以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを図1から図6に基づいて説明する。
図1及び図2の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、電気的な雄雌間の接続部(つまり端子極数)を少なくとも2つ備えた電線対電線接続用のものである。このコネクタ1は、雌コネクタ2と雄コネクタ3とを備える。このコネクタ1においては、その雌コネクタ2と雄コネクタ3とを接合(以下、「コネクタ接合」という。)することによって、その相互間に電気的な雄雌間の接続部が形成される。
雌コネクタ2は、複数の雌端子10と、この雌端子10を内部に収容する雌ハウジング20と、を有する。この雌コネクタ2においては、その雌端子10に電線30が連結される。尚、図2は、コネクタ1を後述する雌端子収容室21の雌端子挿入口21b側から見た図であるが、図示の便宜上、電線30を省略している。一方、雄コネクタ3は、複数の雄端子40と、この雄端子40を内部に収容する雄ハウジング50と、を有する。この雄コネクタ3においては、その雄端子40に電線(図示略)が連結される。
最初に、雌コネクタ2について説明する。
雌端子10は、導電性の金属の板材を所定の雌型形状に成形した端子金具である。この雌端子10は、雄端子40が挿入される箱体11を有する。その箱体11は、少なくとも一端を開口させた角筒状に成形し、その開口を雄端子40の挿入口として利用する。この箱体11においては、その挿入口から自らの内部空間に雄端子40が挿入され、この雄端子40との電気的な接続が形成される。その箱体11と雄端子40との間の電気的な接続構造には、この技術分野における周知のものを利用すればよい。例えば、雌端子10においては、その箱体11内でのバネ力を利用して雄端子40との電気的な接続状態を保持する。電線30は、その箱体11から見て、雄端子40の挿入口とは反対側に配置し、雌端子10との電気的な接続が確保されるよう当該雌端子10に圧着する。
雌ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性の高分子材料で成形される。この雌ハウジング20においては、コネクタ接合方向における両端を開口させた空間であり、図2及び図3に示すように、雌端子10を個別に収容する部屋(以下、「雌端子収容室」という。)21が複数形成されている。その雌端子収容室21においては、一端の開口がコネクタ接合時の雄端子40の挿入口(以下、「雄端子挿入口」という。)21aとなる。その一端とは、雌コネクタ2から見たコネクタ接合時の接合方向における雌端子収容室21の端部のことである。この雌ハウジング20では、各雌端子収容室21の延在方向(軸線方向)をコネクタ接合方向と一致させることによって、それぞれの雄端子挿入口21aを同一方向に向けて開口させる。この雌ハウジング20では、それぞれの雄端子挿入口21aを略面一となるように配置する。
ここで、この雌端子収容室21は、雌端子10の箱体11の形状に合わせて直方体状又は立方体状に形成されている。そして、雄端子挿入口21aは、その雌端子収容室21の断面形状{軸線方向(コネクタ接合方向)に対して直交している断面の形状}における各辺と平行な4つの辺を有する矩形又は方形に形成されている。
雌端子10は、箱体11における雄端子40の挿入口を先頭にして、雌端子収容室21の他端の開口(雌端子挿入口21b)から当該雌端子収容室21内の所定位置まで挿入する。その所定位置とは、箱体11における雄端子40の挿入口を雌端子収容室21の雌端子挿入口21aまで近づけた位置のことである。挿入された雌端子10は、その所定位置での保持状態が係止機構(図示略)によって維持される。その係止機構とは、例えば、雌端子収容室21の内壁面に設けた弾性変形可能な突起部(ランス)と、箱体11に設け、その突起部が所定位置で挿入される貫通孔(ランスホール)と、によって構成される。雄端子40は、コネクタ接合時に、雌端子収容室21の雌端子挿入口21aを介して箱体11の挿入口に挿入され、その後、箱体11の内部空間へと挿入される。
次に、雄コネクタ3について説明する。
雄コネクタ3の雄端子40は、導電性の金属材料を成形した端子金具であり、その先端部分(いわゆるタブ)が所定の棒状又は板状に成形されている。この例示では、図2及び図4に示すように、先端部分を板状に成形している。この雄端子40は、その先端部分が雄ハウジング50に圧入される。その先端部分は、コネクタ接合に伴い雌端子10の箱体11内に挿入される。
