JP7482762B2 - メタクリル樹脂組成物、成形体、および、メタクリル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

メタクリル樹脂組成物、成形体、および、メタクリル樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、メタクリル樹脂組成物、成形体、および、メタクリル樹脂組成物の製造方法に関する。
メタクリル樹脂組成物は、透明性および耐熱性に優れるので、無機ガラスの代替として、例えば自動車を構成する成形体(特にテールランプまたはヘッドランプのカバー)などの材料として用いられ、各種特性を備えたメタクリル樹脂組成物が開発されている。
例えば、特許文献1には、自動車用の成形体材料として用いうるメタクリル樹脂組成物が記載され、当該メタクリル樹脂組成物は、ピーク分子量が異なる2種のメタクリル樹脂を含み、所定の条件を満たすことが記載されている。
特開2016-008237号公報
近年、燃費向上のために、自動車を構成する部品を軽量化することが求められている。
そのため、自動車を構成する成形体は、薄肉であることが好ましい。また、デザイン上の要請などから、自動車を構成する成形体を、大型にする場合もある。しかし、成形体をより薄く大型にすると、衝撃強度は低下する傾向がある。
したがって、所望のレベルの衝撃強度を備えた成形体を製造できる、成形体材料が求められる。
しかし、従来のメタクリル樹脂組成物は、成形体とした場合のシャルピー衝撃強度が十分ではなかった。
したがって、シャルピー衝撃強度に優れた成形体を製造しうるメタクリル樹脂組成物;当該メタクリル樹脂組成物を含む成形体:および当該メタクリル樹脂組成物の製造方法が、求められている。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の要件(1)~(4)を満たすメタクリル樹脂組成物が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明は、以下の発明を提供する。本発明は、以下の発明に限定されない。
[1] メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)とを含み、下記要件(1)~(4)を満たす、メタクリル樹脂組成物。
(1)メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)が、それぞれ、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含み、メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が、メタクリル樹脂組成物に含まれる全構造単位の合計含有量100質量%に対して、98.0質量%以上である。
(2)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)をW1とするとき、W1が、10~25である。
(3)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、分子量300,000から終点までのピーク面積の割合(%)をW2とするとき、W2が、3~15である。
(4)メタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、2.0~3.2である。
[2] 前記メタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、2.4~3.2である、[1]に記載のメタクリル樹脂組成物。
[3] 前記W2が、5~10である、[1]または[2]に記載のメタクリル樹脂組成物。
[4] 前記メタクリル樹脂(A)および前記メタクリル樹脂(B)の合計含有量100質量%に対して、
メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)の一方の含有量が25質量%~35質量%であり、他方の含有量が65質量%~75質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物。
[5] 前記メタクリル酸エステルがメタクリル酸メチルである、[1]~[4]のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物。
[6] 前記メタクリル樹脂(A)および前記メタクリル樹脂(B)が、それぞれ、アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物。
[7] 前記アクリル酸エステルがアクリル酸メチルである、[6]に記載のメタクリル樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物を含む成形体。
[9] メタクリル酸エステルを98.0質量%以上含む原料モノマー(A)、重合開始剤(A)および連鎖移動剤(A)を含有する原料組成物(A)を、第1の完全混合型反応槽に供給し、第1の完全混合型反応槽において原料組成物(A)を連続塊状重合に付し、得られた中間組成物(A)を第1の完全混合型反応槽より抜き出す第1の重合工程と、 メタクリル酸エステルを98.0質量%以上含む原料モノマー(B)、重合開始剤(B)および連鎖移動剤(B)を含有する原料組成物(B)、並びに、第1の重合工程で抜き出された中間組成物(A)を、第2の完全混合型反応槽に供給し、第2の完全混合型反応槽において原料組成物(B)および中間組成物(A)を更に連続塊状重合に付し、得られたメタクリル樹脂組成物を第2の完全混合型反応槽より抜き出す第2の重合工程とを含み、
下記要件(11)および(12)を満たす、[1]~[7]のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。
(11)1.5≦L/L≦1.9
(12)0.5≦S/S≦2.5
(式中、
は、原料組成物(A)中の重合開始剤(A)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の重合開始剤(B)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(A)中の連鎖移動剤(A)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の連鎖移動剤(B)の濃度(質量%)を示す。)
[10] さらに、下記要件(13)および(14)を満たす、[9]に記載の製造方法。
(13)25≦θ≦45
(14)10≦θ≦25
(式中、
θは、第1の重合工程における第1の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。
θは、第2の重合工程における第2の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。)
本発明によれば、シャルピー衝撃強度に優れた成形体を製造しうるメタクリル樹脂組成物;当該メタクリル樹脂組成物を含む成形体:および当該メタクリル樹脂組成物の製造方法が提供される。
図1は、実施例1のメタクリル樹脂組成物についての微分分子量分布曲線を示すグラフである。 図2は、本発明の一実施形態に係るメタクリル樹脂組成物を製造するための装置の一例である。
本明細書において、特段の言及がない限り、数値範囲「A~B」とは「A以上B以下」を表す。
本明細書において、ある単量体に由来する構造単位を、その単量体の名称を用いて、単に「単量体単位」と称することがある。
[1.メタクリル樹脂組成物]
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)とを含み、以下の要件(1)~(4)を満たす組成物である。
(1)メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)が、それぞれ、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含み、メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が、メタクリル樹脂組成物に含まれる全構造単位の合計含有量100質量%に対して、98.0質量%以上である。
(2)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)をW1とするとき、W1が、10~25である。
