JP6060529B2 - 炭素繊維およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、炭素繊維およびその製造方法に関する。
従来、アクリル繊維を前駆体とする炭素繊維は、航空宇宙用途を始め、スポーツ、レジャー用途等の高性能複合材料として広い範囲で利用されており、他の繊維に比べて優れた力学的性質を示す。また、炭素繊維は通常グラファイト網面構造を有しており、そのグラファイト網面構造を形成しているグラフェンの面内抵抗の値は、銅と比べて10分の1以下である。このため、繊維の長手方向(繊維軸方向)の電気伝導性(体積固有抵抗値)が良く、炭素繊維強化複合材料(CFRP)を芯線に用いた送電線は鉄芯を用いた電線に比べて2倍の電力を送電することが可能である。よって、今後は高効率送電線としての需要がますます増大すると予想される。
炭素繊維の体積抵抗率を低くしてCFRPの電気伝導性を向上するためには、グラファイト網面構造を発達させることが重要である。グラファイト網面構造を発達させるにはいくつかの方法があるが、炭素繊維を作製する際の焼成温度を高くする方法や、焼成時に高テンションを付与する方法等が一般的である。しかしいずれの場合も、グラファイト網面構造の発達にあわせてストランド弾性率も増大する傾向があるため、炭素繊維の柔軟性が低下する傾向があり、結果的にCFRPの加工性が低下することがある。
特許文献1では炭素繊維を600〜1500℃の液体ガリウム(Ga)中に連続的に供給して浸漬することでグラフェン同士が接合された高導電性炭素繊維が得られることを開示している。
特許文献2では、体積抵抗率が9.0×10-4と低い場合は、ストランド弾性率が54トン/mm2と高い値を示しており、ストランド弾性率が24トン/mm2と低い場合は、体積抵抗率が1.5×10-3と高くなっている。
特開2009−179915号公報 特開平8−310806号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、電気伝導性向上に伴うストランド弾性率の向上はないと考えられるが、レアメタルであるGaを用いているため、炭素繊維の工業的な製造に適用することは難しいと思われる。
特許文献2では、体積抵抗率、ストランド弾性率がともに低い、電気伝導性に優れ、柔軟性を有する炭素繊維は得られていない。
本発明の目的は、工業的な製造に適用でき、グラファイト網面構造が発達しているために導電性に優れ、さらに、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れる炭素繊維が得られる製造方法及びその炭素繊維を提供することにある。
前記目的は、以下の本発明〔1〕〜〔3〕によって果たされる。
〔1〕単繊維繊度が2.3dtex以上5.0dtex以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維を、温度が200℃以上300℃以下の酸化性雰囲気により加熱し、該炭素繊維前駆体アクリル繊維の密度を1.22g/cm3以上1.31g/cm3以下とする工程1と、
工程1より得られる繊維を、表面温度が250℃以上400℃以下のロールに接触させて加熱し、密度を1.37g/cm3以上1.43g/cm3以下とする工程2と、
得られた繊維を、温度が800℃以上1600℃以下の不活性雰囲気により加熱する工程3と、
を含む炭素繊維の製造方法。
〔2〕単繊維繊度が1.0dtex以上2.5dtex以下、ストランド弾性率(TM)が235GPa以下であり、体積抵抗率が1.7×10-3Ω・cm以下であり、炭素繊維を広角X線回折測定により観測したとき、2θが24°以上26°以下の範囲に現れるグラファイト結晶の(002)面に相当する回折像を、該炭素繊維の長手方向に対して垂直な方向に一次元化したプロファイルにおいて、該プロファイルから得られる回折ピークの半値全幅によって求められるグラファイト網面サイズ(Lc)が、1.7nm以上である炭素繊維。
〔3〕単繊維繊度が1.15dtex以上である〔2〕に記載の炭素繊維。
本発明により、工業的な製造に適用でき、グラファイト網面構造が発達しているために導電性が優れ、さらに、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れる炭素繊維が得られる製造方法及びその炭素繊維を得ることができる。
体積抵抗率測定装置の概略図である。
CFRPの電気伝導性の向上を目的として、グラファイト網面構造を発達させる為に、炭素繊維を作製する際の焼成温度を高くする方法や、焼成時に高テンションを付与する方法等の一般的な方法を適用した場合、上述したように以下の現象が生じることが予想される。即ち、グラファイト網面構造の発達にあわせてストランド弾性率も増大し、これに伴って炭素繊維の柔軟性が低下してCFRPの加工性が低下することが予想される。なお、グラファイト網面構造とは、炭素(C)の平面六員環によって形成される構造(例えば、複数の炭素六員環が同一平面上で連結した構造(グラフェン))を意味する。また、グラファイト網面構造が発達するとは、グラファイト網面構造を構成する炭素平面六員環の数が多くなり、このグラファイト網面構造が二次元(平面)的に大きくなることを意味する。なお、炭素繊維は、このグラファイト網面構造が積層した構造を有することができる。
