以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置20の構成例を示す。本実施形態の回路装置20は、電圧制御発振回路30と振幅調整回路40と処理回路50を含む。
電圧制御発振回路30は発振信号OSCを生成する回路である。具体的には電圧制御発振回路30は、制御電圧VCに応じた発振周波数の発振信号OSCを生成する。例えば不図示の制御電圧生成回路からの制御電圧VCに応じて変化する発振周波数の発振信号OSCを生成する。そして回路装置20は、この発振信号OSCに基づくクロック信号を出力する。
処理回路50は入力情報に基づいて種々の処理を行う回路である。処理回路50は、ゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現したり、CPU又はMPUなどのプロセッサーにより実現できる。処理回路50の入力情報は、例えば不図示の不揮発性メモリー又はレジスターなどから入力される。入力情報は例えばデジタル信号であり、処理回路50はデジタル信号である入力情報に基づいてデジタル信号処理を行う。具体的には処理回路50は、電圧制御発振回路30の動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つが入力情報として入力され、入力情報に基づいて振幅調整情報AJを出力する。動作設定情報は、電圧制御発振回路30の種々の動作を設定するための情報である。例えば動作設定情報は、電圧制御発振回路30の種々の動作モードを設定したり、或いは電圧制御発振回路30の発振周波数の設定を行う情報などである。具体的には動作設定情報は、後述する動作モード設定情報又は周波数レンジ設定情報などである。特性情報は、電圧制御発振回路30の種々の特性を表す情報である。例えば特性情報は、電圧制御発振回路30を構成するトランジスターの特性情報である。具体的には動作設定情報は、電圧制御発振回路30の発振用トランジスターの特性変動情報である。振幅調整情報AJは、振幅調整回路40での振幅調整に用いられる情報である。振幅調整回路40は、この振幅調整情報AJに基づいて、電圧制御発振回路30の発振信号OSCの振幅調整を行う。処理回路50の入力情報である動作設定情報、特性情報、及び処理回路50の出力情報である振幅調整情報AJは例えばデジタル信号である。
振幅調整回路40は、電圧制御発振回路30の発振信号OSCの振幅調整を行う。具体的には振幅調整回路40は、電圧制御発振回路30に接続され、処理回路50からの振幅調整情報AJに基づいて電圧制御発振回路30の動作電流又は電源電圧を可変に調整することで、発振信号OSCの振幅を調整する。例えば振幅調整回路40は、振幅調整情報AJの値に応じて、電圧制御発振回路30の動作電流又は電源電圧を変化させることで、発振信号OSCの振幅を小さくしたり、大きくする振幅調整を行う。振幅調整回路40は、電圧制御発振回路30のゲインを調整するゲイン調整回路と呼ぶこともできる。
以上のように本実施形態の回路装置20は、発振信号OSCを生成する電圧制御発振回路30と、発振信号OSCの振幅調整を行う振幅調整回路40と、処理回路50を含む。処理回路50は、入力情報として、電圧制御発振回路30の動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つが入力され、当該入力情報に基づいて振幅調整情報AJを出力する。そして振幅調整回路40は、振幅調整情報AJに基づいて電圧制御発振回路30の動作電流又は電源電圧を可変に調整することで、発振信号OSCの振幅を調整する。このようにすれば、処理回路50が、動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つに基づく振幅調整情報AJを出力し、振幅調整回路40が、振幅調整情報AJに基づき電圧制御発振回路30の動作電流又は電源電圧を調整することで、発振信号OSCの振幅をオープンループ制御により調整できるようになる。従って、発振信号OSCの振幅を、電圧制御発振回路30の動作設定情報や特性情報に応じた適正な振幅に調整できるようになり、種々の要因に対応可能な発振信号OSCの振幅調整を実現できる。また本実施形態によれば、クローズドループ制御であるフィードバック制御ではなく、オープンループ制御により発振信号OSCの振幅を調整できるため、振幅調整を原因とする発振信号OSCの特性劣化も抑制できる。即ち、前述の特許文献1のようにフィードバック制御により動的に振幅調整を行うと、フィードバック制御が原因となる発振信号OSCの位相ノイズ等が発生し、発振信号OSCの特性が劣化する問題が発生する。この点、本実施形態ではオープンループ制御で発振信号OSCの振幅調整が行われるため、このような問題が発生するのを防止できる。
2.振幅調整の詳細
次に本実施形態の振幅調整の詳細例について説明する。本実施形態では動作モード設定情報、特性変動情報、或いは周波数レンジ設定情報に基づいて発振信号OSCの振幅調整を行っている。即ちゲイン調整を行っている。例えば図2に本実施形態の回路装置20の詳細な第1構成例を示す。図2では動作モード設定情報、特性変動情報に基づいて振幅調整を行っている。なお回路装置20や電圧制御発振回路30は図2の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
図2では、電圧制御発振回路30の例として、インダクターLを用いたLC型の発振回路が示されている。また電圧制御発振回路30の例として、差動の発振信号OSCP、OSCNを生成する差動型の発振回路が示されている。但し電圧制御発振回路30はこのような構成に限定されず、水晶振動子などの振動子を用いた発振回路でもよく、差動ではなくシングルエンドの発振信号を生成する発振回路であってもよい。
電圧制御発振回路30は、発振用のトランジスターTA1、TA2、TA3、TA4と、インダクターLと、キャパシターCV1、CV2を含む。また電圧制御発振回路30は可変容量回路32を含むことができる。
発振用のトランジスターTA1、TA2はP型のトランジスターであり、具体的にはPMOSのトランジスターである。発振用のトランジスターTA3、TA4はN型のトランジスターであり、具体的にはNMOSのトランジスターである。なお4つの発振用のトランジスターの全てを、N型のトランジスターで構成したり、P型のトランジスターで構成する変形実施も可能である。
トランジスターTA1、TA2は、電源電圧VDDが供給される高電位側の電源ノードであるノードN1と、発振信号OSCP、OSCNの出力ノードであるノードN2、N3との間に設けられる。具体的にはトランジスターTA1、TA2は、ソースがVDDのノードN1に接続され、ドレインがノードN2、N3に接続される。そしてトランジスターTA1のゲートはノードN3に接続され、トランジスターTA2のゲートはノードN2に接続される。トランジスターTA3、TA4は、振幅調整回路40が接続されるノードN5と、発振信号OSCP、OSCNの出力ノードであるノードN2、N3との間に設けられる。具体的にはトランジスターTA3、TA4は、ソースが低電位電源側のノードであるノードN5に接続され、ドレインがノードN2、N3に接続される。そしてトランジスターTA3のゲートはノードN3に接続され、トランジスターTA4のゲートはノードN2に接続される。
キャパシターCV1、CV2は、容量が可変のキャパシターであり、例えばバラクターなどの可変容量素子により実現できる。キャパシターCV1はノードN1とノードN4の間に設けられ、キャパシターCV2はノードN3とノードN4の間に設けられる。そしてノードN4に対して制御電圧VCが供給される。制御電圧VCは不図示の制御電圧生成回路が供給する。そして制御電圧VCに応じて、キャパシターCV1、CV2の容量が変化することで、電圧制御発振回路30の発振信号OSCP、OSCNの発振周波数が変化する。
インダクターLは、ノードN2とノードN3の間に設けられる。インダクターLは、例えば半導体チップである回路装置20において、アルミ配線などの金属配線を所定のパターンで形成することで実現できる。なおインダクターLには、不図示の中間端子が設けられており、この中間端子はオープン状態に設定されたり、所定の電位に設定される。
可変容量回路32は、容量が可変に制御される回路であり、発振信号OSCP、OSCNの出力ノードであるノードN2、N3に接続される。そして、後述するように周波数レンジ設定情報に基づいて容量値が可変に制御される。可変容量回路32の詳細については後述する。
振幅調整回路40は、電圧制御発振回路30のノードN5に接続され、振幅調整情報AJに基づいて電圧制御発振回路30の動作電流ITLを可変に調整することで、発振信号OSCP、OSCNの振幅を調整する。動作電流ITLは、電圧制御発振回路30においてVDDのノードN1からノードN5へと流れる電流であり、テール電流とも呼ばれる。
処理回路50は、図1の動作設定情報として動作モード設定情報が入力される。また図1の特性情報として特性変動情報が入力される。そして入力情報である動作モード設定情報や特性変動情報に基づいて、振幅調整情報AJを出力する。そして振幅調整回路40は、動作モード設定情報や特性変動情報に応じた振幅調整情報AJに基づいて、電圧制御発振回路30の動作電流ITLを調整することで、発振信号OSCの振幅を調整する。
図3に振幅調整回路40の構成例を示す。なお振幅調整回路40は図3の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
振幅調整回路40はトランジスターTB0~TB9、TDFを含む。トランジスターTB0~TB9、TDFは例えばN型のトランジスターである。なお振幅調整回路40を構成するトランジスターの個数は任意である。トランジスターTB5~TB9の各々と、トランジスターTB0~TB4の対応するトランジスターは、電圧制御発振回路30との接続ノードであるノードN5と、低電位側の電源電圧であるVSSのノードとの間に直列に設けられる。そしてトランジスターTB5~TB9のゲートにはバイアス電圧VBSが入力され、これによりバイアス電圧VBSに応じた定電流をトランジスターTB5~TB9に流すことができる。またトランジスターTB0~TB4のゲートには、振幅調整情報であるAJ0、AJ1、AJ2、AJ3、AJ4の信号が入力される。振幅調整情報AJは例えば5ビットのデジタル信号であり、AJ0、AJ1、AJ2、AJ3、AJ4は、5ビットの振幅調整情報AJの各ビットに対応する信号である。なお振幅調整情報AJのビット数は5ビットに限定されず、4ビット以下でもよいし、6ビット以上でもよい。