(3)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、分子量300,000から終点までのピーク面積の割合(%)をW2とするとき、W2が、3~15である。
(4)メタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、2.0~3.2である。
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上記の要件(1)、(2)、(3)、および(4)のすべてを満たすことによって、以下(特に実施例)にて詳細に説明するシャルピー衝撃強度を所望のレベルで維持することができる。
[1.1.要件(1)]
本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)とを含む。なお、本明細書において、特段の言及がない限り、「メタクリル樹脂」に関する事項は、本発明のメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)の両方に当てはまる。
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位(以下、メタクリル酸エステル単位と称することがある。)を有する。メタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルが挙げられ、メタクリル酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸エステル単位の含有量は、該メタクリル樹脂組成物に含まれる全構造単位100質量%に対して、98.0質量%以上であり、98.4質量%以上であることが好ましく、通常100.0質量%以下であり、98.4~99.1質量%であることがより好ましく、98.5~98.8質量%であることが更に好ましい。なお、かかる含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィーなどを利用した分析によって求めることができる。
(メタクリル樹脂に含まれうる任意の構造単位)
メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)は、それぞれ、更にメタクリル酸エステル単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよく、例えば、アクリル酸エステルに由来する構造単位(以下、アクリル酸エステル単位と称することがある。)を含んでいてもよい。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸シクロペンタジエン等が挙げられ、アクリル酸メチル、またはアクリル酸エチルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
メタクリル樹脂組成物に含まれ得る上述のアクリル酸エステル単位の含有量は、0~1.6質量%であることが好ましく、0.9~1.6質量%であることがより好ましく、更には1.2~1.5質量%が好ましい。ただし、メタクリル樹脂組成物中のメタクリル酸エステル単位とアクリル酸エステル単位との合計を100質量%とする。なお、かかる含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフィーなどを利用した分析によって求めることができる。
アクリル酸エステル単位の含有量が上記の範囲であると、得られる共重合体の解重合の進行が抑制され、射出成形時の熱安定性がより良好なものとなりうる。アクリル酸エステル単位の含有量が1.6質量%以下であることにより、得られる車両部材等の成形品の耐熱性(後述のビカット軟化温度等)がより良好なものとなりうる。
ここで、上述の熱分解ガスクロマトグラフィーなどによる分析としては、従来公知の分析法を採用することができる。
例えば、本発明のメタクリル樹脂組成物を熱分解炉にて所定の温度(400℃以上)にて熱分解し、発生した分解ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、上記メタクリル樹脂組成物を製造するに当たり使用した各モノマー成分に対応するピークの面積比を求め、質量比(%)に換算することによって求めることができる。
面積比を質量比(%)に換算する方法としては、例えば、メタクリル樹脂の標準品(市販品として入手可能であり、モノマー成分の種類およびその質量割合が既知であるもの)について、予め上記と同様にして各モノマー成分に対応するピークの面積比を求めることによって、かかる面積比からモノマー成分の質量比(%)を換算することのできるファクターを算出し、また必要に応じて、複数の標準品を用いて検量線を作成し、このようなファクターを算出することによって、かかるファクターを用いて、本発明のメタクリル樹脂組成物中に含まれるメタクリル樹脂のモノマー成分の面積比を対応する質量比(%)に換算することが可能である。なお、これらのピークが一部重なる場合には、重複する面積を従来公知の方法により補正して上記の比率を算出することもできる。
上記メタクリル樹脂が含んでいてもよい任意の構造単位としては、アクリル酸エステル単位以外にも、例えばメタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位(以下、他の単量体単位とも称する。)が挙げられる。かかる他の単量体単位を形成するためのモノマーとしては、例えばラジカル重合可能な二重結合を1個有する単官能性モノマー、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能性モノマー等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
単官能性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマーなどが挙げられる。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多塩基酸のアルケニルエステル;トリメチロールプロパントリアクリレート等の多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
[1.2.要件(2)および(3)]
上記要件(2)および(3)におけるW1およびW2、ならびに後で詳細に説明する上記要件(4)における質量平均分子量および数平均分子量は、JIS K 7252-1~4(プラスチック-サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方-第1部~第4部)に準じて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等の従来公知のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用して求めることができる。
より具体的には、まず、市販されているメタクリル樹脂の単分散の分子量標準物質(数平均分子量、質量平均分子量などの分子量が既知であり、分子量分布の狭い標準物質)を用いて、溶出時間(t)と、分子量(M)の対数(logM)との相関を示す校正曲線を予め作成しておく。
次に、測定対象となるメタクリル樹脂組成物の試料を適切な溶媒に溶解して希薄溶液を調製する。この溶液を移動相(溶離液)に注入して、SECカラムに導入する。なお、このSECカラムには、均一の大きさの細孔または種々の大きさの細孔を有する非吸着性の微粒子が充填されている。試料は、かかるSECカラムを通過するにつれて分子量(流体力学的体積)の相違によって相互に分離され得る。このSECカラムにおいて、分子量の大きなメタクリル樹脂は細孔の中に浸透できないのでより早く溶出する。一方、分子量の小さなメタクリル樹脂は細孔の中に浸透することができるのでその溶出が遅くなる。そして、溶離液中のメタクリル樹脂の濃度を連続的に濃度検出器で検出してSECクロマトグラムを得る。
ここで、予め単分散の分子量標準物質を用いて作成した校正曲線によって、SECクロマトグラムにおける任意の溶出時間(t)に対応するメタクリル樹脂の分子量(M)を求める。
上記で得たデータに基づいて、メタクリル樹脂の分子量(M)に対して、dW/d(logM)をプロットすることによって、「微分分子量分布曲線」を作成する。「W」は濃度分率を指す。