その雄ハウジング50は、合成樹脂等の絶縁性の高分子材料で成形される。この雄ハウジング50には、コネクタ接合後に雌ハウジング20の少なくとも一部分を収容する雌側収容室51が形成されている。この例示では、雌ハウジング20内のそれぞれの箱体11が収まるように雌側収容室51を形成する。雌側収容室51は、その収容される雌ハウジング20の一部分の外形に対応させた空間形状を有する。雄端子40の先端部分は、この雌側収容室51内で同一方向に突出させ、コネクタ接合後に雌端子10と個々に当接させる。尚、その先端部分の突出方向は、コネクタ接合方向と一致している。
ところで、このコネクタ1の雌ハウジング20において、各雌端子収容室21の内の少なくとも1つは、コネクタ接合方向に沿う互いに直交する第1及び第2の仮想基準面P1,P2(図3)と他の雌端子収容室21の雄端子挿入口21aとに対して傾斜させた雄端子挿入口21aを備える。その雄端子挿入口21aは、第1及び第2の仮想基準面P1,P2の双方と直交する平面上で傾ける。その傾斜させた雄端子挿入口21aを有する雌端子収容室21についても、その断面形状(コネクタ接合方向に対して直交している断面の形状)は、この傾斜させた雄端子挿入口21aにおける各辺と平行な4つの辺を有している。そして、この傾斜している雌端子収容室21に収容される雌端子10は、この雌端子収容室21及び雄端子挿入口21aの傾斜角θ1,θ2に合わせて傾けた状態で収容する。一方、その傾斜させた雄端子挿入口21aに挿入される雄端子40の先端部分は、その傾斜角θ1,θ2に合わせて傾けた状態で雌側収容室51内に配置する。つまり、各雄端子40の先端部分の内の少なくとも1つは、第1及び第2の仮想基準面P1,P2と他の雄端子40の先端部分とに対して傾斜させている。尚、その傾斜角θ1,θ2とは、第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対する角度のことである。この例示では、第1仮想基準面P1に対する傾斜角θ1,θ2を図示している。
本実施形態のコネクタ1においては、雌ハウジング20と雄ハウジング50を次のような形状に成形することによって、コネクタ接合時の雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑制する。
先ず、雌ハウジング20について説明する。
雌ハウジング20には、図3に示すように、外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側に、第1仮想基準面P1に対して平行な雌側第1平面22と、この雌側第1平面22とは逆向きの平面であり、その雌側第1平面22を含む雌側第1仮想平面Pvf1に対して間隔を空けて平行に配置した雌側第2平面23と、第2仮想基準面P2に対して平行な雌側第3平面24と、この雌側第3平面24とは逆向きの平面であり、その雌側第3平面24を含む雌側第2仮想平面Pvf2に対して間隔を空けて平行に配置した雌側第4平面25と、を設ける。つまり、この雌ハウジング20の外周面(当該外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側)には、第1仮想基準面P1を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雌側第1平面22及び雌側第2平面23と、第2仮想基準面P2を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雌側第3平面24及び雌側第4平面25と、を設ける。尚、この例示では、雌側第3平面24を第2仮想基準面P2上に配置している。このため、雌側第2仮想平面Pvf2は、第2仮想基準面P2と同じ平面を表している。
このように、この雌ハウジング20は、雌側第1仮想平面Pvf1と雌側第2平面23を含む図5に示す雌側第3仮想平面Pvf3との間の最短距離(以下、「雌側第1距離」という。)及び雌側第2仮想平面Pvf2と雌側第4平面25を含む図5に示す雌側第4仮想平面Pvf4との間の最短距離(以下、「雌側第2距離」という。)について、それぞれに、積み上げられる設計公差の数を少量に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(つまり設計寸法に対する最大ばらつき)を小量に抑えることができる。即ち、この雌ハウジング20においては、外周面上における雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25のそれぞれの位置について、積み上げられる設計公差の数を少量に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(設計寸法に対する最大ばらつき)を小量に抑えることができる。
