JP6038479B2 - ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体 Download PDF

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本発明は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、断熱材、緩衝包材、通箱などに用いられるポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及び該発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体に関するものである。特に、剛性が必要とされる自動車部材、通箱等に使用される発泡粒子と発泡成形体に、関するものである。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、型内発泡成形体の長所である形状の任意性、軽量性、断熱性などの特徴を有する。また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率に優れており、また、ポリエチレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体と比較すると、寸法精度、耐熱性、圧縮強度が優れている。
これらの特徴により、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られる型内発泡成形体は、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材をはじめ、断熱材、緩衝包装材、通箱など様々な用途に用いられている。
特に、剛性が必要とされる自動車部材、通箱等では、高剛性を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とした発泡粒子を用いるために、型内発泡成形時には、0.4MPa(ゲージ圧)以上の加熱水蒸気圧が必要となる。一般に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形用の成形機は、加熱水蒸気の圧力が0.4MPa(ゲージ圧)以下の耐圧仕様であるものが大半を占めており、該成形機を用いて通常生産される成形加熱蒸気圧力はおおむね0.36MPa(ゲージ圧)程度までであり、加熱水蒸気圧を低下できる高剛性のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の開発が、行われてきた。
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体においては、自動車内装部材、自動車バンパー用芯材、通箱など、剛性の高い製品が求められる用途も多い。ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の剛性は、おおむね原料樹脂の剛性と発泡倍率によって決まるが、現状では、これらの用途には型内発泡成形体の密度の高い、すなわち、発泡倍率の低い製品を用いることにより、高い剛性を充足させている。しかし、高密度化は、本来、型内発泡成形体に求められる軽量性を損なう。高密度化は、特に、自動車部材などでは装着する自動車の燃費悪化の原因となり、また、最終廃棄物重量の増加につながるため、可能であるならば回避したい手段である。
また、高い剛性を達成するためのもうひとつの手段である樹脂自体の剛性を上げると、
型内発泡成形における生産条件が厳しくなり、成形加工コストも増大する。すなわち、高い剛性を持つポリプロピレン系樹脂とは、一般にコモノマー含量の少ない、融点の高い樹脂となるが、樹脂の融点が高くなるに伴い、良好な成形体を得るために必要となる成形加熱蒸気の圧力は高くなる傾向にある。このため、より高い剛性を求めて、より高い剛性を持つポリプロピレン系樹脂を使用する場合、耐圧仕様の高い成形機や金型を用いる必要があり、設備コストが高くなると共に、ユーティリティコストが高くなるため、成形加工コストが高くなる。
一方、近年、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体においても、外観が重要視されるものが増えてきている。この要求は、使用者の目に触れる場所に使用される自動車内装部材や通箱といった用途に多く、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、通常求められる剛性、軽量性、断熱性などの物性に加え、良好な外観が求められる。
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、その製法上、粒子間の隙間や粒子の亀甲模様が見られるが、外観を重視する製品にはこれらを嫌うものも多い。粒子間の隙間を目立たなくさせるためには、一般に、型内発泡成形時の加熱蒸気圧力を高くし、粒子同士の融着を促進させるなどの方法が取られる。
また、粒子の亀甲模様を消すためには、金型表面に微細な凹凸模様を転写した金型を用いるなどの技術(例えば、特許文献1参照)なども行われているが、該技術においても型内発泡成形時の加熱蒸気圧力を高目にして、発泡成形体への凹凸模様の転写を促進させている。これらの技術から判るように、粒子間の間隙が目立たない外観が良好な型内発泡成形体、すなわち、表面美麗性の高い型内発泡成形体を得るためには、型内発泡成形時の成形加熱蒸気圧力を粒子間の融着に必要となる圧力より高くする必要がある。 一方、型内発泡成形時の成形加熱蒸気圧力が逆に高すぎると、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面にしわが入ったり、あるいは、いわゆるヒケが発生し、亀甲模様は消えるものの、やはり表面美麗性が低下してしまうという問題点がある。
特に、厚みが異なる部位を有する剛性の高いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体においては、肉厚部の融着性を確保する為には成形加熱蒸気圧力を高くする必要があるが、該蒸気圧力は薄肉部の成形においては高すぎる圧力となり、薄肉部にしわやヒケが発生して表面美麗性が低下してしまう。
逆に、薄肉部の表面美麗性を求める為に、低めの成形加熱蒸気圧力で成形すると、肉厚部の融着性が低下してしまう。
以上のように、剛性が高く、かつ、表面美麗性の高いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を、特に、厚みが異なる部位を有する剛性の高いポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を、特殊な成形機を使用しなくとも、安定的により低い成形加工温度で製造することができる技術が求められている。
ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の剛性を向上するための技術に関して、様々な技術が検討されている。ポリプロピレン系樹脂で高い剛性を得るためには、単純にホモポリプロピレンを用いることが考えられる。
例えば、特許文献2には、引張弾性率が15000〜25000kg/cmで示差走査型熱量計にて得られるDSC曲線の高温側ピークの熱量が30〜60J/gであるホモポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関しての技術が開示されている。また、特許文献2には、MFRが20〜100g/10分の範囲にあるホモプロピレン系樹脂を用いて、比較的低い成形温度で型内発泡成形体を得ることのできる発泡粒子が作製しうるという技術が開示されている。
しかし、特許文献2記載の技術では、良好な発泡成形体を得るために必要な成形時の加熱蒸気の圧力が0.4〜0.6MPa(ゲージ圧)であると記載されており、前述のように0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機では成形できない。また、特許文献2には、成形体の表面美麗性に関しては特段の記載はない。
また、特許文献3には、ホモプロピレン、またはα−オレフィン含有量が1重量%未満であるランダム共重合体のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用することによって、型内成形時の加熱水蒸気圧を0.4MPa(ゲージ圧)以下にすることができる技樹が開示されている。
しかしながら、特許文献3記載の技術では、ホモポリプロピレンや、コモノマー含量の少ないランダムポリプロピレン系樹脂を用いているが、表面美麗性に関して特段の記載は無い。
類似の評価基準としては、発泡粒子同士の融着が60%以上という基準で評価しているが、該基準は型内発泡成形体内部の粒子同士がそれぞれ部分融着するという評価基準であり、表面美麗性を得るという基準に比べ、低い成形加熱蒸気圧力でも満たしうる基準である。該公報記載の技術では、実際に0.4MPa(ゲージ圧)耐圧使用の成形機では表面美麗な成形体を得ることは難しいものと思われる。
ホモポリプロピレンほど高い剛性は得られないものの、成形性を重視してポリプロピレン系ランダム共重合体を用いた技術も検討されている。
例えば、特許文献4には、基材樹脂として、融点が149〜157℃、MFRが1〜20g/10分、かつ半結晶時間が一定の値以下のプロピレン系ランダム共重合体を用いる技術が開示されている。
また、特許文献5には、型内発泡成形に用いるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の結晶状態について、示差走査型熱量分析(以下、「DSC」と略す)を用いて得られる融解結晶カーブの高温側結晶量と低温側結晶量の関係を一定の範囲に設定することにより、得られる型内発泡成形体の圧縮強度を向上する技術が開示されている。
しかし、これらの技術に関しては、型内発泡成形に必要となる加熱蒸気の圧力は0.4〜0.5MPa(ゲージ圧)と高く、前記特許文献2〜3に記載の技術と同様、特に耐圧性能の高い成形機を用いることによって可能となっている技術である。
さらに、特許文献6には、1−ブテンをコモノマーとして含むポリプロピレン系樹脂を用いることにより、樹脂融点に対して高い引張弾性率、すなわち剛性を有する樹脂発泡粒子が得られ、これを用いることにより、高い剛性を有する型内発泡成形体を得ることができるという技術が開示されている。
しかし、特許文献6記載の技術に関しても、型内発泡成形に必要となる加熱蒸気の圧力は0.4MPa(ゲージ圧)前後であり、他の技術と比較すると、比較的低い成形加熱蒸気圧力であるものの、実施されている例の中で最も低いもので0.36MPa(ゲージ圧)であり、現状よく用いられている0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機の仕様ぎりぎりのレベルである。また、表面美麗性に関して特段の記載はない。
