JP6060662B2 - ポリエチレンテープ、ポリエチレンスプリットヤーン及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明は、広い温度範囲に亘って、力学物性の変化が小さく、寸法安定性に優れており、製品加工条件が幅広い温度範囲において選択でき、製品加工後に幅広い温度範囲で使用可能であるポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの製造方法を提供することも目的とする。
また、TMA(機械熱分析)測定における50℃の熱収縮応力が0.20cN/dtex以下で、80℃における熱収縮応力が0.50cN/dtex以下であることが好ましい。
ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が490,000〜6,200,000であり、重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下であることが好ましい。
また、ポリエチレンテープは、引張強度が0.8GPa以上、初期弾性率が20GPa以上であることが好ましく、ポリエチレンスプリットヤーンは、引張強度が8cN/dtex以上、初期弾性率が200cN/dtex以上であることが好ましい。
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の残留溶剤濃度が1000ppm以下であることが好ましい。
ポリエチレンスプリットヤーンは、単糸繊度が0.5dtex以上1000dtex以下の単糸を含むことが好ましい。
ポリエチレンテープの製造方法は、極限粘度[η]が5.0dL/g以上32.0dL/g以下であり、繰り返し単位が実質的にエチレン鎖であるポリエチレンを100℃以上145℃以下の温度で圧縮する圧縮工程と、圧縮工程で圧縮されたポリエチレンを120℃以上145℃以下の温度で圧延する圧延工程と、圧延工程で圧延されたポリエチレンを20℃以上160℃以下の温度範囲で1段以上延伸した後に、80℃以上170℃以下の温度範囲で、0.85倍以上6.0倍以下の延伸倍率で、0.01秒以上30分以下で延伸する延伸工程と、延伸工程で延伸されたポリエチレンを60℃以下の温度に冷却した状態で、5.0cN/dtex以下の巻取り張力で巻取る巻取り工程とを備えることを特徴とする。
ポリエチレンスプリットヤーンの製造方法は、上記製造方法で製造されたポリエチレンテープを切断する切断工程を備えることを特徴とする。
なお、本発明にはポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンのみならず、ポリエチレンテープ又はポリエチレンスプリットヤーンを含む組紐、撚糸、織編物、上記ポリエチレンテープを1mm以上10cm以下にカットしたことを特徴とするカットテープ、及びポリエチレンスプリットヤーンから得られるカットファイバーをも包含される。
また、本発明に係る製造方法は、製造作業者や環境への悪影響を避けるために、溶剤を用いない圧延成形法によってテープを作製する。更にテープを切断することによりスプリットヤーンを作製する。このとき、延伸工程における熱処理、更には熱処理後の巻取り工程における巻取り張力を精密に制御することによって、広い温度範囲で力学物性の変化が小さく、寸法安定性に優れたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを得ることができる。
本発明で用いられるポリエチレンは、その繰り返し単位が実質的にエチレン鎖であることが好ましい。また、本発明の効果が得られる範囲で、エチレンの単独重合体ばかりでなく、エチレンと少量の他のモノマーとの共重合体を使用することができる。他のモノマーとしては、例えば、α−オレフィン、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、ビニルシラン及びその誘導体等が挙げられる。また、本発明で用いられるポリエチレンは、共重合体同士(エチレンと他のモノマー(例えば、α―オレフィン)との共重合体)、あるいはホモポリエチレンとエチレン系共重合体とのブレンド物、更にはホモポリエチレンと他のα−オレフィン等のホモポリマーとのブレンド物であってもよく、部分的な架橋、又は部分的なメチル分岐、エチル分岐、ブチル分岐等を有していてもよい。また、重量平均分子量が異なるポリエチレンのブレンド物であってよく、分子量分布(Mw/Mn)の異なるポリエチレンのブレンド物であってもよい。また、分岐ポリマーと分岐のないポリマーとのブレンド物であってもよい。このとき、テープやスプリットヤーン中の分岐量や架橋量を増やせば、製品の耐クリープ性が向上するが、分岐量が多すぎると後述する延伸工程時に破断が多発するため、架橋量や分岐量は使用する製品の要求性能に合わせて調整することが好ましい。
