以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に係るレギュレータ回路の構成例を示す回路図である。
図1を参照して、この発明の実施の形態1に係るレギュレータ回路100は、半導体記憶装置などの半導体集積回路に搭載され、外部から供給される電源電圧(外部電源電圧とも称す)VCCを降圧して内部電源電圧VDDを生成する降圧電源回路である。レギュレータ回路100により生成された内部電源電圧VDDは、負荷である半導体集積回路の内部回路30へ供給される。
レギュレータ回路100は、外部電源電圧VCCが供給され、内部回路30に降圧した電圧を供給するための出力トランジスタ20と、出力トランジスタ20のゲートに印加されるゲート電位VGを出力する差動増幅器22と、所定の一定電圧である基準電圧VREFを差動増幅器22に供給する基準電圧発生回路24と、出力トランジスタ20をオフさせて内部回路30への電源供給を停止させるための遮断トランジスタ12とを備える。
出力トランジスタ20は、しきい値電圧が負電圧のデプレッション型のNMOS(N-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成されている。デプレッション型NMOSトランジスタ20は、ドレインが遮断トランジスタ12を介して電源端子10に接続され、ソースが内部回路30に内部電源電圧VDDを供給するための内部電源線5に接続されている。デプレッション型NMOSトランジスタ20のソースから内部電源線5上に出力される出力電圧(内部電源電圧)VDDは、差動増幅器22の反転入力端子に帰還される。
差動増幅器22は、非反転入力端子に入力される基準電圧VREFと、反転入力端子に帰還される出力電圧VDDとを比較して、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート電位VGを制御する。具体的には、内部回路30が消費する負荷電流が増大すると、内部電源電圧VDDが低下する。出力電圧(内部電源電圧)VDDが基準電圧VREFよりも低下し始めると、差動増幅器22の出力端子の電位(ゲート電位)VGが上昇するため、このゲート電位VGを受けたデプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート−ソース電圧VGSが大きくなる。そして、このソース−ゲート電圧VGSにより、デプレッション型NMOSトランジスタ20の電流供給能力が増大することにより、出力電圧VDDの電位が上昇する。
一方、出力電圧VDDが基準電圧VREFよりも高くなり始めると、差動増幅器22の出力端子の電位VGが低下するため、このゲート電位VGを受けたデプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート−ソース電圧VGSが小さくなる。これにより、デプレッション型NMOSトランジスタ20からの電流供給が低下あるいは停止する。このようにして、内部電源電圧VDDは、基準電圧VREFに設定される。
以上のような構成において、出力トランジスタ20にデプレッション型NMOSトランジスタを用いたことにより、ゲート電位VGはVDD−Vth以上となり(−Vthは、デプレッション型NMOSトランジスタのしきい値電圧とする)、出力電圧VDD以下にすることができる。これにより、入力電圧VCCは出力電圧VDDと同じ電圧に近いところまで低下させることが可能となり、VCCの低電圧化に対応することができる。
その一方で、デプレッション型NMOSトランジスタは、ゲート電位VGおよびソース電位を接地電位VSSに下げてもオフされないため、レギュレータ回路の出力電圧VDDをオフさせることができない。
そこで、本発明の実施の形態1に係るレギュレータ回路100では、電源端子10と出力トランジスタであるデプレッション型NMOSトランジスタ20のドレインとの間に、遮断トランジスタ12が設けられている。この遮断トランジスタ12は、エンハンスメント型のPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタで構成されている。
PMOSトランジスタ12のゲートは、図示しない制御回路から出力されるパワーダウン制御信号PDが印加される制御端子14に接続されている。パワーダウン制御信号PDは、通常モード時に「H」レベルを示すとともに、スタンバイモード時に「L」レベルに活性化される信号である。したがって、半導体集積回路のスタンバイモード時には、「L」レベルのパワーダウン制御信号PDがゲートに印加されることによって、PMOSトランジスタ12がオフされる。これにより、電源端子10と出力トランジスタ20とが電気的に遮断されるため、出力トランジスタ20がオフされる。
