(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、部屋1の床2上には、活性種発生装置3が配置されている。この活性種発生装置3は、部屋内の空気中にラジカルなどの活性種を供給することで、この活性種による清浄化作用により、空気を清浄化するものである。また、活性種を含む空気を衣類やカーテン等にあてることによって、衣類やカーテンの脱臭・除菌などの効果が期待できる。
図2は、図1における活性種発生装置3の断面図を示している。図3は、図2とは部品配置が異なる活性種発生装置3の断面図を示している。
活性種発生装置3は、吸気口4と排気口5を有する本体ケース6と、この本体ケース6内の送風手段7および活性種発生ユニット8とを備えている。
本体ケース6は、略中央に位置する仕切板部9によって、吸気口4と排気口5とを連通する風路部10と、空間部11とに分けられている。
送風手段7は、本体ケース6の仕切板部9に固定された電動機12と、この電動機12によって回転する羽根部13と、この羽根部13を囲むケーシング部14とから形成している。ケーシング部14の吸込口15は、本体ケース6の吸気口4に対向している。送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気は、活性種発生ユニット8の一部を介して、排気口5へ送風されるものである。
なお、図3では活性種発生ユニット8を送風経路に沿って上方に開口部を備える位置にしているが、発生する活性種が風にのって室内に送風されればよく、活性種発生ユニットの位置や向きはこの場所には限定されない。例えば活性種発生ユニット8自体は本体ケース6内の送風経路外に設置し、活性種の放出口を送風経路に備える配置でもよい。活性種発生ユニット8を送風手段7の上流に配置してもよい。また、活性種発生ユニット8を複数備えてもよい。
活性種発生ユニット8は、図4〜図6に示すように絶縁性基板16と、絶縁性基板16の一方面で、孔部21に対向して配置された放電電極17と、絶縁性基板16の孔部21の内面と絶縁性基板16の放電電極17側の表面とに設けた半導電性の被覆18bと、この半導電性の被覆18bの外周部を覆うごとく設けた導電部23と、この導電部23と電気的に接続された電源接続部19と、この電源接続部19および放電電極17に電圧を印加する電源部20(図2、図3に記載)とから形成している。ここで半導電部18は、絶縁性基板16と半導電性の被覆18bで構成されている。
なお、孔部21を設けなくても活性種成分を増やすことは可能である。従来の特許文献に記載のように、針電極とアース電極を平行に配置した場合、コロナ放電領域は、針電極とからアース電極側に偏って生成するため、放電領域が小さくなる。一方、本発明のように、放電電極17と半導電部18を略垂直方向に対向配置した場合、針からみて円錐状に広がりを持ったコロナ放電領域が形成されるため、コロナ放電領域の範囲が広がり、より多くの活性種を発生させることができる。孔部21を設けた場合には、孔部21の端面に向かってコロナ放電が発生するため、孔部21の直径を変えることによってコロナ放電の広がり方を変化させることができる。
絶縁性基板16は、図5、図6に示すごとく、平板形状で略中央に開口である孔部21を有し、絶縁性基板16の端部は、支持部材22を介して本体ケースの仕切板部9に固定されている。
支持部材22および固定蓋24の組立て時の形状は、空気が直線的に通過可能な筒形状としても良いし、空気を側面から導入して上面から排出する開口部を備えた箱形状としてもよい。図2は箱形状として、下面から空気を導入し、側面から排出する構成である。図3は、筒形状として下面から空気を導入し、上面から排出する構成である。
図3の部品配置では、孔部21は、本体ケース6の排気口5に対向しており、送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気の一部は、放電電極17の周囲を通り、孔部21を介して、排気口5へ送風されるものである。
図4には、活性種発生ユニット8の断面図が示されている。図5は、活性種発生ユニット8の分解斜視図を示している。図6は、活性種発生ユニット8の導電部23および絶縁性基板16の分解斜視図を示している。
活性種発生ユニット8は、上述のごとく絶縁性基板16と、この絶縁性基板16の一方面で、孔部21に対向して配置された放電電極17と、絶縁性基板16の孔部21の内面と絶縁性基板16の放電電極17側の表面とに設けた、電流を流すことによって発熱して近傍の水分量を増加させる効果を有する半導電性の被覆18bと、この半導電性の被覆18bの外周部を覆うごとく電気的に接続されるように設けた導電部23と、この導電部23と電気的に接続された電源接続部19と、電源部20を設けたものである。電源接続部19は、SUSなどのステンレス、アルミ、金、銀、銅などで形成されている。なお、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。
活性種発生ユニット8は、放電電極17を保持する支持部材22と、絶縁性基板16と固定蓋24を備えている。支持部材22は、仕切板部9(図2、図3に記載)に固定されている。
絶縁性基板16は、四角平板形状であり、略中央に開口する孔部21を有している。なお、絶縁性基板の形状は円形や多角形であってもよい。
絶縁性基板16は、オゾンやラジカルで腐食されにくい無機系のもの、あるいは、フッ素樹脂であれば良く、セラミック基板であっても、フッ素などの樹脂基板であっても良い。セラミック基板としては、Si、Al、Zn、Ti、Mgを含む酸化物あるいは複合酸化物、炭化物、窒化物などを用いることができ、コストと入手のしやすさからアルミナが好適である。なお、絶縁性基板16の表面抵抗率は、1010Ω/□以上であることが望ましい。
放電電極17は、棒形状あるいは針形状で、支持部材22の底面から垂直方向に延び、絶縁性基板16の一方面に対向している。支持部材22は多数の開口を備えて通気可能であってもよい。そして、放電電極17の先端は、絶縁性基板16から数ミリメートル〜数十ミリメートル程度の所定距離を隔てて、孔部21の外で、かつ孔部21の略中心軸上に位置するものである。略中心軸上とは、孔部21の中心を通り、絶縁性基板16に対して垂直な軸上を示す。放電電極17の材質は、コロナ放電をさせるSUSなどのステンレスやタングステン、チタン、Ni−Cr合金などである。放電可能であれば、炭素・スズ・SiCなどを含む電極を用いてもよい。