トランジスターTDFは、ノードN5とVSSのノードとの間に設けられ、そのゲートにバイアス電圧VBSが入力される。このトランジスターTDFは、電圧制御発振回路30の発振を維持するのに必要な最低限の電流IDFを流すためのトランジスターであり、電流IDFを流すのに必要なトランジスターサイズに設定されている。
トランジスターTB0、TB1、TB2、TB3、TB4は、そのゲートに入力されるAJ0、AJ1、AJ2、AJ3、AJ4が「1」になるとオンになり、電流IT0、IT1、IT2、IT3、IT4が流れる。そしてトランジスターTB0、TB1、TB2、TB3、TB4は、トランジスターサイズが1:2:4:8:16の比になっている。従って、トランジスターTB0に流れる電流をIT0とした場合に、IT1=2×IT0、IT2=4×IT0、IT3=8×IT0、IT4=16×IT0の関係が成り立つ。即ちバイナリーで重み付けされた電流になっている。従って、振幅調整回路40により、ITL=IDF+(AJ0+2×AJ1+4×AJ2+8×AJ3+16×AJ4)×IT0の式で表される電流値の動作電流ITLを流すことができる。即ち、振幅調整情報AJ=(AJ4,AJ3,AJ2,AJ1,AJ0)が00000~11111の範囲で変化したときに、動作電流ITLの電流値は図4に示すようになる。
例えば振幅調整情報AJが00000の場合には、トランジスターTB0~TB4の全てがオフになることで、動作電流ITLの電流値はIDFになる。これにより動作電流ITLは最小になり、発振信号OSCの振幅も最小になる。振幅調整情報AJが00001の場合には、AJ0が「1」になってトランジスターTB0がオンになることで、動作電流ITLの電流値はIDF+IT0になる。振幅調整情報AJが00010の場合には、AJ1が「1」になってトランジスターTB1がオンになることで、動作電流ITLの電流値はIDF+2×IT0になる。振幅調整情報AJが10000の場合には、AJ4が「1」になってトランジスターTB4がオンになることで、動作電流ITLの電流値はIDF+16×IT0になる。これにより動作電流ITLはデフォルトの電流値になり、発振信号OSCもデフォルトの振幅になる。振幅調整情報AJが11111の場合には、トランジスターTB0~TB4の全てがオンになることで、動作電流ITLの電流値はIDF+31×IT0になる。これにより動作電流ITLは最大になり、発振信号OSCの振幅も最大になる。
このように本実施形態では、入力情報に基づくデジタル演算により、デジタル信号である振幅調整情報AJが生成され、生成された振幅調整情報AJに基づき動作電流ITLが可変に制御されることで、発振信号OSCの振幅が調整される。
また本実施形態では、図1の動作設定情報は、図2に示すように動作モード設定情報を含む。この動作モード設定情報は、例えば、ノーマルモードと、ノーマルモードよりも電圧制御発振回路30であるVCOが低消費電力になる低消費電力モードを含む。なお、以下では、電圧制御発振回路30を、適宜、VCO(Voltage Controlled Oscillator)と記載する。そして処理回路50は、動作モード設定情報により低消費電力モードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの動作電流ITLよりも小さい動作電流ITLを設定する振幅調整情報AJを出力する。或いは後述の図15、図18の場合には、処理回路50は、低消費電力モードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの電源電圧VDDよりも小さい電源電圧VDDを設定する振幅調整情報AJを出力する。このようにすれば、電圧制御発振回路30であるVCOの動作モードとして低消費電力モードが設定された場合には、振幅調整回路40は、処理回路50からの振幅調整情報AJに基づいて、動作電流ITL又は電源電圧VDDが小さくなる制御を行うようになる。そして動作電流ITL又は電源電圧VDDが小さくなることで、図4で説明したように発振信号OSCの振幅も小さくなり、VCOの消費電力が小さくなる低消費電力モードを実現できる。
また動作モード設定情報は、例えば、ノーマルモードと、ノーマルモードよりも発振信号OSCが低ノイズになる低ノイズモードを含む。そして処理回路50は、動作モード設定情報により低ノイズモードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの動作電流ITLよりも大きい動作電流ITLを設定する振幅調整情報AJを出力する。或いは後述の図15、図18の場合には、処理回路50は、低ノイズモードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの電源電圧VDDよりも大きい電源電圧VDDを設定する振幅調整情報AJを出力する。このようにすれば、VCOの動作モードとして低ノイズモードが設定された場合には、振幅調整回路40は、処理回路50からの振幅調整情報AJに基づいて、動作電流ITL又は電源電圧VDDが大きくなる制御を行うようになる。そして動作電流ITL又は電源電圧VDDが大きくなることで、図4で説明したように発振信号OSCの振幅も大きくなり、発振信号OSCが低ノイズになる低ノイズモードを実現できる。
例えばLC型発振回路などのVCOの一般的な性能として、テール電流である動作電流ITLが増加したり、電源電圧VDDが増加すると VCOの消費電力は増加するが、発振信号OSCのジッターは小さくなる。一方、逆に動作電流ITLが減少したり、電源電圧VDDが低下すると、発振信号OSCのジッターは大きくなるが、VCOの消費電力は減少する。本実施形態では、動作モード設定情報を処理回路50に入力することで、VCOの低ノイズモードと低消費電力モードの切り替えを容易に行えるようになる。
図5は、動作モード設定情報による発振信号OSCの振幅調整の説明図である。図5では、動作モードとして、低ノイズモードとノーマルモードと低消費電力モードが用意されている。また低ノイズモードとして、低ノイズモードAと低ノイズモードBが用意されており、低ノイズモードAは、低ノイズモードBよりも発振信号OSCを更に低ノイズにするモードになっている。
低ノイズモードAでは、動作モード設定情報の2ビットのデジタル信号として「11」が処理回路50により入力される。これにより処理回路50は、デフォルト設定+4に設定された振幅調整情報AJを出力する。そして、デフォルト設定+4の振幅調整情報AJが入力された振幅調整回路40は、動作電流ITLの電流値をIDF+20×IT0に設定する。これにより発振信号OSCの振幅が大きくなり、発振信号OSCのノイズがノーマルモードよりも低くなる低ノイズモードAが実現される。なおデフォルト設定は、例えばAJ4、3、2、1、0が「10000」となる設定である。従って、デフォルト設定+4になると、AJ4、3、2、1、0が「10100」になり、図4から明らかなように、動作電流ITLの電流値はIDF+20×IT0になる。
低ノイズモードBでは、動作モード設定情報のデジタル信号として「10」が処理回路50に入力される。これにより処理回路50は、デフォルト設定+2に設定された振幅調整情報AJを出力する。そして、デフォルト設定+2の振幅調整情報AJが入力された振幅調整回路40は、動作電流ITLの電流値をIDF+18×IT0に設定する。即ち、デフォルト設定+2になると、AJ4、3、2、1、0が「10010」になり、図4から明らかなように、動作電流ITLの電流値はIDF+18×IT0になる。これにより、発振信号OSCのノイズが、低ノイズモードAよりは大きいが、ノーマルモードよりは低くなる低ノイズモードBが実現される。
ノーマルモードでは、動作モード設定情報のデジタル信号として「01」が処理回路50に入力される。これにより処理回路50は、デフォルト設定の振幅調整情報AJを出力する。そして、デフォルト設定の振幅調整情報AJが入力された振幅調整回路40は、動作電流ITLの電流値をIDF+16×IT0に設定する。即ち、デフォルト設定では、AJ4、3、2、1、0が「10000」になり、図4に示すように、動作電流ITLの電流値はIDF+16×IT0になる。これによりノーマルモードが実現される。
低消費電力モードでは、動作モード設定情報のデジタル信号として「00」が処理回路50に入力される。これにより処理回路50は、デフォルト設定-2に設定された振幅調整情報AJを出力する。そして、デフォルト設定-2の振幅調整情報AJが入力された振幅調整回路40は、動作電流ITLの電流値をIDF+14×IT0に設定する。即ち、デフォルト設定-2になると、AJ4、3、2、1、0が「01110」になり、図4から明らかなように、動作電流ITLの電流値はIDF+14×IT0になる。これにより動作電流ITLや発振信号OSCの振幅が、ノーマルモードよりも小さくなり、低消費電力モードが実現される。
なお低ノイズモード、低消費電力モードの制御は、1ビットの制御による2段階の制御でもよいし、mビットの制御による2m段階の制御でもよい。また低ノイズモードはノーマルモードよりもパワーが大きいハイパワーモードと呼ぶこともできる。
図6は動作モードの設定とノイズの関係を示す図である。図6の横軸はノイズ周波数であり、オフセット周波数と呼ばれるものである。縦軸はノイズの大きさを表す。図6のA1は、図5で説明したように動作モード設定情報が「11」に設定された低ノイズモードAの場合である。この場合には、動作モード設定情報が「01」に設定されたノーマルモードのA2の場合に比べて、発振信号OSCの振幅が大きくなり、ノイズが小さくなる。A3は、動作モード設定情報が「00」に設定された低消費モードの場合である。この場合には、動作モード設定情報が「01」に設定されたノーマルノードのA2に比べて、発振信号OSCの振幅が小さくなり、ノイズは大きくなるが、消費電力については低くできる。
例えばVCOの位相ノイズL(ω)は下式(1)のように表される。