また、基板に接地電位VSSを与えた場合には、ソースの電位VDDが接地電位VSSよりも高いために、デプレッション型NMOSトランジスタは、基板に逆バイアスがかかった状態にされる。NMOSトランジスタは、一般的に、基板に逆バイアスがかかると、基板効果によってしきい値電圧が上昇する。そして、しきい値電圧が上昇することにより、NMOSトランジスタの電流が減少するため、NMOSトランジスタの電流供給能力が低下することになる。
このような不具合を解消するため、図1に示すように、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板には、ソースの電位VDDと同じ電位が与えられる。基板とソースとを同電位とすることにより、基板にかかるバイアスを0Vとして基板効果をなくすことができる。これにより、デプレッション型NMOSトランジスタの電流供給能力の低下を抑制することができる。
そして、電流供給能力の低下を抑制できることによって、所望の電流供給能力を実現するためにレギュレータ回路100に印加しなければならない外部電源電圧VCCの下限値を下げることができる。これにより、外部電源電圧VCCの低電圧化に対応することが可能となる。
(変更例1)
図2は、この発明の実施の形態1の変更例1に係るレギュレータ回路102の構成例を示す回路図である。
図2を参照して、本変更例1に係るレギュレータ回路102は、図1に示すレギュレータ回路100と比較して、出力トランジスタであるデプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に、任意の電位を与えることができる点で異なっている。
具体的には、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板は、入力端子26に接続されており、この入力端子26を介して電位が印加される。すなわち、本変更例1に係るレギュレータ回路102は、入力端子26に印加される電位によってデプレッション型NMOSトランジスタ20の基板の電位を調整可能に構成されている。このような構成とすることにより、本変更例1に係るレギュレータ回路102では、デプレッション型NMOSトランジスタの電流供給能力の低下を抑えつつ、差動増幅器22の出力端子の電位(ゲート電位)VGが低下したとき、すなわち、差動増幅器22が出力する信号が非活性化されたときには、デプレッション型NMOSトランジスタ20が確実にオフされるようにしている。
詳細には、デプレッション型NMOSトランジスタ20のしきい値電圧が、プロセスばらつき等によってより深くなる方向にばらついた場合を想定する。この場合において、図1で述べたように、基板をソースと同電位に固定させる構成では、差動増幅器22の出力端子の電位(ゲート電位)VGが低下してその下限値(たとえば、接地電位VSSとする)に達したときであっても、この下限値VSSを受けたデプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート−ソース電圧VGS(=VSS−VDD)よりもしきい値電圧−Vthが低いために、デプレッション型NMOSトランジスタ20がオフされないという不具合が生じてしまう。そのため、内部回路30の消費電流が小さいリテンションモードでは、出力電圧(内部電源電圧)VDDを基準電圧VREFに保つことが求められるところ、レギュレータ回路からは継続して電流が供給されるため、出力電圧VDDが所望の基準電圧VREFを超えて上昇してしまうことになる。
これに対して、本変更例1に係るレギュレータ回路102では、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に対して、入力端子26を介して、接地電位VSSよりも高く、かつ、ソースの電位VDDよりも低い電圧の範囲内(VSS<VB<VDD)で任意の電位を与えることができる。そして、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板の電位を調整することにより、基板効果を利用して、デプレッション型NMOSトランジスタ20のしきい値電圧を所望の電圧に調整することができる。
本変更例1においては、デプレッション型NMOSトランジスタ20におけるしきい値電圧のばらつきを見込んで、差動増幅器22の出力端子の電位の下限値(接地電位VSS)を受けてデプレッション型NMOSトランジスタ20が確実にオフされるように、基板の電位を設定する。これにより、リテンションモードにおいてレギュレータ回路102からの電流供給が遮断されるため、電流出力電圧VDDを所望の電圧レベルに維持させることができる。
