JP6060801B2 - 高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、白金属元素(Ru、Rh、Pd、Ptなど)からなる薄膜上に高融点金属元素(Y、Ti、W、Zr、Feなど)からなる薄膜を形成し、1000℃以上で熱処理する高耐熱導電性薄膜の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、高温環境下でも形状が変化しない高耐熱導電性薄膜が得られる点が記載されている。
同文献には、
(1)Si3N4基板上のPt薄膜は、900℃以上でPtの凝集による劣化が生ずるのに対し、両者の間にAl2O3層を介在させた高TCR白金薄膜は、900℃以上でのPtの凝集を抑制できる点、及び、
(2)高TCR白金薄膜は、900℃以上の加熱により微小亀裂が発生し、これによって抵抗値が増大する点
が記載されている。
サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 (以下、「単結晶ZrO 2 (Y 2 O 3 添加)」ともいう)、又は、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 (以下、「焼結ZrO 2 (Y 2 O 3 添加)」ともいう)からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と
を備えていることを要旨とする。
本発明に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法の1番目は、
サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる基板の表面に、パルスレーザーデポジション法、又は、スパッタリング法を用いて、貴金属元素からなるマトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、
前記微粒子を結晶粒成長させるために必要な温度で前記前駆体膜を熱処理することにより、前記前駆体膜を複合体薄膜とし、本発明に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料を得る熱処理工程と
を備えていることを要旨とする。
前記高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法は、
前記複合体薄膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で前記複合体薄膜のエージングを行うエージング工程をさらに備えていても良い。
サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Al2O3からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と、
前記複合体薄膜の表面に形成された、Y 2 O 3 ドープZrO 2 (以下、「ZrO 2 (Y 2 O 3 添加)」ともいう)からなる被覆薄膜と、
を備えていることを要旨とする。
本発明に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法の2番目は、
サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Al 2 O 3 からなる基板の表面に、パルスレーザーデポジション法、又は、スパッタリング法を用いて、貴金属元素からなるマトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、
前記微粒子を結晶粒成長させるために必要な温度で前記前駆体膜を熱処理することにより、前記前駆体膜を複合体薄膜とする熱処理工程と、
前記複合体薄膜の表面に、Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる被覆膜を形成し、本発明に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料を得る被覆膜形成工程と
を備えていることを要旨とする。
前記高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法は、
前記熱処理工程の後、前記被覆膜形成工程の前に、前記複合体薄膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で前記複合体薄膜のエージングを行うエージング工程をさらに備えていても良い。
また、複合体薄膜の表面に、さらに被覆膜を形成すると、その理由の詳細は不明であるが、耐熱性がさらに向上する。その結果、基板として焼結Al2O3を使用することも可能となる。