次に、雄ハウジング50について説明する。例えば、この雄ハウジング50では、第1及び第2の仮想基準面P1,P2を雌ハウジング20と略同等の位置に設定する。
雌側収容室51の内周面には、図4に示すように、第1仮想基準面P1に対して平行な雄側第1平面52と、この雄側第1平面52とは逆向きの平面であり、その雄側第1平面52を含む雄側第1仮想平面Pvm1に対して間隔を空けて平行に配置した雄側第2平面53と、第2仮想基準面P2に対して平行な雄側第3平面54と、この雄側第3平面54とは逆向きの平面であり、その雄側第3平面54を含む雄側第2仮想平面Pvm2に対して間隔を空けて平行に配置した雄側第4平面55と、を設ける。つまり、この雌側収容室51の内周面には、第1仮想基準面P1を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雄側第1平面52及び雄側第2平面53と、第2仮想基準面P2を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雄側第3平面54及び雄側第4平面55と、を設ける。尚、この例示では、雄側第3平面54を第2仮想基準面P2上に配置している。このため、雄側第2仮想平面Pvm2は、第2仮想基準面P2と同じ平面を表している。
この雄ハウジング50は、雄側第1仮想平面Pvm1と雄側第2平面53を含む図6に示す雄側第3仮想平面Pvm3との間の最短距離(以下、「雄側第1距離」という。)及び雄側第2仮想平面Pvm2と雄側第4平面55を含む図6に示す雄側第4仮想平面Pvm4との間の最短距離(以下、「雄側第2距離」という。)について、それぞれに、積み上げられる設計公差の数を少量に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(設計寸法に対する最大ばらつき)を小量に抑えることができる。即ち、この雄ハウジング50においては、雌側収容室51の内周面上における雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55のそれぞれの位置について、積み上げられる設計公差の数を少量に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(設計寸法に対する最大ばらつき)を小量に抑えることができる。
この雄ハウジング50は、例えば、雌側収容室51の内周面から所定の肉厚を設けた位置を外周面とする。
ところで、この雄ハウジング50においては、雄側第1平面52と雄側第2平面53の内の何れか一方を第1仮想基準面P1に設定してもよく、雄側第3平面54と雄側第4平面55の内の何れか一方を第2仮想基準面P2に設定してもよい。このような設定の場合には、雄側第1距離や雄側第2距離について、積み上げられる設計公差の数を最小限に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(設計寸法に対する最大ばらつき)をより小さくすることができる。このため、この場合には、雌側収容室51の内周面上における雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55のそれぞれの位置について、積み上げられる設計公差の数を最小限に抑えることができ、設計寸法に対する設計公差の範囲内でのずれ量(設計寸法に対する最大ばらつき)をより小さくすることができる。
このコネクタ1においては、雌側第1平面22と雄側第1平面52とを互いに対向させ、雌側第2平面23と雄側第2平面53とを互いに対向させ、雌側第3平面24と雄側第3平面54とを互いに対向させ、雌側第4平面25と雄側第4平面55とを互いに対向させる。
更に、このコネクタ1においては、雌側第1平面22と雄側第1平面52との間の隙間、雌側第2平面23と雄側第2平面53との間の隙間、雌側第3平面24と雄側第3平面54との間の隙間、及び、雌側第4平面25と雄側第4平面55との間の隙間を、その雌側第1平面22等における設計公差による最大ばらつきを考慮して、それぞれにコネクタ接合し得る範囲内で小さくする。つまり、このコネクタ1においては、これらの隙間がそのような大きさとなるように、雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25と雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55とを配置する。