さらに、特許文献7には、1−ブテン成分量を3〜12重量%含むプロピレン・1−ブテンランダム共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることにより、高い剛性を持つポリプロピレン系樹脂発泡成形体が得られる技術が開示されている。特許文献7記載の技術を用いた場合、成形加熱蒸気の圧力が0.3MPa(ゲージ圧)前後と現状よく用いられる0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機でも成形可能であると記載されている。
しかし、特許文献7記載の実施例を見ると、0.3MPa(ゲージ圧)前後の成形加熱蒸気圧力で得られる型内発泡成形体の剛性は、JIS K6767に準じて、20℃で測定した圧縮歪50%時の圧縮強度が6.2kg/cmであり、高い剛性を求める用途には十分ではない。
また、エチレン成分を含まない1−ブテン単独系のポリプロピレン系樹脂ランダム共重合体は、エチレン成分を含むポリプロピレン系樹脂ランダム共重合体に比べて硬くもろい性質があり、この性質が発泡体の基材樹脂として用いた場合に、圧縮後の寸法回復性や、低温領域での衝撃特性が劣る性質となる。ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、同じ型内発泡成形体であるポリスチレン系樹脂発泡成形体と比べ、剛性面では劣るものの、繰り返し衝撃への耐性や柔軟性に優位性があり、これをもって緩衝包装材などに用いられている面もある。このため、特許文献7に記載の技術は、剛性のみを目的とする用途以外の一般的な緩衝包装用途には向いていないという欠点もある。
以上のように、高い剛性が必要とされる用途には、高い成形加熱蒸気圧力に耐えうる特殊な成形機を使用している現状がある。しかし、成形機の耐圧性能を上げるためには、成形機の強度を高めるため装置を大型にする必要があり、また金型も肉厚にする必要があるため、装置コストがかなり上昇するという短所がある。
また、成形加熱蒸気の圧力を上げるということは、成形時の加熱に必要な蒸気量も増加することとなり、これを冷却するための冷却水量が増加するなどユーティリティコストも上昇する。さらに、より高温に加熱するために成形時の加熱時間が長くなり、さらに加熱された金型を冷却水で冷却する工程にもより長い時間を必要とするため、製品あたりの生産サイクルが長くなり生産性が悪化する。さらには、型内発泡成形では金型形状が複雑であるため、形状によっては、成形加熱時に金型の一部に応力が集中し、金型が破損することもあり、さらにコストアップの原因となる。
以上のように、型内発泡成形において成形加熱蒸気圧力が高いということは様々な欠点を有しており、できる限り低い成形加熱蒸気圧力で成形できることが望ましい。既存技術の範疇では、現状多く用いられている0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機にて安定生産でき、かつ高い剛性を持つ型内発泡成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることは困難である。さらには、型内発泡成形体の表面美麗性を満足する技術に関しては、現状存在しないと言わざるをえない。
また、異なる物性の樹脂を混合して用いることにより、新たな特性を樹脂に持たせる技術も開発されている。
特許文献8には、MFR6〜10g/10分のポリプロピレン系樹脂90〜10重量%と、MFR0.5〜3g/10分ポリプロピレン系樹脂10〜90重量%を混合した樹脂からなり、混合樹脂のMFRが2〜5g/10分になることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子が記載されている。該発泡粒子を用いると、成形体の表面性、融着が良好で成形体にヒケが無く、成形時間の短い成形体が得られることが記載されている。しかしながら、該公報では主に成形時間について効果を示しており、特に剛性については言及されていない。さらに、該公報には成形体のヒケという視点での評価はあるものの、表面美麗性に関して特段の記述は無い。
特許文献9には、特定のメルトフローレート、融点、および曲げ弾性率を有するエチレン−プロピレン−ブテンランダム共重合体を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されており、一段発泡粒子内に内圧を付与した後、蒸気で加熱する二段発泡法により得られた二段発泡粒子についても記載されている。そして、このような二段発泡粒子は、低い加熱蒸気圧にて成形できることが記載されている。
しかしながら、特許文献9の技術においては、基材樹脂の融点が145℃以下であることから、剛性が要求される用途への適用は困難である。また、このような二段発泡粒子が、厚みが異なる部位を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とした際に、肉厚部の融着性が良好となり、かつ、薄肉部の表面美麗性も優れることについては言及されていない。
特開2000−108134号公報 特開平8−277340号公報 特開平10−45938号公報 特開平10−316791号公報 特開平11−156879号公報 特開平7−258455号公報 特開平1−242638号公報 特開2000−327825号公報 特開2009−280783号公報
本発明は、高剛性を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形において、成形圧力を大幅に低下可能で、現状多く用いられている0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機でも安定的に生産でき、剛性が高く、型内発泡成形体内部の融着に優れ、かつ表面美麗性の高い型内発泡成形体が得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供するものである。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究した結果、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解ピーク(融解熱量領域)と高温側融解ピーク(融解熱量領域)の2つの融解ピーク(融解熱量領域)を有し、さらに、前記低温側融解ピーク(融解熱量領域)に、DSC曲線の微分曲線中に極大値を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用して型内発泡成形を行うことにより、上記課題が解決することを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は以下の構成よりなる。
[1] プロピレンに共重合されるコモノマーとして、1−ブテンおよびエチレンを含み、1−ブテン含量とエチレン含量の総和が1.0重量%以上、且つ、1−ブテン含量が6.0重量%以下、エチレン含量が3.0重量%以下であり、かつ融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
発泡倍率が20倍以上60倍以下であり、
10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解熱量領域(Ql)と高温側融解熱量領域(Qh)の2つの領域を有し、
高温側融解熱量の比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(%)が10%以上30%以下であり、且つ、20℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線の微分曲線中に、105℃以上120℃以下の間に極大値を有することを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[2] 基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂の融点が、147℃以上153℃以下であることを特徴とする、[1]記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3] 少なくとも2回の発泡工程を経て得られることを特徴とする、[1]あるいは[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[4] [1]〜[3]の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形してなることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[5] 固定型と移動型の金型を用いて得られる型内発泡成形体において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填した場合にいずれか一方の型のみで形が形成される部位を有することを特徴とする、[4]記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[6] 固定型と移動型の金型を用いて得られる型内発泡成形体において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填した場合にいずれか一方の型のみで形が形成される部位の形状が、前記部位から最も大きい球を切り出す際に、直径20mm以上100mm以下の球を切り出すことができる形状であることを特徴とする、[5]記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[7]底面と底面周縁立ち壁部からなり、物品収納可能な内部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
内部底面に少なくとも1つの立ち壁部を有し、
内部底面立ち壁部の厚みが、底面周縁立ち壁部厚みの1.2倍以上5倍以下であり、
内部底面立ち壁部の高さが、底面の厚みの2倍以上30倍以下であることを特徴とする、[5]あるいは[6]記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[8] 内部底面の立ち壁部が、物品収納可能な内部を区画する為の立ち壁部であることを特徴とする、[7]記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[9] 内部底面の立ち壁部の高さ方向の延長線上に、充填機先端の転写跡が残っていることを特徴とする、[7]あるいは[8]に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
