JP6041600B2 - 撹拌装置 - Google Patents

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Description

本発明は、オフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するときに用いる撹拌装置に関する。
オフセット印刷は、印刷版上に供給されたインキを、ゴムブランケットなどの中間転写体に転写した後、紙などの被印刷体に印刷することを特徴とした印刷方式である。そして、オフセット印刷は、高精細かつ鮮明な画像の印刷物を短時間で大量に印刷することができることから、商業印刷や新聞印刷などの分野で広く用いられる印刷方式の代表的なものとなっている。この印刷方式で使用されるオフセット印刷用インキ組成物には、主要な樹脂成分としてロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂などが広く使用されている。これら樹脂成分を構成する樹脂の分子量は、種類にもよるが、一般的に数万〜数十万であり、また、その軟化点も150℃程度のものから200℃以上のものまで様々である。そして、樹脂成分を構成する樹脂は、求められるオフセット印刷用インキ組成物の特性に応じて適宜使い分けられるのが一般的である。
オフセット印刷用インキ組成物は、基本的には鉱物油成分および/または植物油成分からなる油成分と樹脂成分と顔料とからなるが、これらを一度に混合して製造するものではない。通常は、まず、樹脂成分を油成分に溶解させて、樹脂ワニスと呼ばれる中間体の生成を介するのが一般的である。そして、樹脂ワニスに顔料や各種添加剤を配合して、最終的にオフセット印刷用インキ組成物が得られるのである。
ところで、オフセット印刷用インキ組成物の樹脂成分を構成する樹脂は、通常、樹脂メーカーにおいてバルク重合(塊状重合)によって合成され、ブロック状もしくはフレーク状に解砕された塊状態の固形樹脂としてインキメーカーに供給される。このような塊状態の固形樹脂は、油成分とそのまま混合しても溶解しない。そこで、固形樹脂を油成分に溶解させて樹脂ワニスを製造するとき、固形樹脂を油成分中に溶解させる工程(以下、「クッキング工程」ということもある)では、固形樹脂を油成分に投入した後、固形樹脂のおよそ軟化点以上に加熱して軟らかくしながら撹拌混合し、固形樹脂を油成分中に溶解させる。
クッキング工程は、固形樹脂の種類にもよるが、通常180〜250℃程度という高温下で行われる。また、高温下で撹拌混合する場合であっても、溶解性の低い高分子量の固形樹脂を、油成分中に完全に溶解させるためには、長時間にわたって撹拌混合する必要がある。
このように、樹脂ワニスを製造するときには、クッキング工程において、固形樹脂および油成分を高温下で長時間にわたって撹拌混合するので、多くの熱エネルギーを要する。しかしながら、高温下で長時間にわたって撹拌混合されて得られた樹脂ワニスは、常温(25℃程度)〜100℃程度の温度下で、貯蔵もしくは使用されるので、クッキング工程において投入された熱エネルギーの多くが放冷により大気中に拡散されてしまうことになる。したがって、その分の熱エネルギーは無駄にせざるを得ない。
さらに、固形樹脂を溶解する油成分が動植物油である場合には、200℃より高い温度でクッキング処理を行うと、ポリエステル樹脂の一種であるロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂から選ばれる固形樹脂と、動植物油(たとえば、グリセリンのトリ脂肪酸エステル)との間でエステル交換反応が起こり、固形樹脂の分子量が低下するという問題が発生する。そして、固形樹脂の分子量が低下すると、印刷時にインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などが発生し、さらに印刷適性が大幅に低下する。そのため、樹脂ワニスを製造するときのクッキング工程における、固形樹脂および油成分の撹拌混合時に、エステル交換反応の発生を抑制する必要がある。
エステル交換反応を抑制するには、固形樹脂を溶解する油成分として鉱物油を使用することや、撹拌混合時の温度を低下させることが効果的である。しかしながら、鉱物油の使用量を増加させることは、環境負荷の低減を目的として、オフセット印刷用インキ組成物の油成分を鉱物油から動植物油に置き換える動きとは逆行するものである。また、クッキング工程における撹拌混合時の温度を低下させるためには、軟化点の低い固形樹脂を使用すれば良いことになるが、軟化点の低い固形樹脂は、一般的に分子量が低い樹脂である。そのため、樹脂成分として軟化点の低い固形樹脂が用いられたオフセット印刷用インキ組成物は、印刷時におけるインキのミスチング増加や対面セットオフの発生などを避けることができず、印刷適性が大幅に低下する。
このような問題を解決するために、たとえば、特許文献1には、高温(200℃以上)下で鉱物油などの高沸点溶剤に固形樹脂を溶解した後に、低温(80〜180℃)下で動植物油に溶解する樹脂ワニスの製造方法が開示されている。特許文献1に開示される樹脂ワニスの製造方法によれば、高温下で固形樹脂を溶解する工程では、油成分として鉱物油が用いられており、動植物油が存在しないので、固形樹脂と油成分との間におけるエステル交換反応をある程度抑制することができる。また、特許文献1に開示される樹脂ワニスの製造方法では、高温下でのクッキング工程が長時間になるのを抑制することができるので、クッキング工程時の熱エネルギーロスを少なくすることができる。
また、一般的なオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、たとえば特許文献2に開示されているように、撹拌装置を用いて油成分中に樹脂を溶解させて樹脂ワニスを得るワニス化工程と、撹拌装置を用いて顔料と樹脂ワニスとを撹拌混合して顔料分散用混合物を得るプレミキシング工程と、3本ロールミルやビーズミルなどの分散装置を用いて顔料分散用混合物を分散処理して顔料分散物を得る分散工程と、ディスパーなどの撹拌装置を用いて顔料分散物と残余のインキ用材料(粘度調整用のワニスなど)と、を撹拌混合してオフセット印刷用インキ組成物を得る後添加工程とを含む。
特許文献2に開示のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法によれば、これら複数の工程を組み合わせることによって、顔料が微細に分散されたオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
特開2005−47950号公報 特開2007−169464号公報
しかしながら、特許文献1に開示される樹脂ワニスの製造方法では、高温下で固形樹脂を油成分中に溶解させる工程を含むので、熱エネルギーロスを充分に少なくすることが可能な製造方法であるとはいえない。また、特許文献2に開示の従来のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、顔料を微細に分散させるために、多くのエネルギーおよび手間を必要とし、また製造時間が長くなって生産性を低下させることから、改善すべき点がある。
また、特許文献1,2に開示される従来技術では、オフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造する際に、複数の設備が必要であり、1つの装置でオフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を得ることができないという問題がある。
また、オフセット印刷用インキ組成物の製造において、顔料としては、顔料の粒子同士が強固に凝集した、乾燥状態の顔料が用いられる。そのため、顔料が微細に分散されたオフセット印刷用インキ組成物を得るためには、オフセット印刷用インキ組成物の製造時に、顔料に、微細な一次粒子まで分散させることができる力を付与することと、一旦分散した顔料の粒子が再凝集することを防ぐことが必要である。
顔料を一次粒子まで分散させるためには、顔料を充分に湿潤させることが必要である。しかしながら、顔料を湿潤させる材料として、予め、油成分に樹脂を溶解して得られる樹脂ワニスを利用する従来のオフセット印刷用インキ組成物の製造方法では、顔料と樹脂ワニスとを撹拌混合したとき、樹脂ワニスによって顔料が充分に湿潤するまでに時間がかかる。
この理由としては、高粘度のペースト状のオフセット印刷用インキ組成物の材料であり、高粘度に仕上げられる樹脂ワニスが、表面が凸凹の顔料粒子の凝集体の内部に浸透しにくいためである。また、顔料粒子の凝集体の表面および内部に存在する空気が、高粘度の樹脂ワニスによって移動を妨げられて気泡になり、このようにして発生した気泡が顔料粒子の凝集体の表面および内部に存在することによって顔料に樹脂ワニスがさらに浸透しにくくなるためである。なお、この気泡によって、前記分散工程において顔料に付与された力が低減されるので、顔料に、微細な一次粒子まで分散させることができる力を付与することが困難となる。
一旦分散した顔料粒子が再凝集することを防ぐためには、顔料粒子の表面に、油成分に溶解した樹脂が吸着することが必要である。樹脂が吸着していない顔料粒子は、一旦分散されたとしても、分散状態が不安定であるため、再凝集しやすい。しかしながら、前述のようにして顔料粒子の凝集体の表面および内部に発生した気泡は、油成分に溶解した樹脂が顔料表面に吸着することを妨げる原因となる。
このように、樹脂ワニスの顔料粒子の凝集体内部への浸透、および樹脂の顔料粒子表面への吸着を阻害する気泡を顔料粒子の凝集体の表面から除去するためには、前記プレミキシング工程において、撹拌装置による撹拌時間を長くし、また、前記分散工程において、分散装置でより多くの力を顔料に付加して長時間の分散処理を行う必要があり、その結果、撹拌装置および分散装置を稼働させるためのエネルギーおよび手間が多く必要となるとともに、製造時間が長くなる。
従来の樹脂ワニスの製造時において油成分中に樹脂成分を溶解させるために、高温下で撹拌混合する必要があり、また、顔料を均一に分散させるために、撹拌時間を長くする必要があるのは、オフセット印刷用インキ組成物を製造するときに用いられる従来の撹拌装置の撹拌能力が不足しているためである。
従来の撹拌装置は、被撹拌物を収容するタンク内に、ディスクタービン羽根などの撹拌翼が設けられ、この撹拌翼が回転することによって被撹拌物にせん断力を付与して、被撹拌物の混練および分散を行うように構成されている。
樹脂ワニスや、その樹脂ワニスを含んだオフセット印刷用インキ組成物は、粘度が高い組成物であるので、上記のような従来の撹拌装置では、特に、タンク内において撹拌翼から離れた位置のタンク内周面近傍で、被撹拌物に対して付与されるせん断力が弱く、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができない。さらに、従来の撹拌装置では、タンク内周面近傍における被撹拌物に対する撹拌流の作用が弱いので、タンク内周面に被撹拌物が付着しやすくなり、この点でも被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができない。
したがって本発明の目的は、オフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するときに用いる撹拌装置であって、被撹拌物に対して充分な撹拌流を作用させながら、その被撹拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる撹拌装置であり、1つの装置でオフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を得ることが可能な撹拌装置を提供することである。
本発明は、顔料と、樹脂成分と、油成分とを主成分とするインキ用材料からなるオフセット印刷用インキ組成物、または該オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するために用いる撹拌装置であって、
底部と、底部に連なる円筒状の側壁部とによって形成され、前記インキ用材料の少なくとも一部である被撹拌物を収容する有底円筒状のタンク本体と、
前記側壁部の、前記底部に連なる側とは反対側の端部に着脱自在に設けられるタンク蓋体と、
前記底部および前記側壁部に外部から対向して設けられる加熱手段と、
前記タンク蓋体に挿通して設けられ、前記タンク本体の中心軸線まわりに、互いに独立して回転する第1および第2回転軸と、
前記第1回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に対して非接触状態で設けられる第1撹拌翼と、
前記第2回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に接触して設けられる第2撹拌翼と、
前記第1および第2回転軸を、互いに独立して回転駆動させる駆動手段であって、第2回転軸よりも第1回転軸を高速で回転駆動させる駆動手段と、を備え
前記第1撹拌翼は、前記第1回転軸に垂直に固定される円板状の基部と、前記基部から半径方向外方に連なるブレードと、を含み、
前記ブレードは、
前記基部から半径方向外方になるにつれて、基部の表面を含む仮想一平面に対して一方側に離反するように傾斜した第1ブレードと、
前記基部から半径方向外方になるにつれて、前記仮想一平面に対して他方側に離反するように傾斜した第2ブレードと、
前記基部から半径方向外方に連なり、前記仮想一平面に沿って延びる第3ブレードと、を含むことを特徴とする撹拌装置。
また本発明の撹拌装置において、前記第2回転軸は、円筒状に形成され、
前記第1回転軸は、前記第2回転軸に挿通し、前記第2回転軸の軸線方向一端部から前記底部に向けて延出していることを特徴とする。
また本発明の攪拌装置において、前記底部は、鉛直方向下方側に凸となるように湾曲している板状体であり、前記側壁部は、
前記底部に連なり、底部から遠ざかるにつれて前記中心軸線から遠ざかるように、前記中心軸線に対して傾斜する第1壁部と、
前記第1壁部に連なり、前記中心軸線に平行な第2壁部と、を含むことを特徴とする。
また本発明の撹拌装置は、前記第1回転軸または前記第2回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に対して非接触状態で設けられる第3撹拌翼であって、前記中心軸線の延びる方向に関して前記第1撹拌翼に対して離間して設けられる第3撹拌翼を、さらに備えることを特徴とする。
また本発明の撹拌装置において、前記駆動手段は、前記第1および第2回転軸を、互いに逆方向に回転駆動させることを特徴とする。
また本発明の撹拌装置は、前記タンク蓋体が装着された状態の前記タンク本体内を減圧し、被撹拌物から水分を脱水する減圧脱水手段を、さらに備えることを特徴とする。
また本発明の撹拌装置において、前記第1および第2ブレードは、回転方向上流側から回転方向下流側に向かって、前記基部の半径方向内方に傾斜した位置で屈曲して前記基部に連なっていることを特徴とする。
また本発明の撹拌装置において、前記第1、第2および第3ブレードの回転方向下流側に臨む縁辺部は、回転方向下流側に臨んで先細状に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、撹拌装置は、顔料と、樹脂成分と、油成分とを主成分とするインキ用材料からなるオフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するために用いる装置であり、タンク本体と、タンク蓋体と、加熱手段と、第1および第2回転軸と、第1および第2撹拌翼と、駆動手段とを備える。
タンク本体は、底部と、底部に連なる円筒状の側壁部とによって形成され、インキ用材料の少なくとも一部である被撹拌物を収容する。タンク蓋体は、側壁部の、底部に連なる側とは反対側の端部に着脱自在に設けられ、装着された状態でタンク本体の内部空間を密閉空間にする。加熱手段は、底部および側壁部に外部から対向して設けられ、タンク本体内に収容される被撹拌物を加熱する。第1および第2回転軸は、タンク蓋体に挿通して設けられ、タンク本体の中心軸線と同一直線上となる軸線まわりに、互いに独立して回転する同心2軸の回転軸である。第1撹拌翼は、第1回転軸に固定され、タンク本体内において底部および側壁部に対して非接触状態で設けられる。第2撹拌翼は、第2回転軸に固定され、タンク本体内において底部および側壁部に接触して設けられる。そして、駆動手段は、第2回転軸よりも第1回転軸を高速で回転駆動させる。
このように構成される本発明の撹拌装置では、タンク本体内に収容された被撹拌物に対して、加熱手段によって加熱しながら、駆動手段によって高速回転される第1回転軸に固定される第1撹拌翼で、せん断力を付与しながら撹拌流を作用させることができる。さらに、本発明の撹拌装置は、駆動手段によって回転される第2回転軸に固定され、タンク本体の底部および側壁部に接触して設けられる第2撹拌翼を有しているので、この第2撹拌翼によってタンク本体の内周面を摺擦し、タンク本体の内周面に被撹拌物が付着するのを抑制しながら被撹拌物に対して撹拌流を作用させることができる。これによって、撹拌装置は、被撹拌物に対して充分な撹拌流を作用させながら、その被撹拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。また、第1撹拌翼は、第1回転軸に垂直に固定される円板状の基部と、基部から半径方向外方に連なるブレードとを含む。これによって、タンク本体内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。また、第1撹拌翼のブレードは、第1ブレードと、第2ブレードと、第3ブレードとを含む。第1ブレードは、基部から半径方向外方になるにつれて基部の表面を含む仮想一平面(回転面)に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。第2ブレードは、基部から半径方向外方になるにつれて基部の回転面に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、第3ブレードは、基部から半径方向外方に連なり、基部の回転面に沿って延びるブレードである。これによって、タンク本体内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。
また本発明によれば、第2回転軸は、円筒状に形成される。第1回転軸は、その第2回転軸に挿通し、第2回転軸の軸線方向一端部からタンク本体の底部に向けて延出している。このようにして、同心2軸の第1および第2回転軸を構成することができる。
また本発明によれば、タンク本体の側壁部は、第1壁部と第2壁部とを含んで構成される。第1壁部は、底部に連なり、底部から遠ざかるにつれてタンク本体の中心軸線から遠ざかるように、前記中心軸線に対して傾斜する。第2壁部は、第1壁部に連なり、前記中心軸線に平行に延びて形成される。このような第1壁部と第2壁部とを含む側壁部を有するタンク本体は、底部と側壁部とで形成される内部空間が、中心軸線方向に関して底部に近づくにつれて先細状に形成されることになる。これによって、タンク本体の内部空間に収容される被撹拌物に対して、中心軸線方向に効率よく撹拌流を作用させることができる。
また本発明によれば、撹拌装置は、第3撹拌翼をさらに備える。この第3撹拌翼は、前記第1回転軸または前記第2回転軸に固定され、タンク本体内において底部および側壁部に対して非接触状態で設けられ、タンク本体の中心軸線方向に関して第1撹拌翼に対して離間して設けられる。これによって、タンク本体内に収容された被撹拌物に対して、第3撹拌翼でも、せん断力を付与しながら撹拌流を作用させることができるので、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
また本発明によれば、駆動手段は、第1回転軸および第2回転軸を、互いに逆方向に回転駆動させる。これによって、タンク本体内に収容された被撹拌物に対して、より大きな撹拌流を付与することができる。
また本発明によれば、撹拌装置は、減圧脱水手段をさらに備える。これによって、たとえば、被撹拌物が水分を含有するものである場合、減圧脱水手段により、タンク蓋体が装着されて密閉状態となったタンク本体内を減圧し、被撹拌物から水分を脱水することができる。
また本発明によれば、第1撹拌翼の第1および第2ブレードは、回転方向上流側から回転方向下流側に向かって、半径方向内方に傾斜した位置で屈曲して基部に連なっている。これによって、第1撹拌翼が回転されるときに、被撹拌物に対して撹拌流が作用する。そのため、被撹拌物は、タンク本体内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
また本発明によれば、第1撹拌翼の第1、第2および第3ブレードの回転方向下流側に臨む縁辺部は、回転方向下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、第1撹拌翼が回転されるときに、先細状に形成される各ブレードの縁辺部によって、被撹拌物に切り込みを入れることができる。そのため、タンク本体内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。
本発明の一実施形態である撹拌装置100の構成を示す図である。 撹拌装置100に備えられる第1撹拌翼10の構成を示す図である。あ 製造システム1の構成を示す図である。 製造システム2の構成を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態である撹拌装置100の構成を示す図である。撹拌装置100は、オフセット印刷用インキ組成物、またはオフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するために用いる装置である。
[オフセット印刷用インキ組成物]
まず、オフセット印刷用インキ組成物の構成成分について説明する。オフセット印刷用インキ組成物は、顔料と、樹脂成分と、油成分とを主成分とするインキ用材料からなる。顔料としては、無色または有色の、無機顔料または有機顔料を挙げることができる。具体的には、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、磁性酸化鉄、シリカ、カオリン顔料、ベントナイトなどの無機顔料、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料などの有機顔料、およびカーボンブラックなどが挙げられる。
樹脂成分としては、合成樹脂または天然樹脂を挙げることができ、たとえば、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ギルソナイト樹脂などの、オフセット印刷用インキ組成物の樹脂成分として常用される樹脂を挙げることができる。
また、樹脂成分は、ゲル化剤の適量(樹脂成分に対して15質量%以下程度)を使用して、樹脂を架橋させるようにしてもよい。このような場合に使用するゲル化剤としては、アルミニウムアルコラート類、アルミニウムキレート化合物などが挙げられ、好ましい具体例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、エチルアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートなどが例示できる。
油成分としては、樹脂成分を溶解することができるものであればよく、植物油由来のもの、鉱物油由来のものなど、オフセット印刷用インキ組成物の油成分として常用されるものを挙げることができ、また、これらを単独または複数組み合わせて使用することができる。
植物油由来の油成分としては、植物油そのもの、または植物油を原料とする脂肪酸エステルや重合油が挙げられる。これらは単独で使用することも可能であるし、複数を組み合わせて使用することもできる。
前記植物油としては、アマニ油、桐油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、パーム油など、乾性油、不乾性油を問わず使用することができるが、印刷後に印刷物を空気酸化によって乾燥させる場合には乾性油や半乾性油が好適に使用される。中でも、アマニ油、桐油、大豆油は、オフセット印刷用インキ組成物の油成分として好ましく使用され、これらは単独で使用することも可能であるし、複数を組み合わせて使用することもできる。