雌ハウジング20においては、雌側第1平面22と雌側第2平面23とが互いに逆向きの壁面になっており、かつ、雌側第3平面24と雌側第4平面25とが互いに逆向きの壁面になっている。また、雄ハウジング50においては、雄側第1平面52と雄側第2平面53とが互いに逆向きの壁面になっており、かつ、雄側第3平面54と雄側第4平面55とが互いに逆向きの壁面になっている。このため、このコネクタ1においては、雌側第1平面22と雌側第2平面23と雄側第1平面52と雄側第2平面53とによって、第1方向(第1仮想基準面P1に対する直交方向)に対する雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれ量を小量に抑えることができる。更に、このコネクタ1においては、雌側第3平面24と雌側第4平面25と雄側第3平面54と雄側第4平面55とによって、第2方向(第2仮想基準面P2に対する直交方向)に対する雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれ量を小量に抑えることができる。従って、このコネクタ1は、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑えることができる。
そのような雌側第1平面22等の壁面が設けられていないと仮定した場合、このコネクタ1は、例えば、雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれによって、コネクタ接合時に雌ハウジング20が雄端子40に対して無用な力を加えてしまったり、雌ハウジング20と雄ハウジング50とが正しい位置で接合されずに雌端子10と雄端子40との間で接触不良を引き起こしたりする可能性がある。しかしながら、本実施形態のコネクタ1は、雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれ量が小さいので、そのような不都合の発生を抑制することができる。
ここで、雌ハウジング20には、その外周面に、コネクタ接合方向に対して平行で且つ第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対して傾斜させた傾斜面26を設けている。その傾斜面26とは、例えば、雌端子収容室21の傾斜角θ1,θ2に応じて設定されたものである。例えば、この傾斜面26は、雌端子収容室21を成す壁部の外壁面である。このため、この傾斜面26は、その傾斜角θ1,θ2と同等の傾斜角又は当該傾斜角θ1,θ2に対して90度回転させた傾斜角を有する。また、雄ハウジング50には、雌側収容室51の内周面に、コネクタ接合方向に対して平行で且つ第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対して傾斜させた傾斜面56を設けている。その傾斜面56とは、例えば、雄端子40の傾斜角θ1,θ2に応じて設定されたものである。例えば、この傾斜面56は、雌ハウジング20の傾斜面26に対向させた位置に配置する。このため、この傾斜面56は、その傾斜角θ1,θ2と同等の傾斜角又は当該傾斜角θ1,θ2に対して90度回転させた傾斜角を有する。本実施形態のコネクタ1は、このような傾斜面26,56が設けられていたとしても、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれ量を小さくすることができる。よって、このコネクタ1は、上記の如き不都合の発生を抑制することができる。
ところで、雌側第1平面22等のそれぞれの配置や面積などにも依るが、雌ハウジング20と雄ハウジング50との間においては、雌側第1距離(雄側第1距離)と雌側第2距離(雄側第2距離)が短い場合、雌側第1距離(雄側第1距離)と雌側第2距離(雄側第2距離)が長い場合と比較して、ずれの抑制効果が低くなってしまうことがある。このため、このコネクタ1においては、その雌側第1距離(雄側第1距離)と雌側第2距離(雄側第2距離)が長くなるように構成することが望ましい。
例えば、雌ハウジング20においては、図5に示すように、各雌端子収容室21(各雄端子挿入口21a)が矩形領域S1内に含まれるように、雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25とを配置する。その矩形領域S1とは、雌側第1仮想平面Pvf1と雌側第2仮想平面Pvf2と雌側第3仮想平面Pvf3と雌側第4仮想平面Pvf4とによって囲まれた矩形の領域のことである。更に、雄ハウジング50においては、図6に示すように、各雄端子40が矩形領域S2内に含まれるように、雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55とを配置する。その矩形領域S2とは、雄側第1仮想平面Pvm1と雄側第2仮想平面Pvm2と雄側第3仮想平面Pvm3と雄側第4仮想平面Pvm4とによって囲まれた矩形の領域のことである。これにより、このコネクタ1においては、雌側第1距離と雄側第1距離と雌側第2距離と雄側第2距離とを長めに設定することができるので、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれをより抑えることができる。