なお、本変更例1に係るレギュレータ回路102において、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に印加される電位は、レギュレータ回路102の外部から入力端子26に印加される構成としたが、その具体例としては、レギュレータ回路102が搭載される半導体集積回路に含まれる参照電位回路(たとえば、バンドギャップリファレンス回路など)が生成した電位を入力端子26に印加する構成とすることが可能である。
(変更例2)
図3は、この発明の実施の形態1の変更例2に係るレギュレータ回路104の構成例を示す回路図である。
図3を参照して、本変更例2に係るレギュレータ回路104は、図2に示すレギュレータ回路102と比較して、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に電位を印加するための入力端子26に代えて、基板電位発生回路40を備える点でのみ異なっている。すなわち、本変更例2に係るレギュレータ回路104は、基板電位発生回路40が生成する任意の電位を、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に与えることができる。
したがって、本変更例2に係るレギュレータ回路104においても、先述した変更例1に係るレギュレータ回路102と同様に、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板には、差動増幅器22の出力端子の電位の下限値(接地電位VSS)を受けてデプレッション型NMOSトランジスタ20が確実にオフされるような電位を与えることができる。これにより、リテンションモードにおいて出力電圧VDDを所望の電圧レベルに維持させることができる。
以下に、この基板電位発生回路40の構成例について、図面を参照して説明する。図4は、接地電位VSSを基準として基板電位を生成するための回路構成を示し、図5および図6は、基準電圧VREFを基準として基板電位を生成するための回路構成を示す。
図4(a)を参照して、基板電位発生回路401は、電源端子42と接地電位VSSとの間に直列に接続された、定電流源44と、ゲートとドレインとが結合されてダイオード接続とされたNMOSトランジスタ46とを含む。定電流源44を一定のバイアス電流Ibが流れると、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ46がバイアス電流Ibを電位VBに変換する。変換された電位VBは、入力端子26を介してデプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に印加される。
これに対して、図4(b)に示す基板電位発生回路402では、電源端子42とNMOSトランジスタ46との間に接続されたPMOSトランジスタ48が定電流源として機能する。具体的には、PMOSトランジスタ48は、図示しないバイアス回路により生成されたゲート電位VPをゲートに受けてバイアス電流Ibと同一の大きさの電流を流す。NMOSトランジスタ46が当該電流を電位VBに変換する。
図4(c)に示す基板電位発生回路403は、図4(a)の基板電位発生回路401と比較して、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ46に代えて、抵抗50を含む点で異なっている。また、図4(d)に示す基板電位発生回路404は、図4(b)の基板電位発生回路402と比較して、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ46に代えて、抵抗50を含む点で異なっている。これらの基板電位発生回路403,404においては、定電流源44またはPMOSトランジスタ48に流れるバイアス電流Ibと同一の大きさの電流が抵抗50を流れることにより、入力端子26にはバイアス電流Ibおよび抵抗50の抵抗値の積に等しい電位VBが生成される。生成された電位VBは、デプレッション型NMOSトランジスタ20の基板に印加される。
以上のように、基板電位発生回路401,402においては、バイアス電流Ib、もしくはゲート電位VPで決まる一定電流をPMOSトランジスタ48に流すために必要なNMOSトランジスタ46のゲート電位によって、基板電位VBのレベルが決まる。また、基板電位発生回路403,404においては、バイアス電流Ib、もしくはゲート電位VPで決まるPMOSトランジスタ48を流れる一定電流が抵抗50を流れたときの電位降下によって、基板電位VBのレベルが決まる。このように、基板電位発生回路401〜404で生成される電位VBは、接地電位VSSを基準として生成されるものであることから、入力電圧(外部電源電圧)VCC依存性を小さくすることができる。