より具体的には、かかる微分分子量分布曲線は、各溶出時間(t)におけるメタクリル樹脂の分子量(M)およびそのシグナル強度(H)から、メタクリル樹脂の分子量(M)に対して、以下の式に従って計算したdW/d(logM)をプロットすることによって作成することができる。
Figure 0007482762000001
式中、Iは、データ収集間隔(分)を示す。
上記で作成した微分分子量分布曲線の例として、図1に示す実施例1のメタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線を参照する。図1に示すように、微分分子量分布曲線とdW/d(logM)=0の直線とが交わる点のうち、低分子量側の点を点A(始点)、高分子量側の点を点B(終点)とすると、始点から終点までの曲線と上記直線で囲まれる面積(本明細書において、ピーク面積と称する。)を100とした場合に、始点から終点までのピーク面積に対する始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)を「W1」とし、分子量300,000から終点までの面積の割合(%)をW2とする。
要件(2)で規定する通り、「W1」の値は10~25であり、14~22であることが好ましく、17~19であることがより好ましい。W1の値が、25よりも高いと、シャルピー衝撃強度が低下するおそれがある。W1の値が、10よりも低いと、流動性が低下するおそれがある。
スパイラル流動長を良好な値とする観点から、W1の値は、14以上が好ましく、17以上がより好ましい。
要件(3)で規定する通り、「W2」の値は、3~15であり、5~10であることが好ましく、6~9であることがより好ましい。W2の値が、15よりも高いと、流動性が低下するおそれがある。W2の値が、3よりも低いと耐溶剤性が低下するおそれがある。
クレーズ発生時間を許容される時間以下とする観点から、W2の値は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、スパイラル流動長を良好な値とする観点から、W2の値は、10以下が好ましく、9以下がより好ましい。
[1.3.要件(4)]
要件(4)で規定するとおり、本発明のメタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、2.0~3.2であり、2.4~3.2が好ましく、2.5~2.6がより好ましい。
スパイラル流動長を良好な値とする観点から、前記比(Mw/Mn)は、2.4~3.2が好ましく、2.5~2.6がより好ましい。
[1.4.メタクリル樹脂の質量平均分子量]
本発明のメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)は、耐溶剤性、シャルピー衝撃強度および流動性の観点から、互いに質量平均分子量が異なることが好ましく、メタクリル樹脂(A)の質量平均分子量が120,000以上180,000以下であり、かつ、メタクリル樹脂(B)の質量平均分子量が10,000以上60,000以下であることがより好ましい。
メタクリル樹脂(A)の質量平均分子量としては、120,000以上180,000以下であることが好ましく、130,000以上160,000以下であることがより好ましい。メタクリル樹脂(B)の質量平均分子量としては、10,000以上60,000以下であることが好ましく、30,000以上50,000以下であることがより好ましい。本発明のメタクリル樹脂組成物は、メタクリル樹脂(A)を2つ以上含んでいてもよく、メタクリル樹脂(B)を2つ以上含んでいてもよい。
質量平均分子量が上記の範囲であるメタクリル樹脂(A)、およびメタクリル樹脂(B)を用いることで、メタクリル樹脂組成物からシャルピー衝撃強度により優れた成形体を得ることができる。
上記質量平均分子量の測定方法は、メタクリル樹脂組成物におけるW1、およびW2の算出方法で上述した方法(SECを利用した方法)と同様である。
[1.5.メタクリル樹脂(A)および(B)の含有割合]
メタクリル樹脂組成物に含まれる、メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)の合計含有量を100質量%とすると、メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)の一方の含有量が25質量%~35質量%であり、他方の含有量が65質量%~75質量%であることが好ましい。
メタクリル樹脂(A)、およびメタクリル樹脂(B)の含有量を上記の範囲にすることで、メタクリル樹脂組成物からシャルピー衝撃強度により優れた成形体を得ることができる。
[1.6.メタクリル樹脂組成物の用途]
本発明のメタクリル樹脂組成物は、上述の要件(1)~(4)の全てを満足することによって、シャルピー衝撃強度に優れた成形体としうる。したがって、様々な成形体、例えば、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザーおよびメーターパネルのカバー等の車両用部材、レンズ、ディスプレイ保護板、光学フィルムおよび導光板等の光学部材、化粧品容器用の部材などに好ましく用いられ、中でも車両用部材の成形用材料として特に好ましく用いられ得る。
[2.成形体]
本発明のメタクリル樹脂組成物を用いて、当該メタクリル樹脂組成物を含む成形体を得うる。
本発明のメタクリル樹脂組成物を含む成形体は、押出成形法、射出成形法等の方法で製造することができるが、本発明のメタクリル樹脂組成物は流動性に優れるので、成形体を、射出成形法により製造することが好ましい。
[3.メタクリル樹脂組成物の製造方法]
本発明のメタクリル樹脂組成物は、従前公知の製造方法により製造することができ、上記メタクリル酸エステルや他の単量体等の単量体成分を重合することにより製造しうる。
上記メタクリル酸エステルや他の単量体等の単量体成分を重合し、メタクリル樹脂を製造する方法としては、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の重合法が挙げられ、好ましくは塊状重合法である。
塊状重合法は、重合安定剤を使用しないためにより外観に優れるメタクリル樹脂を得ることができる。また、懸濁重合の場合とは異なり、重合温度が100℃よりも高く、その結果、メタクリル樹脂のシンジオタクティシティが低下しやすいため、メタクリル樹脂の流動性がより増加する。更に、連続的に塊状重合を行った場合、例えば、上記単量体成分と必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤等とを反応容器の中に連続的に供給しながら反応容器内で所定の時間滞留させて得られる部分重合体を、連続的に抜き出すことにより行うことができるので、高い生産性でメタクリル樹脂を得ることができる。
本発明のメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂の製造において、重合温度は、好ましくは110~190℃である。
上述のメタクリル樹脂の製造方法、特に塊状重合においては、例えば、重合開始剤や連鎖移動剤などの添加剤を使用してもよい。重合開始剤として、例えば、ラジカル開始剤を用いることができる。
ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリリルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-n-ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-エチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。
これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
重合開始剤の種類は、生成するメタクリル樹脂や使用する原料モノマーの種類などに応じて選定され得る。ラジカル開始剤としては、その重合温度での半減期が1分以内であるものが好ましい。
本発明において使用することのできる連鎖移動剤は、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよい。連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、n-プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、2-エチルヘキシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4-ジヒドロナフタレン、1,4,5,8-テトラヒドロナフタレン、β-テルピネン、テルピノーレン、1,4-シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
