第1の実施形態の栽培容器10及びこれを使用する水耕栽培装置1について、図1から図3を参照して説明する。図1に示す水耕栽培装置1は、培養液Bを貯留する栽培槽2と、少なくとも1つの栽培容器10と、この栽培槽2に溜められた培養液Bの上に栽培容器10を保持する栽培パネル20とを備える。この水耕栽培装置1は、培養液Bの水質を管理し維持するために、培養液Bを循環するポンプ21と、栽培槽2から回収された培養液B中の不純物を取り除くフィルタ22と、培養液Bに養分を追加する供給装置23と、培養液BのpHなど水質を調整する調整装置24と、を備える。
また、水耕栽培装置1は、栽培容器10に植えられた植物Pに光を供給する照明装置3と、栽培容器10の周囲に一様な空気の流れ(気流)を発生させる送風機51と、ポンプ21なども含めたこれら装置に接続された制御装置4とを備える。栽培パネル20は、複数の栽培容器10をそれぞれ決められた位置に保持するために、図3に示す装着孔201を有している。
栽培容器10は、図2および図3に示すように、基部11と支持部材12と植付部13と翼14とを備える。基部11は、培養液Bの液面よりも上に支持される。水耕栽培装置1の栽培槽2の上部に配置される栽培パネル20と基部11との間の摩擦係数が小さくなるように、基部11は、少なくとも栽培パネル20に接する範囲に例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂を取り付けたりコーティングしたりされるとよい。また、基部11と栽培パネル20との間に上記のポリテトラフルオロエチレン樹脂製のスリップリングを挿入する、あるいはベアリング、ボールキャスタなどを配してもよい。基部11の外形は、栽培容器10に植えられる植物Pが育った場合にその葉が広がる範囲とほぼ同じ大きさに、設定される。
支持部材12は、培養液Bによって成長する少なくとも1株の植物Pを保持する。ここで「1株」とは、1つの種子から成長した苗のみを意味するのではなく、複数の苗を1つに束ねたものも含む。支持部材12は、図2に示したように、培養液Bがしみこむスポンジ状の部材で形成されており、1株の植物Pを挟み込んで保持する。支持部材12は、しみ込んだ培養液Bによって雑菌が繁殖し難いように、抗菌性の材料を使用することが好ましい。支持部材12は、植物Pを挟み込みやすいように切れ込みの入ったものでもよいし、図2に示したように直方体のものを折り曲げてあるいは丸めて植物Pを保持してもよい。また、支持部材12は、1つの部材のみで構成されていなくてもよく、例えば、2つの部材で植物Pを挟んで保持してもよい。
植付部13は、基部11の中央部分に設けられ、支持部材12を固定する。植付部13は、図2及び図3に示すように基部11を鉛直方向に貫通した孔であり、支持部材12の一部が培養液Bに浸かるように、すなわち植物Pの根Rに培養液Bが供給されるように、支持部材12を固定していればよい。本実施形態の場合、栽培容器10は、植付部13から下方に延びた筒部15を有している。支持部材12は、植付部13から筒部15にわたって充填されており、筒部15の下端と共にその一部が培養液Bに浸かっていることで、必要な培養液Bを吸い上げ、植物Pの根Rに供給する。また、筒部15は、成長した植物Pの根Rや支持部材12が広がり過ぎないように束ねる。栽培容器10は、筒部15によって、培養液Bに浸かっている部分の形状を定形に保つことで、回転するときの妨げにならないようにしている。さらに、筒部15は、気流A1が植物Pの根Rによって乱されることを抑制する。
翼14は、基部11の周囲を一様に流れる流体を受けて、鉛直な回転軸を中心に基部11に回転力を与える。基部11に回転力が加わることで、栽培容器10は、植えつけられた植物Pとともにその場で回転する。本実施形態の場合、一様に流れる流体として、送風機51で作られた空気の流れである気流A1を利用する。したがって、翼14は、培養液Bの液面よりも上に配置される。また、水耕栽培装置1は、栽培槽2及び栽培パネル20で囲われた風洞5を培養液Bの上に有している。つまり、第1の実施形態における翼14は、栽培パネル20と培養液Bの液面との間に配置される。なお、翼14の下端が培養液Bに浸かっていてもよい。翼14の下端が培養液Bに浸かっていると、栽培容器10の回転速度を遅くすることができるとともに、栽培容器10が回転することで培養液Bを攪拌することができる。気流A1は、培養液Bの液面に沿って風洞5の中を水平方向に流れる。したがって、翼14は、この気流A1によって栽培容器10を回転させることに適した形状を有していればよい。