本発明で用いられるポリエチレンの極限粘度は、ポリエチレンテープになった状態やポリエチレンスプリットヤーンになった状態において5.0dL/g以上、好ましくは6.0dL/g以上、より好ましくは8.0dL/g以上であり、32.0dL/g以下、好ましくは27.0dL/g以下、より好ましくは22.0dL/g以下である。極限粘度が5.0dL/g以上の超高分子量ポリエチレンであっても後述する圧延成形法により、フィルム、ポリエチレンテープ、及びポリエチレンテープから得られるポリエチレンスプリットヤーンを製造することが容易になり、いわゆるゲル紡糸法等で製糸する必要がない。そのため、製造コストの抑制、作業工程の簡略化の点で優位である。更に、製造時に溶剤を用いないため、作業者や環境への溶剤の悪影響がなく、製品中の残留溶剤もほとんど存在しないため、製品使用者に対する溶剤の悪影響がない。また、極限粘度を5.0dL/g以上とすると、ポリエチレンの分子末端基の減少により、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の構造欠陥数を減少させることができる。そのため、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの引張強度や初期弾性率等を向上させることができ、力学物性や耐磨耗性を向上させることができる。極限粘度の測定方法については後述する。
重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下、好ましくは、5.5以下、更に好ましくは5.0以下である。Mw/Mnが6.0を超えると、分子量が非常に大きいポリマーが含有されやすく、後述する圧延工程及び延伸工程時の張力が大きくなり、工程中での糸切れが多発し好ましくない。上記比(Mw/Mn)は1.0以上が好ましく、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.5以上である。重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法については後述する。
なお、エチレンのホモポリマーを用いてポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを製造する場合、原料ホモポリエチレンの極限粘度、重量平均分子量、及びMw/Mnが上記に記載の範囲内であることが好ましい。
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、TMA(機械熱分析)測定における最大熱収縮温度が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上である。また、TMA測定における最大熱収縮応力が2.0cN/dtex以下であり、好ましくは1.8cN/dtex以下、より好ましくは1.4cN/dtex以下である。また、上記ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、室温付近で残留する歪みも小さいため、室温域から結晶分散温度域に亘って寸法の差が小さいことが特徴である。よって、TMA測定における50℃の熱収縮応力が、0.20cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.15cN/dtex以下であり、80℃の熱収縮応力が0.50cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは0.45cN/dtex以下である。
また、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、100℃における熱収縮率が5.0%以下であり、好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下である。なお、ポリエチレンテープの100℃における熱収縮率は、ポリエチレンテープの100℃における長手方向の熱収縮率を指す。
本発明に係るポリエチレンテープは、引張強度が0.8GPa以上であることが好ましい。本発明に係るポリエチレンテープは、かかる引張強度を有することにより、従来の溶融成形法で得られる汎用ポリエチレンテープでは展開できなかった用途にまで展開することができる。引張強度は、1.5GPa以上がより好ましく、更に好ましくは2.0GPa以上である。引張強度は高い方が好ましく上限は特に限定されないが、例えば、引張強度が6.0GPa以上のテープを得ることは、圧延成形法では、技術的、工業的に生産が困難である。引張強度の測定方法については後述する。
本発明に係るポリエチレンテープは、初期弾性率が20GPa以上220GPa以下であることが好ましい。ポリエチレンテープが、かかる初期弾性率を有していれば、製品時や製品加工工程で受ける外力に対して力学物性変化や形状変化が生じ難くなる。初期弾性率は40GPa以上がより好ましく、更に好ましくは50GPa以上、特に好ましくは90GPa以上であり、190GPa以下がより好ましく、更に好ましくは180GPa以下である。初期弾性率が220GPaを超えるテープを得ることは、引き裂けや破断が多発し、工業生産的に困難である。引張強度、初期弾性率の測定方法については後述する。
