JP6055827B2 - ポリブタジエンの製造方法、ポリブタジエン、ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

ポリブタジエンの製造方法、ポリブタジエン、ゴム組成物及びタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、ポリブタジエンの製造方法、該方法で製造されたポリブタジエン、該ポリブタジエンを用いたゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤに関する。
近年、省エネルギー及び省資源の社会的要請のもと、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、耐摩耗性及び耐亀裂成長性等の耐久性に優れたタイヤが求められている。耐久性を向上させるためには、タイヤに配合するゴム成分のミクロ構造を立体規則的に制御することで、タイヤの耐久性を向上できることが知られている。
一方、天然ゴムは、そのミクロ構造においてシス−1,4結合量が99.7%であることが知られており、この高い立体規則性により伸長結晶性を高めていると考えられている。該天然ゴムを用いたゴム組成物については、タイヤに用いられた場合において、高い耐久性を奏することができる。これに対し、ポリブタジエンにおいても、ミクロ構造を立体規則的に制御することで、タイヤの耐久性を向上できることが知られている。
特開2005−530872号公報(特許文献1)では、ネオジム化合物に共役ジエン単量体を加えた触媒系を用いることで、シス−1,4結合量が高いポリブタジエンを合成できることが開示されている。しかしながら、特許文献1で使用されるネオジム化合物は、触媒として使用するために触媒の合成工程が必要となるため、ポリブタジエンを得るのに手間がかかる等の課題が残されていた。
特表2005−530872号公報
そこで、本発明の目的は、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れるゴム組成物及びタイヤを得ることのできるポリブタジエンを、より効率よく合成する方法を提供することにある。加えて、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の構成は、次の通りである。即ち、本発明のポリブタジエンの製造方法は、下式(i)
M-(NQ) 1 (NQ) 2 (NQ) 3 ・・・(i)
(式中、Mはランタノイド、スカンジウム、イットリウムから選択される少なくとも一種であり、(NQ) 1 、(NQ) 2 及び(NQ) 3 はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M−N結合を有する)
で表される希土類元素化合物、及び添加剤Dの存在下で、ブタジエンモノマーを重合させる、ポリブタジエンの製造方法であって、
前記添加剤Dが、OH基、SH基及びNH基のうち、少なくとも1つを有し、前記添加剤Dの配合割合が、前記希土類元素化合物1molに対して1mol未満である。この製造方法によれば、触媒組成物の単離工程を要さず、効率よくポリブタジエンを製造することができる。本発明に係る製造方法は、窒素原子を含む希土類元素化合物を触媒とすることで、触媒自体が高い安定性を有する触媒組成物を形成することができる。これにより、触媒組成物の単離工程を省略できるため、触媒の収率が上がり、効率よくポリブタジエンの製造が可能となる。
なお、本明細書における「希土類元素化合物」とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素またはスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。
また、本明細書において、「ポリブタジエン」とは、ブタジエンを単量体(モノマー)として重合(合成)されたブタジエンの単独重合体(ホモポリマー)を意味し、重合体の高分子鎖の一部を変性したものも含む。
本発明のポリブタジエンの製造方法は、さらにアニオン性配位子となり得る添加剤Dの存在下で、ブタジエンモノマーを重合させることが好ましい。添加剤Dを加えることによって、高いシス−1,4結合量のポリブタジエンを高収率で合成することが可能となる。
本発明の製造方法においては、希土類元素化合物及び添加剤Dに加えて、さらに、イオン性化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一種と、下記一般式(X)で表される化合物の存在下でブタジエンモノマーを重合させることが好ましい。
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)
イオン性化合物、ハロゲン化合物、及び式(X)で表される化合物は、上記触媒組成物に対して助触媒として、重合反応に対する促進作用をもたらす。
前記添加剤Dの配合割合は、前記希土類元素化合物1molに対して、0.1mol以上10mol未満とすることが好ましい。前記添加剤Dの配合モル比率を希土類元素化合物1molに対して0.1mol以上とすることで、製造されるポリブタジエンの高シス化、高分子量化が可能となる。また、本発明によれば、触媒組成物の収率が高いため、希土類元素化合物に対して、添加剤Dの配合量を1mol未満としても、十分に高シス、高分子量のポリブタジエンの製造が可能である。これにより、原料コストを減じることができる。
なお、添加剤Dの配合量を等mol以上としても、効果はほとんど変わらない。
前記添加剤Dは、OH基、SH基及びNH基のうち、少なくとも1つを有することが好ましい。また、前記添加剤Dは、より触媒の安定性を高めるため、アニオン性三座配位子前駆体とすることが好ましい。
上記希土類元素化合物、添加剤D、助触媒、及びブタジエンモノマーの重合反応は、溶媒としてのシクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またはこれらの混合物中で行われるのが好ましい。溶媒をシクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またはこれらの混合物とすることで、精製段階が容易になり、また環境にも優しいという利点がある。また、これらの溶媒は入手が容易である、という利点も有する。