なお、放電電極の先端部は鋭利な円錐状、円柱状、半球状などの形状を利用することができる。鋭利な先端を用いた場合、放電集中が起こりやすいため、比較的低い電圧でコロナ放電を行うことができる。針先の形状を、円柱状あるいは半球状にした場合は、特定の部分に電荷集中が起こらない。そのため、針形状に比べると高い電圧を印加しないとコロナ放電が発生しないが、電荷が分散した状態でコロナ放電が継続されることから、針形状に比べて長時間劣化しにくい放電電極とすることができる。これは、鋭利な針先には電荷集中によって金属の溶融やほこりの集中付着が起こりやすいためである。
半導電性の被覆18bは、図6に示すように、絶縁性基板16の一方面側の表面、つまり、放電電極17と対向した面と、絶縁性基板16の孔部21の内面とに設けられている。放電電極17側から見ると、半導電性の被覆18bの形状はリング形状である。半導電性の被覆18bの表面抵抗率は、106Ω/□から1010Ω/□であることが望ましい。
表面抵抗率の測定方法は以下の2種類の方法があり、本実施の形態では方法1で行った。
方法1は、円柱状の主電極と主電極の周りを取り囲むようにリング状の対電極をそれぞれの距離が一定となるように試験片上に置き、主電極と試験片の間には接触抵抗を減らすために、導電性ゴムを挟む。次に主電極はアース側、対電極には1000Vを印加し、その間に流れる電流を測定し表面抵抗Rを算出し、試験片上で電流の流れる方向の距離Lと、電流の流れ方向と垂直方向の電極の長さWから表面抵抗率ρsを求める方法である。
すなわち、ρs=R×L/Wである。
表面抵抗率の単位は[Ω/□]または単に[Ω]を使用するが、本特許では、単なる抵抗値との区別が容易な[Ω/□]を用いている。
方法2は、試験片の両側に平行に一定の距離を置いて同じ長さの導電性テープを貼り付け、それぞれのテープは方法1における主電極と対電極となり、同様に主電極となる側にはアースへ、対電極となる側には1000Vを印加して、その間に流れる電流から算出した表面抵抗Rと、導電性テープ間の距離Lと、導電性テープの長さWより表面抵抗率を測定する。
ここで、図7、図8を用いて、活性種発生量が増加する仕組みを説明する。
図7に、本実施例の活性種発生ユニットの構成において、放電電極17と電源接続部19に−8kVを印加した際の、半導電性の被覆18bの表面抵抗率とスパーク距離の関係を示す。表面抵抗率は対数表示であり、スパーク距離は、放電電極17と半導電性の被覆18bの最短空間距離である。表面抵抗率が106Ω/□より低い範囲ではスパーク距離は6mmである。つまり、活性種発生ユニットとしては、放電電極17と半導電性の被覆18bを6mmより離す構造にする必要があり、装置を小型化することができない。
一方、表面抵抗率が106Ω/□以上の範囲では、スパーク距離は0mmであり、スパークは発生しない。従って、放電電極17と半導電性の被覆18bの距離を6mm以下にすることができ、活性種発生ユニットの小型化を実現できる。放電電極17の先端側近傍に半導電性の被覆18bを備えるとは、例えば−8kVを印加した場合、放電電極17と半導電性の被覆18bの距離を6mm以下にした構成であり、この距離の6mmは、印加電圧により設定される。
図8に、放電電流を一定にした場合の、電圧に対する放電距離の関係を示す。放電距離は、放電電極17と半導電部18の最短距離である。放電電流は放電の強さを示し、放電電流が増えると活性種の発生量は増加する。放電距離が狭い条件では、わずかに電圧をあげるだけで放電電流を増加させ、活性種発生量を増やすことができる。例えば、放電距離3mmにおいては、電圧を−3.5kVから−4.0kVに0.5kV増加させることで、放電電流を5μAから30μAまで、約6倍増加させることができる。一方、放電距離が10mmの場合、電圧を−6.1kVから−6.6kVに0.5kV増加させても、放電電流は5μAから10μAに変化するのみであり、約2倍しか増加しない。
すなわち、図7で説明したように表面抵抗率を106Ω/□以上とし、放電距離を短くできれば、わずかな電圧変化で放電電流を大幅に増加させることが可能であり、コロナ放電を高出力化させて活性種発生量を増やすことができる。
放電電極17の先端は、孔部21の略中心軸上に配置されることが望ましい。放電電極17と電源接続部19に電気的に接続された半導電性の被覆18bに高電圧が印加された場合、放電電極17と半導電性の被覆18b間をながれる電流は、半導電性の被覆18bの孔部21外周面から導電部23を介して、電源接続部19に到達する。つまり、放電電極17を中心として円周方向の周囲に半導電性の被覆18bが位置するので、半導電性の被覆18bの広い範囲に電流が分散することになり、発明の効果で説明したように半導電性の被覆18b近傍の空気には広い範囲で発熱による水分量の増加が起こり、その広い範囲で分散して放電するため、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。
放電電極17の先端の断面形状と、半導電性の被覆18bの孔部の形状は、同種の形状であってもよい。例えば、円状の孔部に対して、先端が円柱状または半球状の放電電極17を用いた場合には、放電部分の先端部の断面形状が円状になっているため 放電電極17を中心として円周方向に広い範囲に分散して放電が発生する。その結果、先端が鋭利な針状の放電電極17を用いる場合に比べて、局所的な放電集中が起こりにくく、放電電極17の劣化を抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。
さらに、半導電性の被覆18bの広い範囲に電流が分散するので、OHラジカルなどの活性種の発生量が増加するものである。また、集中的に高濃度の活性種が生成することがないため、半導電部18の劣化が起こらず持続的に活性種を放出することができるものである。
また、空気中の水分を有効に利用して活性種の量を増やすことができるので、水分の捕集のためにゼオライトなどの吸着剤を利用する必要がなく、吸着剤が劣化することがなく、安全性と持続性に優れた活性種発生ユニットとすることができる。なお、孔部の形状としては、円形状ではなく、四角形・多角形・楕円形状としてもよい。
なお、放電電極17の放電を受ける電極として、半導電性の皮膜を備えた絶縁性基板16と半導電性の被覆18bと導電部23と電源接続部19からなる構成を説明したが、電極として半導電性の被覆18bと電源接続部19のみを用いてもよい。すなわち、絶縁性基板16と同形状の孔空き平板状の半導電性の被覆18bを電源接続部19に電気的に接続する構成でもよい。このような構成とすることによって、構造が簡易になり組立てやすい活性種放出ユニットにすることができる。さらに、導電部および絶縁性基板の厚みを減らすことで、より小型の活性種発生ユニットとすることができる。