このような矩形領域S1を仮想する場合、雌側第1平面22と雌側第2平面23は、雌ハウジング20の外周面(当該外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側)における第1仮想基準面P1に対して平行な平面の内、互いに最も外側に配置することが望ましい。これと同様に、雌側第3平面24と雌側第4平面25は、雌ハウジング20の外周面(当該外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側)における第2仮想基準面P2に対して平行な平面の内、互いに最も外側に配置することが望ましい。更に、矩形領域S2を仮想する場合、雄側第1平面52と雄側第2平面53は、雌側収容室51の内周面における第1仮想基準面P1に対して平行な平面の内、互いに最も外側に配置することが望ましい。これと同様に、雄側第3平面54及び雄側第4平面55は、雌側収容室51の内周面における第2仮想基準面P2に対して平行な平面の内、互いに最も外側に配置することが望ましい。これにより、このコネクタ1においては、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれの更なる抑制が可能になる。
ここで、雌ハウジング20の傾斜面26は、前述したように対向する2つの辺の位置を第1及び第2の仮想基準面P1,P2からそれぞれに規定しなければならず、雌側第1平面22等と比べて、積み上げられる設計公差の数が多くなるので、設計寸法に対するずれ量が大きくなる。雄ハウジング50の傾斜面56についても同様である。そこで、雌ハウジング20においては、傾斜面26を矩形領域S1内に配置して、雌ハウジング20自体の体格の大型化を抑えることが望ましい。また、雄ハウジング50においては、傾斜面56を矩形領域S2内に配置し、その雌側収容室51の内周面に基づき外周面を設定することによって、雄ハウジング50自体の体格の大型化を抑えることが望ましい。このように構成することで、コネクタ1は、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑制できるだけでなく、体格の大型化を抑えることもできる。
その傾斜面26の配置を採用する際、雌ハウジング20においては、例えば、雌側第1仮想平面Pvf1と雌端子収容室21との間の肉厚、雌側第2仮想平面Pvf2と雌端子収容室21との間の肉厚、雌側第3仮想平面Pvf3と雌端子収容室21との間の肉厚、及び、雌側第4仮想平面Pvf4と雌端子収容室21との間の肉厚を、雌ハウジング20の要求強度を確保し得る範囲内で薄くしてもよい。これにより、雌ハウジング20は、体格の大型化をより抑制することができる。また、その傾斜面56の配置を採用する際、雄ハウジング50においては、例えば、雄側第1仮想平面Pvm1と雄ハウジング50の外周面との間の肉厚、雄側第2仮想平面Pvm2と雄ハウジング50の外周面との間の肉厚、雄側第3仮想平面Pvm3と雄ハウジング50の外周面との間の肉厚、及び、雄側第4仮想平面Pvm4と雄ハウジング50の外周面との間の肉厚を、雄ハウジング50の要求強度を確保し得る範囲内で薄くしてもよい。これにより、雄ハウジング50は、体格の大型化をより抑制することができる。従って、このコネクタ1においては、コネクタ接合時の接合作業性を犠牲にすることなく、体格の大型化をより抑えつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれをより抑えることができる。
このコネクタ1においては、雌ハウジング20の外周面の形状に合わせて雄ハウジング50における雌側収容室51の内周面の形状を決める場合と、雌側収容室51の内周面の形状に合わせて雌ハウジング20の外周面の形状を決める場合と、がある。
前者の場合、雌側収容室51の内周面の形状は、雌ハウジング20の外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側の形状に基づいて設定する。この場合、雌側収容室51の内周面には、雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25と傾斜面26とに対してコネクタ接合後に各々対向する雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55と傾斜面56とを設ける。つまり、この雌側収容室51の内周面には、その形状の基になった雌ハウジング20の外周面と同じように、第1仮想基準面P1を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雄側第1平面52及び雄側第2平面53と、第2仮想基準面P2を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雄側第3平面54及び雄側第4平面55と、を設けることになる。