本発明のポリブタジエンは、上記にいずれかの製造方法によって製造され、その1,2−ビニル結合量は2%以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、「1,2−ビニル結合量」とは、前記ポリブタジエン全体に対する1,2−ビニル構造が占める割合を意味する。本明細書における、「シス−1,4結合量」、「トランス−1,4結合量」についても同様である。
本発明のタイヤは、上記のポリブタジエンをゴム成分として含むゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたゴム部材を備えることを特徴とする。本発明のポリブタジエンを少なくとも含むと、伸長結晶性が格段に増加し、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れたゴム組成物を得ることができる。これにより、製造されるタイヤについても、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れたものとすることが可能である。
本発明によれば、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れるゴム組成物及びタイヤを得ることのできるポリブタジエンを、より効率よく、安定的に合成する方法を提供することができる。加えて、耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性)に優れるゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いたタイヤを得ることができる。
以下、本発明を実施形態に基づき、例示的に説明する。
(ポリブタジエン)
本発明に係る製造方法で製造される重合体は、ポリブタジエンである。
−シス−1,4結合量−
前記ポリブタジエンのシス−1,4結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上が特に好ましい。
前記シス−1,4結合量が、95%以上であると、ポリマー鎖の配向が良好となり、伸長結晶性の生成が十分となり、更に、98%以上であると、より高い耐久性を得るのに十分な伸長結晶性を生成できる。
−トランス−1,4結合量−
前記ポリブタジエンのトランス−1,4結合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が特に好ましい。
前記トランス−1,4結合量を5%以下とすると、伸長結晶性が阻害を受けにくくなる。
−1,2−ビニル結合量−
−1,2−ビニル結合量−
前記ポリブタジエンの1,2−ビニル結合量は、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
前記1,2−ビニル結合量を2%以下とすると、伸長結晶性が阻害を受けにくくなる。
−数平均分子量(Mn)−
前記ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、40万以上が好ましく、更に50万以上が好ましい。
(ポリブタジエンの製造方法)
次に、前記ポリブタジエンを製造することができる、本発明に係る製造方法を詳細に説明する。但し、以下に詳述する製造方法は、あくまで例示に過ぎない。
前記ポリブタジエンの製造方法は、少なくとも、重合工程を含み、さらに、必要に応じて適宜選択した、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を含む。
−重合工程−
本発明における重合工程は、ブタジエンモノマーを重合する工程である。
前記重合工程においては、後述する重合触媒組成物を用いること以外は、通常の配位イオン重合触媒による重合体の製造方法と同様にして、単量体であるブタジエンを重合させることができる。本発明において、使用される重合触媒組成物については、後に詳述する。
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサンまたそれらの混合物等が挙げられるが、特に環境への負荷、コスト等の観点から、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、またはこれらの混合物を好適に使用できる。さらに、沸点がトルエンより低い、毒性が低い等の利点を有することから、シクロヘキサンの使用が好ましい。
記重合工程は、重合触媒組成物を使用する場合、例えば、(1)単量体としてブタジエンを含む重合反応系中に、重合触媒組成物の構成成分を別個に提供し、該反応系中において重合触媒組成物としてもよいし、(2)予め調製された重合触媒組成物を重合反応系中に提供してもよい。また、(2)においては、助触媒によって活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することも含まれる。
また、前記重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
前記重合工程において、ブタジエンの重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、ブタジエンを十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
−−重合触媒組成物−−
次に、前記重合触媒組成物について説明する。
また、前記重合触媒組成物は、少なくとも
(A)成分:下式(I)で表される希土類元素化合物
M-(NQ)1(NQ)2(NQ)3 ・・・(i)
(式中、Mはランタノイド、スカンジウム、イットリウムから選択される少なくとも一種であり、(NQ)1、(NQ)2及び(NQ)3はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M−N結合を有する)
を含む。
前記重合触媒組成物は、好適には、
(B)成分:イオン性化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一種、より好ましくは、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物(B−1)、及び、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種のハロゲン化合物(B−3)のうち少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、必要に応じてアルミノキサン(B−2)を含んでいてもよい。
