支持体とウエハとの間に流し込むことによって、支持体とウエハとを容易に分離することができる。
接着剤組成物によるウエハと支持体との接着は、例えば、ウエハ上に接着剤組成物を塗布し、加温することによって接着層を形成し、当該接着層を介してウエハに支持体を貼付すればよい。接着層の膜厚は、特に限定されないが、例えば、5μm以上、200μm以下の範囲とすることができる。また、加温の条件は、用いる接着剤組成物に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、50℃以上、250℃以下の範囲で、温度を上げながら段階的にベークすることにより、効率的に接着層を成膜することができる。
また、ウエハへの支持体の貼付は、例えば、ウエハにおける接着層が成膜されている側に、支持体を重ね、高温(例えば、215℃)下、真空中において加圧することにより、ウエハに支持体を貼付することができる。ただし、貼付の手法は、基板の状態(表面の凹凸、強度など)、接着剤組成物の組成および支持体の材料などに応じて、従来公知の種々の手法から好適なものを適宜選択すればよい。
また、他の実施形態において、支持体とウエハとの間には、接着層の他に反応層が介在していてもよい。反応層は、支持体を介して照射される光を吸収することによって変質するようになっており、反応層に光等を照射して反応層を変質させることによって、支持体とウエハとを容易に分離することができる。この場合、支持体は厚さ方向に貫通する孔が設けられていない支持体を用いることが好ましい。
反応層に照射する光としては、反応層が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、または、非レーザ光を適宜用いればよい。反応層に吸収されるべき光の波長としては、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長の光であり得る。
反応層は、例えば光等によって分解される光吸収剤を含んでいてもよい。光吸収剤としては、例えば、グラファイト粉、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、亜鉛、テルルなどの微粒子金属粉末、黒色酸化チタンなどの金属酸化物粉末、カーボンブラック、又は芳香族ジアミノ系金属錯体、脂肪族ジアミン系金属錯体、芳香族ジチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、スクアリリウム系化合物、シアニン系色素、メチン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの染料もしくは顔料を用いることができる。このような反応層は、例えば、バインダー樹脂と混合して、支持体上に塗布することによって形成することができる。また、光吸収基を有する樹脂を用いることもできる。
また、反応層として、プラズマCVD法により形成した無機膜又は有機膜を用いてもよい。無機膜としては、例えば、金属膜を用いることができる。また、有機膜としては、フルオロカーボン膜を用いることができる。このような反応膜は、例えば、支持体上にプラズマCVD法により形成することができる。
また、本実施形態に係る接着剤組成物は、支持体と接着した後に薄化工程に供されるウエハと当該支持体との接着に好適に用いられる。上述のように、この支持体はウエハを薄化する際に当該ウエハの強度を保持する。本実施形態に係る接着剤組成物はこのようなウエハと支持体との接着に好適に用いられる。
すなわち、本実施形態に係る接着剤組成物は、基板上に、当該接着剤組成物からなる接着層を介して支持体を貼付する工程を包含する基板の処理方法に用いることができる。当該基板の処理方法は、さらに、支持体が貼付された基板を、100℃以上、400℃以下で熱処理する工程、を含んでいてもよい。
特に、本実施形態に係る接着剤組成物は、優れた耐熱性を有しているので、支持体と接着した後に150℃以上の環境下に曝されるウエハと当該支持体との接着に好適に用いられる。具体的には180℃以上、さらには220℃以上の環境下にも好適に用いることができる。
なお、本実施形態に係る接着剤組成物を用いてウエハと支持体とを220℃以下で接着する積層体の製造方法、当該積層体のウエハを薄化するウエハの薄化方法、当該積層体を220℃以上の温度で加熱する方法も本実施形態の範疇である。
(接着剤組成物により形成された接着剤層の除去)
