JP6048424B2 - 常圧水素添加反応を行う方法 - Google Patents

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本発明は、アルケニルエーテル化合物に対し、常圧条件下で、好ましくはイン・サイチュ(in situ)で水素添加反応を行う方法、及びこの方法によって得られるアルケニルエーテル化合物の含有量を低減した化合物に関する。
従来より末端アリル基を持つエーテル化合物(CH2=CHCH2OR)とSi−H基含有シロキサンとを白金触媒存在下でヒドロシリル化反応を行うと、末端二重結合の内部転位した副生成物である1−プロペニルエーテル体(CH3CH=CHOR)が原料のアリル基1つ辺りで10〜20%生成し、その前記1−プロペニルエーテル体は空気中の湿気や酸で分解したプロピオンアルデヒドとなり、最終製品等の悪臭の原因になることが知られている(特許文献1:特許第4632399号公報)。
前記の臭気問題を解決するために、オートクレーブによる水素ガスを用いた加圧下での水素添加反応により1−プロペニルエーテル体の内部のアルケニルエーテル基をプロピルエーテル(CH3CH2CH2OR)に還元し、化学的な分解を防ぎ、悪臭を発生させない方法(特許文献2:国際公開第02/055888号)、更に、分解したアルデヒドとアルコールが反応したアセタールが生成する場合があり、その前記アセタールは水素添加反応で反応しないので、徐々に湿気や酸で分解し、製品からの臭いを放ち続けるといった問題を水素添加反応時に固体酸を使用することでより悪臭物質の発生の除去を可能にした方法(特許文献3:特許第4681881号公報)、及び、低級アルコール(R'OH)で発生したプロピオンアルデヒドをアセタール化処理(CH3CH2CH(OR')2)することで悪臭成分を低沸点化合物化し、留去により除去する方法が開示されている(特許文献4:特許第4664062号公報)。
しかし、前記水素添加反応において、水素ガス加圧下で処理するにはオートクレーブを始めとする耐圧反応容器、及び、耐圧実験用の建屋又は専用の部屋が必要になり、操作的な煩わしさと設備投資が必要になっていた。一方、常圧でも水素添加反応が進行する反応系は以前から知られており、ニトロ基含有芳香族化合物を活性炭に担持されたパラジウム−トリエチルアミン(Et3N)−ギ酸を用いてアミノ基含有芳香族化合物へ還元する方法(非特許文献1)、ニトロ基含有アルコールを活性炭に担持されたパラジウム−ギ酸アンモニウムを用いることでアミノ基含有アルコールへ還元する方法(非特許文献2)、及びニトロ基含有芳香族化合物を第1級アミノ基に還元した後、系中でその前記第1級アミノ基とケトン化合物から得られたイミンを活性炭に担持されたパラジウム−ギ酸により第2級アミンへ誘導する還元的アミノ化反応(特許文献5:インド特許第168506号公報)が知られている。しかしながら、これまで、非置換又は置換ビニルエーテルに対し常圧即ち大気圧で水素添加反応を行う例は達成されていなかった。
特許第4632399号公報 国際公開第02/055888号 特許第4681881号公報 特許第4664062号公報 インド特許第168506号公報
N.A.Cortese,R.F.Heck,J.Org.Chem.42(22),1977,P3491−3494. J.Rudolph,F.Hnnig,H.Theis,R.Wischant.Org.Lett.3(20),2001,P3153−3155.