前記植物油を原料とする脂肪酸エステルとしては、乾性油または半乾性油のモノエステル化合物が挙げられる。すなわち、脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸など炭素数15〜20程度のアルキル主鎖を有する脂肪酸が例示できる。脂肪酸モノエステルを構成するアルコール由来アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜10程度のアルキル基が例示できる。中でも得られるオフセット印刷用インキ組成物の乾燥性の点から大豆油脂肪酸モノエステルが好ましい。これら脂肪酸モノエステルは、単独でまたは2種以上を併用して使用できる。
また、鉱物油由来の油成分としては、鉱物油そのもの、または石油系溶剤が挙げられる。中でも、オフセット印刷用インキ組成物の油成分として使用されている、水と相溶しない沸点160℃以上、好ましくは200℃以上の油成分が好適に使用できる。具体的には、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリットなどの鉱物油、n−パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤、α−オレフィン系などの石油系溶剤が例示でき、これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を併用して使用できるが、環境負荷低減の観点から非芳香族系溶剤を使用することが好ましい。非芳香族系溶剤の具体例としては、0号ソルベント、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号(以上、いずれも新日本石油株式会社製)などが挙げられる。
また、オフセット印刷用インキ組成物は、体質顔料、顔料分散剤、整面助剤、耐摩擦性向上剤、裏移り防止剤、酸化防止剤、非イオン系界面活性剤などが添加されてもよい。
[オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体]
オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体とは、オフセット印刷用インキ組成物を製造するための中間組成物であって、たとえば、樹脂成分と油成分とを主成分とする樹脂ワニス、体質顔料と樹脂成分と油成分とを主成分とする体質顔料ベースなどが例示できる。
[撹拌装置の構成について]
本実施形態の撹拌装置100は、タンク本体20と、タンク蓋体21と、第1回転軸26および第2回転軸27と、第1撹拌翼10および第2撹拌翼22と、加熱手段25と、駆動手段28と、減圧脱水手段30とを備える。また、撹拌装置100は、第3撹拌翼15をさらに備える。
タンク本体20は、有底円筒状に形成され、底部201と、底部201に連なる側壁部202とで形成される内部空間を有し、該内部空間にインキ用材料の少なくとも一部である被撹拌物を収容する。このタンク本体20は、ステンレス鋼などの金属材料によって構成されている。
底部201は、タンク本体20の中心軸線S方向一方側(鉛直方向下方側)に凸となるように湾曲して形成される板状体であり、タンク本体20の内部空間の一部である、大略的に球体の一部を成す空間部分を形成する。また、底部201の中央部には、タンク本体20の内部空間に収容される被撹拌物を外部に排出するためのタンク排出開口部23が設けられている。このタンク排出開口部23の近傍には、タンク本体20の内部空間に収容される被撹拌物の温度を測定するための温度センサ29が設けられている。底部201は、中心軸線S方向の長さH4が、たとえば287mm程度に設定され、中心軸線Sに対する垂直方向の長さ(周縁端部の内径)W2が、たとえば1150mm程度に設定される。なお、「H4」および「W2」について数値を示したが、これらの数値はあくまでも例示に過ぎない。
側壁部202は、第1壁部2021と第2壁部2022とを含む。第1壁部2021は、底部201の周縁端部に連なり、底部201から遠ざかるにつれて中心軸線Sから遠ざかるように、中心軸線Sに対して傾斜して設けられる筒状体である。第1壁部2021は、タンク本体20の内部空間の一部である、逆円錐台形状の空間部分を形成する。第1壁部2021は、中心軸線S方向の長さH3が、たとえば1303mm程度に設定され、中心軸線Sに対する傾斜角度θ3が、たとえば14°程度に設定される。なお、「H3」および「θ3」について数値を示したが、これらの数値はあくまでも例示に過ぎない。
第2壁部2022は、第1壁部2021の底部201と接続される側とは反対側の周縁端部に連なり、中心軸線Sに平行に形成される筒状体である。第2壁部2022は、タンク本体20の内部空間の一部である、円柱形状の空間部分を形成する。第2壁部2022は、中心軸線S方向の長さH2が、たとえば807mm程度に設定され、中心軸線Sに対する垂直方向の長さ(周縁端部の内径)W1が、たとえば1800mm程度に設定される。なお、「H2」および「W1」について数値を示したが、これらの数値はあくまでも例示に過ぎない。
タンク蓋体21は、側壁部202の、底部201に接続される側とは反対側の周縁端部、すなわち、第2壁部2022の、第1壁部2021に接続される側とは反対側の周縁端部に着脱自在に設けられ、装着された状態でタンク本体20の内部空間を密閉空間にする。このタンク蓋体21は、ステンレス鋼などの金属材料によって構成されている。本実施形態では、タンク蓋体21は、中心軸線S方向の長さH1が、たとえば369mm程度に設定される。なお、「H1」について数値を示したが、この数値はあくまでも例示に過ぎない。
また、タンク蓋体21には、タンク蓋体21が装着された状態で、外部からタンク本体20の内部空間に被撹拌物を供給するためのタンク供給開口部24が設けられている。さらに、タンク蓋体21には、タンク蓋体21が装着されて密閉状態のタンク本体20内の気相部分を減圧する後述の減圧脱水手段30と接続するための接続開口部31が設けられている。
加熱手段25は、タンク本体20の底部201および側壁部202のそれぞれの外周面に対向して設けられ、タンク本体20内に収容される被撹拌物を加熱する。この加熱手段25は、水などの流体が流体供給開口部251から流体排出開口部252に向けて流過することによって、タンク本体20内の温度を制御可能に構成されている。
第1回転軸26および第2回転軸27は、タンク蓋体21に挿通して設けられ、タンク本体20の中心軸線Sと同一直線上となる軸線まわりに、互いに独立して回転する同心2軸の回転軸である。本実施形態では、第2回転軸27は、円筒状に形成されている。そして、第1回転軸26は、第2回転軸27に挿通し、第2回転軸27の軸線方向一端部(底部201側の端部)からタンク本体20の底部201に向けて延出している。
また、第1回転軸26は、第1軸封261に挿通し、この第1軸封261によりシールされている。第2回転軸27は、第2軸封271に挿通し、この第2軸封271によりシールされている。
第1撹拌翼10は、第1回転軸26の軸線方向一端部(第2回転軸27の軸線方向一端部から延出している部分)に固定され、タンク本体20の内部空間において底部201および側壁部202に対して非接触状態で設けられる。第1撹拌翼10は、ステンレス鋼などの金属材料からなる部材である。この第1撹拌翼10の詳細については後述する。
第2撹拌翼22は、第2回転軸27に固定され、タンク本体20の内部空間において底部201および側壁部202に接触して設けられる板状体である。第2撹拌翼22は、ステンレス鋼などの金属材料からなる部材である。本実施形態では、第2撹拌翼22は、第2回転軸27から第2壁部2022まで延びる帯状の第1部分221と、第1部分221から第2壁部2022に沿って帯状に延びて、第2壁部2022に接触する第2部分222と、第2部分222から第1壁部2021に沿って帯状に延びて、第1壁部に接触する第3部分223と、第3部分から底部201に沿って帯状に延びて、底部201に接触する第4部分224とを含む。
第2撹拌翼22は、厚みが20〜40mm程度に設定され、幅長さが100〜200mm程度に設定される。なお、第2撹拌翼22の厚み、および幅長さについて数値範囲を示したが、これらの数値範囲はあくまでも例示に過ぎない。
また、本実施形態では、第2撹拌翼22の第4部分224は、タンク排出開口部23が設けられる底部201の中央部に対応し、底部201に接触しない、底部201に対して間隙を有して湾曲する湾曲部分224aを含む。第2撹拌翼22において底部201と接触する第4部分224に湾曲部分224aが形成されることによって、タンク本体20内に収容される被撹拌物をタンク排出開口部23から排出するときに、被撹拌物の流れをスムーズにすることができる。
第3撹拌翼15は、第1回転軸26または第2回転軸27に固定され(図1では、第3撹拌翼15が第1回転軸26に固定された例を図示している。)、タンク本体20の内部空間において底部201および側壁部202に対して非接触状態で設けられる。この第3撹拌翼15は、タンク本体20の中心軸線Sの延びる方向に関して、第1撹拌翼10に対して離間して設けられる。本実施形態では、第3撹拌翼15は、タンク本体20の中心軸線Sの延びる方向に関して、第1撹拌翼10よりもタンク蓋体21側の位置、具体的には、タンク本体20における第1壁部2021と第2壁部2022との接続部分近傍の位置に設けられる。
第3撹拌翼15は、ステンレス鋼などの金属材料からなる部材である。また、第3撹拌翼15は、詳細については後述される第1撹拌翼10と同様に、第1回転軸26または第2回転軸27に垂直に固定される基部と、基部から半径方向外方に連なる複数のブレードとを含んで構成される。このような第3撹拌翼15の形状については、第1撹拌翼10と同様である。
駆動手段28は、第1回転軸26および第2回転軸27を、互いに独立して回転駆動させ、第2回転軸27よりも第1回転軸26を高速で回転駆動させる。駆動手段28は、第1回転軸26を回転駆動させるための第1駆動部281と、第2回転軸27を回転駆動させるための第2駆動部282とを含む。第1駆動部281による第1回転軸26の回転速度は100〜1000rpm(周速度2.4m/s〜240m/s)に設定され、第2駆動部282による第2回転軸27の回転速度は5〜30rpm(周速度0.5m/s〜3.0m/s)に設定される。
また、第1回転軸26および第2回転軸27のそれぞれの回転方向は、同じであっても、異なっていてもよいが、回転方向が互いに逆方向に設定した方が、タンク本体20内に収容された被撹拌物に対して、より大きな撹拌流を付与することができる。
以上のように構成される本実施形態の撹拌装置100では、タンク本体20内に収容された被撹拌物に対して、加熱手段25によって加熱しながら、第1駆動部281によって高速回転される第1回転軸26に固定される第1撹拌翼10で、せん断力を付与しながら撹拌流を作用させることができる。さらに、撹拌装置100は、第2駆動部282によって回転される第2回転軸27に固定され、タンク本体20の底部201および側壁部202に接触して設けられる第2撹拌翼22を有しているので、この第2撹拌翼22によってタンク本体20の内周面を摺擦し、タンク本体20の内周面に被撹拌物が付着するのを抑制しながら被撹拌物に対して撹拌流を作用させることができる。またさらに、撹拌装置100は、第2回転軸27に固定され、タンク本体20の底部201および側壁部202に非接触状態の第3撹拌翼15を有しているので、この第3撹拌翼15によって、被撹拌物に対してせん断力を付与しながら撹拌流を作用させることができる。これによって、撹拌装置100は、被撹拌物に対して充分に撹拌流を作用させながら、その被撹拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
また本実施形態の撹拌装置100において、タンク本体20の側壁部202は、タンク本体20の内部空間の一部として逆円錐台形状の空間部分を形成する第1壁部2021を含む。このような側壁部202を有するタンク本体20は、底部201と側壁部202とで形成される内部空間が、中心軸線S方向に関して底部201に近づくにつれて先細状に形成されることになる。これによって、タンク本体20の内部空間に収容される被撹拌物に対して、中心軸線S方向に効率よく撹拌流を作用させることができる。
また本実施形態の撹拌装置100は、減圧脱水手段30をさらに備える。この減圧脱水手段30は、減圧装置からなる減圧脱水部と、セパレータおよびコンデンサからなる蒸留水回収部とを含む。減圧脱水手段30の減圧脱水部は、タンク蓋体21が装着されて密閉状態のタンク本体20内を減圧し、被撹拌物が水分を含有するものである場合、その被撹拌物から水分を脱水する。また、減圧脱水手段30の蒸留水回収部は、減圧脱水部によって脱水された水分をセパレータにより分離し、その分離された水分をコンデンサにより液化させて蒸留水として回収する。
次に、第1撹拌翼10について、詳細に説明する。以下で説明する第1撹拌翼10の構成は、第3撹拌翼15にも適用することができる。図2は、撹拌装置100に備えられる第1撹拌翼10の構成を示す図である。図2(a)は、第1撹拌翼10の展開図を示し、図2(b)は、第1撹拌翼10の平面図を示し、図2(c)は、第1撹拌翼10の側面図を示す。
第1撹拌翼10は、基部11と、第1ブレード12と、第2ブレード13と、第3ブレード14とを含んで構成される。また、第1撹拌翼10の中心軸線S方向に関する配設位置は、タンク本体20の底部201からの距離H5が、たとえば600mm程度となる高さ位置である。なお、「H5」について数値を示したが、この数値はあくまでも例示に過ぎない。
基部11は、タンク本体20の中心軸線Sと同一直線上にある回転軸線まわりに回転方向Aに回転駆動される第1回転軸26に、垂直に固定される板状の部分であり、平面視したときの形状が正六角形である。そして、第1撹拌翼10では、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、回転軸線に関して周方向に等間隔に、正六角形状の基部11の各辺から半径方向外方に連なるように形成されている。6枚の各ブレード12,13,14は、同じ形状および大きさに形成されており、本実施形態では、平面視したときの形状が台形である。
また、6枚の各ブレード12,13,14において、基部11から半径方向外方に延びる延在方向の長さL2は、正六角形状の基部11の各辺の長さL1に対して、150〜300%に設定されるのが好ましい。これによって、第1撹拌翼10における各ブレード12,13,14の強度を、充分に確保することができる。
2枚の第1ブレード12のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面(基部11の表面を含む仮想一平面)に対して一方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第1ブレード12同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
第1ブレード12における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ1は、30〜50°に設定されるのが好ましい。これによって、第1撹拌翼10が回転駆動されるときに、タンク本体20内の被撹拌物に対して撹拌流を作用させることができる。そのため、被撹拌物は、タンク本体20内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
また、第1ブレード12は、回転方向Aの上流側から下流側に向かって、半径方向内方に傾斜した位置で屈曲して基部11に連なっている。換言すると、第1ブレード12は、回転方向Aの上流側の第1上流側基端部12aが回転方向Aの下流側の第1下流側基端部12bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成された第1撹拌翼10を回転駆動させると、被撹拌物に対して撹拌流が作用する。そのため、被撹拌物は、タンク本体20内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
さらに、第1ブレード12は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部12cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、第1撹拌翼10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cによって、被撹拌物に切り込みが入れられる。これによって、タンク本体20内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。なお、先細状に形成される第1ブレード12の縁辺部12cの厚みは、縁辺部12c以外の厚みが3〜12mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
2枚の第2ブレード13のそれぞれは、基部11から半径方向外方になるにつれて基部11の回転面(基部11の表面を含む仮想一平面)に対して他方側に離反するように傾斜したブレードである。そして、各第2ブレード13同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。
第2ブレード13における基部11の回転面に対する傾斜の角度θ2は、30〜50°に設定されるのが好ましい。これによって、第1撹拌翼10が回転駆動されるときに、タンク本体20内の被撹拌物に撹拌流を作用させることができる。そのため、被撹拌物は、タンク本体20内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合されるので、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
また、第2ブレード13は、回転方向Aの上流側から下流側に向かって、半径方向内方に傾斜した位置で屈曲して基部11に連なっている。換言すると、第2ブレード13は、回転方向Aの上流側の第2上流側基端部13aが回転方向Aの下流側の第2下流側基端部13bよりも半径方向外側に離反した位置で屈曲して基部11に連なっている。このように構成された第1撹拌翼10を回転駆動させたときに、被撹拌物はタンク本体20内を撹拌流に沿って流動しながら撹拌混合される。そのため、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる。
さらに、第2ブレード13は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部13cが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、第1撹拌翼10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cによって、被撹拌物に切り込みが入れられる。そのため、タンク本体20内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。なお、先細状に形成される第2ブレード13の縁辺部13cの厚みは、縁辺部13c以外の厚みが3〜12mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
2枚の第3ブレード14のそれぞれは、基部11から半径方向外方に連なり、基部11の回転面(基部11の表面を含む仮想一平面)に沿って延びるブレードである。そして、各第3ブレード14同士は、回転軸線に関して対称に設けられている。そして、第3ブレード14は、回転方向Aの下流側に臨む縁辺部14aが、回転方向Aの下流側に臨んで先細状に形成されている。これによって、第1撹拌翼10が回転駆動されるときに、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aによって、被撹拌物に切り込みが入れられる。そのため、タンク本体20内を撹拌流に沿って流れる被撹拌物に、高いせん断力を付与することができる。なお、先細状に形成される第3ブレード14の縁辺部14aの厚みは、縁辺部14a以外の厚みが3〜12mm程度に設定されるのに対して、1mm程度に設定される。
以上のように、2枚の第1ブレード12と、2枚の第2ブレード13と、2枚の第3ブレード14との合計6枚のブレードが、基部11から半径方向外方に連なるように形成された第1撹拌翼10では、2枚の第3ブレード14の遊端部間の長さに対応する、最外周縁部の先端部における回転直径L4が、タンク本体20の内径に対して30〜80%に設定される。
なお、タンク本体20内で撹拌混合するときに用いられる第1撹拌翼10は、前述した第1撹拌翼10の形状に限定されるものではない。前述した第1撹拌翼10は、6枚のブレードが基部11から半径方向外方に連なるように形成されたものであるが、第1撹拌翼10のブレードの枚数としては、好ましくは3〜10枚、より好ましくは4〜8枚である。
[撹拌装置の使用例について]
以下に、撹拌装置100の使用例について、具体的に説明する。
<第1使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第1使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体である樹脂ワニスの製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第1使用例における樹脂ワニスの製造方法は、仕込み工程と、粉砕溶解工程とを含む。仕込み工程では、タンク本体20の内部空間に、被撹拌物として樹脂成分および油成分を仕込む。
仕込み工程においてタンク本体20内に投入される樹脂成分は、飛散やそれに伴う粉塵爆発が起こらないように、ブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂であり、その粒子径は10〜500mm程度である。そして、仕込み工程では、油成分の仕込み量が、固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%であることが好ましく、120〜150質量%であることが特に好ましい。これによって、好適な範囲内の粘度を有する樹脂ワニスを得ることができる。
また、仕込み工程において、タンク本体20内に固形樹脂および油成分を投入する手順は、特に限定されるものではなく、固形樹脂と油成分とを同時にタンク本体20内に投入してもよいし、油成分を投入した後に固形樹脂を投入するようにしてもよい。また、タンク本体20内に油成分を投入した後、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて撹拌下で固形樹脂をタンク本体20内に投入するようにしてもよい。
次に、仕込み工程の後工程である粉砕溶解工程では、到達温度が80〜200℃、好ましくは80〜140℃となるように所定の昇温速度でタンク本体20を加熱した状態で、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、特に第1撹拌翼10によって固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解させる。
本実施形態の撹拌装置100は、被撹拌物に対して充分に撹拌流を作用させながら、その被撹かい拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる装置であるので、タンク本体20内に収容される固形樹脂に充分なせん断力が付与されて、油成分中で固形樹脂を粉砕しながら撹拌混合することができる。そのため、固形樹脂の軟化点を超えて200℃よりも高い温度下で、固形樹脂および油成分を撹拌混合しなくても、油成分中に固形樹脂を溶解させることができる。具体的には、到達温度が80〜200℃となるように所定の昇温速度でタンク本体20を加熱した状態で、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させることによって、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解させることができる。
このように、200℃以下の温度下で、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解させることができるので、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化を抑制することができる。そのため、高い印刷適性を有するオフセット印刷用インキ組成物の原材料となる樹脂ワニスを得ることができる。また、200℃以下の温度下で固形樹脂を油成分中に溶解させることができるので、熱エネルギーロスを少なくすることができる。
