JP6054020B2 - リジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末 - Google Patents

リジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末 Download PDF

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Description

本発明は、リジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末に関する。
卵殻膜は、鶏卵の殻の内側にある薄膜である。卵を使用する際に卵殻膜が大量に排出されるため、その利用方法が研究されてきた。
卵殻膜の利用方法としては、可溶化して食品、化粧品、医薬品等に利用する方法(特許文献1〜3参照)、卵殻膜を可溶化せず、固形物粉末として利用する方法(特許文献4〜6参照)等が知られている。また特許文献6には、卵殻膜に水やエタノールを加えて湿式粉砕し、微粉末化して利用する方法が開示されている。
近年、卵殻膜中にはカタラーゼと共役したリジルオキシダーゼ(以下、LOXともいう。)が存在することが明らかになった。リジルオキシダーゼは、化粧品、医薬組成物、健康食品、触媒として新規化合物又はコラーゲン等を用いた膜の生成等への応用が期待されている。
しかし、リジルオキシダーゼは卵殻膜を構成する卵殻膜繊維上に固定化されており、水、溶剤、界面活性剤等を用いても、卵殻膜からリジルオキシダーゼ酵素を抽出することができない(非特許文献1参照)。また、タンパク質分解酵素により卵殻膜を分解し、リジルオキシダーゼを分離しようと試みても、リジルオキシダーゼが失活するため有効ではない。
特許文献7には、リジルオキシダーゼ活性を保持した卵殻膜を用いた医薬組成物が開示されているものの、卵殻膜中の微生物の殺菌方法やリジルオキシダーゼ活性を保持したまま粉末化する方法について開示がされていない。
特開平5−97897号公報 特開2009−132661号公報 特開2008−7419号公報 特開2003−146895号公報 特開2009−120617号公報 特開平9−143275号公報 特開2005−145889号公報
赤川貢、他2名、Lysyl oxidase coupled with catalase in egg shell membrane、Biochimica et Biophysica Acta、1434(1999)、p.151-160
本発明は上記不都合に鑑みてなされたものであり、リジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末等を提供することを主な目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[12]を包含する。
[1] リジルオキシダーゼ活性を有し、レーザー回折式粒度分布測定により測定した平均粒子径が300μm以下である卵殻膜粉末。
[2] リジルオキシダーゼ活性を有し、レーザー回折式粒度分布測定により測定した平均粒子径が30μm以下である卵殻膜粉末。
[3] リジルオキシダーゼ活性が、基質としてベンジルアミンを用いた場合のベンズアルデヒドの生成速度が0.01nmol/mg・min以上である[1]又は[2]に記載の卵殻膜粉末。
[4] 卵殻膜粉末に含まれる生菌数が1.0×10cfu/g以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の卵殻膜粉末。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の卵殻膜粉末を含む医薬品、医薬部外品、食品又は化粧品。
[6] 生卵殻膜を60℃以下で乾燥する乾燥卵殻膜の製造方法。
[7] 生卵殻膜がメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを含有させた生卵殻膜である[6]に記載の製造方法。
[8] 卵殻膜を60℃以下で粉砕する粉砕工程を含む卵殻膜粉末の製造方法。
[9] 卵殻膜が請求項6又は7により製造した乾燥卵殻膜である[8]に記載の製造方法。
[10] 卵殻膜を60℃以下で粉砕する粉砕工程と、
上記粉砕工程の前又は後にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを加える工程を含む卵殻膜粉末懸濁液の製造方法。
[11] 卵殻膜が請求項6又は7により製造した乾燥卵殻膜である[10]に記載の製造方法。
[12] [10]又は[11]により製造した卵殻膜粉末懸濁液を60℃以下で乾燥する卵殻膜粉末の製造方法。
本発明によれば、リジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末等を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳説する。
(卵殻膜粉末)
本発明の卵殻膜粉末は、卵殻膜を粉砕したものである。卵殻膜は、卵の殻の内側にある薄膜である。卵殻膜はエラスチン様タンパク質とコラーゲンを含む繊維状の不溶性タンパク質であり、輸卵管の峡部においてリジルオキシダーゼによる架橋化を経て生合成される。卵殻膜は直径1〜4μmの卵殻膜繊維からなる。