上式(1)において、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。Psigは、VCOの電力であり、発振振幅に対応する。またf0は発振周波数、Δfは離調周波数、Qtankは共振器のQ値である。一般的にVCOの発振電流を増やすと発振振幅は増加する。そしてVCOの電力Psigが大きいほど、VCOの位相ノイズL(ω)は低下して行き、低ノイズになる。即ち、図7のB1に示すように、VCOの電力PsigがP0~P1の範囲である場合には、VCOの電力Psigが大きいほどVCOの位相ノイズL(ω)は低下する。このVCOの電力Psigは、発振振幅×発振電流と表され、発振振幅に対応する。ところが、VCOの発振電流を過大に大きくしていくと、発振振幅の増加が頭打ちになって行く。そして、電流ノイズだけは増加して行き、図7のB2に示すように、VCOの電力PsigがP1~P2の範囲では、VCOのトータルの位相ノイズは 反対に増加して行く傾向があることが知られている。従って、VCOを最も低ノイズにするには、図7の電力P1に示すように、VCOの電力Psigの最適範囲が存在する。そして上述のようにVCOの電力Psigは発振振幅に対応するため、発振振幅についても最適範囲が存在する。本実施形態では、このようにVCOが最も低ノイズになるような最適範囲の発振振幅になるように振幅調整を行う。
なお動作モード設定情報は、例えば回路装置20に設けられる不図示の不揮発性メモリーに記憶される。例えば低ノイズを重視する製品に回路装置20が組み込まれる場合には、低ノイズモードを指定する動作モード設定情報が不揮発性メモリーに書き込まれる。一方、低消費電力を重視する製品に回路装置20が組み込まれる場合には、低消費モードを指定する動作モード設定情報が不揮発性メモリーに書き込まれる。不揮発性メモリーへの動作モード設定情報の書き込みは、例えば回路装置20の製造時や出荷時に行われる。また回路装置20に不図示のレジスターを設け、当該レジスターに動作モード設定情報を書き込んで設定できるようにしてもよい。例えば製品の出荷後に、レジスターに動作モード設定情報を書き込むことで、動作モードを切り替えるようにしてもよい。例えば不揮発性メモリーから読み出された動作モード設定情報をレジスターにロードする。そしてレジスターにロードされた動作モード設定情報を、回路装置20に設けられる不図示のインターフェース回路を介して外部装置が書き換えられるようにする。或いは不揮発性メモリーに記憶臆される動作モード設定情報を、インターフェース回路を介して書き換えられるようにしてもよい。
また本実施形態では、図1の特性情報は、図2に示すように特性変動情報を含む。具体的には特性情報は、電圧制御発振回路30に含まれる発振用トランジスターの特性変動情報を含む。発振用トランジスターは例えば図2のトランジスターTA1~TA4である。この特性変動情報は製造ばらつき情報とも呼ばれる。例えば発振用トランジスターのしきい値や移動度などの特性は、製造プロセスにより変動し、特性変動情報は、この製造プロセスによるトランジスター特性の変動情報である。例えば製造工程の後の検査工程において、回路装置20の半導体チップ毎又は半導体ウェハー毎のトランジスター特性を測定することで、発振用トランジスターの特性変動情報を取得する。この特性変動情報は、例えば回路装置20の不図示の不揮発性メモリーに書き込まれる。そして処理回路50は、不揮発性メモリーから読み出された特性変動情報に基づいて振幅調整情報AJを求め、振幅調整回路40は、振幅調整情報AJに基づいて電圧制御発振回路30の動作電流ITL又は電源電圧VDDを可変に調整することで、発振信号OSCの振幅を調整する。このようにすれば、発振用トランジスターの特性変動情報に応じた適切な振幅の発振信号OSCを生成できるようになる。
具体的には処理回路50は、特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がfastであるとき、発振用トランジスターの特性がtypicalであるときの動作電流ITL又は電源電圧VDDよりも小さい動作電流ITL又は電源電圧VDDに設定する振幅調整情報AJを出力する。例えば、本実施形態においてfastとは、typicalの場合に比べて、発振用トランジスターのしきい値が低い場合、或いは発振用トランジスターの移動度が高い場合のことである。そして、このように特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がfastであるときに、処理回路50が、動作電流ITL又は電源電圧VDDを小さくする振幅調整情報AJを出力することで、振幅調整回路40は、動作電流ITL又は電源電圧VDDを小さくする調整を行い、これにより発振信号OSCの振幅が小さくなる。従って、発振用トランジスターの特性がfastである場合に、発振信号OSCの振幅が必要以上に大きくなって、消費電力が無駄に消費されてしまうのを防止できる。
また処理回路50は、特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がslowであるとき、発振用トランジスターの特性がtypicalであるときの動作電流ITL又は電源電圧VDDよりも大きい動作電流ITL又は電源電圧VDDに設定する振幅調整情報AJを出力する。例えば、本実施形態においてslowとは、typicalの場合に比べて、発振用トランジスターのしきい値が高い場合、或いは発振用トランジスターの移動度が低い場合のことである。そして、このように特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がslowであるときに、処理回路50が、動作電流ITL又は電源電圧VDDを大きくする振幅調整情報AJを出力することで、振幅調整回路40は、動作電流ITL又は電源電圧VDDを大きくする制御を行い、これにより発振信号OSCの振幅が大きくなる。従って、発振用トランジスターの特性がslowである場合に、発振信号OSCの振幅が小さくなって、発振信号OSCのノイズが大きくなったり、或いは発振が停止してしまうなどの事態を防止できる。
図8は、特性変動情報による発振信号OSCの振幅調整の説明図である。図8では、slowが4段階になっており、slow++++は、発振用トランジスターの特性が最も遅い特性であり、slow+は、発振用トランジスターの特性がtypicalに最も近い。またfastが3段階になっており、fast+++は、発振用トランジスターの特性が最も速い特性であり、fast+は、発振用トランジスターの特性がtypicalに最も近い。
発振用トランジスターの特性がslow++++の場合は、特性変動情報の3ビットのデジタル信号として「111」が処理回路50に入力される。これにより処理回路50は、デフォルト設定+4に設定された振幅調整情報AJを出力する。なおデフォルト設定は、例えばAJ4、3、2、1、0が「10000」となる設定である。そして、デフォルト設定+4の振幅調整情報AJが入力された振幅調整回路40は、動作電流ITLの電流値をIDF+20×IT0に設定する。同様にslow+++、slow++、slow+の場合は、特性変動情報として、各々、「110」、「101」「100」が処理回路50に入力され、デフォルト設定+3、デフォルト設定+2、デフォルト設定+1の振幅調整情報AJが処理回路50から出力される。そして動作電流ITLの電流値が、IDF+19×IT0、IDF+18×IT0、IDF+17×IT0に設定される。これにより発振用トランジスターの特性がslow側にばらついても、発振信号OSCの振幅を例えば一定に保つことが可能になる。
また発振用トランジスターの特性がtypicalの場合には、特性変動情報として、「011」が処理回路50に入力され、デフォルト設定の振幅調整情報AJが処理回路50から出力される。そして動作電流ITLの電流値が、デフォルト設定の電流値であるIDF+16×IT0に設定される。
一方、発振用トランジスターの特性がfast+、fast++、fast+++の場合には、各々、特性変動情報として、「010」、「001」、「000」が処理回路50に入力され、デフォルト設定-1、デフォルト設定-2、デフォルト設定-3の振幅調整情報AJが処理回路50から出力される。これにより動作電流ITLの電流値が、IDF+15×IT0、IDF+14×IT0、IDF+13×IT0に設定される。これにより発振用トランジスターの特性がfast側にばらついても、発振信号OSCの振幅を例えば一定に保つことが可能になる。
即ち、VCOの一般的な性能として、半導体の製造ばらつきによりトランジスター特性がfast側に振れると、発振信号OSCの振幅が増加する。一方、逆にトランジスター特性がslow側に振れると、発振信号OSCの振幅が減少する。このばらつきは、一度、製造工程を完了すれば、変わらないので、製品の出荷前検査工程などで、トランジスター特性がfast側に振れているか、slow側に振れているかを測定しておく。本実施形態では、測定されたトランジスター特性を発振用のトランジスターの特性とみなす。このfastの振れ幅とslowの振れ幅を数値化した特性変動情報を、回路装置20の不揮発メモリーなどに記憶させておく。トランジスター特性がslow側にばらついていた場合には、処理回路50に入力される特性変動情報により、発振信号OSCの振幅を大きくする方向に設定する。一方、トランジスター特性がfast側にばらついていた場合には、処理回路50に入力される特性変動情報により、発振信号OSCの振幅を小さくする方向に設定する。
具体的には、検査用のモニタートランジスターに対して、規定のゲート電圧、ドレイン電圧を印可してドレイン電流を測定して、8段階にクラス分けする。例えば電流値が大きい側であるfast側から、電流値が小さい側であるslow側までに応じて7~0のクラス番号を割り付け、不揮発性メモリーに記憶させる。製品出荷後、回路装置20のパワーオン後の初期起動シーケンスの中で、不揮発性メモリーからクラス番号をリードして、図8のテーブルに従って、ゲイン制御補正である発振信号OSCの振幅調整を行う。このようにすれば、トランジスター特性がfast側にばらついたり、Slow側にばらついても、この自動調整機構によりVCOの発振振幅を略一定にすることができる。例えば検査用のモニタートランジスターをVCOの発振用のトランジスターとみなして、振幅調整を行えるようになる。具体的には図7で説明したように、VCOが最も低ノイズになる最適範囲の発振振幅になるように振幅調整を行う。
図9に本実施形態の回路装置20の詳細な第2構成例を示す。図9では、図1の動作設定情報として周波数レンジ設定情報が処理回路50に入力されている。即ち本実施形態の動作設定情報は、発振周波数の周波数レンジを設定する周波数レンジ設定情報を含むことができる。このようにすれば、VCOの発振周波数の周波数レンジが設定された場合に、この周波数レンジに最適な振幅になるように発振信号OSCの振幅を調整できるようになる。