そこで、本発明者らは鋭意検討を行い、特定の炭素繊維前駆体アクリル繊維に対して、酸化性雰囲気による間接加熱と、ロールによる直接加熱とを行う2段階の耐炎化処理を行い、更に炭素化処理を行うことによって、以下の性質を有する炭素繊維が得られることを見出した。この炭素繊維は、工業的な製造に適用でき、グラファイト網面が発達しているために導電性に優れ、さらに、低弾性率であるために柔軟性や加工性にも優れる。
〔炭素繊維〕
本発明の炭素繊維は、単繊維繊度が1.0dtex以上2.5dtex以下であり、ストランド弾性率(TM)が235GPa以下であり、体積抵抗率が1.7×10-3Ω・cm以下である。また、本発明の炭素繊維は、広角X線回折測定により観測される2θが25°近傍のグラファイト結晶の(002)面に相当する回折像を炭素繊維の長手方向に対して垂直な方向(赤道方向)に一次元化したプロファイルにおいて、このプロファイルから得られる回折ピークの半値全幅により求められるグラファイト網面サイズ(Lc)が1.7nm以上である。
(炭素繊維のストランド弾性率:TM)
炭素繊維のストランド弾性率が、235GPa以下であれば、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れる。また、ストランド弾性率は、230GPa以下が好ましく、220GPa以下がさらに好ましく、これにより炭素繊維の加工性をより向上させることができる。なお、炭素繊維の加工性は、低弾性率であればあるほど向上する傾向がある。さらに、ストランド弾性率は、ある程度の剛性を確保することが望ましいことから180GPa以上が好ましく、200GPa以上がさらに好ましい。
なお、炭素繊維のストランド弾性率は、例えば焼成工程(例えば後述する工程3)における処理温度によって調整することができる。
・ストランド弾性率の測定方法
炭素繊維のストランド弾性率は、JIS R−7601記載の方法で測定することができる。ストランド弾性率の測定に用いる試料(ストランド)は、以下の方法で作製することができる。まず、エポキシ樹脂である油化シェル社製「商品名:エピコート828」(100質量部)、無水メチルナジック酸(90質量部)、ジベンジルメチルアミン(2質量部)及びアセトン(50質量部)を混合した含浸液を調製する。続いて、測定する炭素繊維に、この含浸液を含浸後、50℃で1時間加熱し、次に1時間かけて130℃まで昇温させ、さらに130℃で2時間加熱することによって、この含浸液を硬化させ、ストランドを作製する。
(炭素繊維の体積抵抗率)
炭素繊維の体積抵抗率が、1.7×10-3Ω・cm以下であれば、導電性に優れる。また、体積抵抗率は、1.5×10-3Ω・cm以下が好ましく、これにより、炭素繊維の導電性をより向上させることができる。なお、炭素繊維の体積抵抗率は低ければ低いほど、炭素繊維の導電性は向上する傾向にある。このため、炭素繊維の体積抵抗率は低ければ低いほど好ましい。
なお、炭素繊維の体積抵抗率は、例えば、炭素繊維の表面状態やフィラメント(単繊維)の収束性などを制御することによって調整することができる。
・体積抵抗率の測定
炭素繊維の体積抵抗率Sは、JIS R7609に準拠した方法で測定することができる。なお、炭素繊維の体積抵抗率は、多数の炭素単繊維から構成されるトウ(CFトウ)を用いて測定することができる。このトウを構成するフィラメント(炭素単繊維)数は例えば1000〜50000本とすることができる。このトウの体積抵抗率測定装置の概略を図1(a)及び(b)に示す。なお、図1(b)は、図1(a)に示す体積抵抗率測定装置の電極部分の拡大図である。具体的には、CFトウ(試験片)を銅板(電極)に挟み、締付けネジでしっかりと固定して測定を実施する。長さ計より測定される試験長Lは50〜2000mmの範囲とする。なお、本発明では、50、130、210(mm)の3点の試験長で、抵抗測定器を用いて体積抵抗率の測定を行い、各試験長に対して3回ずつ(n=3で)測定する。なお、JIS法によると試験長は1点のみで良いが、本発明では、最小二乗法でフィッティングを行うため、試験長を3点取って行う。また、トウの抵抗値は2端子法により測定する。その際、試験片、締付けネジ、端子、絶縁板及び電極の配置は、図1(b)に示す配置とする。
・体積抵抗率の算出方法
※最小二乗法によるフィッティング
まず、各試験長Lで測定した抵抗値R(各試験長に対して3つのR)を、以下の式(1)にそれぞれ代入し、各試験長Lに対して体積抵抗率S(L)を3つ求める。
Figure 0006060529
S(L):体積抵抗率(Ω・m)
R :実測した抵抗値(Ω)
L :試験長(mm)
T :トウの目付け(g/m)
ρ:炭素繊維の密度(g/cm3)。
次に、各試験長に対して求められた3つの体積抵抗率S(L)の平均値S(L)avを求める。そして、「試験長L」をX軸に取り、「平均の体積抵抗率S(L)avと試験長Lの積」をY軸に取ってこの傾きを、炭素繊維の体積抵抗率Sとする。
