JP6057439B2 - アクリル系樹脂、及び成形体 - Google Patents
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Description
従来、一般的にメタクリル系樹脂の機械強度や成形性を改善する公知の方法として、低分子量のメタクリル系樹脂で流動性を付与し、高分子量もしくは微架橋構造で機械強度を付与する方法が知られている。それに関連して高分子量もしくは低分子量のメタクリル系樹脂を溶融混合したり、分岐構造を用いて分子量分布を拡大したりする技術が報告されている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。
また、特許文献2には、低分子量を構成するメタクリル系樹脂に、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体を多量に共重合させる技術が記載されている。しかし、得られるメタクリル系樹脂の流動性は十分ではなく、高い流動性を得ようとすると、メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体の量を増加させる必要があることから、耐熱性や機械強度が低下する傾向にあり、流動性、機械強度、耐熱性をバランスよく付与することができていない。
さらに、特許文献3に記載の多官能モノマーを用いた微架橋メタクリル樹脂の製造方法においては、多官能モノマーの制御が非常に難しい上、十分な流動性付与効果を得ることができず、流動性は不十分である。また、多官能モノマーの量が過剰であると、混合均一性が低下し、成形品の外観が低下する。多官能モノマー量が少なすぎると流動性向上や機械強度の保持効果が得られない。
また、特許文献4においては、重合安定性についてあまり考慮されておらず、樹脂同士が融着したものなどに由来する凝集体が多くできる傾向にある、という問題を有している。凝集体が増加すると収率の低下を招く上、配管内での凝集体の詰りによる閉塞で生産性の低下を招来するため、凝集体の低減化が求められている。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
JIS−Z8801に基づく篩を用いて篩い分けを行ったときの、
500μm以上の粒子径の粒子の重量平均分子量(A)と、
355μm〜300μmの粒子径の粒子の重量平均分子量(B)と、
150μm以下の粒子径の粒子の重量平均分子量(C)と、
において、下記関係式(1)、(2)を満たすアクリル系樹脂。
0≦|[(A)−(B)] /(B)|×100(%)≦10 ・・・(1)
0≦|[(C)−(B)] /(B)|×100(%)≦10 ・・・(2)
〔2〕
メタクリル酸エステル単量体単位80〜99.5質量%、及び少なくとも1種のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位0.5〜20質量%を含むアクリル系樹脂であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量が6万〜30万であり、
GPC溶出曲線から得られるピーク分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分が、前記GPC溶出曲線から得られるエリア面積比率にして7〜40%含まれている前記〔1〕に記載のアクリル系樹脂。
〔3〕
平均粒子径が100〜500μmである前記〔1〕又は〔2〕に記載のアクリル系樹脂。
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のアクリル系樹脂の製造方法であって、
メタクリル酸エステルを含む原料混合物を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が5千〜5万である重合体(I)を、前記アクリル系樹脂全体に対して5〜45質量%製造した後、
前記重合体(I)の存在下で、前記メタクリル酸エステルを含む原料混合物を添加して重量平均分子量が6万〜35万である重合体(II)を、前記アクリル系樹脂全体に対して95〜55質量%製造する工程を有し、
前記重合体(I)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピークに達するまでの時間をT1とし、
前記重合体(II)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度に達するまでの時間をT2とした時に、
下記式(3)が成り立つアクリル系樹脂の製造方法。
T2/T1≧1 ・・・(3)
〔5〕
下記式(4)が成り立つ前記〔4〕に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
5≧T2/T1≧1 ・・・ (4)
〔6〕
前記T2が30分以上240分以下である前記〔4〕又は〔5〕に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
〔7〕
メタクリル酸エステルを含む原料混合物を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が5千〜5万である重合体(I)を、前記アクリル系樹脂全体に対して5〜45質量%製造した後、
前記重合体(I)の存在下で、前記メタクリル酸エステルを含む原料混合物を添加して重量平均分子量が6万〜35万である重合体(II)を、前記アクリル系樹脂全体に対して95〜55質量%製造する工程を有し、
前記重合体(I)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピークに達するまでの時間をT1とし、
前記重合体(II)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度に達するまでの時間をT2とした時に、
下記式(3)が成り立つアクリル系樹脂の製造方法。
T2/T1≧1 ・・・(3)
〔8〕
下記式(4)が成り立つ請求項7に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
5≧T2/T1≧1 ・・・ (4)
〔9〕
前記T2が30分以上240分以下である請求項7又は8に記載のアクリル系樹脂の製造方法。
〔10〕
前記〔4〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の製造方法により得られるアクリル系樹脂。
〔11〕
前記〔10〕に記載のアクリル系樹脂を成形することにより得られる成形体。
〔12〕
車両用部品である前記〔11〕に記載の成形体。
また、重合工程において、凝集体の生成を抑えることができ、結果として生産性が高い、アクリル系樹脂の製造方法を提供できる。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、本発明においては、重合前のモノマー成分のことを「〜単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「〜単量体単位」という。
また、以下、本明細書においてはアクリル系樹脂にはメタクリル系樹脂が含められるものとして記載する。
(粒子径と重量平均分子量との関係)
本実施形態のアクリル系樹脂は、JIS−Z8801に基づく篩を用いて、篩い分けを行ったときの、500μm以上の粒子径の粒子の重量平均分子量(A)と、
355μm〜300μmの粒子径の粒子の重量平均分子量(B)と、
150μm以下の粒子径の粒子の重量平均分子量(C)と、
において、下記関係式(1)、(2)を満たす。
0≦|[(A)−(B)] /(B)|×100(%)≦10 ・・・(1)
0≦|[(C)−(B)] /(B)|×100(%)≦10 ・・・(2)
微粒子の篩い分け、及び各粒子の重量平均分子量の測定方法については、後述する実施例において記載された方法を適用することができる。
上記式(1)、(2)の関係を満たすことにより、色調や加工性に優れたアクリル系樹脂が得られる。
本実施形態のアクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位80〜99.5質量%、及び少なくとも1種のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位0.5〜20質量%を含むものであることが好ましい。
<メタクリル酸エステル単量体>
本実施形態のアクリル系樹脂が、上記組成である場合、これ構成するメタクリル酸エステル単量体としては、本発明の効果を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、好ましい例としては下記一般式(i)で示される単量体が挙げられる。