<第1使用例における具体的製造例>
次に、撹拌装置100の第1使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体である樹脂ワニスの具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、樹脂ワニスについて、固形樹脂の油成分に対する溶解状態、粘度、ポリスチレン換算分子量、n−ヘキサントレランスの評価を行った。
〈固形樹脂の油成分に対する溶解状態〉
固形樹脂の油成分に対する溶解状態は、樹脂ワニスを目視観察することによって評価した。固形樹脂が油成分中に完全に溶解しているものを「○」とし、固形樹脂が完全には溶解しておらず、溶け残りが目視で確認されたものを「×」とした。
〈粘度の評価〉
樹脂ワニスの粘度の測定は、以下のようにして行った。すなわち、試料0.5ccを25℃に保温し、E型粘度計(TVE−20H、東機産業株式会社製)を用いて、回転数を適宜調整しながら測定した。
〈ポリスチレン換算分子量の評価〉
樹脂ワニスのポリスチレン換算分子量の測定は、以下のようにして行った。すなわち、樹脂ワニス0.05gをテトラヒドロフラン5mlに溶解して分析サンプルを調整し、GPC分析装置(Waters社製)を用いて測定した。そして、ピークが出始めたリテンションタイムからポリスチレン換算分子量を求めた。なお、GPC分析装置に搭載したカラムは、東ソー株式会社製のTSKgelG2500HXL、TSKgelGMHXL−LおよびTSKgelGMHXLを直列に接続して使用した。
〈n−ヘキサントレランスの評価〉
樹脂ワニスのn−ヘキサントレランスの評価は、以下のようにして行った。すなわち、樹脂ワニス5gを100mLビーカーに量り取り、25℃の温度条件下で、ガラス棒でかき混ぜながらn−ヘキサンを滴下した。n−ヘキサンは樹脂ワニスに対して貧溶媒であるので、滴下量の増加に伴って樹脂ワニス溶液は徐々に濁り始める。ビーカーの下に置いた新聞紙の文字が読めなくなる程度まで樹脂ワニス溶液が濁った時点を終点とし、終点に至るまでに要したn−ヘキサンの質量をn−ヘキサントレランス(単位:g/ワニス5g)とした。
なお、樹脂ワニスにおいて、n−ヘキサントレランスの測定値が低い値を示すほど、高い印刷適性を有するオフセット印刷用インキ組成物の原材料(製造中間体)となる。具体的には、n−ヘキサントレランスの測定値が低い値を示す樹脂ワニスを用いて作製されたオフセット印刷用インキ組成物は、印刷時にインキのミスチング発生が抑制されたものとなり、タック値が低い値を示すものとなる。
(製造例1)
図1に示す撹拌装置100を用いて樹脂ワニスを製造した。製造例1において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例1において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。このような撹拌装置100のタンク本体20内に、固形樹脂として軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂を43質量部、油成分として大豆油6質量部と日石AF7号ソルベント51質量部とを、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように仕込んだ。
次いで、到達温度が200℃となるように昇温速度8℃/minでタンク本体20の加熱を開始し、加熱開始と同時に、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ60%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が10m/sとなるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/sとなるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、タンク本体20内に収容された固形樹脂および油成分の混合物を撹拌混合した。
製造例1では、到達温度(200℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続し、褐色透明の樹脂ワニスA1を得た。
(製造例2)
到達温度が170℃となるように昇温速度8℃/minでタンク本体20を加熱したこと以外は、製造例1と同様にして、褐色透明の樹脂ワニスA2を得た。なお、製造例2では、到達温度(170℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(製造例3)
到達温度が140℃となるように昇温速度8℃/minでタンク本体20を加熱したこと以外は、製造例1と同様にして、褐色透明の樹脂ワニスA3を得た。なお、製造例3では、到達温度(140℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(製造例4)
到達温度が100℃となるように昇温速度8℃/minでタンク本体20を加熱したこと以外は、製造例1と同様にして、褐色透明の樹脂ワニスA4を得た。なお、製造例4では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(製造例5)
第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転直径L4が、タンク本体20の内径に対してそれぞれ35%に設定されていることに変更した以外は、製造例4と同様にして、褐色透明の樹脂ワニスA5を得た。なお、製造例5では、到達温度(100℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分材中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続した。
(参考例1)
参考例1では、撹拌装置100を用いずに樹脂ワニスを製造した。具体的には、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、固形樹脂として軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂を43質量部、油成分材として大豆油6質量部と日石AF7号ソルベント51質量部とを仕込んだ。仕込み量は、製造例1と同量とした。なお、タンク内には、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)を設置した。
次いで、到達温度が250℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が10m/sとなるように回転駆動させ、タンク内に収容された固形樹脂および油成分の混合物を撹拌混合した。なお、参考例1では、到達温度(250℃)に達する前の昇温途中で、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたが、そのまま60分間撹拌混合を継続し、褐色透明の樹脂ワニスB1を得た。
(参考例2)
到達温度が100℃となるように昇温速度8℃/minでタンクを加熱したこと以外は、参考例1と同様にして、固形樹脂および油成分の混合物を撹拌混合した。参考例2では、60分間撹拌混合しても、固形樹脂が油成分中に完全に溶解されなかった。
製造例1〜5および参考例1,2の樹脂ワニスにおける評価結果を表1に示す。なお、表1中の「−」は、評価を実施していないことを示す。
Figure 0006041600
表1に示すように、製造例1〜5の樹脂ワニスA1〜A5は、短い溶解時間で固形樹脂が油成分中に完全に溶解されたものであり、参考例1の樹脂ワニスB1よりも粘度の高いワニスである。このことから、製造例1〜5の樹脂ワニスA1〜A5は、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化が抑制されたものであることがわかる。これに対して、参考例1の樹脂ワニスB1は、250℃という高温下で作製されたものであるので、エステル交換反応による固形樹脂の低分子量化が発生している。そして、製造例1〜5の樹脂ワニスA1〜A5は、参考例1の樹脂ワニスB1よりも低いn−ヘキサントレランス値を示すワニスである。このことから、製造例1〜5の樹脂ワニスA1〜A5は、高い印刷適性を有するオフセット印刷用インキ組成物の原材料(製造中間体)となることがわかる。
<オフセット印刷用インキ組成物の製造>
第1使用例に基づいて製造された樹脂ワニスを使用した、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、ミスチング性、対面セットオフ性、機上安定性の評価を行った。
〈ミスチング性の評価〉
オフセット印刷用インキ組成物のミスチング性の評価は、DIGITAL INKOMETER(東洋精機株式会社製)を用いて、JIS K5701 4.2.2に準拠して行った。試料2.6ccを量り採り、35℃、1200rpmで3分間運転し、そのときのミスチング量を、バイブレーションロール下部に敷いた10cm×10cmの用紙上に飛散したインキ量として目視にて評価した。なお、ミスチング性の評価は、恒温室(温度:25℃、湿度:50%)にて行った。また、ミスチング性の評価基準は、以下のとおりである。
○:用紙上に飛散したインキによる汚れがほとんど確認されず、良好である。
△:用紙上に飛散したインキによる汚れ度合いが、所定の標準サンプルの汚れ度合いよりも少ない。
×:用紙上に飛散したインキによる汚れ度合いが、所定の標準サンプルの汚れ度合いと同等であり、ミスチング発生の抑制向上効果が見られない。
〈対面セットオフ性の評価〉
オフセット印刷用インキ組成物の対面セットオフ性の評価は、以下のようにして行った。まず、試料0.1ccをRI展色機(使用ローラ:4分割、株式会社明製作所製)を用いて用紙(オーロラコート、斥量73g、二葉紙業株式会社製)に展色した。次に、展色直後の各印刷物をセット試験機(AUTO INKSETTING TESTER、東洋精機株式会社製)にセットし、セット試験を2分間隔で行って、あて紙に対するインキ付着量を目視で確認した。なお、対面セットオフ性の評価は、恒温室(温度:25℃、湿度:50%)にて行った。また、対面セットオフ性の評価基準は、以下のとおりである。
○:2分間隔のセット試験において、試験開始から22分以内に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
△:2分間隔のセット試験において、試験開始から24分後または26分後に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
×:2分間隔のセット試験において、試験開始から28分後、30分後または32分後に、あて紙に対するインキ付着が解消される。
〈機上安定性の評価〉
オフセット印刷用インキ組成物の機上安定性の評価は、DIGITAL INKOMETER(東洋精機株式会社製)を用いて、JIS K5701 4.2.2に準拠して行った。試料0.2ccを量り採り、35℃、1200rpmで3分間運転し、その後、0〜20分間の間で連続的にタック値を測定して、機上安定性の評価とした。なお、オフセット印刷用インキ組成物において、測定されたタック値が低い値を示すほど、高い印刷適性を有するオフセット印刷用インキ組成物である。具体的には、タック値が低い値を示すオフセット印刷用インキ組成物は、印刷時におけるパイリング現象の発生が防止されたものとなる。パイリング現象とは、印刷時に用紙の繊維がインキにより剥離されて、ローラ上、印刷版上、ブランケット上に紙粉が堆積されてインキ転写不良を引き起こす現象のことである。
(製造例6〜10、参考例3)
製造例1〜5の樹脂ワニスA1〜A5、および参考例1の樹脂ワニスB1を用いて、各樹脂ワニスA1〜A5,B1にそれぞれ対応する製造例6〜10および参考例3のオフセット印刷用インキ組成物を作製した。
具体的には、各樹脂ワニスA1〜A5,B1の5質量部に、フタロシアニン顔料(リオノールブルーFG−7330K、東洋インキ製造株式会社製)29.4質量部と、大豆油5.6質量部とを添加し、70℃にて30分間撹拌混合した後、3本ロールミルで分散し、オフセット印刷用ベースインキ組成物を得た。次に、各オフセット印刷用ベースインキ組成物の50質量部に、それぞれ対応する各樹脂ワニス45質量部と、日石AF7号ソルベント5質量部とを添加して撹拌混合し、製造例6〜10および参考例3のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例6〜10および参考例3のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表2に示す。
Figure 0006041600
表2に示すように、製造例6〜10のオフセット印刷用インキ組成物は、タック値が高くなり過ぎるのが防止されて機上安定性に優れたものであり、参考例3のオフセット印刷用インキ組成物よりもミスチング、対面セットオフの発生が防止されものである。
<第2使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第2使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第2使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、ワニス調製工程と、ゲル化工程と、移行工程と、脱水工程と、後添加工程とを含む。
ワニス調製工程では、タンク本体20内に樹脂成分および油成分を投入し、到達温度が80〜200℃、好ましくは80〜140℃となるように所定の昇温速度でタンク本体20を加熱した状態で、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させることによって、樹脂成分を油成分中に溶解(樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させて樹脂ワニスを得る。
次に、ゲル化工程は、ワニス調製工程で得られた樹脂ワニスを撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、移行工程では、ワニス調製工程で得られた樹脂ワニス、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された樹脂ワニスが撹拌混合されているタンク本体20内に、水と顔料とを含む含水顔料を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、50〜150℃の温度下で、撹拌混合することによって、含水顔料中の顔料を油成分中に移行させて、顔料分散物を得る。なお、顔料は、表面が親油性であることから、油成分中に移行する。
含水顔料は、水および顔料を含むものであり、含水顔料としては、オフセット印刷用インキ組成物の顔料成分として常用される含水顔料を用いることができる。含水顔料は、水系で顔料の材料成分を化学反応させて製造した微細な顔料の一次粒子を、濃縮のために濾過用の袋などの中に入れて水分を絞る(フィルタープレス)ことによって、または、フィルタープレス後に、熱などを利用して乾燥させて得られる、ウェットケーキまたはプレスケーキと呼ばれる含水顔料として製造される。含水顔料の含水率は、30質量%以上95質量%以下である。含水率が30質量%未満の含水顔料を用いた場合、顔料が、微細な一次粒子まで分散されにくくなる。含水率が95質量%を超える含水顔料を用いた場合、高い顔料濃度を有する顔料分散物が得られにくくなる。
次に、脱水工程では、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を減圧し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、顔料分散物を30〜100℃の温度下で撹拌混合することによって、顔料分散物の含水率が2質量%以下になるまで脱水する。これによって、脱水物が得られる。なお、黄色の顔料は、温度によって色相に大きな影響がでるので、黄色の顔料を用いる場合には、30〜60℃程度で脱水することが好ましい。
脱水工程でのタンク本体20内における顔料分散物の脱水は、温度が30〜100℃程度となる圧力31.8〜760mmHgの条件で行う。熱の影響を受けやすい顔料、たとえば黄色の顔料を含む含水顔料を用いる場合、脱水工程でのタンク本体20内における顔料分散物の脱水は、温度が30〜60℃程度となる圧力31.8〜149mmHgの条件で行うことが好ましい。
次に、後添加工程において、脱水工程で得られた脱水物に油成分や添加剤や体質顔料などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
<第2使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第2使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、含水率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。
〈残渣率〉
オフセット印刷用インキ組成物の製造途中で得られる顔料分散物50gに溶剤(灯油:トルエン=1:1)100gを滴下しながら、ガラス棒を用いて撹拌した。これをメッシュサイズ400の金網を用いて濾過して、金網上に残った物質を回収し、60℃のオーブンで1日乾燥させた。顔料分散物50gに含まれる顔料の重量に対する、乾燥後の回収物質の重量の割合を残渣率として求めた。
〈含水率〉
含水率(質量%)は、カールフィッシャー水分計測定方法を使用して測定した。なお、測定条件としては、顔料分散物を1.0g用いて、温度25℃の条件で測定した。
〈ラレー粘度〉
ラレー粘度(Pa・s/25℃)は、株式会社ケンウッド ティー・エム・アイ製のTE851を使用して測定した。
〈タック値〉
タック値は、東洋精機株式会社製のDIGITAL INKOMETERにて、30℃の条件で400rpmの回転速度にて1分値を測定した。
〈着色力〉
白色のオフセット印刷用インキ組成物を、後述の製造例11および参考例4のオフセット印刷用インキ組成物でそれぞれ着色し、製造例11については参考例4の着色力を「100」として、相対評価した。相対評価値が高いほど着色力に優れるインキ組成物である。
〈印刷適性〉
オフセット印刷用インキ組成物の印刷適性(濃度変化)は、三菱重工業株式会社製、DAIYA IE型印刷機で実際に印刷して調べた。印刷適性は、湿し水供給ダイヤルを35%、60%にした状態で印刷し、後述の製造例11については参考例4を基準(良好)として、印刷濃度の変化で評価した。なお、印刷条件は以下のとおりである。
・湿し水:サイファ TP−3(湿し水濃度1%、サカタインクス株式会社製)
・印刷速度:4500枚/時
・湿度/温度:25℃/60%
・印刷用紙:オーロラコート紙(日本製紙株式会社製)
(製造例11)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例11において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている。
〔ワニス調製工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、油成分として亜麻仁油2.7質量部、大豆油17.3質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5.4質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)15.2質量部、樹脂成分として、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)27.6質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOH/g)0.57質量部を仕込んだ。そして、タンク本体20の温度を200℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ35%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(540rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、タンク本体20内に収容された収容物を30分間撹拌し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を溶解した。
〔ゲル化工程〕
次いで、タンク本体20内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.58質量部を添加して130℃で30分間反応させることで樹脂ワニスを得た。
〔移行工程〕
次いで、タンク本体20内にプレスケーキ顔料(ピグメントイエロー174、固形分27質量%)39.6質量部を添加した。製造例11では、移行工程においてプレスケーキ顔料をタンク本体20内に添加した時点で、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように、各原料をタンク本体20内に仕込んだ。そして、タンク本体20の温度を70℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、30分間フラッシングを行い、プレスケーキ顔料中の顔料を油成分である樹脂ワニス中に移行させ、顔料分散物を得た。
〔脱水工程〕
次いで、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を130mmHgに減圧し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、顔料分散物を57℃の温度下で撹拌混合することによって、顔料分散物の含水率が2質量%以下になるまで脱水し、脱水物を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の脱水物に、大豆油15質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)5質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、10分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例4)
参考例4では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例4では、高さ1500mm、内径1800mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて、「ワニス調製工程」および「ゲル化工程」を実施し、その後の「フラッシング工程および減圧脱水工程」は前記撹拌装置で得られた樹脂ワニスを製造フラッシャーに移しかえて、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、油成分として亜麻仁油2.7質量部、大豆油17.3質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5.4質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)15.2質量部、樹脂成分として、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)27.6質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOH/g)0.57質量部を仕込んだ。そして、タンクの温度を200℃に保持した状態で、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、タンク内に収容された収容物を40分間撹拌し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を溶解した。
〔ゲル化工程〕
次いで、タンク内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.58質量部を添加して130℃で30分間反応させることで樹脂ワニスを得た。
〔フラッシング工程および減圧脱水工程〕