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーン中の残留溶剤濃度は、1000ppm以下が好ましく、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは200ppm以下であり、最も好ましいのは0ppm(残留溶剤が存在しない)である。残留溶剤としては、デカリン(デカヒドロナフタレン)やパラフィン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。残留溶剤濃度の測定方法については後述する。
また、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、広い温度範囲に亘って貯蔵弾性率の保持率が高いことが好ましい。具体的には、100℃における貯蔵弾性率が30℃における貯蔵弾性率の20%以上であることが好ましく、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上である。動的な負荷下でも貯蔵弾性率の保持率の高いポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、24時間以上高温環境下においても、環境変化の影響を受けることが少なく、良好な物性保持率を示す。以下、「良好な物性保持率」とは、100℃における熱収縮率が−5.0%以上5.0%以下であることを指す。なお、熱膨張しているときは熱収縮率の値がマイナスとなる。また、ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンに樹脂コーティング等を行う後加工時において、貯蔵弾性率の保持率が高いほど、後加工後の力学物性の低下を抑制することが可能となる。また、例えば強化プラスチック材、コンクリート補強材、ロープ等のように高張力下で使用され、且つ、使用時の環境によっては温度の高い環境下となる場合であっても、環境変化に伴う製品性能の変動を小さくすることができる。貯蔵弾性率の測定方法については後述する。
ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンは、その内部構造として、単斜晶の比率が0.1%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以上29.5%以下、更に好ましくは2.0%以上29%以下である。更に、斜方晶の比率が40%以上99%以下であることが好ましく、より好ましくは45%以上96%以下、更に好ましくは50%以上95%以下である。ポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの内部構造と物性保持率との関係におけるメカニズムは明確になっていないが、後述の圧延工程時の変形、延伸工程最後段の熱処理条件、及び巻取り張力の制御により、内部構造における単斜晶成分を上記の範囲内で少量含有することによって、良好な物性保持率を示す。単斜晶の比率が30%より多くなると貯蔵弾性率の保持率が上記の範囲を維持し難い傾向がある。理由は明確ではないが単斜晶のほうが斜方晶よりも結晶構造が不安定なためと思われる。
ポリエチレンテープの幅は、好ましくは15mm以下であり、ポリエチレンテープの厚みは好ましくは1mm以下、更に好ましくは200μm以下である。
本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを得る製造方法については、以下の圧延成形法によることが好ましい。他にも溶剤を用いて行う超高分子量ポリエチレン繊維の製法の一つにゲル紡糸法があるが、ゲル紡糸法では、高強度を得られるものの、生産性が低いばかりでなく、溶剤使用による製造作業者の健康や環境への影響、また繊維中に残留する溶剤が製品使用者の健康に与える影響が大きい。
圧縮工程ではポリエチレン(例えば、ポリエチレンの粉末)を圧縮する。このときの圧力は50N/cm2以上15,000N/cm2以下である。好ましくは100N/cm2以上、8,000N/cm2以下、更に好ましくは、400N/cm2以上、6,000N/cm2以下である。圧縮時の温度は、100℃以上145℃以下、好ましくは110℃以上、142℃以下、更に好ましくは120℃以上、140℃以下である。圧力が50N/cm2を下回る又は圧縮時の温度が100℃より低い温度の場合、ポリマー粒子がつぶれるだけで、ポリマー粒子間におけるポリエチレン分子鎖間の絡み合いがほとんど生じないため、ポリマー粒子間の接着が弱くなり好ましくない。また、圧力が15,000N/cm2を超えるとポリエチレン分子鎖の切断が生じるため、圧縮することにより得られたポリエチレンの引張強度の低下のみならず、圧縮装置が大掛かりなものとなり、生産性の観点からも好ましくない。圧縮温度が145℃を超えるとポリエチレン分子鎖間の絡み合いが大きくなり、後述の圧延工程及び延伸工程で高倍率に延伸することができないため好ましくない。