また、R2は炭素数が1〜12の基、好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基を表し、炭素上に水酸基を有していてもよい。
好適なメタクリル酸エステル単量体の具体例としては、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2−エチルヘキシル)、メタクリル酸(t−ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2−トリフルオロエチル)等が挙げられ、代表的なものはメタクリル酸メチルである。
上記メタクリル酸エステル単量体は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、後述するアクリル系樹脂の製造方法において、「重合体(I)」と「重合体(II)」とが、互いに同じメタクリル酸エステル単量体を用いたものであってもよく、異なるメタクリル酸エステル単量体を用いたものであってもよい。
前記メタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(ii)で表されるアクリル酸エステル単量体が好適なものとして挙げられる。
例えば、耐光性、耐熱性、流動性、熱安定性を高める観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が好ましく用いられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルがより好ましく、アクリル酸メチルが入手しやすくさらに好ましい。
上記ビニル系単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
また、後述するアクリル系樹脂の製造方法において、「重合体(I)」と「重合体(II)」とが、互いに同じビニル系単量体を用いたものであってもよく、異なるビニル系単量体を用いたものであってもよい。
本実施形態のアクリル系樹脂は、上述したように、メタクリル酸エステル単量体単位80〜99.5質量%に対し、少なくとも1種のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位を0.5〜20質量%を含むものであることが好ましく、より好ましくは、0.5〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、さらにより好ましくは0.7〜8質量%、よりさらに好ましくは1〜8質量%、特に好ましくは1〜6質量%含むものである。
これにより、流動性、耐熱性、熱安定性に優れたアクリル系樹脂が得られる。
本実施形態のアクリル系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量が6万〜30万であることが好ましく、6万〜25万であることがより好ましく、7万〜23万であることがさらに好ましい。
これにより機械的強度、耐溶剤性、流動性に優れたアクリル系樹脂が得られる。
重量平均分子量の測定に関しては、予め、単分散の、重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準アクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、得られた検量線から測定試料の重量平均分子量を求めることができる。
また、本実施形態のアクリル系樹脂は、GPC溶出曲線から得られるピーク分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分が、前記GPC溶出曲線におけるエリア面積比率にして7〜40%の割合で含まれているものであることが好ましい。
これにより成形時における加工流動性の向上が図られ、良好な可塑化効果が得られ、成形体の歪み抑制、クラック抑制効果が得られる。
前記ピーク分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分の含有量は、前記GPC溶出曲線におけるエリア面積比率にして、より好ましくは7〜35%、さらに好ましくは8〜35%、さらにより好ましくは8〜30%である。
なお、分子量が500以下のアクリル系樹脂は、成形時にシルバーストリークスと呼ばれる発泡様の外観不良を発生させやすくなるため、可能な限り、少ない方がよい。
ここで、ピーク分子量(Mp)とは、GPC溶出曲線においてピークを示す分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合には、存在量が最も多い分子量が示すピークを意味する。
図2に、GPC溶出曲線測定グラフ上での累積エリア面積の一例を示す。
グラフの縦軸はRI(示差屈折)検出強度(mV)、グラフの横軸の下部は溶出時間(分)、上部はGPCエリア面積全体に対する累積エリア面積(%)を示す。
図2中、GPC溶出曲線におけるエリア面積とは、斜線部分を示す。
具体的には、先ず、GPC測定で得られた溶出時間とRI(示差屈折検出器)による検出強度から得られるGPC溶出曲線に対し、測定機器により自動で引かれるベースライン7とGPC溶出曲線6とが交わる点Aと点Bとを定める。
点Aは、溶出時間初期のGPC溶出曲線6とベースライン7とが交わる点である。
点Bは、原則として分子量が500以上でベースラインとGPC溶出曲線が交わる位置とする。分子量が500以上の範囲で交わらなかった場合は分子量が500の溶出時間のRI検出強度の値を点Bとする。
点A、B間のGPC溶出曲線と線分ABとで囲まれた斜線部分がGPC溶出曲線におけるエリアである。当該エリア内の面積が、GPC溶出曲線におけるエリア面積である。高分子量成分から溶出されるカラムを用いることにより、溶出時間初期に高分子量成分が観測され、溶出時間終期に低分子量成分が観測される。
この図3において、ある溶出時間におけるベースライン上の点を点X、GPC溶出曲線上における点を点Yとする。曲線AYと、線分AXと、線分XYとで囲まれる面積の、GPC溶出曲線における全エリア面積に対する割合を、ある溶出時間での累積エリア面積(%)の値とする。
以下、図4のGPC曲線を用いて、アクリル系樹脂中のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の、高分子量成分と低分子量成分の、それぞれの成分の平均組成比率を累積エリア面積として示す。累積エリア面積0〜2%、すなわち高分子量を有するアクリル系樹脂中のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の平均組成比率をMh(質量%)とする。一方、累積エリア面積98〜100%、すなわち低分子量を有するアクリル系樹脂中のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の平均組成率をMl(質量%)とする。累積エリア面積0〜2%、累積エリア面積98〜100%のグラフ上での位置の概略図を図4に示す。
分取したサンプルの組成を既知の熱分解ガスクロマトグラフィー法により分析すればよい。
本実施形態のアクリル系樹脂が、重合原料としてメタクリル酸エステルとビニル単量体を用いている場合、Mh(質量%)とMl(質量%)には、下記の式(iii)の関係が成り立つことが好ましい。
(Mh−0.8)≧Ml≧0 ・・・(iii)
これは、低分子量成分より高分子量成分の方が、メタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の平均組成が0.8質量%以上多いことを示す。低分子量成分には他のビニル単量体が必ずしも共重合していなくてもよいことを示す。
Mh(質量%)とMl(質量%)との差は、流動性向上の効果のために0.8質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは、下記式(iv)が成り立つことである。
(Mh−2)≧Ml≧0 ・・・(iv)
すなわち、アクリル系樹脂のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の、高分子量成分の平均組成を、低分子量成分の平均組成より2質量%以上多くすることで、耐熱性や環境試験におけるクラックや成形体のゆがみの低発生率、機械強度を保持したまま、劇的な流動性向上効果が得られるために好ましい。