[1. 高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料(1)]
本発明の第1の実施の形態に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料は、
サファイア、単結晶ZrO2(Y2O3添加)、又は、焼結ZrO2(Y2O3添加)からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と
を備えている。
基板の材料は、その上に形成される複合体薄膜の耐熱性に影響を与える。本実施の形態において、基板には、サファイア、単結晶ZrO2(Y2O3添加)、又は、焼結ZrO2(Y2O3添加)が用いられる。基板としてこれらの材料を用いると、その理由の詳細は不明であるが、複合体薄膜の耐熱性が向上する。
一方、基板として、これら以外の材料(例えば、焼結Al2O3、セリア安定化ジルコニアなど)を用いると、複合体薄膜の耐熱性が低下する。
複合体薄膜は、基板の表面に形成される。また、複合体薄膜は、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散しているものからなる。
本発明において、マトリックスは、貴金属元素からなる。「貴金属」とは、白金族元素(Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)をいう。マトリックスは、これらのいずれか1種の貴金属元素からなるものでも良く、あるいは、2種以上の合金又は混合物であっても良い。
これらの中でも、Pt、Rh、Pt−Rh合金、及び、これらの混合物は、耐熱性が高く、化学的にも安定であるので、マトリックスを構成する材料として好適である。
本発明において、微粒子は、希土類元素の酸化物を含む。「希土類元素」とは、Y、Sc、及び、ランタノイド(La〜Lu)をいう。
微粒子は、
(a)いずれか1種の希土類元素を含む希土類酸化物のみからなるもの、
(b)2種以上の希土類元素を含む希土類酸化物の固溶体若しくは混合物、又は、
(c)希土類酸化物と他の酸化物との固溶体若しくは混合物、
のいずれであっても良い。
他の酸化物としては、例えば、
(a)Al2O3、ZrO2、MgO、CaO、SiO2、TiO2、Ta2O5、HfO2、CoO、Sr2O3、
(b)MgAl2O3、ムライト(Al6O13Si2)などの複合酸化物、
などがある。
微粒子が希土類酸化物以外の酸化物を含む場合、高い耐熱性を得るためには、希土類酸化物は、酸化物全体の5mol%以上が好ましい。
微粒子の平均直径は、複合体薄膜の耐熱性に影響を与える。微粒子の平均直径が大きくなるほど、マトリックスの凝集を抑制する効果が大きくなる。このような効果を得るためには、微粒子の平均直径は、5nm以上が好ましい。微粒子の平均直径は、さらに好ましくは、10nm以上、さらに好ましくは、20nm以上である。
一方、微粒子の平均直径が大きくなりすぎると、微粒子による焼結阻害効果が薄れてマトリックスが凝集しやすくなる。従って、微粒子の平均直径は、100nm以下が好ましい。微粒子の平均直径は、さらに好ましくは、80nm以下、さらに好ましくは、60nm以下である。
ここで、「平均直径」とは、顕微鏡観察により無作為に選んだn個(n≧10)の粒子の最大長さ(最小外接円の直径)の平均値をいう。
微粒子の数密度は、複合体薄膜の耐熱性及び電気伝導度に影響を与える。微粒子の数密度が大きくなるほど、マトリックスの凝集を抑制する効果が大きくなる。このような効果を得るためには、微粒子の数密度は、50個/μm2以上が好ましい。微粒子の数密度は、さらに好ましくは、60個/μm2以上、さらに好ましくは、80個/μm2以上である。
一方、微粒子の数密度が大きくなりすぎると、複合体薄膜の電気伝導度が低下するだけでなく、複合体薄膜の機械的特性も低下する。従って、微粒子の数密度は、200個/μm2以下が好ましい。微粒子の数密度は、さらに好ましくは、180個/μm2以下、さらに好ましくは、120個/μm2以下である。
複合体薄膜に含まれる希土類元素のモル数(M1)及び希土類元素のモル数(M2)に対する貴金属元素のモル数(M2)の割合(=M2×100/(M1+M2))は、複合体薄膜の機械的特性及び電気伝導度に影響を与える。貴金属元素の割合が大きくなるほど、複合体薄膜の電気伝導度が増大する。このような効果を得るためには、貴金属元素の割合は、65mol%以上が好ましい。貴金属元素の割合は、さらに好ましくは、70mol%以上、さらに好ましくは、80mol%以上である。
一方、貴金属元素の割合が大きくなりすぎると、複合体薄膜の機械的特性が低下する。従って、貴金属元素の割合は、90mol%以下が好ましい。貴金属元素の割合は、さらに好ましくは、86mol%以下、さらに好ましくは、83mol%以下である。