また、前記重合触媒組成物は、好適には
(C)成分:下記一般式(X):
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される化合物を含む。。
なお、該重合触媒組成物が、上記イオン性化合物(B−1)及び上記ハロゲン化合物(B−3)の少なくとも一種を含む場合には、更に、(C)成分を含むことを要する。
さらに、該重合触媒組成物は、アニオン性配位子となり得る添加剤Dを含有することが好ましい。
上記(A)成分は、M−N結合を3つ有する化合物により構成される。ここで、(A)成分がM−N結合を3つ有することにより、各結合が化学的に等価となるため構造が安定的であり、それゆえに取り扱いが容易である、という利点を有する。
上記式(i)において、NQが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基などの脂肪族アミド基、フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオベンチルフェニルアミド基、2-tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基などのアリールアミド基、ピストリメチルシリルアミド基などのピストリアルキルシリルアミド基のいずれでもよいが、ピストリメチルシリルアミド基が好ましい。
なお、重合反応系において、重合触媒組成物に含まれる(A)成分の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
上記重合触媒組成物に用いる(A)成分は、希土類元素化合物または該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物である。該希土類元素化合物及び反応物は、希土類元素−炭素結合を有さず、これにより化合物が安定であり、取り扱いやすい、という利点がある。ここで、希土類元素化合物とは、周期律表中の原子番号57〜71の元素から構成されるランタノイド元素またはスカンジウムもしくはイットリウムを含有する化合物である。
なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合触媒組成物に用い得る(A)成分において、上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。
上記重合触媒組成物に用いる(B)成分は、イオン性化合物(B−1)及びハロゲン化合物(B−3)よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。なお、環境面への配慮より、ハロゲン化合物(B−3)と比して、イオン性化合物(B−1)をより好適に使用できる。また、(B)成分として、アルミノキサン(B−2)を更に含んでいてもよい。上記重合触媒組成物における(B)成分の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜50倍モルであることが好ましい。
上記(B−1)で表されるイオン性化合物は、非配位性アニオンとカチオンとからなり、上記(A)成分である希土類元素化合物またはそのルイス塩基との反応物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。ここで、非配位性アニオンとしては、4価のホウ素アニオン、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記重合触媒組成物におけるイオン性化合物の含有量は、(A)成分に対して0.1〜10倍モルであることが好ましく、約1倍モルであることが更に好ましい。
上記(B−2)で表されるアルミノキサンは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物であり、例えば、一般式:(−Al(R')O−)で示される繰り返し単位を有する鎖状アルミノキサンまたは環状アルミノキサン(式中、R'は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部の炭化水素基はハロゲン原子及び/またはアルコキシ基で置換されてもよく、繰り返し単位の重合度は、5以上が好ましく、10以上が更に好ましい)を挙げることができる。ここで、R'として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。また、アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム及びその混合物等が挙げられ、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。例えば、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物を原料として用いたアルミノキサンを好適に用いることができる。なお、上記重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、(A)成分を構成する希土類元素Mと、アルミノキサンのアルミニウム元素Alとの元素比率Al/Mが、10〜1000程度となるようにすることが好ましい。
上記(B−3)で表されるハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種からなり、例えば、上記(A)成分である希土類元素化合物またはそのルイス塩基との反応物と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。特に、空気中の安定性を考慮すると、(B−3)のハロゲン化合物としては、ルイス酸よりも金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物の方が好適に使用できる。なお、上記重合触媒組成物におけるハロゲン化合物の合計の含有量は、(A)成分に対して1〜5倍モルであることが好ましい。
