JP6054132B2 - 表面改質フッ素樹脂複合体の製造方法 - Google Patents

表面改質フッ素樹脂複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面改質フッ素樹脂複合体および同複合体を用いた医療用器具に関する。
フッ素樹脂は、化学的安定性および熱的安定性に優れるほか、自己潤滑性を有するために摩擦係数が低く、高い撥水性を有することが知られているが、たとえば医療用フッ素樹脂製品では、摺動面からの液漏れや、微量の液残りを避けるために、より高い撥水性が求められている。
フッ素樹脂フィルムの撥水性を改良する方法としては、例えばイオン注入処理によりフッ素樹脂フィルムの最表面のフッ素原子の含有量を内層よりも多く存在させ、かつ、面粗さを調整する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、フッ素樹脂フィルムの撥水性は改善されているものの、イオン注入を行うための装置が高額であり、コストが増大するという問題がある。
一方、アノードレイヤーイオンソースをイオン源とし、イオンをフッ素樹脂フィルムに照射してフッ素樹脂フィルムを粗面化し、ゴムを加硫接着させる方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、粗面化された面は必ずゴムが接着され、粗面化された面が表面に露出することがないため、撥水性が問題となることはなく、検討もされていない。
特開2000−17091号公報 特開2012−36249号公報
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、表面改質フッ素樹脂フィルムとゴム等が接合された、撥水性が改善された複合体および同複合体を用いた医療用器具を提供することを目的とする。
本発明者らは更に研究を重ねた結果、イオンソースからのイオンビームを照射して表面を粗面化して表面改質されたフッ素樹脂フィルムは、撥水性が大きく向上していることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、フッ素樹脂フィルムの片面または両面にイオンソースからのイオンビームを照射して表面を粗面化する工程、および、片面のみを粗面化した場合には粗面化していない面、両面を粗面化した場合には一方の面にゴムまたは熱可塑性樹脂を圧着させる工程を含むことを特徴とするフッ素樹脂複合体の製造方法に関する。
イオンソースがアノードレイヤーイオンソースであることが好ましい。
アノードレイヤーイオンソースの印加電圧が1.5kV以上3.5kV以下であることが好ましい。
フッ素樹脂フィルムのフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、またはエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体であることが好ましい。
また、本発明は、前記製造方法によって得られたフッ素樹脂複合体、さらには、該フッ素樹脂複合体からなる医療用ゴム栓に関する。
本発明によれば、フッ素樹脂フィルムの片面または両面にイオンソースからのイオンビームを照射して表面を粗面化し、粗面化した面が必ず露出するようにゴムまたは熱可塑性樹脂を圧着させるため、粗面化して得られた表面改質フッ素樹脂フィルムの撥水性を大きく向上させることができ、撥水性が向上したフッ素樹脂複合体、および該フッ素樹脂複合体からなる医療用ゴム栓を提供することができる。
図1は表面改質装置の概略図である。 図2はイオン照射装置の外観図である。 図3はイオン照射装置の長手方向に直交する断面図である。 図4はイオン照射装置によるイオンビーム照射の様子を示す図である。 図5はプレフィルドシリンジに使用された医療用ゴム製品を示す図である。 図6は医療用ゴム製品の斜視図である。 図7は医療用ゴム製品の断面図である。
本発明のフッ素樹脂と熱可塑性樹脂の複合体の製造方法は、フッ素樹脂フィルムの片面または両面にイオンソースからのイオンビームを照射して表面を粗面化する工程、および、片面のみを粗面化した場合には粗面化していない面、両面を粗面化した場合には一方の面をゴムまたは熱可塑性樹脂と圧着させる工程を含む。
表面を粗面化する工程において、イオンビーム照射によりフッ素樹脂フィルムを片面または両面を粗面化する。イオン源としては公知の機構を用いることが出来るが、広範囲を照射可能なアノードレイヤーイオンソースが好ましい。
図1は表面改質装置1の概略図、図2はイオン照射装置2の外観図、図3はイオン照射装置2の長手方向に直交する断面図である。表面改質装置1は、フッ素樹脂複合体を構成するフッ素樹脂フィルムRFの表面を改質させる装置である。表面改質装置1は、処理室3、イオン照射装置2、イオン照射移動装置、保持装置4、前室5および真空装置6からなる。