製造フラッシャー(井上機械製作所)に、ゲル化工程で得られたタンク内の樹脂ワニスとプレスケーキ顔料(ピグメントイエロー174、固形分27質量%)39.6質量部を添加して、60℃で120分間フラッシングを行い、顔料分散物を得た。その後、本体を傾けることで浸出した水を除去し、さらに、タンク内を減圧(タンク内の圧力:130mmHg)とすることで、含水率を2質量%以下となるまで脱水し、脱水物を得た。
〔後添加工程〕
次いで、製造フラッシャー内の脱水物に、大豆油15質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)5質量部を添加し、10分間混合し、参考例4のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例11および参考例4のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表3に示す。
Figure 0006041600
表3に示すように、製造例11は、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となり、製造例11のオフセット印刷用インキ組成物は、参考例4に対して、残渣率、ラレー粘度、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持されている。
<第3使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第3使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第3使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、移行工程と、顔料分散物作製工程と、ゲル化工程と、後添加工程とを含む。
移行工程では、タンク本体20内に油成分を投入して100℃以上180℃以下、好ましくは130℃まで加熱した後、100℃以上180℃以下の温度下で油成分が撹拌混合されているタンク本体20内に、水と顔料とを含む含水顔料を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、50〜150℃の温度下で、撹拌混合することによって、含水顔料中の顔料を油成分中に移行させて、顔料油成分湿潤物を得る。なお、顔料は、表面が親油性であることから、油成分中に移行する。
含水顔料に対する油成分の使用量は、含水顔料中の顔料100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜400質量部である。含水顔料は、水および顔料を含むものであり、含水顔料としては、オフセット印刷用インキ組成物の顔料成分として常用される含水顔料を用いることができる。
含水顔料は、水系で顔料の材料成分を化学反応させて製造した微細な顔料の一次粒子を、濃縮のために濾過用の袋などの中に入れて水分を絞る(フィルタープレス)ことによって、または、フィルタープレス後に、熱などを利用して乾燥させて得られる、ウェットケーキまたはプレスケーキと呼ばれる含水顔料として製造される。含水顔料の含水率は、30質量%以上95質量%以下である。含水率が30質量%未満の含水顔料を用いた場合、顔料が、微細な一次粒子まで分散されにくくなる。含水率が95質量%を超える含水顔料を用いた場合、高い顔料濃度を有する顔料分散物が得られにくくなる。
次に、顔料分散物作製工程は、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を、脱水し、油成分に樹脂成分を溶解させて顔料分散物を作製する工程である。顔料分散物作製工程は、樹脂成分添加工程と、脱水工程と、樹脂成分溶解工程とを含む。
樹脂成分添加工程では、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、樹脂成分を投入し、樹脂成分混合物を得る。樹脂成分の使用量は、顔料の種類などによって変わるが、含水顔料中の顔料100質量部に対して、30〜300質量部が好ましい。
次に、脱水工程では、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を減圧し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、樹脂成分混合物を、30〜100℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕するとともに、樹脂成分混合物の含水率が2質量%以下になるまで脱水する。これによって、脱水物が得られる。なお、黄色の顔料は、温度によって色相に大きな影響がでるので、黄色の顔料を用いる場合には、30〜60℃程度で脱水することが好ましい。
脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜100℃程度となる圧力31.8〜760mmHgの条件で行う。熱の影響を受けやすい顔料、たとえば黄色の顔料を含む含水顔料を用いる場合、脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜60℃程度となる圧力31.8〜149mmHgの条件で行うことが好ましい。
次に、樹脂成分溶解工程では、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、脱水物を、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合することによって、油成分中に樹脂成分を溶解させて顔料分散物を得る。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂成分の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂成分が溶解された顔料分散物を得ることができる。
次に、ゲル化工程は、顔料分散物作製工程で得られた顔料分散物を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、後添加工程では、顔料分散物作製工程で得られた顔料分散物に、油成分や添加剤や体質顔料などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得る工程である。なお、脱水工程の後、かつ樹脂成分溶解工程の前に、最終的なオフセット印刷用インキ組成物の配合となるように、油成分や添加剤を添加しておくことで、顔料分散物作製工程後の顔料分散物をそのままオフセット印刷用インキ組成物として使用することができる。
<第3使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第3使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、含水率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。これらの評価は、前述した方法に従った。ただし、着色力の評価は、製造例12,15の黄色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例5の着色力を「100」として相対評価し、製造例13の紅色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例6の着色力を「100」として相対評価し、製造例14の藍色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例7の着色力を「100」として相対評価した。
(製造例12)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例12において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例12において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔移行工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、油成分として亜麻仁油3質量部、大豆油10質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル10質量部、およびAF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)10質量部を仕込み、130℃まで昇温させた後、含水顔料(プレスケーキ状態のピグメントイエロー174、固形分30%)56.7質量部を添加した。そして、タンク本体20の温度を60℃で保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、タンク本体20内に収容された収容物を10分間撹拌し、顔料油成分湿潤物を得た。
〔顔料分散物作製工程〕
顔料油成分湿潤物に、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)33質量部を添加し、タンク本体20内を減圧(タンク内の圧力:92.5mmHg(0.12atm))にするとともに、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、50℃の温度下で、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、含水率が2質量%以下になるまで65分間脱水して脱水物を得た。さらに、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動を継続し、脱水物を130℃の温度下で32分間撹拌混合し、粉砕されたロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂成分を油成分中に溶解させた。
〔ゲル化工程〕
次いで、顔料分散物作製工程後のタンク本体20内に、ゲル化剤としてアルミニウムキレート1質量部を添加して130℃で24分間反応させ、黄色の顔料分散物を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の黄色の顔料分散物に、大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、8分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例13)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は製造例12と同様の方法により製造例13の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例14)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は製造例12と同様の方法により製造例14の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例15)
顔料分散物作製工程を以下のように変更したこと以外は製造例12と同様の方法により製造例15の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
〔顔料分散物作製工程〕
顔料油成分湿潤物が収容されたタンク本体20内を減圧(タンク内の圧力:92.5mmHg)にするとともに、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、50℃の温度下で含水率が2質量%以下になるまで65分間脱水して脱水物を得た。そして、タンク本体20内に塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)33質量部を添加し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動を継続して、130℃の温度下で32分間撹拌混合することで、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、粉砕されたロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂成分を油成分中に溶解させた。
(参考例5)
参考例5では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例5では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて、「ワニス調製工程」および「ゲル化工程」を実施し、その後の「フラッシング工程および減圧脱水工程」は前記撹拌装置で得られた樹脂ワニスを卓上フラッシャーに移しかえて、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、油成分として亜麻仁油3質量部、大豆油10質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル10質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)10質量部、樹脂成分として、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)33質量部を仕込んだ。そして、タンクの温度を200℃に保持した状態で、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、タンク内に収容された収容物を40分間撹拌し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を溶解した。
〔ゲル化工程〕
次いで、タンク内にゲル化剤としてアルミニウムキレート1質量部を添加して130℃で30分間反応させることで樹脂ワニスを得た。
〔フラッシング工程および減圧脱水工程〕
卓上フラッシャー(井上機械社製)に、ゲル化工程で得られたタンク内の樹脂ワニスと、含水顔料(プレスケーキ状態のピグメントイエロー174、固形分30%)56.7質量部とを添加して、60℃で30分間フラッシングを行った。その後、本体を傾けることで浸出した水を除去し、さらに、タンク内を減圧(タンク内の圧力:92.5mmHg)にすることで、含水率を2質量%以下となるまで脱水し、黄色の顔料分散物を得た。
〔後添加工程〕
次いで、前記黄色の顔料分散物に、大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加し、10分間混合し、参考例5のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例6)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は参考例5と同様の方法により参考例6の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例7)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は参考例5と同様の方法により参考例7の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例12〜15のオフセット印刷用インキ組成物についての評価結果を表4に示し、参考例5〜7のオフセット印刷用インキ組成物についての評価結果を表5に示す。
Figure 0006041600
Figure 0006041600
表4,5に示すように、製造例12〜15は、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となり、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持された上で、参考例5〜7よりも製造に要するトータル所要時間が短縮されたことがわかる。
<第4使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第4使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第4使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、湿潤工程と、移行工程と、顔料分散体作製工程と、ゲル化工程と、後添加工程とを含む。
湿潤工程は、撹拌装置100を用いて行われる顔料水分散工程であり、水および乾燥した顔料を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、20〜100℃の温度下で約3〜30分間撹拌混合することによって、顔料を水で湿潤させて、顔料水分散物である顔料水湿潤物を得る。顔料に対する水の使用量は、顔料100質量部に対して30〜250質量部が好ましいが、後の脱水工程を短縮するため、水の使用量はできるだけ少ないほうが好ましい。また、湿潤工程において、水および乾燥した顔料に加えて、顔料分散剤、表面処理剤、界面活性剤などを添加してもよい。
次に、移行工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、湿潤工程で得られた顔料水湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、油成分を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、前記顔料水湿潤物と油成分とを、好ましくは20〜100℃の温度下で、約3〜30分間撹拌混合することによって、水中に分散している顔料を油成分中に移行させて、顔料油成分湿潤物を得る。顔料に対する油成分の使用量は、顔料の種類などによって変わるが、顔料100質量部に対して50〜400質量部が好ましい。
次に、顔料分散体作製工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を、脱水し、油成分に樹脂成分を溶解させて顔料分散体を作製する工程である。本実施形態では、顔料分散体作製工程は、樹脂成分添加工程と、脱水工程と、樹脂成分溶解工程とを含む。
樹脂成分添加工程では、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、樹脂成分を投入し、樹脂成分混合物を得る。樹脂成分の使用量は、顔料の種類などによって変わるが、顔料100質量部に対して、30〜300質量部が好ましい。
脱水工程では、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を減圧し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、樹脂成分混合物を、65〜100℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕するとともに、樹脂成分混合物の含水率が2質量%以下になるまで脱水する。これによって、脱水物が得られる。なお、黄色の顔料は、温度によって色相に大きな影響がでるので、黄色の顔料を用いる場合には、30〜60℃程度で脱水することが好ましい。脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜100℃程度となる圧力31.8〜760mmHgの条件で行う。熱の影響を受けやすい顔料、たとえば黄色の顔料を含む含水顔料を用いる場合、脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜60℃程度となる圧力31.8〜149mmHgの条件で行うことが好ましい。
樹脂成分溶解工程では、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、脱水物を、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合することによって、油成分中に樹脂成分を溶解させて顔料分散体を得る。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂成分の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂成分が溶解された顔料分散体を得ることができる。
次に、ゲル化工程は、顔料分散体作製工程で得られた顔料分散体を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、後添加工程において、樹脂成分溶解工程で得られた顔料分散体、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された顔料分散体が撹拌混合されているタンク本体20内に、油成分や添加剤や体質顔料などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。このようにして、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となる。
<第5使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第5使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第5使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、湿潤工程と、顔料分散体作製工程と、ゲル化工程と、後添加工程とを含む。
湿潤工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、油成分および乾燥した顔料を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、20〜150℃の温度下で約5〜120分間撹拌混合することによって、顔料を油成分で湿潤させて顔料湿潤物を得る。顔料に対する油成分の使用量は、顔料100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜400質量部である。また、湿潤工程において、油成分および乾燥した顔料に加えて、顔料分散剤、表面処理剤、界面活性剤などを添加してもよい。
次に、顔料分散体作製工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、湿潤工程で得られた顔料湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、樹脂成分を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、前記顔料湿潤物と樹脂成分とを、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合することによって、樹脂成分を油成分中に溶解(樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させて顔料分散体を得る。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂成分の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂成分が溶解された顔料分散体を得ることができる。顔料分散体作製工程では、前述の湿潤工程での撹拌混合によって生じた熱エネルギーを、樹脂成分の油成分中への溶解のために利用できる。
次に、ゲル化工程は、顔料分散体作製工程で得られた顔料分散体を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、後添加工程において、顔料分散体作製工程で得られた顔料分散体、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された顔料分散体が撹拌混合されているタンク本体20内に、油成分や添加剤や体質顔料などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。このようにして、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となる。
<第6使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第6使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第6使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、図3、図4に示す製造システムを用いて行われる。図3は、製造システム1の構成を示す図である。製造システム1は、本実施形態の撹拌装置100と分散装置110とが供給装置120を介して接続されたシステムである。図4は、製造システム2の構成を示す図である。製造システム2は、本実施形態の撹拌装置100と分散装置110とが接続されておらず、各装置がそれぞれ独立して配置されるシステムである。