図6は、半導電性の被覆18bの周縁部近傍の表面外周部を覆う位置に導電部23を設け、この導電部23は電源接続部19と半導電性の被覆18bと電気的に接続しているものである。このとき、放電電極17から導電部23までの最短距離は、放電電極17から半導電性の被覆18bまでの最短距離よりも長いものである。図6の例では、導電部23は、四角形状の金属性平板であり、孔部21の外周よりも大きく、かつ、半導電性の被覆18bの外周よりも小さい貫通孔25を有する。
このような構成とすることにより、放電電極17と電極端子19間を流れる電流は、例えば放電電極17から絶縁性基板16の孔部21の内面を覆う半導電性の被覆18bを流れた後に、絶縁性基板16の一方面表面を覆う半導電性の被覆18bを流れ、その後、導電部23を介して、ようやく電源接続部19へと到達することになる。つまり、沿面距離が長いので、その結果として火花放電が起こらず、安全性の向上が図れるものである。
ここで、導電部23の表面抵抗率は、半導電性の被覆18bの表面抵抗率より小さいものである。具体的には、半導電性の被覆18bの表面抵抗率は、106Ω/□以上から1010Ω/□未満であり、導電部23の表面抵抗率は、106Ω/□未満であり、電源接続部19の表面抵抗率は、10−1Ω/□以下であることが望ましい。
次に、導電部23を備えた場合の効果について説明する。図9に、活性種発生ユニットの半導電部および導電部の電子の流れ方の概念図を示す。(A)は導電部23を備えない場合、(B)は導電部23を備えた場合である。放電電極17からのコロナ放電によって生じた電子が、孔部21の内面を覆う半導電性の被覆18bのP地点に達したとすると、電子はP地点から半導電性の被覆18bを流れて直線的に電源接続部19に到達する。一方、電子がQ地点に達したとすると、電子はQ地点から孔部21の周囲を通って最短距離で電源接続部19に到達する。このように、(A)導電部23がない場合には、半導電面のなかに電子密度のかたよりが生じやすく、結果として発生する活性種の量にも部分的なかたよりが生じやすくなる。
一方、(B)導電部23がある場合、R地点に到達した電子も、S地点に到達した電子も、孔部21から外周方向に拡散する方向に流れようとする。つまり、半導電性の被覆18bに均一に電子が拡散し、活性種の発生も均一に発生することから、活性種発生量を増やすことができるものである。また、電子密度の局所的な集中が生じないため、半導電部18の部分劣化が生じにくいという効果を得ることができる。
導電部23は、孔部21の中心から略等距離に位置するものである。具体的には、半導電性の被覆18bの孔部21の外周から外方へ略等距離延びた位置で電気的に接続するリング形状であり、この周縁部に導電部23が位置するものである。つまり、放電電極17の先端から略等距離に導電部23が位置するものである。
これにより、導電部23は、孔部21の外周から略等距離に位置するので、放電電極17と電源接続部19間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と電源接続部19間を流れる電流は、導電部23全周に均一に流れ易くなる。また、半導電性の被覆18bの周縁部まで流れた電流は、導電部23の表面抵抗率が、半導電性の被覆18bの表面抵抗率より小さいものであるので、導電部23を介して電源接続部19へ到達し易くなる。
すなわち、半導電性の被覆18bの広い範囲に電流が均一に分散し、更に、半導電性の被覆18bの周縁部に位置する導電部23へ広がるように電流が流れるので、半導電性の被覆18bの狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、さらに局所的に発熱することがないため、半導電性の被覆18bの劣化を抑制することができるものである。また、半導電性の被覆18bの広い範囲に電流が分散するので、OHラジカルの発生量が増加するものである。
導電部23は、金属製平板であることが望ましい。導電部23をAg、Cu、カーボンなどを含む導電性インクによる印刷で形成することもできるが、長期間使用する際には導電インクの劣化が課題となる。金属製平板であれば、インクに比べて、放電によって生成した活性種に対する酸化安定性が優れているため、結果として活性種を安定して発生させることができる。
導電部23は、SUS316L、SUS316、SUS304、アルマイト処理を施したアルミニウムのいずれかからなるものであることが望ましい。これらの金属は、オゾン等の活性種に対する耐性が高いため、オゾン等の活性種による腐食に強く、導電部23の耐久性を向上できるからである。なお、導電部23は、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。導電部23の表面抵抗率は、10−1Ω/□以下であることが望ましい。
また、電源接続部19は、絶縁性基板16における一方面の裏側に位置する他方面、又は絶縁性基板16における一方面と他方面との間の外周面に接して設けられているものであっても良い。これにより、放電電極17から流れる電子が、絶縁性基板16の表面を伝って流れる際に、電子の移動する距離である、いわゆる沿面距離が伸びることで、火花放電が起こりにくくなる。なお、これに限られること無く、電源接続部19を絶縁性基板16の表面に設ける場合には、十分な沿面距離を確保した状態で配置することが必要となる。
半導電性の被覆18bは、セラミック製の絶縁性基板16と、この絶縁性基板16の、放電電極17側の表面に備えたものであってもよい。また、半導電性の被覆18bは、孔部21の拡開斜面の中程にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成していてもよい。
図10に一例を示すように、絶縁性基板16の表面は半導電性の半導電性の被覆18bで被覆されている。孔部21の拡開傾斜面26の斜面の中程27にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成して拡開傾斜面26を覆う。このような構造は、以下のような手順で形成することができる。
半導電性の被覆18bは、絶縁性基板16の表面にスクリーン印刷によりスキージで半導電インクを塗布したものである。半導電インクは、酸化スズなどの導電剤とガラス粉などの接着剤を含み、前記成分を溶剤に混合あるいは溶解させたものである。