本実施形態のアクリル系樹脂は、平均粒子径が100〜500μmであることが好ましい。より好ましくは150〜500μmであり、さらに好ましくは150〜450μmであり、さらにより好ましくは180〜450μmであり、よりさらに好ましくは200〜450μmである。
平均粒子径は、例えば、JIS−Z8801に基いた篩を用いて分級を行ってその重量分布を測定し、重量分布をもって粒径分布を作成し、この粒径分布より50質量%に相当する粒径を平均粒子径として計算することにより得られる。
アクリル系樹脂粒子の形状は、例えば、円柱状、略球状、錠剤状等が挙げられ、取扱性と均一性の観点から、略球状であることが好ましい。
本実施形態のアクリル系樹脂が、0.15mm未満の微粒子を多く含む場合、取り扱い時に空中に浮遊しやすくなることから、取扱性が悪化するおそれがある。特に取扱性に関し、優れたものとする場合には、このような微粒子の含有量を減らすことが好ましい。しかしながら、0.15mm未満の微粒子を全て取り除く場合には、除去工程が増加するため、コスト高を招来することになるため、ある程度は許容される。
以上の観点から、粒子径が0.15mm未満の成分の含有量は0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上8質量%以下、さらにより好ましくは0.2質量%以上7質量%以下、よりさらに好ましくは0.3質量%以上6質量%以下である。0.15mm未満の成分の含有量は、JIS−Z8801に基づく篩、東京スクリーン製JTS−200−45−33(目開き500μm),34(目開き425μm),35(目開き355μm),36(目開き300μm),37(目開き250μm),38(目開き150μm),61(受け皿)を用いて、篩分け試験機TSK B−1を用いて、振動力
MAXにて10分間ふるいを行った時に、受け皿に残った量を篩にかけた量で割ることにより求められる。
以下、アクリル系樹脂の製造方法について説明するが、本実施形態のアクリル系樹脂の製造方法は、以下に示す方法に限定されるものではない。
本実施形態のアクリル系樹脂は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法により製造できる。好ましくは塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法が用いられ、より好ましくは溶液重合法、懸濁重合法であり、さらに好ましくは懸濁重合法が用いられる。
本実施形態のアクリル系樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(第1の方法)
予め、所定の重量平均分子量(例えば5千〜5万)を有する重合体(I)を所定の含有量となるように製造しておき、この重合体(I)と異なる重量平均分子量(例えば6万〜35万)を有する重合体(II)の原料組成混合物に重合体(I)を混合する。その混合液を重合させ、重合体(II)が所定の含有量となるようにして製造する方法。
(第2の方法)
予め、所定の重量平均分子量(例えば5千〜5万)を有する重合体(I)を所定の含有量となるように製造し、その後、この重合体(I)とは異なる重量平均分子量(例えば6万〜35万)を有する重合体(II)の原料組成混合物を重合体(I)に逐次追添、又は重合体(I)を当該重合体(I)の重合液毎、重合体(II)の原料組成混合物に逐次追添し、重合体(II)が所定の含有量となるように重合することによって製造する方法。
重合体(II)の重量平均分子量は、機械強度、流動性の観点から、上記のように6万〜35万であることが好ましく、より好ましくは7万〜32万であり、さらに好ましくは7.5万〜30万である。
重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
これらは、単独でもあるいは2種類以上を併用してもよい。
これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として実施してもよい。
これらの開始剤は、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と開始剤の半減期を考慮して適宜選ぶことができる。
塊状重合法やキャスト重合法、懸濁重合法を選択する場合、樹脂の着色を防止しうることなどから、過酸化系開始剤のラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を特に好適に用いることができ、ラウロイルパーオキサイドが特に好適に使用される。
また、90℃以上の高温下で溶液重合法を行う場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は、例えば、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いることが好ましい。
例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行うことができる。
これらの添加量を調整することにより、分子量を調整することが可能である。
これらの添加剤を用いる場合、取扱性や安定性の点からアルキルメルカプタン類が好適に用いられ、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これらは、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部〜3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法だけ用いてもよいし、二種以上の方法を併用してもよい。
この方法によると、重合体(I)と重合体(II)の、それぞれの組成を制御しやすく、重合時の重合発熱による温度上昇を抑えられ、系内の粘度も安定化できるため好ましい。
この場合、重合体(II)の原料組成混合物は、一部重合が開始されている状態であってもよい。そのための重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、もしくは乳化重合のいずれかの方法が好ましく、より好ましくは塊状重合、溶液重合、及び懸濁重合法である。
次に、アクリル系樹脂の製造方法に関し、上述した重合体(I)、(II)の具体的な配合比について説明する。
なお、以下の説明においては、重合体(I)及び(II)は、いずれも、重合原料として、メタクリル酸エステル単量体を含むメタクリル酸エステル系重合体であるものとする。
上記(第1の方法)及び(第2の方法)においては、いずれも、1段目の重合工程でメタクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体及び少なくとも一種のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体を重合してメタクリル酸エステル系重合体(重合体(I))を得、2段目の重合工程でメタクリル酸エステル単量体、又はメタクリル酸エステル単量体及び少なくとも一種のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体を重合して得られるメタクリル酸エステル系重合体(重合体(II))を得る。
これらの配合比率は、重合体(I):5〜45質量%であり、重合体(II):95〜55質量%であることが好ましい。
このような配合比とすることにより、製造工程における重合安定性を図ることができ、メタクリル系樹脂の流動性、成形性、機械的強度の観点からも好ましい。これらの特性のバランスをさらに良好なものとするためには、重合体(I)/重合体(II)の比率は、5〜40質量%/95〜60質量%がより好ましく、5〜35質量%/95〜65質量%がさらに好ましく、10〜35質量%/90〜65質量%がさらにより好ましい。
重合安定性を特に考慮する必要がある場合、重合体(I)中の、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体の配合量は、実質的にゼロであることが好ましく、その際、原料であるメタクリル酸エステル単量体に不純物として存在する程度の量は許容される。
重合体(II)の原料となるメタクリル酸エステル単量体に、その他のビニル系単量体を加える場合、メタクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体との組成比は、メタクリル酸エステル単量体/その他のビニル系単量体の組成比にして、80〜99.5質量%/20〜0.5質量%であることが好ましく、85〜99.5質量%/15〜0.5質量%であることがより好ましく、88〜99質量%/12〜1質量%であることがさらに好ましく、90〜98.5質量%/10〜1.5質量%であることがさらにより好ましい。