図5(a)〜(h)および図6(i)〜(l)には、基準電圧VREFを基準として基板電位を生成するように構成された基板電位発生回路411〜422が示される。
図5(a)を参照して、基板電位発生回路411は、電源端子42と接地電位VSSとの間に直列に接続された、抵抗52、NMOSトランジスタ56および定電流源58を含む。NMOSトランジスタ56のゲートは、基準電圧VREFの入力端子54に接続され、NMOSトランジスタ56および定電流源58の接続点は、電位VBの入力端子26に接続されている。このような構成において、基準電圧VREFをゲートに受けてNMOSトランジスタ56がオンされると、定電流源58を流れるバイアス電流Ibと同じ大きさの電流が抵抗52に流れる。これにより、入力端子26には、電源電位からバイアス電流Ibおよび抵抗52の抵抗値の積に等しい電位だけ降下した電位VBが生成される。
図5(b)に示す基板電位発生回路412では、NMOSトランジスタ56と接地電位VSSとの間に接続されたNMOSトランジスタ62が定電流源として機能する。具体的には、NMOSトランジスタ62は、図示しないバイアス回路により生成されたゲート電位VNをゲートに受けてバイアス電流Ibと同一の大きさの電流を流す。
図5(c),(d)に示す基板電位発生回路413,414は、それぞれ、基板電位発生回路411,412と比較して、抵抗52に代えて、ゲートとソースとが結合されてダイオード接続とされたPMOSトランジスタ64を含む点で異なっている。このPMOSトランジスタ64はバイアス電流Ibを電位に変換する。
以上に示す基板電位発生回路411〜414は、バイアス電流Ib、もしくはゲート電位VNで決まる一定電流をNMOSトランジスタ62に流すために必要なNMOSトランジスタ56のゲート−ソース電圧VGSによって基板電位VBのレベルが決まる。基板電位VBは、基準電圧VREFからNMOSトランジスタ56のゲート−ソース電圧VGSを差し引いた電位となる。したがって、生成される基板電位VBの入力電圧(外部電源電圧)VCC依存性は小さい。
図5(e)に示す基板電位発生回路415は、図5(a)の基板電位発生回路411と比較して、抵抗52に代えて、定電流源66を含む点で異なる。図5(e)の構成では、定電流源66,58にバイアス電流Ibを流すために必要なNMOSトランジスタ56のゲート−ソース電圧VGSによって基板電位VBのレベルが決まり、基板電位VBは、基準電圧VREFからゲート−ソース電圧VGSを差し引いた電位となる。
図5(f)に示す基板電位発生回路416は、図5(e)における定電流源66,58に代えて、PMOSトランジスタ64およびNMOSトランジスタ62を含む。PMOSトランジスタ64は、図示しないバイアス回路により生成されたゲート電位VPをゲートに受けて一定の大きさの電流を流す。NMOSトランジスタ62は、図示しないバイアス回路により生成されたゲート電位VNをゲートに受けて、PMOSトランジスタ64に流れる電流と同一の大きさの電流を流す。したがって、図5(f)では、PMOSトランジスタ64およびNMOSトランジスタ62に一定電流を流すために必要なNMOSトランジスタ56のゲート−ソース電圧VGSによって基板電位VBのレベルが決まり、基板電位VBは、基準電圧VREFからゲート−ソース電圧VGSを差し引いた電位となる。
図5(g),(h)に示す基板電位発生回路417,418は、定電流源として機能する抵抗52またはダイオード接続されたPMOSトランジスタ64と、該定電流源と接地電位VSSとの間に直列に接続されたNMOSトランジスタ56,62とを含む。
NMOSトランジスタ56,62はともに、入力端子54を介して基準電圧VREFをゲートに受ける。ここで、接地電位側のNMOSトランジスタ62は、そのサイズ(チャネル長およびチャネル幅)がNMOSトランジスタ56のサイズよりも小さくなるように構成される。これにより、NMOSトランジスタ62の電流駆動力を、NMOSトランジスタ56の電流駆動力よりも小さくしておく。このような構成としたことにより、基板電位発生回路417,418においては、2個のNMOSトランジスタ56,62のゲート−ソース電圧VGSの差分によって、基板電位VBのレベルが決まる。