本実施形態に係る接着剤組成物によって接着されたウエハと支持体とを、上記の反応層を変質すること等によって分離した後に、接着剤層を除去する場合、上述の溶剤を用いれば容易に溶解して除去することができる。また、上記の反応層等を用いずに、ウエハと支持体とを接着した状態で接着剤層に直接、溶剤を供給することによって、容易に接着剤層が溶解して当該接着剤層が除去され、ウエハと支持体とを分離することができる。この場合、接着剤層への溶剤の供給効率を上げるため、支持体には貫通した孔が設けられていることがより好ましい。
このように、本実施形態に係る基板の処理方法は、さらに、接着層を溶剤に溶解することにより、基板と支持体とを分離する工程を含んでいてもよい。
(接着フィルム)
本実施形態に係る接着剤組成物は、用途に応じて様々な利用形態を採用することができる。例えば、液状のまま、半導体ウエハなどの被加工体の上に塗布して接着剤層を形成する方法を用いてもよいし、本実施形態に係る接着フィルム、すなわち、予め可撓性フィルムなどのフィルム上に上記何れかの接着剤組成物を含む接着剤層を形成した後、乾燥させておき、このフィルム(接着フィルム)を、被加工体に貼り付けて使用する方法(接着フィルム法)を用いてもよい。
このように、本実施形態に係る接着フィルムは、フィルム上に、上記何れかの接着剤組成物を含有する接着剤層を備える。
接着フィルムは、接着剤層にさらに保護フィルムを被覆して用いてもよい。この場合には、接着剤層上の保護フィルムを剥離し、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねた後、接着剤層から上記フィルムを剥離することによって被加工体上に接着剤層を容易に設けることができる。
したがって、この接着フィルムを用いれば、被加工体の上に直接、接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成する場合と比較して、膜厚均一性及び表面平滑性の良好な接着剤層を形成することができる。
接着フィルムの製造に使用する上記フィルムとしては、フィルム上に製膜された接着剤層を当該フィルムから剥離することができ、接着剤層を保護基板やウエハなどの被処理面上に転写できる離型フィルムであればよく、特に限定されるものではない。例えば、膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。上記フィルムには、必要に応じて、転写が容易となるように離型処理が施されていることが好ましい。
上記フィルム上に接着剤層を形成する方法としては、所望する接着剤層の膜厚や均一性に応じて適宜、公知の方法を用いて、フィルム上に接着剤層の乾燥膜厚が10〜1000μmとなるように、本実施形態に係る接着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。
また、保護フィルムを用いる場合、保護フィルムとしては、接着剤層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムが好ましい。また、各保護フィルムは、シリコンをコーティング又は焼き付けしてあることが好ましい。接着剤層からの剥離が容易となるからである。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、15〜125μmが好ましい。保護フィルムを備えた接着フィルムの柔軟性を確保できるからである。
接着フィルムの使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、保護フィルムを用いた場合には、これを剥離した上で、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねて、フィルム上(接着剤層の形成された面の裏面)から加熱ローラを移動させることにより、接着剤層を被加工体の表面に熱圧着させる方法が挙げられる。このとき、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラなどのローラでロール状に巻き取れば、保存し再利用することが可能である。
〔接着剤組成物の調製〕
後述する表5〜8に記載した組成となるように、接着剤組成物を調製した。
炭化水素樹脂としては、下記の化学式(I)に示す三井化学社製のシクロオレフィンコポリマー「APEL(商品名)8008T COC、Mw=100,000、Mw/Mn=2.1、m:n=80:20(モル比)」(以下、COC 1という)、「APEL(商品名)8009T COC、Mw=120,000、Mw/Mn=2.2、m:n=75:25(モル比)」(以下、COC 2という)および「APEL(商品名)6013T COC、Mw=80,000、Mw/Mn=2.0、m:n=52:48(モル比)」(以下、COC 3という)を用いた。