連鎖移動剤の種類および使用量は、生成するメタクリル樹脂や使用する原料モノマーの種類などに応じて選定され得る。連鎖移動剤として、n-オクチルメルカプタン、またはn-ドデシルメルカプタンが好ましい。
上記原料モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤などに加えて、例えば離型剤、ブタジエンおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤などを用いてもよい。
なお、ここで、離型剤とは、得られるメタクリル樹脂組成物の成形性を向上させるために用いられるものである。熱安定剤は、生成するメタクリル樹脂の熱分解を抑制するために用いられるものである。紫外線吸収剤は、生成するメタクリル樹脂の紫外線による劣化を抑制するために用いられるものである。
離型剤としては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。なお、離型剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
離型剤の使用量は、メタクリル樹脂100質量部に対して、0.01~1.0質量部となるように調整することが好ましく、0.01~0.50質量部となるように調整することがより好ましい。なお、本発明のメタクリル樹脂組成物が2種以上のメタクリル樹脂を含んでいる場合、本明細書において、「メタクリル樹脂100質量部」とは、複数のメタクリル樹脂の合計量を100質量部とするものである。
熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤や有機ジスルフィド化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機ジスルフィド化合物が好ましい。なお、熱安定剤は、単独で使用してよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱安定剤の使用量は、メタクリル樹脂100質量部に対して、1~2000質量ppmであることが好ましい。本発明のメタクリル樹脂組成物から成形体を得るために、メタクリル樹脂組成物(より詳細には、脱揮後のメタクリル樹脂組成物)を成形する際、成形効率を高める目的でその成形温度を高めに設定することがある。そのような場合において、熱安定剤を配合すると、より効果的である。
紫外線吸収剤の種類としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収剤が好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は、得られるメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂100質量部に対して、5~1000質量ppmであることが好ましい。
本発明のメタクリル樹脂組成物の製造方法としては、上述のメタクリル樹脂と、必要に応じて任意の適切な他の成分(上述の離型剤、ゴム状重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤等)とを混練する方法等が挙げられる。
メタクリル樹脂組成物の製造方法としては、多段重合法を用いて、2種のうちの一方のメタクリル樹脂を含む組成物(シロップ)の存在下で、他方のメタクリル樹脂を形成し得る単量体成分を重合させた後にかかるシロップを押出機中にて混練する方法等が挙げられる。
かかる多段重合法としては、例えば、国際公開第2014-088082号に記載の方法が挙げられる。図2は、本発明の一実施形態に係るメタクリル樹脂組成物を製造するための装置の一例である。
装置は、原料モノマータンク1、重合開始剤タンク3、ポンプ5、ポンプ7、原料供給ライン9、第1の反応槽10、供給口11a、抜き出し口11b、供給口11c、ジャケット13、攪拌機14、接続ライン15、重合開始剤タンク17、ポンプ19、第2の反応槽20、供給口21a、抜き出し口21b、供給口21c、ジャケット23、攪拌機24、抜き出しライン25、予熱器31、脱揮押出機33、排出ライン35、回収タンク37を含む。
図2に例示として示すように、多段重合法は、2つの反応槽を用いて実施され、各反応槽において好ましくは連続塊状重合が実施され得る。例えば、第1の反応槽10にて2種のうちの一方のメタクリル樹脂が調製され、第2の反応槽20にてかかる一方のメタクリル樹脂の存在下で他方のメタクリル樹脂を調製することができる。第1の反応槽10および第2の反応槽20は、完全混合型反応槽である。
第1の反応槽10における反応槽内の温度は、110~160℃であることが好ましく、110~150℃であることがより好ましく、120~140℃であることが更に好ましい。第1の反応槽10における反応槽内の温度が上記の範囲である場合、第1の反応槽10における連鎖移動剤濃度は、第1の反応槽10に供給する原料モノマーの総質量に対して、0.12~0.19質量%であることが好ましい。
第2の反応槽20において反応槽内の温度は、170~190℃であることが好ましく、175~185℃であることがより好ましい。第2の反応槽20における反応槽内の温度が上記の範囲である場合、第2の反応槽20に供給される連鎖移動剤濃度は、第2の反応槽20に供給する原料モノマーの総質量に対して、0.10~0.25質量%であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る、メタクリル樹脂組成物の製造方法は、第1重合工程および第2の重合工程を含む。
第1重合工程では、メタクリル酸エステルを98.0質量%以上含む原料モノマー(A)、重合開始剤(A)および連鎖移動剤(A)を含有する原料組成物(A)を、第1の完全混合型反応槽に供給し、第1の完全混合型反応槽において原料組成物(A)を連続塊状重合に付し、得られた中間組成物(A)を第1の完全混合型反応槽より抜き出す。
第2重合工程では、メタクリル酸エステルを98.0質量%以上含む原料モノマー(B)、重合開始剤(B)および連鎖移動剤(B)を含有する原料組成物(B)、並びに、第1の重合工程で抜き出された中間組成物(A)を、第2の完全混合型反応槽に供給し、第2の完全混合型反応槽において原料組成物(B)および中間組成物(A)を更に連続塊状重合に付し、得られたメタクリル樹脂組成物を第2の完全混合型反応槽より抜き出す。
原料モノマー(A)または原料モノマー(B)に含まれうるメタクリル酸エステルの例および好ましい例としては、メタクリル樹脂(A)またはメタクリル樹脂(B)の説明において挙げたメタクリル酸エステルの例および好ましい例が挙げられる。
重合開始剤(A)および重合開始剤(B)としては、前記例示した重合開始剤を用いうる。連鎖移動剤(A)および連鎖移動剤(B)としては、前記例示した連鎖移動剤を用いうる。
一実施形態において、メタクリル樹脂組成物の製造方法は、好ましくは下記要件(11)および(12)を満たす。
(11)1.5≦L/L≦1.9
(12)0.5≦S/S≦2.5
ここで、Lは、原料組成物(A)中の重合開始剤(A)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の重合開始剤(B)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(A)中の連鎖移動剤(A)の濃度(質量%)を示す。
は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の連鎖移動剤(B)の濃度(質量%)を示す。
本実施形態の製造方法が、前記要件(11)および(12)を満たすことで、シャルピー衝撃強度に優れる成形体を得ることができるメタクリル樹脂組成物を製造できる。
/Lの値は、押出機から出てくるストランドをペレタイザーにて引き取りペレットに成形する際の安定性の観点から、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上であり、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.75以下である。L/Lの値が高いと、第1槽目で生成した高分子量体成分の割合が高いため、押出機への負荷が増大する。また、L/Lの値が低いと第2槽目で生成した低分子量体成分の割合が高くなるため、押出機から出てくるストランドをペレタイザーにて引き取り、ペレットに成形する際、ストランドの機械強度が低いため、ストランドが切れたり、微粉が増加したりする。