なお、S(L)は試験長に依存して変化する。これは試料以外の抵抗を含んでいるためだと考えられる。このため、上記測定方法及び算出方法によれば、試験長に依存しない炭素繊維の真の体積抵抗率Sを求めることができる。
(炭素繊維のグラファイト網面サイズ:Lc)
Lcは、炭素繊維の結晶の大きさを表すパラメータの一つであり、値が大きいほど結晶性が高いことを意味し、電気伝導性は向上する。Lcは、炭素繊維を作製する際の焼成温度が高くなるにつれて大きくなることが知られているが、焼成温度を高くする方法では、上述したようにCFRPの加工性が低下することが予想される。しかしながら、例えば、上述した2段階の耐炎化処理を特徴とする本発明の製造方法を用いることによって、電気導電性、柔軟性及び加工性に優れる炭素繊維を製造することができる。
炭素繊維のLcが、1.7nm以上であれば体積抵抗率を容易に十分小さくすることができる。また、Lcは、体積抵抗率の観点から、1.8nm以上が好ましい。さらに、Lcは、加工性の観点から2.5nm以下が好ましく、2.0nm以下がより好ましい。
なお、炭素繊維のLcは、例えば焼成温度や熱処理時の張力などによって調整することができる。
・グラファイト網面サイズの測定
炭素繊維のグラファイト網面サイズは、以下の方法で求めることができる。まず、測定する炭素繊維を50mm長に切断し、これを12mg精秤採取し、繊維軸が正確に平行になるように引き揃えた後、幅1mmの厚さが均一な繊維束に整える。この繊維束を構成する各繊維の両端に、酢酸ビニルポリマーとメタノールとの混合溶液(質量比(酢酸ビニルポリマー:メタノール)=1:2)を含浸させて形態が崩れないように固定したものを被測定用のサンプル繊維束とする。
そして、このサンプル繊維束について、一般的な結晶配向度の測定の場合と同様にして、広角X線回折の2θ方向の測定を行う。具体的には、このサンプル繊維束を、広角X線回折試料台に固定し、繊維の長手方向に対して垂直な方向(繊維径方向:赤道方向)にスキャンを行い、透過法によって回折強度を測定する。そして、観測される炭素繊維の(002)反射、即ち、炭素繊維中のグラファイト結晶の(002)面に相当する2θが25°近傍の回折像を赤道方向に一次元化したプロファイル(一次元回折強度プロファイル、縦軸:回折強度、横軸:2θ(単位:°))を得る。なお、25°近傍とは、具体的に24°以上26°以下を意味する。次に、このプロファイルから得られる回折ピーク(後述するKα1)の半値全幅を求め、この半値全幅よりLcを求める。具体的には、上記プロファイルにおける回折強度ピークを、20°から30°の範囲で切り出し、平滑化、バックグラウンド除去、Kα1と、Kα2との分離を施した後、Kα1の半値全幅βE(単位:°)を読み取りrad単位に変換する。そして、この半値全幅βEを以下の数式(2)に代入し、グラファイト網面サイズLc(nm)を求める。なお、半値全幅とは、バックグラウンド除去後の回折ピークについて、回折強度の最低点と最高点との丁度中間の値を取る箇所を結んだときのピーク幅のことを意味する。
Figure 0006060529
式中、Kはシェラー定数0.9を表し、λ(nm)は用いるX線の波長(CuKα線の場合は、0.15418nm)を表し、θはBraggの回折角を表す。また、β0は真の半値全幅を表し、ここで、β0は、βEからβ1を引いた値(β0=βE−β1)であり、βEは見かけの半値全幅(上記Kα1の半値全幅)を表し、β1は装置定数を表す。後述するX線発生装置を用いる場合は、β1は1.05×10-2radとなる。
尚、本発明においては、測定対象の炭素繊維の長手方向における3箇所からサンプル繊維束をそれぞれ作製し、この3つのサンプル繊維束についてグラファイト網面サイズを求め、それらの平均値Mを、炭素繊維のグラファイト網面サイズとする。なお、各サンプル繊維束を構成するフィラメントの数が多すぎて、一度に測定できない場合は、各サンプル繊維束を複数個(h個)に分割し、このh個の束についてそれぞれ上記の方法でグラファイト網面サイズを測定する。その際、h個の各束を構成するフィラメントの数が2,000〜3,000本となるように各サンプル繊維束を分割する。そして、各サンプル繊維束について、得られたh個の束のグラファイト網面サイズの平均値(m1、m2およびm3)を求め、さらにこれらの値から平均値Mを算出する。
なお、X線源としては、リガク社製のCuKα線(Niフィルター使用)X線発生装置(商品名:TTR−III、回転対陰極型X線発生装置)を用い、シンチレーションカウンターにより検出する。出力は50kV−300mAとする。さらに、半値全幅の解析には、リガク社製の解析ソフト「積分強度計算」を用いる。
(炭素繊維の単繊維繊度)
炭素繊維の単繊維繊度は、生産性向上の観点から1.0dtex以上とし、好ましくは1.1dtex以上であり、より好ましくは1.15dtex以上である。また、炭素繊維の単繊維繊度は、引張り強度の低下を抑制するという観点から、2.5dtex以下とし、好ましくは2.0dtex以下である。なお、dtexとは、単位長さ10,000m当たりの質量(g)を意味する。炭素繊維の単繊維繊度は、例えばドープ原液(紡糸原液)の吐出速度や延伸倍率を変えることによって調整することができる。また、炭素繊維の単繊維繊度は以下の方法により測定することができる。即ち、あらかじめフィラメント数が分かっている繊維束を1m取り出してその質量を計測し、その質量をフィラメント数で割ることで単繊維繊度を求める。
