以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、防振装置100の全体構成について説明する。
図1(a)は、第1実施形態における防振装置100の上面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すIb−Ib線における防振装置100の断面図であり、図1(c)は、防振装置100の側面図である。
なお、図1(a)において、矢印Q1は後述する連結ゴム部31の延設方向を示すものとして図示し、矢印Q2は軸O直角方向であり、かつ、矢印Q1と直角方向である方向を示すものとして図示する。図2以降においても同様である。
図1に示すように、防振装置100は、自動車のサスペンション装置(懸架装置)に使用される防振ブッシュであり、Q1方向への外力の入力に対する特性と、Q2方向への外力の入力に対する特性とが異なる(異方性を持つ)ように構成される。
防振装置100は、金属材料から筒状に形成される内筒部材10と、その内筒部材10の外周側に同心状に配設され金属材料から筒状に形成される外筒部材20と、それら内筒部材10の外周面11aおよび外筒部材20の内周面21bの間を連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体30と、外筒部材20の内周面21bに固着され、ゴム状弾性体からなるストッパゴム部40とを備え、加硫金型により加硫成形して製造される。
外筒部材20は、外径寸法がD1であり、軸O方向の高さ寸法を内筒部材10の軸O方向の高さ寸法より短く形成され、外筒部材20の外周面21aに開口する一対の貫通穴部22(図2参照)を備える。なお、防振装置100では、貫通穴部22の中心と外筒部材20の軸方向の中心とが軸Oに直交する同一平面上に配設されると共に、一対の貫通穴部22が軸O対象な位置に配設される。
貫通穴部22の製造方法を説明すると、貫通穴部22は、例えば外筒部材20の内周側に金属製のダイを配設し、外筒部材20の外周側に配置された金属製のパンチを外筒部材20の外周側からプレス装置を使用して近づけ、外筒部材20の側面を軸直角方向に打ち抜くことで製造される。
また、外筒部材20の端部から延長されるスリットを配設する場合と異なり、外筒部材20が縮径することはない。そのため、外筒部材20は径方向の荷重に対する剛性を確保できるので、後述するカラー部材Kを防振装置100に外嵌圧入する場合には、別に保持固定のための部分を設けなくとも、カラー部材Kに防振装置100を保持固定する摩擦力を十分に生じさせることができる。
防振基体30は、内筒部材10の外周面11aおよび外筒部材20の内周面21bの間を連結する連結ゴム部31と、連結ゴム部31の一端から連なって突設され、貫通穴部22を介して外筒部材20の外周面21aの外側へ向けて張り出して突設される突設ゴム部32とを備える。
連結ゴム部31には軸O方向に貫通される空間である2個のすぐり部30aが周方向等間隔(即ち、周方向に位相を180°異ならせた位置)に形成される。これら各すぐり部30aの間に、連結ゴム部31がQ2方向に延設される。
即ち、連結ゴム部31は内筒部材10の外周面11aから、内筒部材10を挟んで径方向両側(Q2方向、図1(a)左右方向)へ延設される。連結ゴム部31の延設方向端部は外筒部材20の内周面21bと加硫接着される。これにより、内筒部材10と外筒部材20との間が、一対の連結ゴム部31により連結される。
なお、連結ゴム部31は、内筒部材10及び外筒部材20に加硫接着される。即ち、連結ゴム部31は、基部側および延設先端側が内筒部材10の外周面11aおよび外筒部材20の内周面21bに加硫接着される。なお、以下では、連結ゴム部31の基部側を内筒部材10の外周面11aに加硫接着する側とし、延設先端側を外筒部材20の内周面21bに加硫接着する側として説明する。
なお、後述する図2に示すように、連結ゴム部31の延設先端側は、外筒部材20の内周面21bに加硫接着する際、貫通穴部22の周囲を覆うようにして加硫接着される。貫通穴部22の開口面積S1とし、外筒部材20の内周面21bに加硫接着する連結ゴム部31の外郭の面積をS2とすると、連結ゴム部31と外筒部材20とはS2からS1を差し引いた接着面積Sに発生する接着力で加硫接着により固定される。
そのため、接着面積Sは、外筒部材20と内筒部材10とが相対変位して、連結ゴム部31が引っ張り状態になった場合に、連結ゴム部31が外筒部材20の内周面21bから剥離しない程度の接着力を有するように大きく設定される。
突設ゴム部32は、貫通穴部22を介して、外筒部材20の外周面21aよりも外側へ張り出して突設される。防振装置100では、連結ゴム部31の延設先端側から連なって突設される。
この場合、突設ゴム部32が、貫通穴部22を介して、連結ゴム部32へ向けて押し込まれると、連結ゴム部31は外筒部材の内周面21bより内側に押し込まれるので、連結ゴム部31に予圧縮がかけられる。そのため、連結ゴム部31の耐久性を向上させることができる。
また、突設ゴム部32が外筒部材20の外周面21a外側に突設する体積を調節することで、連結ゴム部31の予圧縮量を調節することができるので、防振装置100にQ2方向の外力が入力される場合の内筒部材10の外筒部材20に対する相対的な変位量を調節することができる。
ストッパゴム部40は、連結ゴム部のすぐり部30aが外筒部材20と接する内周面21bに加硫接着され、内筒部材10がQ1方向に変位したら当接する領域において、最も体積が大きくなるように形成される。
これにより、防振装置100にQ1方向から外力が入力され、内筒部材10が外筒部材20に対して相対変位し、内筒部材10の外周面11aが外筒部材20の内周面21bに接触することがあっても、ストッパゴム部40が間に介在するので、衝撃を和らげ、外力の伝達を軽減することができる。更に、衝突時に異音が発生することを防止することができる。