/Sの値は、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは1.0以上であり、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。
本実施形態の製造方法は、さらに、下記要件(13)および(14)を満たすことが好ましい。
(13)25≦θ≦45
(14)10≦θ≦25
ここで、θは、第1の重合工程における第1の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。
θは、第2の重合工程における第2の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。
本実施形態の製造方法が、前記要件(13)および(14)を満たすことで、シャルピー衝撃強度により優れる成形体を得ることができるメタクリル樹脂組成物を製造できる。
θは、生産効率性の観点から、より好ましくは30以上、更に好ましくは35以上であり生産安定性の観点から、より好ましくは40以下、更に好ましくは38以下である。
滞留時間が短いほど生産安定性に優れるが、短すぎると、第1の反応槽と第2の反応槽との間における連結配管内にて摩擦が大きく生じるため、ポンプの送液が難しくなることがある。
θは、生産効率性の観点から、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上であり、生産安定性の観点から、より好ましくは23以下である。滞留時間が短いほど生産安定性に優れるが、短すぎると、第1の反応槽と第2の反応槽との間における連結配管内にて摩擦が大きく生じるため、ポンプの送液が難しくなることがある。
本実施形態のメタクリル樹脂組成物の製造方法は、前記第1の重合工程および第2の重合工程に加えて、任意の工程を含みうる。任意の工程の例としては、第2の重合工程で得られたメタクリル樹脂組成物から、未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去する工程、メタクリル樹脂組成物をペレットなどの形態に成形する工程が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
「メタクリル樹脂組成物中のメタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量」、「W1、W2、Mw/Mn」、「スパイラル流動長」、「クレーズ発生時間」、「シャルピー衝撃強度」および「ビカット軟化温度」の評価方法について、以下で説明する。
<メタクリル樹脂組成物中の全構造単位の合計含有量に対するメタクリル酸エステル構造単位の含有量>
メタクリル樹脂組成物のペレットを熱分解ガスクロマトグラフィーで分析し、単量体成分として使用したメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルに対応するピーク面積をそれぞれ測定することによって、メタクリル樹脂組成物中の全構造単位の合計含有量に対するメタクリル酸エステル構造単位の含有量を求めた。熱分解ガスクロマトグラフィーの測定条件は、以下のとおりである。
(熱分解条件)
・試料調製:メタクリル樹脂組成物を精秤(目安2~3mg)し、樋状に形成した金属セルの中央部に入れ、金属セルを畳んでその両端を軽くペンチで押さえて封入した。
・熱分解装置:CURIE POINT PYROLYZER JHP-22(日本分析工業(株)製)
・金属セル:Pyrofoil F590(日本分析工業(株)製)
・恒温槽の設定温度:200℃
・保温パイプの設定温度:250℃
・熱分解温度:590℃
・熱分解時間:5秒
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
・ガスクロマトグラフィー分析装置:GC-14B((株)島津製作所製)
・検出方法:FID
・カラム:7G 3.2m×3.1mmφ((株)島津製作所製)
・充填剤:FAL-M((株)島津製作所製、パックドカラム)
・キャリアガス:Air/N/H=50/100/50(kPa)、80ml/分
・カラムの昇温条件:100℃で15分間保持し、次いで10℃/分で150℃まで昇温し、次いで150℃で14分間保持
・インジェクション温度:200℃
・検出温度:200℃
上記の熱分解条件およびガスクロマトグラフィー分析条件下で検出されるメタクリル酸エステルに対応するピーク面積(a1)およびアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b1)を求めた。これらのピーク面積から、ピーク面積比A(=b1/a1)を求めた。
次に、メタクリル酸エステル構造単位に対するアクリル酸エステル構造単位の質量比がW0(既知)(アクリル酸エステル構造単位の質量/メタクリル酸エステル構造単位の質量)であるメタクリル樹脂の標準品を、上記の熱分解条件およびガスクロマトグラフィー分析条件で分析し、検出されるメタクリル酸エステルに対応するピーク面積(a0)およびアクリル酸エステルに対応するピーク面積(b0)を求めた。これらピーク面積から、ピーク面積比A0(=b0/a0)を求めた。
ピーク面積比A0と、上記の質量比W0とから、ファクターf(=W0/A0)を求めた。
次に、上記のピーク面積比Aに上記のファクターfを乗じることにより、測定対象のメタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸エステル構造単位に対するアクリル酸エステル構造単位の質量比W(アクリル酸エステル構造単位の質量/メタクリル酸エステル構造単位の質量)を求めた。この質量比Wから、メタクリル酸エステル構造単位およびアクリル酸エステル構造単位の合計量に対するメタクリル酸エステル構造単位の含有量(質量%)およびアクリル酸エステル構造単位の含有量(質量%)をそれぞれ算出した。以下の実施例および比較例では、メタクリル樹脂組成物中の全構造単位の合計含有量に対するメタクリル酸メチル構造単位の含有量(質量%)を求めた。
<W1、W2およびMw/Mnの評価方法>
(GPC測定)
メタクリル樹脂組成物のペレットをGPC測定で分析し、W1、W2およびMw/Mnを求めた。GPC測定条件は、以下の通りである。
(GPC分析条件)
・測定装置:東ソー(株)製 HLC-8320GPC
・カラム構成:
サンプルカラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M 2本とTSKguardColmn SuperMP(HZ)-M 1本を直列に接続
リファレンスカラム:TSKgel Super H―RC 2本を直列に接続
・検出器:RI(示差屈折)検出器
・計算方法:分子量計算
・内部標準:クロロホルムを内部標準として用いた。
・内部標準ピークの許容時間:0.15分
・内部標準ピークの溶出時間:検量線用標準サンプルを測定した際のクロロホルムの溶出時間を設定した。
・リファレンス試料:THF(特級、富士フィルム和光純薬(株)製)
・測定試料:THF(特級、富士フィルム和光純薬(株)製)に内部標準としてクロロホルム(富士フィルム和光純薬(株)製)を0.04vol%となるように溶解させたTHF/クロロホルム溶液5ccに、メタクリル樹脂組成物25mgを十分に溶解させて測定試料を調製した。
・カラム温度:40℃
・注入量:10μL
・サンプル側ポンプ流速:0.35ml/分
・リファレンス側ポンプ流量:0.60ml/分
上記のGPC分析条件で、メタクリル樹脂組成物の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。検量線用標準サンプルとして、単分散の質量平均分子量が既知で分子量の異なる以下の7種類のメタクリル樹脂(Shodex STANDARD M-75 昭和電工(株)製)を用いた。
ピーク分子量
・標準試料1:1,050,000
・標準試料2:569,000
・標準試料3:211,000
・標準試料4:68,800
・標準試料5:18,500
・標準試料6:7,360
・標準試料7:3,070
検量線用標準サンプルをメタクリル樹脂組成物と同様の条件に測定し、各標準試料のピークトップの溶出時間を求めた。得られた溶出時間とピーク分子量の結果から、下記に示す3次の近似式を求め、メタクリル樹脂組成物の測定結果を解析する際のキャリブレーション式とした。