卵殻膜はニワトリ、ウズラ、アヒル、ダチョウ、ハト等のどの卵の卵殻膜を用いてもよいが、入手の容易性及び価格より、ニワトリの卵を用いるのが好ましい。
本発明の卵殻膜粉末は、レーザー回折式粒度分布測定により測定した平均粒子径が300μm以下であるが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。卵殻膜粉末の平均粒子径が上記範囲にあることにより、リジルオキシダーゼの活性が上がるからである。
卵殻膜粉末は、卵殻膜の微細粉末が静電気やファンデルワールス力、分子間力等により凝集し、形成した集合体からなる。本発明における平均粒子径とは、上記集合体の粒子径をいう。
卵殻膜粉末の平均粒子径は、公知の他の測定方法により測定してもよい。他の測定方法としては、例えばレーザー回折・散乱式粒度分析、画像解析式粒度分析、ディスク高速遠心沈降式粒度分析、誘導回析格子式粒度分析等が挙げられる。なお測定方法により平均粒子径の数値が異なると考えられるが、レーザー回折式粒度分布測定により測定した平均粒子径に換算すると、上記の数値範囲にあることが好ましい。
本発明の卵殻膜粉末は、リジルオキシダーゼ活性を有する。
リジルオキシダーゼはアミンオキシダーゼの一種である。リジルオキシダーゼは、タンパク質のリジン残基のε-アミノ基を酸化的に脱アミノすることでアルデヒドを生成し、コラーゲンやエラスチン等のタンパク質の架橋化反応に関与する。
リジルオキシダーゼは、卵殻膜を構成する卵殻膜繊維上に固定されている。水、溶剤、界面活性剤等を用いて、卵殻膜からリジルオキシダーゼを抽出することは困難である。
リジルオキシダーゼは酵素であるため、酸、アルカリ、熱により変成し失活する。よって、抽出溶媒として酸又はアルカリを用いた場合や、殺菌等の目的で卵殻膜を高温処理した場合は、リジルオキシダーゼが活性を失うため適当ではない。
リジルオキシダーゼ活性の測定方法は特に限定されないが、例えば次の方法により測定することができる。
リジルオキシダーゼは、基質中のアミノ基をアルデヒド基に変換した後、架橋反応を開始する。基質としてベンジルアミンを用いた場合のベンズアルデヒドの生成速度を測定することにより、リジルオキシダーゼ活性を測定することができる。
リジルオキシダーゼ活性は公知の他の方法により測定してもよい。他の方法としては、例えばイグチ(Iguchi, H.)ら, Toxicol. Appl. Pharmacol. 62, 126-136, (1982) に記載の方法等が挙げられる。
卵殻膜粉末のリジルオキシダーゼ活性は、基質としてベンジルアミンを用いた場合のベンズアルデヒドの生成速度が0.005nmol/mg・minであればよく、0.01nmol/mg・min以上であることが好ましく、0.015nmol/mg・min以上であることがより好ましい。卵殻膜粉末は優れたリジルオキシダーゼ活性を有するため、タンパク質の架橋化反応を促進する等の効果を有する。
本発明の卵殻膜粉末は、生菌数が少ないことが好ましい。卵殻膜粉末の表面に付着した微生物を除去又は死滅させることにより、卵殻膜粉末が微生物に汚染されることを予防することができる。
卵殻膜粉末に含まれる生菌数は1.0×10cfu/g以下であることが好ましく、3.0×10cfu/g以下であることがより好ましく、1.0×10cfu/g以下であることが特に好ましい。卵殻膜粉末に含まれる生菌数が上記範囲にあれば、医薬品、医薬部外品、食品又は化粧品等の品質基準の厳しい用途にも用いることができる。
卵殻膜粉末に含まれる生菌数は、希釈平板培養法等により測定することができる。
(卵殻膜粉末の製造)
卵殻膜粉末の製造方法は特に限定されないが、例えば以下に説明する方法により製造することが好ましい。
卵殻膜の調製
卵殻膜は、割卵後の卵殻から剥がすことで得られる。卵殻膜は、さらに洗浄することにより、卵殻膜から卵白、卵黄等の栄養物を除去することが好ましい。
卵殻膜は、割卵後の卵殻から剥がした生卵殻膜(水分含量約75%)をそのまま用いてもよいし、生卵殻膜を乾燥した乾燥卵殻膜を用いてもよいが、乾燥卵殻膜を用いることが好ましい。乾燥卵殻膜は水分が少なく、微生物が繁殖しにくい。また、卵殻膜の体積および質量が減少するため、より便利に用いることができる。
乾燥卵殻膜の製造
生卵殻膜を乾燥することにより、乾燥卵殻膜を製造することができる。生卵殻膜の乾燥は公知の方法により行うことができる。公知の乾燥方法としては、例えば加熱乾燥法、低温乾燥法、真空乾燥法、減圧乾燥法、凍結乾燥法、ドラム乾燥法、流動床乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられる。
乾燥卵殻膜は、生卵殻膜を80℃以下で乾燥したものであればよく、70℃以下で乾燥したものが好ましく、60℃以下で乾燥したものがより好ましい。温度が上記範囲であれば、卵殻膜のリジルオキシダーゼ活性を保持しつつ、卵殻膜を十分に乾燥することができる。
乾燥卵殻膜の水分含有量は20%以下であればよく、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。水分含有量を上記範囲とすることにより、乾燥卵殻膜上での微生物の繁殖を防止することができる。