この場合、コネクタ1においては、雄側第1距離を雌側第1距離に対してコネクタ接合し得る範囲内で小さくし、かつ、雄側第2距離を雌側第2距離に対してコネクタ接合し得る範囲内で小さくすることによって、雌側第1平面22と雄側第1平面52との間の隙間、雌側第2平面23と雄側第2平面53との間の隙間、雌側第3平面24と雄側第3平面54との間の隙間、及び、雌側第4平面25と雄側第4平面55との間の隙間を縮める。
後者(雌側収容室51の内周面の形状に合わせて雌ハウジング20の外周面の形状を決める場合)の場合、雌ハウジング20には、外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側に、雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55と傾斜面56とに対してコネクタ接合後に各々対向する雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25と傾斜面26とを設ける。つまり、この雌ハウジング20の外周面(当該外周面における少なくとも雄端子挿入口21a側)には、その形状の基になった雌側収容室51の内周面と同じように、第1仮想基準面P1を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雌側第1平面22及び雌側第2平面23と、第2仮想基準面P2を基点にして1つの設計寸法と設計公差の組み合わせで規定することのできる雌側第3平面24及び雌側第4平面25と、を設けることになる。
この場合、コネクタ1においては、雌側第1距離を雄側第1距離に対してコネクタ接合し得る範囲内で大きくし、かつ、雌側第2距離を雄側第2距離に対してコネクタ接合し得る範囲内で大きくすることによって、雌側第1平面22と雄側第1平面52との間の隙間、雌側第2平面23と雄側第2平面53との間の隙間、雌側第3平面24と雄側第3平面54との間の隙間、及び、雌側第4平面25と雄側第4平面55との間の隙間を縮める。
以上示したように、このコネクタ1は、雌ハウジング20の外周面や雄ハウジング50の雌側収容室51の内周面に傾斜面26,56が設けられていたとしても、コネクタ接合時の接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑制することができる。
具体的に、ここでは、端子極数(電気的な接続部)を2つ備えたコネクタ1について例示する。この例示の雌コネクタ2は、2つの雌端子10(第1及び第2の雌端子10A,10B)を備えており、そのそれぞれに対して個別に電線30(30A,30B)が電気的に接続されている。このため、この雌コネクタ2の雌ハウジング20は、2つの雌端子収容室21(第1及び第2の雌端子収容室21A,21B)を有する。また、この例示の雄コネクタ3は、2つの雄端子40(第1及び第2の雄端子40A,40B)を備えており、そのそれぞれに対して個別に電線が電気的に接続されている。コネクタ接合後のコネクタ1においては、第1雌端子10Aと第1雄端子40Aとが電気的に接続され、第2雌端子10Bと第2雄端子40Bとが電気的に接続される。よって、このコネクタ1においては、第1雌端子10Aと第1雄端子40Aとの間の電気的な接続部(以下、「第1接続部」ともいう。)と、第2雌端子10Bと第2雄端子40Bとの間の電気的な接続部(以下、「第2接続部」ともいう。)と、が形成される。
雌ハウジング20の外周面には、コネクタ接合方向に沿った雄端子挿入口21aと雌端子挿入口21bとの間の全面に渡って、2つの雌側第1平面22A,22B(22)と、2つの雌側第2平面23A,23B(23)と、2つの雌側第3平面24A,24B(24)と、1つの雌側第4平面25と、を設けている。雌側第1平面22Aと雌側第2平面23Aは、第1仮想基準面P1を中心にして互いに対向している。雌側第1平面22Bと雌側第2平面23Bは、第1仮想基準面P1を中心にして互いに対向している。
