以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である車両用制動システム10の概略構成図である。この車両用制動システム10は、ガソリン車、ディーゼル車、電気自動車(燃料電池車を含む)、ハイブリッド車等の各種車両に搭載することができる摩擦制動システムである。
まず、液圧路について説明すると、図1中の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、第1の液圧発生部となるモータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、車両挙動安定化装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図1中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、車両挙動安定化装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
第2の液圧発生部となる車両挙動安定化装置(VSA装置)18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。ディスクブレーキ機構30a〜30dは制動力発生部となる。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液(ブレーキフルード)がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(図示せず)に対して摩擦制動力が付与される。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する第2ピストン40a及び第1ピストン40bが摺動自在に配設される。第2ピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、第1ピストン40bは、第2ピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面には、環状段部を介して一対のカップシール44a、44bがそれぞれ装着される。一対のカップシール44a、44bの間には、それぞれ、後述するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、第2ピストン40aと第1ピストン40bとの間には、ばね部材50aが配設され、第1ピストン40bとシリンダチューブ38の前端部との間には、他のばね部材50bが配設される。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と通じるように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側の下流側の液圧を検知するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは励磁時の状態を示す(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。
このストロークシミュレータ64は、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液が吸収可能に設けられる。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと車両挙動安定化装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、車両挙動安定化装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bと車両挙動安定化装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、車両挙動安定化装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動式のモータ72の駆動力によって第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを軸方向に駆動することによりブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置である。なお、モータシリンダ装置16において、ブレーキ液圧を発生させる(上昇させる)ときの第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの移動方向(図1中矢印X1方向)を「前」とし、その反対方向(図1中矢印X2方向)を「後」とする。
モータシリンダ装置16は、軸方向に移動可能な第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを内蔵するシリンダ部76と、第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを駆動するためのモータ72と、モータ72の駆動力を第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bに伝達するための駆動力伝達部73とを備えている。