図2を参照して、突設ゴム部32及び貫通穴部22の形状について説明する。
図2(a)は、図1(c)に示すIIa−IIa線における防振装置100の部分拡大断面図であり、図2(b)は、図1(b)のIIb部における防振装置100の部分拡大断面図であり、図2(c)は、図1(a)のIIc矢視における防振装置100の側面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、突設ゴム部32は、外筒部材20の軸O方向視で対面する側面の一方の側面に、突設ゴム部32の中心方向に上昇傾斜する第1傾斜面32aを備え、第1傾斜面32aと反対側の側面である他方の側面に、突設ゴム部32の中心方向に上昇傾斜する第2傾斜面32bを備え、外筒部材20の周方向に面する両側面に、突設ゴム部32の中心方向に上昇傾斜する第3傾斜面32cを備える。
ここで、上昇傾斜するとは、外筒部材の軸から離れるほど、突設ゴム部32の側面が、突設ゴム部32の中央に接近するように傾斜していることをいう。また、以降で上昇傾斜の角度について説明する場合、矢印Q2方向と各傾斜面の成す角度を指すものとする。
ここで、防振装置100では、第1傾斜面32aと第2傾斜面32bの傾斜角度が同角度に形成されるので、傾斜角度の関係について説明する場合は、第1傾斜面32aについて説明し、第2傾斜面32bについての説明は省略する。
なお、第3傾斜面32cが上昇傾斜する度合いは、第1傾斜面32aが上昇傾斜する度合いより小さい。これは、突設ゴム部32の押し込み時に、余肉が発生することを防ぎつつ、突設ゴム32の突設量を大きくするための措置であるが、詳細は後述する。また、外筒部材20の外周面21aから張り出す突設ゴム部32の突設高さは、後述するカラー部材Kの肉厚と同一か、それ以下とされる。
続いて、貫通穴部22の形状について説明する。なお、防振装置100では、2つの貫通穴部22は両方とも同形状であるので、片方の貫通穴部22の形状の説明のみをおこない、残りの1つについては説明を省略する。
図2(c)に示すように、外筒部材20の外周面21aに略長方形形状に開口される貫通穴部22は、円を4等分した形状に形成されるコーナーアール部22aと、幅をもった円弧形状(丸パイプ断面の一部を切り取った形状)の壁部であり、貫通穴部22の軸O方向端の一方に配設される壁部である下横壁部22bと、下横壁部22bと対面する円弧状の壁部である上横壁部22cと、外筒部材20の周方向端に配設される一対の長方形状の壁部である縦壁部22dとを備える。
貫通穴部22の4隅にコーナーアール部22aがあることで、突設ゴム部32を貫通穴部22を介して、連結ゴム部32へ向けて押し込むと、貫通穴部22の四隅で連結ゴム部31に生じる応力を分散させることができる。これにより、外筒部材20の内周面21bから連結ゴム部31が剥離することを防止することができる。即ち、4隅のコーナーアール部22aにより防振装置100の耐久性を向上させることができる。
下横壁部22b及び上横壁部22cは、正面視(図2(c)参照)における中心軸が内筒部材10の軸Oと一致し、かつ、開口幅寸法が内筒部材10の外径より長くなるように設定されている。
この場合、外筒部材20の外周面21aの内側に押し込まれる突設ゴム部32の体積を十分確保し、連結ゴム部31をQ2方向に十分に予圧縮することができる。
縦壁部22dは、軸O方向の長さを外筒部材20を軸方向に3等分する長さに設定される。
この場合、外筒部材20の軸方向断面において、完全な筒状を形成する部分が、十分な幅で貫通穴部22の上下に形成され、外筒部材20は高い剛性を保持するので、後述するカラー部材K(図3参照)が防振装置100に外嵌圧入される場合に変形することが抑制され、カラー部材Kに防振装置100を保持固定するために十分な摩擦力を生じさせることができる。
なお、貫通穴部22の形状はこれに限られるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それに伴い、開口面積S1は種々の設計変更が可能である。例えば、開口面積S1を大きくすることで、被収納ゴム部32が外筒部材20の外周面21aから外側へ張り出す体積を大きく設定することが容易に可能となる。
図3を参照して、防振装置100を外嵌圧入するカラー部材Kについて説明する。
図3(a)は、カラー部材Kの上面図であり、図3(b)は、カラー部材Kの側面図であり、図3(c)は、図3(a)に示すIIIc−IIIc線におけるカラー部材Kの断面図である。
図3に示すように、カラー部材Kは自動車のサスペンション装置(懸架装置)のロアアームのリンク部分等にあたる筒状の金属部材であり、その内径寸法はD2である。カラー部材Kの高さ寸法(図3(b)上下方向寸法)を外筒部材20と略同一の寸法とし、筒の厚みは十分な剛性を確保するように外筒部材20の筒の厚みと同一かやや厚く設定され、ロアアームのアーム部分先端にカラー部材Kの外周面を溶接等の方法で固定され、カラー部材Kの軸はロアアームのアーム部分の伸長方向と直角をなすように配設される。
防振装置100では、カラー部材Kの内径寸法D2は、外筒部材20の外径寸法D1に対し、圧入代を有する寸法に設定される。そのため、カラー部材Kは、外筒部材20の外周面に外嵌圧入されることで、その外筒部材20の外周面に保持される。
ここで、略同一とは、寸法差が5%以下に収まっていることを意味し、以降の説明でも同様である。
図4を参照して、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入する間の、突設ゴム部32の挙動を説明する。