上記ルイス酸としては、B(C653等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C653等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第3、4、5、6または8族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくはアルミニウムハロゲン化物または有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素または臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。このようなハロゲン化合物を使用する場合、1つの化合物中にハロゲン原子を2つ以上含む化合物の方が、ハロゲン原子1つのみを有する化合物よりも、反応性がよく、その使用量を減じることが可能となるため、より好適に使用できる。例えば、エチルアルミニムクロライドよりもエチルアルミニウムジクロライドの方がより好適に使用可能である。
上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
また、上記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチルヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1モル当り、0.01〜30モル、好ましくは0.5〜10モルの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
上記重合触媒組成物に用いる(C)成分は、下記一般式(X):
YR1 a2 b3 c ・・・ (X)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される有機金属化合物であり、下記一般式(Xa):
AlR123 ・・・ (Xa)
(式中、R1及びR2は、同一または異なり、炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、R3は炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R3は上記R1またはR2と同一または異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物であることが好ましい。一般式(X)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機アルミニウム化合物は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(A)成分に対して1〜50倍モルであることが好ましく、約10倍モルであることが更に好ましい。
――アニオン性配位子となり得る添加剤D――
アニオン性配位子となり得る添加剤Dの添加は、より高いシス−1,4結合量のポリブタジエンを高収率で合成することが可能となる、という効果を奏するため好ましい。
上記添加剤Dとしては、(A)成分のアミド基と交換可能なものであれば特に限定されないが、OH基、NH基、SH基のいずれかを有することが好ましい。
具体的な化合物として、OH基を有するものとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。具体的には2−エチル−1−ヘキサノール、ジブチルヒドロキシトルエン、アルキル化フェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチリルチオプロピオネート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えば、さらにヒンダードフェノール系のものとして、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォソフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等を挙げることができる。
また、ヒドラジン系として、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンを挙げることができる。
NH基を有するものとしては、アルキルアミン、アリールアミン等の第1級アミンあるいは第2級アミンを挙げることができる。具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ビス(2−ジフェニルフォスフィノフェニル)アミン等が挙げられる。
SH基を有するものとしては、脂肪族チオール、芳香族チオール等のほか、下記一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006055827

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して−O−Cj2j+1、−(O−Ck2k−)a −O−Cm2m+1又は−Cn2n+1 で表され、R1、R2及びR3の少なくとも1つが−(O−Ck2k−)a −O−Cm2m+1であり、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(I)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
Figure 0006055827


(式中、Wは−NR8−、−O−又は−CR910−(ここで、R8及びR9は−Cp2p+1であり、R10は−Cq2q+1であり、p及びqはそれぞれ独立して0〜20である。)で表され、R5及びR6はそれぞれ独立して−M−Cr2r−(ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、rは1〜20である。)で表され、R7は−O−Cj2j+1、−(O−Ck2k−)a −O−Cm2m+1又は−Cn2n+1 で表され、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12であり、R4は炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