具体的には図9に示すように、電圧制御発振回路30は、発振信号OSCP、OSCNの出力ノードであるノードN2、N3に接続され、周波数レンジ設定情報に基づいて容量値が可変に制御される可変容量回路32を含む。即ち後述の図11で説明するように、周波数レンジ設定情報に基づいて可変容量回路32の容量が調整されることで、発振信号OSCの周波数レンジが設定される。そして処理回路50は、この周波数レンジ設定情報に基づいて振幅調整情報AJを出力する。そして振幅調整回路40が、周波数レンジ設定情報に基づく振幅調整情報AJを用いて、電圧制御発振回路30の動作電流ITLや後述の図15、図18の電源電圧VDDを調整することで、発振信号OSCの振幅が調整されるようになる。このようにすれば、周波数レンジ設定情報に基づいて、電圧制御発振回路30の可変容量回路32により発振周波数の周波数レンジが調整された場合にも、この周波数レンジに最適な振幅になるように発振信号OSCの振幅が調整されるようになる。
例えばLC型のVCOでは、発振周波数はインダクターLのインダクタンスと発振容量で決まるが、インダクターLのインダクタンスを可変にすることは、半導体の回路装置20では難しい。このため、発振周波数を上昇させる場合には、発振容量を減少させ、発振周波数を低下させる場合には、発振容量を増加させる調整を行う。このような発振容量の調整のために図9に示すような可変容量回路32が設けられる。即ち、可変容量回路32の容量をレジスター設定で切り替えることで、VCOの発振容量を調整する。例えばレジスター設定により周波数レンジ設定情報が切り替わることで、可変容量回路32の容量が切り替わり、VCOの発振容量が調整される。
しかしながら、発振容量を増加させた場合に、VCOの負荷容量が増えるので、同じ動作電流のままだと発振振幅は減少してしまう。そして発振振幅が減少しすぎると、発振が不安定になりノイズ性能が低下したり、発振が停止して誤動作が起きてしまう。そこで本実施形態では、発振容量を増加させたときは、その発振容量の増加分に応じて、VCOの動作電流ITLや電源電圧VDDを上昇させる調整を行う。即ち図9において、レジスター設定による周波数レンジ設定情報により、可変容量回路32の容量が増加し、発振容量が増加した場合には、その増加分に応じて、動作電流ITLや電源電圧VDDを上昇させて、発振振幅を大きくする調整を行う。
図10に可変容量回路32の構成例を示す。可変容量回路32は、キャパシターCC0~CC3、CD0~CD3、トランジスターTC0~TC3、TD0~TD3を含む。キャパシターCC0~CC3の一端は、発振信号OSCPの出力ノードであるノードN2に接続される。キャパシターCC0~CC3の他端は、スイッチ素子として機能するトランジスターTC0~TC3のドレインに接続される。N型のトランジスターTC0~TC3のゲートには、周波数レンジ設定情報の4ビットのデジタル信号であるCS0~CS3が入力され、ソースはVSSのノードに接続される。同様に、キャパシターCD0~CD3の一端は、発振信号OSCNの出力ノードであるノードN3に接続され、他端は、スイッチ素子として機能するトランジスターTD0~TD3のドレインに接続される。N型のトランジスターTD0~TD3のゲートにはCS0~CS3が入力され、ソースはVSSのノードに接続される。
図9、図10では、回路装置20の不図示の制御回路から、処理回路50及び可変容量回路32に対して周波数レンジ設定情報が入力される。そして周波数レンジ設定情報である4ビットのCS0~CS3により可変容量回路32の容量が調整されて、VCOの発振周波数の周波数レンジが変化する。そして処理回路50は、図11のテーブルに示すように、周波数レンジ設定情報に基づいて発振振幅をデフォルト設定の振幅から増加させる方向で変化させる補正処理を行い、当該補正処理による振幅調整情報AJが振幅調整回路40に入力される。振幅調整回路40は、動作電流ITLをデフォルトの電流値から増加させる方向で変化させて、VCOの振幅を調整する。
具合的には図11に示すように、周波数レンジ設定情報として4ビットのデジタル信号が入力される。CS3、CS2、CS1、CS0はこれらの4ビットのデジタル信号の各ビットに対応する信号である。そして図10の可変容量回路32では、キャパシターCC0~CC3の容量はバイナリーで重み付けされた容量になっており、キャパシターCC0の容量をC0とした場合に、キャパシターCC0、CC1、CC2、CC3の容量であるC1、C2、C3は、各々、C1=2×C0、C2=4×C0、C3=8×C0に設定される。キャパシターCD0、CD1、CD2、CD3の容量も、キャパシターCC0、CC1、CC2、CC3と同じ容量であるC0、2×C0、4×C0、8×C0に設定される。そして、発振信号OSCPのノードN2での可変容量回路32の容量をCBKPとし、発振信号OSCNのノードN3での可変容量回路32の容量をCBKNとする。この場合に、可変容量回路32の容量は、CBKP=CBKN=C0×(8×CS3+4×CS2+2×CS1+CS0)と表すことができ、可変容量回路32により16段階で容量が可変に制御される。
そして周波数設定情報が「0000」である場合には、可変容量回路32の容量CBKP、CBKNは0になり、VCOの周波数レンジは3000~2900MHzに設定される。そして振幅調整情報AJはデフォルト設定の値になり、VCOの動作電流ITLはIDF+16×IT0に設定される。周波数設定情報が「0001」である場合には、可変容量回路32の容量CBKP、CBKNはC0になり、VCOの周波数レンジは2950~2850MHzに設定される。この場合に振幅調整情報AJはデフォルト設定になり、VCOの動作電流ITLはIDF+16×IT0に設定される。
周波数設定情報が「0010」である場合には、容量CBKP、CBKNは2×C0になり、周波数レンジは2900~2800MHzに設定される。そして振幅調整情報AJはデフォルト設定+1になり、動作電流ITLはIDF+17×IT0に設定される。周波数設定情報が「0011」である場合には、容量CBKP、CBKNは3×C0になり、周波数レンジは2850~2750MHzに設定される。この場合に振幅調整情報はデフォルト設定+1になり、VCOの動作電流ITLはIDF+17×IT0に設定される。このように周波数レンジ設定情報が0000から増加するにつれて、可変容量回路32の容量が増加し、動作電流ITLも増加する。これによりVCOの発振振幅も増加するようになる。そして周波数設定情報が「1111」になると、容量CBKP、CBKNは15×C0になり、周波数レンジは2250~2150MHzに設定される。そして振幅調整情報AJはデフォルト設定+7になり、動作電流ITLはIDF+23×IT0に設定され、発振振幅も大きな振幅に設定される。
このように本実施形態では、周波数レンジごとに振幅調整回路40により設定される動作電流ITLの電流値を適切に切り替えることで、どの周波数レンジにおいても、ほぼ同じ発振振幅でVCOを発振動作させることが可能になる。従って、どの周波数レンジにおいても同様の発振信号OSCのジッター性能を得ることが可能になる。また発振起動時の不具合も解消することが可能になる。なお本実施形態では動作モード設定情報、特性変動情報、周波数レンジ設定情報に基づいてVCOの振幅調整を行う場合について説明したが本実施形態はこれに限定されない。例えば温度情報などの環境情報や、VCOの発振周波数情報などの特性情報を監視し、監視結果に基づいてVCOの振幅調整を行うようにしてもよい。
また本実施形態では、処理回路50には、動作設定情報が第1入力情報として入力され、特性情報が第2入力情報として入力される。そして処理回路50は、第1入力情報に基づく第1変化値と、第2入力情報に基づく第2変化値の加算処理を行い、加算処理の結果に基づいて振幅調整情報AJを出力する。例えば、第1変化値は、デフォルト設定の値に対する第1入力情報に基づく変化値であり、第2変化値は、デフォルト設定の値に対する第2入力情報に基づく変化値である。第1変化値、第2変化値は正の値と負の値の両方の値を取り得る。そして処理回路50は、第1変化値と第2変化値を用いた加算処理を行って、振幅調整情報AJを生成して、振幅調整回路40に出力する。これにより、VCOの動作電流又は電源電圧が、デフォルト設定に対応する動作電流又は電源電圧から、第1変化値と第2変化値の加算結果に対応する値だけ変化するようになる。このようにすれば、処理回路50が、簡素な処理である加算処理を行うだけで、動作設定情報と特性情報の両方を反映させた振幅調整情報AJを振幅調整回路40に出力して、電圧制御発振回路30の発振振幅を適切に調整できるようになる。
例えば、動作設定情報が図5で説明した動作モード設定情報であり、特性情報が図8で説明した発振用トランジスターの特性変動情報である場合を例にとり説明する。そして図5の低ノイズモードAの動作モード設定情報が第1入力情報として入力され、図8のslow+の特性変動情報が第2入力情報として入力されたとする。このとき、図5に示すように、低ノイズモードAでは、第1入力情報に基づく第1変化値は「+4」である。即ち第1変化値は、デフォルト設定の値を「+4」だけ変化させる値になっている。また図8に示すように、slow+では、第2入力情報に基づく第2変化値は「+1」である。即ち第2変化値は、デフォルト設定の値を「+1」だけ変化させる値になっている。そして処理回路50は、第1変化値である「+4」と、第2変化値である「+1」を用いた加算処理を行って、振幅調整情報AJを生成する。これによりVCOの動作電流又は動作電圧が、デフォルト設定に対応する動作電流又は電源電圧から、第1変化値と第2変化値の加算結果に対応する値だけ変化するようになる。例えば図5、図8に示すようにデフォルト設定の値に対応する動作電流の電流値はIDF+16×IT0であり、「+1」に対応する電流値はIT0であり、「+4」に対応する電流値は4×IT0である。従って、デフォルト設定に対応する動作電流から、第1変化値と第2変化値の加算結果に対応する値だけ変化することで、VCOの動作電流は、IDF+21×IT0に設定されるようになる。