圧縮工程における圧縮時間は0.5秒以上40分以下、好ましくは、5秒以上15分以下、更に好ましくは、10秒以上10分以下である。圧縮時間が0.5秒を下回る場合、ポリマー粒子間で剥離が生じ好ましくない。他方、圧縮時間が40分を超えると、得られたポリエチレン中のポリエチレン分子鎖が破断し、結果として分子量の低下による引張強度の低下が生じるため好ましくない。
また、延伸工程の最後段における延伸倍率は0.85倍以上6.0倍以下が好ましく、より好ましくは0.90倍以上4.0倍以下、さらに好ましくは0.95倍以上3.0倍以下である。最後段における延伸倍率が0.85倍を下回る場合、該工程におけるテープ及びスプリットヤーンの弛みが生じ、張力が不安定となり好ましくない。他方、最後段における延伸倍率が6.0倍を超えると、張力が高過ぎることによる破断が生じるため好ましくない。
このとき延伸工程の最後段の時間(最後段で延伸する際の熱処理時間)は0.01秒以上30分以下が好ましい。好ましくは、0.02秒以上、20分以下であり、更に好ましくは0.04秒以上、10分以下である。0.01秒よりも短い場合、熱処理を十分に行なうことができず、所望の貯蔵弾性率の保持率や熱収縮率を得ることができず好ましくない。また、30分を超えると熱を与える時間が長すぎるため、引張強度又は初期弾性率が低下するため、好ましくない。
また、最後段においてポリエチレンにかける張力は、15cN/dtex以下が好ましく、より好ましくは5cN/dtex以下、更に好ましくは1cN/dtex以下である。最後段で、ポリエチレンの結晶分散温度よりも低い温度で熱処理した場合、ポリエチレン内部の残留応力が十分に除去できない。最後段での熱処理時の加熱方法は特に拘らない。公知な手法である、例えばホットローラー、輻射パネル、スチームジェット、ホットピン等が推奨されるが、これらに限定されるものではない。
巻取り工程における巻取り温度は60℃以下であることが好ましい。より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下である。60℃よりも高温であると、ポリエチレンの結晶分散温度に近い温度となるため、得られる製品の内部に残留応力が生じやすくなり、寸法変化や力学物性変化が製品化後に生じやすくなるため好ましくない。また、製品の使用環境温度として想定される室温付近からポリエチレンの結晶分散温度付近の温度領域での熱収縮応力が高くなり、環境変化によって力学物性変化や寸法変化が発生しやすく、更には、製品加工条件や最終製品の使用温度範囲が限定される等の制約が生じやすくなるため、好ましくない。
切断工程において、例えば、巻取り工程により得られたポリエチレンテープをスプリッターを通すことによりポリエチレンスプリットヤーンを得ることができる。
また、ポリエチレンテープ又はポリエチレンスプリットヤーンを含む組紐、撚糸、織編物、ポリエチレンテープを1mm以上10cm以下にカットしたカットテープ、ポリエチレンスプリットヤーンから得られるカットファイバーなども製造することができる。なお、本明細書においてカットファイバーとは、ポリエチレンスプリットヤーンを1mm以上10cm以下にカットしたものを指す。
上記の用途は、力学物性の保持と同時に、目的に応じて多様な色目、あるいは意匠性を求められることがある。従来、無機顔料又は有機顔料を含有する樹脂を被覆する後加工が施されることが多かった(例えば特開2004−308047号公報を参照)が、本発明に係るポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンを用いることによって、素材本来の風合いを損なうことなく利用することが可能となる。
温度135℃のデカリンにてウベローデ型毛細粘度管を用いて、種々の希薄溶液の比粘度を測定した。希薄溶液粘度の濃度に対するプロットから最小2乗近似で得られる直線の原点への外挿点より極限粘度を決定した。測定に際し、サンプルを約5mm長の長さに分割又は切断し、ポリマーに対して1質量%の酸化防止剤(エーピーアイコーポレーション社製、「ヨシノックス(登録商標) BHT」)を添加し、135℃で4時間攪拌溶解して測定溶液を調製した。
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及びMw/Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては、「GPC 150C ALC/GPC」(Waters製)を用い、カラムとしては「GPC UT802.5」(SHODEX製)を1本、「UT806M」(SHODEX製)を2本用い、検出器として示差屈折率計(RI検出器)を用いて測定した。測定溶媒は、o−ジクロロベンゼンを使用し、カラム温度を145℃とした。サンプル濃度は1.0mg/mlとし、200マイクロリットル注入して測定した。分子量の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により分子量既知のポリスチレンサンプルを用いて作成されている。