・Log M(分子量)=At+Bt+Ct+D
・A,B,C,D:変数
・t:溶出時間
(W1、W2およびMw/Mnの求め方)
メタクリル樹脂組成物を上記のGPC測定で分析し、Mw/Mnを得た。得られたGPC曲線を溶出時間500m秒間隔で出力し、微分分子量分布曲線を作成した。図1は、実施例1のメタクリル樹脂組成物についての微分分子量分布曲線を示すグラフである。微分分子量分布曲線とdW/d(logM)=0の直線とが交わる点のうち、低分子量側の点を点A(始点)、高分子量側の点を点B(終点)とし、曲線と上記直線で囲まれる面積を100とした場合における、始点から分子量30,000までの面積の割合(%)を「W1」とし、分子量300,000から終点までの面積の割合(%)をW2として算出した。
<スパイラル流動長の評価方法>
メタクリル樹脂組成物を80℃雰囲気下のオーブンにて12時間以上予備乾燥した後、射出成形機(東洋機械金属(株)製の「Si-180V CH450C型」、ホッパーおよびヒータ1~5を備える。)を用いて、円形スパイラル金型の中央部から射出して、射出成形品を得た。この際、金型内でのメタクリル樹脂組成物の到達距離(mm)を測定した(以下、「スパイラル流動長」(mm)と呼ぶ)。到達距離は、金型から射出成形品に転写された目盛りを読み取ることで判断した。到達距離が長いほど、メタクリル樹脂組成物が流動性に優れていることを示す。射出条件および評価に用いた円形金型は、以下の通りである。
・成形温度設定
ヒータ1:260℃、ヒータ2:260℃、ヒータ3:260℃、ヒータ4:240℃、ヒータ5:220℃、ホッパー:60℃
・金型温度:60℃
・射出速度:100mm/秒
・保圧:50MPa
・保圧切り替え位置:5mm
・保圧時間:5秒
・保圧速度:50mm/s
・冷却時間:30秒
・計量時のスクリュー回転数:60rpm
・背圧:10MPa
・最大射出圧力が150MPaになるようスクリューの計量位置を調整し、その際の樹脂の流動長を読み取った。
・円形スパイラル金型:厚さ2mm、幅10mmの円形スパイラル金型を用いた。
<クレーズ発生時間の評価方法>
メタクリル樹脂組成物を80℃雰囲気下のオーブンにて12時間以上予備乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)製の「EC130SXII-4A」、ホッパーおよびヒータHN、H1、H2、H3を備える。)を用いて射出成形し、縦174mm×横25.4mm×厚さ3mmの平板を得た。射出条件は、以下の通りである。
・成形温度設定
HN:255℃、H1:260℃、H2:260℃、H3:240℃、ホッパー下:50℃
・金型温度:60℃
・射出速度:60mm/秒
・保圧:60MPa
・保圧切り替え位置:5mm
・保圧速度:20mm/秒
・冷却時間:40秒
・射出時間:10秒
・計量時のスクリュー回転数:50rpm
・背圧:10MPa
・スクリュー計量値:30mm
・最大射出圧力:70MPa
得られた平板の射出方向におけるゲート側の端から10mmの位置であって、かつ、射出方向と垂直な方向(幅方向)における中央の位置に6mmの穴を一箇所開けた後、熱風循環式オーブンを用いて80℃×7時間のアニールと、乾燥とを実施した。乾燥直後の平板を、乾燥剤を入れたデシケータ中に16時間保管して、試験片を得た。
得られた試験片を用いて、耐溶剤性試験を行った。この試験は、23℃/50%RHの恒温恒湿室内で行った。試験方法には、カンチレバー法を採用し、下記(a)~(c)の手順で行った。
(a)試験片のゲート側の端から100mm~130mmの範囲にある試験片の面を固定台に挟んで試験片の面が略水平となるように支え、ゲート側の端から90mm~100mmの範囲にある試験片の上面に帯状にエタノール(和光純薬工業(株)製の「試薬1級エタノール」)を塗布する。なお、エタノールが揮発してなくならないように、定期的にエタノールを塗布する。
(b)ゲート側の端から10mmの位置に設けた穴に800gの荷重をかけて、試験片に所定の表面応力を発生させる。
(c)エタノールの塗布を開始してから試験片にクレーズが発生するまでの時間(秒)を計測する。この方法を用いて、ある表面応力での「クレーズ発生時間」(秒)を測定し、試験片の耐溶剤性を評価した。クレーズ発生時間が長いほど、耐溶剤性に優れていることを示す。
<シャルピー衝撃強度の評価方法>
メタクリル樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械(株)製の「EC130SXII-4A」)を用いて射出成形し、縦120mm×横100mm×厚さ3mmの平板を得た。射出条件は、以下の通りである。
・成形温度設定
HN:255℃、H1:260℃、H2:240℃、H3:230℃、ホッパー下:60℃
・金型温度:60℃
・射出速度:60mm/秒
・保圧:60MPa
・保圧切り替え位置:9mm
・保圧速度:20mm/秒
・冷却時間:30秒
・射出時間:10秒
・計量時のスクリュー回転数:50rpm
・背圧:10MPa
・スクリュー計量値:44mm
・最大射出圧力:200MPa
得られた平板から、複数の試験片を切り出し、切り出し面を鏡面研磨して、縦80mm×横10mm×厚さ3mmとした。試験片として、長辺が樹脂の流動方向(MD方向)に沿うように切り出された試験片MDと、長辺が樹脂の流動方向(MD方向)の垂直方向(TD方向)沿うように切り出された試験片TDとの、2種を用意した。
試験片MDと、試験片TDとを用いて、以下の条件で6回ずつ試験し、試験片MDについての平均値および試験片TDについての平均値を算出し、それぞれシャルピー衝撃強度(MD)およびシャルピー衝撃強度(TD)とした。
・試験装置:(株)安田精機製作所 IMPACT TESTER
・ハンマ:1J
・試験方向:エッジワイズ
<ビカット軟化温度の測定方法>
メタクリル樹脂組成物を、JIS K7206(B50法)に準拠して、ヒートデストーションテスター((株)安田精機製作所製の「148-6連型」)を用いて射出成形し、得られた試験片のビカット軟化温度(℃)を測定した。
<実施例1>メタクリル樹脂組成物1の製造
図2に示す連続重合装置を用いて、メタクリル樹脂組成物を製造した。図2中の第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用い、第2の反応槽20として容量8Lの完全混合型反応槽を用いた。
(第1の重合工程)
第1の反応槽10において、原料組成物(A)としての、メタクリル酸メチル98.44質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン、連鎖移動剤(A)]0.146質量部、および重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、重合開始剤(A)]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た。
第1の反応槽10内でのシロップ1の滞留時間(θ)が37.3分となるように流量を調整した。
第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を調整し、第1の反応槽10内での温度(T1)を140℃に設定し連続塊状重合を行い、中間組成物(A)としてのシロップ1を得た。
(第2の重合工程)
次に、第2の反応槽20に供給する、原料組成物(B)としての原料モノマー溶液2を準備した。この原料モノマー溶液2は、メタクリル酸メチル96.84質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン、連鎖移動剤(B)]1.673質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、重合開始剤(B)]0.0915質量部を混合して準備された溶液である。
第2の反応槽20において、原料モノマー溶液2とシロップ1とが1:10.2の質量割合で混合されるように流量を調整した。これにより、原料組成物(B)としての原料モノマー溶液2と中間組成物(A)としてのシロップ1との混合物が得られた。なお、第2の反応槽20での混合物の滞留時間(θ)は22.3分であった。
第2の反応槽20の外壁面を取り囲むジャケット23の温度を調整し、第2の反応槽20内での温度(T2)を175℃に設定し、連続塊状重合を行い、シロップ2を得た。