[10] ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が、ラゲッジボックスであることを特徴とする、[7]〜[9]の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いることにより、成形圧力を大幅に低下させることが可能であり、現状多く用いられている0.4MPa(ゲージ圧)耐圧仕様の成形機でも安定的に生産でき、剛性が高く、型内発泡成形体内部の融着に優れ、かつ、表面美麗性の優れた型内発泡成形体が得ることができる。特に、肉厚部と薄肉部とが混在する型内発泡成形体において、肉厚部内部の融着性が良好であると共に、薄肉部の表面美麗性も良好な型内発泡成形体を得ることが可能となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)より得られるDSC曲線(温度vs吸熱量)の一例である。DSC曲線は、低温側融解熱領域と高温側融解熱領域の2つの融解熱量領域を有している。 ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の、20℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)より得られるDSC曲線の微分曲線(温度vs吸熱量の微分量)の一例である。本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する曲線Aでは、105℃以上120℃以下の範囲内に極大値(点E)が存在し、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に関する曲線Bでは、極大値が存在しない。 ポリプロピレン系樹脂の融点を求めるために、示差走査熱量測定(DSC)において、10℃/分の昇温速度での40℃から220℃までの昇温、10℃/分の降温速度での220℃から40℃までの降温、10℃/分の昇温速度での40℃から220℃までの昇温の操作を行った2回目の昇温時のDSC曲線の一例である。 本願実施例および比較例で用いた肉厚部と薄肉部とが混在するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であり、具体的には、箱型の内部底面に立ち壁部が設けられた箱型の型内発泡成形体である。 図4に例示したポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の型内発泡成形工程において、充填機を通してポリプロピレン系樹脂発泡粒子(格子部)を固定型(右上がり斜線部として示す)と移動型(右下がり斜線部として示す)からなる金型に充填した場合の断面を示す一例である(ただし、金型を搭載する型内発泡成形機は図示せず。)。 図5の要部を拡大すると共に、型内発泡成形する際の水蒸気の流れを示した一例である。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子では、10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)した際に得られるDSC曲線において、図1に示されるように、全融解熱量は、低温側融解熱量領域と高温側融解領域の2つの融解熱量領域に分けられる。
なお、本発明においては、全融解熱量(Q)、低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)を、次のように定義する。
低温側融解熱量(Ql)および高温側融解熱量(Qh)の和である全融解熱量(Q)とは、得られるDSC曲線において、低温側融解熱が開始する温度100℃での吸熱量(点A)から、高温側融解が終了する温度での吸熱量(点B)を結ぶ線分ABを引き、線分ABとDSC曲線で囲まれた部分である。
DSC曲線の低温側融解熱量および高温側融解熱量の2つの融解熱量領域の間の最も吸熱量が小さくなる点を点Cとし、点Cから線分ABへ垂直に上げて交わる点をDとした時、線分ADと線分CDとDSC曲線で囲まれた部分が、低温側融解熱量(Ql)であり、線分BDと線分CDとDSC曲線で囲まれた部分が高温側融解熱量(Qh)である。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、高温側融解熱量(Qh)の比率[=Qh/(Ql+Qh)×100(%)](以下、「高温熱量比」という場合がある)の値としては、10%以上30%以下、より好ましくは15%以上25%以下であり、より好ましくは、15%以上20%以下である。
高温熱量比が10%未満の場合、型内発泡成形で得られる成形体の圧縮強度が低く実用強度が低下する傾向がある。また、高温熱量比が30%を超える場合は、型内発泡成形で得られる発泡体の圧縮強度が高くなるが、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡力が低すぎ、型内発泡成形体全体が融着不良となる、あるいは、融着させるために高い成形圧が必要となる傾向がある。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率は、20倍以上60倍以下であり、好ましくは30倍以上50倍以下である。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率が20倍未満では、低温側熱量領域のDSC曲線の微分曲線中に極小値を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることが困難となり、型内発泡体を得る成形圧が高くなる傾向がある。また、発泡倍率が60倍を超えると、型内発泡成形して得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の圧縮強度、等の実用機械特性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率とは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量w(g)を測定後、水没法にて体積v(cm)を測定し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρr(本願では0.9g/cmとする)との比(ρr/ρb)である。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、最も重要な点は、20℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線の微分曲線において、105℃以上120℃以下の間に極大値を有することである。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC曲線の微分曲線は、図2に示すように、前記低温側融解熱量領域に、極大値(点E)を有している。極大値(点E)は、ポリプロピレン系樹脂粒子にかかる熱履歴温度を示し、型内成形体を得る成形圧に大きく影響しており、微分曲線の極大値を示す温度は、105℃以上120℃以下であることが好ましく、110℃以上115℃以下であることがより好ましい。
微分曲線での極大値を示す温度が105℃未満の場合、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の融着不良となったり、融着させるために、高い成形圧が必要となる傾向がある。一方、極大値を示す温度が120℃を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中のセル膜が破泡し、得られる成形体の収縮率が大きく、大きなシワを発生し、良好な成形体を得ることができない傾向がある。
本発明における、低温側融解熱量領域において、DSC曲線の微分曲線中に極大値を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、例えば、次のような方法を組み合わせることによって、容易に得ることができる。
(1)一旦、ポリプロプレン系樹脂発泡粒子を得た後、無機ガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素等)を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させるといった、少なくとも2回の発泡工程を経る方法、
(2)グリセリン、ポリエチレングリコール、炭素数が10以上25以下の脂肪酸のグリセリンエステルよりなる群、或いは、メラミン、イソアヌル酸等の吸水性物質、から選ばれる少なくとも1種の親水性化合物を0.05重量%以上2重量%以下含んでなるポリプロピレン系樹脂粒子を、加熱水蒸気中に発泡させる方法、
(3)複数のポリプロピレン系樹脂をブレンドしたポリプロピレン系樹脂粒子を原料として、加熱水蒸気中に発泡する方法、等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂は、プロピレンにコモノマーとして、1−ブテンおよびエチレンを含んだ共重合体樹脂である。
ただし、1−ブテンおよびエチレン以外のコモノマーを含んでいてもよく、このような共重合可能なコモノマーとしては、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィン、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。
これらは、単独で使用されてもよいし、併用されてもよい。
ただし、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る際の発泡性や、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とした際の表面美麗性が優れる点からは、コモノマーとして、1−ブテンおよびエチレンのみを用いることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に用いられる基材樹脂としては、コモノマーとして、少なくとも1−ブテンおよびエチレンを含み、1−ブテン含量およびエチレン含量の総和が1.0重量%以上であり、且つ、1−ブテン含量が6.0重量%以下、エチレン含量が3.0重量%以下であり、融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂である。
1−ブテン含有量およびエチレン含有量の総和が1重量%未満のポリプロピレン系樹脂は、融点が160℃を超える樹脂であり、得られる発泡粒子を型内発泡成形しても、成形圧が0.40MPa(ゲージ圧)を超えてしまい、成形が困難な場合がある。また、仮に得られる発泡粒子に対して成形圧0.40MPa(ゲージ圧)以下で型内発泡成形を実施しても、得られる成形体の外観は著しく損なう傾向がある。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に用いられる基材樹脂中の1−ブテン含量としては、6.0重量%以下であるが、3.0重量%以上5.0重量%以下がさらに好ましい。1−ブテン含量が6.0重量%を超えると、基材樹脂の融点が140℃未満となり、型内発泡成形時の水蒸気加熱圧は低下するものの、ポリプロピレン系樹脂自体の剛性が弱くなり、実用剛性を満足しなくなる傾向がある。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に用いられる基材樹脂中のエチレン含量としては、3.0重量%以下であるが1.0重量%以下が好ましく、0.2重量%以上1.0重量%以下がさらに好ましい。