エラストマーとしては、旭化成社製の「タフテック(商品名)」の「H1272」(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、「H1043」(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、「H1053」(SEBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)および「P2000」(SBS、水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、クラレ社製の「Septon(商品名)」の「HG−252」(SEEPS−OH:ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン 末端水酸基変性)、「4033」(SEPS:ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)および「V9827」(スチレンブロックが反応架橋型のSEBS、スチレン含有量11モル%)、ならびに、三井化学社製の「EPT PX068」(エチレン/プロピレン/ビニルノルボルネン共重合ポリマー、主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合(二重結合含有量)は、1モル%以下)を用いた。なお、本実施例における「水添」とは、スチレンとブタジエンのブロックコポリマーの二重結合を水素添加したポリマーである。
なお、「H1272」、「H1043」および「H1053」のモノマーユニットは、下記式(II)に示すとおりであり、そのユニット組成比(モル比)は、下記表1に示すとおりである。式(II)および表1に示すように、「H1272」、「H1043」および「H1053」における主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合(二重結合含有量)は、何れも1モル%以下である。
また、「P2000」のモノマーユニットは、下記式(III)に示すとおりであり、そのユニット組成比(モル比)は、下記表2に示すとおりである。式(III)および表2に示すように、「P2000」における主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合(二重結合含有量)は、1モル%を超えている。
また、「HG−252」および「4033」のモノマーユニットは、下記式(IV)に示すとおりであり、そのユニット組成比(モル比)は、下記表3に示すとおりである。式(IV)および表3に示すように、「HG−252」および「4033」における主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合(二重結合含有量)は、何れも1モル%以下である。
同様に、「V9827」および「EPT PX068」における主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合(二重結合含有量)は、何れも1モル%以下である。なお、本実施例における主鎖に二重結合を有するモノマーユニットの割合は、13C−NMRにより測定した。
また、熱重合禁止剤としては、BASF社製の「IRGANOX(商品名)1010」を用いた。また、主溶剤としては、下記化学式(V)に示すデカヒドロナフタリンを用いた。また、添加溶剤として、酢酸ブチルを用いた。
実施例1〜12では、以下の表4〜6に示す炭化水素樹脂およびエラストマーを、主溶剤に25重量%の濃度になるように溶解させた後、添加溶剤に5重量%の濃度で溶解させた熱重合禁止剤(酸化防止剤)を、炭化水素樹脂100重量部に対して1重量部添加して混合し、接着剤組成物を得た。
また、比較例1では、以下の表7に示す炭化水素樹脂を、主溶剤に25重量%の濃度になるように溶解させた後、熱重合禁止剤(酸化防止剤)を、炭化水素樹脂100重量部に対して1重量部添加して混合し、接着剤組成物を得た。
また、比較例2,3では、以下の表7に示す炭化水素樹脂を、主溶剤に25重量%の濃度になるように溶解させた後、添加溶剤に5重量%の濃度で溶解させた熱重合禁止剤(酸化防止剤)を、炭化水素樹脂100重量部に対して1重量部添加して混合し、接着剤組成物を得た。