雄ハウジング50の雌側収容室51の内周面には、2つの雄側第1平面52A,52B(52)と、2つの雄側第2平面53A,53B(53)と、2つの雄側第3平面54A,54B(54)と、1つの雄側第4平面55と、を設けている。雄側第1平面52Aと雄側第2平面53Aは、第1仮想基準面P1を中心にして互いに対向している。雄側第1平面52Bと雄側第2平面53Bは、第1仮想基準面P1を中心にして互いに対向している。
このコネクタ1においては、雌側第1平面22A,22Bと雄側第1平面52A,52Bとをそれぞれに対向させ、雌側第2平面23A,23Bと雄側第2平面53A,53Bとをそれぞれに対向させている。更に、このコネクタ1においては、雌側第3平面24A,24Bと雄側第3平面54A,54Bとをそれぞれに対向させ、雌側第4平面25と雄側第4平面55とをそれぞれに対向させている。このコネクタ1においては、これらの各平面の位置のばらつきを小さく抑えることができるので、コネクタ接合時の接合作業性を確保しながらも、これらの対向している平面間の隙間を小さくすることができる。このため、このコネクタ1は、その接合作業性を確保しつつ、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを小量に抑えることができる。
更に、この雌ハウジング20の外周面には、コネクタ接合方向に沿った雄端子挿入口21aと雌端子挿入口21bとの間の全面に渡って、矩形領域S1の内側に複数の傾斜面26A,26B,26C,26D,26E,26F(26)を設けている。また、この雌側収容室51の内周面には、矩形領域S2の内側に複数の傾斜面56A,56B,56C,56D,56E,56F(56)も設けている。このコネクタ1においては、その傾斜面26A,26B,26C,26D,26E,26Fと傾斜面56A,56B,56C,56D,56E,56Fとがそれぞれに対向している。このコネクタ1においては、複数の傾斜面26A,26B,26C,26D,26E,26Fを矩形領域S1の内側に設けると共に、複数の傾斜面56A,56B,56C,56D,56E,56Fを矩形領域S2の内側に設けている。このため、このコネクタ1は、コネクタ接合時の接合作業性を確保し、かつ、体格の大型化を抑えつつも、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑えることができる。
雌ハウジング20の外周面には、それらとは別に、コネクタ接合方向に沿った雄端子挿入口21aと雌端子挿入口21bとの間の全面に渡って、第2仮想基準面P2に対して平行な複数の平面27A,27B,27Cも設けられている。これらの平面27A,27B,27Cは、矩形領域S1の内側に配置されたものである。更に、雌側収容室51の内周面には、それらとは別に、第2仮想基準面P2に対して平行な複数の平面57A,57B,57Cも設けられている。これらの平面57A,57B,57Cは、矩形領域S2の内側に配置されたものである。平面27A,27B,27Cは、それぞれに平面57A,57B,57Cと対向している。
ここで、雌ハウジング20の平面27Aは、雌側第4平面25と対にすることで、雌側第3平面24A,24Bと同等のものとして扱うことができる。つまり、この平面27Aは、雌側第3平面24A,24Bと同等の設定が可能になる。また、雌ハウジング20の平面27B,27Cは、雌側第3平面24A,24Bと対にすることで、雌側第4平面25と同等のものとして扱うことができる。つまり、この平面27B,27Cは、雌側第4平面25と同等の設定が可能になる。更に、雄ハウジング50の平面57Aは、雄側第4平面55と対にすることで、雄側第3平面54A,54Bと同等のものとして扱うことができる。つまり、この平面57Aは、雄側第3平面54A,54Bと同等の設定が可能になる。また、雄ハウジング50の平面57B,57Cは、雄側第3平面54A,54Bと対にすることで、雄側第4平面55と同等のものとして扱うことができる。つまり、この平面57B,57Cは、雄側第4平面55と同等の設定が可能になる。このため、その平面27A,27B,27Cと平面57A,57B,57Cは、コネクタ接合時における雌ハウジング20と雄ハウジング50との間のずれを抑制するために利用することができる。但し、この平面27A,27B,27Cと平面57A,57B,57Cは、矩形領域S1,S2の設定に利用するものではない。
雌側第1平面22Aと雌側第3平面24Aは、それぞれに、第1仮想基準面P1との直交方向へと延出させた直方体状の延出部28Aを成す2つの平面によって構成する(図3)。その延出部28Aの別の平面としては、上記の平面27Bが存在している。雌側第3平面24Aと平面27Bは、第2仮想基準面P2との直交方向で対向している。また、雌側第2平面23Aと雌側第3平面24Bは、それぞれに、第1仮想基準面P1との直交方向へと延出させた直方体状の延出部28Bを成す2つの平面によって構成する。その延出部28Bの別の平面としては、上記の平面27Cが存在している。雌側第3平面24Bと平面27Cは、第2仮想基準面P2との直交方向で対向している。