〔炭素繊維の製造方法〕
本発明の炭素繊維は、例えば、以下の工程1〜3を含む本発明の製造方法によって製造することができる。
単繊維繊度が2.3dtex以上5.0dtex以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維を、温度が200℃以上300℃以下の酸化性雰囲気により加熱し、該炭素繊維前駆体アクリル繊維の密度を1.22g/cm3以上1.31g/cm3以下とする工程1(第1の耐炎化工程)。
工程1より得られる繊維を、表面温度が250℃以上400℃以下のロールに接触させて加熱し、密度を1.37g/cm3以上1.43g/cm3以下とする工程2(第2の耐炎化工程)。
得られた繊維を、温度が800℃以上1600℃以下の不活性雰囲気により加熱する工程3(炭素化工程)。
なお、本発明では、各繊維(前駆体アクリル繊維や、2段階の耐炎化処理より得られる耐炎化繊維や、炭素化処理より得られる炭素繊維)を繊維束として取り扱うことができる。これらの繊維束は、単繊維(フィラメント)を多数束ねて作製することができる。繊維束を構成するフィラメント数は、用途によって適宜設定できる。ただし品質安定性の観点から100,000本以下とすることが好ましく、70,000本以下とすることがより好ましく、40,000本以下がさらに好ましい。
なお、炭素繊維を製造する際、各工程(工程1〜3)を通して、繊維束を構成するフィラメント数は変化しない。
・ポリアクリロニトリル系重合体
本発明の製造方法では、炭素繊維前駆体アクリル繊維として、ポリアクリロニトリル系重合体からなる特定の単繊維繊度の繊維を用いる。このポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル単位を含めば良く、アクリロニトリルのホモポリマー(単独重合体)であっても良いし、アクリロニトリルと、他のモノマーとのコポリマー(共重合体)であっても良い。
ポリアクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル単位の含有割合は、炭素化を良好に行なう観点から、90モル%以上であることが好ましい。また、この重合体中のアクリロニトリル単位の含有割合は、炭素繊維にした時の共重合成分に起因する欠陥点を少なくし、炭素繊維の品位ならびに性能を向上させる観点から、95モル%以上であることがより好ましい。なお、重合体中の各モノマー単位の含有割合は、NMR測定などにより測定することができる。
アクリロニトリルと共重合させる他のモノマー(共重合成分モノマー)としては、特に制限はないが、以下のモノマーを例示することができる。即ち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ウラリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどの不飽和モノマー類;p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩などが例示できる。
この中でも、耐炎化工程(例えば工程1)における環化反応を促進する観点から、共重合成分モノマーとして、カルボン酸基を有するモノマーやアクリルアミド系モノマーを用いることが好ましい。なお、この環化反応によって、アクリドン環やナフチリジン環が形成される。また、耐炎化反応において、酸素の透過性を良くする観点からは、共重合成分モノマーとして、嵩高いモノマーを用いることが好ましい。
これらの中でも、酸素透過性の向上に十分な嵩高さを有していること、ヒドロキシエチル基が脱離したときの質量の減少が少ないこと、工業的に入手しやすいことなどの点で、共重合成分モノマーとして、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることがより好ましい。
・ポリアクリロニトリル系重合体の製造方法
ポリアクリロニトリル系重合体の製造方法は、特に限定されず、溶液重合、懸濁重合など公知の方法を採用することができる。また、重合開始剤は、特に限定されず、アゾ系化合物、有機過酸化物、また、過硫酸/亜硫酸や塩素酸/亜硫酸のアンモニウム塩などのレドックス触媒を用いることができる。
懸濁重合法は、例えば、以下の手順で行うことができる。即ち、まず、オーバーフロー式の重合容器内に各モノマー、蒸留水、過硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム及び硫酸を連続的に一定量供給し、一定の温度に維持しながら攪拌を続ける。そして、オーバーフローしてきた重合体スラリーを洗浄、乾燥することによって、ポリアクリロニトリル系重合体を得ることができる。
