JP6035405B2 - 車両用防音材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、軽量で吸音性能・遮音性能に優れた車両用防音材の製造方法に関し、特にダッシュインシュレータに好適な防音材の製造方法に関する。
一般に、車室内騒音レベルは、エンジン音、吸・排気音、ロードノイズ、風切音及びエンジンの振動やトルク変動に起因するこもり音等の影響が大きい。騒音の伝達経路はエンジン及び車室内の隔壁(ダッシュパネル)からの透過音の影響が最も大きく、全体の50%以上に及ぶと言われている。
従って、従来からこの部位は車室内騒音レベル低減の最も大切な部位として、各社がその防音性能(吸音・遮音)向上に傾注してきた。本発明では、吸音性能及び遮音性能の両方を有する性能を防音性能とし、その部材を防音材として述べる。
また、車両用の防音材として用いる場合には、吸音性能と遮音性能のほかに、環境問題への対応と燃費向上の観点から、車体の軽量化を図るために軽量な素材が要望されている。そのために、近年では、吸音材として短繊維不織布が広く用いられている。また、吸音性能を高くするために、繊維径を細くして空気の通過抵抗を大きくしたり、目付を大きくするなどの方法が採られてきた。その結果、高い吸音性能を求められる場合には、繊維径が15μm程度と比較的細い繊維を用い、目付(面密度)が1000〜5000g/mの厚くて重い短繊維不織布が用いられてきた。特に、特許文献1に示すように、極細繊維を含む不織布は優れた吸音特性やフィルター性等のすぐれた特性があり多くの用途に利用されてきた。しかし、極細繊維を含む不織布だけでは強度が弱かったり、形態安定性が悪い等の問題がある。また、不織布を厚くすれば遮音性能が良くなるが、レイアウト上の問題で限界があり、軽量化の観点からはあまり厚くすることは避けられてきた。
これらの改善のために、極細繊維を含む不織布に別の素材を、例えば合成樹脂フィルムや別の不織布を膜材として積層複合化することが知られている(特許文献2、3)。この際に積層一体化する方法としては、スプレーや転写などでバインダーとなる樹脂を付与する方法や熱融着性繊維などを使用する方法がある。
しかしながら、これらの方法では、乾燥あるいは樹脂の融解接着の目的で熱処理を行うことが必要であり、環境汚染の問題や省エネルギーの観点からあまり好ましいことではない。また、バインダー樹脂が不織布間の界面で皮膜を形成し、吸音性が低下するなどの問題もあった。
一方、極細繊維不織布と長繊維不織布を積層一体化する方法は通称S(スパンボンド)/M(メルトブロー)/S(スパンボンド)などの名前で知られる、スパンボンド不織布の間に極細繊維であるメルトブローン不織布を積層して熱エンボス法で接合する方法が知られている。
しかしながら、これらの不織布は、ボリューム感に欠け、硬い風合いとなっており用途が制限されてしまうという問題点があった。
特開2009−287143号公報 特許3705419号公報 特開2008−290642号公報
上記従来技術では、吸音性と遮音性とを両立させるために、極細繊維を用いた不織布と別の膜材(本発明では、樹脂製フィルムや別の不織布等を含めて、極細繊維を用いた不織布に積層される部材で高密度なものを全て膜材と称する)とを接合して使用することとなっているために、接合するために接着剤を使用する、接着工程を必要とする等の不具合を有する。また、接着する別の膜材と極細繊維との接着性や成形性等を考慮し且つ軽量化も検討すると、別の膜材として使用できるものに制限があり、必ずしも吸音性と遮音性とを両立させたものが得られなかった。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、軽量で且つ吸音特性及び遮音性能に優れた防音材の製造方法を提供することにある。
即ち、本発明は、極細繊維を含む不織布に別の膜材を積層するのではなく、極細繊維を含む不織布自体で膜材を含む2層構造を実現させるものであって、吸音性能と遮音性能とを両立させるとともに軽量化を実現させるようにしたものである。