複合体薄膜の厚みは、複合体薄膜の機械的特性及び電気伝導性に影響を与える。複合体薄膜の厚みが厚くなるほど、電気伝導度が増大する。このような効果を得るためには、厚みは、200nm以上が好ましい。厚みは、さらに好ましくは、350nm以上、さらに好ましくは、500nm以上である。
一方、複合体薄膜の厚みが厚すぎると、機械的特性が低下する。従って、厚みは、1000nm以下が好ましい。厚みは、さらに好ましくは、900nm以下、さらに好ましくは、800nm以下である。
本発明の第2の実施の形態に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料は、
サファイア、単結晶ZrO2(Y2O3添加)、焼結ZrO2(Y2O3添加)、又は、焼結Al2O3からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と、
前記複合体薄膜の表面に形成された、ZrO2(Y2O3添加)からなる被覆膜と、
を備えている。
本実施の形態において、基板には、サファイア、単結晶ZrO2(Y2O3添加)、焼結ZrO2(Y2O3添加)、又は、焼結Al2O3からなる。すなわち、基板として、焼結Al2O3を用いることができる。この点が、第1の実施の形態とは異なる。
第1の実施の形態において、基板として焼結Al2O3を用いると、複合体薄膜の耐熱性が低下する。
これに対し、複合体薄膜の表面に被覆膜をさらに形成すると、その理由の詳細は不明であるが、基板として焼結Al2O3を用いた場合であっても、複合体薄膜の耐熱性の低下を抑制することができる。
複合体薄膜は、基板の表面に形成される。また、複合体薄膜は、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散しているものからなる。
複合体薄膜の詳細については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施の形態において、複合体薄膜の表面には、さらに被覆膜が形成される。この点が、第1の実施の形態とは異なる。
被覆膜は、ZrO2(Y2O3添加)からなる。複合体薄膜の表面に被覆膜を形成すると、その理由の詳細は不明であるが、複合体薄膜の耐熱性が向上する。また、基板として焼結Al2O3を用いた場合であっても、複合体薄膜の耐熱性の低下を抑制することができる。
被覆膜の厚みは、複合体薄膜の耐熱性に影響を与える。被覆膜の厚みが厚くなるほど、複合体薄膜の耐熱性が増大する。このような効果を得るためには、被覆膜の厚みは、100nm以上が好ましい。厚みは、さらに好ましくは、150nm以上、さらに好ましくは、200nm以上である。
一方、被覆膜の厚みが厚すぎると、熱膨張差による残留応力が増大して剥離しやすくなる等、機械的特性の低下を招くおそれがある。従って、被覆膜の厚みは、500nm以下が好ましい。被覆膜の厚みは、さらに好ましくは、460nm以下、さらに好ましくは、400nm以下である。
本発明に係る高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料は、
(1)基板表面に、貴金属マトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成し、
(2)結晶粒成長させるために必要な温度で前駆体膜を熱処理することにより、微粒子を粒成長させて、複合体薄膜とし、
(3)必要に応じて、膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で複合体薄膜のエージングを行い、
(4)必要に応じて、複合体薄膜の表面に被覆膜を形成する
ことにより製造することができる。
まず、基板表面に、貴金属元素からなるマトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成する(前駆体膜形成工程)。
このような微細な酸化物微粒子が分散している前駆体膜の製造方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いることができる。
この場合、前駆体膜に含まれる貴金属元素の割合(=M2×100/(M1+M2))は、ターゲットの面積比率(又は、照射時間比)により制御することができる。また、前駆体膜の形成を酸素雰囲気下で行うことにより、希土類元素の酸化物を含む微粒子を形成することができる。この点は、希土類酸化物以外の酸化物を含む複合体薄膜を作製する場合も同様である。
次に、結晶粒成長させるために必要な温度で前駆体膜を熱処理する(熱処理工程)。これにより、マトリックス中の希土類元素の酸化物を含む微粒子が所定の平均直径まで粒成長又は凝集し、複合体薄膜となる。