図6を参照して、基板電位発生回路419〜422は、基準電圧VREFを基準として基板電位を生成するように構成された基板電位発生回路であり、電源端子42と接地電位との間に直列に接続された、抵抗52(またはダイオード接続されたPMOSトランジスタ64)、基準電圧VREFをゲートに受けるNMOSトランジスタ56、抵抗50(またはダイオード接続されたNMOSトランジスタ46)を含んで構成される。
このうち、図6(i),(j)に示す基板電位発生回路419,420においては、NMOSトランジスタ56のゲート−ソース間電圧VGSと抵抗50における降下電圧との比によって基板電位VBのレベルが決定される。また、図6(k),(l)に示す基板電位発生回路421,422においては、NMOSトランジスタ56のゲート−ソース間電圧VGSとダイオード接続されたNMOSトランジスタ46のゲート−ソース間電圧VGSとの比によって基板電位VBのレベルが決定される。
なお、上記の図4から図6に説明した基板電位発生回路の構成は、いずれも例示であって、必ずしもこれらに限定されるものでない。
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、出力トランジスタにデプレッション型NMOSトランジスタを用いたレギュレータ回路において、デプレッション型NMOSトランジスタの基板に任意の電位を与えることができる。そのため、基板効果がしきい値電圧に及ぼす影響を小さくしてデプレッション型NMOSトランジスタの電流供給能力を向上することができる。これにより、外部電源電圧VCCの低電圧化に対応することができる。また、リテンションモード時には、デプレッション型NMOSトランジスタを確実にオフさせことができるため、レギュレータ回路の出力電圧(内部電源電圧)を所望の電圧レベルに維持することが可能となる。
[実施の形態2]
図7は、一般的なレギュレータ回路の構成例を説明する回路図である。
図7を参照して、一般的なレギュレータ回路は、出力トランジスタとしてPMOSトランジスタ202と、PMOSトランジスタ202のゲートに印加されるゲート電位VGを出力する差動増幅器204と、位相補償用コンデンサ206とを備えている。位相補償用コンデンサ206は、PMOSトランジスタ202のゲートとドレインとの間に挿入されている。
図7に示した一般的なレギュレータ回路において、差動増幅器204の非反転入力端子に低周波の微小振幅信号を入力すると、差動増幅器204の出力端子には、入力信号INと同位相で振幅が増幅された信号が出力される。この信号がゲートに印加されることにより、PMOSトランジスタ202のドレインには、入力信号と極性が反転した信号VINTが出力される。
そして、入力信号INの周波数を高くすると、差動増幅器204の出力端子に現れる信号は入力信号INの周波数に追従することができずに位相が遅れ、入力信号INが低周波の場合に比べて利得が低下する。同様に、出力信号VINTも出力端子からさらに位相が遅れ、入力信号INが低周波の場合に比べて利得が低下する。入力信号INの周波数をさらに高くすると、出力信号VINTの位相がさらに遅れ、180度遅れたとき、ゲインが1倍であれば(差動増幅器204およびPMOSトランジスタ202の総合利得が0dBであれば)、レギュレータ回路が発振する。
差動増幅器204およびPMOSトランジスタ202の総合利得が0dB(利得が1倍)のとき、入力信号INに対する出力信号VINTの位相が−180度よりも遅れていればレギュレータ回路は発振し、−180度よりも進んでいればレギュレータ回路は発振しない。なお、総合利得が0dBの時の位相と−180度との差は「位相余裕」と称され、一般に、位相余裕が大きいほど発振し難い回路となる。
ここで、位相余裕を大きくするためには、差動増幅器204のカットオフ周波数と出力段のカットオフ周波数との差を広げればよいことから、一般的なレギュレータ回路では、差動増幅器204のカットオフ周波数を低くして高周波における利得を下げることが行なわれる。具体的には、出力側に容量の大きな位相補償用コンデンサを設けて差動増幅器204のカットオフ周波数を低くすることにより、位相余裕を大きくして発振を防止している。
しかしながら、位相補償用コンデンサの容量を大きくすると、大きなレイアウト面積が必要となるため、高集積化が求められる半導体集積回路においてはその実現が困難である。この対策として、図7に示すレギュレータ回路では、位相補償用コンデンサ206を、出力トランジスタとしてのPMOSトランジスタ202のゲートとドレインとの間に挿入することにより、ミラー効果を発生させて位相補償用コンデンサ206の等価容量を、本来の容量Ccから(1+A)Ccに増大させている。