万能試験機(株式会社オリエンテック製、「テンシロン万能材料試験機 RTF−1310」を用い、サンプル長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分の条件で歪−応力曲線を雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で測定した。破断点での応力と伸びから引張強度を、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から初期弾性率を計算して求めた。この時、測定時にサンプルに印加する初荷重を繊維10000m当りの質量(g)の1/10とした。なお、引張強度及び初期弾性率は10回の測定値の平均値を使用した。
サンプルを70cmにカットし、両端より各々10cmの位置に、即ちサンプル長さ50cmがわかるように印をつけた。次に、サンプルに荷重が印加されないようにジグにぶら下げた状態で、熱風循環型の加熱炉を用いて、温度100℃で30分間加熱した。その後、加熱炉よりサンプルを取り出し、室温まで十分に徐冷した後に、最初にサンプルに印をつけた位置の長さを計測した。熱収縮率は以下の式より求めた。なお、熱収縮率は2回の測定値の平均値を使用した。
熱収縮率(%)=100×(加熱前におけるサンプルの長さ−加熱後におけるサンプルの長さ)/(加熱前におけるサンプルの長さ)
測定には、熱応力歪測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、「TMA/SS120C」)を用いた。テープの場合、長さ20mmで幅を2mm、スプリットヤーンの場合、長さ20mmで繊度が100dtexになるようにサンプルを準備し、初荷重0.01764cN/dtex負荷し、昇温速度20℃/分で昇温して、最大熱収縮応力、並びに50℃及び80℃における熱収縮応力を測定した。
100℃及び30℃における貯蔵弾性率の測定には、固体粘弾性測定装置(T.A.インスツルメント社製、「DMA Q800」)を用いた。測定に際し、テープ及びスプリットヤーンのサンプルと装置チャックとの間での滑りや単糸のバラケが発生しないように、サンプル両端を接着剤と両面テープを用いて厚紙で挟み、サンプルを挟むチャック間の距離を10mm、測定サンプル幅をサンプル10,000mのときの質量が100gとなるように調整した。これにより測定においてサンプルと装置チャック間に厚紙が存在することにより、装置チャックでの滑りや単糸のバラケを抑制することが可能となる。測定開始温度を−10℃、測定終了温度を140℃、昇温速度を1.0℃/minとした。歪み量は0.04%とし、測定開始時の初荷重は0.05cN/dtexとした。また、測定周波数は11Hzとした。測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。このとき貯蔵弾性率の保持率は以下の式より求めた。
貯蔵弾性率の保持率(%)=100×[(100℃における貯蔵弾性率)/(30℃における貯蔵弾性率)]
上記(6)同様に、固体粘弾性測定装置(T.A.インスツルメント社製、「DMA Q800」)を用いてデータを測定し、測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。測定開始温度を−140℃、測定終了温度を140℃、昇温速度を1.0℃/minとした。歪み量を0.04%とし、測定開始時の初荷重0.05cN/dtexとした。また、測定周波数を11Hzとした。損失弾性率を計算し、温度分散を低温側より求め、損失弾性率の値を対数で縦軸に取り、横軸を温度でプロットし、最も高温側に現れるピーク値を結晶分散温度とした。
サンプル中の残留溶剤濃度の測定には、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製)を用いた。サンプル10mgをガスクロマトグラフィー注入口のガラスインサートにセットした。注入口を溶剤の沸点以上に加熱し、加熱により揮発した溶剤を窒素パージでカラムに導入した。カラム温度を40℃に設定し、溶剤を5分間トラップさせた。次に、カラム温度を80℃まで昇温させた後に測定を開始した。得られたピークより、残留溶剤濃度を求めた。
示差走査熱量計(T.A.インスツルメント社製、「DSC測定装置」)を用いてデータを測定し、測定したデータの解析には、「T.A.Universal Analysis」(T.A.インスツルメント社製)を用いた。サンプルを5mg以下に切断し、アルミニウムパンに約2mg充填・封入した。同様の空のアルミニウムパンをリファレンスとした。測定は、不活性ガス下、50℃から200℃の温度範囲で、昇温速度を約10℃/minとした。得られた昇温DSC曲線のベースラインを補正し、ピーク面積をサンプル質量で割り返して測定融解熱量を算出し、下記の式より結晶化度を求めた。
結晶化度(%)=100×(測定融解熱量(J/g))/(293(J/g))