図4(a)は、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入し始めた時の断面図であり、図4(b)は、防振装置100にカラー部材Kを途中まで外嵌圧入した時の断面図であり、図4(c)は、防振装置100にカラー部材Kを固定位置まで外嵌圧入した時の断面図であり、図4(d)は、図4(a)のIVd部における防振装置100とカラー部材Kの部分拡大断面図である。
なお、連結ゴム部31の延設方向(Q2方向)と、カラー部材Kに溶接されるロアアームの長径方向を一致させ、中心軸OとQ2方向とがなす平面において断面視されている。
図4(a)に示すように、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入する際には、カラー部材Kを突設ゴム部32の第1傾斜面32aに対向する側から近づけ圧入する。すると、突設ゴム部32を連結ゴム部32へ向けて押し込むことができる。
この場合、第1傾斜面32aがない場合と比べ、カラー部材Kの端面から突設ゴム部32に入力される荷重を、連結ゴム部32へ向けやすくなる。
即ち、突設ゴム部32がカラー部材Kの一端の端面と当接する際には、第1傾斜面32aと直交する方向(矢印F方向)に荷重を受けるので(図4(d)参照)、第1傾斜面32aの傾斜の度合いが大きいほど、突設ゴム部32にかけられる荷重の内の、外筒部材20の外周面21a内側へ向かう成分(矢印Fx方向成分)が大きくなり(図4参照)、貫通穴部22を介して突設ゴム部32を連結ゴム部32へ向けて押し込みやすくなる。
また、第1傾斜面32aはカラー部材Kの端面全体と一度に当接するのではなく、徐々に当接するので、連結ゴム部31の予圧縮を徐々に行うことができ、連結ゴム部31を均一に予圧縮することができる。この場合、連結ゴム部31が外筒部材20の内周面21bから剥離することを防止できる。
また、突設ゴム部32にかけられる荷重の内の、軸O方向成分(矢印Fy方向成分)が小さくなることで、カラー部材Kの一端と、下横壁部22bとを作用点とし突設ゴム部32に付与されるせん断方向荷重が小さくなり、突設ゴム部32に生じる亀裂の発生を抑制することができる(図4(d)参照)。
図4(b)に示すように、第2傾斜面32b近傍には、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入する際には、図4(a)から図4(b)にかけての圧入工程で、外筒部材20の外周面21a内側に押し込まれ切らない突設ゴム部32の一部がカラー部材Kの端部付近に寄せ集められることになる。
防振装置100は第2傾斜面32bを備えているので、下横壁部22bを延長する仮想平面と、突設ゴム部32との間に隙間が生じており、図4の圧入工程が進んでも、外筒部材20の外周面21a外側において、突設ゴム部32が下横壁部22bよりも下方まで押し下げられることを防止することができる。ここで、下横壁部22bはカラー部材Kの一端と対面する側の壁部を言う。
そのため、防振基体30に亀裂が生じるのを防止することができるし、突設ゴム部32のゴムボリュームを漏れなく連結ゴム部31へ向けて押し込むことができ、連結ゴム部31を矢印Q2方向に予圧縮する効果を顕著にできる。
ここで、防振装置100では、第1傾斜面32aと第2傾斜面32bの傾斜角度が同じであるので、傾斜角度の関係について説明する場合は、第1傾斜面32aについて説明し、第2傾斜面32bについての説明は省略する。
図2と図4とを参照しながら、説明する。図2(a)に示すように、第3傾斜面32cは、カラー部材Kが防振装置100に外嵌圧入される方向とは直角を成す方向に形成される。
仮に、第3傾斜面32cがなかったとしても、第3傾斜面32cの面する方向は、カラー部材Kの圧入時に生じる荷重の方向(矢印F方向)とは異なるため、突設ゴム部32の余肉は発生しづらい(図4(d)参照)。
しかし、押し込み時の抵抗が高かった場合には、突設ゴム部32が外筒部材20の外周面21a外側において、外筒部材20の周方向に膨張し、外筒部材20の外周面21a外側であり縦壁部22dに周方向に連なる領域に沿って広がることがある。
この場合、突設ゴム部32が余肉として外筒部材20の外周面21a外側にはみ出すことになるので、外筒部材20の外周面21a内側に突設ゴム部32のゴムボリュームを全て押し込むことができなくなる。
そこで、第3傾斜面32cに傾斜を形成しておくと、縦壁部22dの平面を仮想的に拡大した平面と第3傾斜面32cとの間に間隔が生じ、突設ゴム部32が外筒部材20の外周面21aの周方向に膨張しても、外筒部材20の外周面21aであり縦壁部22dに連なる領域に突設ゴム部32が広がることを防ぐことができるので、突設ゴム部32のゴムボリュームを無駄なく外筒部材20の外周面21a内側に押し込むことができる。
また、第3傾斜面32cは、突設ゴム部32の外筒部材20の周方向と対面する両側面であって、突設ゴム部32の中央に向かうに従って上昇傾斜する側面であり、第1傾斜面32aよりも傾斜の度合いが小さくなっている。
この場合、突設ゴム部32の形成するゴムボリュームを大きくすることができ、連結ゴム部31に十分な予圧縮をかけることが可能となる。特に、第3傾斜面32cの傾斜角を小さく設定できるのは、第3傾斜面32cがカラー部材Kに防振装置100が外嵌圧入される際に、カラー部材Kの端面に当接し荷重を受ける面ではないことによる。
即ち、第3傾斜面32cは防振基体30の亀裂の発生源となる可能性は低いので、傾斜の度合いは最低限でよい。また、第3傾斜面32cの傾斜を小さくする方が、突設ゴム部32のゴムボリュームを大きくできるので、突設ゴム部32を連結ゴム部31へ向けて押し込んだ際に連結ゴム部31に予圧縮を付与するのに作用するゴムボリュームを大きくできる。
そのため、第3傾斜面32cがQ2方向から傾斜する度合いは、第1傾斜面32aがQ2方向から傾斜する度合いより小さく形成される。