エチレン含量が3.0重量%を超えると、発泡成形体の剛性(圧縮強度)が低くなり、自動車部材等での実用剛性に耐えなくなる傾向がある。
また、基材樹脂の融点としては、高い剛性を確保しつつ、低い成形圧を達成する観点からは、146℃以上154℃以下がより好ましく、147℃以上153℃以下が最も好ましい。
なお、上述のような、特定の1−ブテン含量やエチレン含量であり、特定の融点を有するポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂メーカーのカタログや情報に基づき選定可能であり、また、ポリプロピレン系樹脂メーカーに依頼することにより、公知の技術により生産することが可能である。
本発明で用いられる基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂は、無架橋の状態が好ましいが、有機過酸化物や放射線により架橋させても良い。
本発明で用いられる基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と混合使用可能な他の熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等を、ポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用しても良い。
本発明で用いられる基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂の特性を損なわない程度に、発泡倍率向上を促す親水性化合物、発泡時に気泡核の形成を促す発泡核剤、相溶化剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。
発泡倍率向上を促す親水性化合物としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物等の吸水性有機物、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等の水溶性無機物、セチルアルコール、ステアリルアルコールといった炭素数12以上18以下の脂肪アルコール類などが挙げられる。
発泡時に気泡核の形成を促す発泡核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機物質、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造するに際しては、まず、ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する。
ポリプロピレン系樹脂粒子を製造する方法としては、押出機を用いる方法があげられる。
具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂に予め、必要に応じて親水性化合物や発泡核剤、その他の添加剤をブレンドし、ブレンド物を押出機に投入して溶融混練し、ダイスより押出し、冷却した後、カッターにて細断することにより、粒子形状とすることができる。
以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂粒子を用いて、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する好ましい態様としては、
密閉容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を二酸化炭素などの発泡剤と共に水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出する発泡工程を経て得るという、水分散系でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法があげられる。
具体的には、
(1)密閉圧力容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子および水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて、密閉容器内を真空引きした後、1MPa(ゲージ圧)以上2MPa以下(ゲージ圧)の発泡剤を導入し、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱する。加熱することによって、密閉容器内の圧力が約2MPa(ゲージ圧)以上5MPa以下(ゲージ圧)まで上がる。必要に応じて、発泡温度付近にて、さらに発泡剤を追加して所望の発泡圧力に調整、さらに温度調整を行った後、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
また、別の好ましい態様としては、
(2)密閉容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、必要に応じて密閉容器内を真空引きした後、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上の温度まで加熱しながら、発泡剤を導入してもよい。
さらに、別の好ましい態様としては、
(3)密閉容器にポリプロピレン系樹脂粒子、水系分散媒、必要に応じて分散剤等を仕込んだ後、発泡温度付近まで加熱し、さらに発泡剤を導入し、発泡温度とし、密閉容器の内圧よりも低い圧力域に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
なお、低圧域に放出する前に、二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を圧入することにより、密閉容器内の内圧を高め、発泡時の圧力開放速度を調節し、更には、低圧域への放出中にも二酸化炭素、窒素、空気あるいは発泡剤として用いた物質を密閉容器内に導入して圧力を制御することにより、発泡倍率の調整を行うこともできる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、前述したとおり、10℃/分の昇温速度で昇温した示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解熱量と高温側融解熱量の2つの融解熱量を有する。
2つの融解熱量領域を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、前述の水分散系でのポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法において、発泡時の密閉容器内温度を適切な値に設定することにより容易に得られる。
すなわち、発泡時の密閉容器内温度としては、通常、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂の融点をTm、融解終了温度をTfとする場合、Tm−10(℃)以上が好ましく、Tm−8(℃)以上Tf(℃)未満がより好ましく、Tm−5(℃)以上Tf−2(℃)以下の温度がさらに好ましい。
ここで、前記ポリプロピレン系樹脂の融点Tmとは、図3に示すように、示差走査熱量計DSCを用いて、ポリプロピレン系樹脂1mg以上10mg以下を、40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温し、その後220℃から40℃まで10℃/分の速度で冷却し、再度40℃から220℃まで10℃/分の速度で昇温した時に得られるDSC曲線における、2回目の昇温時の融解ピーク温度である。
また、融解終了温度Tfとは、2回目の昇温時の融解ピークの高温側のすそが、高温側でベースラインの位置に戻る時の温度である。
前述した高温側融解熱量(Qh)の比率[=Qh/(Ql+Qh)×100(%)]は、例えば、前記密閉容器内温度での保持時間(所望の密閉容器内温度に達した後から発泡するまでの保持時間)、発泡温度(発泡時の温度であり、前記密閉容器内温度と同じである場合や異なる場合がある)、発泡圧力(発泡時の圧力)等により適宜調整することができる。一般的には、保持時間を長くする、発泡温度を低くする、発泡圧力を低くすることにより、DSC比あるいは高温側融解ピーク熱量が大きくなる傾向がある。以上のことから、保持時間、発泡温度、発泡圧力を系統的に適宜変化させた実験を何回か試行することにより、所望の高温側融解熱量の比率となる条件を容易に見出すことができる。なお、発泡圧力の調節は、発泡剤の量により調節することできる。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂粒子を分散させる密閉容器には、特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
本発明で用いられる発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の飽和炭化水素類、ジメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、空気、窒素、二酸化炭素、水等の無機ガスが挙げられる。これらの中でも、特に環境負荷が小さく、燃焼危険性も無いことから、二酸化炭素や水を用いることが望ましい。
本発明においては、水系分散媒中、ポリエチレン系樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤、分散助剤を使用することが好ましい。
分散剤として、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
分散助剤として、カルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、n−パラフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。これらは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリンよりなる群から選ばれる少なくとも一種、および分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを併用することが好ましい。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂粒子は、水系分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、水系分散媒100重量部に対して、20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
上述したような、水分散系でポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法の他に、水系分散媒を用いず、例えば、密閉容器中でポリプロピレン系樹脂粒子に直接発泡剤を接触させ、発泡剤を含浸して発泡性ポリプロピレン系樹脂粒子を得た後、この発泡性ポリプロピレン系樹脂粒子に水蒸気を接触させるなどして発泡させ、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることもできる。