また図5の低消費電力モードの動作モード設定情報が第1入力情報として入力され、図8のfast+++の特性変動情報が第2入力情報として入力されたとする。このとき、低消費電力モードでは、第1入力情報に基づく第1変化値は「-2」である。即ち第1変化値は、デフォルト設定の値を「-2」だけ変化させる値になっている。またfast+++では、第2入力情報に基づく第2変化値は「-3」である。即ち第2変化値は、デフォルト設定の値を「-3」だけ変化させる値になっている。そして処理回路50は、第1変化値である「-2」と、第2変化値である「-3」を用いた加算処理を行って、振幅調整情報AJを生成する。例えばデフォルト設定の値に対応する電流値はIDF+16×IT0であり、「-2」に対応する電流値は-2×IT0であり、「-3」に対応する電流値は-3×IT0である。従って、デフォルト設定に対応する動作電流から、第1変化値と第2変化値の加算結果に対応する値だけ変化することで、VCOの動作電流は、IDF+11×IT0に設定されるようになる。
次に動作設定情報が図11で説明した周波数レンジ設定情報であり、特性情報が図8で説明した発振用トランジスターの特性変動情報である場合を例にとり説明する。そして図11の「1100」の周波数レンジ設定情報が第1入力情報として入力され、図8のfast++の特性変動情報が第2入力情報として入力されたとする。このとき、「1100」の周波数レンジ設定情報で設定される2400~2300MHzの周波数レンジでは、第1入力情報に基づく第1変化値は「+6」である。またfast++では、第2入力情報に基づく第2変化値は「-2」である。そして処理回路50は、第1変化値である「+6」と、第2変化値である「-2」を用いた加算処理を行って、振幅調整情報AJを生成する。例えばデフォルト設定の値に対応する電流値はIDF+16×IT0であり、「+6」に対応する電流値は6×IT0であり、「-2」に対応する電流値は-2×IT0である。従って、デフォルト設定に対応する動作電流から、第1変化値と第2変化値の加算結果に対応する値だけ変化することで、VCOの動作電流は、IDF+20×IT0に設定されるようになる。
図12に本実施形態の回路装置20の詳細な第3構成例を示す。図2、図9では振幅調整回路40がVSS側に設けられていたが、図12では振幅調整回路40がVDD側に設けられている。即ち図2、図9では振幅調整回路40が、電圧制御発振回路30のVSS側のノードN5に接続されていたが、図12では振幅調整回路40が、電圧制御発振回路30のVDD側のノードN1に接続されている。振幅調整回路40がVDD側に設けられている以外は、図1~図11で説明した振幅調整手法をそのまま図12の第3構成例に適用できる。
図13は、図12の第3構成例における振幅調整回路40の構成例である。図3では振幅調整回路40がN型のトランジスターTB0~TB9、TDFにより構成されていたが、図13では振幅調整回路40がP型のトランジスターTE0~TE9、TDF2により構成されている。
トランジスターTE0~TE4の各々と、トランジスターTE5~TE9の対応するトランジスターは、VDDのノードと、電圧制御発振回路30との接続ノードであるノードN1との間に直列に設けられる。そしてトランジスターTE5~TE9のゲートにはバイアス電圧VBSが入力される。即ちP型のトランジスターTE5~TE9に定電流を流すのに適したバイアス電圧VBSが入力される。これによりバイアス電圧VBSに応じた定電流をトランジスターTE5~TE9に流すことができる。またトランジスターTE0~TE4のゲートには、振幅調整情報であるAJ0、AJ1、AJ2、AJ3、AJ4をインバーターIV0、IV1、IV2、IV3、IV4により反転した信号が入力される。
トランジスターTDF2は、VDDのノードとノードN1との間に設けられ、そのゲートにバイアス電圧VBSが入力される。トランジスターTDF2は、電圧制御発振回路30の発振を維持するのに必要な最低限の電流IDFを流すためのトランジスターである。
トランジスターTE0、TE1、TE2、TE3、TE4は、AJ0、AJ1、AJ2、AJ3、AJ4が「1」になるとオンになり、電流IT0、IT1、IT2、IT3、IT4が流れる。そしてトランジスターTE0、TE1、TE2、TE3、TE4は、トランジスターサイズが1:2:4:8:16の比になっている。従って、トランジスターTE0に流れる電流をIT0とした場合に、IT1=2×IT0、IT2=4×IT0、IT3=8×IT0、IT4=16×IT0の関係が成り立つ。従って、振幅調整回路40により、ITL=IDF+(AJ0+2×AJ1+4×AJ2+8×AJ3+16×AJ4)×IT0の電流値の動作電流ITLを流すことができる。即ち、振幅調整情報AJ=(AJ4,AJ3,AJ2,AJ1,AJ0)が00000~11111の範囲で変化したときに、動作電流ITLの電流値は前述した図4に示すようになる。
図14に振幅調整回路40の他の構成例を示す。図14では、図13のP型のトランジスターTE5~TE9、TDF2の代わりに、N型のトランジスターTF5~TF9、TDF3が設けられている。これらのN型のトランジスターTF5~TF9、TDF3はデプレッション型のトランジスターである。即ち、通常のN型のトランジスターのしきい値は、例えばVth=0.4Vというように正の電圧であるが、デプレッションのN型のトランジスターのしきい値は、例えばVth=-0.2Vというように負の電圧になっている。従って、デプレッションのN型のトランジスターは、そのゲートを0Vに固定しても、定電流動作が可能になるため、バイアス電圧VBSの生成回路が不要になり、回路削減を図れるという利点がある。またデプレッションのN型のトランジスターは、例えばそのソースに発生するノイズを低く抑えることができるため、電圧制御発振回路30の発振信号OSCの低ノイズ化を図れるという利点もある。
以上のように本実施形態の回路装置20によれば、処理回路50が動作設定情報や特性情報に基づく振幅調整情報を出力し、振幅調整回路40が振幅調整情報に基づいて電圧制御発振回路30の発振振幅を調整する。従って、電圧制御発振回路30の動作モードや周波数レンジなどの動作設定が変化したり、電圧制御発振回路30の特性がプロセス変動などにより変動した場合にも、発振振幅を例えば一定にするような振幅調整が可能になる。
例えば本実施形態の比較例の手法として、VCOの発振振幅を低下させる可能性がある特性ばらつき、電圧又は温度などの環境のパラメーターや周波数のパラメーターが、ワーストケースの条件になっても、発振を維持できるように、或いはジッター特性を維持できるように、VCOのゲインとなる動作電流又は動作電圧を予め大き目の値に設定しておく手法が考えられる。しかしながら、この手法では、環境や周波数のパラメーターが、ワーストケースの条件ではなくティピカルケースの条件になると、発振振幅が必要以上に大きくなり、消費電力が増加したり、デバイスの耐圧電圧を超えてしまうなどの問題が発生する。
また、前述の特許文献1のように、フィードバック制御によりVCOの動作電流を動的に制御することで、VCOの発振振幅が一定になるように制御する手法も考えられる。しかしながら、この手法では、電圧や温度などが変動すると、フィードバック制御が働くことで、その変動が発振信号にも影響を与えてしまい、発振信号のノイズが増加してしまう問題が発生する。
この点、本実施形態の回路装置20では、VCOの動作設定情報や特性情報に基づく振幅調整情報により、VCOの発振振幅が調整される。従って、例えばVCOの動作設定や特性が変化しても発振振幅を一定にするような振幅調整が可能になる。そして、この振幅調整は、特許文献1のようなフィードバック制御ではなく、オープンループ制御により行われるため、振幅調整が原因となって発振信号のノイズが増加してしまうなどの問題を防止できる。
また本実施形態の回路装置20によれば、VCOの低消費電力化を実現できる。例えば前述の比較例の手法のように、振幅が最小となるワーストケースの条件に合わせた設計を行うと、ティピカルケースの条件になると、VCOの動作電流が不必要に大きくなり、VCOにおいて電力が無駄に消費されてしまう。この点、本実施形態によれば、このようなワーストケースの条件に合わせた設計をしなくても済むため、例えばティピカルケースの条件においても、VCOの動作電流が不必要に大きくなることはなく、VCOの低消費電力化を実現できる。
また前述の図7で説明したように、LC型などのVCOは、電流を増やすことで、必ずしも低ノイズになるわけではなく、発振トランジスターのサイズなどに応じて、発振信号を低ノイズにする発振振幅の最適な範囲が存在する。この点、本実施形態では、動作設定情報や特性情報に応じたVCOの発振振幅が調整されて、例えば発振振幅を一定にできるため、発振信号を低ノイズにする最適な範囲に発振振幅を設定することができるため、低ノイズなVCOの実現が可能になる。
また上述の比較例の手法のように、ティピカルケースの条件でVCOのゲインが過剰なゲインに設定されて、過大な動作電流が流れて、発振振幅が過大になると、長期的な信頼性性能を高めるリスクが生じ、結果的に製品寿命を短くせざるを得なくなる。この点、本実施形態によれば、ティピカルケースの条件においても、VCOに過大な動作電流が流れて、発振振幅が過大になることはなく、発振振幅を一定にできる。従って、信頼性リスクを低減でき、製品寿命を延ばすことも可能になる。
3.電源電圧による振幅調整
以上では、電圧制御発振回路30の動作電流ITLを調整することで、発振振幅の調整を行う場合について主に説明したが、本実施形態では、電圧制御発振回路30の電源電圧VDDを調整することで、発振振幅の調整を行ってもよい。この場合に、動作設定情報や特性情報などの入力情報に基づく振幅調整情報の手法や、振幅調整情報に基づく振幅調整の手法等は、図1~図14で説明した手法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図15に本実施形態の回路装置20の詳細な第4構成例を示す。図15では振幅調整回路40は、入力電源電圧VDDHに基づいて電源電圧VDDを生成する電源電圧生成回路42を含む。即ち振幅調整回路40は、VDD側のノードN1に接続され、入力電源電圧VDDHに基づいて電源電圧VDDを生成して、電圧制御発振回路30に供給する。入力電源電圧VDDHは、例えば電源回路又は電源入力端子などから入力される電源電圧である。そして処理回路50は、電源電圧生成回路42が生成する電源電圧VDDを調整する調整情報を、振幅調整情報AJとして電源電圧生成回路42に出力する。即ち処理回路50は、動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つである入力情報に基づいて、電源電圧VDDを調整する調整情報を生成し、当該調整情報を振幅調整情報AJとして電源電圧生成回路42に出力する。そして電源電圧生成回路42は、振幅調整情報AJに基づいて電圧制御発振回路30の電源電圧VDDを可変に調整することで、発振信号OSCの振幅である発振振幅を調整する。例えば電源電圧生成回路42が、振幅調整情報AJに基づいて電源電圧VDDを上昇させると、発振振幅が大きくなり、振幅調整情報AJに基づいて電源電圧VDDを低下させると、発振振幅が小さくなる。