図4に示すように、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入する間は、内筒部材10が、外筒部材20に対して、軸O方向に変位される。
この場合、突設ゴム部32に連結ゴム部31へ向けて荷重(矢印Fx方向)が生じ、その荷重が、防振装置100にカラー部材Kを外嵌圧入する際に、突設ゴム部32が貫通穴部22を介して押し込まれる方向(Q2方向)と同じ方向に作用する(図4(d)参照)。
そのため、カラー部材Kの内周面により突設ゴム部32が連結ゴム部31へ向けて押し込まれる際の、抵抗を減らすことができる。
この場合、突設ゴム部32が貫通穴部22を介して連結ゴム部31へ向けて押し込まれきらず、カラー部材Kの一端から余肉としてあふれることを防止できる。この場合、突設ゴム部32の体積を無駄なく外筒部材20の外周面21a内側に押し込むことができるので、連結ゴム部31にQ2方向の十分な予圧縮をかけることができる。
また、突設ゴム部32は貫通穴部22を介して、連結ゴム部31へ向けてスムーズに押し込まれるので、外筒部材20の外周面21a外側において、突設ゴム部32がカラー部材Kの一端と下横壁部22bとを作用点とするせん断荷重を受け、下方向(矢印Fy方向)に変形することで、防振基体30に亀裂が発生することを抑制することができる(図4(d)参照)。
図1に戻って説明する。防振装置100では、図1(a)で示すように、Q1方向にはすぐり部30aが形成され、連結ゴム部31と、突設ゴム部32が内筒部材10を中心に略一直線状に配設される。
そのため、突設ゴム部32が連結ゴム部31へ向けて押し込まれると、突設ゴム部32のゴムボリュームは連結ゴム部31にQ2方向の予圧縮をかけるように作用する。即ち、連結ゴム部31にQ2方向の予圧縮を確実にかけることができるので、連結ゴム部31のQ2方向のばね定数を効率的に上昇させることができる。
この場合、連結ゴム部31が伸縮する度合いを小さくできる。即ち、防振装置100のQ2方向に外力が入力された場合に、外筒部材20が内筒部材10に対して相対変位する変位量を小さく抑えられる。よって、外力の入力に対して、外筒部材20の内筒部材10に対する位置安定性を向上させることができる。
また、連結ゴム部31は予めQ2方向に予圧縮されているため、内筒部材10と外筒部材20の間でQ2方向に相対的変位が生じても、予圧縮分を相殺するまでは、連結ゴム部31の内部がQ2方向の引っ張り応力状態になることはないので、連結ゴム部31に引っ張り荷重が生じることを抑制することができ、連結ゴム部31が引っ張り荷重を繰り返し受け破断することを防止でき、連結ゴム部31の耐久性を向上させることができる。
この場合、突設ゴム部32は、貫通穴部22を介して、カラー部材Kの内周面によって、連結ゴム部31へ向けて押し込まれる。すると、被収納ゴム部32が連結ゴム部31の延設先端側を外筒部材20の内周面21b内側に押し込む。この場合、連結ゴム部31にQ2方向の予圧縮をかけることができる。
更に、連結ゴム部31のQ2方向のばね定数を上昇させることができ、Q2方向に同じ強さの荷重が入力された場合の連結ゴム部31の伸縮の度合いを小さくできる。即ち、防振装置100にQ2方向を向く外力が入力されても、外筒部材20と内筒部材10が相対変位する変位量を小さく抑えることができる。
以上、防振装置100によれば、外筒部材20を縮径する工程を採用することなく、外筒部材20の外周面21aの外側に突設される突設ゴム部32を、外筒部材20の外周面21aに開口した貫通穴部22を介して連結ゴム部31へ向けて押し込むことで、連結ゴム部32の予圧縮を行うことができる。
また、この方法によれば、外筒部材20とカラー部材Kにそれぞれ形の違う縮径用部、圧入用部を軸方向別々に設ける必要がなく、防振装置100が軸方向に大きくなることを防止することができる。
次いで、図5及び図6を参照して、第2実施形態における防振装置200について説明する。第1実施形態では、貫通穴部22が外筒部材20の外周面に開口する場合を説明したが、第2実施形態では、外筒部材220の外周面の一部に軸直角方向へ向けて凹んだ横平坦部223を設け、貫通穴部222は横平坦部223に開口される。
なお、防振装置200の上面図と側面図は、防振装置100の上面図(図1(a))と側面図(図1(c))と同一であるため、記載は省略する。
図5(a)は、防振装置200の部分拡大断面図であり、図5(b)は、防振装置200の部分拡大断面図であり、図5(c)は、防振装置200の側面図である。
なお、図5(a)は、防振装置200を図1(c)に示すIIa−IIa線に対応する線で断面視したものであり、図5(b)は防振装置200を図1(a)に示すIb−Ib線に対応する線で断面視したものである。
図5(a)に示すように、外筒部材220は、外径を外筒部材20の外径D1と同径とし、外筒部材220の外周面221aから凹んで形成される平坦面状の部分である一対の横平坦部223と、横平坦部223に開口する貫通穴部222と、外筒部材220の外周面221aと横平坦部223とを連結する一対の平坦状の傾斜面である横絞り傾斜面224cとを備える。
横平坦部223は、外筒部材220の外周側に現れる壁部である横平坦部外壁223aと、外筒部材220の内周側に現れる壁部である横平坦部内壁223bとを備える。
図5(b)に示すように、外筒部材220は、外筒部材220の外周面と横平坦部223とを連結する平坦状の傾斜面である上絞り傾斜面224aと、下絞り傾斜面224bとを備える。
図5(c)に示すように、横平坦部223は貫通穴部222の周囲を囲むように配設され、4隅には貫通穴部222のコーナーアール部222aと対応するコーナーアール部分が形成される。また、各絞り傾斜面(224a,224b,224c)は、横平坦部223を取り囲むように配設され、かつ、外筒部材220と横平坦部223とをそれぞれ連結するように配設される。