製造システム2は、撹拌装置100と分散装置110とが接続されていないこと以外は製造システム1と同様である。そのため、以下では、製造システム1を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法について説明し、製造システム2を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法については説明を省略する。
分散装置110としては、たとえば、三本ロールミル、ビーズミル(パス方式)が使用できる。本実施形態では、ビーズミルを用いる。ビーズミルとしては、直径0.2〜3mmのジルコニアビーズなどのセラミックスビーズ、スチールビーズなどを粉砕メディアとしたダイノミル、DCPミルなどのビーズミルが使用できる。供給装置120は、ポンプやスクリューエクストルーダーなどであり、撹拌装置100に備えられるタンク本体20のタンク排出開口部23から排出される被撹拌物を、加圧した状態で、分散装置110の分散供給開口部111に向けて送液する。
撹拌装置100の第6使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、湿潤工程と、顔料混合物作製工程と、ゲル化工程と、練肉工程と、後添加工程とを含む。
湿潤工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、油成分および乾燥した顔料を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、20〜150℃の温度下で約5〜120分間撹拌混合することによって、顔料を油成分で湿潤させて顔料湿潤物を得る。顔料に対する油成分の使用量は、顔料100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜400質量部である。また、湿潤工程において、油成分および乾燥した顔料に加えて、顔料分散剤、表面処理剤、界面活性剤などを添加してもよい。
次に、顔料混合物作製工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、湿潤工程で得られた顔料湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、樹脂成分を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、前記顔料湿潤物と樹脂成分とを、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合することによって、に樹脂成分を油成分中に溶解(樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させて顔料混合物を得る。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂成分の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂成分が溶解された顔料混合物を得ることができる。顔料混合物作製工程では、前述の湿潤工程での撹拌混合によって生じた熱エネルギーを、樹脂成分の油成分中への溶解のために利用できる。
次に、ゲル化工程は、顔料混合物作製工程で得られた顔料混合物を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、練肉工程は、顔料混合物作製工程で得られた顔料混合物、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された顔料混合物を、練肉する工程である。本実施形態では、練肉工程は、分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。
分散工程は、撹拌装置100と供給装置120を介して接続される分散装置110を用いて行われる工程である。分散工程では、撹拌装置100のタンク本体20内に貯留されている、ゲル化した顔料混合物を、80〜150℃の温度に保持し顔料混合物を低粘度化した状態で、ビーズミルからなる分散装置110のベッセル内の圧力(内圧)によって規定される所定の流量(供給量)で、タンク本体20のタンク排出開口部23から供給装置120を介して分散装置110の分散供給開口部111に向けて、連続的に供給する。そして、分散工程では、分散供給開口部111から所定の供給量で分散装置110に供給された顔料混合物を、連続的に分散処理(練肉)して顔料分散物を得る。
戻し工程は、分散工程で連続的に得られる顔料分散物を、前記供給量と同じ流量(排出量)で分散装置110の分散排出開口部112から連続的に排出(吐出)し、タンク供給開口部24から流過させて、顔料分散物を元の前記タンク本体20内に戻す。なお、戻し工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
循環工程は、分散工程および戻し工程に引き続いて連続的に行われる工程である。循環工程では、戻し工程において分散処理後に得られる顔料分散物がタンク本体20内に戻された状態のタンク本体20内に収容される収容物を、80〜150℃の温度に保持し収容物を低粘度化した状態で、タンク本体20と分散装置110との間で循環させて、分散装置110における分散処理を、顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行い、顔料分散体を得る。なお、循環工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
次に、後添加工程では、循環工程で得られた顔料分散体に、油成分や添加剤や体質顔料などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
<第6使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第6使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。これらの評価は、前述した方法に従った。ただし、着色力の評価は、製造例16,20,21,22、および参考例12の黄色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例8の着色力を「100」として相対評価し、製造例17,23の紅色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例9の着色力を「100」として相対評価し、製造例18の藍色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例10の着色力を「100」として相対評価し、製造例19の黒色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例11の着色力を「100」として相対評価した。
(製造例16)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例16において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例16において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔湿潤工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油15.93質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、およびAF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部を仕込んだ。そして、タンク本体20の温度を130℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、タンク本体20内に収容された収容物を48分間撹拌し、顔料湿潤物を得た。
〔顔料混合物作製工程およびゲル化工程〕
次いで、タンク本体20内の顔料湿潤物に、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を添加し、タンク本体20の温度を130℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて24分間撹拌混合し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、油成分に樹脂成分を溶解させた。その後、タンク本体20内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して130℃で24分間反応させて、ゲル化した顔料混合物を得た。なお、製造例16では、ゲル化工程においてゲル化剤をタンク本体20内に添加した時点で、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように、各原料をタンク本体20内に仕込んだ。
〔練肉工程〕
次いで、タンク本体20内に収容されたゲル化した顔料混合物を130℃に保持し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、供給装置120である輸送ポンプにより、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表6に示す条件となるように分散処理を行って顔料分散物を得た。顔料分散物を供給装置120により元のタンク本体20に戻し、分散装置110に供給することを、顔料の粒子径が5μm以下となるまで(グラインドメータにより粒子径を確認)繰り返して行い、製造例16の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の黄色の顔料分散体に、大豆油13.75質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.75質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、8分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例17)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は製造例16と同様の方法により製造例17の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例18)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は製造例16と同様の方法により製造例18の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例19)
顔料をカーボンブラックに変更した以外は製造例16と同様の方法により製造例19の黒色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例20)
製造例16と同様の方法でゲル化した顔料混合物を得て、この顔料混合物を3本ロールミルに供給し、顔料の粒子径が5μm以下となるまで(グラインドメータにより粒子径を確認)表6に記載の条件で練肉することによって、製造例20の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例21)
製造例16と同様の方法でゲル化した顔料混合物を得て、この顔料混合物をダイノミル(シンマルエンタイプライゼス社製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、顔料の粒子径が5μm以下となるまで表6に記載の条件で循環工程を1パス行い、製造例21の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例22)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例22において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例22において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔湿潤工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部、油成分として大豆油15.93質量部を仕込んだ。そして、タンク本体20の温度を130℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、タンク本体20内に収容された収容物を48分間撹拌し、顔料湿潤物を得た。
〔顔料混合物作製工程およびゲル化工程〕
次いで、タンク本体20内の顔料湿潤物に、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部、樹脂成分として塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を添加し、タンク本体20の温度を130℃に保持した状態で、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて24分間撹拌混合し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、油成分に樹脂成分を溶解させた。その後、タンク本体20内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して130℃で24分間反応させて、ゲル化した顔料混合物を得た。
〔練肉工程〕
次いで、タンク本体20内に収容されたゲル化した顔料混合物を130℃に保持し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、供給装置120である輸送ポンプにより、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表6に示す条件となるように分散処理を行って顔料分散物を得た。顔料分散物を供給装置120により元のタンク本体20に戻し、分散装置110に供給することを、顔料の粒子径が5μm以下となるまで(グラインドメータにより粒子径を確認)繰り返して行い、製造例22の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の黄色の顔料分散体に、大豆油13.75質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.75質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、8分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例23)
表6に示すように、分散工程におけるゲル化した顔料混合物の供給温度、および戻し工程における顔料混合物の排出温度を90℃に変更したこと以外は、製造例17と同様の方法により製造例23の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例8)
参考例8では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例8では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて「ワニス調製工程」、「ゲル化工程」および「プレミキシング工程」を実施し、その後の「分散工程」は前記撹拌装置で得られた顔料混合物を3本ロールミルに供給し、さらに「後添加工程」は3本ロールミルで得られた顔料分散体を前記撹拌装置に移して、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油15.93質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部、樹脂成分として、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を仕込んだ。そして、タンクの温度を200℃に保持した状態で、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、タンク内に収容された収容物を40分間撹拌し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を溶解した。
〔ゲル化工程〕
次いで、タンク内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して130℃で30分間反応させることで樹脂ワニスを得た。
〔プレミキシング工程〕
次いで、タンク内に、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部を添加し、タンクの温度を70℃に保持した状態で、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、タンク内に収容された収容物を30分間撹拌し、プレミキシングを行った。
〔分散工程〕
タンク内のプレミキシングを行った顔料混合物を3本ロールミルに供給し、表7に示す条件で、顔料の粒子径が5μm以下となるまで(グラインドメータにより粒子径を確認)練肉し、参考例8の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
3本ロールミルで練肉した後の黄色の顔料分散体をタンクに供給し、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.75質量部を添加し、10分間混合し、参考例8の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例9)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は参考例8と同様の方法により参考例9の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例10)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は参考例8と同様の方法により参考例10の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例11)
顔料をカーボンブラックに変更した以外は参考例8と同様の方法により参考例11の黒色のオフセット印刷用インキ組成物得た。
(参考例12)
参考例8と同様にして、プレミキシングを行い顔料混合物を得た。タンク内のプレミキシングを行った後の顔料混合物をダイノミル(シンマルエンタイプライゼス社製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、顔料の粒子径が5μm以下となるまで表7に記載の条件で循環工程を2パス行い、参考例12の黄色の顔料分散体を得た。次いで、ダイノミルで練肉した後の黄色の顔料分散体をタンクに供給し、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.75質量部を添加し、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させて撹拌混合し、参考例12の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例16〜23のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表6に示し、参考例8〜12のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表7に示す。
Figure 0006041600
Figure 0006041600
表6,7に示すように、製造例16〜23は、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となり、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持された上で、参考例8〜12よりも製造に要するトータル所要時間が短縮されたことがわかる。
<第7使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第7使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第7使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、図3に示す製造システム1、図4に示す製造システム2を用いて行われる。製造システム1は、前述したように、撹拌装置100と分散装置110とが供給装置120を介して接続されたシステムである。また、製造システム2は、撹拌装置100と分散装置110とが接続されていないこと以外は製造システム1と同様である。そのため、以下では、製造システム1を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法について説明し、製造システム2を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法については説明を省略する。
第7使用例における分散装置110としては、たとえば、三本ロールミル、ビーズミル(パス方式)が使用できる。本実施形態では、ビーズミルを用いる。ビーズミルとしては、直径0.2〜3mmのジルコニアビーズなどのセラミックスビーズ、スチールビーズなどを粉砕メディアとしたダイノミル、DCPミルなどのビーズミルが使用できる。供給装置120は、ポンプやスクリューエクストルーダーなどであり、撹拌装置100に備えられるタンク本体20のタンク排出開口部23から排出される被撹拌物を、加圧した状態で、分散装置110の分散供給開口部111に向けて送液する。
撹拌装置100の第7使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、プレミキシング工程と、ゲル化工程と、練肉工程とを含む。
プレミキシング工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、顔料、樹脂成分および油成分の、それぞれ最終的に製造されるオフセット印刷用インキ組成物中に含まれる全量を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、80〜200℃の温度下で撹拌混合して顔料混合物を得る工程である。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂が溶解された顔料混合物を得ることができる。
プレミキシング工程における撹拌混合時間は、油成分中に樹脂成分を溶解(樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させるのに要する時間を考慮して設定され、高温下で撹拌混合することによって短くすることができるが、付与する熱エネルギーの量や使用する樹脂の油成分に対する溶解性などにより最適温度条件が存在し、この最適温度条件によって設定すべき撹拌混合時間も異なる。撹拌混合時間は、エネルギー効率や作業性などを考慮すると、1つの目安として、15〜60分間である。
次に、ゲル化工程は、プレミキシング工程で得られた顔料混合物を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、練肉工程は、プレミキシング工程で得られた顔料混合物、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された顔料混合物を、練肉する工程である。本実施形態では、練肉工程は、分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。