結晶成分の比率は、固体高分解能13C−NMRにより求めた。具体的には、「AVANCE400WB」(ブルカー・バイオスピン社製)により室温で測定した。磁場強度及びスピン速度は、それぞれ9.4Tと4kHzで測定した。測定パルスはDipolar decoupling(DD)/MASを用いた。サンプルを短冊状に切断して、ローターに充填した。DD/MASスペクトルは待ち時間を4300秒としてシングルパルス法(DD/MAS法)で、全成分を反映するスペクトルを測定した。低磁場側から単斜晶、斜方晶、非晶成分として波形分離を行った。単斜晶、斜方晶、非晶成分、各々のピークの面積比より比率を求めた。
極限粘度14dL/g、重量平均分子量1,500,000、Mw/Mnが1.9であり、超高分子量ホモポリエチレン粉末を121℃に加熱し、550N/cm2で9分間圧縮成形した。超高分子量ホモポリエチレン粉末は、特開2005−29775号公報に記載の方法で製造されている。次に、得られた成形体を表面温度140℃に調整された1m/minの上下同一速度で反対方向に回転する一対のロール間に供給し、4倍に圧延してフィルムを得た。その後、得られたフィルムをスリッターを通すことによりテープ状とし、加熱ローラー間で145℃で2.5倍延伸した(1段目延伸)。次に、151℃で2.5倍延伸することにより延伸テープを得た(2段目延伸)。続いて、得られた延伸テープを、152℃、1.5cN/dtexの張力、1.1倍延伸の条件下で2分間加熱処理を行った(最後段延伸)。圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間は合計で19分であった。その後、28℃で3.2cN/dtexの張力で巻き取り、幅5mm、厚み60μmのポリエチレンテープを得た。次に得られたポリエチレンテープをスプリッター(6角棒のエッジに32山/インチの突起を設けたもの)を通すことによりポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性及び評価結果を表1に示す。
実施例1において、最後段延伸における延伸倍率を1.8倍、加熱処理の時間を0.06分、張力を3.0cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、最後段延伸における延伸温度を154℃、加熱処理の時間を4.0分、張力を1.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、2段目延伸における延伸倍率を3.0倍、最後段延伸における張力を3.0cN/dtex、圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間を15分、巻取り工程における巻取り温度を35℃、巻取り張力を1.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、極限粘度18dL/g、重量平均分子量2,400,000、Mw/Mnが4.5である超高分子量ポリエチレン粉末を用い、132℃に加熱し、650N/cm2で圧縮成形し、圧延工程における圧延倍率を2.5倍、1段目延伸における延伸倍率を3.0倍、最後段延伸における張力を3.0cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にして幅8mm、厚み60μmのポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、最後段延伸における延伸温度を149℃、延伸倍率を1.5倍、加熱処理の時間を0.005秒、張力を16.6cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、巻取り工程における巻取り温度を32℃、巻取り張力を5.3cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、極限粘度2.2dL/g、重量平均分子量150,000、Mw/Mnが2.9である高密度高分子量ポリエチレン粉末を用い、圧延工程における圧延倍率を2.5倍、1段目延伸における延伸倍率を3.0倍とし、最後段延伸における延伸時間を0.005秒とし、巻取り張力を5.2cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
実施例1において、最後段延伸における延伸時間を32分間とし、圧延開始から最後段延伸終了までに要した時間を48分、巻取り工程における巻取り張力を2.1cN/dtexと変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテープを得た。また得られたポリエチレンテープを実施例1と同様にしてポリエチレンスプリットヤーンを得た。得られたポリエチレンテープ及びポリエチレンスプリットヤーンの物性、評価結果を表1に示す。
Claims (21)
- 極限粘度[η]が8.0dL/g以上32.0dL/g以下であり、繰り返し単位が実質的にエチレン鎖であるポリエチレンを含んでおり、TMA(機械熱分析)測定における最大熱収縮応力が2.0cN/dtex以下であり、100℃における長手方向の熱収縮率が5.0%以下であることを特徴とするポリエチレンテープ。