なお、各絞り傾斜面(224a,224b,224c)は、外筒部材220に対して軸直角方向に絞り加工を施すことで一括形成される。
また、貫通穴部222の周囲に配設される横平坦部内壁223bが形成する領域において、連結ゴム部231は外筒部材220に連結される。
貫通穴部222の開口面積をS21とし、連結ゴム部231が外筒部材220と加硫接着する面においての連結ゴム部231の外郭の成す面積をS22とすると、連結ゴム部231と外筒部材220の連結する接着面積S20はS22からS21を差し引いた面積になる。
なお、貫通穴部222の開口面積S21は貫通穴部22の開口面積S1と同じ面積であり、接着面積S20は連結ゴム部231が引っ張り応力を生じても、外筒部材220と剥離しない程度に大きく設定される。
図5(c)に示すように、横平坦部223は、外筒部材220の外周面221aから凹んで形成される四角形状の平面であり、その中心には貫通穴部222が開口している。
図5(c)に示すように、絞り傾斜面(224a,224b,224c)は、それぞれの有する幅(横平坦部223と外周面221aを連結する幅)を同一とするので、上絞り傾斜面224aの有する幅についてのみ説明し、残りの各絞り傾斜面(224b,224c)の幅についての説明は省略する。
上絞り傾斜面224aの幅寸法は、外筒部材220の一部であって貫通穴部222の軸O方向上側に配設される筒状部分の軸O方向の高さ寸法を、略6等分した寸法に設定される。
また、横平坦部223の幅寸法(貫通穴部222の端部と上絞り傾斜面224aとを連結する横平坦部223の長さ寸法)も上絞り傾斜面224aと略同一に設定される。
図6を参照して、防振装置200にカラー部材Kを外嵌圧入する間の、突設ゴム部232の挙動を説明する。
図6(a)は、防振装置200にカラー部材Kを外嵌圧入し始めた時の断面図であり、図6(b)は、防振装置200にカラー部材Kを途中まで外嵌圧入した時の断面図であり、図6(c)は、防振装置200にカラー部材Kを固定位置まで外嵌圧入した時の断面図である。
なお、図6では、連結ゴム部231の延設方向(Q2方向)と、カラー部材Kに溶接されるロアアームの長径方向を一致させ、中心軸OとQ2方向とがなす平面において断面視されている。
ここで、第2傾斜面232bは第1傾斜面32aに比較して、上昇傾斜の傾斜角度が小さくされる。この場合、突設ゴム部232の突設量を突設ゴム部32より増やすことができ、連結ゴム部231により大きな予圧縮をかけることができる。
第2傾斜面232bの傾斜角度を小さくできるのは、以下の理由による。
即ち、防振装置200では、カラー部材Kを防振装置200に外嵌圧入する過程で、突設ゴム部232が余肉としてはみ出しても、突設ゴム部232が横平坦部223とカラー部材Kの内周面との間に形成される空間に収まり、カラー部材Kの端面からあふれることはないからである。
また、第2傾斜面232bの角度を小さく設定する方が、突設ゴム部232の突設量を増やすことができ、連結ゴム部231により大きな予圧縮をかけることができるからである。
上述したように、防振装置200では、カラー部材Kを防振装置200に外嵌圧入する時に、貫通穴部222の下横壁部222b付近から、突設ゴム部232の一部が余肉としてはみ出したとしても、カラー部材Kの内周面と、横平坦部223と、各絞り傾斜面(224a,224b,224c)とで囲まれる領域に収まることになるので、突設ゴム部232を外筒部材220の外周面221a内側(即ちカラー部材Kの内周面の内側)に押し込む量は、変化しない。
このことから、余肉の発生を防止するためにカラー部材Kを防振装置200に圧入する速度を抑える必要がない。
次いで、図7及び図8を参照して、第3実施形態における防振装置300について説明する。第1実施形態では、貫通穴部22が外筒部材20の外周面21aに2つ開口する場合を説明したが、第3実施形態では、貫通穴部322が外筒部材320の外周面321aに等間隔に8つ開口される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図7(a)は、防振装置300の上面図であり、図7(b)は、図7(a)に示すVIIb−VIIb線における防振装置300の断面図であり、図7(c)は、図7(a)に示すVIIc矢視における防振装置300の側面図である。
図7(a)に示すように、防振装置300では連結ゴム部331にすぐり部は形成されず、軸O直角方向の全方位において外筒部材320と内筒部材310は連結される。
図7(a)に示すように、防振装置300は、突設ゴム部332が軸O直角方向であって、周方向を8等分した各方向に突設されるため、カラー部材Kを防振装置300に外嵌圧入すると、連結ゴム部331は周方向を8等分した各方向から予圧縮される。
そのため、軸O直角方向から入力される外力が、Q1方向及びQ2方向から入力される場合だけでなく、Q1方向を45度ずつ左右に傾けた方向から入力される場合にも、外筒部材320に対する内筒部材10の相対変位を抑えることができるので、連結ゴム部331の耐久性向上を図ることができる。
なお、突設ゴム部332の突設量を個別に変化させることで、防振装置300に異方性を付与することも可能である。例えば、Q1方向の一対の突設ゴム部332yの突設量を大きくし、Q2方向の一対の突設ゴム部332xの突設量を小さくすることで、連結ゴム部332のQ1方向により大きな予圧縮をかけることができ、防振装置300に異方性を付与することができる。