本実施形態の場合、栽培容器10は、図2及び図3に示すように、基部11の下面に固定されて鉛直方向に下方に延びた5つの翼14を備えている。各翼14の形状は、基部11の外周側から中心部に向かってなだらかに弧を描いた非対称翼である。翼14の前縁141となる部分が外周側に位置するように取り付けられ、気流A1に対して上流側に位置する翼14が揚力を発生することで、真上から見て反時計回り(左回り)に基部11すなわち栽培容器10全体を緩やかに回転させる。
なお、栽培容器10を回転させる方向は、反時計回りに限らず、時計回り(右回り)であってもよい。したがって、栽培容器10を時計回りに回転させる場合、本実施形態と反対向きに回転力を発生するように取り付ければよく、それに適した形状及び角度に翼14を作ればよい。翼14の数は、5つに限定されるものではなく、4つ以下または6つ以下であってもよい。個々の翼14の形状も、栽培容器10を一方向に回転させる駆動力を発生させることができれば、球面や三角柱でもよく、図2及び図3に示したものに限定されない。
第1の実施形態において翼14は、基部11から一続きに同じ部材で成形されている。翼14は、別部材で作られ、基部11に取り付けられていてもよい。また、翼14は、筒部15から離れており、この間を気流A1が通過する。したがって、下流側に位置する栽培容器10にも十分な流量の気流A1を提供できる。さらに、翼14の上端部は、栽培パネル20の装着孔201に遊嵌しており、装着孔201に対して栽培容器10を位置決めしている。翼14と装着孔201の内周面との摺動抵抗を軽減するために、翼14の前縁141にローラまたは転(ころ)などの転動体を設置してもよい。
以上のように構成された栽培容器10は、水耕栽培装置1の送風機51によって風洞5に流される気流A1を翼14で受けることで基部11に回転力を与える。これによって、栽培容器10全体がゆっくりと回転する。風洞5に気流A1を流すことで、気流A1の方向および流速を安定させることができ、栽培容器10の回転速度を制御しやすい。
また、照明装置3は、栽培槽2の上方に配置されており、栽培容器10に保持された植物Pの成長を促進させるために必要な光、例えば光合成をさせるために必要な波長の光を放射する。植物Pの成長過程に応じて、放射する光の波長を変えてもよい。栽培容器10が回転するので、照明装置3が各栽培容器10に対して真上に位置している必要はない。
制御装置4は、ポンプ21を駆動して栽培槽2中の培養液Bを循環させる。この制御装置4は、培養液Bの成分やpHをモニタリングしており、供給装置23から養分を、調整装置24からpHを調整するための薬剤を、それぞれ定期的にあるいは必要に応じて投入することで、培養液Bの状態を調質する。また、植物Pの成長に合わせて照明装置3の光量及び送風機51の流量を制御し、植物Pの葉Lの一枚一枚に光が均等にあたるようにする。
したがって、この水耕栽培装置1および栽培容器10を使用すると、植物Pが苗の状態で最初に保持された位置から均等に成長しやすく偏りが少ない。水耕栽培装置1の栽培パネル20と栽培容器10の基部11との間に生じる摺動抵抗が平均化されるため、栽培容器10の回転速度も安定する。その結果、植物Pが成長する間、光を均質に当て続けることができる。
第1の実施形態の栽培容器10及び水耕栽培装置1は、気流A1によって、栽培容器10が回転する場合を例に説明した。栽培容器10は、基部11の周囲を一様に流れる流体を受けて基部11に回転力を与える翼14を備えている。つまり流体として、栽培槽2の中を循環する培養液Bの流れによって回転することも可能である。その場合、少なくとも翼14の下端部は、培養液Bに液没した状態に配置される。
なお、水耕栽培は、培養液Bで植物Pを育てるため、除草や害虫駆除のための農薬、および土壌に潜在的に存在しているような菌に触れることが無い。また、極力、人が触れないようにすることもできるため、衛生管理がしやすい。したがって、葉野菜のように収穫したものをそのまま洗って食用に供する野菜の栽培に適している。
以下に第2から第13の実施形態の栽培容器10および水耕栽培装置1を説明する。各実施形態において、第1の実施形態の栽培容器10および水耕栽培装置1と同じ機能を有する構成は、各実施形態の説明中及びその対応する図中に同じ符号を付して詳細な説明を省略し、必要に応じて第1の実施形態の対応する記載を参酌する。また、以下の各実施形態における栽培容器10またはそれを利用する水耕栽培装置1は、少なくとも第1の実施形態の場合と同様の効果を有するとともに、互いに共通する構成どうし、同様の効果を発揮する。
