JP6059119B2 - 電池パックの保護部材用熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Description
本発明の成分(a)として用いる芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物のランダム共重合体の水素添加物は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体を水素添加した物質である。
本発明の成分(b)は、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体)などのポリプロピレン樹脂であり、耐薬品性(耐電解液溶解性)の保持に重要な役割を担う。成分(b)は、耐薬品性(耐電解液溶解性)の観点から、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が120〜167℃のものが好ましい。またメルトマスフローレートが0.1〜10g/10分の範囲のものは、本発明の組成物中における上記成分(a)の分散を良好にし、組成物の耐熱性を改良し、なおかつ本発明の組成物から得られる成形品の外観を良好にする効果を有するため、好ましい。
本発明の成分(c)は、水酸化マグネシウムであり、組成物に難燃性を付与するために重要な役割を担う。また組成物の熱伝導性を向上させる効果も有する。水酸化マグネシウムは、通常の難燃剤、例えばハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤よりも電気絶縁性に優れているため、電池パック保護部材向け樹脂組成物の難燃性付与に好適である。水酸化マグネシウムには種々の粒子径のものや表面処理されたものが市販されているが、本発明の成分(c)としては、いずれの性状の水酸化マグネシウムを用いてもよい。
熱伝導性充填材は、通常、導電性を有するものと電気絶縁性を有するものとに分類することができる。また樹脂への混合性を考慮した各種の表面処理タイプがあり、目的に応じて使い分けられている。更に形状としては、粉状、繊維状、鱗片状等がある。これらの中で電池パック保護部材に求められる特性から、本発明の任意成分(d)としては、高い電気絶縁性を有する熱伝導性充填材が好ましい。また熱伝導性の異方性の問題から非繊維状のものが好ましい。より好ましくは粉状である。具体的には、成分(d)としては、珪酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素などが好ましい。成分(d)としては、これらの1種又は2種以上を好ましく用いることができる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、耐熱性、電気的特性、及び耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、ポリスチレンと完全相溶することは公知であるが、一方で、流動性が悪く成形加工が困難であるという欠点を有しているため、成形加工性、流動性、及び耐衝撃性の改良を目的として、ポリスチレン系樹脂を配合したスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂として使用されるのが一般的である。本発明の組成物に、更に上記成分(e)を、成分(a)と成分(b)との合計100質量部に対し、2〜8質量部含ませることにより、耐薬品性(耐電解液溶解性)、特に高温の電解液に対する耐溶解性を高めることができる。成分(e)としては、ポリフェニレンエーテル樹脂を用いてもよく、スチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いてもよい。
20L容量加圧ニーダーを使用し、表1〜3の何れか1に示す配合比の配合物を、排出温度175℃の条件で溶融混練した。得られた組成物を、二軸押出機を使用し、ダイス設定温度210℃の条件でストランド状に押出し、水槽を使用して水冷し、カッティングすることにより、円柱状のペレットを得た。続いて得られたペレットを用い、加熱プレス機を使用し、温度220℃、予熱時間3分、加圧時間3分の条件で熱プレス後、直ちに温度30℃、加圧時間3分の条件で冷プレスして厚み1mmのプレスシートを得た。また同様にして2mm、3mm、6mmの各厚みのプレスシートをそれぞれ得た。以上の工程の製造性を下記の基準で評価した。また下記の試験(1)〜(8)を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
〇:特に問題なく、各厚みのプレスシートを得ることができた
×:加圧ニーダーにおける溶融混練が過負荷で安定しない、造粒ができないなど、上記工程中の少なくとも何れか1において不具合があった。
(1)絶縁性:
JIS K6271法に従い、サンプルとして上記で得た1mm厚のプレスシートを用い、二重リング法で測定した。
(評価基準)絶縁抵抗率は10の14乗Ωcm以上を合格とした。
測定装置として京都電子工業株式会社製、「Kemtherm QTM―D3(商品名)」を使用し、サンプルとして上記で得た1mm厚のプレスシートを用い、25℃(室温)の条件で、JIS R2616に規定の熱線法により測定を行った。熱伝導の方向は試験片の厚さ方向である。
(評価基準)0.80W/(m・K)以上を合格とした。
UL94V0に従い測定した。サンプルには上記で得た1mm厚のプレスシートを用いた。
(評価基準)V−0水準であることを合格とした。