具体的には、PMOSトランジスタ202の利得を−Aとし、PMOSトランジスタ202のゲートに入力される信号の振幅をΔVとしたときに、PMOSトランジスタ202のドレインに出力される信号の振幅は−AΔVとなる。したがって、位相補償用コンデンサ206の両端にかかる電圧が(1+A)ΔVとなる。このため、位相補償用コンデンサ206に供給された電荷は(1+A)CcΔVとなり、位相補償用コンデンサ206の等価容量は(1+A)Ccに等しくなる。
このような構成とすることにより、位相補償用コンデンサの容量を小さくして効果的に位相補償をかけることが可能となるため、半導体集積回路のレイアウト面積の増大を防止することができる。なお、このような位相補償の形式は「ミラー補償」とも称されるとともに、位相補償用コンデンサ206の等価容量(1+A)Ccは「ミラー容量」とも称される。
ここで、このようなミラー補償を、出力トランジスタにデプレッション型NMOSトランジスタを用いたレギュレータ回路において実現しようとした場合には、デプレッション型NMOSトランジスタで構成されるソースフォロワ回路の利得が最大で「1」でしかないため、ミラー補償が有効でないという問題が生じてしまう。
そのため、本発明の実施の形態2においては、デプレッション型NMOSトランジスタを用いたレギュレータ回路においてもミラー補償を有効とするための構成について、図面を参照して説明する。
図8は、この発明の実施の形態2に係るレギュレータ回路106の構成例を説明する回路図である。
図8を参照して、レギュレータ回路106は、出力トランジスタとしてのデプレッション型NMOSトランジスタ20と、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに印加されるゲート電位VGを出力する差動増幅器22と、基準電圧VREFを差動増幅器22に供給する基準電圧発生回路24と、差動増幅器22の出力端子に接続される位相補償回路70とを備える。
位相補償回路70は、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに入力端子が接続されたインバータ72と、インバータ72の出力端子と入力端子との間に接続された位相補償用コンデンサ74とを含む。
ここで、インバータ72が負の利得「−A」を持つとすると、インバータ72に入力される信号の振幅をΔVとしたときに、インバータ72から出力される信号の振幅は−AΔVとなる。したがって、位相補償用コンデンサ74の両端にかかる電圧が(1+A)ΔVとなる。このため、位相補償用コンデンサ74に供給された電荷は(1+A)CcΔVとなり、位相補償用コンデンサ74の等価容量は(1+A)Ccに等しくなる。
このように、ソースフォロワ回路を構成するデプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに、インバータ72および位相補償用コンデンサ74からなる位相補償回路70を設けることにより、図7に示した一般的なレギュレータ回路と同様に、小さな容量で効果的に位相補償をかけることが可能となる。
次に、図8における位相補償回路70の構成例について、図面を参照して説明する。
図9を参照して、同図(a)〜(f)には、6種類の位相補償回路701〜706が例示されている。これらの位相補償回路701〜706は、NMOSトランジスタ84の利得を利用した位相補償回路701〜703と、PMOSトランジスタ88の利得を利用した位相補償回路704〜706とに分類される。
図9(a)を参照して、位相補償回路701は、電源端子80と接地電位との間に直列に接続された定電流源82およびNMOSトランジスタ84とを含む。NMOSトランジスタ84のゲートは、図示しない差動増幅器22の出力端子86に接続されている。また、NMOSトランジスタ84のゲート−ドレイン間には位相補償用コンデンサ74が接続されている。これに対して、図9(b),(c)に示す位相補償回路702,703では、定電流源82に代えて、PMOSトランジスタ88および抵抗90がそれぞれ定電流源として機能する。
上述した図9(a)〜(c)に示す位相補償回路701〜703は、インバータ72(図8)として、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されるCMOSインバータ回路に代えて、CMOSインバータ回路のうちのPMOSトランジスタが定電流源に置き換えられた構成を有している。このような構成としたことにより、CMOSインバータ回路によりインバータ72を構成した場合と比較して、利得が大きくなる入力電圧の範囲を広げることができる。図10には、CMOSインバータ回路の伝達特性(図中の曲線k1に相当)と、一方のトランジスタを定電流源としたインバータの伝達特性(図中の曲線k2に相当)とが併せて示されている。図10を参照して、CMOSインバータ回路では、利得が大きくなる領域が論理しきい値近傍の電圧範囲に限られる。これに対して、一方のトランジスタを定電流源としたインバータでは、利得が低下するものの、利得が大きくなる領域がより広い電圧範囲とすることができる。これにより、より有効に位相補償を働かせることができる。
