JP6059982B2 - カルシウムアルミネート系超速硬剤 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば急結性や、好適には極めて早い速硬性や急硬性を付与するために水硬性組成物に配合使用されるカルシウムアルミネート系超速硬剤に関する。
セメントの凝結を飛躍的に速め、また高い初期強度を得ることができるカルシウムアルミネートは、瞬結化も可能なため、工期が極短時間しかとれないような施工に使用される水硬性組成物に急結成分として、また特に早く硬化を行いたいときの急硬や速硬成分として好んで配合されている。カルシウムアルミネートは、高ガラス化率の状態のものほど反応活性が高く、凝結速度や短時間強度発現性が増す。一方で、早過ぎる凝結は、施工のための入念な作業時間を確保する上での障害となっている。急結剤を配合したセメント組成物が注水後も一定時間流動性を有し、施工可能な安定した状態を維持できる時間としての可使時間を、可能な限り確保するため、例えば凝結遅延成分を併用して凝結開始時間を遅くすることが行われてきた。(例えば、特許文献1参照。)しかし、例えばCaOとAl23の構成上の含有モル比(化学組成比)がCaO/Al23で1.0を超えるようなガラス質のカルシウムアルミネートは極めて高い急結性を付与するため、凝結遅延成分と併用しても施工作業上必要とされる適度な可使時間を確保することすら至難となっていた。また、無理に大量の凝結遅延成分を併用すると、初期を初めとする強度発現性が著しく低下する虞がある。また、このようなカルシウムアルミネートをさらに高い速硬性・急硬性を付与できるよう、微細化して比表面積を大きくすると、反応活性が非常に高くなり、吸湿性も顕著に増し、この影響によっても可使時間が変動し、例え短い可使時間の調整でさえも困難になる。従って、より強い速硬性や急結性を具備したカルシウムアルミネートを使用する際は、纏まった可使時間を確保することが実質不可能となるため、これを用いた施工を行う場合は、唯一の方策として注水時期の調整に頼らざるを得ない。具体的には、打設直前に注水・混練が行えるような施工作業方法を求めねばならず、施工面の制約が甚だ大きい。
特開2004−262718
本発明は、カルシウムアルミネートの中でもかなり速硬性や急結性が強いものに対し、当該性状を実質的に減退させずに、例えば施工時に必要とされる作業時間程度は安定した状態で留まっていられるような適度な可使時間を、風化などにより不安定に変動することもなく、確保・調整することができるようにしたカルシウムアルミネート系超速硬剤の提供を課題とする。
本発明者は、前記課題解決のため検討を行った結果、何れもCaOとAl23の含有モル比(化学組成比)を特定のものとした結晶質と非晶質のカルシウムアルミネートを、特定の関係を満たすようにせしめたものが、前記課題を総じて解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、次の(1)〜(2)で表すカルシウムアルミネート系超速硬剤物である。(1)CaOとAl23の含有モル比が1.05〜1.5の結晶質カルシウムアルミネート(A)と、CaOとAl23の含有モル比が1.〜1.68の非晶質カルシウムアルミネート(B)からなる混合カルシウムアルミネートであって、(A)のCaOとAl23の含有モル比が(B)のCaOとAl23の含有モル比よりも0.15以上低い混合カルシウムアルミネートを有効成分とするカルシウムアルミネート系超速硬剤。(2)CaOとAl23の構成モル比が105〜1.5の結晶質カルシウムアルミネート(A)と、CaOとAl23の構成モル比が1.〜1.68の非晶質カルシウムアルミネート(B)との混合カルシウムアルミネート中の含有質量比が、A:B=80:20〜40:60である前記(1)のカルシウムアルミネート系超速硬剤。
本発明によれば、非常に強い速硬性や急結性を付与できる性状を具備しつつ、例えば施工時に必要とされる作業時間程度を安定した状態で留まっていられるような適度な可使時間を、風化などによるバラツキも起き難く、容易に調整確保することができるカルシウムアルミネート系超速硬剤が得られる。
本発明で云う超速硬剤とは、特に限定されるものではないが、例えばモルタルやコンクリートなどのセメント系組成物に適量使用した際に、材齢が概ね1時間〜半日程度で最大強度の40%以上に到達し得る程度の硬化体になり得るような特性を具備するものが該当する。
本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤の有効成分である混合カルシウムアルミネートを構成する結晶質カルシウムアルミネートとは、CaOとAl23を主要含有化学成分とする化合物であって、CaOとAl23の含有モル比(化学組成比)が1〜1.5のものである。CaOとAl23以外の成分も含有されることは許容される。該結晶質カルシウムアルミネートは、実質的に結晶状態を呈するものであれば良く、例えば不可避不純物の一部が混合物としてではなく固溶してしまったものでも良い。(具体的には粉末エックス線回折によって殆どズレなく所定の回折角度に明確な回折ピークが検出できれば良い。)また、CaOとAl23の含有モル比が平均で1〜1.5になれば、含有モル比が異なる複数の結晶質カルシウムアルミネートを併用しても良い。CaOとAl23の含有モル比が1未満の結晶質カルシウムアルミネートは、強い速硬性や急硬性が得難いので好ましくない。また、CaOとAl23の含有モル比が1.5を超えると水和反応活性が強くなり過ぎて、可使時間の確保が困難になるので好ましくない。好ましくは、CaOとAl23の含有モル比が1〜1.4の結晶質カルシウムアルミネートを用いる。