この連続塊状重合は、第1の反応槽10および第2の反応槽20が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
第2の反応槽20内の反応混合物を第2の反応槽20の頂部に位置する抜き出し口21bから、メタクリル樹脂組成物として連続的に抜き出した。得られたメタクリル樹脂組成物を、抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、250℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去した。得られたメタクリル樹脂組成物を溶融状態で押出し、水冷し、裁断して、ペレットとして排出ライン35から排出させた。
これらの操作により、メタクリル樹脂組成物1をペレットの形態で製造した。
<実施例2>メタクリル樹脂組成物2の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物2をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル98.46質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.125質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た点。
・第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備した。原料モノマー溶液2として、メタクリル酸メチル95.72質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]2.789質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.0915質量部を混合して準備した点。
<実施例3>メタクリル樹脂組成物3の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物3をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル98.436質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.150質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た点。
<実施例4>メタクリル樹脂組成物4の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物4をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル98.436質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.150質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た点。
・第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備した。原料モノマー溶液2として、メタクリル酸メチル97.39質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]1.116質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.0915質量部を混合して準備した点。
<実施例5>メタクリル樹脂組成物5の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物5をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル98.402質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.184質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た点。
・第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備した。原料モノマー溶液2として、メタクリル酸メチル96.84質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]1.673質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.0915質量部を混合して準備した点。
<比較例1>メタクリル樹脂組成物C1の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物C1をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル99.39質量部、アクリル酸メチル0.50質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.098質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0072質量部を混合してシロップ1を得た点。
・第1の反応槽10内でのシロップ1の滞留時間が61.6分となるように流量を調整した点。
・第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備した。原料モノマー溶液2として、メタクリル酸メチル94.05質量部、アクリル酸メチル0.50質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]5.35質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.100質量部を混合して準備した点。
・第2の反応槽20において、原料モノマー溶液2とシロップ1とが1:9.7の質量割合で混合されるように流量を調整した点。なお、第2の反応槽20での混合物の滞留時間は36.6分であった。
<比較例2>メタクリル樹脂組成物C2の製造
以下の点以外は、実施例1と同様にして、メタクリル樹脂組成物C2をペレットの形態で製造した。
・第1の反応槽10において、メタクリル酸メチル98.46質量部、アクリル酸メチル1.40質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.125質量部、重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0142質量部を混合してシロップ1を得た点。
・第2の反応槽20に供給する原料モノマー溶液2を準備した。原料モノマー溶液2として、メタクリル酸メチル94.08質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]4.463質量部および重合開始剤[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン]0.0536質量部を混合して準備した点。
<合成例1>メタクリル樹脂組成物C3’の製造
図2に示す連続重合装置を用いて、メタクリル樹脂組成物を製造した。図2中の第1の反応槽10として容量13Lの完全混合型反応槽を用い、第2の反応槽20として容量8Lの完全混合型反応槽を用いた。
(重合工程)
第1の反応槽10において、原料組成物(A)としての、メタクリル酸メチル91.6質量部、アクリル酸メチル8.00質量部、連鎖移動剤[n-オクチルメルカプタン]0.389質量部、および重合開始剤[t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート]0.0097質量部を混合してシロップ1を得た。
第1の反応槽10内でのシロップ1の滞留時間(θ)が59.1分となるように流量調整した。
第1の反応槽10の外壁面を取り囲むジャケット13の温度を調整し、第1の反応槽10内での温度(T1)を140℃に設定し連続塊状重合を行い、中間組成物(A)としてのシロップ1を得た。
原料組成物(B)および中間組成物(A)を第2の反応槽20で重合させる第2の重合工程は実施せずに、シロップ1のみを第2の反応層20に供給した。第2の反応槽20の外壁面を取り囲むジャケット23の温度を調整し、第2の反応槽20内での温度(T2)を140℃に設定し、シロップ2を得た。
この塊状重合は、第1の反応槽10および第2の反応槽20が反応混合物(混合液)で満たされて実質的に気相が存在しない状態(満液状態)で実施した。