- TMA(機械熱分析)測定における50℃の熱収縮応力が0.20cN/dtex以下で、80℃における熱収縮応力が0.50cN/dtex以下である請求項1に記載のポリエチレンテープ。
- ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が490,000〜6,200,000であり、重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下である請求項1又は2に記載のポリエチレンテープ。
- 引張強度が0.8GPa以上、初期弾性率が20GPa以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレンテープ。
- テープ中の残留溶剤濃度が1000ppm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレンテープ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンテープを含むことを特徴とする組紐。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンテープを含むことを特徴とする撚糸。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンテープを含むことを特徴とする織編物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレンテープを1mm以上10cm以下にカットしたことを特徴とするカットテープ。
- 極限粘度[η]が8.0dL/g以上32.0dL/g以下であり、繰り返し単位が実質的にエチレン鎖であるポリエチレンを100℃以上145℃以下の温度で圧縮する圧縮工程と、
圧縮工程で圧縮されたポリエチレンを120℃以上145℃以下の温度で圧延する圧延工程と、
圧延工程で圧延されたポリエチレンを20℃以上160℃以下の温度範囲で1段以上延伸した後に、80℃以上170℃以下の温度範囲で、0.85倍以上6.0倍以下の延伸倍率で、0.01秒以上30分以下で最後段の延伸をする延伸工程と、
延伸工程で延伸されたポリエチレンを60℃以下の温度に冷却した状態で、5.0cN/dtex以下の巻取り張力で巻取る巻取り工程とを備える
ことを特徴とするポリエチレンテープの製造方法。 - 極限粘度[η]が8.0dL/g以上32.0dL/g以下であり、繰り返し単位が実質的にエチレン鎖からなるポリエチレンを含んでおり、TMA(機械熱分析)測定における最大熱収縮応力が2.0cN/dtex以下であり、100℃における熱収縮率が5.0%以下であることを特徴とするポリエチレンスプリットヤーン。
- TMA(機械熱分析)測定における50℃の熱収縮応力が0.2cN/dtex以下、80℃における熱収縮応力が0.5cN/dtex以下である請求項11に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
- 単糸繊度が0.5dtex以上1000dtex以下の単糸を含む請求項11又は12に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
- ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が490,000〜6,200,000であり、重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)が6.0以下である請求項11〜13のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
- 引張強度が8cN/dtex以上、初期弾性率が200cN/dtex以上である請求項11〜14のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
- スプリットヤーン中の残留溶剤濃度が1000ppm以下である請求項11〜15のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーン。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーンを含むことを特徴とする組紐。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーンを含むことを特徴とする撚糸。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーンを含むことを特徴とする織編物。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載のポリエチレンスプリットヤーンから得られることを特徴とするカットファイバー。
- 請求項10に記載の製造方法で製造されたポリエチレンテープを切断する切断工程を備えることを特徴とするポリエチレンスプリットヤーンの製造方法。
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