ところで、立体駐車場を退出したか否かを判定するために用いられる車両の相対高度は、通常、車両に搭載された加速度センサ(車両の走行加速度及び重力加速度を検出可能)や車輪速センサ等からの検出信号を演算処理することによって得られる。前記加速度センサや車輪速センサの検出信号には検出誤差を含んでおり、車両が立体駐車場を走行する間に前記相対高度の変化量の誤差が累積されてしまい、車両が立体駐車場を実際に退出する際の相対高度と車両が立体駐車場に進入した際の相対高度との差が、所定高度範囲に収まらない可能性がある。このため、前述した従来の装置では、車両が実際に立体駐車場から退出したにもかかわらず、車両が立体駐車場内にあるとの誤判定によって、なかなか車両位置の道路へのマッチング処理が開始できない場合や、逆に、車両が実際には立体駐車場の上層の駐車フロアにあるにもかかわらず、車両が立体駐車場から退出したとの誤判定によって、立体駐車場内を走行する車両の位置の道路へのマッチング処理が行われてしまう場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、立体駐車場等の複数の階にわたって駐車フロアがある駐車場から車両が退出したことをより確かに判定することのできる駐車場退出判定装置を提供するものである。
また、本発明は、そのような駐車場退出判定装置を備えたナビゲーション装置を提供するものである。
本発明に係る駐車場退出判定装置は、所定の基準に従って自車両が駐車場を退出したか否かを判定する駐車場退出判定装置であって、自車両が前記駐車場の駐車フロアにあることを検出するフロア検出手段と、該フロア検出手段にて自車両が前記駐車場の駐車フロアにあることが検出される毎に、前記駐車場の駐車フロアの階数を検出するフロア階数検出手段と、該フロア階数検出手段にて検出される階数に応じて自車両が駐車場を退出したことを判定するために用いる基準を変える使用基準制御手段とを有する構成となる。
このような構成により、駐車場内を走行する自車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、その駐車フロアの階数が検出され、その自車両がある駐車フロアの検出階数に応じて自車両が駐車場から退出したことを判定するために用いる基準が変えられる。これにより、車両が駐車場から退出する可能性が高い駐車フロアを走行する際に用いられる基準と、自車両が駐車場から退出する可能性が低い駐車フロアを走行する際に用いられる基準とを変えて、自車両が駐車場から退出したか否かをその基準に従って判定することができる。
前記駐車フロアは、駐車場内において傾斜が所定範囲内の踊り場のような領域として定義することができる。
本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記使用基準制御手段は、前記フロア階数検出手段にて検出される階数が、自車両が前記駐車場に進入した際に当該フロア階数検出手段にて検出された階数と所定数以上異なる場合、前記所定数以上異ならない場合に比べて、自車両が前記駐車場から退出したと判定し難い基準を用いる構成とすることができる。
このような構成により、自車両のあることが検出された駐車フロアの階数が、自車両が駐車場に進入した際に検出された階数と所定数以上異なる場合、自車両が駐車場を退出できる階(例えば、自車両が駐車場に進入した際に検出された駐車フロアの階)の駐車フロアにない可能性が高いとして、駐車場から退出したと判定し難い基準を用いて自車両が駐車場から退出したか否かが判定される。
本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記使用基準制御手段は、前記フロア階数検出手段にて検出される階数が、自車両が前記駐車場に進入した際に当該フロア階数検出手段にて検出された階数より所定数以上大きい場合、前記所定数以上大きくない場合に比べて、自車両が前記駐車場から退出したと判定し難い基準を用いる構成とすることができる。