なお、ポリアクリロニトリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくはポリスチレン換算で50,000以上、より好ましくは100,000以上である。ポリアクリロニトリル系重合体の重量平均分子量が50,000以上であれば、この重合体の段階で分子鎖が規則的に配向した部分を容易に存在させることができ、炭素繊維にした際に、適度な弾性率を発現するグラファイト網面構造を容易に形成することができる。また、ポリアクリロニトリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは700,000以下である。ポリアクリロニトリル系重合体の重量分子量が1,000,000以下であれば、分子量が非常に大きくなって分子鎖同士の絡み合いが多くなることを容易に防ぐことができ、紡糸工程において延伸を容易に行うことができる。
・炭素繊維前駆体アクリル繊維(炭素繊維用前駆体繊維)
本発明で用いる炭素繊維前駆体アクリル繊維の単繊維繊度は、2.3dtex以上5.0dtex以下とする。前駆体繊維の単繊維繊度が2.3dtex以上であれば、繊維束としたときに絡み合いにくく取り扱いやすい。また、5.0dtex以下であれば、まとまりが良好な前駆体繊維を得ることができ、耐炎化処理を行い易い。
・炭素繊維前駆体アクリル繊維の製造方法
炭素繊維前駆体アクリル繊維は、上記ポリアクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して調製した紡糸原液を紡糸することによって製造することができる。
この紡糸原液は、上述の重合体、好ましくは不純物を除去した前記重合体を溶剤に溶解することによって調製する。この溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液が使用できる。作製する炭素繊維中に金属を含有せず、また、製造工程が簡略化される点で、上記溶剤としては、有機溶剤を用いることが好ましい。その中でも凝固糸及び湿熱延伸糸の緻密性が高いという点で、ジメチルアセトアミドを用いることが好ましい。
紡糸原液中のポリアクリロニトリル系重合体の濃度は、この重合体の重合度にもよるが、紡糸工程上、好ましくは17質量%以上、より好ましくは18質量%以上であり、また、25質量%以下であることが好ましい。
紡糸方法としては、公知の方法を採用でき、具体的には湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などが挙げられる。これらの中でも湿式紡糸法、乾湿式紡糸法が紡糸の生産性の観点、炭素繊維の強度発現性の観点から好ましく用いられる。
上記紡糸原液を、紡糸口金を介して凝固浴中に吐出して紡糸することで、凝固糸を得ることができる。この凝固浴は、ジメチルアセトアミドの濃度が30〜70質量%、温度が20〜50℃のジメチルアセトアミド水溶液を用いることが生産性上好ましい。
紡糸口金のノズル孔の形状は、適宜設定することができ、例えば、円形、楕円形、三角形、Y字、H字などとすることができる。
紡糸原液を紡出して得られた凝固糸に対して、適宜、脱溶剤処理、延伸処理、油剤付着処理、乾燥処理等を行うことにより、炭素繊維前駆体アクリル繊維(アクリル系前駆体繊維)を得ることができる。延伸処理や乾燥処理等の各処理は公知の方法により行うことができる。延伸方法は、例えば、2本のロールに凝固糸を巻きつけ2本のロール間の回転速度を変える方法を用いることができる。延伸時の雰囲気も限定されるものではなく、例えば、紡浴と同種の溶剤を含む水溶液中、熱水中、高圧水蒸気中等から適時選択することができ、さらにこれらの雰囲気を組み合わせて行うことができる。乾燥方法としては、例えば、得られた繊維を加熱されたロールに巻きつけ通過させる方法が例示される。
(工程1:第1の耐炎化工程)
・酸化性雰囲気による加熱処理
上述の前駆体繊維に対して、この前駆体繊維の密度が1.22g/cm3以上1.31g/cm3以下に達するまで、酸化性雰囲気による加熱処理(以下、間接加熱処理と称することもある)を施す。
間接加熱処理により得られる繊維の密度が、1.22g/cm3以上であれば、次の直接加熱の高温に耐えることができ、1.31g/cm3以下であれば、柔軟性を保つことができる。
繊維(例えば、前駆体繊維や耐炎化繊維)の密度は、密度勾配管などにより測定することができる。
なお、酸化性雰囲気とは、酸化性気体を15〜25%(体積濃度)含む混合気体である。酸化性気体としては、二酸化窒素、二酸化硫黄、酸素が例示され、これらを単独、または混合して用いても良い。酸化性気体の体積濃度が15%以上であれば、熱安定化構造への変化の割合が少なくなることを容易に防ぐことができる。なお、経済性の観点から、酸化性雰囲気は、空気であることが望ましい。
酸化性雰囲気による加熱処理方法としては、例えば、前駆体繊維を過熱空気が吹き込む炉に通過させる方法を用いることができる。
間接加熱処理における酸化性雰囲気の温度は、200〜300℃とし、好ましくは230〜270℃である。温度が、200℃以上であれば、耐炎化反応を容易に起こすことができ、300℃以下であれば、環化反応に伴う暴走反応を容易に防ぐことができる。