処理室3は、イオン照射装置2、イオン照射移動装置および保持装置4を収容する、密閉可能な部屋である。イオン照射装置2は、形状が全体として細長い直方体であり、スリット11、空間12、アノード13およびガス流路14を備える。イオン照射装置2は、アノードレイヤー型のホールスラスターを改良したアノードレイヤーイオンソースである。
スリット11は、イオン照射装置2における細長い1つの面15(以下「照射側面15」という)に、短い両端縁側がそれぞれ円弧状に湾曲し、長い両縁側が直線のループとなった隙間である。照射側面15を形成する部分におけるスリット11の内側の部分を内極16といい、スリット11の外側の部分を外極17という。イオン照射装置2は、少なくとも照射側面15を有する材料が強磁性体で製作され、イオン照射装置2に組み入れられた永久磁石により、内極16がS極に磁極化され、外極17がN極に磁極化されている。
空間12は、イオン照射装置2の内部に設けられ、スリット11によって外部に連通してその幅がスリット11よりも大きな、スリット11の形状に対応したループ状の空洞である。アノード13は、ループ状の空間12に収容されたループ状の電極である。アノード13は、銅または銅合金で製作される。
ガス流路14は、イオン照射装置2の外部からイオン源となるガスを空間12内に導入するための流路である。イオン照射装置2において、外極17は接地(アース)され、アノード13は直流電源に接続されている。イオン照射装置2は、照射側面15を形成する部分(「照射側面15」と略す場合がある)が接地され、アノード13との間に電圧が印加される。また、イオン照射装置2は、内極16がS極に磁極化され、外極17がN極に磁極化されていることにより、スリット11の開口部分で、軸方向の電場に対して磁場が略直交するように形成される。
イオン照射装置2のループ状の空間12におけるスリット11近傍では、照射側面15とアノード13との間を移動する電子により、ガス流路14から供給されたガスがプラズマ化されイオン化が生成される。生成した電子は照射側面15に向かい、イオンは、アノード13とスリット11との間の薄い層(アノードレイヤー)で加速されて、スリット11から外部に放出される。
イオン照射移動装置は、イオン照射装置2を水平方向に往復移動させるための装置である。イオン照射移動装置は、イオン照射装置2の長手方向を水平方向に直交させて(長手方向を垂直方向にして)イオン照射装置を保持する。イオン照射移動装置は、イオン照射装置2の照射側面15と移動方向との角度αが0度から90度の範囲で任意に変更可能に設計される。イオン照射移動装置は、往復の移動速度および往動端、復動端での静止時間、移動回数(往動および復動をそれぞれ1回とする)等、移動条件を種々変更して動作させることができる。イオン照射移動装置は、イオン照射装置2が垂直方向に移動するように、または水平および垂直のいずれでもない方向に移動するようにしてもよい。
保持装置4は、改質対象であるフッ素樹脂フィルムRFを保持するための装置である。保持装置4は、厚みのある強固な長方形のガラス基板21を備える。ガラス基板21は、その表面が垂直となるように保持装置4に組み入れられる。
保持装置4は、往復移動するイオン照射装置2のいずれの位置においても、ガラス基板21の表面とイオン照射装置2との往復移動方向に直交する方向の距離が一定となる位置に、静止可能に配される。ここで「静止可能」としたのは、後述するように、保持装置4が処理室3と前室5との間を移動可能なことによる。
前室5は、保持装置4を収容することができる密閉可能な部屋である。前室5は、処理室3に連続し、遠隔操作で開閉可能な扉によって処理室3と隔てられている。前室5は、処理室3との間で保持装置4が移動可能となっており、保持装置4の前室5と処理室3との間の移動は、これらを隔てる扉の開閉とともに外部からの遠隔操作により行われる。真空装置6は、前段真空ポンプ25、後段真空ポンプ26および複数の自動弁27,28,29,30,31からなる。
前段真空ポンプ25は、真空度が低い段階で作動させるあらびきポンプであり、油回転ポンプが使用される。前段真空ポンプ25は、自動弁27,28を介して処理室3および前室5に接続されている。後段真空ポンプ26は、高い真空度を得るために作動させる真空ポンプであり、クライオポンプが使用される。後段真空ポンプ26は、自動弁29を介して処理室3に接続されている。
自動弁30,31は、それぞれ前室5の真空状態を解除するリーク弁、および処理室3の真空状態を解除するリーク弁である。
次に、表面改質装置1によるフッ素樹脂フィルムRFの表面改質処理について説明する。