このような構成により、自車両のあることが検出された駐車フロアの階数が、自車両が駐車場に進入した際に検出された階数より所定数以上大きい場合、自車両が比較的上層の駐車フロアにあって駐車場を退出できる階(例えば、自車両が駐車場に進入した際に検出された駐車フロアの階)の駐車フロアにない可能性が高いとして、駐車場から退出したと判定し難い基準を用いて自車両が駐車場から退出したか否かが判定される。
本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記所定数は2に定めることができる。
この場合、自車両のあることが検出された駐車フロアの階数が、自車両が駐車場に進入した際に検出された階数と2以上異なる場合、自車両が駐車場を退出できる階(例えば、自車両が駐車場に進入した際に検出された駐車フロアの階)の駐車フロアにない可能性が高いとして、駐車場から退出したと判定し難い基準を用いて自車両が駐車場から退出したか否かが判定される。
また、本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記フロア検出手段は、所定走行距離当たりの相対高度の変動量に基づいて自車両が駐車フロアにあることを検出する構成とすることができる。
このような構成により、所定走行距離当たりの相対高度の変動量は、車両の走路の傾斜の程度を表し得るので、その傾斜の程度に応じて、傾斜が所定範囲内の踊り場のような領域として定義される駐車フロアが検出される。
本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記フロア階数検出手段は、前記フロア検出手段にて自車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、前回前記フロア検出手段にて自車両が駐車フロアにあることが検出された時点からの少なくとも相対高度の変動量に基づいて、駐車フロアの階数が1階分変化した否かを判定する階数変化判定手段とを有し、該階数変化判定手段にて前記駐車フロアの階数が1階分変化したと判定されたときに、検出階数を1階変化させる構成とすることができる。
このような構成により、自車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、前回自車両が駐車フロアにあることが検出された時点からの相対高度の変動量に基づいて駐車フロアの階数が1階分変化したと判定されると、検出階数が1階変化させられる。このように、単に駐車フロアが検出される毎に検出階数が1階分変化されるのではなく、更に相対高度の変動量も加味されて検出階数が1階分変化させられるので、自車両のある駐車フロアの階数をより確かに検出することができる。
本発明に係る駐車場退出判定装置において、前記階数変化判定手段は、前回前記フロア検出手段にて自車両が駐車フロアにあることが検出された時点からの走行距離と前記相対高度の変動量とに基づいて高度変化傾斜角度を演算する傾斜角度演算手段を有し、前記相対高度差とともに前記傾斜角度演算手段にて得られる前記高度変化傾斜角度も加味して駐車フロアの階数が1階分変化したか否かを判定する構成とすることができる。
このような構成により、自車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、前記自車両が駐車フロアにあることが検出された時点からの相対高度の変動量だけでなく、高度変化傾斜角度も加味されて駐車フロアの階数が1階分変化したか否かが判定されるので、自車両のある駐車フロアの階数を更に確かに検出することができる。
また、本発明に係るナビゲーション装置は、前述したいずれかに記載の駐車場退出判定装置と、該駐車場退出判定装置によって自車両が前記駐車場から退出したと判定されたときに、自車両の位置を道路地図における道路上にマッチングさせるマップマッチング処理を行う構成となる。
このような構成により、駐車場退出装置により自車両が駐車場から退出したと判定されたときに、自車両の位置が道路地図における道路上にマッチングされる。
本発明に係る駐車場退出判定装置によれば、自車両のある駐車フロアを検出し、その駐車フロアの階数を検出して、自車両のある駐車フロアの階数を用いることによって、自車両が駐車場から退出する可能性が高い駐車フロアを走行する際に用いられる基準と、自車両が駐車場から退出する可能性が低い駐車フロアを走行する際に用いられる基準とを変えて、自車両が駐車場から退出したか否かをその基準に従って判定することができるので、立体駐車場等の複数の階にわたって駐車フロアがある駐車場から車両が退出したことをより確かに判定することができる。