第2の反応槽20内の反応物を第2の反応槽20の頂部に位置する抜き出し口21bから、メタクリル樹脂組成物として連続的に抜き出した。得られたメタクリル樹脂組成物を、抜き出しライン25に通し、予熱器31にて200℃に加熱して、ベント付き脱揮押出機33にて、250℃で未反応の原料モノマー等の揮発性成分を除去した。得られたメタクリル樹脂組成物を溶融状態で押出し、水冷し、裁断して、ペレットとして排出ライン35から排出させた。
これらの操作により、メタクリル樹脂組成物C3’をペレットの形態で製造した。
<比較例3>メタクリル樹脂組成物C3の製造
メタクリル樹脂組成物C1を25質量部と、メタクリル樹脂組成物C3’を75重量部とを混合した。得られた混合物を、1軸押出機(スクリュー径40mm)を用いて、樹脂温度が250℃になるように溶融混練してストランド状に押し出した後、水冷してストランドカッターで切断することにより、メタクリル樹脂組成物C3をペレットの形態で製造した。
<比較例4>メタクリル樹脂組成物C4の製造
メタクリル樹脂組成物C1を50質量部と、メタクリル樹脂組成物C3’を50質量部とを混合した。得られた混合物を、1軸押出機(スクリュー径40mm)を用いて、樹脂温度が250℃になるように溶融混練してストランド状に押し出した後、水冷してストランドカッターで切断することにより、メタクリル樹脂組成物C4をペレットの形態で製造した。
実施例および比較例の製造条件および得られたメタクリル樹脂組成物の評価を、下表に示す。下表において、略号は下記の意味を表す。
「L(質量%)」:原料組成物(A)中の重合開始剤(A)の濃度
「L(質量%)」:原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の重合開始剤(B)の濃度
「S(質量%)」:原料組成物(A)中の連鎖移動剤(A)の濃度
「S(質量%)」:原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の連鎖移動剤(B)の濃度
「θ(分)」:第1の重合工程における第1の反応槽の滞留時間
「θ(分)」:第2の重合工程における第2の反応槽の滞留時間
Figure 0007482762000002
Figure 0007482762000003
以上の結果によれば、前記要件(1)~(4)のすべてを満たす実施例のメタクリル樹脂組成物は、要件(1)~(4)のいずれかを満たさない比較例のメタクリル樹脂組成物と比較して、シャルピー衝撃強度が顕著に優れていることが分かる。
また、実施例のメタクリル樹脂組成物は、クレーズ発生時間が25秒以下であり、良好な耐溶剤性を備えていることが分かる。
さらに、実施例のメタクリル樹脂組成物は、スパイラル流動長が430mm以上であり、優れたシャルピー衝撃強度を備えていながら、良好な流動性を備えていることが分かる。
また、要件(11)および(12)を満たす実施例の製造方法によれば、優れたシャルピー衝撃強度を実現できる、メタクリル樹脂組成物を製造できることがわかる。
1 原料モノマータンク
3 重合開始剤タンク
10 第1の反応槽
13 ジャケット
17 重合開始剤タンク
20 第2の反応槽
23 ジャケット
21b 抜き出し口
25 抜き出しライン
31 予熱器
33 脱揮押出機
35 排出ライン

Claims (7)

  1. メタクリル樹脂(A)とメタクリル樹脂(B)とを含み、下記要件(1)~(4)を満たす、メタクリル樹脂組成物。

    (1)メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)が、それぞれ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位及びアクリル酸メチルに由来する構造単位を含み、メタクリル樹脂組成物に含まれる全構造単位の合計含有量100質量%に対して、メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、98.4質量%以上100.0質量%未満であり、アクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、0.0質量%を超え1.6質量%以下であるか、または、
    メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)が、それぞれ、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含み、メタクリル樹脂組成物に含まれる全構造単位の合計含有量100質量%に対して、メタクリル樹脂組成物に含まれるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が、100.0質量%である。
    (2)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、始点から分子量30,000までのピーク面積の割合(%)をW1とするとき、W1が、10~25である。
    (3)メタクリル樹脂組成物の微分分子量分布曲線において、始点から終点までのピーク面積に対する、分子量300,000から終点までのピーク面積の割合(%)をW2とするとき、W2が、3~15である。
    (4)メタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、2.0~3.2である。
  2. 前記メタクリル樹脂組成物の質量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、2.4~3.2である、請求項1に記載のメタクリル樹脂組成物。
  3. 前記W2が、5~10である、請求項1または2に記載のメタクリル樹脂組成物。
  4. 前記メタクリル樹脂(A)および前記メタクリル樹脂(B)の合計含有量100質量%に対して、
    メタクリル樹脂(A)およびメタクリル樹脂(B)の一方の含有量が25質量%~35質量%であり、他方の含有量が65質量%~75質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物。
  5. 請求項1~のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物を含む成形体。
  6. メタクリル酸メチルを98.0質量%以上含む原料モノマー(A)、重合開始剤(A)および連鎖移動剤(A)を含有する原料組成物(A)を、第1の完全混合型反応槽に供給し、第1の完全混合型反応槽において原料組成物(A)を連続塊状重合に付し、得られた中間組成物(A)を第1の完全混合型反応槽より抜き出す第1の重合工程と、
    メタクリル酸メチルを98.0質量%以上含む原料モノマー(B)、重合開始剤(B)および連鎖移動剤(B)を含有する原料組成物(B)、並びに、第1の重合工程で抜き出された中間組成物(A)を、第2の完全混合型反応槽に供給し、第2の完全混合型反応槽において原料組成物(B)および中間組成物(A)を更に連続塊状重合に付し、得られたメタクリル樹脂組成物を第2の完全混合型反応槽より抜き出す第2の重合工程とを含み、
    下記要件(11)および(12)を満たす、請求項1~のいずれか一項に記載のメタクリル樹脂組成物の製造方法。

    (11)1.5≦L/L≦1.9
    (12)0.5≦S/S≦2.5
    (式中、
    は、原料組成物(A)中の重合開始剤(A)の濃度(質量%)を示す。
    は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の重合開始剤(B)の濃度(質量%)を示す。
    は、原料組成物(A)中の連鎖移動剤(A)の濃度(質量%)を示す。
    は、原料組成物(B)および中間組成物(A)の混合物中の連鎖移動剤(B)の濃度(質量%)を示す。)
  7. さらに、下記要件(13)および(14)を満たす、請求項に記載の製造方法。

    (13)25≦θ≦45
    (14)10≦θ≦25
    (式中、
    θは、第1の重合工程における第1の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。
    θは、第2の重合工程における第2の完全混合型反応槽の滞留時間(分)を示す。)
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