図4はイオン照射装置2によるイオンビーム照射の様子を示す図である。初めに、改質対象であるフッ素樹脂フィルムRFが、保持装置4のガラス基板21に固定される。フッ素樹脂とはフッ素原子を含むポリマーを意味し、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性PTFE、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられる。これらのポリマーは単体でも良く、2種類以上のポリマーの混合物であっても良い。これらのうちPTFEは最も摩擦係数が低く耐熱性も優れる点で好ましい。また変性PTEFは破断伸びが高く成形性が良い点で好ましい。
本発明でフィルムの形状は特に限定されず、成形物の形状に合わせて任意に設定される。経済性の観点から厚みは薄い方が好ましいが、成形あるいは使用条件に伴う変形を考慮し任意に設定できる。フィルムの厚さは、10μm〜150μmが好ましい。
フッ素樹脂フィルムRFは矩形に切断され、四隅または対向する2辺がガラス基板21に直接または間接に固定される。フッ素樹脂フィルムRFには、しわが生じない程度の弱い張力が加えられる。
図1を参照して、フッ素樹脂フィルムRFが固定されたガラス基板21が、前室5内において保持装置4に一体化される。
前室5および処理室3が密閉され外部と遮断される。前室5と処理室3とを隔てる扉は開かれている。
自動弁27、28が開かれ、自動弁29、30、31が閉じられた状態で、真空装置6の前段真空ポンプ25が起動され、前室5および処理室3が減圧される。
前室5および処理室3が所定の真空度、例えば10Paに達したら、保持装置4が前室5から処理室3に移動され、前室5と処理室3との間の扉が閉じられる。
処理室3内に移動されたフッ素樹脂フィルムRFは、イオン照射装置2との距離およびイオン照射角度αに応じた適切な位置に配される。ここで、イオン照射角度αとは、改質対象(フッ素樹脂フィルムRF)に照射されるイオンビームの照射方向と、改質面に直交する方向とがなす角度であり、表面改質装置1においては、イオン照射角度αは、照射側面15とイオン照射移動装置の移動方向との角度と同じ値である。
また、フッ素樹脂フィルムRFは、いずれかの対向する2辺がイオン照射装置2の長手方向に一致するように、ガラス基板21に固定されている。
続いて自動弁27、28が閉じられ、自動弁29が開かれ、前段真空ポンプ25が停止されると、後段真空ポンプ26が起動される。処理室3は、後段真空ポンプ26により、一層高い真空度、例えば10−2Paにまで減圧される。
イオン照射装置2は、照射側面15とイオン照射移動装置の移動方向との角度αが設定された角度になるようにイオン照射移動装置に取り付けられている。イオン照射装置2に、ガス流路14からイオン化するガスが所定の流量で供給される。イオン化するガスには、例えばアルゴンガス、酸素ガスまたは窒素ガスが好ましく、これらは単独または複数で用いられる。これらのうち、化学的に活性な官能基を生成しにくいアルゴンガスが特に好ましい。
処理室3内の真空度が設定した値で安定したら、イオン照射装置2が起動され、イオンビームがフッ素樹脂フィルムRFに照射され、表面改質が開始される。また、イオン照射装置2は、イオン照射移動装置により、所定の移動速度で一方の移動端から他方の移動端に向けて水平方向に移動される。
イオン照射装置2がいずれか一方の移動端からいずれか他方の移動端まで設定された回数移動したのち、イオン照射装置2の移動およびその動作が停止され、表面改質が終了する。ここで行われる表面改質は、照射されるイオンビームによりフッ素樹脂フィルムRFの表面および表面近傍の内部の分子構造を破壊し、表面の粗面化を行うものである。
照射するイオンの持つ平均エネルギーとしては好ましくは0.5keV以上1.8keV以下であり、より好ましくは1.2keV以上1.8keV以下である。平均エネルギーが0.5keVより低いとイオンビーム照射の効果が小さく所望の複合体が得られない。また平均エネルギーが1.8keVより高い場合フィルムの変形や着色が見られ得られる複合体の商品価値を減じさせてしまうためである。前述のアノードレイヤーイオンソースを用いた場合、印加電圧の数値の約半分の数値の平均エネルギーが得られることが判っており、アノードレイヤーイオンソースの印加電圧としては1.0kV以上3.5kVが好ましく、より好ましくは2.5kV以上3.5kV以下である。
フッ素樹脂フィルムに照射するイオンの単位面積当たりの個数としては、求める接着強度に必要な量を選べばよいが、1013〜1018個/cm程度が好ましい。1013個未満では、必要な表面改質が得られず接着強度が低下する。1018個超では改質された表面層が更に分解を受ける為、非効率的である。イオンの照射を行う場合、一度に必要な個数のイオンの照射を行っても良いし、一度に少ないイオンの照射を繰返し行うことで目的とするイオンの個数を照射しても良い。フッ素樹脂への熱的なダメージを避ける目的で、一回当たりの照射を少なくし、複数回処理を繰り返す方式が好ましい。