請求項1の発明は、繊度が0.1〜1.0dtexの極細繊維を主成分とする繊維A:40〜75重量%と、繊度が1.2〜5.0dtexの熱融着性繊維を主成分とする繊維B:15〜60重量%と、繊度が1.2〜5.0dtexの短繊維を主成分とする繊維C:0〜20重量%とを開繊機によりフリースマシン又はカード機のいずれかにより交絡させて繊維体からなるシート状の基材を形成し、該基材の一方の表面を100〜240℃で加熱して、0.5〜10秒間の間、所定厚さに加圧保持して、該基材の一方の面に、目付が50〜200g/m である高密度な通気調整膜を有し、該通気調整膜を入れて目付が800〜2400g/m である板状の防音材を形成し、該通気調整膜を形成した板状の防音材を加熱炉で、150〜180℃、15〜60秒間、加熱することにより、通気調整膜を形成した状態で板状の防音材を成形し易くし、加熱された板状の防音材を車両用内装材の形状のプレス金型で冷却しつつ圧縮成形して、該通気調整膜が車室側に配置された車両用内装材を成形することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用防音材の製造方法において、上記基材の一方の面に高密度な通気調整膜を形成する工程では、一方のみを加熱したローラー間に該基材を通して、該通気調整膜を形成することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の車両用防音材の製造方法において、上記プレス金型の表面から冷却風を出して、上記加熱された板状の防音材を冷却しつつ圧縮成形することを特徴とする。
本発明によれば、吸音性能と遮音性能とを満足し、且つ軽量化した防音材を得ることが出来る。特に通気調整膜が基材の表面を加熱・加圧することで得られるので、基材と同じ素材で製造でき、且つ接合の問題もなく簡単に得られる。更に、通気調整膜の厚さや目付の調整も容易であり、設計自由度の高い通気調整膜を得ることができる。
また、基材の一方の表面のみを加熱・加圧して通気調整膜を有する防音材を形成した後、防音材の全体を加熱して成形し易くし、その後、冷却しながら成形するため、一方の表面に通気調整膜を備えた所定形状の防音材を得ることが可能になる。
本発明の実施形態に係る防音材を模式的に示す断面図である。 本発明の実施例及び比較例それぞれの垂直入射吸音率を示すグラフである。 本発明の実施例及び比較例それぞれの垂直入射透過損失を示すグラフである。 本発明の実施例及び比較例それぞれの通気抵抗と目付の関係を示すグラフである。 通気抵抗を測定する器具の説明図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施例に係る防音材の断面図を模式的に示すものであって、図1(A)は防音材10の一方の表面に通気調整膜12を形成し、他方の表面には基材11が露出するタイプを、また図1(B)は防音材10の両方の表面に通気調整膜12を形成するタイプをそれぞれ示している。
先ず、本発明の実施形態に係る各繊維について説明する。
(極細繊維)
極細繊維としては、防音材としての実用的にはポリエステル繊維が有用である。防音材に極細繊維を主成分とする不織布(繊維集合体)を採用することで、内部のインピーダンス(通気抵抗)が上がり、内部のエネルギー減衰効果が飛躍的に向上することとなり、吸音性を阻害せずに遮音性を付加できる。
極細繊維が少なすぎると吸音性能が劣り、多すぎると相対的に熱融着性繊維が少なくなり成形性が悪くなるので、40〜75重量%とすることが好ましい。
繊度は低いと繊維自体が細くなるので通気抵抗が高くなり吸音性能は良くなる方向にあるが、取り扱い難くなり生産性が劣るようになる。逆に繊度が高いと繊維自体が太くなるために通気抵抗が低下して吸音性が悪くなる。従って、繊度は0.1〜1.0dtexとすることが好ましい。
(熱融着性繊維)
熱融着性繊維としては、加熱時に熱融着性繊維が溶融して極細繊維を接合する樹脂であれば特に限定されないが、この熱融着性繊維は全て溶融するのではなく、内部などの一部が溶融しないで残り、熱収縮を軽減する樹脂が好ましい。例えば、ポリエステル繊維を芯材とし、PE、PP及びPETを鞘材とした芯鞘構造が好ましい。特に、極細繊維と同じ素材であれば接合性も良く、リサイクル性の観点から好ましい。熱融着性繊維が、少なすぎるとバインダー機能を発揮できず且つ成形性が悪くなり、多すぎると極細繊維が相対的に少なくなるので、15〜60重量%、特に25〜55重量%とすることが好ましい。