また、第2スレーブピストン88aは、その外周に沿って第2スレーブピストン88aの前後方向に第2円筒部材88a1が固定され、それらが一体となって形成されている。そして、シリンダ部76内部を第2円筒部材88a1が摺動することで、第2スレーブピストン88aが前後方向に駆動される。また、第1スレーブピストン88bも、その外周に沿って第1スレーブピストン88bの前方向に第1円筒部材88b1が固定され、それらが一体となって形成されている。そして、シリンダ部76内部を第1円筒部材88b1が摺動することで、第1スレーブピストン88bが前後方向に駆動される。
駆動力伝達部73は、モータ72の回転駆動力を伝達するギア機構(減速機構)78と、この回転駆動力をボールねじ軸(スクリュー)80aの直線方向駆動力に変換するボールねじ構造体80と、を含む駆動力伝達機構74を有している。
シリンダ部76は、略円筒状のシリンダ本体82と、シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記のように、シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが駆動自在に設けられている第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの前端に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
第2スレーブピストン88aに固定されている第2円筒部材88a1の外周面と駆動力伝達機構74との間を液密にシールする、スレーブカップシール90a(シール部材)がシリンダ部76側に設けられる。また、スレーブカップシール90aと離間して、スレーブカップシール90b(シール部材)もシリンダ部76側に設けられ、スレーブカップシール90aとスレーブカップシール90bとの間には、後記するリザーバポート92aと連通する流路口が設けられる。そして、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2リターンスプリング96aが設けられる。さらに、スレーブカップシール90aにおけるスレーブカップシール90bの反対側には、スレーブカップシール90e(シール部材)及び液溜まり91がシリンダ部76側に設けられている。スレーブカップシール90e及び液溜まり91が設けられることにより、より液密にシールすることができる。
一方、第1スレーブピストン88bに固定されている第1円筒部材88b1の外周面と後記する第1液圧室98bとの間を液密にシールする、スレーブカップシール90c(シール部材)がシリンダ部76側に配設される。また、スレーブカップシール90bとスレーブカップシール90cとにより、後記する第2液圧室98aが液密にシールされる。
また、スレーブカップシール90cと離間して、第1液圧室98bを液密にシールするスレーブカップシール90d(シール部材)がシリンダ部76側に配設される。さらに、スレーブカップシール90cとスレーブカップシール90dとの間には、後記するリザーバポート92bと連通する流路口が設けられる。そして、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の開口(つまりシリンダ部76の前端に備えられる開口)を閉塞する蓋部材82cと間には、第1リターンスプリング96bが配設される。
シリンダ部76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内のリザーバ室と通じるように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第1液圧室98bとが設けられる。
さらに、第1スレーブピストン88bとシリンダ部76の開口を閉塞する蓋部材82cとの間には、第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制する規制手段102が設けられる。これにより、第1スレーブピストン88bの第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンが阻止され、特にマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するバックアップ時において、一系統の失陥時に他の系統の失陥が防止される。さらに、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aとの間にも、第1スレーブピストン88bと第2スレーブピストン88aの最大離間距離と最小離間距離とを規制する規制手段103が設けられる。
規制手段102は、シリンダ本体82と蓋部材82cとの間にフランジ部102b1を介して固定された筒状部材102bと、筒状部材102bの内部を摺動し、第1スレーブピストン88bと接続部材102a1によって接続されている第1規制ピストン102aと、により構成される。つまり、規制手段102を構成するフランジ部102b1は、シリンダ本体82(つまりシリンダ部76)と蓋部材82cとの間に、図示しないネジ止め等で挟持固定される。そして、第1規制ピストン102aが筒状部材102b内を摺動することで、第1規制ピストン102aに接続される第1スレーブピストン88bの摺動範囲が規制される。