また、本発明に係るナビゲーション装置によれば、前記駐車場退出判定装置により立体駐車場等の複数の階にわたって駐車フロアがある駐車場から自車両が退出したことがより確かに判定することができるので、自車両が駐車場から退出する際に、当該自車両の位置を道路上に適正にマッチングさせることができる。
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
本発明の実施の一形態に係る駐車場退出判定装置が適用されるナビゲーション装置は、図1に示すように構成される。このナビゲーション装置は車両に搭載される。
図1において、ナビゲーション装置100は、コンピュータユニット(CPUを含む)によって構成される処理ユニット11を有している。処理ユニット11は、GPS受信器、加速度センサ、車輪速センサ、ジャイロ等のナビゲーション・センサ群17が接続され、また、記憶部14(例えば、ハードディスクドライブ)が接続されている。記憶部14には、処理ユニット11での処理に必要な各種情報、特に、道路リンクの情報を含む地図情報、施設に関する情報等の地図表示やナビゲーション処理に必要な情報が格納されている。
処理ユニット11には、LCD等で構成され、各種情報を表示する表示部13、表示部13上のタッチパネルや操作ボタン等で構成され、処理に対する指示や各種情報を入力するために用いられる操作部12及びスピーカ16に接続される出力回路15が接続されている。処理ユニット11は、記憶部14に格納された地図情報や施設に関する情報等に基づいて表示部13に地図を表示させたり、操作部12の操作により目的地として指定された施設までの経路を探索する処理を行ったり、更に、ナビゲーション・センサ群17からの各種検出信号に基づいて車両の位置を検出し、その検出位置情報や地図情報を用いて、前記探索により得られた経路に沿って車両を誘導するためのナビゲーション処理を行う。そして、処理ユニット11は、ナビゲーション処理により、表示部13に地図とともに車両の位置を表すマークを表示させ、車両を前記経路に沿って誘導するための音声案内がスピーカ16から出力されるように、音声信号を出力回路15に出力する。
処理ユニット11は、自車両が駐車場(立体駐車場)に進入した後、その駐車場から退出したか否かの判定を行う駐車場退出判定装置としての機能を有する。そして、処理ユニット11は、図2A及び図2Bに示す手順に従って、自車両が駐車場(立体駐車場)から退出したか否かを判定するための処理を行う。
図2Aにおいて、処理ユニット11は、車両が始動したことを検出すると(S11でYES)、後述する駐車状態フラグが有効になっているか否かを判定する(S12)。その駐車状態フラグが有効でなければ(S12でNO)、以後、処理ユニット11は、自車両が駐車場に駐車した状態ではないとして、地図情報、施設情報及び検出される自車両の位置に基づいて、自車両が駐車場に進入したか否かの判定(S13)を繰り返し実行する。
その過程で、自車両が駐車場に進入したと判定すると(S13でYES)、処理ユニット11は、検出階数nを初期化(n=0)するとともに、駐車場進入時の総相対高度変化量Hinを初期化(Hin=0)する(S14)。その後、処理ユニット11は、自車両が駐車(例えば、停止して、エンジンオフの状態)していないことを確認しつつ(S16でNO)、自車両のある駐車フロアの階数を検出するための処理(階数検出処理)を実行する(S15)。この階数検出処理は、例えば、図3A及び図3Bに示す手順に従ってなされ、傾斜角が所定範囲内の踊り場のような領域として定義される駐車フロアに自車両があることを検出するフロア検出処理(フロア検出手段:図3A参照)と、その駐車フロアの階数を検出するフロア階数検出処理(フロア階数検出手段:図3B参照)とを含む。