一般式(II)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−メチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ブチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ドデシルアザ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
添加剤Dとしては、好適には下記一般式(ii)で表されるアニオン性三座配位子前駆体を使用できる。
−T−Q−T−E ・・・(ii)
(Qは、周期律表第15族原子から選択される配位原子を含むアニオン性電子供与基を示し、E及びEはそれぞれ独立して、周期律表第15族及び16族原子から選択される配位原子を含む中性電子供与基を示し、T及びTはそれぞれ、QとE及びEを架橋する架橋基を示す)
添加剤Dは、前記希土類元素化合物1molに対して、0.01〜10mol、特に0.1〜1.2mol添加するのが好ましい。添加量が0.1mol未満の場合、モノマーの重合が十分に進みづらく、本発明の目的を達成し難い。添加量を希土類元素化防物と当量(1.0mol)とすることが好ましいが、過剰量添加されていてもよい。しかし、また、添加量が1.2mol超とすると、試薬のロスが大きいため、好ましくない。
上記一般式(ii)中、中性の電子供与基E及びEは、第15族及び第16族から選択される配位原子を含む基である。また、E及び~Eは同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。該配位原子としては、窒素N、リンP、酸素O、硫黄Sなどが例示されるが、好ましくはPである。
前記E及びEに含まれる配位原子がPである場合には、中性の電子供与基EまたはEとしては、1)ジフェニルホスフィノ基やジトリルホスフィノ基などのジアリールホスフィノ基、2)ジメチルホスフィノ基やジエチルホスフィノ基などのジアルキルホスフイノ基、3)メチルフェニルホスフィノ基などのアルキルアリールホスフィノ基が例示され、より好ましくはジアリールホスフィノ基が例示される。
前記E及びEに含まれる配位原子がNである場合には、中性の電子供与基EまたはEとしては、1)ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基やビス(トリメチルシリル)アミノ基などのジアルキルアミノ基、2)ジフェニルアミノ基などのジアリールアミノ基、3)メチルフェニル基などのアルキルアリールアミノ基などが例示される。
前記E及びEに含まれる配位原子がOである場合には、中性の電子供与基EまたはEとしては、1)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、2)フェノキシ基、2,6− ジメチルフェノキシ基などのアリールオキシ基などが例示される。
前記E及びEに含まれる配位原子がSである場合には、中性の電子供与基EまたはEとしては、1)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのアルキルチオ基、2)フェニルチオ基、トリルチオ基などのアリールチオ基などが例示される。
アニオン性の電子供与基Qは、第15族から選択される配位原子を含む基である。該配位原子として、好ましくはリンPまたは窒素Nが挙げられ、より好ましくはNが挙げられる。
架橋基T及びTは、QとE及びEを架橋することができる基であればよく、アリール環上に置換基を有していてもよいアリーレン基が例示される。また、T及びTは同一の基でも異なる基であってもよい。
前記アリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ピリジレン基、チエニレン基(好ましくはフェニレン基、ナフチレン基)などであり得る。また、前記アリーレン基のアリール環上には任意の基が置換されていてもよい。該置換基としてはメチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲン基、トリメチルシリル基などのシリル基などが例示される。
前記アリーレン基として、さらに好ましくは1,2−フェニレン基が例示される。
重合触媒組成物を構成する金属錯体におけるアニオン性三座配位子前駆体としては、例えば、Organometallics,23,p 4778-4787 (2004)などを参考にして製造され得る。より具体的には、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)アミン(PNP)配位子が挙げられる。
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、少なくとも、ゴム成分を含み、さらに必要に応じて、充填剤、架橋剤、その他の成分を含む。
−ゴム成分−
前記ゴム成分は、少なくとも、本発明の製造方法で製造されたポリブタジエンを含み、さらに必要に応じて、その他のゴム成分を含む。
前記ゴム成分中における前記ポリブタジエンの配合量(含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15質量%〜100質量%が好ましい。
前記ゴム成分中における前記ポリブタジエンの配合量が、15質量%以上であると、前記ポリブタジエンの特性を十分に発揮することができる。
−−その他のゴム成分−−
前記その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプレンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、イソプレン共重合体などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−充填剤−
前記充填剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、無機充填剤、などを挙げることができ、カーボンブラック及び無機充填剤から選択される少なくとも一種が好ましい。ここで、前記ゴム組成物には、カーボンブラックが含まれることがより好ましい。なお、前記充填剤は、補強性などを向上させるためにゴム組成物に配合するものである。
前記充填剤の配合量(含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10質量部〜100質量部が好ましく、20質量部〜80質量部がより好ましく、30質量部〜60質量部が特に好ましい。