このような構成によれば、処理回路50は、動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つに基づいて、電源電圧VDDを調整する調整情報を、振幅調整情報AJとして電源電圧生成回路42に出力するようになる。そして電源電圧生成回路42は、入力電源電圧VDDHに基づき生成される電源電圧VDDを、処理回路50からの振幅調整情報AJに基づき調整して、電圧制御発振回路30に供給する。このようにすれば、電圧制御発振回路30の動作設定情報や特性情報に応じた振幅調整情報AJにより電源電圧VDDを調整し、当該電源電圧VDDを電圧制御発振回路30に供給することで、発振振幅を適切に調整できるようになる。
図16は電源電圧生成回路42の構成例である。図16ではレギュレーターにより電源電圧生成回路42が実現されている。具体的には電源電圧生成回路42は、演算増幅器OPと、駆動用のトランジスターTRと、抵抗R1、R2を含む。演算増幅器OPの第1端子である反転入力端子には基準電圧VBGRが入力される。基準電圧VBGRは、例えばバンドギャップリファレンス回路などの基準電圧生成回路により生成される電圧である。駆動用のトランジスターTRは、例えばP型のトランジスターであり、入力電源電圧VDDHのノードと、VDDの出力ノードであるノードN1との間に設けられ、そのゲートに演算増幅器OPの出力信号が入力される。抵抗R1、R2はノードN1とVSSのノードとの間に直列に設けられ、抵抗R1、R2の接続ノードNRDでの分割電圧VRDが、演算増幅器OPの第2端子である非反転入力端子に入力される。
図16の電源電圧生成回路42は、VDD=VBGR×{(R1+R2)/R2}の式で表される電源電圧VDDを生成する。従って、抵抗R1とR2の抵抗比を変化させることで、電源電圧VDDを変化させることができる。具体的には、図16では抵抗R2が可変抵抗になっており、抵抗R2の抵抗値が振幅調整情報AJの3ビットのデジタル信号であるAJ2、AJ1、AJ0により制御されることで、抵抗R1とR2の抵抗比が変化する。なお抵抗R1を可変抵抗にしてもよい。
図17は電源電圧生成回路42による電源電圧VDDの調整の説明図である。振幅調整情報であるAJ2、AJ1、AJ0が「000」~「111」の範囲で変化することで、抵抗R2が34kΩ~20kΩの範囲で変化し、これにより電源電圧VDDを1.553V~1.800Vの範囲で変化させることが可能になる。
図18に本実施形態の回路装置20の詳細な第5構成例を示す。図18では電源電圧生成回路42がレギュレーター44とソースフォロワー回路46を含む。処理回路50は、振幅調整情報であるAJVをレギュレーター44に出力し、振幅調整情報であるAJIをソースフォロワー回路46に出力する。そしてレギュレーター44は、入力電源電圧VDDHを振幅調整情報AJVに基づき調整したレギュレート電源電圧VREGを出力する。即ちレギュレーター44は、入力電源電圧VDDHを降圧するレギュレート動作を行って、振幅調整情報AJVに基づき電圧が調整されたレギュレート電源電圧VREGを、ソースフォロワー回路46に供給する。ソースフォロワー回路46は、レギュレート電源電圧VREGが入力され、レギュレート電源電圧VREGに応じた電源電圧VDDを電圧制御発振回路30に出力する。即ちソースフォロワー回路46は、レギュレート電源電圧VREGに基づくソースフォロワー動作を行って、レギュレート電源電圧VREGのソースフォロワー電圧となる電源電圧VDDを、電圧制御発振回路30に供給する。この場合にソースフォロワー回路46では、電流調整用の振幅調整情報AJIに基づいてソースフォロワー回路46のトランジスターに流れる電流が調整される。
このような構成によれば、レギュレーター44は、入力電源電圧VDDHを振幅調整情報AJVに基づき調整したレギュレート電源電圧VREGを出力し、ソースフォロワー回路46は、レギュレート電源電圧VREGに応じた電源電圧VDDを、電圧制御発振回路30に出力するようになる。従って、振幅調整情報AJVに基づきレギュレート電源電圧VREGを調整し、調整されたレギュレート電源電圧VREGのソースフォロワー電圧を、電源電圧VDDとして電圧制御発振回路30に供給できるようになる。
図19に図18のレギュレーター44、ソースフォロワー回路46の構成例を示す。レギュレーター44は、演算増幅器OPと駆動用のトランジスターTRと抵抗R1、R2を含む。レギュレーター44の構成及び動作は、図16の回路と同様であるため詳細な説明は省略する。
ソースフォロワー回路46は、トランジスターTJ0~TJ4、TK0~TK4、TKDFを含む。トランジスターTJ0~TJ4はP型のトランジスターであり、トランジスターTK0~TK4、TKDFは、N型のトランジスターである。具体的には、デプレッション型のトランジスターである。即ち、例えばVth=-0.2Vというようにしきい値が負の電圧になるトランジスターである。
トランジスターTJ0~TJ4の各々と、トランジスターTK0~TK4の対応するトランジスターは、VDDHのノードと、電圧制御発振回路30との接続ノードであるノードN1との間に直列に設けられる。そしてトランジスターTK0~TK4のゲートには、レギュレーター44からのレギュレート電源電圧VREGが入力される。これによりトランジスターTK0~TK4のソースには、レギュレート電源電圧VREGのソースフォロワー電圧となる電源電圧VDDが出力されるようになる。またトランジスターTJ0~TJ4のゲートには、電流調整用の振幅調整情報であるAJI0、AJI1、AJI2、AJI3、AJI4をインバーターIN0、IN1、IN2、IN3、IN4により反転した信号が入力される。このAJI0、AJI1、AJI2、AJI3、AJI4は、図18の電流調整用の5ビットの振幅調整情報AJIの各ビットに対応する信号である。
トランジスターTJ0、TJ1、TJ2、TJ3、TJ4は、AJI0、AJI1、AJI2、AJI3、AJI4が「1」になるとオンになり、電流IJ0、IJ1、IJ2、IJ3、IJ4が流れる。そして、これらの電流IJ0、IJ1、IJ2、IJ3、IJ4は、ソースフォロワー用のデプレッション型のトランジスターであるトランジスターTK0、TK1、TK2、TK3、TK4のドレインに供給される。
即ち図19では、デプレッション型のトランジスターTK0~TK4、TKDFのゲートは、レギュレーター44の出力ノードに共通接続され、振幅調整情報AJVに応じたレギュレート電源電圧VREGが入力される。そしてトランジスターTK0~TK4、TKDFのソースはノードN1に共通接続されて、当該ソースからは、レギュレート電源電圧VREGのソースフォロワー電圧が、電源電圧VDDとして出力される。またトランジスターTK0~TK4のドレインには、AJI0~AJI4によりオン又はオフにされるトランジスターTJ0~TJ4が接続される。そしてAJI0~AJI4により、トランジスターTJ0~TJ4のうちの1又は複数のトランジスターがオンになると、トランジスターTK0~TK4のうち、オンになった1又は複数のトランジスターに対応するトランジスターに電流が流れるようになる。
例えばデプレッションのトランジスターTK0~TK4、TDFは、しきい値であるVthが負の電圧になっているため、図19のようにゲートにレギュレート電源電圧VREGが入力される場合に、常にオンになる。従って、これらのトランジスターTK0~TK4、TDFがソースフォロワー接続されていると、ゲート電圧の変化が、そのままソース電圧に対して伝搬される。例えば図20ではトランジスターTKがソースフォロワー接続されている。この場合に、トランジスターTKのゲート電圧であるVINが図21に示すように変化すると、ソース電圧であるVOUTがVINに追従するように変化する。例えば、VOUT=VIN-VGSの関係式が成り立つように、ソース電圧VOUTが変化する。従って、図19に示すようなソースフォロワー回路46を設けることで、振幅調整情報AJVにより調整されたレギュレート電源電圧VREGに追従するように、電源電圧VDDを変化させて、電圧制御発振回路30であるVCOに供給できるようになる。即ちレギュレート電源電圧VREGが増加すれば、電源電圧VDDも増加し、レギュレート電源電圧VREGが減少すれば、電源電圧VDDも減少する。
更に図19では、負のしきい値Vthを有するデプレッション型のトランジスターTK0~TK4、TKDFを使用するため、VDDH側から供給する電流が、ノードN1に接続されるVCOで消費される電流よりも多ければ、ノードN1の電圧である電源電圧VDDは、レギュレート電源電圧VREGとほぼ同じ電圧になる。つまり、VCOの実効的な電源電圧VDDは、レギュレート電源電圧VREGを調整するための3ビットのデジタル信号であるAJV0~AJV2により制御できる。またVDDH側から流れる電流IJ0~IJ4を、VCOの負荷電流に応じて、5ビットのデジタル信号であるAJI0~AJI4を用いて適切に設定することで、ノードN1の電源電圧VDDを、レギュレート電源電圧VREGにほぼ等しい電圧に設定できる。
このように本実施形態では、ソースフォロワー回路46は、ゲートにレギュレート電源電圧VREGが入力され、ソースに電源電圧VDDを出力するデプレッション型のトランジスターTK0~TK4、TKDFを含む。このようにすれば、ソースフォロワー回路46は、デプレッション型のトランジスターTK0~TK4、TKDFを用いて、そのゲートに入力されたレギュレート電源電圧VREGに追従するように、そのソースに電源電圧VDDを出力できるようになる。またデプレッション型のN型のトランジスターTK0~TK4、TKDFは、例えばそのソースに発生するノイズを低く抑えることができるため、電圧制御発振回路30の発振信号OSCの低ノイズ化を図れるという利点もある。
また本実施形態では、このように2系統のデジタル信号であるAJV0~AJV2、AJI0~AJI4を用いることで、製造ばらつきがあった場合や、周波数レンジが変更された場合にも、広い範囲でVCOの発振振幅を維持しながら、無駄な消費電流の増加を抑制できるという利点がある。
