JP6039338B2 - パラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
したがって、これまでパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の高い溶液粘度に起因して発生していた、吐出不良等の問題が起こらず、好適な条件での紡糸が可能となり、その結果、品位が良好な糸を再生産することができる。
<パラ型全芳香族ポリアミド>
本発明でいうパラ型全芳香族ポリアミドは、1種または2種以上の2価の芳香族基が、アミド結合により直接連結されたポリマーである。また、芳香族基には、2個の芳香環が酸素、硫黄、または、アルキレン基を介して結合されたもの、あるいは、2個以上の芳香環が直接結合したものも含む。さらに、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、クロル基等のハロゲン基等が含まれていてもよい。なお、2価の芳香族基を直接連結するアミド結合の位置は、パラ型である。
本発明においては、アミド系溶剤等に可溶であり、熱延伸を施すことにより強度や弾性率等の特性を向上できることから、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドを用いることが好ましい。
本発明におけるパラ型全芳香族ポリアミドは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、アミド系極性溶媒中で、芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分と芳香族ジアミン成分とを低温溶液重合、または界面重合等により反応せしめることにより得ることができる。
(芳香族ジカルボン酸ジクロライド成分)
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジカルボン酸クロライド成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、テレフタル酸クロライド、2−クロロテレフタル酸クロライド、2,5−ジクロロテレフタル酸クロライド、2,6−ジクロロテレフタル三クロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド等が挙げられる。また、これらの芳香族ジカルボン酸ジクロライドは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。これらのなかでは、汎用性や得られる繊維の機械的物性等の観点から、テレフタル酸ジクロライドが好ましい。なお、本発明においては、イソフタル酸クロライド等、パラ位以外の結合を形成する少量の成分を用いてもよい。
パラ型全芳香族ポリアミドの製造において使用される芳香族ジアミン成分としては、特に限定されるものではなく、一般的に公知なものを用いることができる。例えば、パラフェニオレンジアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−パラフェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン等を挙げることができる。これらは、1種類のみならず2種類以上を用いることができ、その組成比は特に限定されるものではない。なお、本発明においては、m−フェニレンジアミン等、パラ位以外の結合を形成する少量の成分を用いてもよい。
その組成比は特に限定されるものではないが、芳香族ジアミンの全量に対して、パラフェニレンジアミンの組成、および、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組成を、それぞれ30〜70モル%、70〜30モル%とすることが好ましく、さらに好ましくは、それぞれ40〜60モル%、60〜40モル%、最も好ましくは、それぞれ45〜55モル%、55〜45モル%の範囲とする。
[パラ型全芳香族ポリアミド成形体の種類等]
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法において原料として用いられるパラ型全芳香族ポリアミド成形品の種類は、特に限定されるものではない。公知の製造方法により製造される各種成形品そのものであってもよいし、パラ型全芳香族ポリアミド成形品の製造現場、あるいはパラ型全芳香族ポリアミド成形品を用いた各種製品への加工現場等で発生する中間製品または屑であってもよい。
なかでは、表面積が大きいため膨潤・溶解しやすく、また生産量が多いことから、パラ型全芳香族ポリアミド繊維およびその製造工程で発生した繊維屑を用いることが最も好ましい。
本発明のパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法は、パラ型全芳香族ポリアミドを無機塩を含まないアミド系溶媒に浸漬して膨潤させ、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを得る「膨潤工程」と、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドに無機塩を添加し、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを溶解させてパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液を得る「溶解工程」と、を含む。以下に、各工程について説明する。
膨潤工程においては、パラ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒中に浸漬して膨潤させ、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを得る。このとき、用いるアミド系溶媒が無機塩を含まないことが重要である。
用いるアミド系溶媒は、特に限定されるものではなく、パラ型全芳香族ポリアミドの重合に用いうるものであればよい。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム等の有機極性アミド系溶剤が挙げられる。これらの中では、取り扱い性や安定性および溶媒の毒性等の観点から、N−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましい。
膨潤工程におけるアミド系溶媒の使用量は、膨潤させるパラ型全芳香族ポリアミドの重量に対して、7〜15倍程度とすることが好ましい。使用量が7倍未満の場合には、膨潤が不十分となり好ましくない。一方で、15倍を超える場合には、ポリマー溶液中のポリマー濃度が低下するため、生産性が低下し好ましくない。
膨潤工程においては、パラ型全芳香族ポリアミドが浸漬したアミド系溶媒の温度を、30℃〜120℃の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、40℃〜80℃の範囲である。アミド系溶媒の温度が30℃未満では、成形品内部まで膨潤が進行せず未膨潤の部分が残り、未膨潤の部分が残った状態で次段階の溶解工程を実施すると、未膨潤部分が凝集物となって残留しやすくなる。また、120℃を超えた状態で保持すると、ポリマー劣化の懸念があるため好ましくない。
膨潤工程におけるパラ型全芳香族ポリアミド成形品のアミド系溶媒への浸漬時間については、使用する成形体の形状および処理温度により異なるが、未膨潤の部分が残らない状態とするためには、およそ数時間以上を必要とする。