分散工程は、撹拌装置100と供給装置120を介して接続される分散装置110を用いて行われる工程である。分散工程では、プレミキシング工程で得られて撹拌装置100のタンク本体20内に貯留されている顔料混合物を、80〜150℃の温度に保持し顔料混合物を低粘度化した状態で、ビーズミルからなる分散装置110のベッセル内の圧力(内圧)によって規定される所定の流量(供給量)で、タンク本体20のタンク排出開口部23から供給装置120を介して分散装置110の分散供給開口部111に向けて、連続的に供給する。そして、分散工程では、分散供給開口部111から所定の供給量で分散装置110に供給された顔料混合物を、連続的に分散処理(練肉)して顔料分散体を得る。
次に、戻し工程は、分散工程で連続的に得られる顔料分散体を、前記供給量と同じ流量(排出量)で分散装置110の分散排出開口部112から連続的に排出(吐出)し、タンク供給開口部24から流過させて、顔料分散体を元の前記タンク本体20内に戻す。なお、戻し工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
次に、循環工程は、分散工程および戻し工程に引き続いて連続的に行われる工程である。循環工程では、戻し工程において分散処理後に得られる顔料分散体がタンク本体20内に戻された状態のタンク本体20内に収容される収容物を、80〜150℃の温度に保持し収容物を低粘度化した状態で、タンク本体20と分散装置110との間で循環させて、分散装置110における分散処理を、顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行い、オフセット印刷用インキ組成物を得る。なお、循環工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
<第7使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第7使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。これらの評価は、前述した方法に従った。ただし、着色力の評価は、製造例24,25のオフセット印刷用インキ組成物については参考例13の着色力を「100」として相対評価した。
(製造例24)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例24において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例24において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔プレミキシング工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂の28質量部(固形樹脂)、大豆油変性アルキッド樹脂の3質量部、ピグメントレッド57:1の13.5質量部、大豆油の7質量部及びAF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)の48.5質量部を、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように仕込んだ。
次いで、到達温度が130℃となるように昇温速度8℃/minでタンク本体20の加熱を開始し、加熱開始と同時に、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、130℃に到達後50分間、タンク本体20内の収容された収容物を撹拌混合し、ロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら溶解させるとともに、プレミキシングを行った。プレミキシング後に得られた顔料混合物は、ロジン変性フェノール樹脂が完全に溶解されたものであった。
〔分散工程、戻し工程および循環工程〕
次いで、プレミキシング後の顔料混合物を130℃に保持し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、供給装置120である輸送ポンプにより、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表8の条件となるように分散処理を行い、分散処理した混合物を供給装置120により元のタンク本体20に戻すことを、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで繰り返して行い、製造例24のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例25)
プレミキシング温度、および、プレミキシング後の顔料混合物を分散装置110に供給するときの保持温度を、130℃から90℃に変更すること以外は製造例24と同様にして、製造例25のオフセット印刷用インキ組成物を得た。得られたオフセット印刷用インキ組成物中の顔料は、粒子径が5μm以下に分散されていた。
(参考例13)
参考例13では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例13では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて「ワニス調製工程」を実施し、その後の「プレミキシング工程」は前記撹拌装置で得られた樹脂ワニスの一部を用いて第2タンク内にてプレミキシングを行い、次いで「分散工程」は第2タンク内で得られたプレミキシング後の混合物をダイノミルに供給し、さらに「後添加工程」はダイノミルで得られたベース混合物、およびワニス調製工程で得られた前記樹脂ワニスの一部を用いて第3タンク内にて撹拌混合を行い、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂45質量部(固形樹脂)、大豆油10質量部およびAF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)40質量部を仕込んだ。そして、到達温度が200℃となるように昇温速度8℃/minでタンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、200℃に到達後40分間撹拌混合し、ロジン変性フェノール樹脂を溶解して樹脂ワニスを得た。
〔プレミキシング工程〕
次いで、上記タンクとは違う高さ250mm、内径210mmの第2タンク内に、樹脂ワニス65質量部、大豆油変性アルキッド樹脂5質量部、ピグメントレッド57:1の25質量部、およびAF−7石油溶剤(日本石油株式会社)5質量部を仕込んだ。そして、到達温度が70℃となるように昇温速度8℃/minで第2タンクの加熱を開始し、加熱開始と同時に、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、70℃に到達後30分間、第2タンク内に収容された収容物を撹拌混合し、プレミキシングを行った。
〔分散工程〕
次いで、プレミキシング後の混合物を、第2タンクからダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表8の条件となるように分散処理を2パス行い、ベース混合物を得た。ベース混合物中の顔料は、粒子径が5μm以下に分散されていた。
〔後添加工程〕
次いで、新たな高さ250mm、内径210mmの第3タンク内に、ベース混合物53質量部、AF−7石油溶剤5質量部、上記ロジン変性フェノール樹脂を溶解した樹脂ワニス42質量部の割合となるように、AF−7石油溶剤、ロジン変性フェノール樹脂を溶解した樹脂ワニスを加え、ディスクタービン羽根を回転駆動させることにより撹拌混合し、参考例13のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例24,25および参考例13のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表8に示す。
Figure 0006041600
表8に示すように、製造例24,25のオフセット印刷用インキ組成物は、参考例13に対して、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となり製造工程が簡略化され、製造に要するトータル所要時間が短縮され、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持されている。
<第8使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第8使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第8使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、図3に示す製造システム1を用いて行われる。
撹拌装置100の第8使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、プレミキシング工程と、分散工程と、戻し工程と、循環工程と、後添加工程とを含む。
プレミキシング工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、少なくとも顔料、樹脂成分として顔料分散用樹脂、および油成分を含む顔料分散用材料を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて撹拌混合し、顔料分散用混合物を得る工程である。そして、タンク本体20内に投入する顔料分散用材料は、顔料を5〜40質量%で含有する。そのため、プレミキシング工程で得られる顔料分散用混合物は、顔料、顔料分散用樹脂および油成分を含み、顔料が5〜40質量%で含有されたものとなる。プレミキシング工程における顔料分散用材料の撹拌混合時間および撹拌混合時の温度は、顔料分散用樹脂を油成分中に溶解させるのに要する時間および温度を考慮して設定される。顔料分散用材料の撹拌混合時間は、たとえば15〜90分間であり、顔料分散用材料の撹拌混合時の温度は、たとえば25〜200℃である。
次に、分散工程は、撹拌装置100と供給装置120を介して接続される分散装置110とを用いて行われる工程である。分散工程では、プレミキシング工程で得られて撹拌装置100のタンク本体20内に貯留されている低粘度化された顔料分散用混合物を、ビーズミルからなる分散装置110のベッセル内の圧力(内圧)によって規定される所定の流量(供給量)で、タンク本体20のタンク排出開口部23から供給装置120を介して分散装置110の分散供給開口部111に向けて、連続的に供給する。そして、分散工程では、分散供給開口部111から所定の供給量で分散装置110に供給された顔料分散用混合物を、連続的に分散処理(練肉)して1次分散体を得る。
次に、戻し工程では、分散工程で連続的に得られる1次分散体を、前記供給量と同じ流量(排出量)で分散装置110の分散排出開口部112から連続的に排出(吐出)し、タンク供給開口部24から流過させて、1次分散体を元の前記タンク本体20内に戻す。なお、戻し工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
次に、循環工程は、分散工程および戻し工程に引き続いて連続的に行われる工程である。循環工程では、戻し工程において分散処理後に得られる1次分散体がタンク本体20内に戻された状態のタンク本体20内に収容される収容物を、タンク本体20と分散装置110との間で循環させて、分散装置110における分散処理を、顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行い、顔料分散体を得る。なお、循環工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
次に、後添加工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ用材料のうち、プレミキシング工程でタンク本体20内に投入されたものを除く残余のインキ用材料として、バインダー樹脂および油成分を、循環工程が終了した後に顔料分散体が収容された撹拌装置100のタンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、顔料分散体と残余のインキ用材料との混合物を撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得る工程である。
また、後添加工程では、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、80〜200℃の温度下で、顔料分散体と残余のインキ用材料との混合物を撹拌混合するのが好ましい。これによって、バインダー樹脂と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、バインダー樹脂の低分子量化を抑制することができるとともに、油成分中にバインダー樹脂を溶解(バインダー樹脂がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させることができる。
また、後添加工程における、顔料分散体と残余のインキ用材料との混合物の撹拌混合時間は、油成分中にバインダー樹脂を溶解(バインダー樹脂がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕しながら油成分中に溶解)させるのに要する時間を考慮して設定され、高温下で撹拌混合することによって短くすることができるが、付与する熱エネルギーの量や使用するバインダー樹脂の油成分に対する溶解性などにより最適温度条件が存在し、この最適温度条件によって設定すべき撹拌混合時間も異なる。撹拌混合時間は、エネルギー効率や作業性などを考慮すると、1つの目安として、15〜60分間である。
後添加工程では、循環工程において得られた顔料分散体であり、顔料が高分散された顔料分散体を用いてオフセット印刷用インキ組成物を作製するので、顔料が高分散されて着色力などのインキ特性が高い状態で維持されたオフセット印刷用インキ組成物を得ることができる。
<第8使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第8使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。これらの評価は、前述した方法に従った。ただし、着色力の評価は、製造例26のオフセット印刷用インキ組成物については参考例14の着色力を「100」として相対評価した。
(製造例26)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例26において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例26において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔プレミキシング工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、大豆油変性アルキッド樹脂3.7質量部、ピグメントレッド57:1の20質量部、大豆油8質量部およびAF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)68.3質量部を仕込んだ。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、60℃の温度下で12分間、タンク本体20内の収容された収容物を撹拌混合し、顔料分散用混合物を得た。
〔分散工程、戻し工程および循環工程〕
次いで、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、タンク本体20内のプレミキシング後の顔料分散用混合物を、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表9の条件となるように分散処理を行い、分散処理した混合物を供給装置120である輸送ポンプにより元のタンク本体20に戻すことを、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで繰り返して行い、顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、分散処理が終了してタンク本体20内に収容された顔料分散体65質量部に対して、残余のインキ用材料として、軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂(固形バインダー樹脂)31質量部、AF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)4質量部を添加した。製造例26では、後添加工程において残余のインキ用材料をタンク本体20内に添加した時点で、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように、各原料をタンク本体20内に仕込んだ。そして、タンク本体20内に収容された混合物の温度が130℃となるように昇温速度8℃/minで加熱し、加熱開始と同時に、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、ロジン変性フェノール樹脂(固形バインダー樹脂)を粉砕しながら溶解させるとともに、各成分を撹拌混合して製造例26のオフセット印刷用インキ用樹脂組成物を得た。
(参考例14)
参考例14では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例14では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて「ワニス調製工程」を実施し、その後の「プレミキシング工程」は前記撹拌装置で得られた樹脂ワニスの一部を用いて第2タンク内にてプレミキシングを行い、次いで「分散工程」は第2タンク内で得られたプレミキシング後の混合物をダイノミルに供給し、さらに「後添加工程」はダイノミルで得られたベース混合物、およびワニス調製工程で得られた前記樹脂ワニスの一部を用いて第3タンク内にて撹拌混合を行い、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、軟化点165℃のロジン変性フェノール樹脂45質量部(固形バインダー樹脂)、大豆油10質量部およびAF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)40質量部を仕込んだ。そして、到達温度が200℃となるように加熱を開始すると同時に、ディスクタービン羽根を回転駆動させ、200℃に到達後40分間撹拌混合し、ロジン変性フェノール樹脂を溶解して樹脂ワニスを得た。
〔プレミキシング工程〕
次いで、別のタンクである高さ250mm、内径210mmの第2タンク内に、樹脂ワニス65質量部、大豆油変性アルキッド樹脂5質量部、ピグメントレッド57:1の25質量部、およびAF−7石油溶剤(日本石油株式会社製)5質量部を仕込んだ。そして、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させ、70℃で30分間撹拌混合し、プレミキシングを行った。
〔分散工程〕
次いで、プレミキシング後の混合物を、第2タンクからダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表9の条件となるように分散処理を2パス行い、ベース混合物を得た。ベース混合物中の顔料は、粒子径が5μm以下に分散されていた。
〔後添加工程〕
次いで、新たな高さ250mm、内径210mmの第3タンク内に、ベース混合物53質量部、AF−7石油溶剤5質量部、上記ロジン変性フェノール樹脂を溶解した樹脂ワニス42質量部の割合となるように、AF−7石油溶剤、ロジン変性フェノール樹脂を溶解した樹脂ワニスを添加し、ディスタービン羽根を回転駆動させて60℃の温度下で撹拌混合し、参考例14のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例26および参考例14のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表9に示す。
Figure 0006041600
表9に示すように、製造例26のオフセット印刷用インキ組成物は、参考例14に対して、1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となり、製造工程が簡略化され、製造に要するトータル所要時間が短縮され、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持されている。
<第9使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第9使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第9使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、図3に示す製造システム1、図4に示す製造システム2を用いて行われる。製造システム1は、前述したように、撹拌装置100と分散装置110とが供給装置120を介して接続されたシステムである。また、製造システム2は、撹拌装置100と分散装置110とが接続されていないこと以外は製造システム1と同様である。そのため、以下では、製造システム1を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法について説明し、製造システム2を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造する方法については説明を省略する。
第9使用例における分散装置110としては、たとえば、三本ロールミル、ビーズミル(パス方式)が使用できる。本実施形態では、ビーズミルを用いる。ビーズミルとしては、直径0.2〜3mmのジルコニアビーズなどのセラミックスビーズ、スチールビーズなどを粉砕メディアとしたダイノミル、DCPミルなどのビーズミルが使用できる。供給装置120は、ポンプやスクリューエクストルーダーなどであり、撹拌装置100に備えられるタンク本体20のタンク排出開口部23から排出される被撹拌物を、加圧した状態で、分散装置110の分散供給開口部111に向けて送液する。
撹拌装置100の第9使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、湿潤工程と、移行工程と、顔料混合物作製工程と、ゲル化工程と、練肉工程と、後添加工程とを含む。
湿潤工程は、撹拌装置100を用いて行われる顔料水分散工程であり、水および乾燥した顔料を、タンク本体20内に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、20〜100℃の温度下で約3〜30分間撹拌混合することによって、顔料を水で湿潤させて、顔料水分散物である顔料水湿潤物を得る。顔料に対する水の使用量は、顔料100質量部に対して30〜250質量部が好ましいが、後の脱水工程を短縮するため、水の使用量はできるだけ少ないほうが好ましい。また、湿潤工程において、水および乾燥した顔料に加えて、顔料分散剤、表面処理剤、界面活性剤などを添加してもよい。
次に、移行工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、湿潤工程で得られた顔料水湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、油成分を投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、前記顔料水湿潤物と油成分とを、好ましくは20〜100℃の温度下で、約3〜30分間撹拌混合することによって、水中に分散している顔料を油成分中に移行させて、顔料油成分湿潤物を得る。顔料に対する油成分の使用量は、顔料の種類などによって変わるが、顔料100質量部に対して50〜400質量部が好ましい。
次に、顔料混合物作製工程は、撹拌装置100を用いて行われる工程であり、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を、脱水し、油成分に樹脂成分を溶解させて顔料混合物を作製する工程である。本実施形態では、顔料混合物作製工程は、樹脂成分添加工程と、脱水工程と、樹脂成分溶解工程とを含む。
樹脂成分添加工程では、移行工程で得られた顔料油成分湿潤物を撹拌混合しているタンク本体20内に、樹脂成分を投入し、樹脂成分混合物を得る。樹脂成分の使用量は、顔料の種類などによって変わるが、顔料100質量部に対して、30〜300質量部が好ましい。