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、アルケニルエーテル化合物に対し常圧条件下で、好ましくはイン・サイチュで水素添加反応を行う方法、及びその方法によって得られる、アルケニルエーテル化合物の含有量を低減した化合物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法を見出した。即ち、上記課題を解決するためには、非置換又は置換アルケニルエーテルに金属触媒、第3級アルキルアミン化合物、及び、ギ酸又はギ酸塩を使用することにより常圧で水素添加反応を達成し得ることを知見したものである。
より詳細には、次の工程(i)、(ii)、即ち、
(i)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物又は該化合物を含む混合物を準備する工程、
(ii)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、
(A)金属触媒
(B)第3級アルキルアミン化合物、及び
(C)ギ酸又はギ酸塩
を添加し、常圧で水素添加反応を行う工程
を含む、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対して水素添加反応を行う方法が有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記のアルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法を提供する。
〔1〕
(i)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物又は該化合物を含む混合物を準備する工程、
(ii)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、
(A)金属触媒:金属の含有量として質量比で1ppm以上、
(B)第3級アルキルアミン化合物:0モル当量より多く、2モル当量未満、及び
(C)ギ酸又はギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
を添加し、常圧で水素添加反応を行う工程
を含み、
前記金属触媒が、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Ru/C、Pt−Pd/C、Pd/Al 2 3 、Pt/Al 2 3 、Pd/SiO 2 およびPt/SiO 2 から選ばれるものである非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対して水素添加反応を行う方法。
〔2〕
工程(i)において準備される非置換又は置換アルケニルエーテル化合物が、SiH基含有化合物とアルケニルエーテル化合物とのヒドロシリル化反応において残存したアルケニルエーテル化合物及び/又は該ヒドロシリル化反応の副生成物として生じたアルケニルエーテル化合物のオレフィン内部転位体であることを特徴とする〔1〕記載の水素添加反応を行う方法。
〔3〕
工程(ii)が、工程(i)に続いてイン・サイチュで行われることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の水素添加反応を行う方法。
〔4〕
(A)成分の金属触媒が、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Ru/C、Pt−Pd/CおよびPt/Al 2 3 から選ばれるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水素添加反応を行う方法。
〔5〕
アルケニルエーテル化合物に(D)成分として溶剤を加え、次に(B)成分の第3級アルキルアミン化合物を添加し、続いて(A)成分の金属触媒を加え、最後に(C)成分のギ酸又はギ酸塩を加えて水素添加反応を行うようにした1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水素添加反応を行う方法。
〔6〕
溶剤が極性有機溶剤又は水である〕の水素添加を行う方法。
本発明の非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法であれば、従来の加圧下で行っていた水素添加反応がより安全で取り扱いやすい常圧下で行えるようになり、耐圧容器や施設等の設備投資コストを下げることが可能になる。また、ヒドロシリル化反応後、後処理せずに水素添加反応を連続して行うことで、後処理時に空気に触れることで発生する可能性のあるオレフィン内部転位体の分解物であるアルデヒドやアセタールを発生させずに水素添加反応が行えるだけでなく、二つの反応の後処理を一つにすることで後処理工程の数を削減することも可能になる。
以下に、本発明の常圧水素添加反応を行う方法を詳細に説明する。
本発明の非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法は、下記工程(i)及び(ii)からなる。