照射するイオンとしては、フッ素樹脂表面の組成変化を最小に抑えることの出来る不活性ガスが好ましい。これは活性ガスを照射した場合、活性ガスとフッ素樹脂が化学反応を起こしフッ素樹脂表面に官能基を生成しやすくなる為である。これらの活性ガスは接着強度の向上に寄与するものの一般に熱運動により表面から潜り込みを起こしやすく接着強度の経時変化を引き起こす点で、好ましくない。不活性ガスとしては例えばアルゴン、窒素が挙げられる。
ゴムと圧着する場合、表面が改質されたフッ素樹脂フィルムRFは、表面が改質されている面が必ず露出するように、たとえば架橋剤が混合された加硫前のゴムのシート等に重ね合わされ、成形金型により加硫成形されて、所定の形状のゴム複合体に加工される。ゴムと複合化する面は、表面が改質されている面であっても、改質されていない面であってもよい。表面が改質されている面に複合化させると、接着剤等を使用することなく、加硫成形によってゴムに強固に固着される。
一般的なゴム配合において、加硫温度は140℃〜200℃である。架橋に必要な時間は成形体の寸法に依存するが、医療用ゴム栓などの小型物では1分〜20分程度である。加硫接着を行う時の圧力に関しては、公知のゴムの架橋方法における圧力が採用される。一般に成形物の雌型となる金型に対して、隙間無くゴムが充填される程度の圧力を加えればよく、医療用ゴム栓などの小型物では20MPa程度である。
一方、熱可塑性樹脂と圧着する場合、表面が改質されたフッ素樹脂フィルムRFは、表面が改質されている面が必ず露出するように、例えば熱プレス装置に所望の形状を持つ金型を設置し、金型に熱可塑性樹脂とフッ素樹脂フィルムを投入し、加熱による熱可塑性樹脂の溶融を行った後、所定の圧力を加えることで溶融した熱可塑性樹脂とフッ素樹脂フィルムの接着を行い、かつ複合体の変形を促すことで接着と成形を同時に行うことが出来る。熱プレス装置以外に、射出成形装置、トランスファー成形装置などにより熱可塑性樹脂を圧着させることもできる。熱可塑性樹脂と圧着する面は、表面が改質されている面であっても、改質されていない面であってもよい。表面が改質されている面に複合化させると、溶融状態の熱可塑性樹脂が、表面処理により粗面化されたフッ素樹脂表面の粗面に進入する所謂アンカー効果による強固な接着が得られる
複合体の原料となるゴムには、ブチル系ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のニトリル系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリレートゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファンゼンゴムまたは1,2−ポリブタジエン等が使用される。
これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてよい。ゴム複合体に使用されるは、上記に限定されないが、ブチル系ゴムまたは/およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMゴムという)が好ましい。ブチル系ゴムは耐気体透過性および耐水蒸気透過性に優れることから好ましい。ブチル系ゴムとしては公知の化合物を用いてよいが、例えばイソブチレン−イソプレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム(以下、「ハロゲン化ブチルゴム」という)、またはその変性物が挙げられる。変性物としては、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭素化物等が挙げられる。なかでも、架橋の容易さからハロゲン化ブチルゴムがより好ましく、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムが更に好ましい。
また、EPDMゴムは加工性に優れているため好ましい。EPDMゴムにはゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMゴムとゴム成分とともに伸展油を含む油展タイプのEPDMゴムとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。EPDMゴムにおけるジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンまたはシクロオクタジエンなどが挙げられる。