上記重合体(I)、重合体(II)の、重合原料として用いられ得る「メタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位」の、それぞれの重合体(I)、(II)中における共重合割合は、本発明の効果が発揮できる範囲であれば、特に限定されるものではないが、重合体(I)のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の組成比率をMal(質量%)、重合体(II)のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の組成比率をMah(質量%)とすると、重合安定性の観点から、下記式(v)の関係が成立することが好ましい。
Mah≧Mal≧0 ・・・(v)
より好ましくは、下記式(vi)の関係を満たすことである。
(Mah−0.8)≧Mal≧0 ・・・(vi)
(Mah−2)≧Mal≧0 ・・・(vii)
上述した各式を満足するように、それぞれの組成比率Mal及びMahを調製するためには、重合時に添加するメタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル系単量体の量を調整すればよい。
アクリル系樹脂の製造方法において、特に、懸濁重合法を適用して重合工程を実施する場合について、詳細に説明する。
アクリル系樹脂を懸濁重合によって製造する場合、上述した(第1の方法)及び(第2の方法)において、重合体(I)の存在下に、重合体(II)の重合を行う。
<温度及び時間>
懸濁重合によってアクリル系樹脂の重合を行う場合、重合温度は、生産性、凝集体の生成量の観点から、60℃以上90℃以下であることが好ましく、65℃以上85℃以下であることがより好ましく、70℃以上85℃以下であることがさらに好ましく、70℃以上83℃以下であることがさらにより好ましい。
上述した重合体(I)及び重合体(II)の重合温度は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
重合体(I)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度に達するまでの時間(T1)は、特に限定されるものではないが、20分以上240分以下とすることが好ましく、30分以上210分以下とすることがより好ましく、45分以上180分以下とすることがさらに好ましく、60分以上150分以下とすることがさらにより好まし
く、60分以上120分以下とすることがよりさらに好ましい。前記重合時間(T1)は、使用する重合開始剤の量や、重合温度の変更によって、適宜調整すればよい。
重合体(I)の原料混合物を添加する際の温度は、使用する原料の沸点を考慮すればよく、使用する原料の沸点と同程度か、沸点以下であることが好ましい。具体的には、60℃以上90℃以下が好ましく、60℃以上85℃以下であることがより好ましく、65℃以上85℃以下であることがさらに好ましく、65℃以上80℃以下であることがさらにより好ましく、70℃以上80℃以下であることがよりさらに好ましい。
重合体(II)の原料混合物は、重合体(I)の重合による発熱ピークが観測された後、直ちに添加してもよく、一定時間保持した後に添加してもよい。重合体(I)の原料混合物の重合度をより上げる必要がある場合には、重合体(I)による発熱ピークが確認された後、一定時間保持してから、重合体(II)の原料混合物を投入することが好ましい。
保持する時間は180分以下とすることが好ましく、より好ましくは10分以上180分以下、さらに好ましくは15分以上150分以下、さらにより好ましくは20分以上120分以下、よりさらに好ましくは20分以上90分以下である。
保持する際の温度は、重合度を上げることができることから、重合体(I)の重合温度と同じか、重合体(I)の重合温度より高い温度であることが好ましく、より高い温度とする場合は、重合温度より5℃以上昇温することが好ましい。昇温する場合は、得られる重合体の凝集を防ぐ観点から100℃以下であることが好ましい。具体的には80℃以上100℃以下が好ましく、80℃以上99℃以下がより好ましく、85℃以上99℃以下がさらに好ましく、88℃以上99℃以下がさらにより好ましく、90℃以上99℃以下がよりさらに好ましい。
上述した重合温度と重合時間に従い、重合を行うことにより、より安息角の小さいポリマー粒子を生成できる。
上述したように、保持工程において昇温した場合、重合体(II)の原料混合物の揮散防止の観点から、70℃〜85℃付近まで温度を下げてから、重合体(II)の原料混合物を添加することが好ましい。
重合体(II)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度が観測されるまでの時間(T2)は、特に限定されるものではないが、好ましくは30分以上240分以下であり、より好ましくは45分以上210分以下、さらに好ましくは60分以上210分以下、さらにより好ましくは60分以上180分以下、よりさらに好ましくは80分以上150分以下である。
T2/T1≧1 ・・・(3)
特に、分子量分布の均一な重合体粒子を得る必要があり、さらに収率低下の一因となる凝集体の生成を抑制する必要がある場合には、1≦T2/T1≦5とすることが好ましく、より好ましくは1≦T2/T1≦4、さらに好ましくは1≦T2/T1≦3である。
重合体(II)の原料混合物を添加してから重合発熱による発熱ピーク温度が観測された後は、得られるアクリル系樹脂(メタクリル系樹脂)中の残存モノマー量を抑えることができることから、重合体(II)の重合温度よりも5℃以上昇温することが好ましい。より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上昇温することが好ましい。
また、得られる樹脂の凝集を防ぐために、昇温した到達温度は、100℃以下とすることが好ましく、好ましい温度範囲としては85℃以上100℃以下、より好ましくは88℃以上99℃以下、さらに好ましくは90℃以上99℃以下である。
昇温後に当該温度に保持する時間は、残存モノマーの低減効果を考慮すると、15分以上360分以下であることが好ましく、30分以上240分以下であることがより好ましく、30分以上180分以下であることがさらに好ましく、30分以上150分以下であることがさらにより好ましく、30分以上120分以下であることがよりさらに好ましい。
得られた重合体スラリーは、懸濁剤除去のために酸洗浄や水洗、アルカリ洗浄等の操作を行うことが好ましく、これらの洗浄操作を行う回数は、作業効率と懸濁剤の除去効率から最適な回数を選べばよく、一回でも複数回繰り返してもよい。
洗浄を行う際の温度は、懸濁剤の除去効率や得られる重合体の着色度合等を考慮して最適な温度を選べばよく、20〜100℃であることが好ましい。より好ましくは30〜95℃、更に好ましくは40〜95℃である。
また、洗浄時の一回あたりの洗浄時間は、洗浄効率や安息角低減効果、工程の簡便さの観点から10〜180分であることが好ましく、より好ましくは20〜150分である。
洗浄時に使用する洗浄液のpHは、懸濁剤除去が可能な範囲であればよいが、好ましくはpH1〜12である。酸洗浄を行う場合のpHは、懸濁剤の除去効率や得られる重合体の色調の観点からpH1〜5であることが好ましく、より好ましくはpH1.2〜4である。
その際使用する酸としては、懸濁剤除去が可能なものであればよく、特に規定はされないが、従来公知の無機酸、有機酸を使用することができる。好適に使用される酸の一例を挙げると、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、硼酸等が挙げられ、それぞれ水等で希釈された希釈溶液で使用してもよい。有機酸としては、カルボキシル基やスルホ基、ヒドロキシ基、チオール基、エノールを有するものが挙げられる。懸濁剤の除去効果や得られる樹脂の色調を考慮すると、より好ましくは硝酸、硫酸、カルボキシル基を有する有機酸である。
酸洗浄後には、得られる重合体の色調、安息角低減の観点から、更に水洗やアルカリ洗浄を行うことが好ましい。
アルカリ洗浄を行う場合のアルカリ溶液のpHは、pH7.1〜12であることが好ましく、より好ましくはpH7.5〜11、さらに好ましくは7.5〜10.5である。