また、酸化による急激な発熱を抑制するために、この温度範囲で、段階的に昇温加熱することが好ましい。
間接加熱処理における加熱時間は適宜設定することができ、前駆体繊維が加熱炉内を通過する時間を調整することで調節できる。具体的には、加熱時間は30分以上50分以下であることが好ましい。30分以上であれば、前駆体繊維内部への充分な酸素の拡散を容易に得ることができ、熱安定化構造が少なくなることを容易に防ぐことができる。50分以下であれば、間接加熱処理による熱安定化構造の割合が非常に多くなることを容易に防ぐことができ、この処理の後に行うロール接触による加熱処理の効果を一層大きくすることができる。
(工程2:第2の耐炎化工程)
次に、工程1より得られる繊維に対して、ロール接触による加熱処理(以下、直接加熱処理と称することがある)を施すことによって、密度が1.37g/cm3以上1.43g/cm3以下の耐炎化繊維を得る。
耐炎化繊維の密度が1.37g/cm3以上であれば、次の炭素化工程にて燃えない安定した耐炎化繊維構造となる。また、耐炎化繊維の密度が1.43g/cm3以下であれば、第2の耐炎化工程に時間がかかることを防ぐことができ、経済的に優れる。
また、第2の耐炎化工程後の耐炎化繊維の密度は、1.38〜1.40g/cm3が好ましい。1.38g/cm3以上であれば、炭素化の収率が低下することを容易に防ぐことができる。1.40g/cm3以下であれば、弾性率を容易に低く抑えることができる。
ロール接触による加熱処理は、例えば、以下の方法で行うことができる。即ち、あらかじめ所定の温度に熱しておいたロールに糸(繊維)を導糸することである。また、この直接加熱処理は、酸化性雰囲気中で行うことができる。
なお、直接加熱処理におけるロールの温度(表面温度)は、短時間で耐炎化反応を進行させることが望ましいことから、250℃以上とし、好ましくは300℃以上である。また、このロールの温度は、繊維の暴走反応を防ぐ観点から、400℃以下とし、さらに安全性を高める観点から380℃以下が好ましい。
なお、直接加熱処理において、複数本のロールを併用することもできる。その際、工程1より得られる繊維に接触させる順に、ロール温度を徐々に高く設定することができる。また、工程1より得られる繊維は、この複数本のロールに連続して接触しても良いし、断続的(間欠的)に接触しても良い。
また、直接加熱処理における加熱時間は、コストを安く抑える観点から、合計で0.5分以上2分以下が好ましく、1分以下がより好ましい。なお、直接加熱処理時間が短ければ短い程コストを安く抑えることができる。加熱時間が長いと、弾性率が高くなることがある。
なお、本発明では、直接加熱処理を行うことで、単繊維表面のグラファイト構造を成長させることができるため、弾性率が低いにもかかわらず、体積抵抗率の高い炭素繊維(CF)を得ることができる。
(工程3:炭素化工程)
上記耐炎化繊維を炭素化処理して炭素繊維を得る。炭素化処理条件としては、適宜設定することができるが、例えば、不活性雰囲気下、800℃以上1600℃以下の温度で1.5分以下とすることができる。
不活性雰囲気は特に限定されるものではないが、経済的な観点から窒素を用いることが好ましい。加熱温度が、800℃以上であれば、耐炎化繊維を容易に炭素化することができ、1600℃以下であれば、経済的に好ましい。また、加熱温度は、炭素繊維の引張り強度を向上させる観点から、1000℃以上1500℃以下で炭素化処理することが好ましい。なお、炭素繊維の引張り強度は、高ければ高いほど好ましい。
加熱時間が1.5分以下であれば、弾性率を容易に低く抑えることができ、また、グラファイト成長の観点から、加熱時間は0.5分以上とすることが好ましい。
また、炭素化処理を複数の段階に分けて行うこともでき、上記炭素化処理(炭素化工程)の前に耐炎化繊維を400℃〜700℃の温度で、1〜2分間炭素化処理する前炭素化工程を行うことができる。即ち、工程3に供する「得られた繊維」とは、工程2(第2の耐炎化工程)より得られる繊維であっても良いし、この前炭素化工程より得られる繊維であっても良い。この前炭素化工程を行うことによって、炭素繊維の物性を一層向上させることができる。
[実施例1]
以下のポリアクリル系重合体Aを、ジメチルアセトアミドに溶解して、重合体濃度21質量%、原液温度60℃の紡糸原液を作製した。このポリアクリル系重合体Aは、アクリロニトリル(以下「AN」と略す)単位98.0モル%と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下「HEMA」と略す)単位2.0モル%とからなり、比粘度が0.21である。
この紡糸原液を湿式紡糸法により紡糸して、炭素繊維前駆体アクリル繊維から構成される炭素繊維前駆体アクリル繊維束A(前駆体繊維束A)を得た。具体的には、まず、この紡糸原液を、ジメチルアセトアミドの濃度が45質量%、温度が25℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる凝固浴中に紡出した。その際、ホール数(単繊維数に相当)が24000の紡糸口金を使用した。そして、凝固浴中で凝固させて得た凝固糸を、洗浄延伸及び熱延伸させて、トータルで7.4倍延伸させた前駆体繊維束Aを得た。また、その際、前駆体繊維束Aの単繊維繊度が、2.5dtexになるように吐出量を調節した。