以上のように、ポリプロピレン系樹脂粒子からポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る工程を「一段発泡工程」と称す場合があり、このようにして得たポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「一段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
一段発泡粒子は、製造する際の発泡剤の種類にも依るが、発泡倍率が10倍に達しない場合がある。更には、一段発泡粒子の20℃/分の昇温速度のDSC曲線の微分曲線において、105℃以上120℃以下に、微分曲線の極大値が現れない場合もある。
このような場合には、一段発泡粒子に、無機ガス(例えば、空気、窒素、二酸化炭素、等)を含浸して内圧を付与した後、特定の圧力の水蒸気と接触させることにより、一段発泡粒子よりも発泡倍率が向上した発泡粒子であって、20℃/分の昇温速度のDSC曲線の微分曲線において、105℃以上120℃以下に、極大値を有する本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得ることができる。
このように、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をさらに発泡させてより発泡倍率の高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子とする工程を、「二段発泡工程」と称す場合がある。二段発泡工程を経ることにより、105℃以上120℃以下の低温側熱量領域のDSC微分曲線中に、極大値を有する本発明の発泡粒子を得ることができる。このような二段発泡工程を経て得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「二段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
本発明において、二段発泡工程における水蒸気の圧力は、20℃/分の昇温速度のDSC曲線の微分曲線において、105℃以上120℃以下に、極大値を有する二段発泡粒子を得る際に非常に重要であり、二段発泡粒子の発泡倍率を考慮した上で、0.04MPa(ゲージ圧)以上0.25MPa(ゲージ圧)以下に調整することが好ましく、0.05MPa(ゲージ圧)以上0.15MPa(ゲージ圧)以下に調製することがより好ましい。
二段発泡工程における水蒸気の圧力が0.04MPa(ゲージ圧)未満では、微分曲線中に極大値を発現しない場合があり、0.25MPa(ゲージ圧)を超えると、微分曲線中に極大値は発現するものの、得られる二段発泡粒子同士が合着してブロッキングしてしまい、その後の型内発泡成形に供することができなくなる傾向がある。
一段発泡粒子に含浸する空気の内圧は、二段発泡粒子の発泡倍率および二段発泡工程の水蒸気圧力を考慮して適宜変化させることが望ましいが、0.2MPa以上(絶対圧)0.6MPa以下(絶対圧)であることが好ましい。
一段発泡粒子に含浸する空気の内圧が0.2MPa(絶対圧)未満では、発泡倍率を向上させるために高い圧力の水蒸気が必要となり、二段発泡粒子がブロッキングする傾向にある。一段発泡粒子に含浸する空気の内圧が0.6MPa(絶対圧)を超えると、所望の発泡倍率を得るための水蒸気圧力が低くなり、微分曲線中に極大値を有さない二段発泡粒子となる傾向がある。
このように、一段発泡工程に比べ、二段発泡工程のように、2回以上の発泡工程を経て得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、20℃/分の昇温速度のDSC曲線の微分曲線において、105℃以上120℃以下の間に極大値を有するため、本発明において好ましい態様である。
以上のようにして得られる本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子に比べて、型内発泡成形する際の水蒸気の通りが良好であるという特長を有する。
従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形において、金型面から水蒸気を噴出させる際に、金型面に近傍のポリプロピレン系樹脂発泡粒子のみが急激に膨張し、融着してしまい、型内発泡成形体内部に相当する部分へ水蒸気が通りにくくなる為、金型面近傍の温度は上昇するが、型内発泡成形体内部の温度は上昇しない。その結果、金型面近傍に相当する型内発泡成形体表面は美麗となるものの、型内発泡成形体内部のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の融着性が劣ったものとなりやすかった。
そして、型内発泡成形体内部の融着性を向上させる為には、水蒸気圧力を高める(水蒸気温度を高める)必要があった。
また、型内発泡成形体内部の融着性低下は、得られる型内発泡成形体の形状にも依存する。
例えば、固定型と移動型の金型を用いた型内発泡成形体において、いずれか一方の型のみで形が形成される部位を有する形状のものでは、当該部位は、型内発泡成形時に、他の部位に比べて水蒸気の通りが低いことから、融着性が低下する傾向にある。
なお、「固定型と移動型の金型を用いた型内発泡成形体において、発泡粒子を金型内に充填した場合にいずれか一方の型のみで形が形成される部位」を、以降「融着困難部位」と略して記載する。
「融着困難部位」の具体例としては、例えば、図4または図6の、内部底面立ち壁部などが挙げられる。
融着性が低下しやすい別の型内発泡成形体形状としては、例えば、肉厚部と薄肉部が混在する型内発泡成形体が挙げられる。肉厚部と薄肉部が混在する型内発泡成形体では、表面美麗性を優先させると、薄肉部内部の融着性は確保できたとしても、肉厚部内部の融着性が著しく低下したものとなり、逆に、肉厚部内部の融着性を優先して水蒸気圧力を高めると、薄肉部には過剰の水蒸気圧となり、発泡粒子内の空気分圧は減少し、薄肉部表面にヒケや収縮によるしわが発生し、表面美麗性が低下したものとなる。即ち、融着性と表面美麗性のバランスがとりにくい傾向がある。
このようなことから、特に「融着困難部位」が肉厚部である場合においては、融着性低下という不具合が顕著となる。さらに、「融着困難部位」が肉厚部であり、かつその他の部位で薄肉部を有する型内発泡成形体においては、融着性と表面美麗性のバランスが著しくとりにくいものとなる。
これに対して、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形する際の水蒸気の通りが良好であることから、「融着困難部位」の融着性を確保することが可能となる。また、肉厚部と薄肉部とが混在する型内発泡成形体において、肉厚部内部の融着性を向上させる為に過剰の水蒸気圧で型内発泡成形する必要がなく、その結果、肉厚部内部の融着性が良好であると共に、薄肉部の表面美麗性も良好な型内発泡成形体を得ることが可能となる。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来から知られている型内発泡成形法により、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とすることができる。
型内発泡成形法としては、例えば、
イ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を無機ガス、例えば空気や窒素、二酸化炭素等で加圧処理してポリプロピレン系樹脂発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定のポリプロピレン系樹脂発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、
ロ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、
ハ)特に前処理することなくポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法が利用し得る。
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に特に制限はない。ただし、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形する際の水蒸気の通りが良好であるという特長が顕著となる観点から、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としては、前述したように、「融着困難部位」を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡体、および/または、肉厚部と肉薄部が混在するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に好適に使用し得る。
「融着困難部位」を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡体、および/または、肉厚部と肉薄部が混在するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の具体的な例としては、例えば、図4に示すような、底面と底面周縁立ち壁部からなり物品収納可能な内部を有し、内部底面に少なくとも1つの立ち壁部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が挙げられる。
図4における内部底面立ち壁部は、前述の通り、一つの型のみで形を形成することのできる「融着困難部位」である(図5も参照)。図4では、内部底面立ち壁部は両端が底面周縁立ち壁部と融着・接合しているが、一方だけが融着・接合し、他方は底面周縁立ち壁部と距離を隔てていても良い。また、両端とも底面周縁立ち壁部と距離を隔てていても良い。
一方、図4における底面周縁立ち壁部は、底面の内部ではなく周縁部の立ち壁部であり、「融着困難部位」とは異なり、固定型と移動型の金型を用いた型内発泡成形体において、発泡粒子を金型内に充填した場合に、両方の型により形を形成することのできる部位である。
なお、図4では、内部底面立ち壁部あるいは底面周縁立ち壁部と底面の角度が垂直である場合を示しているが、当該角度は垂直であっても良く、垂直でなくても良い。
図4における、底面、底面周縁立ち壁部、内部底面立ち壁部の厚みは、それぞれ、図4に示した通りである。
なお、それぞれの厚みは、一方の面と他方の面において、一つの面上のある一点と、これに対向する他方の面との最短距離(以下、単に「最短距離」ともいう。)である。
一組の対向する2面は、平行であってもなくても良い。また、ここでいう「面」は、平面であっても、曲面であっても良い。