また、図7(a)に示す防振装置300において、突設ゴム部332yの内の一方(例えば下側の一方)のみ突設量を大きくし、その他の突設ゴム部332の突設量を小さく設定することで、連結ゴム部331は突設ゴム部332yの内の一方(例えば下側の一方)側がより大きく予圧縮され、防振装置300をカラー部材Kに装着した際の外筒部材320と内筒部材10の軸をずらすことができる。
即ち、連結ゴム部331の予圧縮時に内筒部材10が外筒部材320に対して、突設ゴム部332yの内の一方(例えば下側の一方)から離間した位置で平衡を保つ。これにより、例えばQ1方向が鉛直方向を向くようにして使用すると、重力の作用により外筒部材320が内筒部材10に対して変位した後の状態で、内筒部材10と外筒部材320の軸を一致させることができる。
図7(b)に示すように、防振装置300は、連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近で突設ゴム部332の突設量が大きくなっている。
この場合、防振装置300を長期使用することにより防振基体330に亀裂が発生しやすい連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近において、より大体積の突設ゴム部332を押し込むことができるので、連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近を集中的に予圧縮することができる。これにより、防振装置の耐久性向上を図ることができる。
図7(c)に示すように、貫通穴部322の上下の壁面(上横壁部322c、下横壁部322b)付近に連結ゴム部331の界面(331a,331b)があり、その箇所で突設ゴム部332の突設量を大きくしている。
図8を参照して、防振装置300にカラー部材Kを外嵌圧入する間の、突設ゴム部332の挙動を説明する。
図8(a)は、防振装置300にカラー部材Kを外嵌圧入し始めた時の断面図であり、図8(b)は、防振装置300にカラー部材Kを途中まで外嵌圧入した時の断面図であり、図8(c)は、防振装置300にカラー部材Kを固定位置まで外嵌圧入した時の断面図である。
なお、連結ゴム部331の延設方向(Q2方向)と、カラー部材Kに溶接されるロアアームの長径方向を一致させ、中心軸OとQ2方向とがなす平面において断面視されている。
図8(b)では、上下に2こぶ状に突設する突設ゴム部332の内の上部分が、押し込まれた状態を示している。この場合、連結ゴム部331の上側界面331aに特に集中的に予圧縮が付与される。
図8(c)に示すように、突設ゴム部332が全て押しこまれると、連結ゴム部331の下側界面331bにも集中的に予圧縮が付与される。
防振装置300では、貫通穴部322は外筒部材320の外周面321aの各位相(45度間隔)にそれぞれ1つ開口され、突設ゴム部332の形状が軸O方向に突設量を変化させ2コブ形状になっている構成である。
なお、貫通穴部322が各位相にそれぞれ複数(例えば2つ)連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近に、軸方向に分離してそれぞれ開口されるようにしても良い。
この場合、連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近で、突設ゴム部332が外筒部材320の外周面321aの外側に突設する。即ち、突設ゴム部332の形状を工夫しなくとも(2コブにしなくとも)、連結ゴム部331の界面(331a,331b)付近に集中的に予圧縮を付与することができる。
次いで、図9を参照して、第4実施形態における防振装置400について説明する。第1実施形態では、貫通穴部22が外筒部材20の外周面21aに2つ開口する場合を説明したが、第4実施形態では、貫通穴部422が外筒部材420の外周面421aに周方向の角度で90度離間した位置に2つ配設される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9(a)は、防振装置400の上面図であり、図9(b)は、防振装置400の側面図である。
図9(a)に示すように、防振装置400は、突設ゴム部432がQ1方向の片側(図9(a)右側)と、Q2方向の片側(図9(a)下側)に配設される。また、ストッパゴム部440は外筒部材420の内周面421bに加硫接着されると共に、連結ゴム部431の延設される側の反対側に固着される。また、軸O方向に貫通される空間であるすぐり部430aが連結ゴム部431とストッパゴム部440を分離するように介在して形成される。
ここで、カラー部材Kを防振装置400に外嵌圧入した場合、突設ゴム部432が連結ゴム部431に軸O直角方向の予圧縮を付与することで、内筒部材10まわりの力の平衡が崩れる。即ち、内筒部材10は、外筒部材420に対して、連結ゴム部431が延設される側から離間するように変位する。
こうすることで、防振装置400の取り付け状態において、Q1方向若しくはQ2方向に荷重を受けそれぞれの軸芯がずれる場合であっても、連結ゴム部431に予圧縮をかけることで、その荷重をキャンセルし、予圧縮状態で内筒部材10の軸と外筒部材420との軸を同軸にそろえることができる。
次いで、図10を参照して、第5実施形態における防振装置500について説明する。第1実施形態では、貫通穴部22が外筒部材20の外周面21aに2つ開口する場合を説明したが、第5実施形態では、貫通穴部522が外筒部材520の外周面521aに周方向の角度で90度間隔に4つ配設される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図10(a)は、防振装置500の上面図であり、図10(b)は、防振装置500の側面図である。なお、図10(b)は防振装置500の一部が部分的に断面視して図示される。