生卵殻膜は微粉砕化するにしたがって汚染微生物数を減少させることができるが、更に殺菌効果を高めるためには、メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを含有させた生卵殻膜を用いることが好ましく、エタノールを含有させた生卵殻膜を用いることがより好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを含有させることにより、生卵殻膜中の生菌数を減少させることができる。
生卵殻膜に加えるメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールはそのまま加えてもよいが水溶液として加えてもよく、生卵殻膜中での水溶液濃度として3%(v/v)以上が好ましく、5%(v/v)以上がより好ましく、10%(v/v)以上が特に好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの濃度が上記範囲にあれば、微生物の繁殖を抑えつつ十分な殺菌を行うことができる。
生卵殻膜に加えるメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの量は、卵殻膜10gに対して0.3〜1000mlであればよく、0.5〜800mlが好ましく、1〜500mlが特に好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの添加量が上記範囲にあれば、微生物の繁殖を抑えつつ十分な殺菌を行うことができる。
卵殻膜を粉砕する粉砕工程
卵殻膜を粉砕することで卵殻膜粉末を製造できる。卵殻膜の粉砕方法としては特に限定されず、遊星ボールミル、カッターミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いることができるが、卵殻膜への微生物の混入を防ぐため、遊星ボールミル等の密閉式の粉砕方法を用いることが好ましい。
卵殻膜の粉砕は80℃以下で行えばよく、70℃以下で行うことが好ましく、60℃以下で行うことがより好ましい。温度が上記範囲であれば、卵殻膜のリジルオキシダーゼ活性を保持しつつ卵殻膜を十分に粉砕することができる。
粉砕手段及び卵殻膜を入れる容器は、プラスチック製又は各種コーティングがされていることが好ましい。上記加工がされていることにより、摩擦熱の発生による粉砕時の発熱を防止することができる。
卵殻膜の粉砕時の発熱を抑えるため、粉砕に用いる装置は、冷却機構をさらに備えてもよい。
卵殻膜の粉砕は、乾燥状態で粉砕する乾式粉砕、液体を加えた湿潤状態で粉砕する湿式粉砕のいずれでも行うことができる。
卵殻膜を乾式粉砕する場合、摩擦が少ないためエネルギー効率がよい、その後に乾燥する必要がない等のメリットがある。
卵殻膜を湿式粉砕する場合、液体の添加により粉砕時の温度を低下できる、粉砕後の卵殻膜粉末が凝集しづらい等のメリットがある。卵殻膜を湿式粉砕する場合、粉砕により卵殻膜粉末懸濁液が得られる。得られた卵殻膜粉末懸濁液をさらに乾燥させることにより、乾燥した卵殻膜粉末を得ることができる。
卵殻膜を湿式粉砕する場合、添加する液体の量は、乾燥卵殻膜10gに対して10〜500mlであればよく、20〜300mlが好ましく、40〜200mlが特に好ましい。液体の添加量が上記範囲にあれば、卵殻膜の粘度を適当な範囲に制御しつつ、十分な粉砕処理を行うことができる。
湿式粉砕時に卵殻膜に加える液体としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、ヘキサン、エーテル等の有機溶剤;過酸化水素、次亜塩素酸等の酸化剤等が挙げられる。中でも、リジルオキシダーゼ活性を保持しつつ殺菌処理を行えるため、アルコール類が好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールがより好ましい。上記液体は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、それらの水溶液で用いてもよい。
メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの添加
卵殻膜の粉砕において、粉砕工程の前又は後にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを加える工程を含むことが好ましく、エタノールを加える工程を含むことがより好ましい。添加するメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールは、そのまま加えてもよいが水溶液として加えてもよいが、水溶液として加えることが好ましい。生卵殻膜に加えるメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの水溶液濃度は、3%(v/v)以上が好ましく、5%(v/v)以上がより好ましく、10%(v/v)以上が特に好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの水溶液の濃度が上記範囲にあれば、微生物の繁殖を抑えつつ十分な殺菌を行うことができる。