溶解工程においては、上記の膨潤工程で得られた膨潤パラ型全芳香族ポリアミドに無機塩を添加し、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを溶解させる。
溶解工程で添加する無機塩としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物であれば、特に限定されるものではない。アミド系溶媒への溶解性の観点から、塩化リチウム、のアルカリ金属塩化物塩、および塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩化物塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にコスト面から、塩化カルシウムを使用することが最も好ましい。
溶解工程において添加する無機塩の添加量は、原料として用いたパラ型全芳香族ポリアミド成形品の質量に対して50〜160質量%の範囲とすることが好ましい。さらには、65〜130質量%とすることがより好ましい。添加量が50質量%未満の場合には、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドのアミド系溶媒に対する溶解性が不十分となるため好ましくない。また、160質量%を超える場合には、無機塩自体をアミド系溶媒に完全に溶解させることが困難となるため好ましくない。
さらに、無機塩の添加量は、製造されるパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の質量に対して、10質量%以下とすることが好ましい。10質量%を超える場合には、無機塩がパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液に完全に溶解しない場合がある。
本発明においては、溶解工程における系の温度(溶解温度)を、0〜40℃の範囲とすることが必要不可欠である。40℃より高い温度で溶解した場合には、溶解後のパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の粘度が高くなり、紡糸溶液として不適となる。また、0℃未満の場合には、溶解速度が非常に遅くなる。
溶解工程においては、より均一なパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液を速やかに得るために、せん断応力下にて混練を実施することが好ましい。せん断応力下にて混練を実施すると溶解性を向上させることができ、工業的に大変有益となる。
用いる混練装置としては、せん断混練りのできるものであれば特に制限はなく、例えば、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー式押出機、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。
得られるパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液には、必要に応じて、例えば、安定剤、難燃剤、離型剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、接着性向上樹脂、フィラー等の添加物を含有させることも可能である。
パラ型全芳香族ポリアミド再生溶液全体に対するパラ型全芳香族ポリアミドの濃度は、特に限定されるものではなく、再生繊維の生産性および溶液の粘性の観点から、4〜10質量%とすることが好ましい。
実施例および比較例における各特性値は、以下の方法で測定した。
(1)溶液の粘度測定
溶液の粘度測定は、JIS Z 8803に従い、落球粘度計を用いて実施した。測定時の温度は100℃とした。
[パラ型全芳香族ポリアミド溶液の製造]
窒素を内部にフローしている攪拌槽に、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する)を入れ、パラフェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが当モルとなるよう秤量して投入し、溶解させた。得られたジアミン溶液に、テレフタル酸ジクロライドを、ジアミン総モル量と当モル秤量して投入し、反応させた。反応終了後、水酸化カルシウムで中和し、パラ型全芳香族ポリアミド溶液(コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液)を得た。得られたパラ型全芳香族ポリアミド溶液の粘度は、1210poiseであった。
[パラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造]
(膨潤工程)
乾燥処理を実施したパラ型全芳香族ポリアミドに対して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP:和光純薬製特級試薬)を質量比で10倍量加え、60℃にて1時間加温を実施してパラ型全芳香族ポリアミドを膨潤させ、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを得た。
上記で得られた膨潤パラ型全芳香族ポリアミドに、NMP/塩化カルシウム=86/14(質量比)のスラリーを、パラ型全芳香族ポリアミドの質量に対して塩化カルシウムの添加量が67質量%となる量で添加した。続いて、浅田鉄工株式会社製プラネタリーミキサー(製品名:PVM−5)を用いて、20℃で120分間の混練を実施し、パラ型全芳香族ポリアミド再生溶液を得た。
得られたパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液におけるパラ型全芳香族ポリアミドの濃度は6質量%、溶液の粘度は1230poiseであった。
溶解工程における温度を40℃とする以外は実施例1と同様に実施し、パラ型全方向族ポリアミド溶液を得た。得られた結果を表1に示す。
溶解工程における温度を60℃とする以外は実施例1と同様に実施し、パラ型全方向族ポリアミド溶液を得た。得られた結果を表1に示す。
Claims (3)
- パラ型全芳香族ポリアミド成形体からパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液を製造する方法であって、
パラ型全芳香族ポリアミド成形体を無機塩を含まないアミド系溶媒に浸漬して膨潤させ、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを得る膨潤工程と、
前記膨潤パラ型全芳香族ポリアミドに無機塩を添加し、膨潤パラ型全芳香族ポリアミドを溶解してパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液を得る溶解工程と、を含み、
前記溶解工程における溶解温度を、0〜40℃の範囲とするパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法。 - 前記パラ型全芳香族ポリアミド成形体が、パラ型全芳香族ポリアミド繊維の製造工程で発生した生産屑である請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法。
- 前記パラ型全芳香族ポリアミド成形体は、コポリパラフェニレン・3、4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる成形体である請求項1記載のパラ型全芳香族ポリアミド再生溶液の製造方法。
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