さらに、ハロゲン化ブチルゴムとEPDMゴムの組み合わせは相性が良く、耐気体透過性および耐水蒸気透過性に優れるとともに加工性も優れることからより好ましい。ゴム複合体が、例えば注射器用のガスケットのような医療用ゴム製品である場合には、ゴムの主成分として気体透過性の低いブチルゴムが好ましい。架橋剤としては、清浄性の観点から、トリアジン誘導体架橋の使用が好ましい。
熱可塑性樹脂は特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を用いることが出来る。熱可塑性樹脂は単体、若しくは2種類以上の複合体であっても良く、あるいは、熱可塑性樹脂中に微小な架橋ゴム相を含む熱可塑性樹脂(動的架橋型熱可塑性エラストマー、TPE−V)であってもよい。たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂などが挙げられる。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂やスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、あるいはそれらの水添ブロック共重合体などが挙げられる。複合体としては、オレフィン系樹脂に未架橋ゴム相としてエチレンプロピレン成分を含むオレフィン系エラストマー(TPO)や、オレフィン系樹脂に架橋ゴム相としてエチレンプロピレンジエン成分を含むTPE−Vなどが挙げられる。
ゴムや熱可塑性樹脂には、その流動性が阻害されない程度に任意の添加剤を加えることが出来る。例えば可塑剤、老化防止剤、充填剤などが挙げられる。
本発明の製造方法により得られたフッ素樹脂とゴムまたは熱可塑性樹脂の複合体は、特に医療用ゴム製品として好適に使用することができる。医療用ゴム製品としては、たとえば、バイアル用医療用ゴム栓、注射器用ガスケット(シリンジ用ガスケット、プレフィルドシリンジ用ガスケット)、医療器用シーリング部材などが挙げられる。
図5はプレフィルドシリンジPCに使用された医療用ゴム製品を示す図、図6は医療用ゴム製品の斜視図、図7は医療用ゴム製品の断面図である。
図5〜図7に示される医療用ゴム製品は、プレフィルドシリンジPC内の薬液を押し出すためのピストン7である。図6、図7を参照して、ピストン7は、略円柱状の一方の端面(底面)が傘状(底面の径に較べ高さが極めて小さな円錐台の周面状)の押圧面35である。ピストン7の他方の端面には、軸心方向に設けられた雌ネジ36が開口する。ピストン7は、表面改質装置1により表面が粗面化されたフッ素樹脂フィルム(PTFEフィルム)とゴムまたは熱可塑性樹脂とを重ね合わせて成形されることにより製造される。そのため、ピストン7は、大部分がゴムまたは熱可塑性樹脂で形成され、押圧面35および周面37には、ゴムまたは熱可塑性樹脂に接合されたフッ素樹脂フィルムRFが露出する。
ピストン7は、押圧面35および周面37の表面がフッ素樹脂フィルムRFで形成されていることにより、プレフィルドシリンジPC内の薬液を変質させず、それ自体も変質しない。また、ピストン7はシリンダとの摺動面が自己潤滑性を有するフッ素樹脂で形成されていることにより、プレフィルドシリンジPCによる薬液の注入を円滑に行うことができる。
フッ素樹脂フィルムRFと、ゴムまたは熱可塑性樹脂とを接合したゴム複合体は、プレフィルドシリンジPCのピストン7以外にも、例えば液状の薬液の瓶の栓等、他の医療用ゴム製品として利用できる。
ゴム複合体は、医療用に限られず、ゴムが有する弾性とフッ素樹脂が有する自己潤滑性、耐薬品性、耐熱性等が求められる種々の用途、例えば工業設備のパッキン等に使用することができる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1〜6および比較例1〜4
以下に示す各種フッ素樹脂フィルムを使用して、下記の共通条件のもと、表1に示す印加電圧と処理回数でイオンビームを照射した。表1に、以下に示す方法で評価したフィルムの変色の有無の観察結果、水の接触角、液漏れの評価結果を示す。
<表面改質の共通条件>
(1)イオン照射装置:IZOVAC社製 IZOVA BEAM CLEANING SYSTEM(アノードレイヤーイオンソース)/イオン照射装置は、ランテクニカルサービス株式会社の駆動装置により駆動
(2)設定真空度:10−2Pa
(3)フッ素樹脂フィルム:
PTFE:日本バルカー工業株式会社製、バルフロン(登録商標)、厚さ100μm
変性PTFE:日本バルカー工業株式会社製、ニューバルフロンEX1(バルフロン:登録商標)、厚さ100μm
PFA:ダイキン工業株式会社製、ネオフロンPFAフィルム(ネオフロン:登録商標)、厚さ100μm