粉砕工程の前にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノール、又はその水溶液を加える場合、卵殻膜を湿式粉砕することができる。
粉砕工程の前にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを加える場合、添加量は、卵殻膜10gに対して0.3〜1000mlであればよく、0.5〜800mlが好ましく、1〜500mlが特に好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの添加量が上記範囲にあれば、卵殻膜の粘度を適当な範囲に制御しつつ、十分な粉砕処理を行うことができる。
粉砕工程の後にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノール、又はその水溶液を加える場合、乾式粉砕により得た卵殻膜粉末を、メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールにより殺菌処理することができる。
粉砕工程の後にメタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールを加える場合、添加量は、卵殻膜10gに対して0.3〜1000mlであればよく、0.5〜800mlが好ましく、1〜500mlが特に好ましい。メタノール、エタノール、n−プロパノール又はイソプロパノールの添加量が上記範囲にあれば、卵殻膜粉末に対し十分に殺菌処理を行うことができる。
卵殻膜粉末懸濁液の乾燥
卵殻膜粉末を湿式粉砕した場合、得られた卵殻膜粉末懸濁液を乾燥することにより、卵殻膜粉末を得ることができる。卵殻膜粉末懸濁液を乾燥させることにより、微生物の繁殖を防ぐと共に化学的に安定な乾燥粉末を得ることができる。
卵殻膜粉末懸濁液の乾燥は、80℃以下で行えばよく、70℃以下で行うことが好ましく、60℃以下で行うことがより好ましい。温度が上記範囲であれば、卵殻膜のリジルオキシダーゼ活性を保持しつつ卵殻膜を十分に乾燥することができる。
卵殻膜粉末懸濁液の乾燥方法は、乾燥卵殻膜の製造で用いたものと同じもの等が挙げられる。
卵殻膜懸濁液を乾燥させて乾燥卵殻膜粉末を得た場合、乾燥卵殻膜粉末の水分含有量は20%以下であればよく、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。水分含有量を上記範囲とすることにより、乾燥卵殻膜粉末上で微生物が繁殖するのを防止することができる。
(卵殻膜粉末の用途)
卵殻膜粉末の用途としては、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、食品添加物等に用いることもでき、触媒として新規化合物又はコラーゲン等を用いた膜の生成に用いることもできるが、医薬品、医薬部外品、食品又は化粧品に用いることが特に好ましい。
卵殻膜粉末は、粉末のまま用いてもよいし、水溶液を添加し卵殻膜粉末懸濁液として用いてもよい。
卵殻膜粉末を含む医薬品
卵殻膜粉末を含む医薬品は、経口投与剤、皮膚外用剤、注射剤、座剤などの剤型にすることができる。卵殻膜粉末を含む医薬品はリジルオキシダーゼ活性を有するため、タンパク質の架橋化反応を促進する等の効果を有する。
卵殻膜粉末を含む医薬品を経口投与剤とする場合、固形製剤としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、丸剤、カプセル剤、チュアブル剤などが挙げられ、液体製剤としては、乳剤、液剤、シロップ剤などが挙げられる。中でも、服用し易く味がよい点で、顆粒剤、錠剤、タブレット剤、カプセル剤が好ましく、錠剤又は顆粒剤がより好ましい。
卵殻膜粉末を含む医薬品を経口投与剤は、卵殻膜粉末に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合して調製することができる。薬学的に許容される担体や添加剤としては、例えば白糖、乳糖、ブドウ糖、でんぷん、マンニット等の賦形剤;アラビアゴム、ゼラチン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等の結合剤;カルメロース、デンプン等の崩壊剤;無水クエン酸、ラウリン酸ナトリウム、グリセロール等の安定剤などが挙げられる。また、ゼラチン、白糖、アラビアゴム、カルナバロウ等で経口投与剤をコーティングしたり、カプセル化したりしてもよい。また、液体製剤は、例えば、上記の有効成分を、水、エタノール、グリセリン、単シロップ等を単独で又はこれらを混合した溶液に溶解又は分散させること等により調製することができる。これらの製剤には、甘味料、防腐剤、粘滑剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
上記経口投与剤における卵殻膜粉末の含有量は、経口投与剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、経口投与剤中に有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬品を皮膚外用剤として用いる場合、卵殻膜粉末に加え、通常医薬外用剤や化粧品に用いられる成分、例えば、精製水、アルコール類(低級アルコール、多価アルコールなど)、油脂類、ロウ類、炭化水素類等の基剤と、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、安定剤、防腐剤、着色剤、香料等の添加剤とを配合して調製することができる。