第2の実施形態の栽培容器10について、図4を参照して説明する。第2の実施形態の栽培容器10において、翼14は、基部11の下面外周部から下方に延びている点は同じであるが、第1の実施形態の栽培容器10の翼14よりも、円形の基部11の半径方向に翼14の幅が小さい。各翼14の幅が小さい代わりに、翼14の数を増やしている。幅が小さくなった翼14が振動しないように、各翼14の下端を基部11の回転中心に垂直な平面すなわち培養液Bの液面にほぼ平行に配置されるスタビライザ16で連結している。このスタビライザ16は、基部11の姿勢を安定させるためにも寄与する。このスタビライザ16は、筒部15に接合されていてもよい。スタビライザ16は、培養液Bに液没していてもよい。スタビライザ16が液面近傍に位置することで、送風機51の気流A1で培養液Bの液面が乱れるのを抑えることができる。
また、この栽培容器10は、第1の実施形態のように風洞5に沿って水平方向へ流れる空気の流れすなわち気流A1を受けて回転するとともに、栽培槽2の底に設置されて培養液中に空気を送り込む曝気用のノズルから供給される空気の流れすなわち気流A2によって回転する機能を有する。気流A2は、下方からスタビライザ16の内側を通って筒部15を中心とする放射状に翼14の間を通り抜ける。
さらに、第1の実施形態と同様に、少なくとも翼14の下端部を液没するように設置する場合、培養液Bの流れ(液流B1,B2)によっても回転力を得ることができる。その場合、空気の流れ(気流A1,A2)と同様に、水平方向の流れ(液流B1)のみならず栽培容器10に向かって上がってくる強制対流(液流B2)によっても栽培容器10を回転させることができる。このとき強制対流は、栽培槽2に循環される培養液Bのノズルをそれぞれの栽培容器10の下方に配置することで発生させてもよいし、培養液Bに空気を供給する曝気用のノズルから出た気泡が上昇することによって引き起こされてもよい。
第3の実施形態の栽培装置10について、図5を参照して説明する。第3の実施形態の栽培容器10は、図5に示すように、第2の実施形態の栽培容器10と同じ翼14及びスタビライザ16を備えている。この栽培容器10は、植付部13から下方に延びた筒部15の形状が第2の実施形態の場合と異なっている。第3の実施形態の栽培容器10において、筒部15は、翼14よりも長く、培養液Bに液没する位置まで下方へ延びており、半径方向に気流A1および培養液Bが通過する通気孔151を有している。通気孔151を設ける代わりに、網状の部材で筒部15を形成してもよい。
通気孔151を有していることによって、筒部15の内部で伸びた植物Pの根Rに気流A1が当たり、空気中の酸素が供給され易くなる。また、通気孔151を通って培養液Bが筒部15の内部に流れ込みやすくなるので、植物Pの根Rに培養液Bの養分がまんべんなくいきわたるようになる。栽培容器10が回転されて植物Pの葉Lに光が均質にあたることに加えて、根Rに培養液Bおよび酸素が十分に供給されるので、植物Pが成長する過程で偏りが生じ難くまた成長が促進される。
第4の実施形態の栽培容器10について、図6を参照して説明する。第4の実施形態の栽培容器10において、図6に示すように、翼14は、回転中心に平行に筒部15の外周に取り付けられている。基部11の下部は、栽培パネル20の装着孔201に回転可能に嵌合するガイド111を有している。図6において、ガイド111は、基部11の下部が全体的に突出することによって形成されている。
栽培容器10が装着孔201に対して位置決めされればよいので、ガイド111は、環状に突出しているだけでもよいし、複数個所が部分的に突出して構成されていてもよい。摺動抵抗を軽減するために転動体が配置されてもよい。また、翼14の上端が、基部11の下面に接続されていてもよい。その場合は、ガイド111を設けなくてもよい。ガイド111は、基部11に設ける代わりに、栽培パネル20側に設けてもよい。
この実施形態の栽培容器10は、第1の実施形態の場合と同様に、風洞5を培養液Bの液面に沿って流れる気流A1を翼14で受けて基部11すなわち栽培容器10自身を回転させる回転力を得る。各翼14が筒部15につながっているので、この場合の回転力は、気流A1に対して上流側に位置する翼14に発生する揚力ではなく、気流A1に直交する位置にある翼14の気流A1に対する流動抵抗の差によって主に発生する。