(i)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物又は該化合物を含む混合物を準備する工程、
(ii)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、
(A)金属触媒:金属の含有量として質量比で1ppm以上、
(B)第3級アルキルアミン化合物:0モル当量より多く、2モル当量未満、及び
(C)ギ酸又はギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
を添加し、常圧で水素添加反応を行う工程。
工程(i)
本発明の常圧水素添加反応における工程(i)は、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物又は該化合物を含む混合物を準備する工程である。工程(i)において準備される非置換又は置換アルケニルエーテル化合物は、非置換又は置換のビニルエーテル化合物やアリルエーテル化合物、1−プロペニルエーテル化合物、又はそれらの混合物等が挙げられる。
本発明の常圧での水素添加反応に使用する非置換又は置換アルケニルエーテル化合物は、市販のものを使用してもよく、合成したものを使用してもよい。合成方法としては、一般的には、一置換又は非置換アセチレンに水銀塩やイリジウム錯体触媒の存在下で三重結合に対してアルコールの付加を行う方法である。他の例として石井らのJournal of the Chemical Society 2002,124(8),P1590−1591に記載のイリジウム錯体触媒であるクロロ(シクロオクタジエン)イリジウムダイマーを用いて種々のアルコールと酢酸ビニルを反応させると使用したアルコールに相当するビニルエーテル類が合成可能である。また、他の例として石井らの米国特許第2007/0149828号明細書に記載のとおり、アリロキシエーテル化合物にイリジウム錯体触媒であるビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート存在下、炭酸ナトリウムでの反応により、1−プロペニルエーテル類を合成することができる。他には、アリルエーテル基を持つ化合物にt−BuOKやウィルキンソン錯体の共存下で反応させることでアリル基の二重結合を内部に転位させ、置換ビニルエーテル化合物を合成する方法などが挙げられる。
前記非置換又は置換アルケニルエーテルの具体例としては、非置換アルケニルエーテルは、ブチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロビニルエーテル、トリス(トリメチルシリル)シリルビニルエーテル等が挙げられ、置換アルケニルエーテルは、2−(ヘプタフルオロプロポキシ)ヘキサフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロ(プロポキシエチレン)等が挙げられる。これらは東京化成工業株式会社、シグマアルドリッチジャパン合同会社などから入手できる。
本発明の常圧水素添加反応によれば、工程(i)において準備される非置換又は置換アルケニルエーテル化合物として、SiH基含有化合物とアルケニルエーテル化合物とのヒドロシリル化反応において残存したアルケニルエーテル化合物及び/又は該ヒドロシリル化反応の副生成物として生じたアルケニルエーテル化合物のオレフィン内部転位体を含んだ反応生成物の混合物であっても、そのまま後述する工程(ii)の水素添加反応を行うことが可能である。
例えば、アリルエーテル化合物(CH2=CHCH2OR)を反応性水素含有シロキサンであるR'3Si−Hでヒドロシリル化反応を行うと、主生成物としてケイ素付加体(R'3SiCH2CH2CH2OR)と10〜20%の副生成物である置換ビニルエーテルの1−プロペニルエーテル化合物(CH3CH=CHOR)の混合物が生成する(ここで、Rは炭化水素基を示し、R'は、炭化水素基またはシロキサン鎖を示す。)。本発明の常圧水素添加反応によれば、この混合物を単離せずに、そのまま、イン・サイチュで水素添加反応を行うことができる。イン・サイチュで反応を行う利点として、全ての反応操作を不活性ガス下で行うことができるため、ヒドロシリル化反応の後処理中で湿気や酸に触れることで発生する可能性のあるビニルエーテルの分解物であるアルデヒドを発生させずに、次の水素添加反応を行うことが可能になり、更に、ヒドロシリル化反応後の後処理を省くことで工程数を削減することができる。
ここで、イン・サイチュ(in situ)とはラテン語で有機合成化学分野では「系中で」という意味になり、反応容器から出さずにそのまま次の操作を行うことを意味している。
工程(ii)
工程(ii)は、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、
(A)金属触媒:金属の含有量として質量比で1ppm以上、
(B)第3級アルキルアミン化合物:0モル当量より多く、2モル当量未満、及び
(C)ギ酸又はギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