絶縁性基板16の孔部21上をスクリーンを介してスキージが通過することにより、孔部21の拡開傾斜面26に、半導電インクが、押し出され、押し出された半導電インクは、孔部21の拡開傾斜面26の斜面の中程27にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成して拡開傾斜面26を覆う。従って、半導電性の被覆18bは、絶縁性基板16の孔部21の拡開傾斜面26の中程27にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成する。
このように、孔部21の拡開傾斜面26は、半導電性の被覆18bにより覆われている。これにより、孔部21の開口縁が傾斜しない場合と比較して、放電電極17の先端に対向する開口縁の面積、つまり、拡開傾斜面26の面積が増加する。その結果、放電電極17の先端に対向する拡開傾斜面26を覆う半導電性の被覆18bの表面積も増加する。また、拡開傾斜面26上に接着される導電剤の存在量が増加する。
これにより、放電電極17の先端から放出された電子を受け取る面積が増加し、また、半導電性の被覆18bの発熱面積が増加することから、水分がより多くコロナ放電により分解され、活性種の発生量を増加することにより、活性種による浄化作用の向上をはかることができる。
接着剤は、導電剤粒子と、絶縁性基板16とを接着できればよい。接着剤としてガラス粉やコロイダルシリカ、シリケート化合物、チタネート化合物などを用いてもよい。ガラス粉は化学的に不活性で耐酸化性があり、好ましい。アルミナやジルコニア、チタニアの粉末あるいはフッ素樹脂粒子などを用いてもよい。接着剤の大きさは、形状を安定化させるために導電材粒子よりも大きいほうが好ましく、導電材の2〜100倍程度の大きさにすると良い。
導電剤粒子としては、酸化スズが酸化に対する安定性と入手の容易さの理由で好ましく、他にはZnO、PbO2,CdO,In2O3、Tl2O3、Ga2O3、Fe3O4などの酸化物導電材およびこれらの複合酸化物などが使用可能である。導電剤としての酸化スズ(SnO2)にSbなどをドープしたものを用いてもよい。
半導電性の被覆18bとして、導電剤としてのSnO2と、接着剤としてのガラスを用いる場合の構成割合は、1:13〜1:1、すなわち導電剤が7〜50%、ガラスが93〜50%が好ましく、強度面から接着剤としてのガラスは50%以上必要で、半導電性、すなわち表面抵抗率を106〜1010Ω/□とするためには、導電剤を20%以上いれることが望ましい。
導電材を接着するには、接着剤の溶剤を揮発させ、酸化重合を促進するために加熱処理を加えるとよい。例えば、最初に半導電インクを、絶縁性基板16の表面にスクリーン印刷によりスキージで半導電インクを塗布する。次に、インクを塗布した絶縁性基板16を加熱炉にいれて温度を上昇させる。このとき、一旦溶剤が揮発しやすい100℃前後の温度で一定時間保持するとよい。さらに、接着剤の種類に応じて、接着剤が硬化する温度まで加熱を行い、温度の保持を行う。例えば、接着剤としてコロイダルシリカを用いる場合、硬化温度を180℃以上にすることが好ましく、400℃から700℃が好適である。
接着剤としてガラスを用いる場合には、ガラス粉末を適度な溶媒を加えて混合し、作成した半導電性インキを絶縁性基板16に印刷し、ガラスが溶融する温度まで加熱して、ガラス中に導電剤が分散した状態を作る方法などが挙げられる。アルカリ成分を含むガラス粉の場合は、600℃から800℃程度にすることが好ましい。アルカリを含まないガラス粉の場合は、850℃から950℃程度にすることが好ましい。これらの温度を10分以上保持することにより、接着剤の硬化が進み導電材を固定化することができる。なお、酸化スズとガラスを混合して作成したインキに、絶縁性の基板をディップして乾燥させる方法で、絶縁性基板の周囲に導電材と接着剤を付着させてもよい。
ここで、放電電極17にプラスの電圧を印加した場合について図11を用いて説明を行う。
図11のように、この放電電極17に、電源部20により放電電圧をプラス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にプラスの高電圧が印加されているため、空気中に存在する遊離電子が流れ込む。このとき、半導電性の被覆18bは、マイナス状態となっているので、その結果、電子が移動することで、半導電性の被覆18bから放電電極17へ電子が流れる。この状態がコロナ放電であって、このコロナ放電の力で後述のごとく、OHラジカル(活性種の一例)が発生する。ここで、3〜10KV電圧を印加することによって、十分な活性種量を発生させることができる。10kV以上でも活性種は発生するが、放電針の劣化などの副作用が生じるため10kV以下で使用することが望ましい。また、3kV未満では放電が不安定になる場合があるため、3kV以上で使用することが望ましい。
更に詳細に説明すると、半導電性の被覆18bに電流が流れることによって、電気抵抗によって半導電性の被覆18bが発熱するため、半導電性の被覆18b近傍の空気が暖められる。この暖められた空気には、周辺の暖められていない空気から相対湿度差によって水分が移動し、暖められた空気内の保有水分は増加する。特に、半導電性の被覆18bの孔部21の周辺には多くの電流が流れているため発熱量が多く、空気の保有水分量が増加している。水分があると、オゾンやO2−などの活性種に加えて、H2O2やOHラジカルなども増加する。孔部周辺の水分量の増加した領域において、コロナ放電を生じさせることによって、空気中の水分を有効に利用して、さらに活性種の量を増やすという効果を得ることができる。また、水分の捕集のためにゼオライトなどの吸着剤を利用していないため、吸着剤が劣化することがないという効果を得ることができる。
放電電極17にプラスの高電圧を印加してプラスコロナ放電を行うと、半導電性の被覆18bの電子は、放電電極17に強い力で引き寄せられ、表面から飛び出そうとする。表面から飛び出した電子が、半導電性の被覆18bの近くに有る空気中の酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、半導電性の被覆18bの周囲に存在する水分子と反応をすることで、OHラジカルなどの活性種を発生する。水分量を増加させた半導電部18の周辺でコロナ放電が起こすことにより、水分が電子と反応しやすくなるため、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
導電部23の外形を支持部材22の内部と略同一の四角形状とすれば、活性種発生ユニット8の組立工程において、導電部23の位置決めを容易にすることができる。