また、規制手段103は、第1スレーブピストン88bに接続されて固定されている筒状部材103bと、筒状部材103bの内部を摺動し、第2スレーブピストン88aと接続部材103a1によって接続されている第2規制ピストン103aと、により構成される。そして、第2規制ピストン103aが筒状部材103b内を摺動することで、第2規制ピストン103aに接続される第2スレーブピストン88aの摺動範囲が規制される。
車両挙動安定化装置18は、右側前輪及び左側後輪(図示せず)のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪(図示せず)のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。
なお、第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bと、各ディスクブレーキ機構30a、30b、30c、30dとの接続の組み合わせは、前記した組み合わせに限定されず、互いに独立した2系統が担保されれば、次のような組み合わせとすることができる。つまり、図示はしないが、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。また、第2ブレーキ系110aは、右側前輪及び左側前輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、右側後輪及び左側後輪(図示せず)に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bとで対応するものには同一の参照符号を付すと共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで適宜付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。車両挙動安定化装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126と、を備える。
さらに、車両挙動安定化装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第2液圧室98aで発生したブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。
次に、車両用制動システム10の基本動作について説明する。車両用制動システム10が正常に機能する際には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がリターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力が発生してブレーキペダル12に付与される。
このようなシステム状態において、制御装置230(図2)は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みをブレーキペダルストロークセンサ240(図2)で検出すると、モータシリンダ装置16のモータ72を駆動させ、モータ72の駆動力を、駆動力伝達機構74を介して伝達し、第2リターンスプリング96a及び第1リターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図1中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて目的のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、車両挙動安定化装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪(図示せず)に必要な摩擦制動力が付与される。
換言すると、車両用制動システム10では、電動ブレーキ装置として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御を行う制御装置230(図2)が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との接続を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。
また、制御装置230(図2)は、車両100の走行中の横滑り等に対応するような挙動制御を行っている。すなわち、車両100の走行中に、急ハンドルで車両100の後部が横滑りする、カーブを曲がり切れずに車両100が横滑りする等の状況に対応する制御である。このような車両100が横滑りする等の状況は、制御装置230(図2)が、車両の舵角、車輪速、及び、ヨーレイト/横Gを各種センサ(何れも図示せず)で検出することによって判断することができる。また、その際のブレーキペダル12の操作量等もブレーキペダルストロークセンサ240(図2)等で検出する。そして、制御装置230は、車両挙動安定化装置18の圧力センサPhで液圧を検出して、車両挙動安定化装置18のモータM(図1)等のアクチュエータ類を制御して、左右の前輪、左右の後輪(図示せず)の4つの車輪の摩擦制動力を個別に制御する。すなわち、ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を個別に制御する。これにより、車両の走行中の横滑り等に対応するような摩擦制動力を車両挙動安定化装置18で発生させて、車両100の挙動制御を行っている(公知のため詳細は省略)。このように、車両用制動システム10は、制御装置230(図2)でモータシリンダ装置16とは別に車両挙動安定化装置18を直接駆動制御可能である。このため、運転者のブレーキペダル12の操作とは無関係にディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させることが可能となる。