一般に、熱処理温度が高くなるほど、及び/又は、熱処理時間が長くなるほど、酸化物微粒子の粒成長が進行しやすくなる。
最適な熱処理条件は、貴金属や希土類酸化物の種類、目的とする平均直径等により異なる。例えば、貴金属/希土類酸化物の組み合わせがPt/Y2O3である場合、熱処理温度は、1000℃以上1600℃以下が好ましい。
熱処理時間は、熱処理温度及び目的とする平均直径にもよるが、通常、5時間〜100時間程度である。
次に、膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で複合体薄膜のエージングを行う(エージング工程)。エージング工程は、必ずしも必要ではないが、複合体薄膜にエージングを行うと、成膜時に生じる残留応力の緩和、結晶化の促進、非平衡組成の安定化、抵抗値の安定化などが可能になる。
最適なエージング条件は、貴金属や希土類酸化物の種類、目的とする平均直径等により異なる。例えば、貴金属/希土類酸化物の組み合わせがPt/Y2O3である場合、エージング温度は、600℃以上1400℃以下が好ましい。
エージング時間は、エージング温度及び目的とする平均直径にもよるが、通常、5時間〜100時間程度である。
次に、複合体薄膜の表面に被覆膜を形成する(被覆膜形成工程)。被覆膜形成工程は、必ずしも必要ではないが、複合体薄膜の表面にさらに被覆膜を形成すると、複合体薄膜の耐熱性がさらに向上する。
特定の材料からなる基板表面に、貴金属マトリックス中に希土類酸化物を含む微粒子を分散させた複合体薄膜を形成すると、その理由の詳細は不明であるが、高温環境下における貴金属の凝集が抑制される。そのため、このような貴金属−酸化物薄膜材料は、耐熱性が高く、1000℃以上の高温環境下においても電子伝導体として機能する。
また、複合体薄膜の表面に、さらに被覆膜を形成すると、その理由の詳細は不明であるが、耐熱性がさらに向上する。その結果、基板として焼結Al2O3を使用することも可能となる。
[1. 試料の作製]
[1.1. 前駆体膜の作製]
ターゲットとしてPt板(□20×1mm)と、金属Y板(□10×1mm)を準備し、金属Y板をPt板の上に接着し、ターゲットとした。このターゲットを、真空槽内の回転機構を有するターゲット保持具に設置した。レーザーをレンズにより絞り、ターゲット表面にて、φ3.5mmの照射径になるように調整した。また、ターゲット表面でのレーザー照射位置は、ターゲットの中心から約8mmの位置とした。Pt板上に貼り付ける金属Y板の面積を変えて、PtとYの比率(照射時間比)を81:19と87.5:12.5に調整した。ターゲットの回転数は12rpmとした。
基板には、焼結ZrO2(8mol%Y2O3添加)、サファイア、又は、単結晶ZrO2(13mol%Y2O3添加)を用い、ターゲットから約60mmの位置に配置した。基板の寸法は、15×15×0.5mmとした。
前駆体膜のPtとYの重量比(W2/W1比)をEDXにより解析したところ、PtとYのターゲット比率が81:19と87.5:12.5に対し、各々9.5と13.0であった。これらをそれぞれ、Yのモル数(M1)及びPtのモル数(M2)に対するPtのモル数(M2)の割合(=M2×100/(M1+M2))に換算すると、各々81mol%と、86mol%となる。
形成された前駆体膜は緻密であり、前駆体膜の厚みは400nmであった。この成膜後の前駆体膜においては、Y2O3は極めて細かな状態で均一に分散しているために、2段階熱処理(1000℃×4hr→1250℃×1hr)を施した。この熱処理により、薄膜中のY2O3は凝集し、約50nmの粒子に成長し、かつ、薄膜中に均一に分散した状態(複合体薄膜)となった。
Pt電極を焼き付けた試験片を1100℃×200hrの耐久試験に供した。耐久試験は、Pt薄膜の化学的安定性が大気中水分の影響を受けることから、
(a)大気中と、
(b)露点温度が約−15℃の低湿度空気中、
で実施した。耐久性は、200時間耐久後の電気抵抗値R200を開示時の電気抵抗値R0で割ったR200/R0で判断した。
なお、耐久試験前に、耐久試験時と同じ雰囲気下で1100℃×30〜50hrのエージング処理を施した。
[3.1. 耐久試験前の薄膜のSEM観察]
図1に、PtとYの比率(照射時間比)が81:19のターゲットを用いてサファイア基板上に形成した複合体薄膜の1100℃×50hrエージング後の断面SEM像を示す。Y2O3粒子がPtマトリックス中に均一に分散していた。Y2O3の直径は10〜100nm(平均直径:40nm)、数密度は約100個/μm2であった。
PtとYの比率が81:19のターゲットを用いて作製した複合体薄膜において、基板として焼結ZrO2(Y2O3添加)、サファイア、又は、単結晶ZrO2(Y2O3添加)を用いたときの低湿度耐久におけるR200/R0は、各々、1.069、1.000、1.000であった。また、大気中耐久でのR200/R0は、各々、1.261、1.042、1.066であった。