上記「最短距離」とは、少なくとも一方の面が平面の場合、他方の面のある一点から該平面上に垂線を伸ばした際の接点までの距離とする。
一方、部位形状が円形、略円形や楕円形の場合、閉じた1面であって実際には2面は存在しないが、円形や略円形の場合は直径を最短距離とし、楕円形の場合は短軸の長さ(短径)をもって最短距離とする。
なお、一つの部位において厚みは一定であっても良く、一定でなくても良い。
図4における、底面周縁立ち壁部、内部底面立ち壁部の高さは、立ち壁部上端部のある一点から底面までの最短距離をいう。
なお、一つの立ち壁部において、高さは一定であっても良く、一定でなくても良い。
内部底面立ち壁部の高さは、図4では、底面周縁立ち壁部の高さと同一であるが、異なっていても良い。
さらに、内部底面立ち壁部の数に関しても、図4では1つであるが、複数であっても良い。
図4に示すポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を型内発泡成形して方法としては、図5に示すような固定型と移動型からなる金型を用い、以下のような工程を経る方法が例示できる。
(1)図5に示すような固定型<右上がり斜線部として示す。>と移動型<右下がり斜線部として示す>からなる金型に充填機を通してポリプロピレン系樹脂発泡粒子(格子部)を充填する工程(以降、「充填工程」と称す。)。
(2)蒸気弁Aとドレン弁Aを開け、蒸気弁Bとドレン弁Bを開けて、蒸気弁A、Bから水蒸気を流すことにより、金型チャンバー内に存在する空気を追い出すと共に、金型全体を加熱する工程(以降、「予備加熱工程」と称す。)。
(3)蒸気弁Aとドレン弁Bを開け、蒸気弁Bとドレン弁Aは閉じておき、蒸気弁Aから水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の間に存在する空気を追い出すと共に加熱する工程(以降、「一方加熱工程」と称す。)。
(4)次いで、蒸気弁Bとドレン弁Aを開け、蒸気弁Aとドレン弁Bは閉じておき、蒸気弁Bから水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の間に存在する空気を更に追い出すと共に、加熱する工程(以降、「逆一方加熱工程」と称す。)。
(5)蒸気弁AとBを開け、ドレン弁AとBを閉じて、蒸気弁AとBから水蒸気を流すことにより、金型内に充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子表面が軟化する迄、充分温度を上昇させて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を最終的に融着せしめ、一定形状のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とする工程(以降、「両面加熱工程」と称す。)。
(6)金型を冷却した後、金型を開き、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を取り出す工程(以降、「冷却・取り出し工程」と称す。)。
ところで、上記一方加熱工程や逆一方加熱工程においては、チャンバーAとチャンバーBとの間に差圧が生じることから、水蒸気が一方のチャンバーから他方のチャンバーに流れる。そして、図6記載の底面周縁立ち壁部の厚み方向に対応する実線矢印Cや底面の厚み方向に対応する実線矢印Dの4方向は、上記差圧が存在すると共に、型内発泡成形体の厚みが比較的薄い(薄肉部)為、水蒸気の通りは良好で、充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の温度上昇が速やかに起こる。
これに対して、内部底面立ち壁部の厚み方向に対応する破線矢印Eの2方向は、チャンバーBのみに面している為、チャンバー差圧がないことから、水蒸気の通りが悪くなり、充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の温度上昇がしがたくなる傾向がある。そのため、内部底面立ち壁部の厚みが厚い場合は、内部底面立ち壁部は、底面や底面周縁立ち壁部などより融着性が低下する傾向にあり、さらに、内部底面立ち壁部の高さが大きい場合には、破線矢印Eに対して90度の方向の当該部位の水蒸気の通りも低下傾向となり、より融着性が低下する傾向が大となる。
ただし、内部底面立ち壁部の厚みが薄い場合には、金型からの伝熱によっても、充填されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の温度上昇は確保される為、底面や底面周縁立ち壁部などより融着性が低下するという問題点はあまり顕著ではない。
また、成形金型には、コアベントと呼ばれる水蒸気の通り孔(図示せず)が複数設けられている。内部底面立ち壁部が移動型により形成されるような金型形状においては、コアベントを設ける際の作業性の観点から、内部底面立ち壁部を形成する金型部分にはコアベントが設けにくい場合があり、他の部分に設けられるコアベントよりも孔径の小さなキリ穴等しか設けることが困難な場合があり、水蒸気の通りはさらに悪くなる傾向にある。
さらに、図5および図6に例示したように、内部底面立ち壁部の高さ方向の延長線上に、充填機が設置される場合には、固定型の当該部分にはコアベントを設けることができず、いっそう水蒸気の通りが悪いものとなる。さらには、この場合、内部底面立ち壁部へのポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填性が良いことから、当該部位のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の充填率が他の部位よりも高くなる傾向があり、さらに水蒸気の通りが悪いものとなりやすい。
なお、充填機の設置位置は、得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体に充填機先端部分の形状が転写されることから、内部底面立ち壁部の高さ方向の延長線上に充填機が設けられているか否かは、容易に判別することができる。
このようなことから、肉厚の内部底面立ち壁部の融着性を向上させる為には、型内発泡成形時の加熱水蒸気圧力をより高くせざるを得ない。その場合、該加熱水蒸気圧力は、特に底面周縁立ち壁部などの薄肉部に対して過剰な加熱水蒸気圧力となる。その結果として、底面周縁立ち壁部などの薄肉部の表面美麗性が低下することになり、従来技術においては、肉厚の内部底面立ち壁部の融着性と薄肉部の表面美麗性を両立させることが困難であった。
これに対して、本願発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子よりも水蒸気の通りが良いという特長を有していることから、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形する場合よりも低圧の加熱蒸気圧力で成形が可能であり、前述した「融着困難部位」を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の融着性を良好なものとすることができる。また、前述した内部底面立ち壁部が肉厚部である場合でも良好な融着性が発現すると共に、底面周縁立ち壁部や底面のような薄肉部の表面美麗性も損なうことがなく、融着性と表面美麗性を両立させることが可能となる。
本発明における「融着困難部位」の形状に特に制限はないが、当該部位から最も大きい球を切り出す際に、直径20mm以上100mm以下の球を切り出すことができる形状の場合、従来技術では融着性の低下が顕著であるところ、本願発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子では融着性が向上し、その効果が顕著となることから好ましい。この観点からは、最も好ましくは、最も大きく球を切り出す際の、球の直径が30mm以上80mm以下となる形状である。
直径20mm未満の球しか切り出せない形状であれば、本発明の効果の発現が、従来技術に対して顕著ではなく、また、直径100mmを超える球を切り出すことのできる形状の場合は、当該部位について、融着性の良好な型内発泡成形を行うことが困難な傾向がある。
また、上述したような内部底面立ち壁部と底面周縁立ち壁部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の中でも、
底面と底面周縁立ち壁部からなり物品収納可能な内部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
内部底面に少なくとも1つの立ち壁部を有し、
内部底面の立ち壁部の厚みが底面周縁立ち壁部厚みの1.2倍以上5倍以下であり、
内部底面の立ち壁部の高さが、底面の厚みの2倍以上25倍以下であるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、肉厚部の融着性向上および薄肉部の表面美麗性の両立という顕著な効果が発現される。そのため、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、該形状を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形に用いることがより好ましい。
形状の更に好ましい態様としては、内部底面の立ち壁部の厚みが底面周縁立ち壁部厚みの1.5倍以上4倍以下であり、内部底面立ち壁部の高さが、底面の厚みの5倍以上25倍以下である。
ただし、内部底面の立ち壁部の厚み、底面周縁立ち壁部厚み、内部底面の立ち壁部の高さ、および底面の厚みは、型内発泡成形体内で一定である必要はない。型内発泡成形体内で一定でない場合、内部底面の立ち壁部の厚みとしては当該部位の最も大きい厚みを、底面周縁立ち壁部厚みとしては当該部位の最も小さい厚みを、内部底面の立ち壁部の高さとしては当該部位の最も大きい高さを、底面の厚みは当該部位の最も小さい厚みを採用して、前述の比率を求めることとする。
さらに、内部底面立ち壁部の高さ方向の延長線上に充填機を設けて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を得る為に、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることは、より好ましい態様である。
なお、内部底面の立ち壁部は、物品収納可能な内部を区画する為の立ち壁部であることが好ましく、具体的には、ラゲッジボックス、工具箱、通箱、等で設計されるものである。
これらの中でも、比較的広い面積の底面周縁立ち壁部や底面と、肉厚の内部底面立ち壁部を有するラゲッジボックスにおいて、顕著な効果を奏する為、好適に使用することができる。すなわち、ラゲッジボックスにおける広い面積を有する底面周縁立ち壁部や底面は、表面のヒケやしわが目立ちやすいものであるが、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子からなる場合は、肉厚の内部底面立ち壁部の融着性が優れると共に、広い面積の底面周縁立ち壁部や底面の表面美麗性も優れたものとなる。