図2は、車両用制動システム10の制御系の回路図である。モータシリンダ装置16のモータ72は、例えば、ブラシレスモータ等で構成される。モータ72には、直流電源であるバッテリ201から供給される直流電力を三相交流電力に変換するインバータ202が接続されている。インバータ202は、6個のスイッチング素子211〜216、及びこれらのスイッチング素子211〜216とそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオード221〜226を備えた公知の構成の回路である。すなわち、インバータ202は、制御部となる制御装置(ブレーキECU(Electronic Control Unit))230から供給されるPWM(Pulse Width Modulation)信号Pu,Pv,Pwにより制御され、PWM信号Pu,Pv,Pwに基づいて、インバータ202が備える図示しないゲートドライブ回路がスイッチング素子211〜216を駆動して、モータ72のu相、v相、w相の各相に駆動電流iu,iv,iwを供給して、モータ72を任意の方向、速度で回転駆動する。なお、必要に応じて、バッテリ201とインバータ202との間に、バッテリ201の電圧を昇圧するコンバータを設けてもよい。
制御装置230は、モータシリンダ装置16(のモータ72)と、車両挙動安定化装置18とを制御する装置であり、ブレーキペダル12の操作量、操作速度を検出するブレーキペダルストロークセンサ240と、前記の圧力センサPpと、インバータ202からモータ72のu相、v相、w相の各相に供給する駆動電流iu,iv,iwを検出する電流センサ250と、モータ72の回転角度θを検出する回転角度検出センサ255と、車両挙動安定化装置18(の各種アクチュエータ、センサ)とが接続されている。制御装置230は、これら各種センサで検出する各種物理量等に基づいて、モータシリンダ装置16のモータ72と、車両挙動安定化装置18(の各種アクチュエータ)とを制御する。
図3は、制御装置230について説明するブロック図である。制御装置230は、第1制御部231と、第2制御部232とを備えている。第1制御部231は、モータシリンダ装置16のモータ72を制御し、第2制御部232は、車両挙動安定化装置18のモータM等の各種アクチュエータを制御する。ちなみに、制御装置230は、車両用制動システム10を制御するECU(ESB−ECU)と、車両挙動安定化装置18を制御するECU(VSA−ECU)の機能を兼ね備えているといえる。
まず、第1制御部231について説明する。第1制御部231は入力部261を備えている。入力部261は、ブレーキ圧制御器262に、モータシリンダ装置16で発生させる目標となるブレーキ圧である目標ブレーキ圧と、モータシリンダ装置16で実際に発生させているブレーキ圧である実ブレーキ圧とを入力する。目標ブレーキ圧は、ブレーキペダル12の操作量、操作速度をブレーキペダルストロークセンサ240(図2)で検出して、この検出値に基づいた値として入力部261が求める。また、実ブレーキ圧は、圧力センサPp(図1、図2)の検出値に基づいて現在のブレーキ圧を示すものとして入力部261が求める。ブレーキ圧制御器262は、実ブレーキ圧を目標ブレーキ圧に近づけるようにフィードバック制御を行うための制御器である。すなわち、ブレーキ圧制御器262は、目標ブレーキ圧と実ブレーキ圧との差分等に基づいて、モータ72の制御信号であるモータ駆動指示電圧を出力する。なお、目標ブレーキ圧は、ブレーキペダル12の操作量、操作速度に基づかないで設定されることもあり得る。
このモータ駆動指示電圧は電圧絶対値制限部263に入力される。電圧絶対値制限部263は、モータ駆動指示電圧が最大許容駆動電圧を超えないようにモータ駆動指示電圧を制限する。この場合の最大許容駆動電圧は可変であり、どのような値とするかは後述する。この最大許容駆動電圧を超えないように制限をかけられたモータ駆動指示電圧は、駆動電圧として出力される。
この駆動電圧はモータ72の出力の大きさを指示する制御信号となる。すなわち、駆動電圧が大きい程、出力が大きくなるようにモータ72は制御される。この駆動電圧はモータコントローラ264に入力され、モータコントローラ264が駆動電圧に応じた前記のPWM信号Pu,Pv,Pwを生成し、インバータ202(図2)に出力する。
次に、前記の最大許容駆動電圧の算出について説明する。入力部261は、電流センサ250(図2)による駆動電流iu,iv,iwの検出値からモータ72の電流実効値であるモータ電流実効値を求めて、これを二乗部271に出力する。また、入力部261は、予め上限電流実効値(上限電流値)が設定されている。入力部261は、この上限電流実効値を二乗部272に出力する。上限電流実効値は、モータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値であり、モータ72が使用される上限となると想定される雰囲気温度で予め実験的に求める。