図3A(フロア検出処理)において、処理ユニット11は、車輪速センサを含むナビゲーション・センサ群17からの検出信号に基づいて、駐車場に進入した自車両の走行距離が所定距離Δd(例えば、10m)に達したか否かの判定(S1501)を繰り返し行う。その過程で、自車両の走行距離が所定距離Δdに達すると(S1501でYES)、処理ユニット11は、駐車場への進入後の総走行距離DをΔdだけ更新する(D=D+Δd)(S1502)。その後、処理ユニット11は、加速度センサや車輪速センサを含むナビゲーション・センサ群17からの検出信号を演算処理することにより、自車両の前記所定距離Δdの走行期間における相対高度の変化量Δhを取得する(S1503)。そして、処理ユニット11は、駐車場進入時の総相対高度変化量HinをΔhだけ更新する(Hin=Hin+Δh)(S1504)。処理ユニット11は、前記所定距離Δdと、その所定距離Δdの走行期間における相対高度の変化量Δhとを用いて、単位走行距離当たりの相対高度の変化量(Δh/Δd)を算出し、その単位走行距離当たりの相対高度の変化量(Δh/Δd)を用いて、前記所定距離Δdの走路の平均的な傾斜角である高度変化傾斜角θを、
θ=tan-1(Δh/Δd)・・・・・(1)
に従って演算する(S1505)。
処理ユニット11は、その高度変化傾斜角θの絶対値が比較的小さい基準値θth(例えば、3.5度)以下であるか否かを判定する(S1506)。前記高度変化傾斜角θの絶対値が前記基準値θth以下であると(S1506でYES)、処理ユニット11は、傾斜角が所定範囲内(|θ|≦θth)の踊り場のような領域として定義される駐車フロアに自車両があることを検出する。このようにして、自車両が駐車フロアにあることを検出すると、処理ユニット11は、図3Bに示す手順に従って、その駐車フロアの階数を検出する。
図3Bにおいて、処理ユニット11は、前記総走行距離Dを現時点総走行距離Diとして設定し、前記総相対高度変化量Hinを現時点総相対高度変化量Hiとして設定する(S1507)。そして、処理ユニット11は、現時点走行距離Diと前回自車両が駐車フロアにあることが検出された際に得られた現時点走行距離Di-1との差を、フロア間走行距離ΔDiとして演算し(S1508)、また、現時点総相対高度変化量Hiと前回自車両が駐車フロアにあるとことが検出された際に得られた現時点総相対高度変化量Hi-1との差を、フロア間相対高度変化量ΔHiとして演算する(S1509)。処理ユニット11は、前記フロア間走行距離ΔDiと前記フロア間相対高度変化量ΔHiとを用いて、フロア間の走路の平均的な傾斜角であるフロア間高度変化傾斜角αiを、
αi=tan-1(ΔHi/ΔDi)・・・・・(2)
に従って演算する(S1510)。
なお、自車両が駐車場に進入してその最初の駐車フロアにある場合、その駐車フロアの階数はゼロ階(nの初期値=0)であり、また、フロア間走行距離ΔD0及び前記フロア間相対高度変化量ΔH0もそれぞれゼロ(ΔD0=0、ΔH0=0)である。この場合、前記フロア間走行距離ΔDoとフロア間相対高度変化量ΔH0とに基づいて演算される前記フロア間高度変化傾斜角αiもゼロ(αi=0)である。
前記フロア間相対高度変化量ΔHi及び前記フロア間高度変化傾斜角αiが得られると、処理ユニット11は、前記フロア間相対高度変化量ΔHiが基準値Hth(上下の駐車フロアの間隔に基づいて定められた値で、例えば、1.8m)より大きいか否かを判定する(S1511)。例えば、自車両が駐車場の最初の駐車フロアを走行している間では、前記フロア間相対高度変化量ΔH0(=0)は、前記基準値Hthより小さく(S1511でNO)、処理ユニット11は、更に、前記フロア間相対高度変化量ΔHiが基準値−Hth(例えば、−1.8m)以下ではないことを確認して(S1514でNO)、カウンタiを+1カウントアップし(S1517)、自車両が駐車したか否かを判定する(図2AにおけるS16)。そして、自車両が駐車していなければ(S16でNO)、階数検出処理(図2AにおけるS15)に戻る。そして、自車両が駐車場の最初の駐車フロアを走行している間、処理ユニット11は、自車両が駐車していないことを確認しつつ(S16でNO)、前述したのと同様の手順に従って階数検出処理(図3A及び図3B参照)を行う。