ETFE:旭硝子株式会社製、FluonETFE(登録商標)、厚さ100μm
(4)イオン照射装置とフッ素樹脂フィルムとの距離:イオン照射装置2の移動方向に直交する方向について照射側面15の幅方向中央(図3、4の符合C)からフッ素樹脂フィルムRFまでの距離(図4のD)が100mm
プロセスガス:Ar流量40sccm、イオン照射角度α60度、処理速度20mm/sec
<変色>
表面改質後のフッ素樹脂フィルムを対象として目視により行い、変色の有無を確認した。
<接触角>
処理後のフィルムを接触角測定装置(CA−A型機、協和界面科学株式会社製)により液滴の接触角を測定することで行った。液適としては純水を用い、滴下5秒後に測定を行った。測定は各サンプルに対して5点行い、その平均値を接触角とした。
Figure 0006054132
表1より、照射電圧を1.5kV以上とすることにより、表面の疎水性の指標である接触角は、PTFEの場合、比較例1の未処理品の110度に比べて有意に高い120度より高くすることができる。
また、実施例3における表面改質後のフッ素樹脂フィルムについて、改質された表面の組成をESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により調べた結果、F(フッ素)56%、C(炭素)41%、O(酸素)2.4%、N(窒素)0.1%であった。PTFEの理論的な組成であるFが66.6%、Cが33.3%に対してFが減少し、C、O、N等の元素が見られる。最表面のフッ素原子が引き抜かれ、空気由来と思われるO、Nが若干量取り込まれていると推定される。
実施例3における表面改質後のフッ素樹脂フィルムは、SPM(走査型プローブ顕微鏡)による表面形状の観察を行った結果、表面改質前の投影面積比1.6%に対して、表面改質処理後には投影面積比が15.9%に増加していた。また、SPMの画像観察および走査型電子顕微鏡(SEM)の観察によっても、表面改質後では表面に細かい凹凸が見られ、表面積が増加していた。この表面積の増加、表面の凹凸が、接触角の増加に寄与していると推定される。
<液漏れ>
表1に示した各条件のPTFE樹脂の表面改質を、フィルムの片面に対して実施し、該フィルムの反対面には実施例3の条件にて表面改質を行った。これらのフィルムと以下に示すゴム組成物を用いて医療用ガスケットを作製した。加硫接着は実施例3の条件にて表面改質を行った面を未加硫ゴムシートに、温度180℃、処理時間5分、処理圧力20MPaで接触させて実施した。得られたガスケットを注射筒にセットし、上部から純水を入れ60℃で1週間静置し、ガスケットと注射筒の間から水が漏れるかどうかを確認した。試験は各条件で10本実施し、水が漏れた本数を目視にて確認し、表1に示した。そして、液漏れしたシリンジの本数が1本以下のものを○と判定した。
(ゴム組成物)
未加硫ゴムシート:ハロゲン化ブチルゴム
架橋剤:2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成株式会社製、ジスネットDB)
フッ素樹脂フィルムの接触角の向上が見られた実施例1〜6では、水が漏れた本数が減少しており、疎水性の向上により、摺動面からの液漏れが減少していることがわかる。
1 表面改質装置
2 イオン照射装置
3 処理室
4 保持装置
5 前室
6 真空装置
7 ピストン
11 スリット
12 空間
13 アノード
14 ガス流路
15 照射側面
16 内極
17 外極
21 ガラス基板
25 前段真空ポンプ
26 後段真空ポンプ
27、28、29、30、31 自動弁
35 押圧面
36 雌ネジ
37 周面

Claims (3)

  1. フッ素樹脂フィルムの片面または両面にイオンソースからのイオンビームを照射して表面を粗面化する工程、および、
    片面のみを粗面化した場合には粗面化していない面、両面を粗面化した場合には一方の面をゴムまたは熱可塑性樹脂と圧着させる工程
    を含み、
    イオンソースがアノードレイヤーイオンソースであることを特徴とするフッ素樹脂複合体の製造方法。
  2. アノードレイヤーイオンソースの印加電圧が1.5kV以上3.5kV以下であることを特徴とする請求項記載のフッ素樹脂複合体の製造方法。
  3. フッ素樹脂フィルムのフッ素樹脂がポリテトラフルオロエチレン、変性ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、またはエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載のフッ素樹脂複合体の製造方法。
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