熱融着性繊維の繊度が低いと、製品剛性が低くなり製品の取扱いがしにくくなり、逆に高いと繊維間の隙間が大きくなり吸音性が悪くなるので、繊度は1.2〜5.0dtexとすることが好ましい。
(混合する短繊維)
上記極細繊維と熱融着性繊維との組み合わせだけでなく、極細繊維や熱融着性繊維の機能を阻害しない範囲で、これらにさらに熱融着性繊維と同様な短繊維を混ぜ合わせてもよい。リサイクル性やコストダウンの観点から上記短繊維を混ぜることが好ましい。この場合でも、極細繊維または熱融着性繊維と同じ素材であれば接合性も良く、リサイクル性の観点から好ましい。多すぎると防音材の本来機能を低下させるので、まったく混合させないか、混合するとしても20重量%までである。
この短繊維の繊度は、熱融着性繊維と同様に、1.2〜5.0dtexとすることが好ましい。
(通気調整膜)
本発明の特徴である通気調整膜は上記極細繊維と熱融着性繊維(または更に混ぜ合わせる短繊維)を混合して製造した不織布を用いて、この不織布の表面を加熱・加圧して高密度な通気調整膜を形成するものである。従って本発明の通気調整膜は、別の膜材を接合するのではないので、ベースの不織布との密着性を気にする必要性がなく、容易に通気調整膜を基材の不織布に一体に製造することができる。特に、加熱温度や加熱時間、加圧圧力や加圧隙間等を制御することで、この通気調整膜の厚さや通気度を調整することができるので、使用する用途等に応じた特性を調整することが容易にできる。
この通気調整膜の厚さは厚すぎると、伸びが悪く成形性に劣り、薄すぎると遮音性が発揮できないので、厚さを0.05〜0.5mm、特に0.1〜0.35mmとすることが好ましい。
この通気調整膜の目付は低すぎると遮音性に劣り、高すぎると伸びが悪くなり成形性が悪くなるので、50〜200g/mとすることが好ましい。
なお、本発明の通気調整膜は、基材を加熱・圧縮して得られるもので有り、基材と同じ素材から成るものであり、防音材全体の通気抵抗を調整する役目を備え、防音材の有する吸音性と遮音性を高めると共に両者のバランスを取るために形成されるものである。従って、基材と同じ素材でありながら基材との違いを明確にするために、本発明では通気調整膜と称した。
(基材)
基材は、上記極細繊維と熱融着性繊維(或いは更に短繊維を混ぜたもの)を混合して製造した不織布からなるものであり、この基材の目付は、低すぎると極細繊維の持つ吸音性、遮蔽性、フィルター性能等の効果が期待できず、逆に高すぎるとバインダー繊維との接合性が低下するので、通気調整膜を入れて800〜2400g/mとすることが好ましい。なお、通気調整膜が基材を加熱・圧縮して形成されるものであるから、基材と通気調整膜との境界は明確でない部分も有るが、通気調整膜を除いた元の基材のままの部分を基材と称する。
この基材及び通気調整膜からなる防音材全体の厚さは、薄すぎると吸音性、遮音性とも劣り、厚すぎると吸音性、遮音性は優れるが、重量アップとなり軽量化できなくなるので、5〜60mm、特に10〜40mmとすることが好ましい。
防音材の通気抵抗は、高すぎると吸音性が悪く、低すぎると遮音性が悪いので、400〜3500Ns/mの範囲とすることが良い。なお、目付は、800〜2400g/mの範囲が好ましいと前に説明したが、目付量が多くなるに従って通気抵抗の許容範囲の値が大きい値に移動するような範囲にすることが好ましい。即ち、目付が少ない場合には、通気抵抗も小さくしないと直ぐに吸音性が悪くなり、吸音性を満足出来なくなるので、目付が少ない場合には、通気抵抗の許容範囲は小さい値の範囲となり、目付が多い場合には、通気抵抗も大きくしないと遮音性が悪くなり、遮音性を満足出来なくなるので、目付が多い場合には、通気抵抗の許容範囲は大きな値の範囲となる。特に、本発明では、通気調整膜を基材と同じ素材(即ち極細繊維を含む素材)としているから、上記傾向(通気抵抗と目付の相関関係)が顕著になると思われる。
上記説明では、防音材の一方の面に通気調整膜を設けるとして説明したが、他方の面にも上記通気調整膜を設けるようにしても良い。また、一方の表面或いは両表面に通気調整膜を設けた防音材を、同じ向きで重ねる或いは逆向きにして重ねるようにして防音材を形成しても良い。