を添加し、常圧で水素添加反応を行う工程である。
(A)成分の金属触媒は、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、金属の含有量として質量比で1ppm以上を添加することが必要であり、3〜1,000ppmの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは3〜15ppmである。1ppm未満の添加量では水素添加反応の進行が遅くなるおそれがあり、1,000ppmを超える添加量ではコストの観点から不利である。
(A)成分の金属触媒は、反応終了後、ろ過などの操作で容易に取り除くことが可能な点、及び回収・再利用の観点から、担体に固定化された遷移金属触媒を使用することが好ましい。
固定化された遷移金属触媒は、市販品としてはN.E.ChemCat(株)、川研ファインケミカル(株)、Sigma−Aldrich Japan合同、和光純薬工業(株)、東京化成(株)及び、エボニック ジャパン(株)等から入手可能で、単独、混合又は複合触媒の形態で使用しても良い。固定化用の担体としては、含水又は乾燥された活性炭(/C)、アルミナ(/Al23)、及び、シリカ(/SiO2)が挙げられる。これらの担体は、反応系の不純物や着色を吸着し除去する効果を兼ねる。
ここで固定化用の担体は活性炭(/C)の「C」は炭素の元素記号Cではなく、活性炭のCharcoalの頭文字のCを意味している。
活性炭(/C)担持の遷移金属触媒としては、Ni/C、Pd/C、Pd(OH)2/C、Pt/C、Co/C、Rh/C、Ir/C、Ru/C、Cu/C、Ag/C、Au/C、Pt−Co/C、Pt−Pd/C等が挙げられる。
アルミナ(Al23)担持の遷移金属触媒としては、Ni/Al23、Pd/Al23、Pt/Al23、Co/Al23、Rh/Al23、Ir/Al23、Ru/Al23、Cu/Al23、Ag/Al23、Au/Al23等が挙げられる。
シリカ(SiO2)担持の遷移金属触媒としては、Ni/SiO2、Pd/SiO2、Pt/SiO2、Co/SiO2、Rh/SiO2、Ir/SiO2、Ru/SiO2、Cu/SiO2、Ag/SiO2、Au/SiO2等が挙げられる。
(A)成分としては、Pd/C、Pd(OH)2/C、Pt/C、Rh/C、Ir/C、Ru/C、Pt−Pd/C、Pd/Al23、Pt/Al23、Pd/SiO2、Pt/SiO2が好ましく、入手の容易さからより好ましいのは、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Pt−Pd/C、Pd/Al23、Pt/Al23であり、反応性の観点から最も好ましいものは、Pd/C、Pt/Al23である。
(B)成分は第3級アルキルアミン化合物であり、トリメチルアミン、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−へプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルイミダゾール(NMI)、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ−[2,2,2]オクタン(DABCO)等を挙げることができ、好ましくは、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)であり、より好ましくはトリエチルアミンである。
(B)成分の添加量は、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対して0モル当量より多く、2モル当量未満であり、好ましくは0.5〜1.5モル当量で、特に好ましくは1モル当量を使用する。0モル当量では反応が進行せず、0.5モル当量より少ない場合は反応が遅くなるおそれがあり、2モル当量より多い場合は触媒を被毒し反応が進行し難くなるおそれがある。
(C)成分はギ酸又はギ酸塩であり、本発明の水素添加反応において水素源となる。(C)成分としては、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ピリジニウム、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸セシウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸タリウム、ギ酸銅、ギ酸カドミウム、ギ酸鉛、ギ酸亜鉛、ギ酸ニッケル、ギ酸マンガン等が挙げられる。好ましいものはギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウムであり、最も好ましいのはギ酸である。これらのギ酸又はギ酸塩は、市販品として和光純薬工業(株)などから入手可能である。