上記皮膚外用剤における卵殻膜粉末の含有量は、皮膚外用剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、皮膚外用剤中に有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬品を注射剤として用いる場合、卵殻膜粉末を注射用蒸留水又は生理用食塩水等に溶解又は分散させることにより調製することができる。また、注射剤はpH調整剤等として水溶性無機酸又はその塩、水溶性有機酸又はその塩、中性アミノ酸、酸性アミノ酸又はその塩、塩基性アミノ酸の塩等が含まれていてもよい。また注射剤は、任意成分として、例えば緩衝剤、安定化剤、無痛化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。
上記注射剤における卵殻膜粉末の含有量は、注射剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、注射剤中に有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬品を座剤として用いる場合、卵殻膜粉末に加えて、例えばカルボポール及びポリカルボフィル等のアクリル性高分子;例えばヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース性高分子;例えばアルギン酸ナトリウム及びキトサン等の天然高分子;例えば脂肪酸ワックス等の基剤等に配合することにより調製することができる。座剤は、任意成分として、例えば安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラベン等の防腐剤;例えば塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム等のpH調節剤;例えばメチオニン等の安定化剤が含まれていてもよい。
上記座剤における卵殻膜粉末の含有量は、座剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、座薬中に有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬部外品
卵殻膜粉末を含む医薬部外品は、皮膚外用剤、ドリンク剤等とすることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬部外品を皮膚外用剤として用いる場合、卵殻膜粉末に加え、通常医薬外用剤や化粧品に用いられる成分、例えば、精製水、アルコール類(低級アルコール、多価アルコールなど)、油脂類、ロウ類、炭化水素類等の基剤と、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、安定剤、防腐剤、着色剤、香料等の添加剤とを配合して調製することができる。
上記皮膚外用剤における卵殻膜粉末の含有量は、皮膚外用剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、皮膚外用剤中に有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む医薬部外品をドリンク剤として用いる場合、卵殻膜粉末に加えて、甘味料、防腐剤、粘滑剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、着香剤、着色剤等の添加剤を配合して調製することができる。
上記ドリンク剤における卵殻膜粉末の含有量は、ドリンク剤100重量部に対し0.01〜70重量部であればよく、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、無理なく摂取できる量のドリンク剤中に、有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む食品
卵殻膜粉末を含む食品は、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食、サプリメントなどを含む)、保健機能食品(特定保健用食品(疾病リスク低減表示、規格基準型を含む)、条件付き特定保健用食品、栄養機能食品を含む)とすることができる。
卵殻膜粉末を含む食品は、食品に通常用いられる賦形剤又は添加剤を配合して、錠剤、タブレット剤、丸剤、顆粒剤、散剤、粉剤、カプセル剤、水和剤、乳剤、液剤、エキス剤又はエリキシル剤等の剤型に調製することができる。中でも、服用しやすく味が良い点で、錠剤、タブレット剤、顆粒剤が好ましく、顆粒剤がより好ましい。