この雌ハウジング20においては、矩形領域S1を成す雌側第1平面22A,22Bと雌側第2平面23A,23Bと雌側第3平面24A,24Bと雌側第4平面25とによって、その外周面の最外形のばらつきを小量に抑え、体格の大型化を抑えることができる。また、この雄ハウジング50においては、矩形領域S2を成す雄側第1平面52A,52Bと雄側第2平面53A,53Bと雄側第3平面54A,54Bと雄側第4平面55とによって、雌側収容室51の内周面の形状のばらつきを小量に抑えることができる。このため、この雄ハウジング50は、その体格の大型化を抑えることができる。
ところで、このコネクタ1においては、雌ハウジング20の外周面に2つの突出部29A,29Bを設けると共に、雌側収容室51の内周面に各突出部29A,29Bを覆う溝部59A,59Bを設ける。その突出部29A,29Bと溝部59A,59Bは、雌ハウジング20と雄ハウジング50との間における着脱時(コネクタ着脱時)のこじりを防ぐためのものである。このため、突出部29A,29Bは、コネクタ接合方向に沿った雄端子挿入口21aと雌端子挿入口21bとの間の全面に渡って延在させている。そして、溝部59A,59Bは、そのコネクタ着脱時に突出部29A,29Bを案内するガイド部としての機能も有しており、コネクタ接合方向に延在させている。更に、その突出部29A,29Bの壁面と当該壁面に対向する溝部59A,59Bの壁面との間の隙間は、コネクタ接合し得る範囲内で小さくする。これにより、このコネクタ1においては、コネクタ着脱時のこじりを防ぐことができる。また、このコネクタ1においては、雌側第1平面22A,22B等と相俟って、コネクタ着脱時のこじりの防止効果を高めることができる。
ここで、この突出部29A,29Bと溝部59A,59Bは、それぞれに、第1仮想基準面P1に対して平行な平面と第2仮想基準面P2に対して平行な平面とを有するものであってもよい。この場合には、突出部29A,29Bにおけるその平面が矩形領域S1の境界を成し、かつ、溝部59A,59Bにおけるその平面が矩形領域S2の境界を成す。このため、この場合には、このままでコネクタ1の体格の大型化が抑えられる。
しかしながら、この例示のコネクタ1においては、突出部29A,29Bと溝部59A,59Bが第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対する傾斜面を有しているので、突出部29A,29Bが矩形領域S1から突出し、かつ、溝部59A,59Bが矩形領域S2から突出している。このため、その矩形領域S1,S2からの突出量を多くした場合には、コネクタ1の体格の大型化を招く虞がある。そこで、その突出部29A,29Bは、その一部分を矩形領域S1から突出させることによって(この例示では雌側第4平面25の近くで一部分を矩形領域S1から突出させることによって)、矩形領域S1からの突出量を抑える。また、溝部59A,59Bは、その一部分を矩形領域S2から突出させることによって(この例示では雄側第4平面55の近くで一部分を矩形領域S2から突出させることによって)、矩形領域S2からの突出量を抑える。このようにして、このコネクタ1においては、こじり防止機能を確保しつつ、体格の大型化を抑制することができる。
ここで、この例示のコネクタ1では、2箇所にこじり防止構造を設けている(突出部29A及び溝部59Aの組み合わせによるものと突出部29B及び溝部59Bの組み合わせによるもの)。しかしながら、そのこじり防止構造は、その機能を確保できるのであれば、少なくとも1箇所以上配置しておけばよい。
以上示したように、このコネクタ1の具体例においては、全ての雌端子収容室21及びその雄端子挿入口21aを第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対して傾斜させている。しかしながら、このコネクタ1は、例えば、或る雌端子収容室21における直交する2つの壁面に対して第1及び第2の仮想基準面P1,P2を各々平行に設定し、残りの雌端子収容室21を第1及び第2の仮想基準面P1,P2に対して傾斜させてもよい。この場合でも、雌ハウジング20には、上述した配置の雌側第1平面22と雌側第2平面23と雌側第3平面24と雌側第4平面25を設け、雄ハウジング50には、上述した配置の雄側第1平面52と雄側第2平面53と雄側第3平面54と雄側第4平面55を設ける。これにより、このようなコネクタ1であっても、上記の例示と同様の効果を得ることができる。