自車両が駐車場の最初の駐車フロア(n=0)から次の駐車フロアに向けて傾斜した通路を登り走行している状況では、処理ユニット11は、図3Aに示す手順において、自車両が所定距離Δd(例えば、10m)走行する毎に(S1501でYES)、総走行距離DをΔdだけ更新し(S1502)、その所定距離Δdの走行期間における相対高度の変化量Δhを取得し(S1503)、総相対高度変化量HinをΔhだけ更新し(S1504)、そして、前記所定距離Δdの走路の平均的な傾斜角である高度変化傾斜角θを前記式(1)に従って演算する(S1505)。この場合、自車両が最初の駐車フロアから次の駐車フロアに向けて傾斜した通路を登り走行しているので、前記高度変化傾斜角θは、基準値θth(例えば、3.5度)より大きい(S1506でNO)。このため、駐車フロア検出処理(図3B参照)に移行することなく、処理ユニット11は、自車両が駐車していないことを確認しつつ(図2AのS16でNO)、自車両の走行距離が前記所定距離Δdに達する毎に、前述したのと同様の処理(S1502〜S1506)を繰り返し実行する。
その過程で、自車両が次の駐車フロアに登りきってその駐車フロアを走行する状態では、前記高度変化傾斜角θが基準値θth以下になって(S1506でYES)、処理ユニット11は、自車両が駐車フロアにあると判定する。その後、処理ユニット11は、図3Bに示す処理(フロア階数検出処理)に移行する。
図3Bにおいて、処理ユニット11は、その時点での総走行距離Dを現時点走行距離Diに設定するとともに、その時点での総相対高度変化量Hinを現時点相対高度変化量Hiに設定する(S1507)。そして、処理ユニット11は、現時点走行距離Diと前回自車両が最初の駐車フロア(n=0)にあることが検出された際に得られた現時点走行距離Di-1との差を、フロア間走行距離ΔDiとして演算し(S1508)、また、現時点総相対高度変化量Hiと前回自車両が最初の駐車フロア(n=0)にあるとことが検出された際に得られた現時点総相対高度変化量Hi-1との差を、フロア間相対高度変化量ΔHiとして演算する(S1509)。また、処理ユニット11は、前記フロア間走行距離ΔDiと前記フロア間相対高度変化量ΔHiとを用いて、最初の駐車フロアと次の駐車フロアとの間の走路の平均的な傾斜角であるフロア間高度変化傾斜角αiを、前記式(2)に従って演算する(S1510:傾斜角度演算手段)。
処理ユニット11は、前記フロア間相対高度変化量ΔHiが基準値Hth(例えば、1.8m)より大きいか否かを判定する(S1511:階数変化判定手段)。前記フロア間相対高度変化量ΔHiが前記基準値Hthより大きいと(S1511でYES)、処理ユニット11は、更に、前記フロア間高度変化傾斜角αiが基準値αth(例えば、3.0度)より大きいか否かを判定する(S1512:階数変化判定手段)。そして、前記フロア間高度変化傾斜角αiが基準値αthより大きいと(S1512でYES)、処理ユニット1は、自車両のある駐車フロアが1階分変化したとして、階数nを+1インクリメントする(S1513)。これにより、自車両のある駐車フロアの階数は、最初の駐車フロアの階数n=0の次の階数n=1となる。
その後、処理ユニット11は、カウンタiを+1カウントアップし(S1517)、自車両が駐車したか否かを判定する(図2AにおけるS16)。自車両が駐車していなければ(S16でNO)、再び、階数検出処理(図2AにおけるS15)に戻る。そして、自車両が駐車場の次の駐車フロアを走行している間、処理ユニット11は、自車両が駐車していないことを確認しつつ(S16でNO)、前述した自車両が最初の駐車フロアを走行している際になされた処理(S1501〜S1506、S1507〜S1511、S1514、S1517)と同様の処理を行う。
以後、同様に、処理ユニット11は、自車両が駐車フロアにあることを検出する(S1501〜S1506でYES:図3A参照)毎に、フロア間相対高度変化量ΔHiが基準値Hthを越えており(S1511でYES)、かつ、フロア間高度変化傾斜角αiが基準値αthを越えている(S1512でYES)ことを条件に、検出階数nを1階分増加させる(S1513:階数検出)。その結果、例えば、図4の特性曲線Q1で示すように、総相対高度変化量ΔHiが変化するように自車両が駐車場(立体駐車場)を登り走行する場合、同図4の特性曲線Q2で示すように、検出階数nが、自車両が駐車フロアにあると検出される毎に、1階ずつ増加していく。その間、総走行距離D及び総相対高度変化量Hinが順次増加更新されていく(S1502、S1504)。