食品に通常用いられる賦形剤としては、シロップ、アラビアゴム、ショ糖、乳糖、粉末還元麦芽糖、セルロース糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等の結合剤;ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ポリエチレングリコール等の潤沢剤;ジャガイモ澱粉等の崩壊剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤等が挙げられる。食品に通常用いられる添加剤としては、例えば香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
上述したように卵殻膜粉末を製剤化した食品とする場合、食品中の卵殻膜粉末の含有量は、食品100重量部に対し、約0.001〜50重量%であればよく、約0.005〜40重量%であることが好ましく、約0.01〜30重量%であることがより好ましい。上記範囲であれば、無理なく摂取できる量の食品中に、有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む食品は、例えばスポーツ飲料、イオン飲料、ビタミン補給飲料、栄養補給バランス飲料、機能性飲料、ドリンク剤、牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、豆乳、豆乳飲料、調製豆乳、ミネラルウォーター、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、野菜飲料、茶飲料、ゼリー飲料、ノンアルコールビール等の飲料;ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等のアルコール飲料;そば、うどん、ラーメン、パスタ等の麺類;カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー類、クリーム類のようなゲル状菓子、チューインガム、風船ガムのようなガム類(板ガム、糖衣状粒ガム等)、チョコレート類(無垢チョコレート、コーティングチョコレートや、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート、メロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等)、ソフトキャンディ(キャラメル、ヌガー、グミキャンディ、マシュマロ等を含む)、タフィ等のキャラメル類、ビスケット類(ハードビスケット、ソフトビスケット、ソフトクッキー、クラッカー、半生ビスケット等)、焼き菓子、ケーキ類、洋菓子、和菓子、スナック菓子等の菓子類;アイスクリーム、ソフトクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;ドレッシング類、ソース類、乳製品、水産加工品、パン類、米飯類、スープ類などの一般食品であってもよい。
上述したように卵殻膜粉末を一般食品とする場合、食品中の卵殻膜粉末の含有量は、食品100重量部に対し、約0.001〜50重量%であればよく、約0.005〜40重量%であることが好ましく、約0.01〜30重量%であることがより好ましい。上記範囲であれば、無理なく摂取できる量の食品中に、有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
卵殻膜粉末を含む化粧品
卵殻膜粉末を含む化粧品は、例えば肌のハリ増加、しわ防止等の効果を有する。卵殻膜粉末に含まれるリジルオキシダーゼは皮膚のエラスチンの生成に関係するため、皮膚の老化防止効果を有するためである。
卵殻膜粉末を含む化粧品は、卵殻膜粉末に加えて、通常医薬外用剤や化粧品に用いられる成分、例えば、精製水、アルコール類(低級アルコール、多価アルコールなど)、油脂類、ロウ類、炭化水素類等の基剤と、必要に応じて、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、安定剤、防腐剤、着色剤、香料等の添加剤とを配合して調製することができる。
上記化粧品における卵殻膜粉末の含有量は、化粧品100重量部に対し0.01〜70重量%であればよく、0.05〜50であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、化粧品の性質を損なわず、有効量のリジルオキシダーゼを含む卵殻膜を含めることができる。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実験条件)
卵殻膜として、ニワトリの卵の卵殻から剥皮し洗浄した卵殻膜を、45℃で24時間乾燥し、乾燥卵殻膜を得た。
卵殻膜の粉砕には、フリッチェ製の遊星ボールミルを用いた。
平均粒子径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製のSALD−2000A)を用いた。水の入った容器に約100mgの卵殻膜粉末を入れ、平均粒度の測定をした。
卵殻膜の生菌数は、卵殻膜粉末100mgに生理食塩水9.9mlを加え、均一に混合した懸濁液試料を、希釈平板培養法(標準寒天培地(日水製薬株式会社製)で、37℃、好気条件下で48時間培養)により測定した。
卵殻膜微粉末と基質であるベンジルアミンを反応させ、卵殻膜微粉末中のリジルオキシダーゼにより生成されるベンズアルデヒドを逆相クロマトグラフィーにより測定した。
段階希釈したベンズアルデヒド標品の逆相クロマトグラフィーを行い、ベンズアル