低湿度耐久においては、単結晶基板のみならず焼結ZrO2(Y2O3添加)基板上の複合体薄膜であっても極めて高い耐久性を示した。大気中耐久は、低湿度耐久に比べて若干劣ったが、1100℃未満において優れた耐久性を示すものと考えられる。
図2に、PtとYの比率(照射時間比)が81:19のターゲットを用いてサファイア基板上に形成した複合体薄膜の低湿度空気中、1100℃×200hr耐久試験前後(図2(a):耐久前、図2(b):耐久後)の表面SEM像を示す。図2より、耐久試験後も、Ptの凝集が抑制されていることがわかる。
基板として焼結Al2O3を用いた以外は、実施例1と同様に複合体薄膜を形成し、その耐久性を評価した。耐久性は、実施例1に比べて劣っていた。
ターゲットとしてPtとYの比率(照射時間比)を75:25とした以外は、実施例1と同様に複合体薄膜を形成し、その耐久性を評価した。耐久性は、実施例1に比べて若干劣っていた。
ターゲットとしてPtとAl、又は、PtとZrを用い、比率を75:25とした以外は、実施例1と同様に複合体薄膜を形成し、それらの耐久性を評価した。耐久性は、いずれも実施例1に比べて劣っていた。
ターゲットとしてPtを用い、Ptペースト電極を形成しなかった以外は、実施例1と同様にPt薄膜を形成し、低湿度空気中での耐久性を評価した。
2種類の焼結基板上のPt薄膜は、50hrエージングにて絶縁化した。また、単結晶ZrO2(Y2O3添加)上のPt薄膜は、耐久50hrにて絶縁化した。さらに、サファイア基板上のPt薄膜のR200/R0は、22.9であった。
図3に、Ptターゲットを用いて焼結ZrO2(Y2O3添加)基板上に形成したPt薄膜の低湿度空気中エージング後(1100℃×50hr)の表面SEM像を示す。図3より、エージングによりPt薄膜が凝集していることがわかる。
[1. 試料の作製]
[1.1. 複合体薄膜の作製]
基板として、焼結ZrO2(8mol%Y2O3添加)、サファイア、及び、単結晶ZrO2(13mol%Y2O3添加)に加えて、焼結Al2O3を用いた以外は、実施例1と同様にして前駆体膜を作製した。さらに、得られた前駆体膜を1000℃×4hrで熱処理し、複合体薄膜を得た。
熱処理後の複合体薄膜上に、パルスレーザーデポジション法により200nmのZrO2(Y2O3添加)からなる被覆膜を積層した。
実施例1と同様にPt電極を作製し、耐久性を大気雰囲気下で評価した。
焼結ZrO2(Y2O3添加)、焼結Al2O3、サファイア、単結晶ZrO2(Y2O3添加)の各基板上に形成した複合体薄膜の大気中耐久におけるR200/R0は、各々、1.007、1.010、1.000、1.000であった。単結晶基板のみならず、焼結基板上に形成した複合体薄膜であっても、ZrO2(Y2O3添加)からなる被覆膜の積層により、耐久性が大きく改善された。
PtとYの比率(照射時間比)が87.5:12.5であるターゲットを用いて作製した複合体薄膜においても、耐久性は実施例1に比べて大きく改善された。
ターゲットとしてPtとYとAlの比(照射時間比)を75:12.5:12.5としたものを用いた以外は、実施例3と同様にして複合体薄膜を作成した。得られた複合体薄膜の耐久性は、実施例1に比べて大きく改善された。
複合体薄膜上にAl2O3からなる被覆膜を積層した以外は、実施例3と同様にして試料を作製し、耐久性を調べた。R200/R0は、1.2以上であり、実施例3に比べて大きく劣った。
Claims (17)
- サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と
を備えた高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記微粒子の平均直径は、5nm以上100nm以下である
請求項1に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記微粒子の数密度は、50個/μm2以上200個/μm2以下である
請求項1又は2に記載の高耐熱貴金属−希土類酸化物薄膜材料。 - 前記複合体薄膜に含まれる前記希土類元素のモル数(M1)及び前記貴金属元素のモル数(M2)に対する前記貴金属元素のモル数(M2)の割合(=M2×100/(M1+M2))は、65mol%以上90mol%以下である
請求項1から3までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記複合体薄膜の厚みは、200nm以上1000nm以下である
請求項1から4までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記マトリックスは、Pt、Rh、Pt−Ru合金、及び/又は、これらの混合物であり、