(C)成分の添加量は、反応混合液のpHが酸性側にならない量で用いる。即ち、反応混合液がpH7以上、好ましくはpH7〜pH10、更に好ましくはpH7〜pH9になる量で用いる。過剰に加えた場合は反応系中が酸性になり、非置換又は置換アルケニルエーテルが酸で分解することによってアルデヒドが発生するおそれがある。(B)成分に対して等モル当量以下で添加することが好ましいが、水素添加反応中に(C)成分が分解・揮散などによって消費されるため、反応途中で反応溶液がpH7より酸性側にならない量の(B)成分を追加してもよい。
更に、任意の(D)成分として溶剤を添加してもよい。(D)成分を用いる場合の添加量に特に制限はないが、非置換又は置換アルケニルエーテル化合物の重量を超えない範囲で加えることが好ましい。(D)成分を添加しない場合でも、触媒自体にある程度活性があれば、消費した(C)成分を系中が酸性にならない量で添加し続けることで反応が完了することもあるが、工程が煩雑になり、時間がかかることがある。
(D)成分の溶剤は、極性有機溶剤又は水を用いることが好ましい。極性有機溶剤としては、炭素数1〜8個の直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和炭化水素化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、ケトン化合物、アルコール化合物、炭素数1〜8個の直鎖、分岐又は環状の飽和又は不飽和炭化水素化合物の炭素原子のうち1〜3個が酸素原子で置換されたエーテル化合物等が挙げられ、そのうち、炭素数1〜6の直鎖、分岐又は環状のニトリル化合物、アルコール化合物から選択されることがより好ましい。
このような溶剤としては、例えば、N,N'−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'−ジメチルホルムアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロオクタノン、メチルシクロペンチルケトン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジフェニルエーテル、ジメトキシメタン(DMM)、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(IPA)、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等が挙げられ、好ましいものはDMF、アセトン、THF、IPAである。
本発明において(D)成分の溶剤を加える場合、(A)〜(D)成分を加える順は、窒素やアルゴンガス等の不活性ガス下でアルケニルエーテル化合物に(D)成分の溶剤を加え、次に、(B)成分の第3級アルキルアミン化合物を添加し、続いて(A)成分の金属触媒を加え、最後に、(C)成分のギ酸又はギ酸塩を加える順であることが好ましい。(B)成分より先に(C)成分を加えると反応混合物が酸性になり、ビニルエーテル化合物が分解するおそれがある。また、大気雰囲気下で(A)成分を加えると発火の危険性がある。
本発明の非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法により得られた化合物は、1H−NMR分光法又は赤外分光法により算出される非置換又は置換アルケニルエーテル部位の水素添加反応後の残存率が0〜50%であることが好ましく、より好ましくは完全に反応が進行した0%である。
本発明の非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し常圧で水素添加反応を行う方法によれば、例えば、シリコーン変性化合物を合成するに当たり、ヒドロシリル化反応で発生する内部転位体の分解による臭気成分のアルデヒドやアルコール類の発生とその反応物であるアセタールの生成を防ぐことが可能になり、中間体や製品の高純度化をもたらすことが可能になる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の例により制限を受けるものではなく、適当に変更を加えて実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、本実施例において、反応の追跡は主に核磁気共鳴分光法(1H−NMR)及び赤外分光法(IR)を測定することで行った。
[実施例1〜14、比較例1〜7]
温度計、マグネチックスターラーバー、窒素導入管を装着した100mL三つ口フラスコに2−ヒドロ−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン(MDHM)4.00g(18.0mmol)とトルエン2.86g(30質量%)とBHT0.92mg(100ppm)をフラスコに入れ、東京化成株式会社製のグリセロール−α,α'−ジアリルエーテル(GDAE)1.72g(10.0mmol)を入れた滴下ロートを窒素雰囲気下でフラスコに装着し、内部温度を70℃まで撹拌しながら昇温した。そこに、カーステッド触媒(Karstedt,Pt2[[(CH2=CH)(CH32Si]2O]3)の0.5質量%トルエン溶液をマイクロシリンジにて5.22mg(3ppm)加え、そのままの温度で10分間撹拌した後、内部温度が75℃を超えないようにGDAEを継続的に滴下し、発熱が収まった後、1H−NMRスペクトルにおいて、アリル基のシグナルが消失したこととビニルエーテル体が25〜30%生成したことを確認した。