また、比較例4〜6では、以下の表7に示す炭化水素樹脂およびエラストマーを、主溶剤に25重量%の濃度になるように溶解させた後、添加溶剤に5重量%の濃度で溶解させた熱重合禁止剤(酸化防止剤)を、炭化水素樹脂100重量部に対して1重量部添加して混合し、接着剤組成物を得た。
なお、表中、括弧内に示す数値の単位は、エラストマーおよび熱重合禁止剤については、炭化水素樹脂100重量部に対する重量部であり、添加溶剤については、全溶剤に対する体積%である。
〔接着剤組成物の評価〕
(溶液安定性)
表4〜7に示すように、実施例1〜12および比較例1〜3に係る接着剤組成物は安定していた。一方、比較例4〜6に係る接着剤組成物は、白濁し、チクソ性を有していた。
続いて、12インチシリコン基板1上に、実施例および比較例に係る各接着剤組成物をスピン塗布した。続いて、100℃,160℃,220℃で、各5分間ベークし、基板1上に接着層2を形成した。なお、接着層2の膜厚は、20μm、50μmまたは100μmとなるようにした。接着層2が形成された基板1には、図1(a)に示すように、基板1側が凸となる反りが見られた。
(成膜性)
ここで、50μmの膜厚に形成された接着層2におけるクラックの有無を目視(顕微鏡)によって確認した。その結果、表4〜7に示すように、実施例1〜12および比較例1〜3では、接着層2にクラックは見出されなかった。一方、比較例4〜6では、接着層2にクラックが見出された。このように、比較例4〜6では、適切な接着層2が形成されなかった。
(ヤング率)
続いて、FISCHERSCOPE HM2000(フィッシャー・インスツルメンツ社製)を用い、50μmの接着層に対し、5mNの圧力で変形を加えることで、各実施例および比較例における接着層2のヤング率を測定し、ヤング率が3GPa以上であるか、3GPa未満であるかによって、接着層2が十分な柔軟性を有しているか否かを評価した。その結果、表4〜6に示すように、実施例1〜12では、何れも、ヤング率は3GPa未満であり、接着層2は十分な柔軟性を有していた。一方、表7に示すように、比較例1〜3では、何れも、ヤング率は3GPa以上であり、接着層2は十分な柔軟性を有していなかった。
(ウエハ反り量)
また、50μmの膜厚の接着層2を形成した後の12インチシリコン基板1端の反り量を測定し、反り量が200μm以上であるか、180μm未満であるかによって、接着層2が基板を反らせる膜応力が十分低減できているか否かを評価した。その結果、表4〜6に示すように、実施例1〜12では、何れも、反り量は180μm未満であり、接着層2の膜応力は十分低減出来ていた。一方、表7に示すように、比較例1〜3では、何れも、反り量は200μm以上であり、接着層2の膜応力は低減出来ていなかった。なお、比較例4〜6では、接着層2が適切に形成されていないため、反り量は評価していない。
続いて、接着層2が形成された基板1と、厚さ0.7mmの12インチ板状のガラス支持体3とを、200℃下で貼り合わせて積層体を作製した。作製した積層体には、図1(b)に示すように、基板1側が凸となる反りが見られた。
そして、作製した積層体に対し、基板1の薄化処理を行った。薄化された積層体には、図1(c)に示すように、基板1側が凸となるように反っているもの、および、基板1側が凹となるように反っているものの両方が見られた。
(接着層/基板界面剥がれ)
ここで、薄化された積層体における接着層2と基板界面との剥がれの有無を目視(顕微鏡)にて確認した。その結果、表4〜6に示すように、実施例1〜12では、剥がれは見出されなかった。一方、表7に示すように、比較例1〜3では、接着層2の膜厚が50μm以上の場合に剥がれが見出された。また、比較例4〜6では、何れの膜厚の接着層2にも剥がれが見出された。このように、実施例1〜12では、接着層2は基板界面への十分な追従性を有していた。一方、比較例1〜6では、接着層2は基板界面への十分な追従性を有していなかった。
最後に、真空中において、10分間、積層体を250℃で処理した。その結果、積層体には、図1(d)に示すように、基板1側が凹となる反りが見られた。
(250℃真空処理)
250℃真空処理を行った後の積層体について、脱ガスによるボイド、剥がれ、およびそれらに起因する基板1の破損の有無を外観の目視(顕微鏡)によって確認した。そして、外観上変化がなければ「○」と評価し、何れかの欠陥が見出されれば「×」と評価した。その結果、表4〜7に示すように、実施例1〜12および比較例1〜3では、外観上変化はなかった。一方、比較例4〜6では、欠陥が見出された。このように、実施例1〜12および比較例1〜3では、接着層2は十分な耐熱性を示した。一方、比較例4〜6では、接着層2は十分な耐熱性を示さなかった。