また、この栽培容器10は、翼14によって回転力を得るために、流体として培養液Bの水平方向の流れを受けてもよい。つまり、翼14の下端部を培養液Bに液没させた状態に設置する。
第5の実施形態の栽培容器10について、図7を参照して説明する。第5の実施形態の栽培容器10は、筒部15及び翼14の下端にフロート101を備えている。筒部15の延長線上に位置するフロート101の中央部分は、植物Pの根Rに培養液Bを供給するために開口されている。このフロート101は、基部11および植付部13で成長した植物Pの重量の少なくとも一部を支持する浮力を有している。浮力を得ることによって、水耕栽培装置1の栽培パネル20と栽培容器10の基部11との間に生じる摺動抵抗を軽減する。
浮力が大きすぎる、すなわち基部11が栽培パネル20から完全に浮いてしまうと、かえって不安定になるので、栽培容器10の重量を相殺する浮力よりもやや小さい浮力であることが好ましい。植物Pの成長に合わせてフロート101の浮力を大きくするために、栽培槽2に貯留される培養液Bの液面を上げてもよい。翼14および筒部15の下端が培養液Bに液没するように設けられている場合、フロート101は、培養液Bの液面に位置する翼14及び筒部15の中間部分に取り付ける。フロート101よりも下方すなわち培養液B中に延びる翼14を有している場合、第5の実施形態の栽培容器10も第4の実施形態で説明したように水平方向の培養液Bの流れ(液流B1)を受けて回転力を得てもよい。
第6の実施形態の栽培容器10および水耕栽培装置1について、図8を参照して説明する。第6の実施形態の水耕栽培装置1は、栽培パネル20の上面に沿って一様な空気の流れ(気流A1)を発生させる送風機51を備える。したがって、この水耕栽培装置1は、第1の実施形態のような風洞5を必要としない。また栽培容器10の翼14は、栽培パネル20よりも上、本実施形態では、基部11の上部に配置され、送風機51の気流A1を受けて基部11すなわち栽培容器10に回転力を与える。各翼14は、回転軸に平行に延びている。気流A1が拡散してしまわないように、栽培パネル20の上に翼14に風を供給するノズルや、翼14の上端とほぼ同じ高さの風洞に類するものを設けてもよい。
この実施形態の栽培容器10は、さらに植付部13から各翼14の上端になだらかにつながるように漏斗形状またはラッパ形状に拡開された栽培ステージ17を備える。支持部材12は、植付部13及び下方に延びた筒部15に固定されている。植物Pは栽培ステージ17の内側に成長するため、植物Pの葉Lが翼14の間を流れる気流A1を妨げない。翼14が安定した気流A1を受けるので、栽培容器10の回転速度が安定する。栽培ステージ17は、気流A1の一部が通り抜けるように、多数の通気孔を有していてもよいし、メッシュ状のもので構成されていてもよい。また、透明部材で栽培ステージ17を構成することによって、植物Pの葉Lの裏側にも十分な光を供給することができるようになる。
第7の実施形態の栽培容器10について、図9を参照して説明する。第7の実施形態の栽培容器10は、図9に示すように、翼14を栽培パネル20の上側、この実施形態では基部11の上に、配置している。各翼14は、回転軸と平行に延びており、支持部材12に育成する植物Pを囲う外周位置に配置されている。翼14の上端は、互いにリング142で連結されている。
この栽培容器10は、第6の実施形態の栽培容器10のように基部の周囲を流れる流体として栽培パネル20の上面に沿って流れる気流A1を翼14で受けて基部11すなわち栽培容器10そのものを回転させる回転力を得る。また、本実施形態の栽培容器10は、栽培パネル20に沿って水平方向に流れる気流A1だけでなく、図9に示すように、上方から吹き降ろす気流A2によっても回転力を得ることができる。栽培容器10に向かって吹き降ろされた気流A2は、リング142の内側を通って植付部13を中心とする放射状に翼14の間を通り抜ける。翼14及びリング142の影が植物Pにかからないように、翼14及びリング142を透明部材で作るとよい。
以上のように構成された栽培容器10を使用する水耕栽培装置1は、風洞を設けない分だけ植物Pの根Rが培養液Bに浸りやすい。また、自然に流れる風を利用することもできる。送風機51で気流A1や気流A2を人工的に発生させる場合、各栽培容器10が配置される位置に合わせて、ダクトを配設し、個別にノズルを設置してもよい。この場合、送風機51やダクトは、栽培槽2と別に配置することができるので、空調設備と共通してあるいはその一部として設けることも可能である。空調設備は、例えば、植物Pを育てるために空気の温度や湿度、並びに酸素と窒素あるいは二酸化炭素の濃度を調整するために設置される。