なお、本実施の形態において放電電極17は、プラスに印加したものであるが、この放電電極17に印加する電圧はプラスであっても、マイナスであっても良い。
次に、図12のように、放電電極17にマイナスの電圧を印加した場合について説明を行う。放電電極17に、電源部20により放電電圧をマイナス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にマイナスの高電圧が印加されているため、空気中に遊離電子が放出される。半導電性の被覆18bは、プラス側となる。その結果、電子が移動することで、半導電性の被覆18bから放電電極17へ電流が流れる。
図12の放電電極17から空気に放出された電子は、半導電性の被覆18bの強い電界に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動し、空気中の分子などと衝突する。このとき高速で移動している電子が、空気中の酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。水分があると、オゾンやO2−などの活性種に加えて、H2O2やOHラジカルなども増加する。酸素分子陰イオンが、半導電性の被覆18bの周囲に存在する水分子と反応をすることで、OHラジカルなどの活性種を発生する。水分量を増加させた半導電部18の周辺でコロナ放電が起こすことにより、水分が電子と反応しやすくなるため、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
さらに、このように、放電電極17と電源接続部19の間に、半導電性の被覆18b介して面方向に電子が流れるため、沿面距離が長くなり、絶縁性基板16の表面を電流が伝って流れるものである。
放電電極17の先端からは、イオン風と呼ばれる気流が発生する。この気流は、放電電極17の先端から絶縁性基板16の方向に向かって流れる。絶縁性基板16には孔部21が備えられているので、発生したOHラジカルなどの活性種は、イオン風に沿って孔部21を通りぬけ、放出されていく。このように、放電電極17の先端側近傍に対向配置した半導電部18を備え、前記半導電部18は、前記放電電極の先端側に対向する部分に配置した孔部を有していることにより、水分を含む空気がイオン風の力によって常に供給され、孔部21から抜けていくため、継続的に水分の分解がおこり、安定的に活性種の発生を起こすことができるものである。
図3に示した構成においては、この気流の流れによって、本体ケース6の吸気口4から室内空気が流れ込み、放電電極17の周囲を通って、絶縁性基板16の孔部21を介して排気口5から室内へ排出される排気気流が発生する。
この場合、図2で説明した送風手段7は設けなくてもよく、活性種発生装置3を小型化でき、設置場所を選ばず、卓上等にも設置できる。
ここで、図11、図12のようにして発生したOHラジカルなどの活性種は、この排気気流に乗って活性種発生装置3から室内へ排出される。このOHラジカルなどの活性種を含む空気を部屋内に供給することで、空気中の菌を不活化することができる。また、空気中の臭いを分解して取り除くことで、脱臭効果を発揮させることができる。また、活性種を含む空気を衣類やカーテン等にあてることによって、衣類やカーテンの脱臭・除菌などの効果が期待できる。
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1の図2および図3における半導電性の被覆18bの代わりに、吸着手段18aを用いており、実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。
活性種発生ユニット8は、絶縁性基板16と、この絶縁性基板16に対向して配置された放電電極17と、絶縁性基板16に接する吸着手段18aと、電源接続部19として対向電極19aと、電源部20とから形成している。
絶縁性基板16は、平板形状で略中央に開口である孔部21を有し、絶縁性基板16の端部が支持部材22を介して本体ケースの仕切板部9に固定されている。図2の部品配置では、送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気の一部は、放電電極17の周囲を通り、孔部21を介して、排気口5へ送風されるものである。図3の部品配置では、孔部21は、本体ケース6の排気口5に対向しており、送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気の一部は、放電電極17の周囲を通り、孔部21を介して、排気口5へ送風されるものである。絶縁性基板16は、セラミック基板であっても、フッ素などの樹脂基板であっても良い。セラミック基板として、シリカ、アルミ、マグネシウムのうちいずれか1つを含む基板であっても、アルミナ基板であっても良い。オゾンやラジカルで腐食されにくい無機系のものあるいはフッ素樹脂であれば良いためである。絶縁性基板16の表面抵抗率は、1010Ω/□以上であることが望ましい。
放電電極17は、棒形状で、絶縁性基板16の一方面、および孔部21に対向し、絶縁性基板16の風上側に配置されている。図3の配置では、棒形状の放電電極17は、送風手段7によって送風される空気の送風方向と平行に延びている。そして、放電電極17の先端は、絶縁性基板16から数ミリメートル〜数十ミリメートル程度の所定距離を隔てて、孔部21の外方で、且つ前記孔部の略中央延長線上に位置するものである。放電電極17の材質は、コロナ放電をさせるSUSやタングステンなどである。
対向電極19aは、SUSなどのステンレス、アルミ、金、銀、銅などで形成され、絶縁性基板16の周縁部に固定されている。なお、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。対向電極19aの表面抵抗率は、10−1Ω/□以下であることが望ましい。
電源部20は、本体ケース6の空間部11に位置し、放電電極17と、対向電極19aとに、電圧を印加するものである。
吸着手段18aは、絶縁性基板16の一方面側の表面、つまり、絶縁性基板16の風上側の面と、孔部21の内面とに設けられ、対向電極19aと接している。吸着手段18aの表面抵抗率は、106から1010Ω/□であることが望ましい。