上述したように、自車両が駐車フロアにあることの検出、及びその駐車フロアの階数の検出を行う過程で、自車両が駐車したと判定すると(図2AのS16でYES)、図2Aに戻って、処理ユニット11は、駐車状態フラグを有効にし、検出階数n及び駐車場進入時の総相対高度変化量Hinを記憶部14に保存する(S17)。その後、処理ユニット11は、処理を終了する。
駐車場に駐車された車両が当該駐車場から退出する際に、処理ユニット11は次のような手順に従って処理を行う。
図2Aにおいて、処理ユニット11は、車両が始動したことを検出すると(S11でYES)、駐車状態フラグが有効になっているか否かを判定する(S12)。そして、その駐車状態フラグが有効であると判定すると(S12でYES)、以後、処理ユニット11は、図2Bに示す手順に従って処理を行う。
図2Bにおいて、処理ユニット11は、記憶部14に保存された検出階数n、及び駐車場進入時の総相対高度変化量Hinを読み出して処理可能な状態にセットし、駐車場退出時の総相対高度変化量Houtを初期化(Hout=0)する(S21)。その後、処理ユニット11は、階数検出処理(S22)を行う。この階数検出処理は、前述した自車両が駐車場に進入した際になされるもの(S15、図3A及び図3B参照)と略同じ手順でなされる。
具体的には、処理ユニット11は、自車両が所定距離Δd(例えば、10m)走行する毎に、総走行距離DをΔdだけ更新し(D=D+Δd)、その所定距離Δdの走行期間における相対高度の変化量Δhを取得し、総相対高度変化量HoutをΔhだけ更新し(Hout=Hout+Δh)、そして、前記所定距離Δdの走路の平均的な傾斜角である高度変化傾斜角θを前記式(1)に従って演算し、その高度変化傾斜角θの絶対値が基準値θth(例えば、3.5度)以下であるか否かを判定する(図3AにおけるS1501でYES、S1502〜S1506参照)。そして、前記高度変化傾斜角θが前記基準値θth以下であると(図3AにおけるS1506でYES参照)、処理ユニット11は、自車両が駐車フロアにあることを検出する。一方、前記高度変化傾斜角θが前記基準値θthより大きい場合(図3AにおけるS1506でNO参照)、自車両が駐車フロア間の傾斜の大きい通路を走行している状況であるとして、処理ユニット11は、上述の処理(図3AにおけるS1501〜S1506参照)を繰り返す。
上記のようにして自車両が駐車フロアにあることを検出する毎に、処理ユニット11は、図3Bに示す手順と同様の手順(駐車場進入時の総相対高度変化量Hinに代えて駐車場退出時の総相対Houtを用いる)に従って、その駐車フロアの階数を検出するための処理を行う。具体的には、処理ユニット11は、前記総走行距離Dを現時点総走行距離Diとして設定するとともに、前記総相対高度変化量Houtを現時点総相対高度変化量Hiとして設定し、フロア間走行距離ΔDi及びフロア間相対高度変化量ΔHiを演算して、該フロア間走行距離ΔDiと該フロア間相対高度変化量ΔHiとを用いて、フロア間の走路の平均的な傾斜角であるフロア間高度変化傾斜角αiを、前記式(2)に従って演算する(図3BにおけるS1507〜S1510参照)。
自車両が駐車場(立体駐車場)の上層の駐車フロアから下層の駐車フロアに向かって走行して当該駐車場を順次降りてくる過程では、所定距離Δdの走行期間における自車両の相対高度変化量Δh(図3AにおけるS1503参照)は、負の値となるので、その総和である総相対高度変化量Houtも負の値になる。これにより、自車両が駐車フロアにあることが検出された際に演算されるフロア間相対高度変化量ΔHiも負の値になる。このような状況では、処理ユニット11は、前記フロア間相対高度変化量ΔHiが基準値Hthを越えていないこと(図3BにおけるS1511でNO参照)を確認した後、そのフロア間相対高度変化量ΔHiが基準値−Hth(例えば、−1.8m)以下であって、かつ、前記フロア間高度変化傾斜角αiが基準値−αth(例えば、−3.0度)以下であることを確認すると、検出階数nを1階分減らす(図3BにおけるS1514でYES、1515でYES、S1516参照)。