気流A1,A2を発生させるための送風機51やダクトを栽培槽2とは別に用意することができるので、水耕栽培装置1の設備費用を安価に抑えることができるとともに、栽培容器10の数が多い大規模な水耕栽培装置1から、栽培容器10の数が少ない小規模な水耕栽培装置1まで、同じ構成で対応することができる。
第8の実施形態の栽培容器10及び水耕栽培装置1について、図10及び図11を参照して説明する。第8の実施形態の栽培容器10において、翼14は、基部11の下部に配置され、基部11及び筒部の両方に接合されている。この栽培容器10の翼14は、基部11の半径方向にまっすぐに、かつ、筒部15の中心軸に対して仰角を有したいわゆるプロペラ状に配置されている。また、この栽培容器10は、各翼14の下端の外周部を連結するように環状の支持リング18を備えている。この支持リング18は、栽培パネル20の装着孔201の周囲に形成された補強凸部202に外嵌することで、栽培容器10を装着孔201に対して位置決めする。したがって、翼14は、培養液Bの液面よりも上のさらに栽培パネル20の上部に位置する。
この栽培容器10は、下方から吹き上げる気流A3を翼14で受けて回転する。したがって、第8の実施形態の水耕栽培装置1の場合、図10および図11に示すように、風洞5を流れる気流A1ではなく、装着孔201を通り下から吹き上げる気流A3によって栽培容器10を回転させる。つまり、この水耕栽培装置1の場合、風洞5ではなく空気室50を有していればよい。空気室50は、内部の圧力が外部の圧力よりも少し高くなる、すなわち装着孔201を排出口として空気を流すように、送風機51によって、空気が供給され続ける。装着孔201を通った気流A3は、翼14に当たると支持リング18と基部11の間から遠心方向へ排出される。気流A3が翼14及び基部11に下方から吹き付けられることによって、栽培容器10の重量が軽減されるので、栽培容器10が回転され易くなる。
栽培容器10を回転させるために寄与する流体の流れは、装着孔201を通る気流A3であり、空気室50の中と外の差圧および装着孔201の開口径で流速および流量が決定される。したがって、風洞5内に流す気流A1のように、向きや流速を正確に制御しなくてもよい。栽培容器10を回転させるための気流A3の制御が容易であるので、栽培容器10の回転速度も調整しやすくなる。
第9の実施形態の栽培容器10について、図12および図13を参照して説明する。第9の実施形態の栽培容器10は、第8の実施形態の栽培容器10と同様に、下から吹き上げるように栽培パネル20の装着孔201を通る気流A3を受けて基部11すなわち栽培容器10に回転力を与える。この栽培容器10の翼14は、基部11と栽培パネル20の間に配置され、筒部15から放射状に延びており、栽培容器10が回転する方向に対して反対側に気流A3を排出するようになだらかな弧を描いている。
翼14は、筒部15に接続された主翼14Aとこれら主翼14Aの間に配置される副翼14Bとで構成されている。主翼14A及び副翼14Bのそれぞれ下端は、栽培パネル20に沿う支持リング18によって互いに接続されている。支持リング18として摺動抵抗の小さいポリテトラフルオロエチレン樹脂を採用してもよい。また、スリップリングやベアリングを設置してもよい。筒部15寄りの主翼14Aの下部は、装着孔201の内側に延びている。装着孔201の内側に延びた主翼14Aの外周側の縁が装着孔201の内周面に当たることによって、栽培容器10は、装着孔201に対して位置決めされている。栽培容器10が栽培パネル20に対して滑らかに回転するように、主翼14Aの縁を装着孔201に遊嵌する円筒形状のスリーブで囲ってもよい。第8の実施形態の栽培容器10のように支持リング18によって位置決めされていてもよい。
以上のように構成された第9の実施形態の栽培容器10は、装着孔201を通る気流A3が図13に示すように遠心方向へ排出することによって、回転する。第8の実施形態の場合と同様に、吐出口となる装着孔201から排出される空気の流れ(気流A3)によって栽培容器10の重量が軽減されるので、栽培容器10が回転され易くなる。また、気流A1の向きや流量を制御しなければならない風洞5に比べて、空気室50の方が制御しやすいため、栽培容器10の回転速度を安定させ易い。