図13、図14、図15、図16および図17を用いて説明する。図13は、絶縁性基板16および吸着手段18a部分の側断面図である。図14は、図3の部品配置における絶縁性基板16、吸着手段18a、放電電極17、対向電極19a、支持部材22を示す側断面図である。図15は、絶縁性基板16、放電電極17、支持部材22を示す斜視図である。図16は、絶縁性基板16、放電電極17、対向電極19a、支持部材22の構成を示す展開図である。図17は、絶縁性基板16を放電電極17側から見たときの平面図である。
図13に示すように、吸着手段18aは、絶縁性基板16の近傍の水分を吸着する吸着剤28と、この吸着剤28と絶縁性基板16を接着する接着剤29とから形成している。吸着剤28は、水を吸着する平均粒子径0.5マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の粒子で、表面に細孔30を有しているゼオライトである。
なお、吸着剤28としてゼオライトを例に挙げたが、吸着剤28は、ナノレベルの細孔30を有し、いわゆるKelvinの毛管凝縮現象により細孔内で水蒸気が凝縮し得るような細孔30を有する構造を有する多孔質構造体であれば、シリカ、ゼオライト、デシカイト、アロフィン、イモゴライトなどでも、これらのうちいずれか1つを含むものでも良い。また、粒子間の隙間を利用して水を吸着する、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、多孔質チタニアであっても良い。なお、吸着剤28は、細孔30に空気中の水蒸気を吸着させるものであるが、細孔30が接着剤29の粒子で埋まりにくい平均粒子径であれば、空気中の水蒸気を吸着することができる。なお、吸着剤28は接着剤29よりも平均粒子径が大きいものであっても良い。
接着剤29は、吸着剤28と、絶縁性基板16とを接着するコロイダルシリカである。なお、接着剤29は、ゼオライトなどの吸着剤28の平均粒子径より小さく、ゼオライトの表面に開いている細孔30よりも大きい平均粒子径であれば良い。また、細孔30を閉塞させなければ、接着剤29としてガラス粉や、シリケート化合物を用いてもよい。
ここで、図18のように、放電電極17にプラスの電圧を印加した場合について説明を行う。図18のように、この放電電極17に、電源部20により放電電圧をプラス約3〜10kVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にプラスの高電圧が印加されているため、空気中に存在する遊離電子が流れ込む。このとき、対向電極19aは、マイナス状態となっているので、その結果、電子が移動することで、対向電極19aから放電電極17へ電子が流れる。この状態がコロナ放電であって、このコロナ放電の力で後述のごとく、OHラジカル(活性種の一例)が発生する。
更に詳細に説明すると、セラミック製の絶縁性基板16と吸着剤28は、接着剤29により接着されている。吸着剤28の表面はナノレベルの細孔30を有し、空気中の水分は、この細孔30内で水蒸気が凝縮することにより、水分を吸着することが知られている(Kelvinの毛管凝縮現象)。これにより、ゼオライトなどの吸着手段18aに、空気中の水分が吸着され、電子が流れやすくなる。放電電極17にプラスの高電圧を印加してプラスコロナ放電を行うと、吸着剤28中の電子は、放電電極17に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動する。電子が、吸着剤28の近くに有る酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板16の表面に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルなどの活性種を発生する。吸着した水分の周辺でコロナ放電が起こることにより、水分が電子と反応しやすくなるため、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
本実施形態における特徴は、絶縁性基板16の孔部21の内面と、絶縁性基板16の一方面表面とに吸着手段18aを備え、放電電極17の先端が、孔部21の外方で、且つ孔部21の略中央延長線上に位置する点である。これにより、放電電極17と対向電極19a間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19a間をながれる電流は、放電電極17から絶縁性基板16に設けた放電電極17の周囲に位置する吸着手段18aを流れた後に、対向電極19aへと到達することになる。
つまり、放電電極17を中心として円周方向の周囲に吸着手段18aが位置するので、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散することになり、広い範囲で分散して放電するため、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。また、円筒棒状の放電電極17の放電部分は、先端部の断面形状が円状になっているため、放電電極17を中心として円周方向に広い範囲に分散して放電が発生する。その結果、先端が鋭利な針状の放電電極を用いる場合に比べて、局所的な放電集中が起こりにくく、放電電極17の劣化を抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。さらに、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散するので、OHラジカルなどの活性種の発生量が増加するものである。
なお、放電電極17の先端が、孔部21の外方で、且つ孔部21の略中央延長線上に位置することによる上述した作用・効果は、吸着手段18aの代わりに半導電性の被覆18bを用いた実施の形態1においても同様に発揮される。
なお、本実施の形態において放電電極17は、プラスに印加したものであるが、この放電電極17に印加する電圧はプラスであっても、マイナスであっても良い。
なお、本実施の形態では、絶縁性基板16の表面の一部に吸着手段18aを有しているが、絶縁性基板16の表面の全部や、側面に吸着手段18aを有していても良い。これにより、吸着手段18aに吸着された水を効率的に分解することができる。
また、放電電極17の先端が、孔部21の外方略中央に位置するので、放電電極17が曲がった場合にも、放電電極17の先端が吸着手段18aに直接接触しないので、安全性が向上する。
なお、放電電極17の先端が、孔部21の外方略中央に位置し、放電電極17の先端と吸着手段18aとの距離が所定の距離を有するものでも良い。この所定の距離を、スパークが発生しない距離とすることで、放電電極17が曲がった場合にも、スパークの発生を抑制できる。