図9(d)〜(f)に示す位相補償回路704〜706は、インバータ72(図8)として、CMOSインバータ回路に代えて、CMOSインバータ回路のうちのNMOSトランジスタが定電流源に置き換えられた構成を有している。本構成では、PMOSトランジスタ88のゲートは、図示しない差動増幅器22の出力端子86に接続されている。また、PMOSトランジスタ88のゲート−ドレイン間には位相補償用コンデンサ74が接続されている。これらの位相補償回路704〜706においても、上述した位相補償回路701〜703と同様に、CMOSインバータ回路を用いて構成と比較して、利得を大きくなる領域を広げることができるため、有効に位相補償を行なうことができる。
(変更例)
図11は、この発明の実施の形態2の変更例に係るレギュレータ回路108の構成例を説明する回路図である。
図11を参照して、本変更例に係るレギュレータ回路108は、図9に示すレギュレータ回路106と比較して、位相補償回路70に代えて、位相補償回路70Aを備える点でのみ異なっている。
図11において、位相補償回路70Aは、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに入力端子が接続される複数のインバータ72,76と、インバータ72,76の出力端子と入力端子との間にそれぞれ接続された位相補償用コンデンサ74,78とを含む。インバータ72および位相補償用コンデンサ74と、インバータ76および位相補償用コンデンサ78とは、それぞれ、図9(a)〜(f)に示した回路構成のいずれかを有している。
上記の構成において、インバータ72とインバータ76とは、論理しきい値が互いに異なっている。図12に、インバータ72の伝達特性(図中の曲線k3に相当)と、インバータ76の伝達特性(図中の曲線k4に相当)とを併せて示す。図12を参照して、各インバータの利得は、論理しきい値近傍で大きくなるが、その電圧範囲がインバータ72,76の間で異なっている。そのため、位相補償回路70A全体としての総合的な利得は、インバータごとの電圧範囲を重ね合わせた電圧範囲で大きくなる。この結果、利得が大きくなる領域をさらに広げることができるため、有効に位相補償を行なうことができる。
また、図11の位相補償回路70Aにおいて、インバータ72が利得−A1を持ち、かつ、インバータ76が利得−A2を持つとすると、位相補償用コンデンサ74の等価容量は(1+A1)Ccに等しくなり、位相補償用コンデンサ78の等価容量は(1+A2)Ccに等しくなる。位相補償用コンデンサ74,78はデプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに対して並列に接続されているため、位相補償回路70Aにおけるミラー容量は、位相補償用コンデンサ74,78の等価容量の和である(2+A1+A2)Ccに等しくなる。したがって、複数の位相補償用コンデンサを用いた構成においても、各コンデンサの容量を小さくすることができるため、半導体集積回路のレイアウト面積の増大を防止することができる。
以上のように、この発明の実施の形態2によれば、出力トランジスタにデプレッション型NMOSトランジスタを用いたレギュレータ回路においても、位相補償用コンデンサの容量を小さくして効果的に位相補償をかけることができる。その結果、半導体集積回路のレイアウト面積の増大を防止することができる。
なお、上述した実施の形態2に係るレギュレータ回路106,108においても、実施の形態1に係るレギュレータ回路100,102,104と同様に、電源端子10とデプレッション型NMOSトランジスタ20のドレインとの間に、遮断トランジスタ(PMOSトランジスタ12)を設ける構成とすることができる。半導体集積回路のスタンバイモード時には、「L」レベルのパワーダウン制御信号PDによって遮断トランジスタをオフさせることにより、デプレッション型NMOSトランジスタ20をオフさせることができる。
[実施の形態3]