次に、この前駆体繊維束Aを、熱風循環式耐炎化炉にて230℃〜270℃の加熱空気中、伸張率3%で耐炎化処理を30分間行い、耐炎化繊維束Aを得た(工程1)。この際、この耐炎化炉のオーブン温度は、昇温時間30分で、耐炎化繊維束Aを構成する耐炎化繊維aの密度が1.26g/cm3程度になるように調節した。得られた耐炎化繊維aの密度は、1.2594g/cm3であった。
次に、この耐炎化繊維束Aを、酸化性雰囲気(空気)中、270℃、290℃、330℃、360℃に設定した各熱ロールにそれぞれ15秒間連続的に接触させることで、耐炎化繊維束Bを得た(工程2)。得られた耐炎化繊維Bを構成する耐炎化繊維bの密度は、1.3727g/cm3であった。
この耐炎化繊維束Bを、窒素雰囲気下、最高温度650℃、伸張率3.0%にて1分間熱処理(前炭素化処理)し、さらに窒素雰囲気下、最高温度が1350℃の高温熱処理炉にて−4.5%の伸張の下、1分間、炭素化処理して、炭素繊維束を得た(工程3)。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は216GPa、体積抵抗率は1.5×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.77nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.21dtexであった。このように、実施例1では、グラファイト網面が発達し導電性に優れている一方で、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れている炭素繊維が得られた。
[実施例2]
実施例1と同じ前駆体繊維束Aを、熱風循環式耐炎化炉にて230℃〜270℃の加熱空気中、伸張率3%で耐炎化処理を40分間行い、耐炎化繊維束Cを得た(工程1)。耐炎化炉のオーブン温度は昇温時間40分で、耐炎化繊維束Cを構成する耐炎化繊維cの密度が1.29g/cm3程度になるように調節した。得られた耐炎化繊維cの密度は、1.2931g/cm3であった。
次に、この耐炎化繊維束Cを、270℃、330℃、360℃に設定した各熱ロールにそれぞれ20秒間連続的に接触させることで、耐炎化繊維束Dを得た(工程2)。得られた耐炎化繊維束Dを構成する耐炎化繊維dの密度は、1.3873g/cm3であった。
この耐炎化繊維束Dを実施例1と同じ条件で前炭素化処理及び炭素化処理し、炭素繊維束を得た(工程3)。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は230GPa、体積抵抗率は1.6×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.73nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.22dtexであった。このように、実施例2では、グラファイト網面が発達し導電性に優れている一方で、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れている炭素繊維が得られた。
[比較例1]
実施例1と同じ前駆体繊維束Aを、熱風循環式耐炎化炉にて230℃〜270℃の加熱空気中、伸張率3%で耐炎化処理を50分間行い、耐炎化繊維束Eを得た。耐炎化炉のオーブン温度は昇温時間50分で、耐炎化繊維束Eを構成する耐炎化繊維eの密度が1.32g/cm3程度になるように調節した。得られた耐炎化繊維eの密度は、1.3205g/cm3であった。
次に、この耐炎化繊維束Eを、330℃、360℃に設定した各熱ロールにそれぞれ30秒間連続的に接触させることで、耐炎化繊維束Fを得た。得られた耐炎化繊維束Fを構成する耐炎化繊維fの密度は、1.4042g/cm3であった。
この耐炎化繊維束Fを実施例1と同じ条件で前炭素化処理及び炭素化処理し、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は239GPa、体積抵抗率は1.9×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.71nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.28dtexであった。
[比較例2]
実施例1と同じ前駆体繊維束Aを、熱風循環式耐炎化炉にて230℃〜270℃の加熱空気中、伸張率3%で耐炎化処理を70分間行い、耐炎化繊維束Gを得た。耐炎化炉のオーブン温度は昇温時間70分で、耐炎化繊維束Gを構成する耐炎化繊維gの密度が1.35g/cm3程度になるように調節した。得られた耐炎化繊維gの密度は、1.3521g/cm3であった。
次に、この耐炎化繊維束Gを、360℃に設定した熱ロールに60秒間連続的に接触させることで、耐炎化繊維束Hを得た。得られた耐炎化繊維束Hを構成する耐炎化繊維hの密度は、1.4128g/cm3であった。