40mm単軸押出機に圧縮比(CR)2.7のスクリュウ、及び7mm外径、1mm厚のチューブ成形金型を装着した装置を使用し、スクリュウ回転15r.p.m、金型出口樹脂温度230℃、引落率(得られたチューブの厚みに対する金型の厚み寸法の割合として算出する。)1.3の条件で、チューブの押出成形加工を行った。以下の基準で押出成形加工性と成形品の外観を評価した。
押出成形加工性:
○;偏肉が無く、寸法通りのものが得られる。
△;吐出ムラ(サージング)が若干認められ、部分的に偏肉が発生する。
×;吐出ムラ(サージング)が顕著に認められ、偏肉が激しい。
成形品(チューブ)の外観:
〇:チューブ表面に肌荒れ等の外観不良は認められない。
△;チューブ表面に部分的に肌荒れ等の外観不良が認められる。
×;チューブ表面に顕著な肌荒れ等の外観不良が認められる。
ヘキサフルオロリン酸リチウム水溶液(リチウム塩濃度1モル/リットル)に、上記で得た1mm厚プレスシートを、温度80℃で2時間、浸漬した後のプレスシートの状態を目視観察した。また成分(e)を含むサンプルについては、100℃で2時間浸漬する条件でも同様の試験を行った。評価基準は以下の通りである。
○:全く変化なし
△:シート形状が若干変化、もしくは膨潤が認められる、
×:シートの一部が溶解した
JIS K6253 (HDA 15秒後)に準拠し測定を行った。サンプルには、上記で得た6mm厚プレスシートを用いた。
(評価基準)90°未満を合格とした。
JIS K7244−4:1999に従い、サンプルには上記で得た2mm厚プレスシートから10mm×40mmの大きさに打ち抜いたものを用い、−60℃で10分間保持し、昇温速度4℃/分で100℃まで昇温する温度プログラムで測定した。
〇:引張損失正接(tanδ)のピークが単一のピークとして−50℃〜0℃に観測される。
×:上記良好(〇)評価以外の場合。
JIS K7216−1980に従い測定した。サンプルには上記で得た2mm厚プレスシートからA形に打ち抜いたものを用いた。
(評価基準)−5℃以下を合格とした。
成分(a):
(a1)JSR株式会社の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物(HSBR)「ダイナロン1320P(商品名)」、スチレン含有量10質量%、重量平均分子量300,000、JIS K7244−4:1999に従い測定した動的固定粘弾性特性の試験において、引張損失正接のピークが単一のピークとして−25℃近辺に観察される。
(a’1)デュポン・ダウ・エラストマージャパンのポリオレフィン系エラストマー樹脂(エチレン・オクテン−1ランダム共重合体)「エンゲージ8150(商品名)」。
(b1)日本ポリプロ株式会社のポリプロピレン樹脂(PP)「FW4BT(商品名)」、融点139℃、メルトマスフローレート6.5g/10分。
(b’1)旭化成ケミカルズ株式会社の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)「サンテックB470(商品名)」。
(c1)神島化学工業株式会社の合成水酸化マグネシウム「マグシーズS−6(商品名)」、平均粒子径1.0μm、粒子表面をシラン化合物と脂肪酸とで処理。
(c2)神島化学工業株式会社の天然水酸化マグネシウム「EP3−A(商品名)」、平均粒子径7.1μm。
(c’1)昭和電工株式会社の水酸化アルミニウム「H42M(商品名)」、平均粒子径1.0μm、粒子表面をシラン化合物と脂肪酸とで処理。
(d1)日本タルク株式会社の珪酸マグネシウム(Mg3Si4O10(OH)2)「タルクP−4(商品名)」、平均粒子径4.5μm。
(d2)神島化学工業株式会社の酸化マグネシウム「スターマグSL−WR(商品名)」。
(d3)神島化学工業株式会社の炭酸マグネシウム「MSPS(商品名)」。
(d4)電気化学工業株式会社の窒化ホウ素「SGB(商品名)」。
(e1)旭化成ケミカルズ株式会社のスチレン変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPO)「ザイロンX9102(商品名)」。
Claims (4)
- 成分(a)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物85〜98質量%と、成分(b)ポリプロピレン樹脂15〜2質量%とからなり、ここで成分(a)と成分(b)との合計は100質量%である、熱可塑性樹脂100質量部;及び成分(c)水酸化マグネシウム250〜350質量部;を含む電池パックに用いるチューブ用の熱可塑性エラストマー組成物。
ここで上記成分(a)は、JIS K7244−4:1999に従い測定した引張法による動的固体粘弾性特性の試験において、損失正接のピーク温度が単一のピークとして−50℃〜0℃の範囲に観察されるものである。
- 更に成分(d)熱伝導性充填材を、成分(a)と成分(b)との合計100質量部に対し、70〜90質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の電池パックに用いるチューブ用の熱可塑性エラストマー組成物。
- 上記成分(d)が、酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の電池パックに用いるチューブ用の熱可塑性エラストマー組成物。
- 更に成分(e)ポリフェニレンエーテル樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電池パックに用いるチューブ用の熱可塑性エラストマー組成物。
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