さらに、放電電極17の先端が、孔部21の外方略中央に位置する効果を、図19を用いて説明する。放電電極17の端部を孔部21の中心軸に向かって延長した延長線と吸着手段18aの端部との距離をa、放電電極17の先端と吸着手段18aの端部と垂直距離をb、放電電極17の先端と吸着手段18aの端部との距離をLとする。
放電電極17が、装置使用時の振動や取り付け時の誤差によって変位したときの変位距離を△dとする。放電電極17の先端が孔部21の内方にある場合(距離b=0mm以下)、変位△dだけ放電電極が変位すると、放電電極17と吸着手段18aの端部の距離Lはa−△dだけ接近することになり、放電が均一に発生しなくなるため、活性種の発生量が低下する恐れがある。さらに変位△dが大きくなると、放電電極17と吸着手段18aが接触する恐れがあり、高電圧をかけたときにスパークが発生するなど安全上好ましくない。一方、放電電極17の先端が孔部21の外方にある場合(距離b=0mmより大きい)、放電電極17と吸着手段18aの端部の距離Lは{(a−△d)2+b2}1/2の関係式で表すことができ、放電電極が内方にある場合に比べて、距離Lの変化を少なくすることができる。この場合には、放電電極17と吸着手段は接触しないため、より安全な状態にすることができる。
例えば、距離a=5mmの孔部で放電電極が△d=1mm変位した場合を考える。放電電極17が内方にある場合(距離b=0mm)、距離Lは約1mm変化する。一方、放電電極17が外方(距離b=5mm)にある場合、距離Lは7.07−6.40=0.67mmの変化にとどまる。このように、放電電極を外方略中央に位置することにより、針が変形した際の極間Lの変化量を小さくすることができ、活性種発生量が変化しにくく、信頼性を高めることができる。
また、放電電極17は単一の材料で形成したものである。これにより、めっき等の処理をした場合に比べ、放電電極17の耐久性の向上が図れるものである。
また、放電電極17の先端の断面形状と、絶縁性基板16の孔部21の形状は、同種の形状である。具体的には、放電電極17の断面形状と、絶縁性基板16の孔部21の形状は、円形状である。
すなわち、放電電極17の先端の周囲と、絶縁性基板16の孔部21との内面との距離が、均一になる。これにより、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散することになり、放電電極17の放電部分も、同様に放電電極17の広い範囲から分散して放電するため、放電電極17での劣化を抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。
また、孔部21の内面の吸着手段18aの厚み寸法は、絶縁性基板16の一方面表面の吸着手段18aの厚み寸法より大きいものである。これにより、絶縁性基板16の一方面表面の吸着手段18aより、孔部21の内面の吸着手段18aに吸着する水分量が多く、孔部21の内面の吸着手段18aは、絶縁性基板16の一方面表面の吸着手段18aより、電流が流れ易いものである。
さて、コロナ放電によって放電電極17と対向電極19a間にながれる電流は、放電電極17から導電体である対向電極19aへの最短経路に流れ易いものである。ところが、孔部21の内面の吸着手段18aは、放電電極17の先端との距離が、絶縁性基板16の一方面表面の吸着手段18aより遠いものであるが、吸着している水分量が多いため絶縁性基板16の一方面表面より電流が流れ易いものである。つまり、コロナ放電によって放電電極17と対向電極19a間にながれる電流は、最短経路の絶縁性基板16の一方面表面の吸着手段18aだけに流れるものではなく、最短経路ではない孔部21の内面の吸着手段18aにも流れ易くなると考えられる。つまり、吸着手段18a全体の広い範囲に電流が分散し易くなるので、OHラジカルの発生量が増加するものである。
また、放電電極17の先端と対向電極19aとの距離は、放電電極17の先端と吸着手段18aとの距離より長いものである。具体的には、放電電極17と対向電極19a間をながれる電流は、例えば放電電極17から絶縁性基板16の孔部21の内面を覆う吸着手段18aを流れた後に、その内面を経由し、続いて絶縁性基板16の一方面表面を流れ、その後ようやく対向電極19aへと到達することになり、つまり沿面距離が長いので、その結果として火花放電が起こらず、安全性の向上が図れるものである。
また、対向電極19aは、絶縁性基板16における一方面の裏側に位置する他方面、つまり、風下側面、又は絶縁性基板16における一方面と他方面との間の外周面に接して設けられているものであっても良い。これにより、放電電極17から流れる電子が、絶縁性基板16の表面を伝って流れる際に、電子の移動する距離である、いわゆる沿面距離が伸びることで、火花放電を起こりにくくなる。
なお、これに限られること無く、対向電極19aを絶縁性基板16の表面に設ける場合には、十分な沿面距離を確保した状態で配置することが必要となる。
次に、図20のように、放電電極17にマイナスの電圧を印加した場合について説明を行う。放電電極17に、電源により放電電圧をマイナス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にマイナスの高電圧が印加されているため、空気中に遊離電子が放出される。対向電極19aに接した絶縁性基板16は、プラス側となる。その結果、電子が移動することで、対向電極19aから放電電極17へ電流が流れる。
図20の放電電極17から空気に放出された電子は、対向電極19aの強い電界に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動し、空気中の分子などと衝突する。このとき高速で移動している電子が、空気中の酸素分子と衝突するすると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板の表面に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルが発生する。
上記のようなマイナスに印加された放電電極17からの放電であるいわゆるマイナスコロナ放電を行うことにより、吸着手段18a周辺の水分が電子と反応することにより、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
さらに、このように、放電電極17と対向電極19a間に吸着手段18aを介して面方向に電子が流れるため、沿面距離が長くなり、絶縁性基板16の表面を電流が伝って流れるものである。