この耐炎化繊維束Hを実施例1と同じ条件で前炭素化処理及び炭素化処理し、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は247GPa、体積抵抗率は2.0×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.63nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.33dtexであった。
[比較例3]
実施例1と同じ前駆体繊維束Aを、熱風循環式耐炎化炉にて230℃〜270℃の加熱空気中、伸張率3%で耐炎化処理を90分間行い、耐炎化繊維束Iを得た。耐炎化炉のオーブン温度は昇温時間90分で、耐炎化繊維束Iを構成する耐炎化繊維iの密度が1.38g/cm3程度になるように調節した。得られた耐炎化繊維iの密度は、1.3816g/cm3であった。
次に、この耐炎化繊維束Iは熱ロール処理を行わず、実施例1と同じ条件で前炭素化処理及び炭素化処理し、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は240GPa、体積抵抗率は1.8×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.59nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.40dtexであった。
[比較例4]
紡糸口金のホール数を30000に変更し、前駆体繊維束の単繊維繊度を2.0dtexに変更した以外は実施例1と全く同じ条件で、前駆体繊維束Bを得た。
次に、この前駆体繊維束Bを実施例1と全く同じ条件で耐炎化処理、前炭素化処理、及び炭素化処理し、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は246GPa、体積抵抗率は2.1×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.48nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.11dtexであった。
[比較例5]
上記前駆体繊維束Bを実施例2と全く同じ条件で耐炎化処理、前炭素化処理、及び炭素化処理を行い、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は243GPa、体積抵抗率は2.0×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.46nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、1.10dtexであった。
[比較例6]
紡糸口金のホール数を50000に変更し、前駆体繊維束の単繊維繊度を1.2dtexに変更した以外は実施例1と全く同じ条件で、前駆体繊維束Cを得た。
次に、この前駆体繊維束Cを実施例1と全く同じ条件で耐炎化処理、前炭素化処理、及び炭素化処理を行い、炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維のストランド引張弾性率は249GPa、体積抵抗率は2.1×10-3Ω・cm、グラファイト網面サイズ(Lc)は1.52nmであった。また、この炭素繊維の単繊維繊度は、0.70dtexであった。
Figure 0006060529
以上より、本発明の炭素繊維の製造方法を用いれば、グラファイト網面が発達しているために繊維の長手方向の導電性に優れている一方で、低弾性率であるために柔軟性や加工性に優れている炭素繊維を得ることができる。

Claims (3)

  1. 単繊維繊度が2.3dtex以上5.0dtex以下の炭素繊維前駆体アクリル繊維を、温度が200℃以上300℃以下の酸化性雰囲気により加熱し、該炭素繊維前駆体アクリル繊維の密度を1.22g/cm3以上1.31g/cm3以下とする工程1と、
    工程1より得られる繊維を、表面温度が250℃以上400℃以下のロールに接触させて加熱し、密度を1.37g/cm3以上1.43g/cm3以下とする工程2と、
    得られた繊維を、温度が800℃以上1600℃以下の不活性雰囲気により加熱する工程3と、
    を含む炭素繊維の製造方法。
  2. 単繊維繊度が1.0dtex以上2.5dtex以下、ストランド弾性率(TM)が235GPa以下であり、体積抵抗率が1.7×10-3Ω・cm以下であり、
    炭素繊維を広角X線回折測定により観測したとき、2θが24°以上26°以下の範囲に現れるグラファイト結晶の(002)面に相当する回折像を、該炭素繊維の長手方向に対して垂直な方向に一次元化したプロファイルにおいて、該プロファイルから得られる回折ピークの半値全幅によって求められるグラファイト網面サイズ(Lc)が、1.7nm以上である炭素繊維。
  3. 単繊維繊度が1.15dtex以上である請求項2に記載の炭素繊維。
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