二乗部271は、入力されたモータ電流実効値を二乗する。この二乗値はモータ72の発熱量の瞬時値に相当する(ジュールの法則)、第1の値となる。また、二乗部272は、入力された上限電流実効値を二乗する。上限電流実効値では、モータ72の発熱と放熱とが釣り合って等しくなるため、上限電流実効値の二乗値はモータ72の使用環境下における最も厳しい条件下での放熱量の瞬時値に相当する、第2の値となる。
このように、モータ72の発熱量の瞬時値を示す二乗部271の出力値(第1の値)と、モータ72の放熱量の瞬時値を示す二乗部272の出力値(第2の値)との差分を、減算部273で求める。そして、この差分を積分器274で時間積分する。この積分値は、(比例乗数は無視した)モータ72の熱容量の収支に相当する、第3の値となる。すなわち、第3の値は、モータ72の発熱量と放熱量との差分に相当する。
この積分器274では、その求めた積分値(第3の値)に上限値、下限値処理を付して出力する。すなわち、積分値の下限値は0に制限する。上限値は、モータ72が使用される上限となる雰囲気温度を想定して当該温度でモータ72の温度が上限に達するまで発熱実験を行い、その上限に達したときのモータ72のモータ電流実効値の二乗を経過時間だけ時間積分した値とする。
積分器274の出力する積分値(第3の値)は、制御マップ部275に入力される。制御マップ部275は、予め定められた制御マップに基づいて、積分値を前記の最大許容駆動電圧に変換する。この変換は、積分器274の出力が下限値である0のときに、最大許容駆動電圧が最大電圧になるようにする。また、積分器274の出力が大きくなるにつれて最大許容駆動電圧の値は漸次低下するようにする。そして、積分器274の出力が前記の上限値(符号283)で最大許容駆動電圧は最低値となるようにする。このときの最大許容駆動電圧の最低値は、前記のモータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値である上限電流実効値とするような、モータ72の駆動電圧である。前記のとおり、この制御マップ部275で求められた最大許容駆動電圧は電圧絶対値制限部263に入力され、モータ駆動指示電圧に最大許容駆動電圧を超えないように制限をかけたものが、駆動電圧としてモータコントローラ264に与えられる。
すなわち、積分器274の出力が0のときはモータ72の発熱量に比して放熱量も大きいので、最大許容駆動電圧が最大値となる。このときは、モータ72の出力が十分に大きくなるように駆動電圧が電圧絶対値制限部263から出力され、モータ72への駆動電流iu,iv,iwも大きくなる。一方、モータ72の発熱量が放熱量に比して大きくなるのにしたがって積分器274の出力が大きくなるので、最大許容駆動電圧を下げることで、モータ72の出力を下げて、モータ72の発熱量が少なくなるように駆動電圧、ひいては駆動電流iu,iv,iwに制限をかける。そして、積分器274の出力が最大となったときは、前記のモータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値である上限電流実効値まで最大許容駆動電圧を下げる。この値が最大許容駆動電圧の最低値となるので、モータ72への駆動電流iu,iv,iwが、モータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値である上限電流実効値以下となる範囲で、モータ72の出力低減を行うことになる。
なお、前記の第1制御部231の構成は一構成例にすぎない。第1制御部231では、電流実効値を用いて、前記の演算を行っているが、電流実効値に代えてモータ72への各相の駆動電流iu,iv,iwを用い、モータ72の相ごとに独立して演算を行うようにしてもよい。
また、前記の例では、モータ駆動指示電圧を最大許容駆動電圧で制限して、駆動電圧を生成しているが、最大許容駆動電圧の値に応じて、PWM信号Pu,Pv,Pwのデューティ比を制限するようにしてもよい。
あるいは、最大許容駆動電圧で駆動電圧を制限するのに代えて、駆動電流iu,iv,iwを直接制限するようにしてもよい。
次に、同じく図3を参照して、第2制御部232について説明する。第2制御部232は、車両挙動安定化装置18を制御する。すなわち、第2制御部232は、補助ブレーキ圧制御器281を備えている。補助ブレーキ圧制御器281は、前記のように最大許容駆動電圧でモータ72の出力の制限を行っているので、これによりモータシリンダ装置16で発生する摩擦制動力の不足分を補うように、車両挙動安定化装置18で摩擦制動力を発生させる。
すなわち、補助ブレーキ圧制御器281には前記の目標ブレーキ圧、及び電圧絶対値制限部263からの駆動電圧が入力される。補助ブレーキ圧制御器281では、モータコントローラ264に入力される駆動電圧がわかるので、これにより、モータシリンダ装置16において、目標ブレーキ圧に対するブレーキ圧の不足分を判断し、その不足分を補うように、車両挙動安定化装置18で摩擦制動力を発生する。つまり、車両挙動安定化装置18のモータM等のアクチュエータ類を制御して、左右の前輪、左右の後輪(図示せず)のディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に液圧を発生させて、モータシリンダ装置16により発生する摩擦制動力の不足分を補える程度に摩擦制動力を上乗せして発生させる。