両表面に通気調整膜を設けると、特定の周波数領域に対して、吸音や遮音特性を向上させたい場合、防音特性のバラツキの少ない基材を得易い、塵や埃が付着し難い等のメリットが出る。また、防音材の表面は、熱融着性繊維で溶着された極細繊維の層が露出するよりも、膜状に形成されている方が、表面の取り扱い易さからすると有利であり、他方の面にも上記通気調整膜を設けるようにしても良い。他方の表面に設ける通気調整膜としては、用途や狙いに応じて、一方の表面に設けるような通気調整膜でなくて、極めて薄い保護膜のようなものであっても良い。
本発明の防音材の製造方法を説明する。
極細繊維、熱融着性樹脂(或いは更に短繊維を混ぜたもの)を積層・攪拌してフリースマシンにかけて板状の基材を形成し、加熱炉で加熱してから、製品形状のプレス金型で冷却しつつ圧縮成形する。
通気調整膜は、基材の形成前後で、加熱・加圧して形成する。具体的には、通気調整膜は、(1)通気調整膜のない板状の基材に形成した後で成形用の加熱炉で加熱する前に、一方の表面のみを加熱してプレス金型で通気調整膜を有する板状の基材を成形すること、(2)通気調整膜のない板状の基材に形成した後で成形用の加熱炉で加熱する前に、一方のみを加熱したローラー間を通して板状に成形すること、(3)通気調整膜のない板状の基材に形成した後で成形用の加熱炉で加熱する前に、一方の表面のみを加熱してからローラー間を通して板状に成形することで製造される。
また、極細繊維、熱融着性樹脂(或いは更に短繊維を混ぜたもの)を一度に一緒に積層・攪拌するのではなく、熱融着性樹脂(或いは更に短繊維を混ぜたもの)を積層・攪拌してフリースマシンにかけて板状に形成し、その後メルトブロー法で作成した極細繊維を重ねることでもよい。この方法の場合では、通気調整膜は、極細繊維を重ねた後の基材で製造する方法やメルトブロー法で作成した極細繊維を重ねる前の基材で製造する方法が可能である。製造方法は、上記と同様な方法が使用でき、即ちプレス金型やローラーを使って圧縮するとともに、これらを使って加熱するかこれらの前工程として加熱する方法でも良い。
なお、一方の表面のみに通気調整膜を設けることで説明したが、両面に設ける場合には、詳細な説明は省略するが、他方の面も上記の方法で加熱・加圧するようにすれば良いものである。
(防音材の製造条件)
(基材の製造条件)
基材を製造する方法及び製造条件は、一般的な基材の製造方法及び製造条件と同様なものであり、ここでは詳細な説明は省略する。また、極細繊維、熱融着性樹脂(或いは更に短繊維を混ぜたもの)を一度に一緒に積層・攪拌する場合の条件も、一般的な基材の製造方法及び製造条件と同様なものであり、ここでは詳細な説明は省略する。
(通気調整膜を形成する条件)
通気調整膜を形成するための加熱温度は、低すぎると必要とする通気調整膜ができなくなり、逆に高すぎると膜厚が厚くなり、伸びが悪く成形性に劣ることとなるので、加熱プレス機の加熱温度は、100〜240℃とすることが好ましい。なお、プレス機でなく、一方を加熱したローラー間を通す場合には、時間が短いので、温度を高めにすることも可能である。加熱時間は、短いと必要な通気調整膜が得られず、長いと膜厚が厚くなって伸びが悪くなり成形性に劣ることとなるので、加熱時間は0.5〜10秒とすることが好ましい。
(防音材の成形条件)
板状の防音材を所定形状に成形するためには、この防音材を加熱炉等で加熱して成形(変形)し易くし、加熱された防音材を所定形状のプレス金型に投入して成形する。この場合に、プレス金型で所定形状に成形されると出来るだけ早く冷却して形状を維持できるようにすることが好ましいので、プレス金型の表面から冷却風を出して加熱された防音材を冷却しつつ成形するようにしても良い。上記加熱温度は、板状の防音材が成形しやすい状態になれば良いものであり、熱融着性繊維の融点よりも高い温度であれば良く、それほど高温にする必要はない。例えば150〜180℃で良い。加熱時間も成形しやすい状態にするために必要な時間であれば良いので、15〜60秒が好ましい。
金型クリアランスは、基材の厚さや不織布の繊維、或いは用途等で適切に選択して設定すればよいものであるが、0.5〜5mm程度が実用的な範囲と言える。