前記充填剤の配合量が、10質量部以上であると、充填剤を入れる効果がみられ、100質量部以下であると、前記ゴム成分に充填剤を混ぜ込むことができ、ゴム組成物としての性能を向上させることができる。
一方、前記充填剤の配合量が、前記より好ましい範囲、または、前記特に好ましい範囲内であると、加工性と低ロス性・耐久性のバランスの点で有利である。
−−カーボンブラック−−
前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m/g〜100m/gが好ましく、35m/g〜80m/gがより好ましい。
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が20m/g未満であると、得られたゴムの耐久性が低く、十分な耐亀裂成長性が得られないことがあり、100m/gを超えると、低ロス性が低下し、また、作業性が悪いことがある。
前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量部〜100質量部が好ましく、10質量部〜70質量部がより好ましく、20質量部〜60質量部が特に好ましい。
前記カーボンブラックの含有量が、10質量部未満であると、補強性が不十分で耐破壊性が悪化することがあり、100質量部を超えると、加工性及び低ロス性が悪化することがある。
一方、前記カーボンブラックの含有量が、前記より好ましい範囲、または前記特に好ましい範囲内であると、各性能のバランスの点で有利である。
−−無機充填剤−−
前記無機充填剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、無機充填剤を用いる時は適宜シランカップリング剤を使用してもよい。
−架橋剤−
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤、などが挙げられるが、これらの中でもタイヤ用ゴム組成物としては硫黄系架橋剤がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、架橋がほとんど進行しなかったり、20質量部を超えると、一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があったり、加硫物の物性が損なわれたりすることがある。
−その他の成分−
本発明のゴム組成物は、その他に加硫促進剤を併用することも可能であり、加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が使用できる。
また必要に応じて、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
(架橋ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、架橋され、架橋ゴム組成物として用いてもよい。前記架橋ゴム組成物は、本発明のゴム組成物を架橋して得られたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度120℃〜200℃、加温時間1分間〜900分間が好ましい。
(タイヤ)
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物、または、本発明のゴム組成物を架橋して得られた架橋ゴム組成物を用いたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム組成物、または、本発明の架橋ゴム組成物のタイヤにおける適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどのゴム部材が挙げられる。
これらの中でも、前記適用部位をトレッドとすることが、耐久性の点で有利である。
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴム及び/またはコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
(タイヤ以外の用途)
タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホースなどに本発明のゴム組成物、または、本発明の架橋ゴム組成物を使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
試験例1.ポリブタジエンの製造
参考例1:ポリブタジエン1(添加剤Dなし)の製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム(Gd[N(SiMe)12.0μmol、トリイソブチルアルミニウム0.90mmol、トルエン15.0gを仕込んだのち30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PhCB(C)12.0μmolを仕込んだのち30分間熟成を行った。グローブボックスから反応器を取り出し、15重量%のブタジエン/シクロヘキサン溶液200.0gを添加し、80℃で15時間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、70℃で真空乾燥しポリブタジエン1を得た。得られたポリブタジエン1の収量は27.0gであった。
(実施例2:ポリブタジエン2(PNP0.5mol当量)の製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム(Gd[N(SiMe)12.0μmol、0.01MのPNP/トルエン溶液0.6mL(添加剤D)、トリイソブチルアルミニウム0.90mmol、トルエン15.0gを仕込んだのち30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PhCB(C)12.0μmolを仕込んだのち30分間熟成を行った。グローブボックスから反応器を取り出し、15重量%のブタジエン/シクロヘキサン溶液200.0gを添加し、80℃で15時間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル-6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、70℃で真空乾燥しポリブタジエン2を得た。得られたポリブタジエン2の収量は27.0gであった。