アルカリ洗浄に使用するアルカリ性成分は、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が好ましく用いられる。より好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムであり、さらにより好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムであり、よりさらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。これらのアルカリ性成分は、水等で希釈してpHを調整して使用することができる。
得られた重合体スラリーから重合体粒子を分離する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、遠心力を利用して水を振り切る遠心分離機を用いる脱水方法、多孔ベルト上や濾過膜上で水を吸引除去する方法等が挙げられる。
上記脱水工程を経て得られた含水状態の重合体は、公知の方法により乾燥処理を施し、回収することができる。
例えば、熱風機やブローヒーター等から槽内に熱風を送ることにより乾燥を行う熱風乾燥、系内を減圧した上で必要に応じて加温することで乾燥を行う真空乾燥、得られた重合体を容器中で回転させることにより水分を飛ばすバレル乾燥、遠心力を利用して乾燥させるスピン乾燥等が挙げられる。これらの方法は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
得られる樹脂の含有水分量は、取扱性、色調等の観点から、0.1質量%〜1質量%であることが好ましく、0.15質量%〜1質量%であることがより好ましく、0.2質量%〜1質量%であることがさらに好ましく、0.27質量%〜1質量%であることがさらにより好ましい。
樹脂の含有水分量は、カールフィッシャー法を用いて測定できる。
懸濁重合法を用いてアクリル系樹脂を製造する場合、得られるアクリル系樹脂は略球状であるが、一部に凝集体ができることがある。
前記凝集体とは、得られた重合体を1.68mmメッシュの篩に通した時に、篩の上に残る残渣物のことを指す。
凝集体がアクリル系樹脂中に残存すると、アクリル系樹脂の色調が低下する傾向にある。
アクリル系樹脂中の凝集体の量は1.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以下である。
凝集体の含有量は1.68mmメッシュの篩に通して篩上に残ったものを80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させた後の重量を測定し、得られた重量を原料の合計量で除して業種体生成量(質量%)を算出することができる。
本実施形態のアクリル系樹脂は、後述する所定のその他の樹脂や所定の添加剤と組み合わせた組成物として使用することができる。
<その他の樹脂>
組み合わせる樹脂については、特に限定されるものではなく、公知の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好適に使用される。
例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂、アクリル系樹脂、AS系樹脂、BAAS系樹脂、MBS樹脂、AAS樹脂、生分解性樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、樹脂組成物の流動性を向上させる効果が得られるため好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は難燃性を向上させる効果が期待できる。
また、硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
これらの樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のアクリル系樹脂には、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル)、難燃剤(例えば、有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等)、難燃助剤(例えば、酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等)、硬化剤(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシレンジアミン、m−フェヒレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジド等のアミン類や、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、液状ポリメルカプタン、ポリサルファイド等のポリメルカプタン、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデシル無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水クkロンレンディック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)等の酸無水物等)、硬化促進剤(2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、ベンジルジメチルアミン、2−ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール、テトラメチルヘキサンジアミン等の三級アミン類、トリフェニルホスファインテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアミンテトラフェニルボレート等のボロン塩、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン等のキノイド化合物等)、帯電防止剤(例えば、ポリアミドエラストマー、四級アンモニウム塩系、ピリジン誘導体、脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩共重合体、硫酸エステル塩、多価アルコール部分エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリアルキレングリコール誘導体、ベタイン系、イミダゾリン誘導体等)、導電性付与剤、応力緩和剤、離型剤(アルコール、及びアルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等)、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸、及びその金属塩、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド類等)、衝撃付与剤、摺動性改良剤(低分子量ポリエチレン等の炭化水素系、高級アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのフルエステル又は部分エステル、脂肪酸とポリグリコールとのフルエステル又は部分エステル、シリコーン系、フッ素樹脂系等)、相溶化剤、核剤、強化剤、流動調整剤、染料(ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等の染料)、増感剤、着色剤(酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタリシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等の有機系顔料、リン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属メッキやスパッタリングで被覆したものなどのメタリック顔料等)、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、さらにはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等)、消泡剤(シリコーン系消泡剤、界面活性剤やポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤等)、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防カビ剤、防汚剤、導電性高分子等が挙げられる。
熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の参加防止剤が挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられる。特に、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。特に、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤は、本実施形態において得られる熱可塑性樹脂の良好な成型か構成を確保する観点から、20℃における蒸気圧(P)が1.0×10-4Pa以下であることが好ましく、1.0×10-6Pa以下であることがより好ましく、1.0×10-8Pa以下であることがさらに好ましい。
ここで、良好な成型加工性とは、例えば、フィルムとして成型する際、低分子化合物のロールへの付着が少ないこと等を意味する。ロールへ付着すると、さらに表面に再付着するため、外観が劣化したり、光学特性が悪化したりする原因となる。
また、紫外線吸収剤の融点(Tm)は、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることがさらにより好ましい。
紫外線吸収剤は、23℃〜260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
本実施形態のアクリル系樹脂を加工したり、種々の添加剤や他の樹脂と混合したりする場合の混練方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に規定するものではない。
例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することができる。
その中でも押出機による混練が、生産性の面で好ましい。
混練温度は、樹脂や混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140〜300℃の範囲、好ましくは180〜280℃の範囲である。
本実施形態のアクリル系樹脂を単独で又はこれを含む樹脂組成物を成形することにより成形体とすることができる。
成形体の製造方法としては、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、Tダイ成型、プレス成形、押出成形、発泡成形、流延法によるフィルム成形等、公知の方法が適用でき、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。
また、本実施形態のアクリル系樹脂に硬化性樹脂を配合した樹脂組成物を用いる場合には、樹脂組成物を製造するための成分を、無溶媒で、若しくは、必要に応じて均一に混合できる溶媒を用いて混合した後、溶媒を除去して樹脂組成物を得て、これを金型内へ注形し硬化させた後冷却し、型から取り出すことにより成型品を得ることができる。
また、型に注型し、熱プレスにより硬化させることもできる。各成分を溶解させるための溶媒としては、各種材料を均一に混合することができ、かつ使用することによって本実施形態のアクリル系樹脂の特性を損なわないものであれば、特に限定されるものではない。例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサン、n−ペンタン等が挙げられる。
また、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等の混練機を用いて樹脂組成物を混練製造した後、冷却、粉砕し、さらにトランスファー成形、射出成形、圧縮成形等により成形を行う方法も一例として挙げることができる。また、硬化方法は使用する硬化剤により異なるが、特に限定はされない。例としては、熱硬化、光硬化、UV硬化、圧力による硬化、湿気による硬化等が挙げられる。各成分を混合させる順序は、本発明の効果が達成できる方法であれば特に規定するものではない。
本実施形態のアクリル系樹脂、及びこれを用いた樹脂組成物は、各種成形体の材料として好適に用いることができる。
成形体の用途としては、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、自動車部品用途、ハウジング用途、サニタリー用途、弾球遊技機用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等が挙げられ、また、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。また、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
本実施形態のアクリル系樹脂及びその樹脂組成物を用いた成形体には、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。
用いた原料は下記のものである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4−メトキシフェノール(4−methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n−オクチルメルカプタン(n-octylmercaptan):アルケマ製
・2−エチルヘキシルチオグリコレート(2-ethylhexyl thioglycolate):アルケマ
製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第3リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用
(I.樹脂の組成、分子量の測定)
<1.アクリル系樹脂の組成分析>
アクリル系樹脂の組成分析は、熱分解ガスクロマトグラフィー及び質量分析方法で行った。
熱分解装置:FRONTIER LAB製Py−2020D
カラム:DB−1(長さ30m、内径0.25mm、液相厚0.25μm)
カラム温度プログラム:40℃で5min保持後、50℃/minの速度で320℃まで昇温し、320℃を4.4分保持
熱分解炉温度:550℃
カラム注入口温度:320℃
ガスクロマトグラフィー:Agilent製GC6890
キャリアー:純窒素、流速1.0mL/min
注入法:スプリット法(スプリット比1/200)
検出器:日本電子製質量分析装置Automass Sun
検出方法:電子衝撃イオン化法(イオン源温度:240℃、インターフェース温度:320℃)
サンプル:アクリル系樹脂0.1gのクロロホルム10cc溶液を10μL
メタクリル酸メチル及びアクリル酸メチルのトータルイオンクロマトグラフィー(TIC)上のピーク面積と、以下の標準サンプルの検量線を元に、アクリル系樹脂の組成比を求めた。
この各混合溶液を100ccのガラスアンプル瓶に入れて、空気を窒素に置換して封じた。
そのガラスアンプル瓶を80℃の水槽に3時間、その後150℃のオーブンに2時間入れた。
室温まで冷却した後、ガラスを砕いて、中のアクリル系樹脂を取り出し、組成分析を行った。
検量線用標準サンプルの測定によって得られた(アクリル酸メチルの面積値)/(メタクリル酸メチルの面積値+アクリル酸メチルの面積値)及びアクリル酸メチルの仕込み比率とのグラフを検量線として用いた。
測定装置:日本分析工業製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(LC−908)
カラム:JAIGEL−4H 1本及びJAIGEL−2H 2本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:2.4μV/sec
サンプル:0.450gのアクリル系樹脂のクロロホルム15mL溶液
注入量:3mL
展開溶媒:クロロホルム、流速3.3mL/min
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、検量線を基にアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量平均分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のメタクリル樹脂(EasiCal PM-1 Polymer Laboratories製)を用いた。
標準試料1 1,900,000
標準試料2 790,000
標準試料3 281,700
標準試料4 144,000
標準試料5 59,800
標準試料6 28,900
標準試料7 13,300
標準試料8 5,720
標準試料9 1,936
標準試料10 1,020
まず、アクリル系樹脂のGPC溶出曲線におけるエリア面積(図2の斜線部分)を求める。次に、GPC溶出曲線におけるエリア面積を、Mpの1/5の分子量に対応する溶出時間で分割し、Mpの1/5以下の分子量成分に対応するGPC溶出曲線におけるエリア面積を求める。その面積とGPC溶出曲線におけるエリア面積の比から、Mpの1/5以下の分子量成分の比率を求めた。測定結果を下記表4に示す。