例えばVCOの発振エネルギーを発生するP型のトランジスターTA1、TA2とN型のトランジスターTA3、TA4とにより構成されるクロスカップルインバーターは、半導体の製造ばらつきによりしきい値が変化する。従って、無駄な電流を流さないようにするためには、しきい値のばらつきに応じて、電源電圧VDDを変化させることが望ましい。例えば製造ばらつきがfast側に振れた場合に、typicalの場合よりも発振振幅が増えるので、電源電圧VDDをデフォルトの電圧よりも少し下げることで、発振振幅をデフォルトの範囲内に維持することが望ましい。また製造ばらつきがslow側に振れた場合に、typicalの場合よりも発振振幅が減るので、電源電圧VDDをデフォルトの電圧よりも少し上げて、発振振幅をデフォルトの範囲内に維持することが望ましい。このような電源電圧VDDの電圧可変制御を、レギュレート電源電圧VREGの調整用のAJV0~AJV2を用いて行う。このようにAJV0~AJV2を用いた調整を行うことで、製造ばらつきがあった場合にも、広い範囲でVCOの発振振幅を維持しながら、無駄に消費電流の増加を抑制できるようになる。
また、VCOの発振周波数を大きく変化させる場合には、図11で説明したように可変容量回路32の容量を変化させて周波数レンジを変更する。そして発振周波数を下げる場合には、可変容量回路32の容量を増加させる。従って、VCOの発振振幅を維持したまま発振周波数を下げようとすると、VCOの動作電流は増えるので、VCOへの供給電流を増やす必要がある。一方、発振周波数を上げる場合には、可変容量回路32の容量を減少させる。従って、VCOの発振振幅を維持したまま発振周波数を上げようとすると、VCOの動作電流は減少するので、VCOへの供給電流を減らす必要がある。この動作電流の可変制御を、電流IJ0~IJ4の調整用のAJI0~AJI4を用いて行う。このようにAJI0~AJI4を用いた調整を行うことで、周波数レンジが変更された場合にも、広い範囲でVCOの発振振幅を維持しながら、無駄に消費電流の増加を抑制できるようになる。
4.発振器
次に本実施形態の発振器4について説明する。図22に発振器4の構成例を示す。本実施形態の発振器4は、振動子10と回路装置20を含む。振動子10は発振信号を生成されるために用いられるものである。例えば後述するように、振動子10は、発振信号を生成するための基準クロック信号の生成のために用いられる。
また図22に示すように発振器4は、振動子10及び回路装置20を収容するパッケージ15を含む。パッケージ15は、例えばセラミック等により形成され、その内側に収容空間を有しており、この収容空間に振動子10及び回路装置20が収容されている。収容空間は気密封止されており、望ましくは真空に近い状態である減圧状態になっている。パッケージ15により、振動子10及び回路装置20を衝撃、埃、熱、湿気等から好適に保護することができる。
パッケージ15はベース16とリッド17を有する。具体的にはパッケージ15は、振動子10及び回路装置20を支持するベース16と、ベース16との間に収容空間を形成するようにベース16の上面に接合されたリッド17とにより構成されている。そして振動子10は、ベース16の内側に設けられた段差部に端子電極を介して支持されている。また回路装置20は、ベース16の内側底面に配置されている。具体的には回路装置20は、能動面がベース16の内側底面に向くように配置されている。能動面は回路装置20の回路素子が形成される面である。また回路装置20のパッドにバンプBMPが形成されている。そして回路装置20は、導電性のバンプBMPを介してベース16の内側底面に支持される。導電性のバンプBMPは例えば金属バンプであり、このバンプBMPやパッケージ15の内部配線や端子電極などを介して、振動子10と回路装置20が電気的な接続される。また回路装置20は、バンプBMPやパッケージ15の内部配線を介して、発振器4の外部端子18、19に電気的に接続される。外部端子18、19は、パッケージ15の外側底面に形成されている。外部端子18、19は、外部配線を介して外部デバイスに接続される。外部配線は、例えば外部デバイスが実装される回路基板に形成される配線などである。これにより外部デバイスに対してクロック信号などを出力できるようになる。
なお図20では、回路装置20の能動面が下方に向くように回路装置20がフリップ実装されているが、本実施形態はこのような実装には限定されない。例えば回路装置20の能動面が上方に向くように回路装置20を実装してもよい。即ち能動面が振動子10に対向するように回路装置20を実装する。
図23は、PLL回路22を有する回路装置20の構成例である。例えば図23の回路装置20は、振動子10を発振させる発振回路21とPLL回路22を含む。PLL回路22は、電圧制御発振回路30を有し、振動子10を用いて生成された基準クロック信号RCLKと、発振信号OSCに基づくフィードバッククロック信号FBCLKとの位相比較を行って、クロック信号CLKを出力する。このようにすれば、電圧制御発振回路30の動作設定情報や特性情報に応じて振幅が調整される発振信号OSCを用いて、基準クロック信号RCLKに位相同期したクロック信号CLKを生成できるようになる。従って、適切な振幅の発振信号OSCに基づいて、信号品質の高いクロック信号CLKをPLL回路22により生成することが可能になる。
振動子10は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。振動子10は、例えば水晶振動片などの振動片により実現できる。例えば振動子10は、カット角がATカットやSCカットなどの厚みすべり振動する水晶振動片などにより実現できる。なお本実施形態の振動子10は、例えば厚みすべり振動型以外の振動片や、水晶以外の材料で形成された圧電振動片などの種々の振動片により実現できる。例えば振動子10として、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子や、シリコン基板を用いて形成されたシリコン製振動子としてのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子等を採用してもよい。
発振回路21は、振動子10に電気的に接続されて、振動子10を発振させる。発振回路21は、駆動回路を実現するバイポーラートランジスターなどのトランジスターと、キャパシターや抵抗などの能動素子により実現できる。発振回路21としては、例えばピアース型、コルピッツ型、インバーター型又はハートレー型などの種々のタイプの発振回路を用いることができる。また発振回路21には、可変容量回路が設けられており、この可変容量回路の容量値の調整により、発振周波数を調整できるようになっている。可変容量回路は、バラクターなどの電圧可変容量素子により実現できる。
PLL回路22は、発振回路21から基準クロック信号RCLKが入力され、PLL(Phase Locked Loop)の動作を行う。例えばPLL回路22は、基準クロック信号RCLKの周波数を逓倍した周波数のクロック信号CLKを生成する。PLL回路22は、位相比較回路23、制御電圧生成回路24、電圧制御発振回路30、分周回路26、出力回路28を含む。
位相比較回路23は、基準クロック信号RCLKとフィードバッククロック信号FBCLKとの間の位相比較を行う。例えば位相比較回路23は、基準クロック信号RCLKとフィードバッククロック信号FBCLKの位相を比較し、位相差に応じた信号CQを位相比較結果の信号として出力する。位相差に応じた信号CQは、例えば位相差に比例したパルス幅のパルス信号である。
制御電圧生成回路24は、位相比較回路23での位相比較の結果に基づいて、制御電圧VCを生成する。例えば制御電圧生成回路24は、位相比較回路23からの位相比較結果の信号CQに基づいて、チャージポンプ動作やフィルター処理を行って、電圧制御発振回路30の発振を制御する制御電圧VCを生成する。
電圧制御発振回路30は、制御電圧VCに対応する周波数の発振信号OSCを生成する。即ち電圧制御発振回路30は、制御電圧VCに応じて周波数が変化する発振クロック信号である発振信号OSCを発振動作により生成する。
分周回路26は、発振信号OSCを分周してフィードバッククロック信号FBCLKを出力する。例えば分周回路26は、発振信号OSCの周波数を、設定された分周比で分周した周波数の信号を、フィードバッククロック信号FBCLKとして出力する。なおPLL回路22として、フラクショナル-N型のPLL回路を用いる場合には、デルタシグマ変調回路を用いて小数の分周比を設定すればよい。
出力回路28は、発振信号OSCが入力され、バッファリング動作を行って、クロック信号CLKを出力する。出力回路28は、不図示の分周回路を含み、この分周回路により発振信号OSCである発振クロック信号の分周を行うことで、クロック信号CLKの周波数を可変に設定できるようになっている。これにより、クロック信号CLKの周波数をユーザーが所望する周波数に設定できる。
5.電子機器、移動体
図24に、本実施形態の回路装置20を含む電子機器500の構成例を示す。電子機器500は、本実施形態の回路装置20と、回路装置20での発振信号に基づくクロック信号によって動作する処理装置520を含む。具体的には電子機器500は、本実施形態の回路装置20を有する発振器4を含み、処理装置520は、発振器4からのクロック信号に基づき動作して各種の処理を行う。また電子機器500は、アンテナANT、通信インターフェース510、操作インターフェース530、表示部540、メモリー550を含むことができる。なお電子機器500は図24の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
電子機器500は、例えば基地局又はルーター等のネットワーク関連機器、距離、時間、流速又は流量等の物理量を計測する高精度の計測機器、生体情報を測定する生体情報測定機器、或いは車載機器などである。生体情報測定機器は例えば超音波測定装置、脈波計又は血圧測定装置等である。車載機器は自動運転用の機器等である。また電子機器500は、頭部装着型表示装置や時計関連機器などのウェアラブル機器、ロボット、印刷装置、投影装置、スマートフォン等の携帯情報端末、コンテンツを配信するコンテンツ提供機器、或いはデジタルカメラ又はビデオカメラ等の映像機器などであってもよい。
また電子機器500としては、5Gなどの次世代移動通信システムに用いられる機器がある。例えば次世代移動通信システムの基地局、リモートレディオヘッド(RRH)又は携帯通信端末などの種々の機器に本実施形態の回路装置20を用いることができる。次世代移動通信システムでは、時刻同期等のために高精度のクロック周波数が要望されており、高精度のクロック信号を生成できる本実施形態の回路装置20の適用例として好適である。