図2Bに戻って、上述した階数検出処理(S22(図3A及び図3B参照))での自車両が所定距離Δd走行する毎になされる一連の処理が終わる毎に、処理ユニット11は、その時点での検出階数nの絶対値が2以上であるか否か、即ち、その時点で検出されている駐車フロアの階数nが、自車両が駐車場に進入した際に検出された最初の駐車フロアの階数=0と2以上異なるか否かを判定する(S23)。それらが2以上異なる場合(|n|≧2:S23でYES)、自車両が駐車場を退出できる階(例えば、自車両が駐車場に進入した際に検出された駐車フロアの階(n=0))の駐車フロアにない可能性が高いとして、処理ユニット11は、駐車場進入時の総相対高度変動量Hin(上り方向:正値)と、駐車場脱出時の総相対高度変動量Hout(下り方向:負値)との和を相対高度差として演算し、その相対高度差(Hin+Hout)が所定値(例えば、5m)以上であることを確認した後(S24でYES)、屋内駐車場退出判定処理(S25a)を行う。一方、前記検出階数nの絶対値が2以上でない場合(N23でNO)、即ち、その時点で検出された駐車フロアの階数nが、自車両が駐車場に進入した際に検出された最初の駐車フロアの階数=0と2以上は異ならない(1以下である)場合、自車両が駐車場を退出できる階の駐車フロアにある可能性が高いとして、処理ユニット11は、屋外駐車場退出判定処理(S25b)を行う。なお、検出階数nの絶対値が2以上であっても(S23でYES)、相対高度差(Hin+Hout)が所定値(例えば、5m)未満であると(S24でNO)、処理ユニット11は、階数の検出エラーとして、屋内駐車場判定処理25aではなく、屋外駐車場判定処理25bを行う。
処理ユニット11が行う駐車場退出判定処理(S25)は、屋内駐車場退出判定処理(S25a)と屋外駐車場退出判定処理(S25b)とを含む。屋外駐車場退出判定処理(25b)及び屋内駐車場退出判定処理(S25a)で用いられる自車両が駐車場を退出したか否かを判定するための基準(しきい値)は、例えば、図5に示すように、異なる。屋外駐車場退出判定処理(S25b)では、自車両とマッチング候補道路との間の距離に応じて、自車両が駐車場から退出したと判定されるための走行距離(しきい値)が定められている。具体的には、自車両がマッチング候補道路の幅員範囲内を20m走行すれば、自車両がマッチング候補道路から10m以内の範囲を30m走行すれば、自車両がマッチング候補道路から20m以内の範囲を55m走行すれば、自車両がマッチング候補道路から30m以内の範囲を80m走行すれば、自車両がマッチング候補道路から40m以内の範囲を105m走行すれば、自車両がマッチング候補道路から75m以内の範囲を200m走行すれば、それぞれ自車両が駐車場から退出したと判定される。一方、屋内駐車場退出判定処理(S25a)では、自車両がマッチング候補道路に対する上記いずれの範囲を走行する場合であっても、400m走行しなければ、自車両が駐車場を退出したとの判定がなされない。このように、屋内駐車場退出判定処理(S25a)で用いられる判定基準は、屋外駐車場退出判定処理(S25b)で用いられる判定基準に比べて、自車両が駐車場から退出したと判定し難い基準になっている。即ち、検出された駐車フロアの階数nが、自車両が駐車場に進入した際に検出された最初の駐車フロアの階数=0と2以上異なる場合(屋内駐車場退出判定処理(S25a))、それらの階数が2以上異ならない場合(屋外駐車場退出判定処理(S25b))に比べて、自車両が前記駐車場から退出したと判定し難い基準が用いられる。