図4に示す累積エリア面積0〜2%である高分子量成分と、累積エリア面積98〜100%である低分子量成分を、対応する溶出時間を基にそれぞれカラムから分取して、その組成分析を行った。成分の分取及び測定に関しては上述した<1.アクリル系樹脂の組成分析>と同様の装置、条件により行った。
分取を2回行い、分取したサンプルのうち10μLを、上記<1.アクリル系樹脂の組成分析>で用いた熱分解ガスクロマトグラフィー分析及び質量分析方法の熱分解装置用白金試料カップに採取し、100℃の真空乾燥機により40分間乾燥処理を行った。<1.アクリル系樹脂の組成分析>と同様の条件で分取した累積エリア面積に対応するアクリル系樹脂の組成を求めた。
高分子量成分(累積エリア面積0〜2%にある分子量成分;Mh)及び低分子量成分(累積エリア面積98〜100%である分子量成分;Ml)におけるメタクリル酸メチルと共重合可能なビニル単量体(MA:アクリル酸メチル)の組成比率の測定結果を表4に示す。
重合で得られたポリマー微粒子を含む混合溶液を、1.68mmメッシュの篩に通して微粒子の凝集体を取り除き、得られた凝集体を80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させた後、重量を測定した。
得られた重量を、重合体(I)を合成するための原料(I)と重合体(II)を合成するための原料(II)の合計量(後述する実施例、比較例のアクリル系樹脂の原料の合計量)で除して、凝集体生成量(質量%)を算出した。下記表3に示す。
JIS−Z8801に基づく、篩<東京スクリーン製JTS−200−45−33(目開き500μm),34(目開き425μm),35(目開き355μm),36(目開き300μm),37(目開き250μm),38(目開き150μm),61(受け皿)>を用いて篩い分け試験機TSK B−1を用いて振動力MAXにて10分間篩いを行ったときの各篩に残った粒子重量を測定し、重量が50%となるときの粒子径を求めることで平均粒子径を求めた。平均粒子径を下記表4に示す。
このときに目開き500μmに残った粒子(500μm以上の粒子径の粒子)の重量平均分子量(A)、目開き300μmに残った粒子(355μm〜300μmの粒子径の粒子)の重量平均分子量(B)、受け皿の粒子(150μm以下の粒子径の粒子)の重量平均分子量(C)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定し、下記式(1)、(2)で重量平均分子量の差異を絶対値で算出した。
|[(A)−(B)]/(B)|×100(%) ・・・(1)
|[(C)−(B)]/(B)|×100(%) ・・・(2)
前記式(1)、式(2)の算出値を下記表3に示す。
<1.スパイラル長さの測定>
断面積一定の、スパイラル状のキャビティを樹脂が流れた距離によって、相対的流動性を判定する試験である。
射出成形機:東芝機械製IS−100EN
測定用金型:金型の表面に、深さ2mm、幅12.7mmの溝を、表面の中心部からアルキメデススパイラル状に掘り込んだ金型
射出条件
樹脂温度:250℃
金型温度:55℃、
射出圧力:98MPa、
射出時間:20sec
金型表面の中心部に樹脂を上記条件で射出した。射出終了40sec後にスパイラル状の成形体を取り出し、スパイラル部分の長さを測定した。スパイラル長さの測定値を下記表5に示す。これを流動性評価の指標とした。
スパイラル部分が長いと、流動性が良好であると判断した。
図1に示すカンチレバー法による測定方法で耐溶剤性を評価した。
射出成形機:東芝機械製IS−100EN
射出成形体:厚み3.2mm、幅12.7mm、長さ127mm
射出条件
成形温度:230℃
金型温度:60℃
射出圧力:56MPa
射出時間:20sec
冷却時間:40sec
上記条件で成形した成形体が吸水しないようにデシケーター内に1日保存した。
その後、図1に示す冶具1を用いて、上記成形体2を図1のように設置し、タコ糸5を取り付けた3kgの重り3を、図1のように取り付け、エタノールを含んだろ紙4を図1に示す位置に置き、置いた時間から、重り3により成形体が破断するまでの時間を測定した。
各サンプル毎に10回繰り返し、最大時間と最小時間のデータを削除し、残り8回の平均の時間を求めた。これを耐溶剤性評価の指標とした。破断するまでの時間(破断時間)を下記表5に示す。
ISO 306 B50に準拠し、4mm厚試験片を用いて測定を行い、VICAT軟化温度を求め、耐熱性評価の指標とした。VICAT軟化温度の測定値を下記表3及び表5に示す。
ISO13468−1規格に準拠して、3mm厚試験片を用いて、全光線透過率の測定を行い、透明性の指標とした。全光線透過率の測定値を下記表5に示す。
ISO 75−2/A規格に準拠して測定を行い、耐熱性評価の指標とした。
ISO 527−2規格に準拠し、1A型ダンベル試験片を用いて、引張弾性率、引張降伏応力、引張破壊ひずみの測定を行った。
ISO 179/1eU規格に準拠して測定を行い、耐衝撃性の指標とした。
日本電色工業株式会社製 色差計「TC−8600A」を使用して、厚さ3mm×20mm×長さ220mmの試験片を4枚重ねて用いて、JIS T7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠し、220mmの長さ方向のYI(黄色度)を測定し、以下の式を用いて黄色度ΔYIを測定した。
ΔYIは、成形体の黄変色の度合いを示し、この値が小さいほど、着色が小さいことを示す。
黄色度差 ΔYI=YI−YI0
ΔYI=黄色度差
YI=成形体の黄色度
YI0=空気の黄色度
得られたΔYI値が20未満のものを「○」20以上30未満のものを「△」、30以
上のものを「×」として3段階で評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し混合液(A)を得た。
次に、60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、前記混合液(A)、及び下記表1に示す配合量で重合体(I)を製造するための原料(I)を投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、重合体(I)の原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
その後、約92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。
その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、重合体(II)を製造するための原料(II)を、下記表1に示す配合量を反応器に投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行い、重合体(II)の原料を投入してから130分後に発熱ピークが観測された。
その後、約92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。
次いで、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集体を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
前記(II.凝集体生成量の測定)に記載した方法により凝集体生成量(質量%)を測定したところ0.23質量%であった。
また、得られたポリマー微粒子は、80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させた後、ポリマー微粒子の篩い分けを行い、重量平均分子量の差異を測定したところ、上記(III.微粒子の篩い分けと分子量測定)における、式(1)による算出値は0.9%、式(2)による算出値は1.6%であった。
得られたペレットの重量平均分子量(Mw)は11.8万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。
また、得られた樹脂ペレットの流動性をMFRにより測定したところ、1.7g/10minであった。
引張特性を測定したところ、引張弾性率が3300MPa、引張降伏応力が75MPa、引張破壊ひずみが6%であった。
更に、耐衝撃性の指標としてシャルピー衝撃強さ(ノッチなし)を測定したところ22kJ/m2であった。また、VICAT軟化温度を測定したところ109℃であり、荷重たわみ温度は100℃であった。
下記表1に示す原料を用いて、上述した実施例1と同様の方法で重合を行い、ポリマー微粒子を得た。