参考例3:ポリブタジエン3(PNP1.0mol当量)の製造方法)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で1L耐圧ガラス反応器に、トリスビストリメチルシリルアミドガドリニウム(Gd[N(SiMe)12.0μmol、0.01MのPNP/トルエン溶液1.2mL、トリイソブチルアルミニウム0.90mmol、トルエン15.0gを仕込んだのち30分間熟成を行った。その後、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(PhCB(C)12.0μmolを仕込んだのち30分間熟成を行った。グローブボックスから反応器を取り出し、15重量%のブタジエン/シクロヘキサン溶液200.0gを添加し、80℃で15時間重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量のメタノールで重合体を分離し、70℃で真空乾燥しポリブタジエン3を得た。得られたポリブタジエン3の収量は26.0gであった。
参考例4:ポリブタジエン4(2-エチル−1−ヘキサノール1.0mol当量)の製造方法)
添加剤DとしてPNPの代わりに2-エチル−1−ヘキサノールを用いること以外は、実施例2と同様にして、ポリブタジエン4を得た。得られたポリブタジエン4の収量は25.5gであった。
参考例5:ポリブタジエン5(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン1.0mol当量)の製造方法)
添加剤DとしてPNPの代わりに3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを用いること以外は、実施例2と同様にして、ポリブタジエン5を得た。得られたポリブタジエン5の収量は26.5gであった。
試験例2.各種ポリブタジエンの分析
上記の各種ポリブタジエンについて、下記の分析を行った。ポリブタジエンの分析結果を表1に示す。
(1)ミクロ構造(シス−1,4結合量)
H−NMRおよび13C−NMRにより得られたピーク[H−NMR:δ4.6−4.8(3,4−ビニルユニットの=CH)、5.0−5.2(1,4−ユニットの−CH=)、13C−NMR:[δ23.4(1,4−シスユニット)、15.9(1,4−トランスユニット)、18.6(3,4−ユニット)]の積分比からそれぞれ算出した。また、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCによりポリスチレンを標準物質として用い求めた。
(2)数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8220GPC、カラム:東ソー製GMHXL−2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、ポリブタジエンのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃とした。溶出溶媒としてTHFを用いた。
Figure 0006055827
表1の結果より、参考例1、3〜5、及び実施例2において、ポリブタジエンを高収率(収率80%以上)で合成できることが示された。さらに、添加剤Dを加えることで、高いシス−1,4結合量のポリブタジエンを高収率で合成できることが示された。
本発明の製造方法により製造されたポリブタジエン、及び該ポリブタジエンを含むゴム組成物は、例えば、タイヤ部材(特に、タイヤのトレッド部材)に好適に利用可能である。

Claims (9)

  1. 下式(i)
    M-(NQ) 1 (NQ) 2 (NQ) 3 ・・・(i)
    (式中、Mはランタノイド、スカンジウム、イットリウムから選択される少なくとも一種であり、(NQ) 1 、(NQ) 2 及び(NQ) 3 はアミド基であり、同一であっても異なっていてもよく、ただし、M−N結合を有する)
    で表される希土類元素化合物、及び添加剤Dの存在下で、ブタジエンモノマーを重合させる、ポリブタジエンの製造方法であって、
    前記添加剤Dが、OH基、SH基及びNH基のうち、少なくとも1つを有し、前記添加剤Dの配合割合が、前記希土類元素化合物1molに対して1mol未満である、ポリブタジエンの製造方法。
  2. 前記添加剤Dが、アニオン性配位子の前駆体である、請求項1記載のポリブタジエンの製造方法。
  3. 前記希土類元素化合物及び前記添加剤Dに加え、さらに、イオン性化合物及びハロゲン化合物のうち少なくとも一種と、下記一般式(X)で表される化合物の存在下でブタジエンモノマーを重合させる、請求項1記載のポリブタジエンの製造方法。
    YR ・・・ (X)
    (式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子で、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一または異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)
  4. 前記添加剤Dの配合割合が、前記希土類元素化合物1molに対して、0.1mol以上1mol未満である、請求項1記載のポリブタジエンの製造方法。
  5. 前記添加剤Dが、アニオン性三座配位子前駆体である、請求項1記載のポリブタジエンの製造方法。
  6. 重合時の溶媒としてシクロヘキサンまたはノルマルヘキサンを用いる、請求項1記載のポリブタジエンの製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のポリブタジエンの製造方法により製造されたポリブタジエンであって、1,2−ビニル結合量が2%以下である、ことを特徴とするポリブタジエン。
  8. ゴム成分を含み、前記ゴム成分が請求項記載のポリブタジエンを少なくとも含むゴム組成物。
  9. 請求項記載のゴム組成物を用いたゴム部材を備えた、ことを特徴とするタイヤ。
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