図10(a)に示すように、連結ゴム部531には軸O方向に貫通される空間である4個のすぐり部530aが周方向等間隔(即ち、周方向に位相を90°異ならせた位置)に形成される。これら各すぐり部530aの間に、連結ゴム部531がQ1方向及びQ2方向に延設される。
この場合、カラー部材Kを防振装置500に外嵌圧入し、突設ゴム部532を外筒部材520の外周面521aの内側に押し込むと、内筒部材10を挟み込むようにして、連結ゴム部531をQ1方向及びQ2方向それぞれに予圧縮することができる。
また、突設ゴム部532の側面付近において、突設ゴム部532の中心付近よりも、突設ゴム部532の突設量が大きい構成である。即ち、連結ゴム部531の界面付近531a,531b,531cにおいて、突設ゴム部532の突設量が大きくなる。
この場合、突設ゴム部532を外筒部材520の外周面521a内側に押し込むと、連結ゴム部531の内、長期使用により亀裂の生じやすい界面付近531a,531b,531cにおいて連結ゴム部531が集中的に予圧縮されるので、連結ゴム部531の耐久性を向上させることができる。
図10(b)に示す側面図は、一部が軸OとQ2方向のなす平面で断面視されている。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施形態では、連結ゴム部31,231,331,431,531から突設ゴム部32,232,332,432,532が連なって突設する場合を説明したが、それに限られるものではなく、分離していても良い。
第1実施形態を例に詳しく説明すると、貫通穴部22を構成する下横壁部22b、上横壁部22c、縦壁部22dに突設ゴム部32が加硫接着される構成でも良い。この場合、カラー部材Kを防振装置100に外嵌圧入することで、防振装置100と同様の効果を奏することができる。
また、第2実施形態を例に詳しく説明すると、横平坦部外壁223aに突設ゴム部232を加硫接着させる構成でも良い。この場合、カラー部材Kを防振装置200に外嵌圧入することで、防振装置200と同様の効果を奏することができる。
上記各実施形態では、カラー部材Kが外筒部材20,220,320,420,520と同径の筒状部材である場合を説明したが、それに限るものではなく、外筒部材20,220,320,420,520に開口する貫通穴部22,222,322,422,522を介して、突設ゴム部32,232,332,432,532を連結ゴム部31,231,331,431,531へ向けて押し込むことができる形状であれば良い。
第1実施形態を例に詳しく説明すると、カラー部材Kの形状は、カラー部材Kの内周面であって、圧入後の状態で突設ゴム部32と当接する部分付近が、外側に膨らんでいる形状でも良い。これによれば、突設ゴム部32の形状を変えなくとも、カラー部材Kの膨らみを変えれば、カラー部材Kを防振装置100に外嵌圧入した場合に連結ゴム部32が予圧縮される度合いを調節することができる。そのため、異なった特性を有する防振装置100を製造するコストを低減することができる。
ここで、防振装置100の特性を変化させるために突設ゴム部32の形状を多種多様に用意するには、加硫金型を多種多様に製造する必要がある。しかし、カラー部材Kの形状は絞り加工で調整可能なので、加工装置を複数台用意する必要はなく、防振装置100の製造コストを下げることができる。
上記各実施の形態では、外筒部材20,220,320,420,520の外径寸法D1より、カラー部材Kの内径寸法D2の方が小さい場合を説明したが、それに限られるものではなく、外径寸法D1と外径寸法D2とが同径でも良く、また、外形寸法D1よりも内径寸法D2の方が大きくてもよい。
第1実施形態を例に詳しく説明すると、外筒部材20にカラー部材Kを外嵌圧入する際の、圧入抵抗が低減され、圧入作業をスムーズに行うことができる。
上記第1実施形態から第3実施形態では、カラー部材Kを防振装置100,200,300に外嵌圧入する際、内筒部材10と外筒部材20,220,320の軸方向の位置をずらした状態で配置したが、これに限るものではなく、内筒部材10と外筒部材20,220,320との位置を軸方向に一致させてもよい。
上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、第3実施形態では、貫通穴部322が8つ等間隔に開口されるが、7つ以下でも、9つ以上でも良い。
上記各実施形態では突設ゴム部32,232,332,532が突設される量は、貫通穴部22,222,322,422,522の穴寸法を変えたり、突設ゴム部32,232,332,532の突設高さ(突設ゴム部の突設端から外筒部材の外周面までの距離)を変えることで可能である。また、第4実施形態でも示すように、突設ゴム部32,232,332,532が軸O直角方向に対称である必要はない。
上記各実施形態における防振装置100,200,300,400,500の一部または全部を、他の実施形態における防振装置100,200,300,400,500の一部または全部と組み合わせて、又は、他の実施形態における防振装置100,200,300,400,500の一部または全部と置き換えて、防振装置を構成しても良い。例えば、第1実施形態の防振装置100において、突設ゴム部32を第5実施形態の突設ゴム部532に置き換えても良い。
上記各実施形態では、貫通穴部22,222,322,422,522は、略四角形状の開口を有するが、それに限定されるものではなく、3角形でも、5角以上の多角形でも、円形でも良い。
<その他>
<手段>
技術的思想1の防振装置は、筒状の内筒部材と、前記内筒部材の外周側に配設される筒状の外筒部材と、前記内筒部材および前記外筒部材を加硫接着により連結すると共にゴム状弾性体からなる防振基体とを備えるものであり、前記外筒部材は、前記外筒部材の外周面に開口する少なくとも1つの貫通穴部を備え、前記防振基体は、前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を連結する連結ゴム部と、前記連結ゴム部に連なり前記貫通穴部から突設される突設ゴム部とを備える。