補助ブレーキ圧制御器281は、このように、モータシリンダ装置16により発生する摩擦制動力の不足分を補える程度に摩擦制動力を上乗せして発生させるような駆動信号を生成し、コントローラ282に出力する。コントローラ282は、当該駆動信号に応じて車両挙動安定化装置18のモータM等のアクチュエータ類を制御する各種制御信号を出力して、ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に必要な液圧を発生させる。
図4は、本実施形態の作用について説明するグラフである。図4(a)は、モータ72を駆動するPWM信号Pu,Pv,Pwのデューティ比や電流実効値の時間変化を示している。図4(b)は、図4(a)と関連付けてモータシリンダ装置16による目標ブレーキ圧と実ブレーキ圧との時間変化を示している。図4(a)は縦軸にデューティ比(%)、電流実効値(Arms)を、横軸に時間を示している。図4(b)は縦軸にブレーキ圧(MPa)、横軸に時間を示している(下記の図5においても同様)。
前記のとおり、モータ72の発熱量が放熱量に比して大きくなって(積分器274の出力が大きくなって)、最大許容駆動電圧(図3)が下がると、駆動電圧(図3)に制限がかかり、これにより、図4(a)に示すように、PWM信号Pu,Pv,Pwで最大限許容できるデューティ比(信号のON及びOFF時間に対するON時間の比)である最大許容駆動デューティ比(%)310が下がる。よって、PWM信号Pu,Pv,Pwのデューティ比であるモータ駆動デューティ比(%)311も下がる(符号313部分)。これにより、モータ72に通電する電流実効値312も、モータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値である上限電流実効値まで低下していく(符号314部分)。
図4(b)は、図4(a)と関連付けて、目標ブレーキ圧320と実ブレーキ圧321とを示している。モータ72の発熱量が放熱量に比して大きくなって、発熱限界に近づくと、前記のとおりモータ駆動デューティ比(%)311が絞られるため、目標ブレーキ圧320に対しと実ブレーキ圧321が制限される(符号322部分)。これによる、摩擦制動力の不足分は、前記のとおり、第2制御部232で車両挙動安定化装置18を制御することにより補う。
図5も、本実施形態の作用について説明するグラフである。図5(a)は、モータ72を駆動するPWM信号Pu,Pv,Pwのデューティ比や電流実効値の時間変化を示している。図5(b)は、図5(a)と関連付けてモータシリンダ装置16による目標ブレーキ圧と実ブレーキ圧との時間変化を示している。図4と同じ符号は図4を参照した前記の説明と同様であり、詳細な説明は省略する。
図5の例では、運転者がブレーキペダル12の強い踏込みを連続的に繰り返した場合を示している。これは、モータ72の発熱が大きな運転状況である。ブレーキペダル12の強い踏込みを連続的に繰り返した結果、積分器274の出力が大きくなって、最大許容駆動電圧(図3)が下がって、駆動電圧(図3)に制限がかかる。これにより、図5(a)に示すように最大許容駆動デューティ比(%)310が60%程度まで下がる(符号330)。しかし、その後、ブレーキペダル12の強い踏込みの繰り返しを停止すると、モータ72の電流実効値312は、モータ72に連続通電が可能と考えられる上限となる電流実効値である上限電流実効値を下回る。すなわち、モータ72が冷える。これにより、積分器274の出力が低下し、最大許容駆動デューティ比(%)310が回復する(符号331)。そして、再度、ブレーキペダル12の強い踏込みを連続的に繰り返すと、前記と同様の最大許容駆動デューティ比(%)310が低下する(符号332)。図5(b)は、図5(a)と関連付けて、目標ブレーキ圧320と実ブレーキ圧321とを示している。
以上説明した本実施形態の車両用制動システム10によれば、図3に示すように、上限電流実効値を二乗部272で二乗してモータ72の放熱量の瞬時値(第2の値)を求め、モータ72の発熱量の瞬時値を示す二乗部271の出力(第1の値)との差分を減算部273で求める。そして、この差分を積分器274で時間積分して、モータ72の発熱量と放熱量との差分を求め(第3の値)、モータ72の温度が過剰に高くなっていないかを的確に判断する。そして、積分器274の出力に基づいて、モータ72の出力に制限を設ける。よって、モータ72の温度を適切に判断して、モータシリンダ装置16による制動力を不必要に制限しないようにすることができる。
この場合に、上限電流実効値として、前記のとおり、モータ72を使用する雰囲気温度の上限となる温度でモータ72の発熱と放熱とが等しくなるモータ72の電流値を用いているので、上限電流実効値を、より正確な電流値とすることができる。
また、図3に示すように、制御マップ部275により、積分器274の出力最大値283では、モータ72に連続通電可能な上限電流実効値となるように最大許容駆動電圧を出力している。すなわち、モータ72に連続通電可能な上限電流実効値以下となる範囲でモータ72の出力の低減を行う。よって、上限電流実効値を、より正確に把握できるので、モータ72の出力を最大限発揮することができる。
その上、このような制御によりモータシリンダ装置16による制動力を制限しても、その不足分は、前記のように、車両挙動安定化装置18の液圧で補うので、制動力の低下を防止し、運転者に制動力の変化の違和感を与えることを防止することができる。