また、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤の有効成分である混合カルシウムアルミネートを構成する非晶質カルシウムアルミネートとは、CaOとAl23を主要含有化学成分とする非晶質体であって、CaOとAl23の含有モル比が1.3〜1.7のものである。また、CaOとAl23以外の成分も含まれることは許容される。非晶質体としては、実質的に非晶質であれば良く、好ましくはガラス化率が概ね95%以上のものとする。また、CaOとAl23の含有モル比が平均で1.3〜1.7のものになれば、複数の異なる含有モル比の非晶質カルシウムアルミネートを併用しても良い。非晶質カルシウムアルミネートは特に強い速硬性や急結性を得るには有利であるが、CaOとAl23の含有モル比が1.3未満では、せいぜい通常程度の速硬性しか得られない可能性が高いので好ましくない。また、含有モル比が1.7を超えると、遅延剤を併用しても纏まった可使時間を確保することは困難になる。好ましくは、CaOとAl23の含有モル比が1.4〜1.6の非晶質カルシウムアルミネートを用いる。
本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤の有効成分である混合カルシウムアルミネートは、前記のような結晶質カルシウムアルミネートと非晶質カルシウムアルミネートからなるが、含有使用する結晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比が、非晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比よりも0.1以上低ことを必須とする。結晶質カルシウムアルミネートとして複数種のCaOとAl23の含有モル比のものを併用する場合は、その平均のモル比が、混合カルシウムアルミネートを構成する非晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比よりも、非晶質カルシウムアルミネートが複数の非晶質カルシウムアルミネートからなるときは、それらの平均のモル比よりも、0.1以上下回る含有モル比の結晶質カルシウムアルミネートを使用する。結晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比が、非晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比より0.1以上低いものを使用することによって、非常に強力な速硬性や急結性付与作用を具備しつつ、適度な可使時間の確保とその調整を容易に行うことが可能になる。混合カルシウムアルミネートを構成する結晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比が、非晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比よりも0.1以上低くないと、可使時間の確保と調整が困難になるので好ましくない。また、0.1以上低くても、結晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比が1〜1.5を外れるものでは、強い速硬性の付与や可使時間の確保に支障をきたすので好ましくない。好ましくは、混合カルシウムアルミネートを構成する結晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比が、非晶質カルシウムアルミネートのCaOとAl23の含有モル比よりも0.15以上低いものが良い。
また、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤の有効成分である混合カルシウムアルミネート中のCaOとAl23の含有モル比が1〜1.5の結晶質カルシウムアルミネートとCaOとAl23の含有モル比が1.3〜1.7の非晶質カルシウムアルミネートの含有量は、両者を含む限り、特に制限されるものではない。好ましくは、前記結晶質カルシウムアルミネート(A)と前記非晶質カルシウムアルミネート(B)の含有質量比が、A:B=80:20〜40:60であることが推奨される。この含有質量比であれば、強力な速硬性や急結性付与作用を具備しつつ、適度な可使時間の調整確保がより行い易くなる。可使時間を長めにすべく調整したい時は、当該質量比の範囲内で結晶質カルシウムアルミネートの含有割合を多くするほど、比較的容易に所望の可使時間に近づけることができる。実用上はこのような調整手法でも対応できるが、より詳細に可使時間を調整するには、さらに使用する結晶質及び非晶質カルシウムアルミネートの各々に含まれるCaOとAl23の含有モル比も調整設定する必要がある。
また、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤は、前記の混合カルシウムアルミネート以外の成分も、本発明の効果を喪失させるものでない限り、含有することができる。具体的な含有可能成分としては、例えば、無水石膏を初めとする各種石膏類、モルタルやコンクリートに混和使用できる凝結遅延剤や凝結促進剤、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩等を挙げることができるが、記載例に限定されるものではない。
また、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤は、粒度は特に制限されない。好ましくは、急激な反応を抑制し、適度な水和反応活性が得ら易いことから、ブレーン比表面積が3000〜8000cm2/gのものが推奨例示される。この例示外の粒度のものが必ずしも不適当という訳ではない。