また、第8及び第9の実施形態の栽培容器10を採用する水耕栽培装置1は、風洞5ではなく空気室50を有していればよく、この空気室50に空気を供給する装置は、気流の向きは流量などを制御する必要が無いので、送風機51でなくてもよい。つまり、栽培槽2に貯留されている培養液Bに空気を送り込むために用意される曝気装置によって供給された空気でもよい。装置を兼用することができるので、設備投資費が軽減されるとともに水耕栽培装置1としてのシステム全体も簡略になる。
第10の実施形態の栽培容器10および水耕栽培装置1について、図14を参照して説明する。本実施形態の栽培容器10は、培養液Bの液面よりも上でありさらに栽培パネル20よりも上に翼14を配置しており、図14に示すように基部11の外周よりも外側に延びている。各翼14は、回転中心軸に対して仰角を有している。栽培パネル20は、基部11がガイド111によって位置決めされている装着孔201とは別に、基部11の周囲に噴気孔203を有している。この噴気孔203は、栽培槽2の培養液Bの上に形成される空気室50を栽培容器10の基部11が配置された側へ連通させる。空気室50は、第8及び第9の実施形態の水耕栽培装置1と同様に、送風機51によって供給された空気によって外部よりも加圧された状態になる。装着孔201が栽培容器10の基部11で塞がれているので、空気室50の空気は、噴気孔203から排出されることで気流A3を発生する。
栽培容器10は、噴気孔203から排出されるこの気流A3を翼14で受けて回転される。なお、噴気孔203から排出される気流A3も送風機51によって供給された空気によって生じるものであるので、この実施形態の翼14は、送風機51によって発生する空気の流れを受けて基部11に回転力を与えているといえる。
本実施形態の翼14は、栽培容器10の回転中心から最も離れた基部11の外周に配置されている。したがって、この実施形態の翼14は、より大きい回転力(トルク)を基部11に与えることができる。また、噴気孔203を複数個所に設けることによって、複数の翼14に同時に回転力を発生させることができる。噴気孔203から排出される気流A3は、下方から吹き上げるように翼14に作用するため、栽培容器10の重量が軽減され、基部11と栽培パネル20との間の摺動抵抗が軽減される。さらに、装着孔201を介して基部11が受ける空気室50の内圧が加わるため、栽培容器10の摺動抵抗がさらに軽減される。
また、図14に示したものよりも装着孔201を小さくして基部11と栽培パネル20との対向面積を大きくし、装着孔201から排出される空気をこの基部11と栽培パネル20の間を通して均質に排出するようにしてもよい。これによって、基部11と栽培パネル20の間に空気の層いわゆる「エアクッション」を形成し、栽培パネル20から基部11を浮上させることで、栽培容器10の摺動抵抗をほとんどなくすことができる。
第11の実施形態の栽培容器10について、図15を参照して説明する。第15の実施形態の栽培容器10は、複数の支持部材12を固定する植付部13を有している。本実施形態において、植付部13は、図15に示すように4つの支持部材12を固定する。各支持部材12には、植物Pの苗が1つずつ、または1株ずつ保持されている。植付部13は、それぞれの支持部材12に対応する下部に筒部15を有している。これらの4つの筒部15は、個別に設けられる代わりに、全ての支持部材12から延びる植物Pの根Rを囲う1つの筒部15であってもよい。
本実施形態において、栽培容器10の翼14の配置及び構造、並びに水耕栽培装置1の構成や栽培容器10の基部11の周囲の流体の流れは、第10の実施形態の場合と同じである。複数の支持部材12を固定する植付部13は、第10及び第11の実施形態の栽培容器10にのみ適用されるものではなく、第1から第9の実施形態の栽培容器10にも適用することができる。
以上のように構成された、第11の実施形態の栽培容器10は、個別に筒部15が設けられているので、栽培容器10から植物Pを収穫する際に植物Pの根Rが互いに絡まっていないので、支持部材12ごとに植物Pを分けやすい。
第12の実施形態の水耕栽培装置1について、図16を参照して説明する。水耕栽培装置1は、栽培容器10をマトリックス状に配列する栽培パネル20を複数有している。本実施形態の水耕栽培装置1は、栽培容器10を5行10列に配置する栽培パネル20を4つ有しているが、これに限定されるものではない。各栽培パネル20が支持する栽培容器10の数及び配置は、成長した植物Pを収穫する場合に最小単位として取り扱いやすい数量及び配列であることが好ましい。