レギュレータ回路においては、通常、電源投入直後の出力電圧VDDは、接地電位VSSであり、所望の電圧(基準電圧VREF)と大きく異なる。そのため、レギュレータ回路は、入力端子から出力端子に大きなエネルギーを伝達しようとするので、大電流を出力トランジスタを介して流そうとする。このような電源投入直後の大電流は、ラッシュカレントとも称される。このラッシュカレントが流れると、出力トランジスタが損傷するおそれがある。
この対策として、たとえば特許文献7(特開2002−343874号公報)には、出力トランジスタとしてPMOSトランジスタを用いたシリーズレギュレータ回路において、電源端子と差動増幅器の出力端子との間に、クランプ回路を接続した構成を開示している。クランプ回路としては、順方向接続のダイオードが使用されている。このような構成において、電源投入直後においては、PMOSトランジスタのゲートには、入力電圧(外部電源電圧)VCCからダイオードのしきい値電圧Vfを差し引いた電圧(VCC−Vf)が印加される。これにより、差動増幅器の出力によらず、PMOSトランジスタをオンさせている。
このようなラッシュカレントへの対策については、出力トランジスタとしてデプレッション型NMOSトランジスタを用いたレギュレータ回路においても必要とされるが、特許文献7に示されるクランプ回路をそのまま適用することはできない。
なお、デプレッション型NMOSトランジスタのゲートと接地電位VSSとの間に、クランプ回路として、ダイオード接続されたNMOSトランジスタを多段に接続したダイオード多段接続回路を接続する構成とすることが検討される。内部電源電圧VDD=1.5Vの通常動作時に、最大出力電流を駆動できるゲート電圧を確保できるようにクランプ電圧を設定する必要があるが、デプレッション型NMOSトランジスタのゲートと接地電位VSSとの間にクランプ回路を設けると、内部電源電圧VDDが低いときには通常動作時に比べてゲート電圧が大きくなり、ラッシュカレントも大きくなる。
この発明の実施の形態3では、上記のような構成に代えて、デプレッション型NMOSトランジスタのゲート−ソース間にクランプ回路を接続する。これにより、VG−VDD間にクランプ回路を設けると、内部電源電圧VDDが低いときにおいても通常動作時と同程度のゲート電圧でクランプされ、ラッシュカレントを抑えることができる。
図13は、この発明の実施の形態3に係るレギュレータ回路110の構成例を説明する回路図である。
図13を参照して、この発明の実施の形態3に係るレギュレータ回路110は、出力トランジスタを構成するデプレッション型NMOSトランジスタ20と、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートに印加されるゲート電位VGを出力する差動増幅器22と、基準電圧VREFを差動増幅器22に供給する基準電圧発生回路24と、遮断トランジスタを構成するPMOSトランジスタ12とを備える。
レギュレータ回路110は、さらに、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲートとソースとの間に接続されるクランプ回路28を備える。クランプ回路28は、ダイオード接続されたNMOSトランジスタで構成されている。なお、クランプ回路28に用いるダイオード接続されたMOSトランジスタは、NMOSトランジスタ、PMOSトランジスタのどちらを使用するようにしてもよい。
図13に示すレギュレータ回路110において、電源投入直後には、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート−ソース間電圧VGSは、ダイオード接続されたNMOSトランジスタ28のしきい値電圧に応じた所定電圧にクランプされる。このとき、デプレッション型NMOSトランジスタ20のゲート−ソース間電圧VGSは、ゲート−ソース間に接続されたクランプ回路によって直接的にクランプされるため、ゲート−接地電位間にクランプ回路を接続する構成と比較して、より効果的にゲート−ソース間電圧VGSを制限できる。これにより、この発明の実施の形態3によれば、差動増幅器22の出力によらず、ラッシュカレントの発生を防止して、デプレッション型NMOSトランジスタ20を安全に動作させることができる。
上述した実施の形態1〜3に係るレギュレータ回路においては、出力トランジスタとしてのデプレッション型NMOSトランジスタおよび差動増幅器を備えるレギュレータ回路に対して、遮断トランジスタ、基板電位発生回路、位相補償回路、またはクランプ回路を付加する構成について説明したが、これらの回路のうちの少なくとも2つ以上を組合せてレギュレータ回路に付加する構成とすることも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。