脱水工程では、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を減圧し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、樹脂成分混合物を、65〜100℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分がブロック状、フレーク状または粒状に粗粉砕された固形樹脂の場合は、固形樹脂を粉砕するとともに、樹脂成分混合物の含水率が2質量%以下になるまで脱水する。これによって、脱水物が得られる。なお、黄色の顔料は、温度によって色相に大きな影響がでるので、黄色の顔料を用いる場合には、30〜60℃程度で脱水することが好ましい。脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜100℃程度となる圧力31.8〜760mmHgの条件で行う。熱の影響を受けやすい顔料、たとえば黄色の顔料を含む含水顔料を用いる場合、脱水工程でのタンク本体20内における樹脂成分混合物の脱水は、温度が30〜60℃程度となる圧力31.8〜149mmHgの条件で行うことが好ましい。
樹脂成分溶解工程では、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、脱水物を、好ましくは80〜200℃、より好ましくは80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合することによって、油成分中に樹脂成分を溶解させて顔料混合物を得る。80〜200℃の温度下で撹拌混合することによって、樹脂成分と油成分との間でエステル交換反応が起こるのを防止して、樹脂成分の低分子量化を抑制することができるとともに、短時間で油成分中に樹脂成分が溶解された顔料混合物を得ることができる。
次に、ゲル化工程は、顔料混合物作製工程で得られた顔料混合物を撹拌混合しているタンク本体20内に、ゲル化剤を投入し、80〜150℃の温度下で、15〜120分間撹拌混合し、樹脂成分とゲル化剤とを反応させて樹脂成分をゲル化させる。ゲル化工程は、オフセット印刷用インキ組成物のインキ性状や印刷適性上行われることが好ましいが、行われなくてもよい。
次に、練肉工程は、顔料混合物作製工程で得られた顔料混合物、または、必要に応じてゲル化工程で樹脂成分がゲル化された顔料混合物を、練肉する工程である。本実施形態では、練肉工程は、分散工程と、戻し工程と、循環工程とを含む。
分散工程は、撹拌装置100と供給装置120を介して接続される分散装置110を用いて行われる工程である。分散工程では、撹拌装置100のタンク本体20内に貯留されている、ゲル化した顔料混合物を、80〜150℃の温度に保持し顔料混合物を低粘度化した状態で、ビーズミルからなる分散装置110のベッセル内の圧力(内圧)によって規定される所定の流量(供給量)で、タンク本体20のタンク排出開口部23から供給装置120を介して分散装置110の分散供給開口部111に向けて、連続的に供給する。そして、分散工程では、分散供給開口部111から所定の供給量で分散装置110に供給された顔料混合物を、連続的に分散処理(練肉)して顔料分散物を得る。
戻し工程は、分散工程で連続的に得られる顔料分散物を、前記供給量と同じ流量(排出量)で分散装置110の分散排出開口部112から連続的に排出(吐出)し、タンク供給開口部24から流過させて、顔料分散物を元の前記タンク本体20内に戻す。なお、戻し工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
循環工程は、分散工程および戻し工程に引き続いて連続的に行われる工程である。循環工程では、戻し工程において分散処理後に得られる顔料分散物がタンク本体20内に戻された状態のタンク本体20内に収容される収容物を、80〜150℃の温度に保持し収容物を低粘度化した状態で、タンク本体20と分散装置110との間で循環させて、分散装置110における分散処理を、顔料の粒子径が5μm以下となるまで繰り返し行い、顔料分散体を得る。なお、循環工程では、タンク本体20内の第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転駆動は継続されており、タンク本体20内に収容される収容物は継続的に撹拌混合されている。
次に、後添加工程では、循環工程で得られた顔料分散体に、油成分や添加剤などを添加し、撹拌混合することによって、オフセット印刷用インキ組成物を得る。なお、分散工程の前に、最終的なオフセット印刷用インキ組成物の配合となるように、油成分や添加剤を添加しておくことで、循環工程後の顔料分散体をそのままオフセット印刷用インキ組成物として使用することができる。
<第9使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第9使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、残渣率、含水率、ラレー粘度、タック値、着色力、印刷適性の評価を行った。これらの評価は、前述した方法に従った。ただし、着色力の評価は、製造例27,31,32,33,35、および参考例19の黄色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例15の着色力を「100」として相対評価し、製造例28,34の紅色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例16の着色力を「100」として相対評価し、製造例29の藍色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例17の着色力を「100」として相対評価し、製造例30の黒色のオフセット印刷用インキ組成物については参考例18の着色力を「100」として相対評価した。
(製造例27)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例27において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例27において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔湿潤工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部、水21質量部を仕込んだ。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、70℃の温度下で5分間、タンク本体20内の収容された収容物を撹拌混合し、顔料水湿潤物を得た。
〔移行工程〕
次いで、タンク本体20内の顔料水湿潤物に、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油15.93質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、およびAF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、70℃で5分間撹拌混合し、顔料を油成分中に移行させて顔料油成分湿潤物を得た。
〔顔料混合物作製工程、脱水工程およびゲル化工程〕
次いで、タンク本体20内の顔料油成分湿潤物に、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を添加した。そして、タンク本体20内を減圧(タンク内の圧力:約244mmHg(0.32atm)程度)にするとともに、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて撹拌し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、含水率が2質量%以下になるまで脱水した。そして、加熱撹拌を継続して、粉砕されたロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂成分を油成分中に溶解させた。さらに、ゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して、ゲル化した顔料混合物を得た。
〔練肉工程〕
次いで、タンク本体20内のゲル化した顔料混合物を130℃に保持し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、供給装置120である輸送ポンプにより、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表10に示す条件となるように分散処理を行って顔料分散物を得た。そして、顔料分散物を供給装置120により元のタンク本体20に戻し、分散装置110に供給することを、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで繰り返して行い、製造例27の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の黄色の顔料分散体に、大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して8分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。なお、製造例27では、後添加工程において油成分をタンク本体20内に添加した時点で、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように、各原料をタンク本体20内に仕込んだ。
(製造例28)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は製造例27と同様の方法により製造例28の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例29)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は製造例27と同様の方法により製造例29の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例30)
顔料をカーボンブラックに変更した以外は製造例27と同様の方法により製造例30の黒色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例31)
製造例27と同様の方法でゲル化した顔料混合物を得て、この顔料混合物を3本ロールミルに供給し、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで、表10に記載の条件で練肉することによって、製造例31の黄色の顔料分散体を得た。次いで、黄色の顔料分散体をタンク本体20に移し、さらに大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して撹拌混合し、製造例31のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例32)
製造例27と同様の方法でゲル化した顔料混合物を得て、この顔料混合物をダイノミル(シンマルエンタイプライゼス社製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5m m)に供給し、顔料の粒子径が5μm以下となるように表10に記載の条件で循環工程を1パス行い、製造例32の黄色の顔料分散体を得た。次いで、黄色の顔料分散体をタンク本体20に移し、さらに大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して撹拌混合し、製造例32のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例33)
分散工程におけるゲル化した顔料混合物の供給温度を90℃に変更したこと以外は製造例27と同様にして、製造例33の黄色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例34)
分散工程におけるゲル化した顔料混合物の供給温度、および戻し工程における顔料混合物の排出温度を90℃に変更したこと以外は製造例28と同様の方法により製造例34の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例35)
図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例35において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例35において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔湿潤工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部、水21質量部を仕込んだ。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ52%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、70℃の温度下で5分間、タンク本体20内の収容された収容物を撹拌混合し、顔料水湿潤物を得た。
〔移行工程〕
次いで、タンク本体20内の顔料水湿潤物に、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油15.93質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、およびAF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させ、70℃で5分間撹拌混合し、顔料を油成分中に移行させて顔料油成分湿潤物を得た。
〔脱水工程〕
次いで、タンク本体20内の圧力を減圧(タンク内の圧力:約244mmHg(0.32atm))にし、加熱および減圧下で、顔料油成分湿潤物を、含水率が2質量%以下になるまで脱水し、脱水物を得た。
〔顔料混合物作製工程およびゲル化工程〕
タンク本体20内の脱水物に、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を添加した。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させることで、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を粉砕しながら、粉砕されたロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂成分を油成分中に130℃で溶解させた。さらに、ゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して、ゲル化した顔料混合物を得た。
〔練肉工程〕
タンク本体20内のゲル化した顔料混合物を130℃に保持し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/s(536rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させた状態で、供給装置120である輸送ポンプにより、分散装置110であるダイノミル(シンマルエンタイプライゼス製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、表10に示す条件となるように分散処理を行って顔料分散物を得た。その後、顔料分散物を供給装置120により元のタンク本体20に戻し、分散装置110に供給することを、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで繰り返して行い、製造例35の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、タンク本体20内の黄色の顔料分散体に、大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して8分間撹拌混合し、オフセット印刷用インキ組成物を得た。なお、製造例35では、後添加工程において油成分をタンク本体20内に添加した時点で、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように、各原料をタンク本体20内に仕込んだ。
(参考例15)
参考例15では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例15では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いて「ワニス調製工程」、「ゲル化工程」および「プレミキシング工程」を実施し、その後の「分散工程」は前記撹拌装置で得られた顔料混合物を3本ロールミルに供給し、さらに「後添加工程」は3本ロールミルで得られた顔料分散体を前記撹拌装置に移して、オフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔ワニス調製工程〕
前記タンク内に、油成分として亜麻仁油2.5質量部、大豆油15.93質量部、大豆油脂肪酸ブチルエステル5質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)14質量部、樹脂成分として、塊状態のロジン変性フェノール樹脂(星光ポリマー株式会社製、商品名:OR−357)25.5質量部、イソフタル酸からなる基本骨格を有する液状の大豆油変性アルキッド樹脂(酸価9KOHmg/g)0.53質量部を仕込んだ。そして、ディスクタービン羽根を、最外周縁部における先端部の周速度が13m/sとなるように回転駆動させて200℃で40分間撹拌混合し、塊状態のロジン変性フェノール樹脂を溶解した。
〔ゲル化工程〕
次いで、タンク内にゲル化剤としてアルミニウムキレート0.54質量部を添加して、130℃で30分間反応させることで樹脂ワニスを得た。
〔プレミキシング工程〕
次いで、タンク内の樹脂ワニスに、乾燥した顔料(ピグメントイエロー174)9.85質量部を添加して70℃で30分間撹拌混合し、プレミキシングを行った。
〔分散工程〕
次いで、タンク内のプレミキシング後の顔料混合物を3本ロールミルに供給し、表11に示す条件で、顔料の粒子径が5μm以下(グラインドメータにより粒子径を確認)となるまで練肉し、参考例15の黄色の顔料分散体を得た。
〔後添加工程〕
次いで、黄色の顔料分散体をタンクに移し、さらに大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して撹拌混合し、参考例15のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例16)
顔料をピグメントレッド57:1に変更した以外は参考例15と同様の方法により参考例16の紅色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例17)
顔料をピグメントブルー15:3に変更した以外は参考例15と同様の方法により参考例17の藍色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例18)
顔料をカーボンブラックに変更した以外は参考例15と同様の方法により参考例18の黒色のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例19)
参考例15と同様にして、プレミキシングを行った混合物を得た。タンク内のプレミキシング後の混合物をダイノミル(シンマルエンタイプライゼス社製、DYNO-MILL type KDL-PILOT 1.4L、スチールビーズ:Φ1.5mm)に供給し、顔料の粒子径が5μm以下となるまで表11に記載の条件で循環工程を2パス行い、参考例19の黄色の顔料分散体を得た。次いで、黄色の顔料分散体をタンクに移し、さらに大豆油13.07質量部、AF−7石油溶剤(新日本石油株式会社製)13.07質量部を添加して撹拌混合し、参考例19のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例27〜35のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表10に示し、参考例15〜19のオフセット印刷用インキ組成物における評価結果を表11に示す。
Figure 0006041600
Figure 0006041600
表10,11に示すように、製造例27〜30、33〜35は1つの撹拌装置100で最終的なオフセット印刷用インキ組成物を得ることが可能となる。また、製造例27〜35は、タック値、着色力などのインキ特性、および印刷適性が高い状態で維持された上で、参考例15〜19よりも製造に要するトータル所要時間が短縮されたことがわかる。
<第10使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第10使用例としては、オフセット印刷用インキ組成物の製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第10使用例におけるオフセット印刷用インキ組成物の製造方法は、図4に示す製造システム2を用いて行われ、プレミキシング工程と、練肉工程とを含む。
プレミキシング工程では、本実施形態の撹拌装置100を用いて、樹脂ワニスに対してビードカーボンブラックを分散させ、カーボンブラック分散ワニスを得る。本実施形態の撹拌装置100は、被撹拌物に対して充分に撹拌流を作用させながら、その被撹拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる装置であるので、高粘度の樹脂ワニスであっても、ビードカーボンブラックを粉砕し、容易に微分散させることができる。
ビードカーボンブラックを樹脂ワニス中に分散させるのに要する撹拌混合時間は、樹脂ワニスの組成や第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15の回転速度などにより最適条件が存在し、この最適条件によって設定すべき撹拌混合時間も異なる。撹拌混合時間は、エネルギー効率や作業性などを考慮すると、1つの目安として、30〜120分間である。
樹脂ワニスの例としては、大豆油および鉱物油成分材にロジン変性フェノール樹脂を溶解させたもの、鉱物油成分材にギルソナイト樹脂を溶解させたものが挙げられ、これら種類の異なる樹脂ワニスを併用して使用できる。樹脂ワニスの製造時における油成分の仕込み量は、固形樹脂の仕込み量の100〜180質量%であることが好ましく、120〜150質量%であることが特に好ましい。これによって、好適な範囲内の粘度を有する樹脂ワニスを得ることができる。
また、ビードカーボンブラックは、微粉末状のパウダーカーボンブラックを造粒することにより、ビーズ状としたカーボンブラックのことである。ビードカーボンブラックとしては、酸性または中性のビードカーボンブラックを使用することができる。また、かさ密度は、0.2〜0.8g/cmであり、平均一次粒子径は、15〜70nmである。ビードカーボンブラックのかさ密度は、JIS K6219−2:2005に準じた測定方法により測定して得られた値である。ビードカーボンブラックの平均一次粒子径は、電子顕微鏡観察により得られた粒子径の算術平均値である。
酸性ビードカーボンブラックとしては、pHが2.0〜6.0のカーボンブラックであり、ビードカーボンブラックの表面をオゾンまたは化学薬品などで酸化処理したものを使用することができるが、酸性であれば、そのような特段の酸化処理を施したものでなくとも、自然酸化されたものであっても使用することができる。酸化処理による製造方法も各種あるが、主な製造方法としてはファーネス法、デグサ社によるデグサガスブラック法などが挙げられる。
中性ビードカーボンブラックとしては、pHが6.0〜8.0のカーボンブラックであり、チャンネル法、オイルファーネス法などによって製造されたカーボンブラックを造粒したものである。
中性ビードカーボンブラックの製造方法には、水を加えて作る湿式法と水を加えずに作る乾式法とがある。多くの場合は湿式法であり、湿式法で作られたビードカーボンブラックも最終的には後工程で水分を完全に除去する。カーボンブラックは多環芳香族であるタールや石油の接触分解重質油成分を原料とし、1,300〜1,800℃の反応炉で生成させる。生成したカーボンブラックはすぐにアグロメレートの形態になり、湿式法では、捕集したものを造粒器に投入し、水を加えて所定の粒子径を有する粒子を生成したのち乾燥して水分を除去する。