デヒドのピーク面積から検量線を作成した。
各サンプルで得られたベンズアルデヒドピーク面積を検量線にあてはめ、卵殻膜1mgから1分間に生成されるベンズアルデヒド量(nmol)を算出した。
(実施例1〜4)
乾燥卵殻膜20gを遊星ボールミルを用いて180rpmで6時間粉砕した。粉砕時間1,2,3,6時間において卵殻膜1gをサンプリングし、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4とした。各実施例について、平均粒子径、生菌数及びリジルオキシダーゼ活性(LOX活性)を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1〜4に用いる乾燥卵殻膜を、粉砕する前に1gサンプリングし、平均粒子径、生菌数及びリジルオキシダーゼ活性(LOX活性)を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006054020
(評価)
卵殻膜粉末の平均粒子径が小さくなるに伴い、生菌数が減少することが分かった。これは、卵殻膜中の太さ1〜4μmの卵殻膜繊維が粉砕される際に、卵殻膜に付着した微生物が死滅したからと考えられる。
卵殻膜粉末の平均粒子径を小さくするに伴い、リジルオキシダーゼ活性が増加することが分かった。これは、リジルオキシダーゼは卵殻膜繊維中に安定に固定化されているため、粉砕によりリジルオキシダーゼ活性の減少がほとんど見られないためと考えられる。また、卵殻膜粉末の平均粒子径が小さくなるに伴いリジルオキシダーゼ酵素の表面積が大きくなるため、3時間粉砕条件では逆に反応性が高まる。
(実施例5)
乾燥卵殻膜10gに2%(v/v)のエタノール(和光純薬社製)を90ml添加し、乾燥卵殻膜にエタノールを含有させた。これを遊星ボールミルにより3時間粉砕処理を行った。得られた卵殻膜粉末懸濁液の平均粒子径、生菌数及びリジルオキシダーゼ活性(LOX活性)を測定した。
(実施例6)
5%(v/v)のエタノールを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。
(実施例7)
10%(v/v)のエタノールを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。
(実施例8)
20%(v/v)のエタノールを用いた以外は実施例5と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
Figure 0006054020
(評価)
添加するエタノールの濃度を高めるに伴い、卵殻膜粉末懸濁液の生菌数が減少した。これはエタノールの殺菌効果により、卵殻膜粉末中の微生物が死滅したためと考えられる。
また、湿式粉砕をする場合(実施例5〜8参照)、乾式粉砕を同じ時間行った場合(実施例3)に比べ、平均粒子径が大きくなる傾向が見られた。
(参考例1)
乾燥卵殻膜10gに5%(v/v)のエタノール90mlを加え、3時間浸漬した。得られた卵殻膜の生菌数を測定した。
(参考例2)
10%(v/v)のエタノールを用いた以外は参考例1と同様の操作を行った。
(参考例3)
20%(v/v)のエタノールを用いた以外は参考例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
Figure 0006054020
(評価)
添加するエタノールの濃度を高めるに伴い、卵殻膜粉末懸濁液の生菌数が減少した。
エタノールの添加のみを行った場合(例えば参考例1参照)に比べ、エタノールの添加に加えて粉砕処理を行った場合(例えば実施例6参照)は生菌数がより減少することが分かった。よって、エタノールの添加により湿式粉砕することにより、卵殻膜の殺菌を効率的に行えることがわかった。
以上述べたように、本発明の卵殻膜粉末はリジルオキシダーゼ活性を有するため、産業上有用である。

Claims (5)

  1. レーザー回折式粒度分布測定により測定した平均粒子径が300μm以下であり、基質としてベンジルアミンを用いた場合のベンズアルデヒドの生成速度が0.01nmol/mg・min以上であるリジルオキシダーゼ活性を有する卵殻膜粉末、ただし卵殻を含まない
  2. 平均粒子径が30μm以下である請求項1に記載の卵殻膜粉末。
  3. 卵殻膜粉末に含まれる生菌数が1.0×10cfu/g以下である請求項1または2に記載の卵殻膜粉末。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の卵殻膜粉末を含む医薬品、医薬部外品、食品又は化粧品。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の卵殻膜粉末の製造方法であって、
    生卵殻膜を60℃以下で乾燥する第一乾燥工程と、
    卵殻膜を60℃以下で粉砕する粉砕工程と、
    上記粉砕工程の前又は後にメタノール、エタノール、n−プロパノール若しくはイソプロパノール又はその水溶液を加える工程と、
    得られた卵殻膜粉末懸濁液を60℃以下で乾燥する第二乾燥工程を含む製造方法。
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