1つの栽培パネル20の栽培容器10によって育成される植物Pを同時に取り扱うこと、つまりそれらの植物Pが同じ成長段階であることを考慮し、照明装置3及び送風機51は、各栽培パネル20に対応して設けられる。送風機51によって発生される空気の流れは、分配管52によって風洞5内へ均質に流される。なお、風洞5の内部で栽培容器10の翼14に当たった気流A1の方向を安定させるために、風洞5の内部に気流A1に沿う仕切板を設置してもよい。風洞5は、分配管52が接続された側と反対側の端部に排気口53を有している。排気口53から排出される空気は、そのまま大気へ開放してもよいし、回収してもよい。また、風洞5内の気流A1の流速を安定させるために、風洞5内の空気を吸い出すブロワを排気口53に取り付けてもよい。
栽培槽2に貯留されている培養液Bは、ポンプ21で循環される。回収した培養液B中の不純物などを除去するために、フィルタ22が配置されている。培養液Bは、必要な養分が供給装置23から追加され、調整装置24によってpHなどを整えられたのち、栽培槽2へ戻される。ポンプ21、フィルタ22、供給装置23、調整装置24、照明装置、送風機51は、制御装置4に接続され、植物Pの成長段階に応じて、制御される。
この水耕栽培装置1に採用される栽培容器10は、第1から第5の実施形態の栽培容器10であってもよい。また、第8及び第9の実施形態の栽培容器10を採用する場合は、排気口53を塞ぎ、栽培容器10が設置される装着孔201に気流A3を発生させる。第10及び第11の実施形態の栽培容器10を採用する場合は、排気口53を塞ぐとともに、栽培パネル20の装着孔201の周囲に噴気孔203を設ける。さらに、第6及び第7の実施形態の栽培容器10を採用する場合は、送風機51の分配管52を、栽培容器の上方に配置されるダクトに接続し、ノズルで栽培パネル20に沿って気流A1を発生させる、あるいはノズルで栽培容器10に向かって吹き降ろす気流A2を発生させる。
以上のように構成された第12の実施形態の水耕栽培装置1において、栽培パネル20を一単位として栽培容器10を栽培槽2から引き揚げ、栽培容器10に育った植物Pが収穫される。この水耕栽培装置1は、成長段階が同じ植物Pを纏めて収穫することで、生産管理が行いやすい。
本発明に係る第13の実施形態の栽培容器10について、図17を参照して説明する。この栽培容器10は、基部11の周囲を一様に流れる流体として、液体である培養液Bを採用する。培養液Bが栽培槽2の中を一様に流れるように、ポンプ21で培養液Bが循環される。この実施形態では、栽培槽2は、培養液Bを一様に流すために仕切板27を配置している。栽培パネル20は、仕切板27に架け渡されている。
図17に示す栽培容器10は、第1の実施形態の栽培容器10とほぼ同じ構造を有している。第13の実施形態の栽培容器10の場合、培養液Bの液面が基部11に近いので、その分だけ筒部15が第1の実施形態の栽培容器10よりも短い。植物Pの根Rを束ねるために、筒部15は、第1の実施形態の栽培容器10と同じ長さであってもよい。
基部11の周囲を一様に流れる流体として培養液Bを採用する栽培容器10は、第2から第5の実施形態の栽培容器であってもよい。図17に示したように栽培容器10の翼14を培養液Bに液没させて使用すればよい。また、培養液Bの液面と栽培パネル20の間に空気室50を残し、外部よりも内部の圧力が高くなるように送風機51で空気を送り込む。これによって、栽培容器10が設置されている装着孔201を通して栽培容器10の基部11に下から圧力がかかるので、栽培容器10の重量が軽減され、栽培容器10が回転しやすくなる。
本発明のいくつかの実施形態を説明した。これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上記実施形態の他の技術的特徴を以下に付記する。
[1] 培養液の液面よりも上に支持される基部と、前記培養液によって成長する少なくとも1株の植物を保持する支持部材と、前記基部の中央部分に設けられて前記植物の根が前記培養液に浸かるように前記支持部材を固定する植付部と、前記基部の周囲を一様に流れる流体を受けて鉛直な回転軸を中心に前記基部に(一定の)回転力を与える翼と、を備える栽培容器。
[2] 前記翼は、前記培養液の液面よりも上に配置される[1]に記載された栽培容器。