上記駐車場退出判定処理(S25:屋内駐車場退出判定処理(S25a)または屋外駐車場退出判定処理(S25b))の結果、自車両が駐車場から退出していないと判定されると(S26でNO)、処理ユニット11は、再度、階数検出処理(S22)を行い、その時点で検出されている階数n、及び相対高度差(Hin+Hout)に応じて、屋内駐車場退出判定処理(S25a)及び屋外駐車場退出判定処理(S25b)のいずれかの処理を行う。以後、上記駐車場退出判定処理(S25)での判定結果が、自車両が駐車場から退出していないというものである間、処理ユニット11は、上述したのと同様の処理(S22〜S25)を繰り返し行う。
その過程で、自車両が駐車場から退出したとの判定結果を得ると(S26でYES)、処理ユニット11は、階数nをリセット(n=0)するとともに、駐車状態フラグをリセットする(S27)、そして、処理ユニット11は、自車両が駐車場(立体駐車場)から退出したか否かを判定するための処理を終了する。このように自車両が駐車場から退出したとの判定がなされると(S26でYES)、処理ユニット11は、地図情報及びナビゲーション・センサ群17からの検出信号に基づいて、自車両の位置の道路へのマッチン処理を開始する。
上述したような駐車場退出判定装置では、駐車場内を走行する自車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、その駐車フロアの階数nが検出され、その自車両がある駐車フロアの検出階数nに応じて自車両が駐車場から退出したことを判定するために用いる基準が変えられる(屋内駐車場退出判定処理(S25a)、屋外駐車場退出判定処理(S25b)、図5参照)。特に、現時点で検出されている駐車フロアの階数nが2以上であって、自車両が駐車場から退出できる階の駐車フロアにない可能性が高い場合には、その検出されている駐車フロアの階数nが2より小さく(例えば、n=1または0)、自車両が駐車場から退出できる階の駐車フロアにある可能性が高い場合に比べて、自車両が駐車場から退出したと判定し難い基準を用いて自車両が駐車場から退出したか否かの判定がなされる(屋内駐車場退出判定処理(S25a))。これにより、車両が実際には駐車場(立体駐車場)の上層の駐車フロアにあるにもかかわらず、車両が立体駐車場から退出したとの誤判定や、逆に、車両が実際に駐車場から退出したにもかかわらず、車両が立体駐車場内にあるとの誤判定を防ぐことができる。従って、立体駐車場から車両が退出したことをより確かに判定することができ、その結果、自車両が駐車場から退出する際に、当該自車両の位置を道路上に適正にマッチングさせることができる。
また、車両が駐車フロアにあることが検出される毎に、フロア間走行距離ΔDiとフロア間相対高度変動量ΔHiを用いてその駐車フロアの階数nが検出される(図3A参照)ので、走行距離や相対高度変動量の累積誤差を最小限に抑えることができる。その結果、自車両が立体駐車場から退出したことを更に確かに判定することができる。また、自車両が駐車場に進入する際の総相対高度変動量Hinと自車両が退出する際の総相対高度変動量Houtとを別々に演算して、それらの和を相対高度差として得ているので、その相対高度差の累積誤差も低く抑えることができる。
なお、前述した例では、自車両が立体駐車場に進入し、その立体駐車場から退出する場合について説明したが、自車両が地下駐車場に進入し、その地下駐車場から退出する場合も同様の処理が行われる。この場合、自車両が地下駐車場に進入する際に、検出階数nが1階ずつ減少され(図3BにおけるS1514〜S1516参照)、自車両が地下駐車場から退出する際に、検出階数nが1階ずつ増加される(図3BにおけるS1511〜S1513参照)。そして、その検出階数nの絶対値が2以上であれば、屋内駐車場退出判定処理(図2BにおけるS25a)が行われ、その検出階数nの絶対値が2より小さければ、屋外駐車場退出判定処理(図2BにおけるS25b)が行われる。
また、前述した駐車場退出判定装置では、検出されている駐車フロアの階数nが、自車両が駐車場に進入した際に検出された最初の駐車フロアの階数=0と2以上異なるときに、自車両が駐車場から退出したと判定し難い基準を用いる屋内駐車場退出判定処理(S25a)が行われた。しかし、これに限られず、検出されている駐車フロアの階数nが、自車両が駐車場に進入した際に検出された最初の駐車フロアの階数=0と2以外の所定数以上異なるときに、前記屋内駐車場退出処理が行われるようにすることもできる。