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例および比較例において、使用した物質は、以下のとおりであるが、特に精製等は行っていない。
●ポリプロピレン系樹脂:表1に示すポリプロピレン系樹脂[プライムポリマー(株)製]
●ポリエチレングリコール:ライオン(株)製、平均分子量300
●メラミン:日産化学(株)製
●タルク:林化成(株)製、タルカンパウダーPK−S
なお、実施例および比較例における評価は、次の方法により行なった。
(共重合組成の定量)
ポリプロピレン系樹脂(約1g)に、キシレン50gを加えて120℃で加熱溶解し、高温遠心分離(国産遠心機製、H175)を用いて、12000rpm×30分の条件にて、不溶分と可溶分に分別した。得られた可溶分を冷却後、遠心分離(12000rpm×30分)により、不溶分を得た。
得られた不溶分50mgに、オルトジクロロベンゼン−dを0.4g加え、100℃で加熱溶融させて、13C−MNR[VARIAN社製、INOVA AS600]を用いて98℃にて測定を行い、プロピレン、ブテン、エチレンの共重合組成の定量を行った。
(発泡粒子の発泡倍率)
得られた発泡粒子3g以上10g以下程度を取り、60℃で6時間乾燥した後、23℃、湿度50%の室内で状態調節し、重量w(g)を測定後、水没法にて体積v(cm)を測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρrとの比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。
なお、以下に示す実施例および比較例においては、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度ρrは、いずれも0.90g/cmである。
(ポリプロピレン系樹脂の融点測定)
融点の測定は、示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、得られたポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを、10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温して樹脂粒子を融解し、その後10℃/minの降温速度で220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる値である。
(ポリプロピレン系発泡粒子の高温側融解熱量の比率の算出)
高温側融解熱量の比率の測定は、示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られるDSC曲線(図1参照)から、算出した。
(ポリプロピレン系発泡粒子のDSC曲線の微分曲線の極大値の読み取り)
DSC曲線の微分曲線の極大値の算出は、示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを20℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する際に得られるDSC曲線を微分処理した曲線(図2参照)において、その極大値になる時点の温度を読み取った。
(最低成形加熱蒸気圧力の測定)
ポリプロピレン発泡成形機[ダイセン株式会社製、KD345]を用い、固定型と移動型からなる縦400mm×横300mm×厚み60mmのブロック金型に、耐圧容器内にて加圧空気を含浸させ、発泡粒子内圧を予め0.2MPa(絶対圧)になるように調整した二段発泡粒子を充填し、まず0.1MPa(ゲージ圧)の水蒸気で金型内の空気を追い出し、その後、所定の成形圧力の加熱蒸気を用いて10秒間加熱成形(両面加熱)させることにより、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得た。この際、成形圧力を0.01MPaごとに変化させて融着不良のポリプロピレン系樹脂発泡成形体から、融着良好なポリプロピレン系樹脂発泡成形体を作製した。
得られた発泡成形体を割って、各粒子が取れずに融着している成形体が得られる最も低い成形圧力を、最低成形加熱蒸気圧力とした。
(成形体の表面性)
ブロック金型を用いて最低成形加熱蒸気圧力にて型内発泡成形して得られた型内発泡成形体の表面について、以下の基準にて、表面性を評価した。
○:しわや粒間(ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間の粒間)がほとんどなく、表面凹凸も目立たず、美麗である。
△:しわや粒間があり、表面凹凸がやや目立つ。
×:しわや粒間あるいは、ヒケがあり、外観が明らかに不良である。
(圧縮強度)
ブロック金型を用いて得られた発泡成形体から縦50mm×横50mm×厚み25mmのテストピースを切り出し、ND 0504に準拠し、引張圧縮試験機[ミネベア製、TGシリーズ]を用いて、10mm/minの速度で圧縮した際の50%圧縮時の圧縮応力を測定した。
なお、50%圧縮時の圧縮応力は、型内発泡成形体の剛性の尺度である。
(成形体密度)
圧縮強度測定前のテストピースの重量W(g)を測定し、テストピースの縦、横、厚み寸法をノギスで測定し体積V(cm)を算出し、成形体密度をW/Vにて求める。但し、単位がg/Lとなるように換算した。
(内部底面立ち壁部の融着性)
箱形金型を用いて得られた発泡成形体の、内部底面立ち壁部厚み方向の中央にカッターで深さ5mmの切り込みを入れ、その後、手で内部底面立ち壁部を裂き、破断面を目視観察して、発泡粒子界面ではなく、発泡粒子内部が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
○:発泡粒子内部破断の割合が80%以上。
△:発泡粒子内部破断の割合が60%以上80%未満。
×:発泡粒子内部破断の割合が60%未満(融着度合いが低いため、破断面に現れる発泡粒子界面割合が40%超)。
(底面周縁立ち壁部外面の表面美麗性)
箱形金型を用いて得られた発泡成形体の、底面周縁立ち壁部外面の表面美麗性を、以下の基準にて判定した。
○:底面周縁立ち壁部外面にヒケおよび/またはしわが見られない。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間(粒間)も目立たず美麗である。
△:底面周縁立ち壁部外面にヒケおよび/またはしわが少し見られる。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子間(粒間)は目立たず美麗である。
×:底面周縁立ち壁部外面にヒケやしわが顕著に見られる。あるいはポリプロピレン系樹脂発泡粒子間(粒間)が目立つ。
参考例1)
<ポリプロピレン系樹脂粒子の作製>
1−ブテン含量3.8重量%、エチレン含量0.5重量%のポリプロピレン系樹脂[プライムポリマー(株)製]100部に対して、親水性化合物としてのポリエチレングリコール0.5重量部、発泡核剤としてのタルク0.2重量部を添加・混合した。得られた混合物を、2軸押出機[(株)オーエヌ機械製、TEX40]を用いて、樹脂温度220℃にて溶融混練した後、得られたストランドを水冷後、切断して、ポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。
<一段発泡粒子の作製>
内容量10Lの耐圧容器中に、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤としてのパウダー状塩基性第3リン酸カルシウム2重量部および分散助剤としてのn−パラフィンスルホン酸ソーダ0.05重量部を含む水系分散媒300重量部、ならびに発泡剤として炭酸ガス7.5重量部を仕込み、攪拌しながら、表1に示す発泡温度まで昇温し、10分間保持した後、炭酸ガスを追加圧入して、表1に示す発泡圧力に調整し、30分間保持した。
その後、炭酸ガスを圧入しながら容器内温、圧力を一定に保持しつつ、耐圧容器下部のバルブを開いて、水系分散媒を開孔径3.6mmφのオリフィス板を通して、大気圧下に放出することによってポリプロピレン系樹脂発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。得られた一段発泡粒子に関して、発泡倍率、高温側融解熱量の比率の算出、DSC曲線の微分曲線の極大値の有無の読み取りを行った。その結果を、表1に示す。
<ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(二段発泡粒子)の作製>
得られた一段発泡粒子を80℃にて6時間乾燥させた後、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を0.37MPa(絶対圧)にした後、0.08MPa(ゲージ圧)の水蒸気と接触させることにより、二段発泡させた。
得られた二段発泡粒子に関して、発泡倍率、高温側融解熱量の比率の算出、DSC曲線の微分曲線の極大値の有無、極大値の温度の読み取りを行った。その結果を、表1に示す。
<型内発泡成形体の作製>
(最低成形加熱蒸気圧力の測定)に示した条件にて型内発泡成形体を作製し、最低成形加熱蒸気圧力を評価した。
さらに、最低成形加熱蒸気圧力で得られた成形体を、75℃で16時間乾燥した後、23℃で24時間養生し、成形体の表面性評価、圧縮強度を測定した。その結果を、表1に示す。
参考例2〜3)
1−ブテン含量、エチレン含量を変更したポリオレフィン系樹脂[プライムポリマー(株)製]を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作をして、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
参考例4)
<樹脂粒子の作製>時の親水性化合物をメラミン0.2重量部に変更し、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作をして、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
参考例5〜6)
参考例1のポリプロピレン系樹脂粒子を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様にして、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
参考例5では、二段発泡粒子の高温熱量比が12%、参考例6では、二段発泡粒子の高温熱量比が28%であった。
参考例7〜8)
参考例1のポリプロピレン系樹脂粒子を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様にして、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。
その結果を、表1に示す。
参考例9)
<二段発泡粒子の作製>時の二段発泡条件を表1記載の条件として二段発泡粒子を得た後、二段発泡粒子に更に加圧空気を含浸させて、内圧を0.35MPa(絶対圧)にし、0.03MPa(ゲージ圧)の水蒸気と接触させることにより、三段発泡粒子を得た。