また、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬剤は、任意の組成のセメント、モルタルおよびコンクリート等の水硬性組成物に添加・配合することができる。添加・配合先のセメントは水硬性のセメントであれば何れのものでも良い。但し、アルミナセメントは実質的にカルシウムアルミネートであるため、他のセメントと併用している水硬性組成物に添加する場合を除いては、添加対象として適当ではない。本カルシウムアルミネート系超速硬剤の水硬性組成物への添加に際しては、他の一般的な混和材・剤と概ね同様に扱うことが可能であり、他の混和材・剤との併用も特には制限がない。また、かなり長時間の練り置きには適してはいないが、注水後の通常の混練は十分可能である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。本発明は記載された実施例に限定されるものではない。尚、以下の表2および表3に記載した本発明品3は、本発明の特許請求の範囲に包含されない参考品である。
[カルシウムアルミネートの作製]
使用原料は石灰石(CaO含有率56質量%、Al23、MgO及びSiO2含有率は何れも0.5質量%未満か無含有)とバン土頁岩(Al23含有率87質量%、Fe23含有率1質量%、SiO2含有率5質量%、CaO及びMgO含有率は何れも0.5質量%未満)を用い、表1に表すCaOとAl23の含有モル比の焼成物が得られるように調合した。調合した混合物は、電気炉で最高温度1500(±50℃)で3時間焼成した。また、一部の混合物は、電気炉で最高温度1350(±50℃)で30分間焼成した。最高温度からの冷却は、所望の構造状態を得るために次の何れかの方法で処理した。尚、焼成物の非晶質化率は、先ず、焼成物中の結晶質の全鉱物の含有量を粉末エックス線回折による内部標準法により測定し、次いで焼成物中の残部を非晶質相と見なしてその含有質量割合を算出することで求めた。非晶質化率が当該方法で算出上5%未満であったものを結晶質カルシウムアルミネート、95%以上であったものを非晶質カルシウムアルミネートと判断した。
・冷却方法I(徐冷);電気炉内で自然放冷し、12時間経過時点で炉外に取出した。
・冷却方法II(急冷);最高温度から直ちに常温環境の炉外に取出し、焼成物表面に吹出口温度約20℃の圧搾空気を焼成物表面が概ね200℃以下になるまで吹付けた。
・冷却方法III(急冷);最高温度から炉外に取出し、直ぐに水中に浸し、約5分後に水中から回収して200℃の乾燥機で乾燥させた。
Figure 0006059982
[混合カルシウムアルミネートの作製]
冷却処理した焼成物は、粉砕機を使用して粉砕時間を調整することでブレーン比表面積約5000cm2/gに整粒した。次いで、各焼成物を表2に表す配合量になるようヘンシェル型混合機で乾式混合し、混合カルシウムアルミネートを作製した。混合カルシウムアルミネートは、粉砕機を使用して粉砕時間を調整することによりブレーン比表面積約5000cm2/gに整粒した。尚、一部の焼成物は非晶質と結晶質カルシウムアルミネートを混合せずに、一方だけを使用したものも、混合カルシウムアルミネートとした。
Figure 0006059982
[カルシウムアルミネート系超速硬材の評価]
前記の混合カルシウムアルミネート20質量%、無水石膏(市販試薬)20質量%、クエン酸(市販試薬)1質量%、炭酸リチウム(市販試薬)1質量%及び普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)58質量%からなる混合物100質量部と、JIS R 5201で規定されたセメントの強さ試験用標準砂150質量部と、水38質量部とをホバートミキサで20℃の環境下で混練し、評価用のモルタル混練物を作製した。該モルタル混練物に対し、JIS R 5201の附属書1の手法に従って凝結始発時間を測定した。また、該モルタル混練物を型枠成形して作製した直径50mm、高さ100mmの円柱状試験体の材齢8時間での圧縮強度を測定した。さらに、前記と同様の混合カルシウムアルミネート20質量%、無水石膏20質量%、クエン酸1質量%、炭酸リチウム1質量%及び普通ポルトランドセメント58質量%らなる混合物を、大気中で樹脂製容器に入れて密封し、6ヶ月間保管した。保管後開封した混合物を使用し、前記と同様のモルタル混練物を作製し、凝結始発時間と材齢8時間での圧縮強度を同じ方法で測定した。以上の測定結果を表3に表す。
Figure 0006059982
表3の結果から、本発明のカルシウムアルミネート系超速硬材を使用した評価用のモルタルは何れも非常に高い早期強度を発現しつつ適度な凝結始発時間を具備するものであることがわかる。しかも長期間保存してもそれらの性状は殆ど変わらないことから、高い風化抵抗性も兼ね備えていることがわかる。

Claims (2)

  1. CaOとAl23の含有モル比が1.05〜1.5の結晶質カルシウムアルミネート(A)と、CaOとAl23の含有モル比が1.〜1.68の非晶質カルシウムアルミネート(B)からなる混合カルシウムアルミネートであって、(A)のCaOとAl23の含有モル比が(B)のCaOとAl23の含有モル比よりも0.15以上低い混合カルシウムアルミネートを有効成分とするカルシウムアルミネート系超速硬剤。
  2. CaOとAl23の構成モル比が1.05〜1.5の結晶質カルシウムアルミネート(A)と、CaOとAl23の構成モル比が1.〜1.68の非晶質カルシウムアルミネート(B)との混合カルシウムアルミネート中の含有質量比が、A:B=80:20〜40:60である請求項1記載のカルシウムアルミネート系超速硬剤。
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