中性ビードカーボンブラックとしては、たとえば、タイヤ用グレードN326,N330,N220,N550,N568,N660,N762,N754などカーボンブラックを造粒しているものであれば、カラー用ビードカーボンブラック相当品を含めて使用することができる。
プレミキシング工程では、被撹拌物に対して充分に撹拌流を作用させながら、その被撹拌物にせん断力を付与し、被撹拌物の混練および分散を充分に行うことができる撹拌装置100を用いるので、タンク本体20内に収容されるビードカーボンブラックに充分なせん断力が付与されて、樹脂ワニス中でビードカーボンブラックを粉砕しながら分散させることができる。そのため、ビードカーボンブラックのような粒状のカーボンブラックであっても容易に樹脂ワニス中に微分散させることができ、良分散性のカーボンブラック分散ワニスを得ることができる。
次に、練肉工程では、プレミキシング工程で得られたカーボンブラック分散ワニスを、微粉砕機により練肉し、さらにカーボンブラックの分散性を向上させ、オフセット印刷用インキ組成物を得る。なお、この練肉工程では、タンク本体20内に収容される収容物を、タンク本体20と微粉砕機との間で循環させて、繰り返し練肉することも可能である。
以上のように、本実施形態では、プレミキシング工程において、ビードカーボンブラックを樹脂ワニス中に容易に微分散させることができるので、ビードカーボンブラックを用いた場合であっても生産性を向上させることができ、得られたオフセット印刷用インキ組成物は、光沢、漆黒性など墨インキとしての印刷品質が、パウダーカーボンブラックを用いたオフセット印刷用インキ組成物と同等に得ることができる。また、パウダーカーボンブラックを使用しないので、粉塵の発生もなく、良好な作業環境を実現できる。
<第10使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第10使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。なお、オフセット印刷用インキ組成物について、顔料分散性、モーノポンプ適性、残渣量、粘度の評価を行った。
〈顔料分散性〉
プレミキシング工程終了時のカーボンブラック分散ワニスを、常温で24時間静置し、顔料の沈降状態を目視によって確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:顔料の沈降無し
×:顔料の沈降有り
〈モーノポンプ適性〉
プレミキシング工程終了時のカーボンブラック分散ワニスを、モーノポンプ(MITSUBISHI ELECTRIC CORPORATION製)に通して、配管閉塞の有無について確認した。その際、ポンプ出口の初期の入圧を0.1MPaに設定し、輸送時の入圧についても測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:配管閉塞無し
×:配管閉塞有り
〈残渣量〉
プレミキシング工程終了時のカーボンブラック分散ワニスおよび練肉工程終了時のオフセット印刷用インキ組成物をそれぞれ100gトルエンにて溶解させ、カーボンブラック分散ワニスについては100メッシュで濾過した時の残渣量を、オフセット印刷用インキ組成物については400メッシュで濾過した時の残渣の重量をそれぞれ残渣量として測定した。
〈粒度測定〉
オフセット印刷用インキ組成物について、グラインドメータ(株式開社安田精機製作所製)を用いて、JIS K5701−1:2000練和度測定方法に準じて、スクレーパー引き動かして発生した10mm以上連続した線が、1つの溝について3本以上現れた時の目盛りの位置をA値、10本以上現れた時の目盛りの位置をB値として測定した。
(製造例36)
製造例36では、まず樹脂ワニス、ギルソナイトワニスを準備した。ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10,000)と、大豆油と、AFソルベント6号(鉱物油成分、新日本石油化学社製)とを、質量比が40:25:35となるように混合し、油成分材中にロジン変性フェノール樹脂を溶解させた樹脂ワニスを得た。また、Gilsonite Selects 325(ギルソナイト樹脂、American Gilsonite社製)と、AFソルベント6号(鉱物油成分、新日本石油化学社製)とを、質量比が20:80となるように混合し、油成分中にギルソナイト樹脂を溶解させたギルソナイトワニスを得た。
また、製造例36では、図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例36において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例36において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔プレミキシング工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、一次粒子径30nm、かさ密度0.46g/cmの中性ビードカーボンブラック(N326、Degussa製)20質量部、樹脂ワニス45質量部、ギルソナイトワニス10質量部、大豆油25質量部を、タンク本体20の内部空間全体に対する占有率が80%となるように仕込んだ。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ60%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が9.7m/s(400rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて48分間撹拌させて、中性ビードカーボンブラックをワニス中に微分散させた。このとき、ワニスおよびビードカーボンブラックの混合物の粘度は、120Pa・s、プレミキシング工程開始時の混合物の温度は60℃である。
〔練肉工程〕
得られたカーボンブラック分散ワニスを、ダイノミル(Netzsch−Feinmahltechnik製、GmbH)に投入し、ビーズ種類をスチールビーズ、ビーズ径を1.5mm、ビーズ充填率を60%とし、ロータ回転数を1400rpm、吐出量を5.3kg/hとして練肉を行い、製造例36のオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例37)
プレミキシング時間を60分間から140分間に変更した以外は製造例36と同様にして製造例37の製造方法によるオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例38)
第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転速度を400rpmから1000rpmに変更した以外は、製造例36と同様にして製造例38の製造方法によるオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(製造例39)
プレミキシング時間を60分間から140分間に変更し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転速度を400rpmから1000rpmに変更した以外は、製造例36と同様にして製造例39の製造方法によるオフセット印刷用インキ組成物を得た。
(参考例20)
参考例20では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例20では、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された撹拌装置を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。このような撹拌装置を用いたこと以外は製造例36と同様にしてプレミキシングを行った。ただし、ダイノミルへ輸送するためのモーノポンプに詰りが発生したため、その後のダイノミルによる練肉工程を行うことができず、オフセット印刷用インキ組成物は得られなかった。
(参考例21)
プレミキシング時間を60分間から120分間に変更した以外は、参考例20と同様にしてプレミキシングを行った。ただし、ダイノミルへ輸送するためのモーノポンプに詰りが発生したため、その後のダイノミルによる練肉工程を行うことができず、オフセット印刷用インキ組成物は得られなかった。
(参考例22)
プレミキシング時間を60分間から180分間に変更した以外は、参考例20と同様にしてプレミキシングを行った。ただし、ダイノミルへ輸送するためのモーノポンプに詰りが発生したため、その後のダイノミルによる練肉工程を行うことができず、オフセット印刷用インキ組成物は得られなかった。
(参考例23)
プレミキシング時間を60分間から180分間に変更し、ディスクタービン羽根の回転速度を400rpmから1000rpmに変更した以外は、参考例20と同様にしてプレミキシングを行った。ただし、ダイノミルへ輸送するためのモーノポンプに詰りが発生したため、その後のダイノミルによる練肉工程を行うことができず、オフセット印刷用インキ組成物は得られなかった。
(参考例24)
中性ビードカーボンブラックをパウダーカーボンブラック(一次粒子径24nm)に変更した以外は参考例20と同様にしてプレミキシングを行い、参考例24の製造方法によるオフセット印刷用インキ組成物を得た。
製造例36〜39および参考例20〜24について、プレミキシング工程終了時の顔料分散性、残渣量、モーノポンプ適性を評価し、練肉工程終了時の残渣量、グラインドメータによる粒度を評価した。評価結果を表12に示す。
Figure 0006041600
製造例36〜39は、プレミキシング工程終了時の状態で、顔料分散性が良好で、残渣量も製造例36〜39はパウダーカーボンブラックを用いた参考例24よりも少なくなった。また、練肉工程終了時のオフセット印刷用インキ組成物でも、残渣量は、製造例36〜39は、参考例24よりも少なくなった。粒度については、製造例36は参考例24と同程度であり、製造例37〜39は、参考例24よりも小さくなった。参考例20〜23は、プレミキシング工程終了時の状態で、顔料分散性が悪く顔料沈降が見られた。また、残渣量も非常に多く十分にカーボンブラックが分散されていないことがわかる。このようにカーボンブラックの分散性が悪いためにモーノポンプで配管の詰まりが発生し、ダイノミルへの輸送ができず、練肉工程を行うことができなかった。
<第11使用例>
本実施形態の撹拌装置100の第11使用例としては、体質顔料であるカオリン顔料の表面処理剤による油性印刷用カオリン顔料ベースの製造時における使用例を挙げることができる。撹拌装置100の第11使用例における油性印刷用カオリン顔料ベースの製造方法は、表面処理工程と、移行工程と、脱水工程、撹拌工程とを含む。
表面処理工程では、タンク本体20内に体質顔料であるカオリン顔料と水性媒体と表面処理剤を投入し、25〜100℃となるようにタンク本体20を加熱した状態で、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を約5〜120分間回転駆動させることによって、表面処理剤がカオリン顔料の表面に反応や吸着などの作用をしてカオリン顔料の表面処理が行われる。
カオリン顔料としは、通常、精製方法によって湿式カオリン顔料、焼成カオリン顔料、乾式カオリン顔料と呼ばれるものがあるが、そのいずれも使用できる、中でも表面処理による被覆が形成されていないカオリン顔料が好ましい。
表面処理剤としては、脂肪族アミン、脂肪族アミン塩、アミノ基を有するシランカップリング剤が利用できる。これらは、単独で使用することもでき、また2種以上を併用することもできる。表面処理剤の使用量は、通常、表面処理される前のカオリン顔料100質量部に対して0.5〜10質量部である。
水性媒体としては、通常水が使用される。使用する水としては、特に限定されず、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水などを用いることができる。
次に、油性印刷用ワニス(固形樹脂を植物油成分及び/又は鉱物油成分に溶解させたものであり、油性印刷用ワニスを構成する固形樹脂と植物油成分及び/又は鉱物油成分をそのまま使用することも可能)をタンク本体20に投入し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させて、50〜150℃の温度下で、撹拌混合することによって、含水表面処理カオリン顔料中の表面処理カオリン顔料を油成分中に移行させて、カオリン顔料分散物を得る。
次に、脱水工程では、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を減圧し、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、カオリン顔料分散物を65〜100℃の温度下で撹拌混合することによって、カオリン顔料分散物の含水率が2質量%以下になるまで脱水する。
脱水工程でのタンク本体20内における顔料分散物の脱水は、温度が65〜100℃程度となる圧力31.8〜760mmHgの条件で行う。
次に、撹拌工程において、脱水工程で得られた脱水物を第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を回転駆動させ、脱水物を100〜140℃の温度下で、約1時間程度撹拌混合することにより油性印刷用カオリン顔料ベースを得る。
<第11使用例における具体的製造例>
以下に、撹拌装置100の第11使用例における、オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体である体質顔料ベースの具体的な製造例について詳細に説明するが、本発明はこれらの製造例のみに限定されるものではない。
(製造例40)
製造例40では、まず油性印刷用ワニスを準備した。ロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10,000)と、大豆油と、AFソルベント6号(鉱物油成分、新日本石油化学社製)とを、質量比が40:25:35となるように混合し、油成分中にロジン変性フェノール樹脂を溶解させた油性印刷用ワニスを得た。
また、製造例40では、図1に示す撹拌装置100を用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。製造例40において使用した撹拌装置100の大きさは、「W1」が210mmであり、「H1+H2+H3+H4」が350mmに設定されている。製造例40において使用した撹拌装置100は、上述の実施形態において例示した、「W1」が1800mm、「W2」が1150mm、「H1」が369mm、「H2」が807mm、「H3」が1303mm、「H4」が287mm、「H5」が600mmに設定されている撹拌装置に対して、中心軸線Sに垂直な方向に0.117(210mm/1800mm)倍であり、中心軸線S方向に0.127(350mm/2766mm)倍の大きさに設計されたものである。
〔表面処理工程〕
撹拌装置100のタンク本体20内に、表面処理されていないカオリン顔料50質量部と水50質量部とラウリルアミン2.0質量部とを仕込んだ。そして、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15(回転直径L4がタンク本体20の内径に対してそれぞれ35%に設定されている)を、最外周縁部における先端部の周速度が9.7m/s(400rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて70℃で60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。
〔移行工程〕
上記表面処理後物質に油性印刷用ワニス100質量部を添加し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて70℃で30分間撹拌してフラッシングを行い、表面処理したカオリン顔料の水性混合物中の表面処理したカオリン顔料を油成分であるワニス中に移行させた。
〔脱水工程〕
次いで、減圧脱水手段30によってタンク本体20内を130mmHgに減圧し、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて80℃の温度下で撹拌混合することによって、含水率が2質量%以下になるまで脱水し、油性印刷用カオリン顔料混合物を得た。
〔撹拌工程〕
その後、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15を、最外周縁部における先端部の周速度が19.4m/s(800rpm)となるようにそれぞれ回転駆動させ、第2撹拌翼22を、最外周縁部における先端部の周速度が1.0m/s(10rpm)となるように回転駆動(ただし、第2撹拌翼22の回転方向は、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15の回転方向と逆向きである)させて、120℃で60分間撹拌混合し、油性印刷用カオリン顔料ベースを得た。この油性印刷用カオリン顔料ベースの分散性をグラインドメータにて測定したところ、表面処理したカオリン顔料の粒子径は5μm以下であった。
(参考例25)
参考例25では、撹拌装置100を用いずにオフセット印刷用インキ組成物を製造した。参考例25では、フラッシャー、撹拌装置、および3本ロールミルを用いてオフセット印刷用インキ組成物を製造した。
〔表面処理工程〕
フラッシャー(ニーダー)に、カオリン顔料50質量部と水50質量部とラウリルアミン2.0質量部を仕込み、70℃で60分間撹拌し、カオリン顔料の表面処理を行った。
〔移行工程〕
上記表面処理後の物質に油性印刷用ワニス100質量部を加えて70℃で40分間フラッシングを行い、表面処理したカオリン顔料の水性混合物中の表面処理したカオリン顔料を油成分であるワニス中に移行させた。
〔脱水工程〕
その後、本体を傾けることで浸出した水を除去し、さらに、フラッシャー内を減圧(フラッシャー内の圧力:130mmHg)、温度を57℃とすることで、含水率を2質量%以下となるまで脱水し、油性印刷用カオリン顔料混合物を得た。
〔撹拌工程〕
その後、脱水後の油性印刷用カオリン顔料混合物を、撹拌装置を用いて撹拌混合した。参考例25において用いた撹拌装置は、高さ250mm、内径210mmの有底円筒状のタンク内に、従来型カッター羽根(ディスクタービン羽根)が設置された装置である。撹拌工程では、脱水後の油性印刷用カオリン顔料混合物をフラッシャーからタンクに移動させ、ディスクタービン羽根を回転駆動させて、脱水後の油性印刷用カオリン顔料混合物を120℃で60分間撹拌混合して、油性印刷用カオリン顔料ベースを製造した。しかしながら、得られた油性印刷用カオリン顔料ベースの分散性をグラインドゲージにて測定したところ、表面処理したカオリン顔料の粒子径は12.5μm以下であった。
〔混練工程〕
その後、さらに、油性印刷用カオリン顔料ベースを、45℃の3本ロールミル(井上機械製)を用いて、グラインドメータによる粒子径測定で5μm以下となるまで練肉分散を行い油性印刷用カオリン顔料ベースを得た。
製造例40の油性印刷用カオリン顔料ベースは、参考例25に対して、1つの撹拌装置100で、オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体である体質顔料ベースを得ることが可能となり製造工程を簡略化することができる。
なお、前述した第1〜第11使用例では、第1撹拌翼10、第2撹拌翼22および第3撹拌翼15を備えた撹拌装置100を用いた例を示したが、この構成に限定されるものではなく、第3撹拌翼15を備えず、第1撹拌翼10および第2撹拌翼22の2つの撹拌翼を備えた撹拌装置100を用いた場合においても、第1〜第11使用例で示した効果を発揮することができる。また、撹拌翼の数についても限定されるものではなく、第1回転軸26および第2回転軸27に、第1撹拌翼10および第3撹拌翼15と同様の形状に形成される撹拌翼を、軸線方向に並べて配置するようにしてもよい。
1 製造システム
10 第1撹拌翼
11 基部
12 第1ブレード
13 第2ブレード
14 第3ブレード
15 第3撹拌翼
20 タンク本体
21 タンク蓋体
22 第2撹拌翼
25 加熱手段
26 第1回転軸
27 第2回転軸
28 駆動手段
30 減圧脱水手段
100 撹拌装置
110 分散装置
120 供給装置
201 底部
202 側壁部
2021 第1壁部
2022 第2壁部

Claims (8)

  1. 顔料と、樹脂成分と、油成分とを主成分とするインキ用材料からなるオフセット印刷用インキ組成物、または該オフセット印刷用インキ組成物の製造中間体を製造するために用いる撹拌装置であって、
    底部と、底部に連なる円筒状の側壁部とによって形成され、前記インキ用材料の少なくとも一部である被撹拌物を収容する有底円筒状のタンク本体と、
    前記側壁部の、前記底部に連なる側とは反対側の端部に着脱自在に設けられるタンク蓋体と、
    前記底部および前記側壁部に外部から対向して設けられる加熱手段と、
    前記タンク蓋体に挿通して設けられ、前記タンク本体の中心軸線まわりに、互いに独立して回転する第1および第2回転軸と、
    前記第1回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に対して非接触状態で設けられる第1撹拌翼と、
    前記第2回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に接触して設けられる第2撹拌翼と、
    前記第1および第2回転軸を、互いに独立して回転駆動させる駆動手段であって、第2回転軸よりも第1回転軸を高速で回転駆動させる駆動手段と、を備え
    前記第1撹拌翼は、前記第1回転軸に垂直に固定される円板状の基部と、前記基部から半径方向外方に連なるブレードと、を含み、
    前記ブレードは、
    前記基部から半径方向外方になるにつれて、基部の表面を含む仮想一平面に対して一方側に離反するように傾斜した第1ブレードと、
    前記基部から半径方向外方になるにつれて、前記仮想一平面に対して他方側に離反するように傾斜した第2ブレードと、
    前記基部から半径方向外方に連なり、前記仮想一平面に沿って延びる第3ブレードと、を含むことを特徴とする撹拌装置。
  2. 前記第2回転軸は、円筒状に形成され、
    前記第1回転軸は、前記第2回転軸に挿通し、前記第2回転軸の軸線方向一端部から前記底部に向けて延出していることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
  3. 前記底部は、鉛直方向下方側に凸となるように湾曲している板状体であり、
    前記側壁部は、
    前記底部に連なり、底部から遠ざかるにつれて前記中心軸線から遠ざかるように、前記中心軸線に対して傾斜する第1壁部と、
    前記第1壁部に連なり、前記中心軸線に平行な第2壁部と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の撹拌装置。
  4. 前記第1回転軸または前記第2回転軸に固定され、前記タンク本体内において前記底部および前記側壁部に対して非接触状態で設けられる第3撹拌翼であって、前記中心軸線の延びる方向に関して前記第1撹拌翼に対して離間して設けられる第3撹拌翼を、さらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の撹拌装置。
  5. 前記駆動手段は、前記第1および第2回転軸を、互いに逆方向に回転駆動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の撹拌装置。
  6. 前記タンク蓋体が装着された状態の前記タンク本体内を減圧し、被撹拌物から水分を脱水する減圧脱水部を、さらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の撹拌装置。
  7. 前記第1および第2ブレードは、回転方向上流側から回転方向下流側に向かって、前記基部の半径方向内方に傾斜した位置で屈曲して前記基部に連なっていることを特徴とする請求項に記載の撹拌装置。
  8. 前記第1、第2および第3ブレードの回転方向下流側に臨む縁辺部は、回転方向下流側に臨んで先細状に形成されていることを特徴とする請求項またはに記載の撹拌装置。
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