その後、反応温度を室温まで戻した反応溶液を反応容器から出さずに、場合によっては溶剤を加え、塩基、固定化遷移金属触媒を加えて撹拌後、発生する水素が系中から抜けてしまうことを避けるために窒素ガスの流入を止め、(株)スギヤマゲンギ製の圧力調整用バブラーを反応容器に装着し、ギ酸又はギ酸塩を滴下し、所定の温度で撹拌を行った。結果を表1に示した。表1における各成分の当量はGDAEに対して加えたモル当量である。
反応が進行した場合の後処理は、還元終了後、反応容器を室温に戻し、ろ過を行い、50℃、1KPa以下の減圧下で乾燥することで、[[(CH33SiO]2Si(CH3)(CH23OCH22CHOHと[(CH33SiO]2Si(CH3)(CH23OCH2CH(OH)CH2O(CH22CH3の組成物を得た。
常圧での水素添加反応の追跡は、反応混合物の1H−NMRスペクトルにおいて、6.25ppm付近の(E)−ビニルエーテル体と5.95ppm付近の(Z)−ビニルエーテル体のシグナルの消失、及び、0.90ppm付近のプロピロキシル基のメチル基に由来するシグナルの積分値増加と、IRスペクトルにおける3,044cm-1の不飽和由来の吸収と1,667cm-1のビニルエーテル基由来の吸収の消失によって確認を行った。
Figure 0006048424

※)反応中に反応液のpHが7以上を保つように滴下
反応性に関しては下記の様に評価した。
×:全く反応せず。
□:非常に遅い。36時間経過時点の1H−NMRによる解析でビニルエーテル残存率50%以上100%未満
△:遅い。36時間経過時点の1H−NMRによる解析でビニルエーテル残存率0%より多く、50%未満
数字:反応が完了し(1H−NMRによる解析でビニルエーテル残存率0%)、後処理後の組成物の収率(%)
実施例8、実施例12と実施例14で得た組成物は無色透明であった。
[実施例15]
実施例12において、GDAEをユニオックスMA300(日油株式会社製、片末端にアリル基、もう一方の末端にメチル基を有するオリゴエーテル)に替えた以外は、実施例12と同様の方法で行い、ビニルエーテル残存率0%、収率96%で無色透明の組成物を得た。
本発明により、これまで達成されていなかった、非置換又は置換ビニルエーテルに対し常圧でかつイン・サイチュ(in situ)での水素添加反応方法を提供する。これにより、水素添加反応において耐圧反応容器等の特殊な反応装置や設備を必要とせず、組成物の高純度化、臭気防止をより簡便に行うことができる。

Claims (6)

  1. (i)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物又は該化合物を含む混合物を準備する工程、
    (ii)非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対し、
    (A)金属触媒:金属の含有量として質量比で1ppm以上、
    (B)第3級アルキルアミン化合物:0モル当量より多く、2モル当量未満、及び
    (C)ギ酸又はギ酸塩:反応混合液がpH7以上となる量
    を添加し、常圧で水素添加反応を行う工程
    を含み、
    前記金属触媒が、固定化された遷移金属触媒であり、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Ru/C、Pt−Pd/C、Pd/Al 2 3 、Pt/Al 2 3 、Pd/SiO 2 およびPt/SiO 2 から選ばれるものである非置換又は置換アルケニルエーテル化合物に対して水素添加反応を行う方法。
  2. 工程(i)において準備される非置換又は置換アルケニルエーテル化合物が、SiH基含有化合物とアルケニルエーテル化合物とのヒドロシリル化反応において残存したアルケニルエーテル化合物及び/又は該ヒドロシリル化反応の副生成物として生じたアルケニルエーテル化合物のオレフィン内部転位体であることを特徴とする請求項1記載の水素添加反応を行う方法。
  3. 工程(ii)が、工程(i)に続いてイン・サイチュで行われることを特徴とする請求項1又は2記載の水素添加反応を行う方法。
  4. (A)成分の金属触媒が、Pd/C、Pt/C、Rh/C、Ru/C、Pt−Pd/CおよびPt/Al 2 3 から選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の水素添加反応を行う方法。
  5. アルケニルエーテル化合物に(D)成分として溶剤を加え、次に(B)成分の第3級アルキルアミン化合物を添加し、続いて(A)成分の金属触媒を加え、最後に(C)成分のギ酸又はギ酸塩を加えて水素添加反応を行うようにした請求項1〜のいずれか1項記載の水素添加反応を行う方法。
  6. 溶剤が極性有機溶剤又は水である請求項記載の水素添加を行う方法。
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