表2に、重合体(I)、重合体(II)の単量体仕込み組成及び重合体(I)、(II)の比率を示す。
重合体(I)の原料を投入してから発熱ピークに達するまでの時間(T1)及び重合体(II)の原料を投入してから発熱ピークに達するまでの時間(T2)、凝集体生成量(質量%)、分子量の差異の測定結果(式(1)、式(2)の算出値)を下記表3に示す。
また、実施例1と同様の方法で樹脂ペレットを作製した。重量平均分子量(Mw)を測定した結果を表3に示す。比較例1〜4においては、押出作業時にストランドが安定せず、ストランドが切れてしまうことがあった。
攪拌機を有する容器に、水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、混合液(A)を得た。
次に、60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、前記混合液(A)、及び下記表1に示す配合量で重合体(I)を製造するための原料(I)を投入した。
その後、約80℃に保って懸濁重合を行い、重合体(I)の原料を投入してから65分後に発熱ピークが観測された。
その後、30分間80℃の温度を保持した後、重合体(II)を製造するための原料(II)を、下記表1に示す配合量で反応器に投入し、引き続き約80℃に保って懸濁重合を行い、重合体(II)の原料を投入してから130分後に発熱ピークが観測された。
その後、約92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。
次に、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集体を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、平均粒子径0.29mmのポリマー微粒子を得た。
凝集体は、80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させて重量を測り、その重量を前記原料(I)と原料(II)の合計量で除して、凝集体生成量(質量%)を測定したところ、0.48質量%であった。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機を用いて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレットを得た。その際、押出作業性は良好であった。
得られたペレットの重量平均分子量(Mw)は11.8万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.3であった。
また、得られた樹脂ペレットの流動性をMFRにより測定したところ、1.7g/10minであった。
引張特性を測定したところ、引張弾性率が3300MPa、引張降伏応力が75MPa、引張破壊ひずみが6%であった。
更に、耐衝撃性の指標としてシャルピー衝撃強さ(ノッチなし)を測定したところ、22kJ/m2であった。また、VICAT軟化温度を測定したところ109℃であり、荷重たわみ温度は100℃であった。
表2に、重量体(I)、重合体(II)の単量体仕込み組成、ポリマーの重量平均分子量、及び重合体(I)、(II)の比率を示す。
重合体(I)の原料を投入してから発熱ピークに達するまでの時間T1及び重合体(II)の原料を投入してから発熱ピークに達するまでの時間T2、凝集体生成量、分子量の差異の測定結果(式(1)、式(2)の算出値)を下記表3に示す。
また、実施例1と同様の方法で樹脂ペレットを作製した。重量平均分子量(Mw)を測定した結果を表3に示す。
表2中、(Mal)は、重合体(I)のメタクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体単位の組成比率である。
また、実施例のように一段目の重合時間(T1)と二段目の重合時間(T2)の関係をT2/T1≧1とすることで、凝集体生成量が減少し、粒径の違いによる重量平均分子量の差が小さくなることが分かった。
それぞれ、実施例1、2、11、12で製造したポリマー微粒子を用い、上述した(IV.物性測定)に従い成型片を作製し各物性測定を行った。測定結果を下記表5に示す。
攪拌機を有する容器に水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し混合液(A)を得た。
次いで、60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(A)、メタクリル酸メチル19.5kg、アクリル酸メチル0.5kg、ラウロイルパーオキサイド50g、n−オクチルメルカプタン58gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入した。
次いで、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集体を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、平均粒子径0.30mmのポリマー微粒子を得た(樹脂A)。
凝集体は80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させて重量を測り、凝集体生成量を算出したところ、0.52質量%であった。
また、得られたポリマー微粒子は80℃の乾燥オーブンで12時間乾燥させた後、ポリマー微粒子の篩い分けを行い、重量平均分子量の差異を測定したところ、上記(III.微粒子の篩い分けと分子量測定)における、式(1)による算出値は0.5%、式(2)による算出値は0.6%であった。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレットを得た。得られたペレットの重量平均分子量は10.3万であり、Mpの1/5以下の分子量成分の存在量は5.3%であり、Mhは2.5質量%、Mlは2.5質量%であった。
作製したポリマー微粒子を用い、上述した(IV.物性測定)に従い、成型片を作製し、各物性測定を行った。測定結果を下記表5に示す。
2 成形体
3 重り
4 ろ紙
5 タコ糸
6 GPC溶出曲線
7 ベースライン
Claims (5)
- メタクリル酸メチル単量体単位80〜99.5質量%、及び少なくとも1種のメタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体単位0.5〜20質量%を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した重量平均分子量が6万〜30万のアクリル系樹脂であって、
粒子径が0.15mm未満の成分含有量が0.01〜10質量%であり、
平均粒子径が180〜500μmであり、
前記メタクリル酸メチルに共重合可能な他のビニル単量体は、下記化学式(ii)であらわされるアクリル酸アルキル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、о−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α−メチルスチレン)、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、アクリルアミド、及びメタクリルアミドから選ばれる少なくとも1種であり、
JIS−Z8801に基づく篩を用いて篩い分けを行ったときの、
500μm以上の粒子径の粒子の重量平均分子量(A)と、
355μm〜300μmの粒子径の粒子の重量平均分子量(B)と、
150μm以下の粒子径の粒子の重量平均分子量(C)と、
において、下記関係式(1)、(2)を満たすアクリル系樹脂。
0≦|[(A)−(B)]/(B)|×100(%)≦10 ・・・(1)
1.1≦|[(C)−(B)]/(B)|×100(%)≦10 ・・・(2) - 厚さ3mm×20mm×長さ220mmの試験片を4枚重ねて用いて、JIS T7105に準拠し、220mmの長さ方向に測定したΔYI値が30未満である請求項1に記載のアクリル系樹脂。
- GPC溶出曲線から得られるピーク分子量(Mp)の1/5以下の分子量成分が、前記GPC溶出曲線から得られるエリア面積比率にして7−40%含まれる請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂を成形することにより得られる成形体。
- 車両用部品である請求項4に記載の成形体。
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