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
(実施例1)
繊度が0.6dtexのPET繊維からなる極細繊維Aを75重量%と、繊度が2.2dtexのPET繊維からなる熱融着性繊維Bを25重量%で混合撹拌してフリースマシンにかけて、厚さ:30mm、目付:1400g/mのシート状に成形した。このシートの一方の表面をプレス金型(加熱温度:約150℃、加熱時間:5sec)で加圧して通気調整膜を形成した。その後、加熱炉(加熱温度:約165℃、加熱時間:40sec)で加熱した後、プレス金型に投入して、所定形状に成形した。上記の製造方法で得られた防音材は、以下のものであった。
防音材の厚さ:25mm
通気調整膜の厚さ:0.2mm
通気調整膜の目付:100g/m
(実施例2)
実施例1と異なるのは、極細繊維A:65重量%、熱融着性繊維B:35重量%とした点が異なるだけで、後は実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例1と異なるのは、極細繊維A:55重量%、熱融着性繊維B:45重量%とした点が異なるだけで、後は実施例1と同じである。
(実施例4)
実施例1と異なるのは、極細繊維A:40重量%、熱融着性繊維B:60重量%とした点が異なるだけで、後は実施例1と同じである。
(実施例5)
実施例2と異なるのは、極細繊維A:65重量%、熱融着性繊維B:15重量%とし、更に混合する短繊維Cとして、繊度が2.2dtexのPET繊維を加えた点が異なるだけで、後は実施例2と同じである。
(実施例6)
実施例2と異なるのは、極細繊維A:65重量%、熱融着性繊維B:15重量%とし、更に混合する短繊維Cとして、繊度が4.4dtexのPET繊維を加えた点が異なるだけで、後は実施例2と同じである。
(実施例7)
実施例2と異なるのは、極細繊維Aとして、繊度が0.9dtexのPET繊維、熱融着性繊維Bとして繊度が2.2dtexのPET繊維を加えた点が異なるだけで、後は実施例2と同じである。
(比較例1)
本発明の実施例2と配合割合が異なるものを比較例1とした。極細繊維A:35重量%、熱融着性繊維B:45重量%とし、更に混合する短繊維Cとして、繊度が2.2dtexのPET繊維:20重量%を加えた点である。
(比較例2)
比較例1と配合割合を変更したものであって、極細繊維A:15重量%、熱融着性繊維B例えば、:65重量%とし、更に混合する短繊維Cとして、繊度が2.2dtexのPET繊維:20重量%を加えた点である。
(比較例3)
従来技術の例として、粗毛フェルト(例えば、廃材になった衣類等を細かくほぐしてフェルト状にしたもので、綿や化繊、ウール等のものが原料になっている)からなる不織布に軟質PVCを接着したものである。
不織布
繊度:2〜7dtex、厚さ:25mm、目付:1250g/m
軟質PVC
厚さ:2mm、目付:3400g/m
実施例1〜7及び比較例1〜3について、管内法吸音率、管内法透過損失、通気抵抗について評価した。
管内法吸音率は、ISO10534−2、JIS A1405−2及びASTM E1050に基づいた垂直入射吸音率評価、管内法透過損失は、ASTM E2611に基づいた垂直入射透過損失評価を行った。通気抵抗は、図5に示す測定治具で行った。
(通気抵抗の測定方法)
各実施例のサンプルを300mm×300mmの大きさで求める。このサンプルの目付量を通常の方法で測定する。そして、図5に示す測定治具1にこのサンプルSをセットして、厚さを15mmまでに押さえた状態で、通気度を測定する。具体的には、φ180mmの吸引部2で25リットル/minの吸引速度で吸引して、
元の圧力−吸引時の圧力=Δpとし、
AFR=Δp/吸引速度として、
AFR(エアーフロー割合)を通気抵抗として求める。
実施例及び比較例について、管内法吸音率、管内法透過損失の測定結果を表1に示す。
Figure 0006035405