通信インターフェース510は、アンテナANTを介して外部からデータを受信したり、外部にデータを送信する処理を行う。プロセッサーである処理装置520は、電子機器500の制御処理や、通信インターフェース510を介して送受信されるデータの種々のデジタル処理などを行う。処理装置520の機能は、例えばマイクロコンピューターなどのプロセッサーにより実現できる。操作インターフェース530は、ユーザーが入力操作を行うためのものであり、操作ボタンやタッチパネルディスプレイなどにより実現できる。表示部540は、各種の情報を表示するものであり、液晶や有機ELなどのディスプレイにより実現できる。メモリー550は、データを記憶するものであり、その機能はRAMやROMなどの半導体メモリーにより実現できる。
図25に、本実施形態の回路装置20を含む移動体の例を示す。移動体は、本実施形態の回路装置20と、回路装置20での発振信号に基づくクロック信号によって動作する処理装置520を含む。具体的には移動体は、本実施形態の回路装置20を有する発振器4を含み、処理装置220は、発振器4からのクロック信号に基づき動作して各種の処理を行う。本実施形態の回路装置20は、例えば、車、飛行機、バイク、自転車、或いは船舶等の種々の移動体に組み込むことができる。移動体は、例えばエンジンやモーター等の駆動機構、ハンドルや舵等の操舵機構、各種の電子機器を備えて、地上や空や海上を移動する機器・装置である。図25は移動体の具体例としての自動車206を概略的に示している。自動車206には、本実施形態の回路装置20が組み込まれる。具体的には、移動体である自動車206は、制御装置208を含み、制御装置208は、本実施形態の回路装置20を含む発振器4と、発振器4により生成されたクロック信号に基づき動作する処理装置220を含む。制御装置208は、例えば車体207の姿勢に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪209のブレーキを制御する。例えば制御装置208により、自動車206の自動運転を実現してもよい。なお本実施形態の回路装置20が組み込まれる機器は、このような制御装置208には限定されず、自動車206等の移動体に設けられるメーターパネル機器やナビゲーション機器などの種々の車載機器に組み込むことが可能である。
以上に説明したように本実施形態の回路装置は、制御電圧に応じた発振周波数の発振信号を生成する電圧制御発振回路と、電圧制御発振回路の動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つが入力情報として入力され、入力情報に基づいて振幅調整情報を出力する処理回路と、電圧制御発振回路に接続され、振幅調整情報に基づいて電圧制御発振回路の動作電流又は電源電圧を可変に調整することで、発振信号の振幅を調整する振幅調整回路を含む。
本実施形態によれば、処理回路が、動作設定情報及び特性情報の少なくとも1つに基づく振幅調整情報を出力し、振幅調整回路が、振幅調整情報に基づき電圧制御発振回路の動作電流又は電源電圧を調整することで、発振信号の振幅をオープンループ制御により調整できるようになる。従って、発振信号の振幅を、電圧制御発振回路の動作設定情報や特性情報に応じた適正な振幅に調整できるようになり、種々の要因に対応可能な発振信号の振幅調整をオープンループ制御により実現できるようになる。
また本実施形態では、動作設定情報は、ノーマルモードと、ノーマルモードよりも電圧制御発振回路が低消費電力になる低消費電力モードと、を設定する動作モード設定情報を含んでもよい。そして処理回路は、動作モード設定情報により低消費電力モードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの動作電流又は電源電圧よりも小さい動作電流又は電源電圧を設定する振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、電圧制御発振回路の動作モードとして低消費電力モードが設定された場合には、振幅調整回路は、処理回路からの振幅調整情報に基づいて、動作電流又は電源電圧が小さくなる制御を行うようになる。そして動作電流又は電源電圧が小さくなることで、発振信号の振幅も小さくなり、低消費電力モードを実現できる。
また本実施形態では、動作設定情報は、ノーマルモードと、ノーマルモードよりも発振信号が低ノイズになる低ノイズモードと、を設定する動作モード設定情報を含んでもよい。そして処理回路は、動作モード設定情報により低ノイズモードが設定されたとき、ノーマルモードが設定されたときの動作電流又は電源電圧よりも大きい動作電流又は電源電圧を設定する振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、電圧制御発振回路の動作モードとして低ノイズモードが設定された場合には、振幅調整回路は、処理回路からの振幅調整情報に基づいて、動作電流又は電源電圧が大きくなる制御を行うようになる。そして動作電流又は電源電圧が大きくなることで、発振信号の振幅も大きくなり、発振信号が低ノイズになる低ノイズモードを実現できる。
また本実施形態では、特性情報は、電圧制御発振回路に含まれる発振用トランジスターの特性変動情報を含んでもよい。
このようにすれば、発振用トランジスターの特性変動情報に応じた適切な振幅の発振信号を生成できるようになる。
また本実施形態では、処理回路は、特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がfastであるとき、発振用トランジスターの特性がtypicalであるときの動作電流又は電源電圧よりも小さい動作電流又は電源電圧に設定する振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、発振用トランジスターの特性がfastである場合に、発振信号の振幅が必要以上に大きくなって、消費電力が無駄に消費されてしまうのを防止できる。
また本実施形態では、処理回路は、特性変動情報により示される発振用トランジスターの特性がslowであるとき、発振用トランジスターの特性がtypicalであるときの動作電流又は電源電圧よりも大きい動作電流又は電源電圧に設定する振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、発振用トランジスターの特性がslowである場合に、発振信号の振幅が小さくなって、発振信号のノイズが大きくなったり、発振が停止してしまうなどの事態を防止できる。
また本実施形態では、動作設定情報は、発振周波数の周波数レンジを設定する周波数レンジ設定情報を含んでもよい。
このようにすれば、電圧制御発振回路の発振周波数の周波数レンジが設定された場合に、当該周波数レンジに最適な振幅になるように発振信号の振幅を調整できるようになる。
また本実施形態では、電圧制御発振回路は、発振信号の出力ノードに接続され、周波数レンジ設定情報に基づいて容量値が可変に制御される可変容量回路を含み、処理回路は、周波数レンジ設定情報に基づいて、振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、周波数レンジ設定情報に基づいて、電圧制御発振回路の可変容量回路により発振周波数の周波数レンジが調整された場合にも、当該周波数レンジに最適な振幅になるように発振信号の振幅が調整されるようになる。
また本実施形態では、処理回路には、動作設定情報が第1入力情報として入力され、特性情報が第2入力情報として入力されてもよい。そして処理回路は、基準値に対する第1入力情報に基づく第1変化値と、基準値に対する第2入力情報に基づく第2変化値の加算処理を行い、加算処理の結果に基づいて振幅調整情報を出力してもよい。
このようにすれば、処理回路が、加算処理を行うだけで、動作設定情報と特性情報の両方を反映させた振幅調整情報を振幅調整回路に出力して、電圧制御発振回路の発振振幅を適切に調整できるようになる。
また本実施形態では、振幅調整回路は、入力電源電圧に基づいて、電源電圧を生成する電源電圧生成回路を含み、処理回路は、電源電圧生成回路が生成する電源電圧を調整する調整情報を、振幅調整情報として電源電圧生成回路に出力してもよい。
このようにすれば、電圧制御発振回路の動作設定情報や特性情報に応じた振幅調整情報により電源電圧を調整し、当該電源電圧を電圧制御発振回路に供給することで、発振信号の振幅を適切に調整できるようになる。
また本実施形態では、電源電圧生成回路は、入力電源電圧を振幅調整情報に基づき調整したレギュレート電源電圧を出力するレギュレーターと、レギュレート電源電圧が入力され、レギュレート電源電圧に応じた電源電圧を電圧制御発振回路に出力するソースフォロワー回路を含んでもよい。
このようにすれば、振幅調整情報に基づきレギュレート電源電圧を調整し、調整されたレギュレート電源電圧のソースフォロワー電圧を、電源電圧として電圧制御発振回路に供給できるようになる。
また本実施形態では、ソースフォロワー回路は、ゲートにレギュレート電源電圧が入力され、ソースに電源電圧を出力するデプレッション型のトランジスターを含んでもよい。
このようにすれば、ソースフォロワー回路は、デプレッション型のトランジスターを用いて、当該トランジスターのゲートに入力されたレギュレート電源電圧に追従するように、当該トランジスターのソースに電源電圧を出力できるようになる。
また本実施形態は、上記に記載の回路装置と、振動子を含む発振器に関係する。
また本実施形態では、回路装置は、電圧制御発振回路を有し、振動子を用いて生成された基準クロック信号と、発振信号に基づくフィードバッククロック信号との位相比較を行って、クロック信号を出力するPLL回路を含んでもよい。
このようにすれば、電圧制御発振回路の動作設定情報や特性情報に応じて振幅が調整される発振信号を用いて、基準クロック信号に位相同期したクロック信号を生成できるようになる。
また本実施形態は、上記に記載の回路装置と、発振信号に基づくクロック信号によって動作する処理装置を含む電子機器に関係する。
また本実施形態は、上記に記載の回路装置と、発振信号に基づくクロック信号によって動作する処理装置を含む移動体に関係する。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また回路装置、発振器、電子機器、移動体の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。