以上、図9、図11のようにして発生したOHラジカル(活性種)は、図2または図3の送風手段7からの送風により、活性種発生装置3の排気口5から室内へ排出される。このOHラジカルを含む空気を部屋1内に供給することで、空気中の菌を不活化することができる。また、空気中の臭いを分解して取り除くことで、脱臭効果を発揮させることができる。
また、本実施形態における特徴は、絶縁性基板16は孔部21を有し、この孔部21に放電電極17が対向し、孔部21の内面と絶縁性基板16の一方面表面とに近傍の水分を吸着する吸着手段18aを備え、この吸着手段18aの周縁部に導電部23を設け、この導電部23は対向電極19aと電気的に接続している点である。これにより、放電電極17と対向電極19a間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19a間を流れる電流は、まず、放電電極17から絶縁性基板16に設けた放電電極17の周囲に位置する吸着手段18aを流れ、次に、この吸着手段18aの周縁部に位置する導電部23を流れた後に、対向電極19aへと到達することになる。
つまり、放電電極17を中心として円周方向の周囲に吸着手段18aが位置するので、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散することになり、広い範囲で分散して放電するため、結果として活性種を広い範囲で安定して発生させることができるものである。また、円筒棒状の放電電極17の放電部分は、先端部の断面形状が円状になっているため、放電電極17を中心として円周方向に広い範囲に分散して放電が発生する。その結果、先端が鋭利な針状の放電電極を用いる場合に比べて、局所的な放電集中が起こりにくく、放電電極17の劣化を抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。また、吸着手段18aの周縁部に位置する導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18aの狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段18aの劣化も抑制することができるものである。
また、導電部23は、孔部21の中心から略等距離に位置するものである。具体的には、吸着手段18aの孔部21の外周から外方へ略等距離延びたリング形状であり、この周縁部に導電部23が位置するものである。つまり、放電電極17の先端から略等距離に導電部23が位置するものである。
これにより、導電部23は、孔部21の外周から略等距離に位置するので、放電電極17と対向電極19a間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19a間を流れる電流は、導電部23全周に均一に流れ易くなる。すなわち、吸着手段18aの広い範囲に電流が均一に分散し、更に、吸着手段18aの周縁部に位置する導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18aの狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段18aの劣化を抑制することができるものである。なお、導電部23が孔部21の外周から略等距離に位置することによる上述した作用・効果は、吸着手段18aの代わりに半導電性の被覆18bを用いた実施の形態1においても同様に発揮される。
また、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散するので、OHラジカルの発生量が増加するものである。
また、放電電極17の先端と対向電極19aとの距離は、放電電極17の先端と導電部23との距離より長いものである。具体的には、放電電極17と対向電極19a間を流れる電流は、例えば放電電極17から絶縁性基板16の孔部21の内面を覆う吸着手段18aを流れた後に、その内面を経由し、続いて絶縁性基板16の一方面表面を流れ、更に導電部23を介して、その後ようやく対向電極19aへと到達することになり、つまり、沿面距離が長いので、その結果として火花放電が起こらず、安全性の向上が図れるものである。
また、導電部23の表面抵抗率は、吸着手段18aの表面抵抗率より小さいものである。具体的には、吸着手段18aの表面抵抗率は、106から1010Ω/□であり、導電部23の表面抵抗率は、106以下であり、対向電極19aの表面抵抗率は、10−1以下であることが望ましい。
放電電極17と対向電極19a間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19a間を流れる電流は、まず、放電電極17から絶縁性基板16に設けた放電電極17の周囲に位置する吸着手段18aを流れ、次に、この吸着手段18aの周縁部に位置する導電部23を流れた後に、対向電極19aへと到達することになる。ここで、吸着手段18aの周縁部まで流れた電流は、導電部23の表面抵抗率が、吸着手段18aの表面抵抗率より小さいものであるので、導電部23を介して対向電極19aへ到達し易くなる。
すなわち、吸着手段18aの広い範囲に電流が分散し、更に、吸着手段18aの周縁部に位置する導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18aの狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段18aの劣化を抑制することができるものである。
また、導電部23は、図20に示すように絶縁被覆部31(図17では、図面の煩雑化をさけるために図示せず)で覆われていることを特徴とするものである。具体的には、導電部23が放電電極17と対向している面は、絶縁被覆部31により覆われているものである。これにより、放電電極17から導電部23へ電流が直接流れることを抑制できる。絶縁被覆部31は、ガラスやフッ素樹脂などで形成され、フッ素樹脂・塩ビ樹脂などの絶縁性テープを接着する方法、ガラスペースト・セラミック系接着剤を塗布して乾燥焼成する方法などを用いて被覆することができる。
なお、これらに限られること無く、絶縁性の素材であれば良い。なお、絶縁被覆部31は、内方へ延び、吸着手段の一部を覆っても良い。これにより、吸着手段18aと導電部23との接触面も絶縁被覆部31が覆うので、更に、放電電極17から導電部23へ電流が直接流れることを抑制できる。なお、放電電極17に印加する電圧はプラスであっても、マイナスであっても良い。