車両用の内装材では、吸音性能や遮音性能として、管内法吸音率は0.8以上であり、且つ管内法透過損失は11dB以上が要求されている。本発明の各実施例では、表1から判るように、管内法吸音率が0.8以上であり、管内法透過損失が11dB以上であり、いずれにも良い数値を示している。これに対して、比較例1や2では、それぞれ管内法吸音率が0.72,0.68であり、ある程度の数値を示すが、吸音率として満足できる値になっていない。また、管内法透過損失では、比較例1が8.9、比較例2が7.2で有り、遮音性能が不足する結果となった。
また、図2及び図3は、それぞれ管内法吸音率及び管内法透過損失を周波数の変化状態を示す。図2に示すように、比較例3では、500〜6300Hzのどの範囲でも吸音率が悪い結果となっており、比較例1や2では、一部の周波数帯では本発明の実施例と同レベルにある場合があるが、悪い数値の周波数帯も有り安定した吸音率を示していない。
また、図3に示すように、比較例3は、遮音性能では格段に優れた数値を示すが、比較例1や2は、悪い数値となっており、遮音性能で劣っている。
更に、図4の通気抵抗と目付の関連図で比較してみると、実施例1〜7は吸音性と遮音性の両方を満足する通気抵抗の範囲に入っているが、比較例1及び2は、所定の目付に対して通気抵抗が低くて、遮音性に劣る結果となった。なお、比較例3では、通気抵抗がかなり大きな値になるので、この図には描ききれなかったが、遮音性は優れているといえる。
なお、図4において、目付が800g/mの時の通気抵抗の上限値(a)、目付が2000g/mの時の通気抵抗の下限値(b)は、極細繊維や熱融着繊維の材質、繊度、厚さ等で変動するので、定量的な数値として示さなかった。但し、上限値(a)−400<3500−下限値(b)の関係となり、目付が多いほど通気抵抗の許容範囲は広くなると言える。特に、本発明では、通気調整膜を基材と同じ素材(即ち極細繊維を含む素材)として、単に加熱・加圧しただけであるから、通気抵抗が図4に示すような許容範囲になると思われる。
本発明は、軽量化が望まれる車両用内装部材であって、吸音性能及び遮音性能の両性能を要求され、且つ軽量化を要求される内装材、例えばダッシュインシュレータ、フロアマット及びドアトリムの吸音材などに有利に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
1 測定治具
2 吸引部
S サンプル
10 防音材
11 基材
12 通気調整膜

Claims (3)

  1. 繊度が0.1〜1.0dtexの極細繊維を主成分とする繊維A:40〜75重量%と、繊度が1.2〜5.0dtexの熱融着性繊維を主成分とする繊維B:15〜60重量%と、繊度が1.2〜5.0dtexの短繊維を主成分とする繊維C:0〜20重量%とを開繊機によりフリースマシン又はカード機のいずれかにより交絡させて繊維体からなるシート状の基材を形成し、
    該基材の一方の表面を100〜240℃で加熱して、0.5〜10秒間の間、所定厚さに加圧保持して、該基材の一方の面に、目付が50〜200g/m である高密度な通気調整膜を有し、該通気調整膜を入れて目付が800〜2400g/m である板状の防音材を形成し、
    該通気調整膜を形成した板状の防音材を加熱炉で、150〜180℃、15〜60秒間、加熱することにより、上記通気調整膜を形成した状態で、板状の防音材を成形し易くし、
    加熱された板状の防音材を車両用内装材の形状のプレス金型で冷却しつつ圧縮成形して、該通気調整膜が車室側に配置された車両用内装材を成形することを特徴とする車両用防音材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の車両用防音材の製造方法において、
    上記基材の一方の面に高密度な通気調整膜を形成する工程では、一方のみを加熱したローラー間に該基材を通して、該通気調整膜を形成することを特徴とする車両用防音材の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両用防音材の製造方法において、
    上記プレス金型の表面から冷却風を出して、上記加熱された板状の防音材を冷却しつつ圧縮成形することを特徴とする車両用防音材の製造方法。
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