また、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作をして、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、三段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
参考例10〜12)
1−ブテン含量、エチレン含量および融点を変更したポリオレフィン系樹脂[プライムポリマー(株)製]を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
(比較例1〜2)
参考例1のポリプロピレン系樹脂粒子を用いて、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作により、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
ここで、比較例1は、得られた二段発泡粒子の高温熱量比が8%、比較例2は高温熱量比が33%であった。
(比較例3)
参考例1のポリプロピレン系樹脂粒子を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作により、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
得られた二段発泡粒子のDSC曲線の微分曲線の極大値温度は126℃であった。なお、二段発泡粒子は、粒子間で凝集したアグロメ状態になり、成形できなかった。
(比較例4)
参考例1のポリプロピレン系樹脂粒子を用い、発泡剤をiso−ブタンに変更して、表1に示す作製条件にて、発泡倍率30倍の一段発泡粒子を得た以外は、参考例1と同様の操作により、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
なお、得られた一段発泡粒子のDSC測定の微分曲線には、極大値が存在しなかった。
(比較例5)
1−ブテン含量7.0重量%、エチレン含量3.0重量%のポリプロピレン系樹脂[プライムポリマー(株)製]を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
(比較例6)
ホモポリプロピレン樹脂(1−ブテン含量0重量%、エチレン含量0重量%)[プライムポリマー(株)製]を用い、表1に示したように各種条件を変更した以外は、参考例1と同様の操作により、ポリプロピレン系樹脂粒子、一段発泡粒子、二段発泡粒子、型内発泡成形体を得て、評価した。その結果を、表1に示す。
Figure 0006038479
(実施例13)
参考例1で作製した二段発泡粒子を用いて、次のようにして、肉厚部と薄肉部を有する型内発泡成形体評価を行った。ポリプロピレン発泡成形機[東洋機械金属株式会社製、P−300]を用い、以下に示す形状寸法を有する成形体が得られる箱形金型を用いる型内発泡成形により、図4に示す内部底面立ち壁部を有する箱型の型内発泡成形体を得た。この際、予め二段発泡粒子内部の空気圧力が0.30MPa(絶対圧)になるように調整しておき、これを金型に充填し、まず0.1MPaの水蒸気で金型内の空気を追い出し、その後、表2記載の蒸気圧力の加熱蒸気を用いて10秒間加熱成形(両面加熱)させることにより、該型内発泡成形体を得た。
ここで、得られる型内発泡成形体の箱型形状外寸は、縦350mm×横400mm×高さ150mmであり、底面の厚みおよび底面周縁立ち壁部の厚みは全て均一で15mmである。内部底面立ち壁部は、箱型の型内発泡成形体長手方向の底部中央に位置し、内部容積を均等に二分している。内部底面立ち壁部の厚みは50mmであり、内部底面立ち壁部の高さは底面周縁立ち壁部の高さと同じ135mm(=外寸高さ150mm−底面厚み15mm)である。
得られた型内発泡成形体に関して、内部底面立ち壁部の融着性と、底面周縁立ち壁部外面の表面美麗性を評価した。評価結果を表2に示す。
(実施例14〜21、比較例7〜15)
表2あるいは表3に記載のポリプロピレン系樹脂粒子、発泡粒子や各種条件とした以外は、実施例13と同様にして、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。
結果を、表2あるいは表3に示す。
Figure 0006038479
Figure 0006038479
実施例13〜21では、内部底面立ち壁部の融着性と底面周縁立ち壁部外面の表面美麗性の両方が良好になる成形加熱蒸気圧力条件が存在したが、比較例7〜15においては、内部底面立ち壁部の融着性と底面周縁立ち壁部外面の表面美麗性の両方が良好になる成形加熱蒸気圧力条件は存在しなかった。
(実施例22)
内部底面立ち壁部の厚みを18mmとし、成形加熱蒸気圧力を0.26MPa(ゲージ圧)とした以外は、実施例13と同様の操作により、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。結果を表2に示す。
(実施例23)
内部底面立ち壁部の幅を50mmとし、内部底面立ち壁部高さを底面周縁立ち壁部の高さより低い75mmとし、成形加熱蒸気圧力を0.26MPa(ゲージ圧)とした以外は、実施例13と同様の操作により、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。結果を表2に示す。
(実施例24)
箱型形状外寸の高さを390mm、内部底面立ち壁部の厚みを50mmとし、内部底面立ち壁部高さを底面周縁立ち壁部の高さと同じ375mm(=外寸高さ390mm−底面厚み15mm)
とし、成形加熱蒸気圧力を0.30MPa(ゲージ圧)とした以外は、実施例13と同様の操作により、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。結果を表2に示す。
(実施例25)
型内発泡成形体の箱型形状外寸を縦350mm×横400mm×高さ310mmとし、底面の厚みおよび底面周縁立ち壁部の厚みは全て均一で10mmとした。また、内部底面立ち壁部の厚みは60mmであり、内部底面立ち壁部高さは底面周縁立ち壁部の高さと同じの300mm(=外寸高さ310mm−底面厚み10mm)とし、成形加熱蒸気圧力を0.30MPa(ゲージ圧)とした以外は、実施例13と同様の操作により、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。結果を表2に示す。
(比較例16〜18)
表3に記載のポリプロピレン系樹脂粒子、発泡粒子や各種条件とした以外は、実施例22と同様(内部底面立ち壁部の厚みを18mm)の操作により、箱型の型内発泡成形体を得て、評価した。結果を表3に示す。

Claims (7)

  1. プロピレンに共重合されるコモノマーとして、1−ブテンおよびエチレンを含み、1−ブテン含量とエチレン含量の総和が1.0重量%以上、且つ、1−ブテン含量が6.0重量%以下、エチレン含量が3.0重量%以下であり、かつ、融点が140℃以上155℃以下であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
    発泡倍率20倍以上60倍以下、
    10℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、低温側融解熱量領域(Ql)と高温側融解熱量領域(Qh)の2つの領域を有し、
    高温側融解熱量の比率(Qh/(Ql+Qh)×100)(%)が10%以上30%以下であり、且つ、20℃/分の昇温速度にて40℃から220℃まで昇温する示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線の微分曲線中に、105℃以上120℃以下の間に極大値を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形してなるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
    固定型と移動型の金型を用いて得られる型内発泡成形体において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填した場合にいずれか一方の型のみで形が形成される部位を有し、
    固定型と移動型の金型を用いて得られる型内発泡成形体において、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填した場合にいずれか一方の型のみで形が形成される部位の形状が、前記部位から最も大きく球を切り出す際に、直径20mm以上100mm以下の球を切り出すことのできる形状であることを特徴とする、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
  2. 基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂の融点が147℃以上153℃以下であることを特徴とする、請求項1記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
  3. ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、少なくとも2回の発泡工程を経て得られるものであることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体
  4. 底面と底面周縁立ち壁部からなり、物品収納可能な内部を有するポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体であって、
    内部底面に少なくとも1つの立ち壁部を有し、
    内部底面の立ち壁部の厚みが底面周縁立ち壁部厚みの1.2倍以上5倍以下であり、
    内部底面の立ち壁部の高さが、底面の厚みの2倍以上30倍以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
  5. 内部底面立ち壁部が、物品収納可能な内部を区画する為の立ち壁部であることを特徴とする請求項記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
  6. 内部底面の立ち壁部の高さ方向の延長線上に、充填機先端の転写跡が残っていることを特徴とする、請求項または記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
  7. ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が、ラゲッジボックスであることを特徴とする、請求項の何れか一項記載のポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体。
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