前記微粒子は、Y 2 O 3 である
請求項1から5までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Al2O3からなる基板と、
前記基板の表面に形成された、貴金属元素からなるマトリックス中に希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している複合体薄膜と、
前記複合体薄膜の表面に形成された、Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる被覆膜と、
を備えた高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記微粒子の平均直径は、5nm以上100nm以下である
請求項7に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記微粒子の数密度は、50個/μm2以上200個/μm2以下である
請求項7又は8に記載の高耐熱貴金属−希土類酸化物薄膜材料。 - 前記複合体薄膜に含まれる前記希土類元素のモル数(M1)及び前記貴金属元素のモル数(M2)に対する前記貴金属元素のモル数(M2)の割合(=M2×100/(M1+M2))は、65mol%以上90mol%以下である
請求項7から9までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記複合体薄膜の厚みは、200nm以上1000nm以下である
請求項7から10までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記被覆膜の厚みは、100〜500nmである
請求項7から11までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - 前記マトリックスは、Pt、Rh、Pt−Ru合金、及び/又は、これらの混合物であり、
前記微粒子は、Y2O3である
請求項7から12までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料。 - サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる基板の表面に、パルスレーザーデポジション法、又は、スパッタリング法を用いて、貴金属元素からなるマトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、
前記微粒子を結晶粒成長させるために必要な温度で前記前駆体膜を熱処理することにより、前記前駆体膜を複合体薄膜とし、請求項1から6までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料を得る熱処理工程と
を備えた高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法。 - 前記複合体薄膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で前記複合体薄膜のエージングを行うエージング工程をさらに備えた請求項14に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法。
- サファイア、単結晶Y 2 O 3 ドープZrO 2 、焼結Y 2 O 3 ドープZrO 2 、又は、焼結Al 2 O 3 からなる基板の表面に、パルスレーザーデポジション法、又は、スパッタリング法を用いて、貴金属元素からなるマトリックス中に、平均直径5nm未満の希土類元素の酸化物を含む微粒子が分散している前駆体膜を形成する前駆体膜形成工程と、
前記微粒子を結晶粒成長させるために必要な温度で前記前駆体膜を熱処理することにより、前記前駆体膜を複合体薄膜とする熱処理工程と、
前記複合体薄膜の表面に、Y 2 O 3 ドープZrO 2 からなる被覆膜を形成し、請求項7から13までのいずれか1項に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料を得る被覆膜形成工程と
を備えた高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法。 - 前記熱処理工程の後、前記被覆膜形成工程の前に、前記複合体薄膜内に生成した歪や組成の非平衡性を緩和し、あるいは、アモルファス相を結晶化させるために必要な温度で前記複合体薄膜のエージングを行うエージング工程をさらに備えた請求項16に記載の高耐熱貴金属−酸化物薄膜材料の製造方法。
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