[3] 前記植付部から下方に延びて前記植物の根を束ねる筒部を有する[1]に記載された栽培容器。
[4] 前記翼は、前記基部と前記培養液の液面との間で前記基部及び前記筒部の少なくとも一方に固定され、前記基部と前記培養液の液面との間を流れる気流を受けて前記基部に回転力を与える[3]に記載された栽培容器。
[5] 前記翼は、前記植物よりも外周の前記基部に配置され、少なくとも水平方向の空気の流れを受けて前記基部に回転力を与える[1]から[3]のいずれか1つに記載された栽培容器。
[6] 前記翼は、前記植物よりも外周の前記基部に配置され、少なくとも吹き降ろす空気の流れを受けて前記基部に回転力を与える[1]から[3]のいずれか1つに記載された栽培容器。
[7] 前記翼は、前記培養液中に供給された空気で生じる気流を受けて前記基部に回転力を与える[1]から[3]のいずれか1つに記載された培養容器。
[8] 前記翼は、前記培養液に液没する少なくとも一部を有する[4]に記載された栽培容器。
[9] 前記翼は、少なくとも一部が前記培養液に液没する位置に配置され、水平方向の前記培養液の流れを受けて前記基部に回転力を与える[1]から[3]のいずれか1つに記載された栽培容器。
[10] 前記翼は、少なくとも一部が前記培養液に液没する位置に配置され、強制対流される前記培養液の流れを受けて前記基部に回転力を与える[1]から[3]のいずれか1つに記載された栽培容器。
[11] 前記基部および前記植物の重量の少なくとも一部を支持する浮力を有するフロートをさらに備える[1]から[10]のいずれか1つに記載された栽培容器。
[12] 前記筒部は、円筒面を貫通する複数の通気孔を有する[3]に記載された栽培容器。
[13] 培養液が貯留されている栽培槽と、少なくとも1つの栽培容器と、前記培養液の上に前記栽培容器を支持する栽培パネルと、を備える水耕栽培装置であって;前記栽培容器は、前記栽培パネルによって前記培養液の液面よりも上に支持される基部と、前記培養液によって成長する少なくとも1株の植物を保持する支持部材と、前記基部の中央部分に設けられて前記植物の根が前記培養液に浸かるように前記支持部材を固定する植付部と、前記基部の周囲を一様に流れる流体を受けて鉛直な回転軸を中心に前記基部に回転力を与える翼と、を備え;前記栽培パネルは、少なくとも前記植付部に対応する範囲が開口した装着孔を有する水耕栽培装置。
[14] 前記栽培槽及び前記栽培パネルで囲われて前記培養液の上に形成される風洞と、前記風洞に一様な空気の流れを発生させる送風機と、をさらに備え;前記栽培容器は、前記植付部から前記栽培パネルの前記装着孔を通して下方に延びて前記植物を束ねる筒部を有し、前記栽培容器の前記翼は、前記栽培パネルと前記培養液の液面との間で前記基部および前記筒部の少なくとも一方に固定され、前記風洞を流れる気流を受けて前記基部に回転力を与える[13]に記載された水耕栽培装置。
[15] 前記栽培パネルの上面に沿って一様な空気の流れを発生させる送風機をさらに備え、前記栽培容器の前記翼は、前記栽培パネルよりも上に配置されて前記送風機によって発生する空気の流れを受けて前記基部に回転力を与える[13]に記載された水耕栽培装置。
[16] 前記栽培槽及び前記栽培パネルで囲われて前記培養液の上に形成される空気室と、前記空気室に空気を供給する送風機と、を備え;前記栽培容器の前記翼は、前記栽培パネルの前記装着孔を通る空気の流れを受けて前記基部に回転力を与える[13]に記載された水耕栽培装置。
[17] 前記栽培槽及び前記栽培パネルで囲われて前記培養液の上に形成される空気室と、前記空気室に空気を供給する送風機と、を備え;前記栽培パネルは、前記空気室を前記栽培容器の前記基部側へ連通させる噴気孔を前記基部の周囲に有し、前記栽培容器の前記翼は、前記基部の外周に配置され、前記噴気孔から噴き出す空気の流れを受けて前記基部に回転力を与える[13]に記載された水耕栽培装置。
[18] 前記翼は、前記培養液の中に配置され、前記培養液の流れを受けて前記基部に回転力を与える[13]に記載された水耕栽培装置。
[19] 前記栽培槽及び前記栽培パネルで囲われて前記培養液の上に形成される空気室と、前記空気室に空気を供給する送風機と、をさらに備え;前記栽培容器は、前記空気室の空気が前記栽培パネルの前記装着孔から前記基部と前記栽培パネルの間を通って排出されることによって、前記栽培パネルから浮上する[13]に記載された水耕栽培装置。