技術的思想2の防振装置は、技術的思想1記載の防振装置において、前記内筒部材は、前記外筒部材と同心状に配設され、前記貫通穴部は、前記内筒部材の軸に対象な位置に2つ配設され、前記連結ゴム部は、少なくとも前記貫通穴部と前記内筒部材の軸とを結ぶ直線上に配設される。
技術的思想3の防振装置は、技術的思想1又は2に記載の防振装置において、前記突設ゴム部は、前記突設ゴム部の前記外筒部材の軸方向を向く側面の内の一方の側面が、前記突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜される。
技術的思想4の防振装置は、技術的思想3記載の防振装置において、前記突設ゴム部は、前記一方の側面と反対側となる他方の側面が、前記一方の側面の上昇傾斜の角度に比較して小さい角度で前記突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜される。
技術的思想5の防振装置は、技術的思想4記載の防振装置において、前記突設ゴム部は、前記外筒部材の周方向を向く側面が、前記軸方向を向く側面の上昇傾斜の角度に比較して小さい角度で前記突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜される。
技術的思想6の防振装置は、技術的思想1から5のいずれかに記載の防振装置において、前記突設ゴム部は、前記突設ゴム部の側面付近の少なくとも一部の突設量が、前記突設ゴム部の中央付近の突設量に比較して大きい。
<効果>
技術的思想1記載の防振装置によれば、外筒部材に貫通穴部が開口され、防振基体は、内筒部材の外周面と前記外筒部材の内周面との間を連結する連結ゴム部と、その連結ゴム部に連なり外筒部材の貫通穴部から突設される突設ゴム部とを備えるので、外筒部材を、筒状のカラー部材に圧入することで、カラー部材の内周面で防振基体の突設ゴム部を、貫通穴部を介して、連結ゴム部へ向けて押し込み、かかる連結ゴム部に予圧縮を付与することができる。また、カラー部材からの抜け荷重は、外筒部材の外周面のうちの貫通穴部が形成されていない非形成領域により確保できるので、従来品のように外筒部材を軸方向に長くすること必要がない。その結果、カラー部材への圧入と防振基体(連結ゴム部)への予圧縮の付与とを1工程で行うことを可能としつつ、軸方向での小型化を図ることができる。
技術的思想2記載の防振装置によれば、技術的思想1記載の防振装置の奏する効果に加え、内筒部材は、外筒部材と同心状に配設され、貫通穴部は、内筒部材の軸に対象な位置に2つ配設され、連結ゴム部は、少なくとも貫通穴部と内筒部材の軸とを結ぶ直線上に配設されるので、カラーの内周面により押し込まれた突設ゴム部により、連結ゴム部を両側から径方向に圧縮して、かかる連結ゴム部に効果的に予圧縮を付与できる。
技術的思想3記載の防振装置によれば、技術的思想1又は2に記載の防振装置の奏する効果に加え、突設ゴム部の側面であって外筒部材の軸方向を向く側面の内の一方の側面が、突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜しているので、カラー部材の内周面によって突設ゴム部が押し込まれる際に、その押し込み動作をスムーズに行わせて、防振基体(連結ゴム部、突設ゴム部)に亀裂が発生することを防ぐことができる。
技術的思想4記載の防振装置によれば、技術的思想3記載の防振装置の奏する効果に加え、突設ゴム部の一方の側面と反対側となる他方の側面が、突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜しているので、カラー部材へ突設ゴム部の一方の側面から圧入する場合、突設ゴム部の他方の側面が余肉として外筒部材の外周面とカラー部材の内周面との間にはみ出すことを抑制することができる。一方で、他方の側面は一方の側面の上昇傾斜の角度に比較して小さい角度で上昇傾斜しているので、側面を上昇傾斜させることによる突設ゴム部の体積減少を抑制でき、その分、連結ゴム部へより大きな予圧縮を付与することができる。
技術的思想5記載の防振装置によれば、技術的思想4記載の防振装置の奏する効果に加え、突設ゴム部は、外筒部材の周方向を向く側面が、突設ゴム部の中央へ向けて上昇傾斜しているので、カラー部材へ外筒部材を圧入する際に、突設ゴム部の外筒部材の周方向を向く側面が余肉として外筒部材の外周面とカラー部材の内周面との間にはみ出すことを抑制することができる。一方で、突設ゴム部の側面の内、外筒部材の周方向を向く側面は、軸方向を向く側面の傾斜の角度に比較して小さい角度で上昇傾斜しているので、側面を上昇傾斜させることによる突設ゴム部の体積減少を抑制でき、その分、連結ゴム部へより大きな予圧縮を付与することができる。
技術的思想6記載の防振装置によれば、技術的思想1から5のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、突設ゴム部の側面付近の少なくとも一部の突設量が、突設ゴム部の中央付近の突設量に比較して大きいので、カラー部材へ外筒部材を圧入することで、突設ゴム部が押し込まれる量をその突設ゴム部の中央付近よりも側面付近で大きくできる。これにより、連結ゴム部に付与される予圧縮の量を、その連結ゴム部の中央付近よりも亀裂の発生源になりやすい界面付近において大きくできる。その結果、予圧縮の付与による亀裂の抑制を効率的に達成できる。即ち、ゴム状弾性体は非圧縮性を有し、突設ゴム部を押し込み可能な量に限界があるので、連結ゴム部の亀裂が生じやすい界面近傍において集中的に予圧縮を付与する方法が有効となる。